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無法者の詩  作者: 唯の屍
7/14

第七話「難禍の渦中にて」


身動きが取れないまま、増加装甲や、砲身を焼かれ、防戦一方のアイジェスの元に、巨大な顎もつMAの一機が迫る。


発振する砲身を震わせ、至近距離から砲撃を加えるべく、


光が集まり、此方の攻撃が弾かれるるなかで、砲撃の光が、全てを覆い尽くして、その姿を唯の影へと還るべく振るわれる


その刹那の一瞬に...


「私の男尻は狂暴です!!!!」


テールユニットが瞬き、一筋の光の毒針が、其の砲身に照射され、絶死の瞬間に消え去るその防御をすり抜け


僅かに刻まれた牙状の砲身の一部が毒針に浸食…


マダを操作するコックピット内のコンソールにERRORを知らせる文字列が現れ、装甲を徐々に崩れさせ始める。



発射タイミングに、放たれた毒針により、砲身が崩れ、発振、共振する一撃の狙いが逸れ、明後日の方向へと消えていく


「アイジェス氏、助けにキターーーーーーーーーーーーーーーーでござる!!!」


Carpe Diem(カルペ・ディエム)の勢力圏内である地球の大地の上で、繰り広げられる。

続く襲撃に、この地上に《人喰い》カルニヴォルス (carnivorus)がいつの間にが

その支配権を広げつつあることを感じつつ


それでも降りかかる火の粉を払いながら、それでも我らは進む。

迫る危機に対応するべく、そろう二機の僚機の姿は、味方からは隠される。


(・д・)チッ


「砲身が殺れた?!!カエデス、2番機の砲身をパージしろッ、この反応は…」


一番機のルドゥス・アレアエは、指示を飛ばしながらも、失った砲身による戦力の低下を計算に入れつつ、


未だ本機の機能は停止して居ないとばかりに、其の方針を立てて、近付いてくる目標に向かって残りの砲身を向ける。


吹き上がるメインスラスターに火を入れながら、大容量のバックパックユニットに挟まれ、その一射を放った。毒針の様なその名状しがたいその形状は、


かつて、苦しめられたマンティコレが装備していたテールユニットに酷似していた。


それは、大小の球体状の躯体が、団子の串の様に一本のシャフトで接続され、中央部の一際大きな球体に、なにかの突起が複数見え特記すべきその異様な威容が垣間見える。


「それは...マンティコレのヴェノムレイン?!おのれ、貴様等、ダグザの釜以外にも我らの機体を流用したなッ?!」


抗議の声を上げるアイ=アシンを無視したまま


得意げな表情をして、二射を放つも、敵機の周辺に広がる。何らかしらのフィールドにより、その毒針の先端が、届かない。


(・д・)チッ


えっと、確か、コーディー=スルー上級技官の話では...


敵機の回収した機体の装備を同系統のジェネーターを使用するのであれば、流用できる筈。


素材も基部もそのまま使えば良い…


ただ問題なのは、録画した映像と回収した戦闘データ通りのあの分離稼働する。奴らが、【falcisファルキス】と呼称する。


思考で操る分離砲台は、何故かそのままでは使用できなかった...


ならばと...。と、ディエム ペルディディB型で、疑似的に再現させた。機能を代替えとして、機能させてみる。


但し、君の機体は、ハルズ=アルマイン機と、違って複座式じゃない。


えっそれじゃ、ダメじゃん。


いや、解決策はある。機体に補助用の演算ユニットを組み込めば…ただ、今回の出撃には間に合いそうにない…


だから...。


アンザスは、基部から伸びる増加ブースターと飛翔用の翼を取り付けられたテールユニットは、


操縦桿を掴んだアンザスの問いに答えるかのように、大きく弧を描きながら、敵へと肉薄しその毒針を突き立てようと飛翔する


予め幾つかのパターンを記憶させた軌道の元、実機の防御を四枚ある偏向機が備えられたシールドを以て防御を固めつつ


その場で出鱈目に操縦桿を倒し操作を開始。


相手の防御を縫う様に狙って放たれた毒針は、湾曲する長大なライフルから生じる光の障壁で、その攻撃が防がれ、


その機動は、精彩を欠き、ふらつきながらもどうにかその射線を遮るのみ


そこに出来た。隙に差し込む様にアイジェスは、構えたビームライフルで狙いを付けるが、その照準もブレる。


《HHB》・・・《Hand Hundred Babylons》(ハンドハンドレッドバビロンズ)の本体である。大型シールドを砲身にして放つ一撃は、


連射が利かず。再装填には、砲身が冷却されるまでの時間の猶予が生じる。


コンソールで、砲身の冷却迄のカウントが刻まれて行く、


その間にもあ、歪む視線の先で、互いに放った一撃が、交錯し、明後日の方向へと解き放たれる。


...。


...。


...。



「ええい、照準が...景色が歪む。邪魔だっ!マダの多重励起されたジェネレーターの副産物か?どおりで、宙間戦闘で、出撃させられなかった訳だ...これは...」


そんな状況を知ってか知らずか?


