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パラノイズ〜人生の選択〜  作者: ムーンキャット


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第15話 強い願いの先に

翔は、装置を握ったまま動けずにいた。

画面には、まだ何も映っていない。

ノイズだけが、かすかに「ザ……ザ……」と鳴っている。

(本当に、やるのか……)

頭に浮かぶのは、あの記憶だった。

修学旅行。

バス。

信号。

横から突っ込んできたトラック。

金属が潰れる音。

悲鳴。

ガラスの破片。

――先生を含め、18人死亡。

――生き残ったのは、たった5人。

(俺は……運が良かっただけだ)

生き残った理由に、意味なんてなかった。

助かったことが、今でも正解だったのか分からない。

宇宙人の言葉が、脳裏によみがえる。

「強い願いほど、ノイズは小さくなる」

「だがな、願いが弱ければ――過去には届かない」

翔は、目を閉じた。

(俺が変えたい過去は……)

迷う理由なんて、もうなかった。

「……頼む」

誰に向けた言葉かも分からないまま、

翔は装置の調整ダイヤルを、あの日へ合わせた。

スイッチを入れる。

「ザザ……ザザザ……ッ」

激しいノイズ。

画面が歪み、乱れ、何度もブラックアウトする。

(やっぱり、無理なのか……)

そう思った瞬間――

ノイズの向こうに、見覚えのある光景が浮かび上がった。

ホテルのロビー。

修学旅行中の、朝。

そしてそこに――

高校生の頃の自分が立っていた。

『……え?』

過去の翔が、突然立ち止まる。

周囲を見回し、困惑した表情を浮かべる。

画面に映る「未来の翔」と目が合った。

『……俺……?』

「驚くのは後だ。時間がない」

未来の翔の姿は、ノイズに歪みながらも、はっきり映っている。

『何だよこれ……ドッキリ?』

『誰だよ、こんな事してるの』

その時、背後から声が飛んだ。

『おい翔、何ぼーっとしてんだ?』

『バス乗るぞー』

『誰と話してんだよ』

過去の翔は、慌てて首を振る。

『……いや、誰とも……』

「聞こえないフリをするな!」

未来の翔は、必死に叫んだ。

「これから乗るバス、出発を遅らせろ!」

『……は?』

「事故が起きる!」

「信号無視のトラックが、横から突っ込む!」

「先生含めて18人が死ぬ!」

過去の翔の顔から、血の気が引いていく。

『……何、言って……』

「俺は、その事故で生き残った5人の1人だ!」

周囲がざわつく。

『翔? 顔色悪くね?』

『どうしたんだよ』

『先生! 渋谷が――』

ノイズが、少し強くなる。

(まずい……)

「いいから聞け!」

「10秒でいい!」

「10秒、出発を遅らせろ!」

『……なんで、そんな事まで……』

過去の翔の声が、震えた。

「これは――」

未来の翔は、拳を握りしめた。

「俺の人生で、一番強い願いだ」

その瞬間。

ノイズが、すっと小さくなった。

『……』

過去の翔は、唇を噛みしめ、そして――小さく頷いた。

『……分かった』

背後から、教師の声。

『渋谷! 何やってる、早く乗れ!』

過去の翔は、振り返り、叫んだ。

『すみません先生!! 靴ひもが切れました!!』

画面が激しく揺れる。

「行け……!」

「頼む……!」

「ザザザザ……!」

通信は、途切れた。

装置は沈黙し、

未来の翔は、その場に崩れ落ちるように座り込んだ。

「……これで」

「これで、変わらなかったら……」

その先の言葉は、出てこなかった


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