第13話 覚悟の重さ
部屋の明かりを消しても、
翔はしばらく動けずにいた。
逃げ道はない。
選ぶしかない。
その現実だけが、
胸に重くのしかかっていた。
——ブッ。
再び、ノイズ。
「……まだ、何かあんのかよ」
今度は、驚かなかった。
むしろ、来る気がしていた。
視界の端に、
あの砂嵐が滲む。
〈一つ、言い忘れていた〉
「……何だよ」
ノイズの向こう。
人型の影が、わずかに揺れる。
〈君は、遠い過去に繋ぐことを恐れている〉
〈ノイズが酷くなり〉
〈失敗する可能性を〉
図星だった。
翔は、黙ったまま拳を握る。
〈だが〉
〈ノイズは、距離だけで決まるわけではない〉
「……?」
一瞬、
ノイズが“薄くなった”。
ほんの一瞬。
だが、はっきり分かった。
〈強い願いだ〉
その声が、
どこか楽しそうに聞こえた。
〈後悔〉
〈未練〉
〈どうしても変えたいと願う過去〉
〈それが強いほど〉
〈ノイズは、小さくなる〉
「……そんな都合のいい話が」
〈ある〉
影が、歪む。
——笑っている。
〈この装置は〉
〈“覚悟の重さ”を測っている〉
翔の喉が、鳴った。
〈半端な願いでは〉
〈遠い過去には届かない〉
〈途中で、途切れる〉
「……じゃあ」
〈成功するかどうかは〉
〈君次第だ〉
ノイズが、再び強まる。
〈変えたい過去を〉
〈本当に、選べ〉
最後に、
低く、不敵な声が残された。
〈それが出来た時〉
〈君は、繋がる〉
——ブツン。
完全な沈黙。
翔は、
しばらく天井を見つめていた。
強い願い。
半端じゃない後悔。
「……あるに決まってるだろ」
脳裏に、
封じ込めてきた光景が浮かぶ。
忘れたふりをしてきた。
考えないようにしてきた。
それでも、
何度も夢に見た過去。
「……変えたい」
声が、震えた。
その瞬間、
引き出しの奥の装置が——
わずかに、反応した気がした。