駆けつけたアンザスの視界も同じく歪む。


歪む景色の中で、照準が狙い付けなくとも...操縦を見誤り、砂地の大地に着地するも、予め起動していたオートバランサーの補正を最大にし、


どうにか着地すると、砂地に足を取られつつも、防御の檻を展開しつつ、


定められたパターンの元、あてずっぽうで、テールユニットの操作をおこなう。


合体したマダ以外の機体がそれぞれの砲身から、加速された粒子砲の一射を乱れ飛ばし、


防御の壁を削り取るべく連射される。


(。´・ω・)ん?にゃぁぁ?もしかして砲身を一つ潰したから、さっきの巨大な砲撃が出来ないのか?と、当りを付けて、


有線式のワイヤーに繋がれた【falcisファルキス】擬きが乱れ飛び、


放射される光の火線が、北進する最中、十二時方向から、此方を睨み続ける。マダに向かって飛来する。


されど、その照準はやや粗く、応撃する光の柱に阻まれ届かない。


そんな状況に置いて、冷却中の《HHB》を構えたまま。向かってくるマダの砲撃に対して、防御姿勢を崩さず、


揺れる視界振り切り、その試みを行うべく行動を開始する。


徐々にスラスターと、多数あるマニュピレーターを稼働させ、不安定な足場を《マグレブ》磁気浮上式低重力ホバーを稼働させて


後方へ滑る様に奔る。


「おい、《お調子者》(ストゥルティ)そのままで良い。動くなッ」


ふらふらと足元が危うくなりつつ滑る軌道まま、敵機の射線を回避しつつ、


自機の位置取りを行い…


脳内で響く、酷い二日酔いの様な、酩酊を。口ずさみ、古いレコーダーから響き渡る詩で掻き消す。


その手を紡ぐ。


狙う射線軸を慎重に合わせて、狙うはただ一つ...。


...


...


...


眼前に広がる二機の対象へと、降り注ぐ光の御柱を放ちつつ、4機のパイロットが各々に統制をとりながら、追い立てるその姿を酔った頭で、眺め…


その瞬間に気付いた時には、既に遅かった。


其之、直上へ誘導されたマダは、まだ戦えるぞと、放出する粒子を巻き散らしながら、不完全ながらの《天地併呑》(ウニヴェルスム・デヴォラーレ)の


準備体制へと入る。


目下の目標である。三本角に対して、一切の容赦なく、その天を覆わんばかりに飲み干そうとするその閃光が放たれようとした瞬間


明後日の方向へ放たれる蒼い光を視界の端に捉えつつ


「生け捕りなど生ぬるい。撃滅。殲滅。壊滅」こそが素晴らしき、ただ一つの事だと、吠え、そのトリガーを引き絞った瞬間にそれが起こる


それは、巨大な日の柱が、砂上の楼閣を崩さんばかりに、火の柱が昇る。


大地を横ぎるのではなく、直上に向かって吹上、その火は、マダの装甲に向かて、吹き上がり、丁度、《天地併呑》(ウニヴェルスム・デヴォラーレ)を放とうとして空いた防御フィールドらしきなにかに開いた穴に直撃する。


Σ(・ω・ノ)ノ!


一体何が?そう思い。目を見開く。其処には少し前に、アイジェスが、見たのは、


砂漠の大地に放棄された機雷が満載されていたラックに向かい迸る蒼い閃光と、炸裂する火柱の眩い光のみだった。


爆発による爆風により、拡散する粒子が吹き飛び、更には機体の制御を喪い、大地にその機体を大きく傾かせ墜としていた。


一斉に酔いからさめた三機が、おもいおもいの獲物を構え撃ち合いを再開。


今度は互いの攻撃は、狙いを外さず命中したものの互いに備えていたシールドに阻まれその一撃が、無為に終わる。


決め手を欠けたままでも、それでも奔る。


(・д・)チッ


「マダめ、まだまだだな。余計な妨害をされるよりも…」


フレイミングティース(燃え立つ歯)に追加した、試作アタッチメントを使用して、一気呵成に、この場を制圧する...


距離を詰めつつ、


設定されたコマンドを入力。起動音を鳴らしながら解放され、ベベンッ!!!コンソール上で《Pyrolysis Toothパイロリシストゥース》の文字が踊る。


機体の頭部に備え付けられた。口腔から漏れ出す炎の緋が、太陽の光にも似た輝きを放ち、展開される。黄金色に輝く緋のそれが、前方に展開される敵機目掛けて放射する。


先ずは、目障りな援軍に向かって。ジグザグな軌道を描きつつ、一撃離脱で、一射を放ちまずは片付けるべく、至近距離から放つ


それに対して、アイジェスが急制動を掛けて、反転。


逆さまの機体姿勢のまま、射出されたワイヤーに接続された有線ハンドに捕まれたままの《HHB》が、虹色の光を放ち。


壁面状に解放された。《HHB》から放たれる炎の盾が、僚機の眼前に射出されると。


黄金色に輝く緋と虹色の炎が互いに喰いあい。再びの《Pyrolysis Handsパイロリシスハンズ》と《Pyrolysis Toothパイロリシストゥース》の撃ち合い。


