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無法者の詩  作者: 唯の屍
9/14

第九話「巨神の魂動」

その日、蒼空を覆わんばかりの群体の群が、その場限りの邂逅を果たし、


新緑の緑に包まれた、ギアナ高地の景色の中で、


それは起こる。


次々と空中から投下され、スラスターの灯を放ちながら、激震を巻きちらし、


一対の巨人が迫る。


その手掌から放たれる拡散する粒子砲が、翳る影で染めて、光が墜ちる。


大地の岩盤による防御を焼き散らし、溶鉱炉へと変え、放たれた。その光景を迎え撃つべく、一機の機影が立ちはだかる。


既に僚機の姿は消え去り、機体の身長にも達する程の大きさの


強大な工具を構え、男は、手にフィットする操縦桿を握り込み。


後退して視界の端から消えていく。ディエムと、白銀の機体色を眺め。


今まで見た事も無いその機影を見送り、吠える。


「この状況では...エンコードが使えない...」


だが...。内部のコンソールには、敵機の機体名を指示す表記が踊る


...


《■■■■■》


その対象の機影から、その正体をそれまで封印されていたデーターベースが解放され其の名とその機能が露わになる。


それを確認しつつ、それでも、俺は叫ぶ。


「エンコード...《バラッド・オブ・ザ・デスペラード》...《一葉灼伏》…20%。」


その変形機構が露わになる瞬間に...一斉にそれが起動される。


機体内部に搭載されたジェネレーター内部で、それは熾る。


中央部に鎮座する。赤黒い表皮を備えた樹木に向かい。内部から伸びる


マニュピレーターが起動、その腕部で、樹木の一部を切り取ると、


樹皮から流れ出る血の色に似た樹液を流し、心なしか痛みに耐えて叫ぶ声が響き渡る。


ジェネレータ内部のかつての文明で使用された蒸気機関の火室の様に、開閉する投入口が開き、手折った枝を放り込むと、


炉の灯によって、焚き付け、一気に貯蔵、放出される。その粒子量が爆発的に、推し広がって逝く。


...



...



...



朝のコーヒーを一杯飲み干し、一度の休息の後で、


俺は、部屋を出て、前日に決めていた。


クルーニー=ブルース特別顧問との打ち合わせに向かう。


基地内部の建物から覗く、岩盤をくり抜き作り出した空間に


嵌り込んだ窓ガラスから風景を見ると、殺風景な岩壁の中にも、光る苔の様なモノが


淡い光を放ち、その姿を楽しませる。


「さてと、やるべき事を俺はやるだけだ...」


打ち合わせ迄、小一時間余裕があるし、その前に、日課の作業をして置くか、と、


格納庫の愛機のメンテナンス用の《点検歩廊》(キャットウォーク)に昇ると、


担ぎあげた肥料を手に、コックピット内のハッチを開き、内部に存在する


補給口を開き、いつもの様にそれを注ぎ入れて行く…


確か、機内に残されたマニュアルには、ジェネレーターを継続可動させるには、


水を補充し、それが欠損した場合は、窒素:リン酸:カリウムをそれぞれの配合で混ぜ補充させるべし、と書かれており、


内部のコンソールに欠損率20%と、更には、予め設定していた操作をおこない、下肥しもごえ…有機肥料精製中の文字が踊る。


その表記を確認しつつ、作業を終えて、あとはいつもの様に修復されるのを待つばかりと、


待ち合わせの場所へと足早に走る。


時間にはギリギリ間に合い。待ち構えていたクルーニー=ブルース特別顧問との打ち合わせを再開する。


問題は既存の核融合炉で、奴らの《人喰い》カルニヴォルス (carnivorus)の技術を再現して、どうにか対抗できる思索を行う。


本来ならばこの場にいておかしくないコーディー=スルー上級技官は、依然として、奴らのダグザの釜に、固執して、今も、指揮を執るヴェニ=ヴィディキに、抗議をしているらしい。


今は、頼れないな...


遭ってからそれほど、時が経過して居ないが、何故かこの男、好感度が高い。色々根掘り葉掘り聞いてくるが、それは、アンザスに話すなよと釘を刺されてはいる。だが?何故だ?


(ふむ、戦闘データと映像のどれをとっても、この男の駆る機体性能がおかしい。その事に回りや本人すら気付いていない節がある。)


(ここは、どうにかその技術の一端を知らねば)


無表情のまま、その意を隠したまま。眼鏡を描けてやや、刈り上げられた短髪の男は、言葉を続ける。


そこに、《エンジェルフィッシュ》のメカニック要員から、見知った作業員、トゥルス=スミスが、訪れる。


やる気のない低い声で、「失礼します。」と、基地内の一室の会議室に入室し、その談話に参加する。


ややくせ毛気味の髪を無造作に束ねて、素肌に、オーバーオールを着込み、半裸や裸エプロンに近い、若干目のやり場がない服装ではあるが、膨らませたガムを噛みながら、ふむふむと、二人の会話に相槌を打っていく。


そこで、アイジェスは、予め持ち込んでいた、赤黒いインゴットの断片を取り出し、提示する。


「ん?それはなんだい?」


(これは深く話せはしないが...。)


「《黒曜鉄鋼》(ブラックライト)...。且つて地上に落下した《星屑鉄鋼》(スターダストダイト)の亜種ではあるが...これを炉心に組み込めば...」


「ひょっとしたら...。再現が出来るかもしれない。」


(まぁ、思いっきり嘘なんだが?ここはこの場にしかない。鉱物…インゴットは、レアな素材と偽ろう…でもとは…。)


「ほほぅ、それは一体何でしょうか?一旦預からせて頂いても?」


(《星屑鉄鋼》(スターダストダイト)のインゴット…確かに希少金属ではある。それを使用している機体は、ワンオフ機である…ヴィキティのみ何故それをこの男が持っている??)


疑問はあれど、有用そうなモノはなんでも使う。あとでその組成を調べれば...。


ふーん?あれは?何度か見た。ドン・キホーテが、武装を作る時に使用していたインゴットに似てるな?


それそんな名前の金属だったのか?


「良いんじゃないか?試しに試作品を作ってみたい。協力して貰っても良いかな?」


「それは構わない。技術的なその他の問題に関しては、後で詰めるとして、問題は素材にされた人々を元に戻す方法だが...」


...


...


...


議論は白熱し始めるも、その答えは出ず。その場は一時解散として、


次回の打ち合わせまでに、お互いに試作機を作成して進捗状況の確認をすることになる。



それから、数週間、無為に時間だけが過ぎるも、試作された動力炉は、想定していた出力を大幅に越え


その罪深き、その釜から放出される粒子と同様の物が出力できる動力炉の試作機が出来上がる。


便宜上、その粒子をグレフエフスキー粒子…рех (グレフ) - 「罪」や「過ち」を意味するその言葉を繋げて、


罪の息子を孕む、その子宮たる釜が完成する。


(一度、引きとった。インゴットを成分分析を行ったが、それは鉱物でも人由来でもない。化石化した樹木に似た成分を叩きだしている...)


(理由は不明だが、それが、隕石の落下あとから採取出来て、存在しているのであろう?)


(若干の疑問はあるモノの…)


試しに、敵の技術である。ビームシールドと直結させ、稼働可能の出力を確保できるかの試験を行う。


稼働は、問題なく実働し、まるで、何度も試験を行い。様々の問題を解決済みの様に、テスト稼働は問題なく終了する。


一先ず、その結果を元に、新機体の増産体制に入る。


三か月後…


...


...


...



幾度かの戦闘シュミレーション訓練をアイジェスは、アンザス、春幸らと共に


繰り返しながらも、工場での生産作業の手伝いに従事する



部品の削り出しやインゴットの生成に各種問題は存在したものの、素材を隕石由来の《星屑鉄鋼》(スターダストダイト)で、代用する事になる。


Carpe Diemカルペ・ディエム「今を生きよ」と、組織名と同様の名を冠した、新しき罪を産み出す機体が、


次々と、増産されて行く。


ディエムペルディディのV8気筒の頭部に更なるデザインの改修を行い。回転するロックボルトを備え、緊急用の排熱を行う為の湾曲したノズルを付け足し、覗き見るツインアイが、淡く輝る。


機体配色を薄緑色から、唐草からくさ亀甲きっこう模様を組み合わせた様な、独特の配色へと変更し、


各部を流線型から、角ばった装甲を所何処(ところどころ)と繋げて、幾何学模様の装甲による、更なる排熱機構を備えたモノへと換えると、


その機体の総数は、20機を越え、次のロールアウトも組み立て間近(まじか)となる。


基本武装は、ビームシールドに、実体弾を伴ったアタッチメントを各部に装着し、大型のビームライフルをジェネレーター直結させ、その出力調整も可能とする。


その威容は、何処かで見た、牙を模したそれに似ていた。


機動実験がてらに、基地内部の模擬戦場で、その機体性能のテストを行う。


強化されたスラスターから吹き上がる灯を各部のバーニアで急制動をかけ姿勢制御しながら、次々と、表示されて行く模擬用の目標に向かって、


出力を絞ったものの放たれる牙の一撃が、正確に射抜いて行く。


空中機動を逆さに描き、反転しながら、撃つその一撃の操縦桿の反応も上々で、乗り込んだ、イゴール=マッケンジーは、それまで乗っていたディエムペルディディと遜色ない動きを魅せる。

