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漫画怖い(饅頭怖い)

締め切り明けの夜、漫画家と編集は会社近くの居酒屋で打ち上げをしていた。

喧々諤々の編集会議を終え、原稿が無事に上がったことを祝っての一杯だ。


「いやー、何とか原稿上がってよかったですー」

漫画家はほっとしながらレモンサワーと唐揚げを頼む。

レモンは好きだが唐揚げにはかけない。熱々の唐揚げが大好きで、わざわざ冷たいレモン汁で冷ますのは好まない。

レモンサワーで流し込むのは大好きだ。


「ほんとっすよ。先生がゴーヤーってヤーの後の伸ばし棒にこだわらなければ1時間早く終わってましたよ。その一文字で伏線隠れるかどうかでしたから」

「だって、そこちゃんと伸ばさないと炎上するでしょ。編集の中にそこ気にしてくれる人いてよかったよ」

「まぁ、ネット見てたらゴーヤー警察とかって気にする人が結構いるってのは出てましたけど。そんなこと言ってセリフ回しのリズム感気にしすぎて伸ばしたかっただけでしょ。先生は沖縄県民でもないですし」

「そこもあるけど、やっぱりみんなに愛されるって大事じゃん」

「それはそうっすけど、先生はあんまり読者の声とか気にしないのかと思ってました。結構癖強いし、怖い物なしっていうか」

「そんな風に思われてんの?俺饅頭怖いよ。茶饅頭とか怖くて、目の前にあるとつい見えなくなるように口に入れちゃう」

「落語の饅頭怖いってやつですかさすがに有名何で知ってますよ」

「そっかぁ、じゃあ俺が締め切り怖いのは知ってる?」

「締め切り怖いってのはクリエイターはみんなそうです。てか実は編集も締め切りは怖いっす。作家さんがちゃんと出してくれるか不安で不安で」

「そんなこと言って、どっちかというと締め切り来てからの方が仕事あるじゃない?」

「まぁそうなんすけど、先生はちゃんと出してくれるから安心してます」

「俺せっかちだからね。夏休みの宿題も7月中に全部やってたし、大学の単位も3年までに取り終わってたし」

「それ逆に余った時間なんか不安になりません?やり残してないかとか」

「終わった後漫画書きまくってたからそういう不安はなかったかな」


レモンサワーと唐揚げが来て漫画家は嬉しそうに飲み干す。

「原稿明けの唐揚げは最高だ!乾いていたものを補う感じがする」

「最高っすね」


「俺が怖い物っつったらあれだな、読み切りとか別で新作書けとか言われることだな」

「そうなんすか?先生早いから複数誌面で書けそうじゃないすか」

「いーや怖い。一本に集中したいのに、あっちもこっちもやんなきゃいけないとなると怖いわけがわかんなくなりそうだ」

酔っぱらった編集は普段強気で無理を言ってくる漫画家にいじわるしたくなる。


「そういや、俺の知り合いに他紙の編集いるんすけど……別の紙面相談してみましょうか」

「やめてくれ。本気でやめて」

漫画家が怖そうにするのに更にいじめたくなって編集は続ける。

「別の編集も作画探してたんすよ」

「作画!原案の人とのコミュニケーションが難しい、集中しないとできないぞ」

「読み切りとかどうすか!」

「いやーアイデアを使い果たすような提案はやめてくれー。あ、うむくじ天ぷら追加。シークワサーサワーも」

「さ、先生。もっとどうぞ!おごり何でじゃんじゃん頼んでください」

「そんなこと言って、仕事増やそうとするのは勘弁な。じゃあこのラフテーも2人前」

「先生、アニメ化の監修もぜひ!」

「マジで仕事増やすのやめてくれって。寝不足で死んじまうよ。ゴーヤーチャンプルーね」

「この人気なら巻頭カラーもいけますよ」

「毎日締め切りになりそう。あ、島豆腐お願い」

「ちょこちょこ頼んでるっすね俺の分もお願いしますよ」

「じゃあ、島豆腐もう一つと、泡盛もこの名前が素敵なやつ2人分、水割りで、あとヒラヤーチーとそーみんチャンプルーと、もずく天ぷら」

「一気に頼みすぎじゃないすか。俺も先生にグッズのデザインも頼んじゃいますよ」

「やばいって、腱鞘炎なるって」


ぱくぱくもぐもぐ楽しそうに料理を食べる漫画家、何だったら手を付けてない編集の分もかっさらっていく。

「本当に嫌がってます?」

「嫌がってる嫌がってる」

「今言った仕事は本当は嫌がってないんで詰まんないす。先生が嫌なのは何すか。もうそれだけ入れちゃいますから」

絶対入れてやると編集はいたずら心全開で漫画家に尋ねる。

「取材旅行が一番怖い」


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