単純な撃ち合いにおいては、不利とみて、フレイミングティース(燃え立つ歯)は、一撃を加えた瞬間に再び離脱、距離をあけつつ、両腕のライフルから緋色の砲撃を牽制代わりに叩き込む。


地球の重力圏内に置いて、逆さ軌道を行えば、血は頭に昇り、有用性はみられないかに見えたが、コックピット内のアイジェスは、


特に不都合や、頭に血を登らせず。シートからも落ちずに、唄を謡いながら、僚機を庇いつつ、四方に向かって、有線アームを放出、避ける敵機に追いすがりながら、


敵機から多数の赤い赤い燃える様な放熱板が、大型ジェネレータを内蔵した、追加ブースタと共に離脱し、浮遊したまま、四方へと散っていく。


放たれる《Pyrolysis Toothパイロリシストゥース》の緋色の炎を受けて、燃える様に発熱、過熱、加速する。それらの放熱板が、その射線を捻じ曲げ、


即席のオールレンジ攻撃を発動。


縦横無尽に奔る。有線アームを巻き戻し操りながら、放たれる熱線同士が空中で衝突。


触れれば絶死の火の粉を巻き散らしながら宙に、火花と花火の如き放射を繰り返す。


(。´・ω・)ん?若干置いてきぼりのアンザスは、機体を動かし、援護に入るべく、操縦桿に手をかけるが...その時、違和感を感じる。


機体が動かない???!!!!


コックピット内のコンソールには、機体の熱暴走…オーバーヒートを知らせる。赤い文字が踊る。


機体内部の温度が100度を超えた事を知らせるアラートが鳴り響き。


そして特定の空域に巻き散らし、結んだ足跡に囲まれ、緋の光を発しながらそれは、起こる。


...


...


...


次第に熱を帯び始めた機体の各部から、武装が次々と破裂し、誘爆していく。


最初に手に持ったビームライフルが光りを溢れさせて、起爆。マニュピレーターの一部を吹き飛ばし、


肩部の実体弾が炸裂。


機体各部に飛び散る散弾を巻き散らし、機体をズタズタにさせつつ中破させ、


更には頭部の外付けのバルカンポットの弾体が弾けディエムペルディディの頭部が大きく陥没する。


コックピット内は、溶鉱炉の其れに似た、溶けた金属に飲まれながら、眼窩から水分が消え去り、破裂し、手足が溶けた操縦桿と一体化し、


焼ける様に熱いそれに包まれ、手足の端から炭化し、焼ける肉の匂いが充満し、その姿をアイジェスに匂いによって知らせる


「熱い、熱い、ああああああああああああああああああああああああああああああああ、何も見えない...。喉が焼け…」


「…なん...だこれ?…ん…?どう…なってる」


「嫌だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁまだあの娘に...」


「アイジェスッーーーーーーーーーーーーーー氏ぃぃぃぃぃぃぃ逃げ!!!!!!!!!助…死”に”だァぐ...。ナイ…」


アンザスは...。叫び声を上げつつその姿が、見えなくなる…


燃え上がる機体をアイジェスは眼前に幻視して...。


その場に展開されたその力場に向かい。起死回生の一手を放つ。


アイジェスは、唄を謡い。言葉を紡ぐ、「一葉灼伏…」


機体の各部が、紺鼠(こんねず)色の機体色から、三色の鮮やかなのトリコロールカラーへと


その表情が変わると、機体各部から、放たれる高密度の粒子が霧状に噴出し、結晶化された氷状に形成され


対抗するかに放たれる炎の尖塔の矢尻が四方八方から降り注ぐ中


更には戦場全域へと展開される結晶の乱舞が、四方を囲む熱量に対抗するべく、放たれる。


(ことごと)く熱に(いや)かされ死ね。《ムスペルヘイムッ(灼熱の国)》!!!!!」


(ことごとく)く凍えて護れ《ニヴルヘイム(霧の国)》...起動…」


互いに放つ、焔を氷のフィールドが喰いあい。相殺し合う。その余波に巻き込まれ、生じた水蒸気爆発により、


混じり合う爆圧と共にその行為が拮抗する。


反転したまま重力を無視して飛翔する艶やかな三色の機体は、その手に持った武装の数々を放棄、


伸ばしたケーブルを回収しつつ、噴出する推力と共に、高速機動への軌道へと入り、敵の注目を一身に受けて、飛翔する。


その行動を察知したアイ=アシンは、より一層強まるその匂いに...。確信をもって革新に至る核心を突く、


やはりこの匂い、この軌道、この違和感の原因は...。《慈聖体》で、間違いない...