その機体に納得しつつ、今までの罪悪感から復帰る様に、その機体を奔らせる。


その光景を歯噛みする。コーディー=スルーは、爪を噛みながら、ブツブツと呟き。不穏な会話を行う


「私の…機体の方が...きっと…」髪を振り乱しながらも、懊悩するその姿を気付かないまま


ふと、増産されて行く戦力が自らの手を離れて、ゆくそれらの準備が完了するまで、手持ち無沙汰に苛まれる


アイジェスは、Carpe Diemカルペ・ディエムの本部が存在する。


ギアナ高地の地下都市で、一人、時間を潰していた。


作業は、その根幹となる素材の出元を隠すのに苦慮したものの今はまだ、問題が顕在化して居ない。


それならば、彼女を救出するまで誤魔化せればそれで良い。


そんな考えをしながら街を歩くその姿を遠くから眺めている人影が二つ。


「手はず通り、《慈聖体》を誘惑して確保するんだ。私は、もう一人の獲物を確保する。」


「あとは、離脱して、本体と合流する。」


(問題は、あの子供には、尻男が、始終、護る様に付き従ってる。さて、どうやってあの尻を引きはがそうか?)


「誘惑するって、一体どうすれば?」


(・д・)チッ


誘惑の仕方も分からないとは?


「そんなその身体を使えば良いだろ?男なんて誰でも同じだ。女が裸になって迫れば喰いつくだろう?」


「あとは、自分で考えな。」


そう吐き捨てる様に離れたその人物が、人塵に紛れて消え去る。


...


街の喧騒を抜けて、地下に流れる川面に向かって黄昏るアイジェスの視界に、


何故か、全裸の女性が、目の前で、水浴びし始める。


ふと、視線を上げて、コーヒーで一息付けようとして、含んだその甘味と苦味が混じるその液体を吹き出す。


なんで全裸なんだよ。


チラッチラっと、此方に向かって妖艶な姿を魅せるその彼女に向かい。


視線を外しながら、アイジェスが走り出す


(罹ったッ!!!でもこれどうなるの?)


頬を赤らめ、いやいやするその肩に、優しく何かが被せられる。


ん?


「おい、一体何を考えてやがる。そんな恰好で危ないぞ。早く服を着るんだッ!」


左右を見回すが、衣服の面影はなく。


あッ...。犬が、隠し置いていたガンベルトともに服を咥えてて視界の端に消えていく。


「うーん...仕方ねぇなぁ。ちょっと待ってろ、そこら辺の店で買ってくるからここでアンタは、隠れてろ。間違っても見つかるなよ?」


アイジェスは、激怒した。必ずあの恥辱の姿を隠さなければっと決意した。アイジェスには女性が身に着ける服も下着も、着ける化粧品の種類もなにも分からぬ。


アイジェスは、唯の朴念仁である。朝にコーヒーを一杯飲み、唄を聞き、友と遊んで暮らしてきた。けれど、人肌たいしては、人一倍敏感で合った。


結果揃えられた衣服は、唯の緑色のありふれたジャージと男性物のぶかぶかの下着だった。


これを着ろと?と、もっとどうにかならんかったのか?と思うも、このまま裸で居る訳にも行かず、蒼髪の女性はは、いそいそとそれを着込み始める。


一通りの衣服を身に着け、残っていた眼鏡を手に掛けて、しげしげとその男の姿を見る。


短く切り上げられた、淡い灰色がかった色の男の顔には、深く刻まれた傷痕が残る。しかし、その表情には、些かの翳りもなく


どうみても、むっつりスケベで下心がある様に見えるが、ずっと後ろを向いてこちらを観ない為、その表情が伺い知れない。


「もう着たか?」


「ん?うん...ありがと。」


とりあえず何かを話さねばならぬが、何も思いつかない。


なんとか誘い出して、仲間と合流し捕えねば...だが、持っていた銃も失い。無手でこの男を捕らえるにはいささか無理がある。


でも、ふと思う。なんか臭くない?匂いがしない。《慈聖体》であるはずのこの男から、あの戦場で対峙した時のような、咽返るような雄の匂いがしない?


なんでだろう?


「まぁ、なんだ災難だったな。財布も無いだろうし、家まで送るぞ。」


まぁ、それぐらいしか出来ないからな。


ン~?!


「折角だからデートでもしない?」


小首をかしげて、めいいっぱい努力して可愛く見える様に振舞い。舌を出してウィンクをして、顔の表情の前に


横に倒したピースを掲げる。


ん?


「冗談だろ?おっさんを揶揄うもんじゃないよ。本気にしたら困るだろ?そうだなぁ、折角だし飯ぐらい喰っていくか。あとは、家まで送る。それでさよならだ。」


えっ?何故か毛ほども、引っかからない。自分で言うのもなんだが、自分の容姿については分かってる。女性にすれば、それなりの容姿を誇っている私に対して


まるで興味がないそぶりを見せるこの男に、憤慨しつつ、この男の事が気になる。


何故、私の誘惑に気付かない?!


夜の街をゆったりとしたジャージに身を包み、残っていた靴を履いて、一緒に歩く。


さりげなく道の道路側を歩き、とぼとぼと歩く私の歩調に併せて、ゆっくり歩きながら、ちょくちょく、此方の心配をしてくるその男の表情に、


ハッとして、頬を赤らめる。ん何故?


靴をつっかけながら歩く、私は、どうしてこの男と歩いてるだけで、多幸感に包まれる。


私が生まれてから、さほど時間は経過して居ない。当然男女の機微など分からないし、そもそも我ら《クピドレス》は、生殖を行わない。


全て、有機処理した。ラボにより、遺伝子配列情報を元に、産み出される。


故に、家族という概念も存在し無い。それでも何故かこの男の背中を見ると、胸に温かい何かが...


首をブンブンと振りながら、邪念を払う。こいつは、大西洋での戦いで、私以外の仲間を無惨に殺した。あの非情な人物だ。


あの光景は、今でも脳裏に焼き付いて離れない。いた場所が違えばあれは私の運命だったかもしれない。


影で何を考えているのか分からない。


「なぁ、あんた?いや、名前は良いや。とりあえず、何か喰いたいモノはあるのか?地球には初めて着た所為で、此処で喰えるもんは大体旨いからな、お勧めはあるか?」


ンん


「…特にない」


私も、有機処理された食事しか、知らない。


仲間達はその餌を貪るように喰らう。それでいて、まるで尽きない欲望に突き動かされるかの様に、奪い合う。


だが、私は、何故かそれが好きじゃない。きっと、この地上の食事も大したものではないのだろう?


...


...


...


はもはもと、ハムスターが頬袋にひまわりの種を詰め込む様に、その米と言うらしき食べ物を、かき込み、そして咀嚼する。


「なんか気に入ったみたいだな?もしかして、腹が減ってたのか?食べさせ甲斐があるな。」


と、最近お気に入りのチャイ。スパイスを加えて甘く煮出したミルクティー(紅茶)を飲みながら、一心不乱に食べるその姿を見守る。


そこは、街の中ほどの広場近くに存在する屋台街の仮設の一角に陣取り、次々と注文してきた品々を広げていく。


魯肉飯(ルーローハン)、たこ焼き、釜めし、串焼きに、お好み焼き、大きな鶏肉の唐揚げである鶏排ジーパイ


やや炭水化物が多い気がするが...申し訳程度に野菜も取って置こう。


揃えられた品を端から、はふはふとしながらその口腔に納め、その熱さに悶えながら、かぶりつき、


そして、咀嚼しながら答える


「ほいしぃー!!!!もっほ!」


「そうかそうか?」


まるで地球の料理に出会ったのが初めてな、子供達と同じ反応だなと、感じつつ、目を細めて其の食べる姿を眺め、


自らもその料理に手を付け始める。


目の前の女性がかぶりつく料理と同じ魯肉飯(ルーローハン)も自らも取りわけ、そのほろほろと、蕩ける豚肉を口の中で愉しみ。米で胃の中に流し込み


熱々のそれらの料理が冷めるまでもなく、そのすべてが二人の胃袋の中へと消えて行った。


丁度その頃、アンザスと春幸は、一人姿を消した。アイジェスの姿を探していた。


「ふむふむ、アイジェス殿は、どちらに行かれたのか?夕飯の時間に間に合わないなんって、お父さん許しませんッ!!」


まぁまぁ、と宥める春幸は、確かに、いつもは夕飯の時間には、戻って来てるのに、可笑しいなとは思うも、


「僕も渡したいものがあったんだよなぁ...」と、愚痴を漏らす。


あれから三ヶ月、遅々として進まぬ、状況にやきもきしつつも、


この地上に降りて、《人喰い》カルニヴォルス (carnivorus)の版図を調べた所、


その実、月を含めた宙の大半と、地球上の一部の地域がその勢力図に納められている事が判明。


更には戦力差が、物量的には未だ地上の地域を保有する。Carpe Diem(カルペ・ディエム)が勝っているとは言え、


新しい戦力を整えなければ、逆転の目が無い事実をまざまざと見せつけらる。


子供心に、そんなの関係ない。今すぐにでも飛び出したいという鬱屈した気持ちを抱えながらも、


何とか周りの大人たちに、宥められる。


この三ヶ月の間に、地上で起きていた戦闘に関する映像を見せられた。


それは、ほゞ一方的な蹂躙だった。そしてその時気付いた。あのおっさんが、その光景を眺めながら、


表情では動じない振りをしながらも、その握った手から血が滴り落ちる程の怒りと焦りを見せ、


そして、部屋で泣いていたことを...


