ガマの油売り (情報商材売り)
最近じゃ、ネットで個人が動画サイトだとかSNSだとかで商売している。その中でも儲かっているのが情報商材屋。
煌びやかな家のセットを背景に、ピシッとしたスーツ着て、難しい本とか、白衣の外国人とかの写真が奥に映っている動画で出来そうな感じで語りくる。
「視聴者の皆さん。ちょっとだけでも見て行って。 急ぎじゃないならゆっくりしていって。
今は日本はお先真っ暗。今後に2千万の貯金が必要だとか難しい事言っているけど。私は無関係。この動画を見ているあなたもこれから理解できますよ。
値上げの悲鳴が上がっても、どっかで増税で息もゼイゼイ絶え絶えで不安で不安で将来わからぬってのが道理の昨今。
だが、私が用意したこの冊子。世界の未来が書いてある。ほらほらここに映っている。偉い外国の博士様。
その博士様の友人として、一緒に難しいことを8年間も研究して、日夜寝るも寝ないもないわけで、飲まず食わずで調べに調べた研究成果。
私の研究したことは12通りある。最新の医療。金銀の値上がり値下がりの行方。スマホの今後。再来年の流行りの音楽なんかだね。
だがしかし、視聴者の皆さん、投げ銭放り銭はおことわりするよ。スパチャもらってもそういうのはお教えできませんからね。
では、私は今回何を視聴者の皆さんにお持ちしたかといえば、こっちの冊子。やれば簡単。誰でも儲かる方法が書いてあるこの金色の冊子。
私はそこらのSNSにいるような情報屋というお方がいるが、そんな風に思うなら、今すぐ見るのをやめた方がいい。
その見る目の無さ自体じゃ。この冊子を買ったとしても視聴者さんは儲けることはできないからね。
でも、私の事をそこらの情報屋とちょっと違うと思ったあなたは見る目がある。こりゃ、冊子の通りにやれば私の想定より大儲け出来る事間違いないね。
馬鹿でも出来る方法を見る目があるあなたがやるんだから。うんうん。間違いない。」
「さてそれじゃ。売る前にこの冊子の中身についてちょっと紹介しましょうか。まずページ数は46ページ。
詳しい説明が40ページ。まとめが6ページ。これを名づけて四六の冊子。
この冊子は、北アメリカからやって来たドーナツ店で考えた。ドーナツ食うというのは。どんなコツでも思い浮かぶという。
この冊子は、2月に7月に11月に印刷して、重版している。わかる人にはこれがいかにすごいかわかる。遅れずの46の冊子といいます。そこのあなた。
この冊子を書くに当たって、私は部屋に外から鍵をかけ、ベッドの布団もクリーニングに出し、寝るところと言ったらソファか床。
そんな状態で夏には私の姿を鏡にみるとやつれた姿に自分でおのれで驚き、たらーりたらりと、あぶらあせを流す。
そんなもんが何になると拭い拭って、三七二十一日の間、とろーり、とろりと脂汗が出て痩せながら書いたのが、この冊子だ。
薬風にいやぁ頭に入れて数日、覚えた通りやってみりゃ大金持ちになって将来の不安が消し飛ぶってもんだ。
まあ、ちょっとお待ち。冊子の効能はそればかりではない。
まだある。あなたは今まで何にもできなかったとぐじゅぐじゅした自尊心を抱えていたに違いない。
私が用意した冊子は、そんな自尊心をすぱっと解決。大金持ちになるついでに社会貢献でSDGSだから自尊心も満たされる。
立派な人になれるわけですよ。
私はね。これを自分でやればもちろん大儲けできるのはわかっているけど視聴者さんみたいな人へ分けて社会貢献もしたいんですよ。
私一人があなた一人を幸せに出来れば二人幸せになる。
二人が四人、四人が八人、八人が十六人、十六人が三十二人、三十二人が六十四人、六十四人が一百と二十八人、2の八乗は256。
そのまま気分上々」
と、あやしげな口上で見物を引きつけておいて、冊子の効果を実証するため、一人の豪華な服装の男が画面外から現れた。
「先月兄貴から冊子を買ったもんで。ほらほら、この通帳の残高みてくだせぇ。一、十、百、千、と3千億万円?くらい。1月で稼いだってもんでさぁ。
おいら、全然就職できなくて、20年フリーターしてたんすけど、兄貴のおかげでしゃかしゃかこうけい?になって
これからも稼ぐっす。」
「社会貢献!な。ありがとう。まぁ、このように無学でも3千万を一か月で稼いだんです。でもこんなのは何の造作もありません。
今社会の中でお仕事をされている方は、この方より優秀ではないか?そう思う次第です。
さて、そろそろ、冊子は一冊30万だが、こんにちは動画でのおひろめは、初めてだし、今から30分間だけ、皆さんが他の方に公開しないというお約束を守ってくださるなら、特別に4万6千円でご提供します。
こちらのURLから申し込みを~」
こんな案配で、むろんインチキだが、動画の冊子売りは配信が切れてないのに調子に乗って乾杯して酒を飲み始める。
最初こそこれで、視聴者の皆さんも幸せになれるし、俺も幸せになるしいいことしたなぁなどと言っていたが
酒に強くないのですぐにへべれけに、
「もう一回、俺の名演技をみよ」
サクラの男に向かってもう一度さっきの向上をやってみる。
ロレツが回らないので支離滅裂しりめつれつ。
飛ばし飛ばしで社会貢献がどうにかのところまではきたが、
「さ、このとおり、社会貢献で俺が儲かる。買ったやつは騙されてみんな損する。」
「おい、兄貴、配信止まってねぇぞ」
「え、えああ。驚くことはない、ほら、冊子を買えば、ほらほら中身を見てみろ。この金色の冊子を。」
「あ、兄貴中身は白紙だぞ。まずいまずいまずい」
サクラの男も酔いが覚めて脂汗まみれになっていく。生放送の中で炎上も炎上。
詐欺だ。ふざけるな。返金しろなど怒号の合唱
「へへへ、大丈夫大丈夫。へへへへへ。ほら金の冊子。こっちは・・・外国人の写真・・誰だっけこいつ?」
「兄貴、それはフリー素材だから知るわけないよ」
冊子売りの方もごまかし聞かずで脂汗が垂れる垂れる。
「今度はそう。SDGS、SDGS…えっとサステナブル、……今度こそ……フヘヘ視聴者の皆さん」
どうした。ついに壊れたか。詐欺商材屋め。
「視聴者の皆さんの中に炎上の火消し屋はいないか」
居酒屋で披露する宴会芸。不定期連載でござい。