我らが技術基盤の柱として、かつて存在を確認し、そして失われた存在。今は、その情報の断片を元に、


再現実験を行ってはいるが...。


こいつか?!?!


何故、開発中の我らの技術を流用できているのか?その理由は分からないだが...それは対象を間違いなく奴だ。


出来れば生け捕りを行いたいが...。最低でも死体を回収できればいい...。


意を決して、《ムスペルヘイムッ(灼熱の国)》の発動に使用している。放熱板と増加の大型ジェネレーターを駆使して、


反射し、熱源をばら撒くそれらに包囲されつつ、その射線から僚機を引き離す様に飛ぶ、鬼面の機体に追従する様に


フレイミングティース(燃え立つ歯)を駆る《アイ=アシン》は、砲撃を加えながらその逃げ道を塞ごうと躍起になる。


空中で乱れ飛び、大地に突き刺さる緋色の炎が、次々と砂漠の大地を硝子の結晶へと変えていく


追跡を引き離すべく、急上昇と急旋回を繰り返し、姿勢制御の妙を以て回避し続ける最中に、


それは起動する。


それまで放棄されていたと思われていた。武装...。《HHB》と、共に放棄されていたビームライフルの銃身が独りでに動き出し、


空中戦のドックファイトを繰り広げる。二つの機体の軌道へと割り込む。そして蒼い光を放つその一撃が、浮遊する放熱板に注がれ、


弾き飛ばしながら、鬼ごっこをする様に、互いにその背後を獲ろうと迫る二つの機影と共に、その体を入れ替えながら体制を整えつつ、飛翔する。


追撃戦を仕掛けられた。三色に輝く機体が、宙に浮かぶ太陽を背にして、急制動を仕掛け、落下する重力に惹かれるが如く地上にダイブを敢行。


一瞬の陽光に阻まれ上昇し追尾するフレイミングティース(燃え立つ歯)と入れ替わる様、体を入れ替えたそれに、追いすがる反射板を経由しての


緋の砲撃を割って入った《HHB》が、その威をシャットアウト。


返す刀で、各基部に搭載された推進器として使用する手の平から放射される


衝撃を伴った光が迸り、敵機の前面に展開されたフィールド命中し、僅かに敵の軌道を怯ませる。


それでも互いが互いを攻める応酬には、終わりが見えず。


陽光に紛れて降り注ぐ、緋の粉の雨を放射し、熱暴走へと陥らせ行動不能にしようと試みるが、


周囲を冷却するその冷気によって忽ち結晶へと変えられる。


熱量兵器での効果が薄いとみると、胸部に残るガトリングマスターの名残のマシンキャノンを発砲。


先ずは、敵機の盾となる。恐らく熱量を吸収し、《ムスペルヘイムッ(灼熱の国)》の発動を補助しているあの放熱板…の破壊を試みる。


火線の軌跡を描き放たれる銃弾の雨が、掃射され、銃弾が踊る雨音となり、一枚の放熱板を捉え、弾痕を残し、


基部の一部が砕ける音が響く、


浮遊するそれらに意識を向けた。デスペラードに向かい、今度はフレイミングティース(燃え立つ歯)が、忌々しくこちらの行動を制限しようと追いすがる。


《falcisファルキス》の一機に対して、《Pyrolysis Toothパイロリシストゥース》と一対のビームライフルから放たれる銃口を、一度に平行励起させ、


一本の巨大な緋の柱として放ち、大火を巻き散らす巨大な熱量兵器となったそれの照準を付け、放つ。


奴の防御でこの攻撃を守れるのは...。


本体か...《falcisファルキス》のどちらか片方でしかありえない...


繰り出された砲口の射線軸に、《HHB》の大型シールドが割り込み《falcisファルキス》となり射撃を繰り替えすビームライフルの基部を守るかの様に


その一撃を撃ち払う。


攻撃の余波をそのまま狙いを付けた敵機…三色のトリコロールカラーの其れに向かい巻き込む様に薙ぎ払う。


その先に残されたのは、巻き添えを喰らって次々と硝子の結晶に変わる。砂地の大地と、消え去る機影のみ。


・・・


・・・


・・・


バキバキ...。パキィパキィィィィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


炎が、灼熱の劫火のフィールドと砲身が、次々と結晶化する氷へと変わり、緋の柱が、氷の柱へと書き換わっていく。


上昇した熱量が、+方向ではなくー方向へと切り替わり、周囲の原子の動きが完全に停止される。


氷結される雪原の世界の中で、消えた機影を完全に見失い。


フレイミングティース(燃え立つ歯)の稼働していたセンサー類が一斉に、その目標を見失う。


その状況にアイ=アシンは、混乱しつつも、思考を巡らせ...。現状の推測を行う


...


月での戦闘で放たれた《ニヴルヘイム(霧の国)》…は...此奴が原因かッ?!