なんで何も言わないんだ。


きっとそれには僕には分からない理由があるんだろう...ならば聞かない出おこう。


そう決めて、元気の無さそうなその男を励ませるようなモノは何かないかと、思い至った結果。


自分の持っている母さんが作ったおかしな詩シリーズのコピーデータを渡そうと用意して居たのが、数日前の事。


早く渡してあげたかったのだが...。


なにか忙しく働いていて、渡せずにいた。


「春幸殿?」


「ああ、アンザスさん。とりあえず、おっさんが行きそうな所探してみようぜ。」


そういって、二人そろって地下街に、自らも躍り出る。


その尻を尻目に、背後から近付く何者かが、その様子を伺っていたことに、誰も気付かなかった。


「うーん、ご飯時に、いないという事は?」きゅぴーん!!!「さては、アイジェス殿。買い食いしておるな?!」


と、最近お気に入りだって言ってた。チャイを出すお店や、この地下都市の中心地にある、有名な屋台街の一角に向かって、走り出す。


飯を片付け、満腹になって満足するも、自分の当初の目的から、大分離れている事に、はたと気づいて、


帰り道を促されるも、当ても無く歩き始める。


うーん、どうしたものか?機体を隠している場所までは、可成り離れてしまった。


少し離れて後ろ向きに歩き。


「うーん!もうちょっと付き合ってよ」と、何とか誤魔化してみるが、このまま何も起きなくても良いかなと思い始めた頃、


すれ違う人混みのなか、特徴的な尻を振る男の男尻が、視界の端に飛び込んでくる


ん?あれ?


「あっ青葉姉ちゃん?!なんで?地球に?!」


春幸が疑問顔のまま、淡い蒼く揺れるシャギーの掛かった長髪の女性に向かって話しかける。


それまで応対していたアイジェスは...


春幸の声により、目の前にいる女性が、かつてのL2コロニーアイリスの生き残りである事に気付く


何故、私の名前を知っている?!?咄嗟の事に、脱兎の如く逃げ去ろうとする。


その動きにその手を掴もうとするが、躱され、その反動で、体が流れる。


「おっさん!!!なんで捕まえて置かなかったんだよ?」


「それはこっちの台詞だ、さっきの女性、様子がおかしかったが、コロニーの生き残りなのか?」


強めの語気で話しかける、春幸にたいして、併せる様に語気を荒げて答える。


「そうだよ。隣に住んでた、青葉ねぇちゃんだよ。よく遊んで貰ったんだ。なんで地球に居るんだ?!?」


と、言葉の応酬を重ねつつ、その姿を追うべく走り始める。


地下都市内の人ゴミの中に、紛れこもうとするが、その特徴的な、蒼い髪を目印に二人は走る。


その後ろから?大量のお土産を抱えて身動きの取れないアンザスが?「…殿ぉ~?!」と、やや、情けない声が響き渡る。


何度かの路地を曲がり追いかけるが...その姿を、見失い…


突如、大音声の怒号が辺りに響き渡る。


見ると、軍警を引き連れて現れた。ヴェニ=ヴィディキが、その白んだ髭を摩りながら、


部下に捉えさせた。青髪の女性に向かい。詰問を始める。


「君はあれだね。ここの基地の住人ではないね。」


「言いがかりだッ離せ。」


「生憎と私は、この地下都市に住む住人の顔と名前を全て記憶している。新しく寄港した。面々の中には君は居なかった筈だ。」


「時に、大佐。見つかった機体は、確かに?《人喰い》カルニヴォルス (carnivorus)共の機体で間違いないな。」


「そうでごんす。データーベースと照合して、確認がとれておるでごんす。」


髭をひと撫でして、拳銃を取り出すとその銃底で、暴れる彼女の頭部を殴打し、


鈍い音が鳴り響き、倒れた蒼髪の間から赤い血が流れる。


「ふむ、《人喰い》カルニヴォルス (carnivorus)でも血の色は同じか?どうせなら血も蒼ければ...。な?」


「連れて行け、銃殺にする。《人喰い》は全て敵だ。一切の呵責なく処断する。」


そう言って、引き上げようとする、最中に、春幸は、抗議の声を上げる。


「青葉ねぇちゃんをどうするつもりなんだ?!」


「ん?なにかね?君達は確か、軍の協力者たちだったな。何故知り合いだと断言できるのかね?」


朦朧とする意識の中で少女は、何故この子供は私の名前を知って居るのか?その疑問に答えが出ないまま


意識が途絶する。


...


...


...


「だから、何度も言ってるじゃないか?コロニーで一緒だった、生き残りだってッ!!!!」


「ふむ、残念ながら、明日処刑する事になる。」


「なんでッ?!」


「君達は知らぬことだとは思うが、今朝方発見された。偵察に来たと思われる敵の機体の側で、彼女の姿確認された。」


「それから我々はその人物を探しあて漸く突き止めた。」


「でも?!それなら!!!奴らに連れて来られたのかもしれないじゃん?!なんでだよ。」


一呼吸を置いて、髭を撫でつつ、告げる


「コロニーの住人で在ったとしても、敵の機体に乗っているという事であれば?奴らは人間として擬態し、昔から紛れ込んで居たのだろう?君達の旅路であっても、その予兆があったはずだ?」


脳裏に、母艦のエンジンや機体の不調に関する問題が頭を過ぎる。


「でも、青葉さんはそんな人じゃない!!!」


「決断は既に下された。この決定は覆らない。《人喰い》カルニヴォルス (carnivorus)は全て処断する。」


暴れてその老人に掴み掛かろうとするその背中からアイジェスが、両手で抑える。


「なんでだよ?おっさん邪魔すんな。母さんの居場所を知ってるかもしれないんだ?!」


必死に暴れる春幸を抑えて、アイジェスは、眼前の老人を睨みつける。


しかし、老人は、一歩も引かずに、軍警を引き連れ、彼女の身柄を確保しつつ、その場を撤収して行った。


去り行くその姿を二人と、一つの男尻は、唯、眺める事しか出来なかった。


...


...


...


数時間後、


移動する車内で、ボソボソ声で、ヴェニ=ヴィディキは、傍に控える大佐に確認を取る。


確かに、捕らえた女が機体に触れたら、コックピットのハッチが開いたのだな...


はぃ…確かに確認し、機体のデータも収集しましただが...。田舎者共が鹵獲した機体と違って


各種データーベースの類は無ぐ、目新しい情報は手に入らなかっただが...奴らの機体は生体認証を採用してただ。


そうか...ならば、あの時、パンドラの箱が開いたのは、偶然じゃない...あの男何者だ?


報告や戦闘記録から、《人喰い》カルニヴォルス (carnivorus)共と敵対している様だが、暫く泳がせておくか?


あの男が、新しい技術をもたらしたとは、報告を受けている。何か仕込まれて居ないか?監視の目を緩めるな。


《監視者》を着けて、疑わしい動きをみせるならば、《銃殺》だ。


《人喰い》カルニヴォルス (carnivorus)共はすべからく、殺し尽くさねばならぬ。


...


...


...


地下都市の中心市から程なく離れた。母艦が寄港する港を備えた基地まで戻った。三人は、蒼髪の女性、春幸が言う所の青葉(あおば)(みのる)の身柄の場所をそれとなく探り始める


「うーん、隊長も詳しい場所は、分からないみたいでござる。」


なにか手がかりになるようなモノは、微かに鼻孔を(くすぐ)る甘い香り...。これは確かどこかで嗅いだ覚えがある。


アイジェスは、思い立った様に、その匂いを辿って、基地内の重要区画の探りを入れ始める。


ん?なにか視線を感じる。と、此処は私が、人肌脱ぎましょうと、アンザスは、徐に、ズボンをはだけさせると


ふんどし一丁になると、


男尻と男尻、二人重ねて男尻遭い。それでも僕らは尻愛じゃない。ブツブツと呟き、グルグルと腕を左右に回しながら腰をふり、


愉快な軽快なダンスを踊りを舞い始める。


その動きに魅せられた《監視者》は、その尻の動きに目を奪われ、写真撮影をするべくファインダーを覗く。


その間に、ささっと手で、二人を此処は拙者に任せて、とばかりに合図を送ると、サムズアップしながら、三人を監視している人影に向かってアピールを行う。


その隙に、アイジェスと春幸は、施設の内部に入り込み、進む。


港に併設された基地内では、一応、関係者でもあり、入り口のチェックは通れたが...。一部区画には、入り込めない場所がある。


目的地は、その先にある...。



どうやってこの場所を、抜ければ良いのか?思い悩むが、答えは出ず。


「なぁ?おっさん、青葉姉ちゃんの場所、本当に分かるのか?」


「嗚呼、微かに甘い香りが続いてる...。」だが、検問を抜ける方法が思いつかない...。デスペラードで奇襲をかけるか?いやそんな事をしたら…


軍隊を敵に回すことになる...ほかの方法を考えねば。と、ブツブツと小声で話し始めるが


(甘い香り…そうか、この匂いを辿れば良いんだ?)


