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パラノイズ〜人生の選択〜  作者: ムーンキャット


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第3話:半月前の俺に、当たる馬を教えた結果

――過去・競馬場の翔――

 ――マジかよ。

 競馬場の大型モニターに、ゴールの瞬間が映し出された。

 半月前の渋谷翔は、息を止めたまま画面を見つめていた。

 先頭で駆け抜けた馬番。

 それは、あの“意味不明な交信”で聞いた番号だった。

「……当たった?」

 手元の馬券を見る。

 番号は一致している。オッズも、賭け金も。

「当たってる……!」

 次の瞬間、翔は思わず叫んでいた。

「っしゃああああ!!」

 人生で初めての大勝ち。

 心臓が跳ね、指先が震える。

「テレビ……買えるじゃん。

 あのデカいやつ……75インチ……!」

 数時間前まで、負ける未来しかなかった自分。

 それが今は、勝者だ。

「なんだったんだよ、さっきの……」

 脳裏に浮かぶ、ノイズだらけの画面。

 未来の自分を名乗る男。

 正体不明の装置。

「まあいいか。結果オーライだろ」

 翔はそう言って、払い戻し窓口へ向かった。

 ――その瞬間。

 視界が、ぶつりと途切れた。

――現在・部屋の翔――

 白黒のノイズが、視界を覆い尽くす。

 テレビの砂嵐のような映像が、現実を塗り潰していく。

「……っ!?」

 現在の渋谷翔は、自分の身体の感覚が消えていくのを感じていた。

 音が遠のき、思考が引き裂かれる。

 そして――

「……あれ?」

 気がつくと、翔は自分の部屋に立っていた。

 いつもの安アパート。見慣れた天井。

 だが、一つだけ――明らかにおかしい。

「……は?」

 壁際に置かれた、巨大な段ボール箱。

 記憶にないはずの荷物。

【75V型 4K液晶テレビ】

 印刷された文字を見た瞬間、背中に冷たいものが走る。

「……俺、これ……買ったのか?」

 喉が、無意識に鳴った。

 ポケットの中で、

 あのトランシーバー型の装置が、

 小さく、ノイズ音を立てた。


段ボール箱を前に、翔はしばらく固まっていた。

「……いや、落ち着け」

 独り言のように呟き、スマホを取り出す。

 記憶にない買い物ほど、怖いものはない。

 指先で通販アプリを開く。

 購入履歴。

「……え?」

 表示された日付は、昨日。

【75V型 4K液晶テレビ 購入済み】

【配達完了】

「俺……昨日、これ買った?」

 画面を何度見返しても、履歴は消えない。

 支払い方法――銀行振込。

 嫌な汗が、背中を伝った。

「……まさか」

 次に開いたのは、ネットバンキングのアプリだった。

 残高表示が、読み込みを終える。

「……っ」

 思わず、息が詰まる。

 数日前まで、ほとんど空だったはずの口座。

 そこには、見覚えのない桁数が並んでいた。

「増えてる……」

 増えている、なんて生易しいものじゃない。

 明らかに“勝った金”だ。

「競馬……?」

 口にした瞬間、脳裏に蘇る。

 ノイズ混じりの画面。

 未来の自分の声。

 馬番。

「……マジで、変わったのか?」

 部屋を見渡す。

 テレビの箱。

 通帳の数字。

 スマホの履歴。

 どれも現実だ。

 夢じゃない。

 なのに――

「……なんだよ、これ」

 胸の奥が、ざわつく。

 嬉しいはずなのに、心が追いつかない。

 その時。

 キィ……と、耳鳴りのような音がした。

「……?」

 立ち上がろうとして、翔は一瞬、ふらついた。

「っ……」

 視界の端が、わずかに砂嵐のように揺れる。

 ほんの一瞬。

 気のせいかもしれない。

「……疲れてるだけか」

 そう自分に言い聞かせながら、

 翔は机の上のトランシーバー型装置に目を向けた。

 装置は、沈黙している。

 だが――

 何かを、待っているようにも見えた。

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