同時に、《Pyrolysis Toothパイロリシストゥース》を起動できるその性能から、とある推測が鎌首を持ち上げ浮上する。


痛みを増す下腹部の傷を摩りながら、身悶え身を捩らせ、喘ぐ声を漏らしながら、


「そうか?!分かったぞ奴の機体の機構の謎が?!」


「熱量の変換だッ!プラスに働かせれば、熱分解を生じさせ、マイナスに働かせれば…」


目を潰され何も見ない状態で、突如、盛大な衝撃と大音響を響かせて、コックピット内のエアバックが膨れ上がり、


ノーマルスーツのヘルメット内で、噴き出す鼻血が、吸引されるも、ガクガクト揺さぶられ、何かに突き上げられる様に上下する運動に、


慄きながら、何も見えない画角の先で、突如、思考誘導により《ムスペルヘイムッ(灼熱の国)》を維持する為に、操作していた放熱板が、


氷結し、薄氷を踏むか如き破砕音を奏でながら砕け墜ちる様を見せつけられ、咄嗟にコックピットを防御するように両腕を交差しガードするが、


強烈なGを掛けながら、上空へと一気に突き上げられる。


周囲は、熱砂の砂漠で置いても、霧に包まれ、敵の僚機や、友軍機の姿すら確認できない状況で


「見ッみえない?!どこだ、あッあッあー」


一瞬で、窮地に落とされ、機体が動く度に、機体の装甲と、攻撃を受けて破損した腕部が剥落、


「跳べッ」


短く端的に生じたその断絶する言葉がコックピット内にむせ返る匂いと共に、極大のGを駆けられ、


遥か彼方の洋上に向けて宙を翔ける。機影は、飛行機雲を残して消え去っていく。


( ゜д゜)ハッ!


アンザスは、周囲の光景を見回し、なにが起こって居るのか?分からぬまま...。


「アイジェス殿?一体何をしたんだ?!」


シュウシュウと音を立てて霧を吹き出す機影が、ディエムペルディディの眼前に浮かびながら降りて来る。


ぴぃーーーーーーーーーと警告音奏でながら、制限時間の5分を経過し、次第にその機体の色が、元の紺鼠(こんねず)色へと還っていく。


・・・


・・・


・・・



明後日方向へと吹き飛ばされ、中破した機体を立て直しつつ、何とか砂の山に着地したものの...。


搭載されていたジェネレーター毎、機体の本体を抉られ行動不能に陥る。


余りの衝撃から、眼窩から血を流し、気絶する。アイ=アシンは、絶頂する叫びを上げ乍ら果てて居た...。


...



...



...




其処に、再び四機に分離したマダの編隊が、破損し、互いに破損したスラスターを補いながら編隊を組み、


破壊された《フレイミングティース(燃え立つ歯)》の元へと降り立つ。


「中尉生きてるか?返事をしろッ」


ルドゥス・アレアエは、無惨な姿へと変わったその真紅の機体に向かい呼びかける。


「仕方ない。このまま回収して、帰還するぞ。敵の全容は概ね確認できた…あとは、戦力を整え準備する必要がある...。」


「アーガトラームに帰還後、地上の拠点で...対策を練るぞ。」


...


...


...



「デコード、《 トゥ フイ、エゴ エリス(我は汝であった。汝は我になるであろう)》」


脳裏に過ぎるその声に併せて眼前で、その機構が可変していく。


音声認識による識別により、使用者権限を確認。それまで行使していた機体と駆動系等の解放を解除。


コックピット内部では、身体の各部で飛び出したアームや、拘束具による、パイロットの手足を固定が解除され、包み込まれていた円筒状の基部が、


再び収納同時に、機体の外部のバイザーや各種部位内蔵されるロックボルトが水蒸気をあげて、再度固定。


長方形のバイザーから露出したツインアイが再び、その姿を覆い隠す。バイザーから突き出されたそのアンテナは光を喪いその姿が消え、それまでの威容が何の変哲もないその機体のモノへと還っていく。


コックピット内のコンソールには...「《リアクティブジェネレータ》…稼働率100%…《...ドライヴ...》欠損率5%」


「アイジェス殿―、良く分からんが、助かったでござる。」と、コックピット内で尻をふりふり、右往左往しつつ、


次第に晴れていく霧に、驚きつつも、それでも仲間の無事を喜ぶ。


敵機の状況は分からないものの、一先ずの脅威は去ったと思われるが...それでも、事態は終息しない。


( ゜д゜)ハッ!


「アンザス?!敵は如何した?」


んっ?いつものあれだなと、納得しつつその問いに答える。


「敵は何処何行ったみたいですぞ?!母艦と合流して、今後の対策を練りましょうぞ!!」


(不発に終わったが、あの敵の攻撃...。そこはかとなく嫌な予感を感じる。あの場に僚機や母艦があれば...)


その状況を想像して、背筋に冷や汗が流れる。


...