よし、春幸!一先ず、船に戻るぞ?と、振り返ると春幸の姿が消えていた。


ん?


少し目を離した瞬間威何所に行ったんだ?????


少年は、既に走っていた。迸る情念を胸に、《エンゼルフィッシュ》内に格納されていた。旧式機となった。実体兵器を装填され、鎮座されていた


機体に乗り込むと、操縦桿とフットペダルを踏み込み、メンテナンスデッキのロックを無理やり外すと、


その異音と、格納庫の隔壁を抜き去ったビーム状の刃で切り拓き、外に一気に飛び出した。


「青葉姉ちゃん今行くよッ!!!」


向かう先はこの匂いがする方向。


突如基地内に出没した。許可も無く出撃したそれに対して、スクランブルが掛かる。


「なんだ?なんだ?あの機体?誰が操縦してる。」


ぎこちない挙動の侭、スラスターを吹かせて、跳びあがり、今にも岩壁の天井にぶつかりそうになりつつ、


目的地の場所に辿り着く。


基地内の南にある一区画の奥の建物に向かい。匂いと感じる感覚を頼りに、取りつくと、機体の腕部を動かし


建物の壁に大穴を作り出す。


建物各部に備え付けられた。砲座から、春幸が乗るディエムに向かい。反撃の射撃が降り注ぐ、その一撃を標準装備されているシールドで防ぎ。


(人は殺さない様に...。青葉姉ちゃんだけを...。)


肉を打つ音が鳴り響く、拳が舞い。椅子に括りつけらえたまま、殴打を受ける女性の苦鳴の声が漏れる。


さらに撃ち抜こうとする拳を振り上げた瞬間。


そのと格子が嵌められた窓に、ディエムのその頭部がこんにちわする。


Σ(・ω・ノ)ノ!


突如あらわれた機影に驚きつつ、伸びるマニュピレーターで、弱装状態のビーム刃を駆使して、壁面を大きく切り開き、


壁を崩しつつ器用に手を伸ばすと、慌てふためく軍人たちを他所に、椅子に固定された彼女を攫って行く。


「悪いね。軍人さん、この人は貰って行くね。」


さて、と、これから一体どうしようか?


基地中では、緊急事態を知らせる。サイレント、次々と出撃していくディエムの機影を確認し、


ビームライフルを手に応戦の構えを取った所に、


別の場所から、敵襲を知らせる。警報が鳴り響く。地下都市の住人たちは飛び起きて、次々と備え付けのシェルターへと駆け込み始めるも、


暗く白み始めた夜空を埋める様に、瞬く星の光に交じり、スラスターが点る、光りが、天の川の如く流れ出る。


「一体何事だ?!」そう叫ぶ、将軍に向かい。将校の一人が報告の声を上げる。


「敵が攻めてきました!!!敵味方識別コードを確認その数...。数百機。しかもその数は依然と増え続けています。」


(・д・)チッ


準備が間に合わなかったか?


「出せる機体は全て出せ。私も出るぞッ!!!!!準備しろ。《ヴィキティ》を出す準備を!!!」


向かい撃つべく展開される僚機達は、絶対の物量差に、若干の慄きを感じるも、


地上では荘厳な風景を見せる。広大な大森林と立ち並ぶテーブルマウンテン(テプイ)に、その山頂から流れ出る、落差数百メートルの滝


それぞれがそれぞれの自然の姿を魅せつけ、標高数千メートルの山頂に紛れて、


地下に存在する空洞にある地下都市に向かって進軍してくる敵影を


無数のディエム達が、応戦しようと、轡を並べて、待ち構えるも...その絶対的な総数に阻まれ、


一気に戦線が崩れ去る。


...



...



...




春幸が駆るディエムは、敗走する僚機を見送りながら、青葉を地上に降ろすと、独り、大軍に向かって、獲物を構えて引鉄を引くも、


その行為は、無為に終わる。


其処に一騎の白銀の特徴的なボディーの機体が空を飛翔し、現れる。


「何をやっとるがッ!!!誰が操縦しとる。子供が引き金を引くなッ!!!」


飛翔する機影が、戦場を真一文字に、突き進み、その両手に持った光り輝く、刀身を魅せる実体剣を抱え飛び込むと、


台地に広がる水面に、その影が月夜に照らされ映し出される。その軌道は、剛直一閃、


巻き込まれた敵影が、真っ二つに立たれ、水面に落下し、内蔵しているジェネレーターが誘爆、爆裂と共に、水柱を上げ、機体が爆散する。


なんだあれは?


と、戦う間もなく霧散した僚機達が、希望の目を向けて、その姿を仰ぎ見る。


「閣下の《ヴィキティ》だ?!かつて《調停者》が、もたらした一機…勝てる、勝てるぞ、まだ、負けてないぞ。」


ッと勢い込んで振り返ったディエムの機影が、放射される光りの奔流に巻き込まれ、


電子殻チタン合金セラミック複合材の装甲が飴細工の如く、融解、コックピット毎巻き込み爆散する。


あわや、巻き込まれた友軍機が末期の叫びをあげるかの様に、子供を孕みそして出産す。


おめでとうございます。大きな女の子です。と喜びの声を上げつつ寸前のところで、スプーマを吐き出し、爆散する


「クソ―ッやっぱり駄目だ。逃げろー!!!」


ヴィキティを駆る。ヴェニ=ヴィディキは、絶対の不利を推して、振るう獲物の冴えは衰えず。


放射状に一斉に放たれる無数の光の雨。


ビームライフルから放たれるその連射を機体を捻りながら噴出するスラスターの勢いのまま、回避、そして、応撃、


機体後部に備え付けられた。副腕状の射撃武器から放たれた銀劫が、一閃、瞬く間に撃ち落とし敵陣に大きな空白を産み出す


爆散する光の中、闇夜に照らし出されたその機影は、全体的に、空気抵抗を極力減らしたかのような流線型に、鋭く伸びたバイザーから見える


ツインアイに、流線型の盾と実体剣を両腕に装備し、大型のスラスター内蔵の滑空翼に副腕を備えた、


空を逝く、天使に似たフォルムの機影が踊る。


そして両手の獲物で、また一体と敵のデータベースから判断しグヤスクトゥスと呼称される機体を叩き伏せる。


(・д・)チッ


雑魚はたいした事がないが、何せ、数が多い。


新造のカルペ・ディエムが二十数機、出撃する間の時間を稼げれば…


各機で(おおよ)そ20機程度墜とせばよいッ!!!まだ我らは負けて居ないぞ?!


データーベースと、敵味方識別コードを確認し、敵機の全容の其れを把握しようと、

内蔵するシステムをフル稼働し、敵機の所在及び、その機種を特定していく


グヤスクトゥス、ササボンサム、アベレ、アケファロス、ファーマ、《傾城魚》(チンチェンユー)、《マンティコレ(獅子型)》、《サテュラル(虎型)》etc


今まで遭遇した機体の内、何処かで見たような機影の数々を確認し、


流石に多いな...と尻込みするかに見えた。


だが、ヴェニ=ヴィディキは、乗機に掛けられていた。武装ロックを外し、外形部に備わったロックボルトが、解放。


排熱機構のノズルが各部から現出し、そして、振るう様に天高く伸ばしたその切っ先を、真一文字に振り払うと


同時にその機構を解放する。


コックピット内のコンソールには...《Pyrolysis Edge(パイロリシスエッジ)》の表記が踊る。


虹色の炎を纏った、熱分解の一撃が、戦場を横断し、直撃若しくは機体を掠めた敵機をその膨大な熱量で、


罪深きその装甲を焼き散らし、燃やし尽くし、コックピットシートと共に、蒸発した。パイロット達の断末魔を残し、


空中で霧散し、その威が途絶える。


えッ?なんでおっさんの機体と同じ攻撃を?なんで?春幸は、引き金を引くことを止められるも、機体を操縦しながら飛来してくる、


光りの粒子の流れ弾を器用に、機体を傾け回避し、その光景に見惚れる。


放出した熱量の余熱により、オーバーヒート。次射までのタイムラグをどうにか乗り切る為、冷却機構をフル稼働し、余熱を逃がしながら


己も逃げの一手にでる。背面の副腕から伸びる砲身を稼働させ、周囲を取り囲もうと接近してくる。敵機に向かい牽制を入れ、


空中機動を行えず、パラシュートと、バーニア―の噴出による推力で、落下スピードを殺し地上に降り注ぐグヤスクトゥス、アケファロス、ファーマらは、


落ちる木の葉の如く、着地する。対応は逃げ惑う地上部隊に任せ、


更には、空中機動を可能とするササボンサム、アベレ、《傾城魚》(チンチェンユー)、《マンティコレ(獅子型)》、《サテュラル(虎型)》の一団に向かい、足を常に止めず、奔る様に空を舞うも、