先行する母艦たちの姿を探し、デスペラードのセンサー効果範囲内に捉えると...長距離通信用のレーザーを放ち、敵機の襲撃を退けた旨を伝えて、合流する。


機体の不具合を訴え、整備に入る両機が整備艦(エンゼルフィッシュ)へ帰還する。


「流石に疲れたな...」


(何かいつもより機体の性能が落ちている様な気がする...この感覚は、随分久しぶりだが、ジェネレーターを酷使しすぎた所為なのか?)


(一先ず、砂塵や砂の影響が気になる...宙間戦闘では起きない不具合が起きているかもしれない。)


メンテナンスデッキに機体を納め、コックピットから抜け出し周囲を見回すと、


次々と、ディエムの機体各部を蝕む砂の洗浄を油を使い急ピッチで行われていた。


アンザスは、自らの機体にも、関節の具合が良くないと、申告しつつ、その言葉を受け次々と作業員たちが機体に群がり、整備を開始始める。


「この際だから、損耗しているパーツの交換も忘れるなよッ」


そう言って、その場を離れてアイジェスが一人で整備を行っているデスペラードの元へと向かう


「アイジェス殿、砂のクリーニングは、手伝って貰うと良いでござるよ。」と、声を掛けつつ、その声に呼応して、整備員たちが、


洗浄用のホースを抱えて機体に群がっていく。


流れ出る油が砂を洗い流し...。


(。´・ω・)ん?


なんだこれ、あんまり砂が詰まってねぇなぁ...。これなんでだ?他の機体は関節部に砂が詰まって、洗浄に一苦労なのに、一番戦場に残っていたこいつが一番綺麗な状態だ...


首を傾げつつ、次の出撃に備えて、作業を行う。


作業員が行きかう中で、アイジェスも自らの機体の動作、稼働チェック、自己診断チェックを走らせる。


各部駆動系、異常なし、操作系統並びにセンサー類に異常なし、ジェネレーター出力に異常あり、動力炉に一部欠損アリ…


最大出力に5%の欠損…注意されたし...


(。´・ω・)ん?


「どぼちた?珍しくエラーを吐き出したっぽいですぞなもし?」


「嗚呼、これか、偶にあるんだよな。でも、暫く放って置けば治るんだ。まぁ大丈夫だろ。」


「と言っても壊れても俺には治せないんだがな」


とりあえず、砂漠専用の武装を外して、新しい地上戦用の装備の開発に取り掛かるべく、胸部のマシンキャノンを残して


各部に備え付けられたたガトリング砲や装甲に回転刃のオプションを取り外し、


二人の帰還を知って訪れた春幸が、差し入れに持って来たハンバーガーをパク付きながら


(しば)しの休憩を挟みつつ、作業を再開する。


その作業を億劫そうに眺める春幸に...アイジェスは問う。


「春坊、こんな作業見てても面白くないだろ?」


「そうでもないよ...」


(いつか俺も...母さんを助けに行くんだ...それには…だ。シュミレータ―を使わせて貰って一通りの操作を覚えて練習はしてるけれど…)


(未だに、敵に押され気味な他の隊員にも、遊ばれるレベル…どうしたら俺も同じように出来るのか?俺にもあれが使えれば...)


含みのある言葉を放ち会話は続く


「そう言えば、春坊は、地球の重力酔いは、大丈夫なのか?」


(。´・ω・)ん?


「あっなんか、他の奴らは、みんな吐いてるけど、僕は大丈夫かな?地球に降りるの初めてなんだけど?」


「拙者は、最初は大変だったでござる。まぁ、大体慣れたけど。重力酔いは個人差がありますからな。」


「そう言えばアイジェス氏も地球に降下するの初めてなのに平気そうですな」


「俺は初めてっていうよりも、懐かしい感覚だな、きっとどこかで地球に降りた事があるんだろ?」


「ずるい…」


春幸の服の袖を掴んで離さない。小柄な幼女が呟く


「HAHAHAHA、お嬢さん、此ればっかりはデメリットとメリットが存在するので、一概には言えないですぞ、時に、我がプリケツに慄くがよぃ。」


「いや、なんでおっさんは、全裸なんだよ?」


「そりゃぁ、メンテナンスドックは、機体の出し入れがありますからな、砂漠の暑さにやられて、脱がねばー。」


「スムージー飲む?」


「宇宙戦用のエアロックあるし、別に空調入れれば良いだけでは?」


「おい、まて、お前その格好の侭、ドーナッツ屋のフリードリンク頼みに行ったのかよ。」


「HAHAHAそれにこれはふんどしと言って、尻を強調する為の装具でござる。君も履いてみるかね?店員のお姉さんには好評だったぞ。」


「ぽろりもあるよッ!」


「えーなんでだよ。いやだよ。あとぽろりすんなッ!」


アンザスと春幸のやり取りを眺めながら、燃料の水の補充を済ませて一通りのチェックとメンテナンスを終えて、こういう時は...あれを加えると良いんだが、


此処で手に入るモノなのか?と、思案し、そして一先ず、腹も減ったし、食堂が解放される時間ではないが、まぁ調理室に行けばなにかあるだろうと、


四人で移動する事にする。


その途中で、大石ら第一部隊の面々とすれ違い、呼び止められる。


「待ちたまえ、大石君ッ!彼に詰問するのは私がする。」


「いいえ、此処は本官が確認させて頂く。これは今後の作戦方針にも関わる事。」


「いや、あの武装の数々、詰問するのは私に任せて頂きたい。」


押し問答を繰り返す二人の姿を目撃してアンザスは、狼狽える。


(あッゲロまず!いつも援護射撃をしてくれていた隊長は、先の戦闘で出撃して、


奮戦した第一部隊と第五部隊に代わり、哨戒任務に出ている。ここには居ない。ここは一先ず私のゲロで有耶無耶に…)


「おぇぇぇーー」


「えっなんで急に吐こうとするんだ?辞めろ!おっさんも止めてくれ。」


(。´・ω・)ん?ダメか、不味いでござるここは一先ず、この場を離れて…と、どちたの?と不思議な表情のまま連れられる幼女とともに


ささっと食堂を抜けて、調理室へと退避する。


(うーん、これ恐らく少しずつ、アイジェス氏の奇行が、バレ始めてますな...そりゃぁ何度も危険な殿を切り抜けつつ、持ってたシールドやライフルが飛んで、敵機とやり合い始めたら、疑問に思われる。)


(問題は変態したあの姿が、目撃されているかに掛かっている。今の所、可笑しな点と言えば...装備が飛び回り、危険な殿を切り抜けてる事だけだ...)


(隊長とも相談してみたいけれど...。今は居ないし、肝心のアイジェス殿はなんも覚えてないし、此処は我のプリケツを振るってお助けせねば...。)


「ねぇ、いい加減その尻を振るのをやめなよ...」


「まぁ、良く分からんが、何とかなるだろ、其れよりもまずは、飯だ。」


比較的広めに作られている整備艦の人気の無い。調理室で、一直線に冷蔵庫に向かう。


冷蔵庫には硬い施錠がされており、悲しい世情を物語っている。


ここは、共有の食材が納められている大型冷蔵庫では、無く。個人用の自ら持ち込んだもの以外に配給された食材を入れて置く鍵付きの個人用の冷蔵庫に向かい


アイジェスは、そこから、いくつかの卵と食材を取り出し、割った卵を適当なボールに投入。


掻き混ぜながら、奇妙な鼻歌を歌い始める。


「たーまごまごまごまごつく卵は幾つかなぁ?


お昼の御飯に卵が二つ。


割って半分、親鳥ひな鳥。


美味しいね。


たーまごまごまご、玉子孫


孫にあらるるは…」


その詩を聴きながら、春幸は思い出す。そう言えば母さんも良く分からない、オリジナルの唄を謡ってたな。


少し懐かしさを感じるその詩に耳を澄ませて聞いていると、


作り置きしていた冷凍のチキンライスを取り出し、過熱したフライパンに投入して温め、


フライパンに油を人さじいれ、熱したフライパンに、卵液を投入


全体に広げる様に箸でぐるぐると掻き混ぜると半熟状態になったら火を止めて

チキンライスをこんもりとよそい。


手前からそっと卵をチキンライスに包み込み、形を整え、更に盛る。


ソースは我が家ではバターの大量投入を禁じられているため、ケチャップのみに止め、


ささっと四人分のオムライスが出来上がる。


それらの品々を食堂に持ち込み。頂きます。明々に、料理をもしゃもしゃと、一心不乱にかきこむ。


ソースで口元を汚す幼女に、エチケットですと、半裸の男が拭き拭きする光景は、


そこはかとなく異常です。


正常、異常は、大人になる迄の間に蓄えた、偏見により様変わりする。


いや、真面目な話にしようとしてても無駄だからな、半裸のおっさんが居たら...良いから服着ろよ。


春幸の突っ込みが刺さるが我関せずと、食事は進む。


(さて、どうしたものか?大石さんとか、コーディー上級技官、疑いまくってるよなぁ~)


其処に、大股歩きで近付いてくる。大石と、コーディー=スルーの二人が現れる。


「食事中かね。戦闘配備も解除されたし、暫く待てば配給が届くはずなんだが、まぁそれは良い。」


「アイジェス君、君に確認したい事が...君の作ったあの武器は、一体なぜ敵機と同じ事が出来るのだね。」


「データーを見ても私には再現が出来なかった。それなのにッ」


と、勢い込んで、詰め寄り詰問するその最中


「まぁまぁ、此処は、私のこの尻に免じて、納めて頂けぬか?」と


真面目な顔の横にそっと尻を添える。


尻は、そっと添えるだけ...