展開される敵武装の雨あられが、降り注ぎ、《ヴィキティ》が回避運動した、後に、背後の山が、森が、川が、その光の余熱を浴びて赤熱化、燃え、砕け、


大地に硝子とマグマの領域を形成し始める。


《マンティコレ(獅子型)》と《サテュラル(虎型)》の四機が、空中で挟み込む様に、お互いの射線を交差させ、逃げ道を防ぐかの様に、


テールユニットを起動。


機体推進がやや弱い為地上戦では使用できない【falcisファルキス】による、オールレンジ攻撃を捨て、レーザーを発振させる《ヴェノムレイン》を連続照射、


振るう光の刃となったそれが、逃げ場を失くし、飛翔する。大鷲の翼へと降り注ぐ。


命中する。


その瞬間に。機体の輪郭がブレ、急制動を掛けると、通常の飛翔体では不可能な、機動を描き、身を捩りながら、僅かに生じた隙間に


機体を滑らせると、光の毒針の放つ一機に、一気に取り憑くと、振るう斬撃で《サテュラル(虎型)》の武装と斬り合い、そして追いかける様に


飛来した毒針の接近を察知して、宙返り。


《ヴィキティ》が回避軌道をとった所為で、其れ迄切り結んでいた機体にそれが着弾。


「嗚呼、逝…く」


ジェネレーターを誘爆しながら、死の恍惚たる表情を浮かべ、絶頂を迎え昇天、閃光でパイロットスーツのフェイスシールドが割れ、その表情が隠れた瞬間、


《人喰い》がまた一人、光の泡となって消え去っていく。


単独での戦闘に関わらず、敵を翻弄し、遠くから照射されるササボンサムの砲撃すら、躱し、そして応撃の銀劫により叩き落す。


相対するアベレとその遠隔起動する。《falcisファルキス》の近似値たる機能を有し…そのスカートを履いた女性の様なフォルムの機影が、僚機と思われる機体を引き連れ、


現れる。何するものぞと、リチャージを終えた剣戟を叩き込もうと操縦桿を倒そうとした瞬間。


全通信チャンネルで、その声が、届く。


「嫌だ。嫌だ。なんで戦場に?動かない。僕には、動かせないんだ。撃たないで。」


「なんだと?子供か?なぜそこに載ってる。」


「訳が分からないよ。UNOWNに掴まったと思ったら、こんな所に押し込められて、おうちに帰して。おしっこ漏れちゃう><」


(・д・)チッ


放射状に放たれる。ビームライフルの一撃を回避し、向かってくるビームラムの一撃を回避して、反射で放たれるその撃閃を、寸前で止め。


苦鳴を漏らす。


コンソールパネル上で敵機のデーターが照会され表示される。その機体は《falcisファルキス》という思考砲台を小型砲台では無く、機体そのモノに反映し遠隔操作できる…


つまりは...


「クッソ、奴等人間の盾を使いやがる。」


老兵は、攻め手を欠いて、回避一辺倒になり、《ヴィキティ》を追いすがる機影を引きはがしながら...戦場の趨勢を推し図る。


その戦闘状況を眺める機影が一柱…


戦闘が始まり、春幸の捜索を切り上げ、《エンゼルフィッシュ》に格納している乗機に向かう。


同じく、騒ぎを聞きつけ現れたアンザスと合流。


当初、隔壁が破られている光景に驚くも...脳裏で、まさか?春幸か?


格納庫内では大騒ぎになっており、人が右往左往する中


「拙者は、ロールアウト中の新型に乗り込むでござる。アイジェス氏は、一足先に戦場へ。」


「分かってる。墜とされるなよ?」


「それはこっちの台詞でござる!!!」


《点検歩廊》(キャットウォーク)に登ると、コックピットを開き、乗り込むと、


メンテナンスドックのロックボルトを解放。


「どいてくれッ!ドン・ホーテは、迎撃に出るぞ!!!!」


ガシャガチャと、反響する金属音を奏でながらも、破れた隔壁から抜け出し、地下都市内部の通路を、スラスターを吹かせて、飛翔し、


地上へ出る出入り口を探し、何重にも封鎖されている筈の隔壁が、開いている道を通り、地上へと抜けていく。


戦場では、《ヴィキティ》を駆るヴェニ=ヴィディキは、勝利への道筋を探っていた。


目の前に残っているのは、敗走する友軍機と、子供が自分を覗き戦場で唯一人、残っている。


そして自らが戦線を維持するよりもこの場を放棄しての、撤退戦へ移行することを決断し、


最大出力による通信により、地下都市および、基地内の全住民、人員の退避行動を通告。


そして...更なるダメ押しが、戦場へと迫る


その日、蒼空を覆わんばかりの群体の群が、その場限りの邂逅を果たし、


新緑の緑に包まれた、ギアナ高地の景色の中で、


それは起こる。


次々と空中から投下され、スラスターの灯を放ちながら、激震を巻きちらし、


一対の巨人が迫る。


その手掌から放たれる拡散する粒子砲が、翳る影で染めて、光が墜ちる。


大地の岩盤による防御を焼き散らし、溶鉱炉へと変え、放たれた。その光景を迎え撃つべく、一機の機影が立ちはだかる。


既に僚機の姿は消え去り、機体の身長にも達する程の大きさの


強大な工具を構え、男は、手にフィットする操縦桿を握り込み。


後退して視界の端から消えていく。ディエムと、白銀の機体色を眺め。


今まで見た事も無いその機影を見送り、吠える。


「この状況では...エンコードが使えない...」


だが...。内部のコンソールには、敵機の機体名を指示す表記が踊る


...


《ヨートゥン》


その対象の機影から、その正体をそれまで封印されていたデーターベースが解放され

其の名とその機能が露わになる。


それを確認しつつ、それでも、俺は叫ぶ。


「エンコード...《バラッド・オブ・ザ・デスペラード》...《一葉灼伏》…20%。」


その変形機構が露わになる瞬間に...一斉にそれが起動される。


機体内部に搭載されたジェネレーター内部で、それは熾る。


中央部に鎮座する。赤黒い表皮を備えた樹木に向かい。内部から伸びる


マニュピレーターが起動、その腕部で、樹木の一部を切り取ると、


樹皮から流れ出る血の色に似た樹液を流し、心なしか痛みに耐えて叫ぶ声が響き渡る。


ジェネレータ内部のかつての文明で使用された蒸気機関の火室の様に、開閉する投入口が開き、手折った枝を放り込むと、


炉の灯によって、焚き付け、一気に貯蔵、放出される。その粒子量が爆発的に、推し広がって逝く。


音声認識による識別により、使用者権限を確認。コックピット内部では、身体の各部を飛び出したアームや、拘束具により、パイロットの手足を固定、円筒状に包み込むのと同時に、機体の外部のバイザーや各種部位内蔵されるロックボルトが解放。


長方形のバイザーが上に上がり、それまで隠れていたはずのツインアイが露出。鬼の角の様に伸びバイザーから突き出されたそのアンテナの一部が枝葉となって発光しながら、その威容を魅せる。



そして、覗く、線型は鋭く無骨で且つシャープな主顔おもがおの景観から分解解放を繰り返すその面差しは、まるで牙剥く鬼の口腔を覗かせ、最後に後頭部から、一本のブレードアンテナが迫り出して、三本ツノとなり、其れまで、マニュピレーターと思われていた。


肩、腕、脚、背面にそれぞれ設置されている。隠し腕の内、腕部と肩部のマニュピレータと、バックパックの背面全体に刻まれる、其れまで隠れいてたツインアイの鬼の形相の面が顕れ、そして、2本の腕と脚部には基部に隠れた鬼が踊り、腕部のマニュピレータが可変したアームカバーと、独立機構のレッグーカバーとなるその機構にも鬼の面が顕われる。都合、八つの顔と、六本の腕、偽装されていてそれらが開放され、異形へと変形・変身、いや、変態する。


何かを語るように其の不思議な表情を垣間見せるその機体は、八面六臂の修羅と為らん。喩え、戦場の華として散ろうが俺は逝く。


人を盾にする様な、奴等に、降す慈悲は無い。


機体の各部が、紺鼠こんねず色の機体色から、三色の鮮やかなのトリコロールカラーへとその表情が変わると、

各部の放出孔から射出する光劫を魅せる光が、衝撃が、上下左右を逆転したまま、跳ねる様に飛ぶ。


逃避する《ヴキティ》に追いすがる様に迫るアベレの人間の盾を保持した。人型の機体で思考操作される数体が、


相打ち覚悟で三方向から迫る。


迎え撃つデスペラードの、目新しい装備している武装と言えば...その両手に持った大型のペンチ型の工具に、


機体各部、胸部、肩部に納められた、電磁加速砲式の単銃身のマシンキャノンに、実体弾を備えたアタッチメント、


銃口を向けて牽制の数射を行うも、意に帰さず接近し、外れた弾体が加速しつつも飛翔。


後方の《傾城魚》(チンチェンユー)が構えるオービットマインに直撃し、破砕音と立てながら、その衝撃で撃ち墜とす。


「おい、その機体にのは、貴様等の仲間の子供だぞ?墜とせるものならその手を血に染めて墜としててみろッ!」


全チャンネルで通信を行い、その声が確かにアイジェスの耳にも届く


(・д・)チッ


「だから、どうした?それが俺に関係あるのか?それは人を盾にしたお前らが負うべき咎だ。俺の罪じゃねえ。」


「それにこの手は既に血に塗れている。」


だから俺がするべきことはただ一つだけ、目の前の敵を駆逐するだけだ。


...



...



...



(ことごとく凍えて、その姿を覆い隠せ。《ニヴルヘイム(霧の国)》...起動…」


機体各部から、放たれる高密度の粒子が霧状に噴出し、結晶化された氷状に形成された戦場を覆わんばかりに


氷霧の氷壁となり、放出されるダイアモンドダストが、前方から一斉に放たれる。逃げ場が何処にもないほどの、粒子の雨が、キラキラと光る氷の幾何学模様の構造体が


光りの屈折を利用して、その効果を霧散させる。


深い霧の中で、目標を喪ったモノの直前の目標位置を目指して直進してくる機影に向かって、金属製の工具が迫り、その咢を閉じ


機体のフレームごと噛みつきその存在を掴み取り、破砕する。


絶叫する少年の声を聞きながら、漢は無心でその作業へと没頭する。


乱れるコックピット内で《FreezingBite(フリージングバイト)》の発動を知らせる。文字列が浮かぶ。


砕けたフレームが、コックピットブロックが、完全に砕ける前に、一瞬にして抉り取ると、逆さ状態の侭、蹴りを叩き込み、


残された機体を爆散させる。


霧に包まれ、その場に残されたのは、何かが炸裂する爆裂音のみ、その熱量も爆風も全て、0を越え、マイナスへと還り、分子運動を完全に止め、


範囲外の僚機達からはその光景が確認できていない。


肩部と背部のマニュピレーターを器用に使い分け、地面すれすれに飛翔しつつ、工具で挟み込んでいた、コックピットブロックを放出と同時に


放り投げ、次の獲物へと転進、今度はくるりと工具を片手に持ちながら敵機の一体に叩きつけ、その衝撃で、コックピット内部でエアバックが作動。


恐れ嘶きつつも空いた、マニュピレーターの一基を人間の盾とされた機体中央部にその手掌を突き入れると再びの《FreezingBite(フリージングバイト)》を発動


コックピットを抉り出し、その場に、氷結する霜柱を形成し、固定。返す刀で背後から忍び寄る機影に対して、別のマニュピレーターを稼働させ同様に、その基部を抉り取り、次々と無力化していく。


大多数の機影が、目標を見失い、放つ攻撃も、ダイアモンドダストが覆う領域により、無力化。


ビーム兵器が使用できないとみて、武装を実体弾へと切り替え思考誘導の実体弾の雨を放出するも、その狙いは、攪乱され、その目標は既に見失っていた。


放つ爆音と着弾する衝撃が、本来であれば友軍機である。《人喰い》カルニヴォルス (carnivorus)達に突き刺さり、戦場に火の華では無く、氷華となって散りゆく塵として次々と、破損した装甲を剥落し墜としていく。


...


...


...


目下の光景は霧とダイアモンドダストの粒子による攪乱で、視界が防がれなにも分からない。


分からないなりに各種センサー類を駆使して、奮戦する敵機を他所に、


Carpe Diemカルペ・ディエム


「今を生きよ」と冠したそれらの陣営は、ただただ、鳴り響く轟音と撤退&避難に


右往左往し、それでも何機かの新型機体の出撃準備に入る。


「将軍の安否はどうしたずら?!確認するだ!!!!」


「将軍機は健在。被弾無し。今は、無断出撃した。ディエム機と共に退避行動に入っています。」


しかし、何故戦場を翔け回り奮戦してたのに?撤退に?


「将軍より入電、敵が人の盾を使っている。無闇にデーターベース上で確認できた敵機体、呼称アベレにたいしては、撃墜するなとの厳命。」


「あ”-また将軍の悪い癖が出た...。かまわんずら、敵は墜とせ、後で誤射だったといい訳すればいい!!」


(どうにか?それで時間を稼げれば…がすが撤退まで安全に…)


「あっ…それが既に何機か、撃墜されているようです。」


ん?


「なんだ?誰だ?まだ戦っているのは?」


「最後に確認された一機は、敵味方識別コードでは...ええっとたしか…」


「コールサインは...ドンキ・ホーテです。」


...


...


...


時間は暫し、戻る。


春幸が、青葉を救出し、安全な地面に退避させ、


降り注いてくる敵機に向かってスラスターをめい一杯ふかし、、跳びあがった後の事。


既にその様子を望遠カメラで覗いていた敵機の一体が...


「大丈夫か...?どうやら潜入に失敗したのか?」


頭を振りながら、周りを見回し、友軍機の姿を眺め、自分が助かった事を把握した


蒼髪の少女は、答える


「いや...成功だ。確かに《慈聖体》の姿を一名確認している。」


(…あの人の事を報告…出来ない)


「ん?二名だと聞いているが?」


「いや、私が確認したのは一名だけだったよ。」


やや訝しみながらも周囲を見回し、安全を確認すると、


「まぁ、良い、(準慈聖体である。こやつがそう言っているのであれば...そうかもしれんな)貴公の新しい機体がそこまで来ている。今度は潜入任務ではない。破壊殲滅作戦だ。」


「機体を受領後、戦線に加わるべし、そこまでは某がエスコートする。」


機体各部から各種放熱弁を備えた、奇妙なその機体が、青葉の身柄を確保すると、


明後日の方向へと飛翔し消えて行った。


...


...


...


場面はところ変わって、一対の巨人が、その現場に投下され、その身長は、優に100m超える。


友軍機に促され。コックピットへと乗り込むと、操縦桿を握りつつ、一歩踏み出し、その衝撃で大地が揺れる。


その威容は、うず高い、巨大な城壁の尖塔にもにた姿、既存の機体を数十倍までに巨大化させた


様なその姿と、機体後部から、機体全面までに覆う様に展開された湾曲した大型の放熱フィンが


その手で包み込む様に、展開。


放出される粒子の波動を各部の砲口から、あらゆる方向へと、狙いを付けないまま放射


その狙いは、基地を内容する大地の岩盤に着弾すると大型のクレーターと、生じた熱で形成された

硝子片を残し、次第に削り取ろうとイオンが焼け着く匂いを残して一歩また一歩とその歩を進める。


すると前方で、何かがキラキラと光輝くその姿を目視する。


それが空気中に散布されていた氷の結晶であることに気付かないまま、狙いを付け(なが)らまんしんす。


それを知ってか知らずか?異句を唱えて、レコーダー内で鳴り響く聴きなれた。彼女の声による詩が聞こえる。


その声に、勇気を貰い。一機また一機と、機体の合間を飛翔しながらもすれ違いざまい


機体の重要箇所を抉り取りそして放棄する。


ジェネレーターを喪い、大地へと降下していく機影を見送りながらも、


霧の合間を抜けて飛来する。銃撃に対して、ランダム回避ならぬ。


敵機が放つ射線を読み切り、その銃口から飛び出すはずの閃光を寸前で


事も無げも無く回避し続ける、中空に泳ぐ機体に一撃を入れ、一撃離脱を繰り返す。


空中で、縦横無尽に跳ねる姿を目視出来ずに、狙いが付けられないまま射撃を繰り返し空中で


霧散を繰り返す。



地上で、目標としてこちらを捉えてくるグヤスクトゥス、アケファロス、ファーマの群体、と


空中を飛行しながら、包囲網を繋げ、迫る


ササボンサム、アベレ、《傾城魚》(チンチェンユー)、《マンティコレ(獅子型)》、《サテュラル(虎型)》は、粒子兵装は効果が薄く、実体弾もフレンドリーファイアーが誘発される為、


距離を詰めての接近戦と距離を詰めた交差戦闘(クロスコンバット)へと移行していく。


既に包囲網は完成している。あとは囲んで切り刻めばいい


地上のファーマ部隊が機体各部と口腔より、ワイヤーを一斉発射、


投網の如く飛来するが、機体前面に氷結された氷壁により、シャットアウト。その全てが無為に終わり、


遠間の距離からその特徴的な長い足を備え、長距離狙撃を繰り返すササボンサムの大口径ビームが

飛来するも同じく、拡散反射ディフューズリフレクションにより空中で霧散。


攻撃の手が喪われそれであればと、長足の基部を変形させ、巨大なビームクローを展開


接近戦を試みる僚機と共に追従し、


迎え討つ、デスペラードは、大型の工具を投擲、後方に控えて、自らの手足となる思考誘導機を


操り高みの見物を決め込むその機体に、回転する工具が迫る。迫る。迫る。


だがその単調な攻撃は寸前で回避され、明後日の方向へと進むが、寸前でその動きに


変化がみられる。


湾曲したその基部が、まるで何かに操られるかの様に回転、そのままの勢いで後方から舞い戻ると

人の盾に隠れるモノへと直撃する。


「なッ?何故?!!!」


一人でに圧壊が始まり、それぞれのモニターや基部が剥落し、徐々に壁が押し迫り、


ただただ、あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”っと叫びながらも、静止する時の中で、


死への恐怖により、失禁し、絶望を孕んだ言葉を産み出し、絶叫す。


爆裂する最中に、産まれた何かが、血と煙硝の香りに包まれ、圧搾された血と内蔵そして、

糞尿に塗れて果てる姿に、何の感慨も浮かばず、一言呟く。


「人形遊びならそこで一生して居ろ...」


空中で、二機の基部を抉り、光刃を振り上げ殴り掛かってくる機影を避けながら


漢は吠える。


「来たれ!!!!!!」


念じた瞬間に、《エンジェルフィッシュ》内に格納されていた。《HHB》の一揃いが、


ひとりでに起動。空いた格納庫の隔壁から外へと飛び出すと、


その距離を一気に詰めると、空中でその到来を待ち構えていた。


その手に収まり、ライフル型のその基部と、多目的溶断ビームナイフを接続すると、


銃口を引き絞り、収束した閃光のそれが放たれる


前方に展開されたダイアモンドダストの氷の凸レンズが、光の屈折・収束を繰り返し


何倍にも増幅されたその一撃が、接近してきた敵機を貫き、戦場に火の徒花を散す。


周囲に漂うダイヤモンドダストは、敵の粒子を霧散させるも、此方の攻撃を収束させ


一方的な、攻撃を繰り替えす。


どうにか接近戦に持ち込んだ《マンティコレ(獅子型)》と《サテュラル(虎型)》の二機が


虚空を描く三重螺旋の軌道描きながらも、互いの接近用武器を手に撃ち合いながら、


空を逝く。


《マンティコレ(獅子型)》が獅子を思わせる鬣の輪を白熱化させつつ駆動させ、すれ違いざまに、一撃を加えると、


応撃として氷撃の牙を以て、弾き返し、そして後方から追従してくる《サテュラル(虎型)》が、


その前腕に装備する、発振するビーム形成された爪を振るい。結晶部位と接触。


震える様に放たれた斬線が、重なりつつも霧散し、その刃が消失する。


(・д・)チッ防がれたッ?!


何故だ?何故奴に睨まれると...便意が...便意が止まらない...だ。


今にも産まれそうになるビックブラザーに膨れ上がるパイロットスーツの臀部に併せて、その軌道も止まらない。


銃架ユニットを一度構えた大型汎用シールドたる《HHB》へと突き入れると、内部で武装の切り替えが半自動的に行使され


その手に掴んだ獲物は...鎖の付いた鉄球


「クッソッこっちには人質が居るんだぞ?何故止まらない。」


こいつ一切の躊躇なく、アベレの誘導体を駆除してやがる。エアバックが飛び出し、


殴りつけられる衝撃で吐き出した、むせ返る汚物の匂いを吸入するヘルメットの作動音を耳で聞きながら、操縦桿を操作して、


機体に装備している、光り輝く刃を振るい。目標に向かって叩きつけるが...。


その一撃は、眼前の目標を崩す事無く、叩きつけた反作用で機体が暴れる。


汚物に塗れて死ぬなんぞ、なってなるモノか!!!


「ギュスターブ01、墜ちたバニップ02に代わり、バニップ01の直掩に入れ。」


「誘爆モードに設定したメリ(随伴機)を盾ごと、喰らわせてやれッ!!!」


「どうせ薪なんぞいくらで...」


そう言葉を吐き捨てようとした瞬間、特大の殺気が放出され、その口を止めると、


稼働限界まで加速した機影がすれ違いざまに、腕部を振るうと、噴出する獲物が


回転を駆けながら、直掩に入ろうとしたギュスターブ01に、直撃。


振るわれた物体はMSを人間のサイズで例えるのであればその大きさは少し大きめのサッカーボール大のそれが装備されているスラスターを吹かせて弾丸の如く直進し、


敵機に直撃した瞬間に、その球体に空いていた穴…何かの噴出孔から、光を放つ劫煤が噴出


敵機の装甲を融解しながらズタズタに斬り裂き、途中で流れて行ったコックピット内にその灯が入り込む。


あッッという声すら上げられないままその姿は、洗い流された染みの如くこの世から消滅し、


そして空中で爆散。


花火の様に散る。地上から退去しようと列を作って離れる人々は、その姿を見る事も無く


霧に包まれその爆音のみが、周囲に響き渡って居た。


「艦長、《R.I.P》を出さないんですか?」


オペレーターのマリア=アッカンバーグが具申するが、帰って来た答えは...


「分かってる。準備が出来次第、離陸してここを退去するが、避難民がまだ、半分も乗り込めていない。」


「出すぞ、新型を、準備が出来次第な?だがそれまで通常のディエムで対処するしかない。」


そこに通信で割り込んできたコーディー=スルーが意見を述べる


「ディエム ペルディディがあるだろ?あれならすぐ使える。」


「だが、出せんぞ。あれは封印処置を行う予定のもの。」


猛烈な声で講義の声を上げて物申す


「死んだら終わりなのだぞ?背に腹は代えられない出すべきだッ!!!」


(ここで活躍させれば...。将軍も考え直す筈、一番良いのは...。そうだ将軍が…すれば...)


などと、不穏な思考に耽溺する中、艦長のナンネン=ハイマンは、苦渋の決断を下す。


...


...


...


踏み出すペダルと思考に併せて、振り上げたその手が返されて、飛ぶ鉄球の勢いを殺さぬまま、


次の敵機に叩きつけ、切り刻み。そして反動で帰って来た鉄球に、蹴りで勢いを殺しそのまま敵に向かって


サッカーボールを蹴り込む様に、叩きつける。


その勢いの侭、敵機…が構えていた《傾城魚》(チンチェンユー)のオービットマインへと吸い込まれる様に直撃するが、


反動で、バランスを崩し、更なる一撃を繰り出す為に、再度の蹴り脚を叩き込む。


何度も繰り返す毎に敵機の防御が瓦解し同時に、機体の各部に装着された、小型レールガンの弾体による、


牽制で、今も尚、接近戦を仕掛けようと近付く、《マンティコレ(獅子型)》と《サテュラル(虎型)》に向かい叩き込むが、


応射の思考弾体に阻まれ、空中で多重の爆炎を巻き散らしながら、互いの一手が届かない。


中距離戦と接近戦の応酬のなかで、接近された場合不利になる可能性があるとして、再び、基部を《HHB》へと差し込み、


半自動的に獲物を選択。選ばれたのは...。


銃剣を備えた、大型のハンドガン…そこに発振する光剣を以て戦果に貢献するべしと、ばかりにスラスターを吹かせて上空に向かって斬り掛かってくる。


同時に三方向から同時攻撃に加え更に、跳躍したグヤスクトゥスの背後から、長足の基部を変形させ、巨大なビームクローを展開させたササボンサムが迫る。


十時方向から迫る《マンティコレ(獅子型)》が白熱化させ鬣の輪を大型シール…《HHB》で、防ぎ、二時側から迫る《サテュラル(虎型)》の爪を銃剣で防ぐ、


それでも各部のマニュピレータ―を操作し反撃に出ようとした瞬間に、機体頭部に向かって...グヤスクトゥスが光剣振るう。


その刃が無防備な、頭部へと直撃する瞬間に、


其の砲口が咆哮を上げる、電磁加速を開始。一瞬磁力により反発されるも再度加圧され、光り輝き擬似的に形成された電磁誘導のバレルが、大気の摩擦で燃え上がり、瞬光、瞬く間に撃発と伴に発射。白と黒の光の影を残して彼我の距離を一瞬で0として、音速の壁を何枚も一度にぶち破り轟音を立てながら、死角から向かってきたササボンサムに迫る。


背後に展開されていた機影の数々を一直線に射抜き、対象の弾体とされたパイロットは、絶命の声を上げる間もなく急激にかかるGにより、血煙状の何かに一瞬で加圧され、


そしてオービットマインで咄嗟に防御した友軍機を巻き添えに起爆。血と糞尿と臓物の匂いをその場に残して、沁みも残さず。此の世から消え去る


蒼空に一直線に一筆書きされた、哭断の断絶が敵の動揺を誘い。口々に、密集するなッと吠えるも、視界は防がれ、背後から迫る一対の巨象が放つ閃光が


虚像に、惑わされ敵機と見紛い。背後からのフレンドリーファイアーで、其の装甲が耐えきれず溶解する閃光に包まれ穿孔され、果て続ける。


次第にその数を減らすも、それでも依然としてその数は...残存している。


鍔迫り合いを行い拮抗する最中、急激に噴出する推進器の噴出を停止。


一気に、空気抵抗を受けながら落下していくデスペラードの動きに翻弄されて、攻撃が空振り、態勢を崩した対象に向かい。


一射ッと共に、今度は、機体に装填された弾体を使用しての超電磁砲を重ねて照射。


二条の閃光と共に果てる。叫び声を残して、収斂された粒子砲の一撃と共に、敵機のコックピットを正確に撃ち抜き、戦場の華を咲かせる。


舞う様に跳ねながら、地上と空中から迫る光の弾痕を雪片の結晶で防ぎ、周囲に対してダイヤモンドダストを放出。


それが陽光に照らし出されながら、さんざめく声を残して煌めきを湛え、光り輝く、その氷雪が、周囲を過度に冷却し、


居並ぶ、機影を対象として、次々と装甲が...。その罪深き、素材が次第に表面から剥離して行き、銃口が霜に包まれ、誘爆す。


...



...



...


繰り返される応酬の最中、再び火を上げて飛翔するアイジェスは、思考する《一葉灼伏》の効果時間まで、余裕があるも、未だ敵の数は多数…


逆転の一手が欲しい。


思考の最中に、跳びあがり敵機の頭上から接近し、そのまま脚部を利用して、踏みつけたと同時に解放される。


《FreezingBite(フリージングバイト)》が、また一機と、八艘飛びの要領で蹴り破りながら、対策を練るが...


この状況で新手が近付いてくる。牽制代わりに、機体各部のレールガン式のマシンキャノンを一斉発射。


大型の機体の敵機に向かって放射するが...。


弾体が直撃した瞬間、炸裂音をあげるも、その機影に些かの翳りが見えない...


《ヨートゥン》...。神話の霜の巨人と、同名のそれは...何が切っ掛けで解放されたのか分からないが、


データーベース上の表記により、その機能が露わになる。


機体各部に、六つの大型ジェネレーターを有し、多層構造のその機体装甲全てが、オービットマインと同質の装甲素材を使用…


更には、ビーム偏光フィールドを有し、物理と熱量兵器に対する絶対的な耐性を有する


武装は...。各部に搭載された大型の拡散粒子砲に、背面に備え付けられたバインダーによる。オールレンジ攻撃に、機体各部にマウントされている思考誘導式の実体弾。


そして、それぞれの巨人に固有装備されている各種機能の数々、


(・д・)チッ


レールガンの直撃でも...。屠る事は難しいかもしれない。


厄介だ...他の大容量の一撃が必要だ...しかも大型のジェネレーターを六基有するなら、エネルギー切れの撤退は、恐らくない。


脳裏に死が過ぎる。


くるくると、周囲を周回しながら、敵機を抉りながら戻って来た大型の工具を肩部のマニュピレーターで掴み取ると、


再度の投擲、敵を薙ぎ払いつつ飛翔するそれと共に、敵陣に向かって突撃を開始する。


降り注ぐ光の雨が、思考誘導の弾体を攪乱する氷雪、振り撒く、結晶の煌めきが、霧散、誘爆を繰り返すも


逆にこちらの一射は、氷の凸レンズ効果により、収束、収斂、集約させ、撃ち落とす。


高速の変則機動に邪魔な、《HHB》と銃剣を放り投げると、それらを随伴する《falcisファルキス》として、防御と攻撃を担わせ、


聞き惚れる。その詩を耳にして、自らも歌う。そして声に応える様にその答えを探し続ける。


さらに逆さに跳ねる様に、進む。機体すれすれに、大出力のビーム兵器が擦過傷を追わせようと余波が襲い来るが、


機体全面に、薄く広がる。障壁によりその余波を防ぎ切る。


向かう目標には...匂いがする…この甘く、仄かに懐かしい香りは...。


「青葉か?!なんでそこに居るんだ?」


(・д・)チッ、ニヴルヘイムの通信妨害で言葉が届かない?!一旦解除するか?嫌駄目だ。再度張り直している余裕はない。


接触回線で、直接語り掛けるしかない。


前進しながら、全身の砲口から、叫ぶように降り注ぐ光の照射を、時に盾で防ぎ、時に《falcisファルキス》の一射で撃ち落とす。


命中する寸前に、各マニュピレーターを展開して、その手のひらから、衝撃を伴う閃光を放ち、機動を変えて


高速機動を繰り返す。


それでも、敵の狙いは、此方に届き、機体各部の装甲が焼け、融解されるかに見えたが、展開する偏光フィールドが、耐えきれず焼失する


寸前に浮遊する《HHB》が、割り込みその一射を防ぎ切る。展開されたその盾が、一斉に降り注ぐ輝を守り切るモノの


展開した基部の最大放出により、力尽きる様に思考の接続が消え、落下していく。


(・д・)チッ


ダイアモンドダストの氷壁で、減衰してるのにこの威力かよ。と悪態を吐きながら、


データーベース状のデータでは、敵機…いや目標のコクピットは頭部に存在する。と、思い考え続ける。


ならば俺がすることは一つ、頭部の砲口へと拳を叩きつけ、その砲門を氷結する結晶で塞ぎ、


機体同士の接触による接触回線を試みる。


「青葉か?!なんでそこに居るんだ?俺だ、一緒に、飯を食ったおっさんだッ!!!答えろ!!!!」


機体に取り憑かれた衝撃で、コックピット内が上下に揺れ、視界も揺れる。思考の逆流により朦朧とした意識の中で、


その声が耳に届く?


蒼髪の少女は...「なんでおじさんが?私の名前を知っているの?」


その疑問を頭の中で振り払い。


「いや、そんな事どうでもいい。なんで逃げなかったの?!私は、クピドレス 。貴方を...。《慈聖体》である。貴方を捕らえに来た。」


それなのに...。


「なんで、戦場に来たの?逃げればよかったのに」


そのおかげで、捕まえなければいけなくなった。


「命令では...。死体でも構わないのよ?」


こないで...来ないで...来ないでよ...


「君が、そこに居る必要は無い。春幸も君の事を待ってる!!!この手を取れ」


「春幸って誰の事?私は知らない。」


何故、私の知らない私を知っているの????私の生まれた記憶は...数…で途切れている。


「君は、クピドレスに襲撃されたコロニーのアイリスで、暮らしていたはずだ?!思い出せ。」


【無駄な事は、辞めろ。さっさと止めを刺せ。敵は他にもいるぞ?】


(どうしてだ。何故、彼女は覚えていない?まさか洗脳か?記憶を消されているのか?)


互いに、思考が混濁し、交じり合う最中にそれでも互いに言葉を繋ぐ。


「知らない。知らない。私は、知らない。貴方の事も何も知らないのよ!!!!」


「離れて!!!!」


「青葉【諦めろ】ッ!!!!」


振りほどくように、腕部が振るわれ、寸前で回避し、高速機動に入り、敵機の様子を眺めながら


是から使う一手を考える。


敵機を撃墜しながらも、思考の誘導にのって迫る工具を両手で掴み取ると、


前面に構えつつも突撃の態勢へと入り、後部のマニュピレーターとスラスターを全開に、


肩部の盾でカバーしつつと推して参るるべしと、ばかりにその手を伸ばす。


咄嗟に、頭部の砲口から粒子砲を放とうとするも、氷の結晶により防がれた砲口が、暴発。


小規模の爆裂を起こして、不発する。


ちぃーッっと、操縦桿を操り、腕部の砲口を向けようとするが、その半瞬遅れた行動の隙に...。


【仕方ねぇな、協力してやる。思考を行動を合わせやがれ。】


腕部と接続された工具へと、冷気を放つその御手から、接合される経路を通り、呼び声に応えるかの様にそれの事象が起きる。


その一瞬の組み付く様に、工具のくわえ部を敵機の頭部を挟み込むと、同時に、《FreezingBite(フリージングバイト)》を発動…


冷気による金属剥離現象を元に、敵機の強靭な金属結合を緩め、


其の儘、機体各部の応力を最大限に稼働、そのまま基部を螺子切りながら、天上に向かって、掲げ、


その首を討ち取る。


コックピット内は、左右に振り回され徐々に機体の制動を抱える事も無く、次々と、メインモニターの画面が途絶して


絶対なる死をその身に、感じて、少女は震える。


死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死

死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死

死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死

死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死ぬ...。



閉じた眼を見開くと、視界一杯に、誰かの姿見が見える。


朦朧とする視界の中で、一言、言葉が...届き...意識が途絶える。

 

「大丈夫だよぁ【甘いな】」


...


...


...


空から降り注ぐ光のカーテンは、閉ざされた雲間から注ぎ、そして、


巨人の魂動は、鳴り響き、そして...に繋がる。


山麓に広がる霧は晴れ、其れ迄隠されていた光景が広がる。


戦場に一切の呵責なく、振るわれるその御手は、何者の手によるものか、


その日、人々は、荘厳なるその風景を目撃することになる。


光が、輝が、視界一杯に広がる。


周囲の光の導線が、一斉に集まり、中空に何かを形成し始める。


それは、巨大な...。


...


...


...



「《一葉灼伏...20%》《ヨトゥンヘイム (巨人の国)》…起動」



...



...


...


見せてやる。何故、この機体に鬼の面が付いているかのその意味を…


つづく



毎月、月末最終日に2話更新予定。


誤字脱字、誤りがあったら修正するので、教えてください。

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