「おい、こっちは真面目な話をしてるんだぞ、その尻を引っ込めろ。」


と、つんつんその尻を突き脇へ避けると


もさもさと、咀嚼し終えると、何も問題が無いかの様に、男は答える。


「単純に、敵のデータを元に、機体の機能を使って再現してみただけだよ。特に不思議な事はしていない。」


「あの機体の作業能力は、上級技官も知る所でしょう。新型の装備の削りだしも、手伝ったし、唯の工作機械としての能力に特化された機体でしかないですよ。」


「む、そうなのか?コーディー殿。」


「それはそうだが...私も同じように再現したが...どのパイロットも同じように動かせなかった。それなのにッ」


「それなら...」と訳尻顔で、大石の顔の横に添えた尻とと共に、アンザスが話を挟む。


「嫌ッだから貴殿、今、真面目な話をしているのだが?」


「それなら単純に、使いこなせる素養があるのが、アイジェス殿しか居なかっただけでは?ところで全員にそれ試しましたかな?」


(。´・ω・)ん?


君、急に真面目な会話内容で話して来るな?落差で、風邪ひきそうになるな。


(ふざけて誤魔化そうとしたけど、あんまりこの感触良さそうじゃないな、私の尻の感触は良いんだけどなぁまぁ良い。)


「そうだ、そうだ、だったら僕にも出来るか試して欲しいッ」


(あわよくば、僕も機体に乗せて貰えるかもしれないし...)


私もッ私もと、幼女がぺこぽこ跳ねながら主張していく。


「ふーむ、それもそうか?一旦、部隊のローテーションを組みながら、試してみるのも良いかもしれませんな、上級技官」


その場の矛先は上手く収まり、急遽開催される事となった、敵の技術の再現試験については、


結果として、適用できた者は...


アイジェス=ブラットワーカー、春幸に、保護した子供たちの中に数名存在してる事が確認できた...。


流石に子供に戦場を立たせる訳にも行かず、それでも食い下がる春幸を覗き、その場の詰問が収まった。


これは...もしかして奴らがあの無人のコロニーに執着して居たのは...探していたのは適応できる人間が目的だったのか?


という推測が立てられる事となる。


その場合アイジェスをこのまま、戦場に立たせるのは、問題があるのかもしれない。となったが、イゴールとアンザスをはじめとする部隊員から反対意見が出て、その場は流れた。


...


...


...



「おーい、春坊そんな所に居たら危ないぞー。」「ドーナッツ喰うか?」「飴ちゃんいるか?」


口々にメカニックの作業員たちに声を掛けられながらも、デスペラードの機体の上でブラブラと足をバタつかせ、アイジェスの作業を見守り続ける。


僕には、機体を動かす知識も経験も足りてないかもしれないでも…奴らに対抗する力はあるかもしれない。


そのきっかけを作るには、彼の後ろ姿を見続ける必要があると、凝視する。


いつのまにかメカニック達ともコミュニケーションをとって作業の手伝いを受け入れつつ、次の装備の作成に取り掛かっていた。


回りには、船長からの進路の報告により次の戦場が砂漠地帯から、地上戦へと切り替わるであろうことを推測して準備していると、答えて入るが、その実、準備に関しては遥か、前から実施して、その雛形の設計及び作成に着手していた。


コーディー=スルーからは、前にもまして、機体整備に関する協力を求められている。


第二部隊の機体の補修に大分時間が掛かっているのは他の作業を先にしていたが、乞われてパーツの成形を手伝ったところ、その壊れた性能の一部が知られる事になる。


目的地のブカヴに向かう旅路の途中であっという間に、組み上がっていくその光景に、それまで、椅子を温めるだけに甘んじていた第二部隊の面々が喜ぶ。


問題は、その光景を眺め睨むナニモノかの視線と、微かに据えつくような匂いを漂わせる。それに違和感を覚えつつ、作業を再開する。


躯体の全面には、周囲に気付かれない様に予め持ち込んでいた赤黒い部材を使用し、今後の使用を見越して温存しつつ、足りない個所は既存の装甲素材で補い。


独特な流線型を備えつつも長方形のフォルムを要する。躯体に回る円形の重なる様に備わったタイヤを魅せる外部パーツを組み上げ、


走行試験は未だ行っていないが、その後部には様々な砲身と一体化されたミサイルポットを合わせ持つ武装がその姿を覗かせている。


その威容を以て、名付けられた。それに、腕部に装着されたレーザー刻印により《ロードマスター》Roadmasterの文字を彫金する。


出来上がったその出来に満足しつつ、何に使うか分からないが頭部に、適当な端材の弾体を詰め込み、一先ず準備を完了させ、


新しく依頼を受けると、


アンザス機の改修と、部隊の新しい兵装と装備の手伝いに勤しむ。


その作業と砂漠地帯を抜けて、アフリカ大陸に刻まれた。且つて地上に落下した隕石の跡地から僅かに外れた航路の先に向かい南進する間に、


対抗するように、蠢く《人喰い》カルニヴォルス (carnivorus)達は、其の頃…


合流したモノどもは


撃墜され重傷を負ったアイ=アシンの治療に取り掛かるも、外付けの大型ジェネレター共々機体の主機も失い、一先ず改修ついでに


地上の重要拠点に移動する事になる。


マダの補修には現地施設でも可能だが、ジェネレータの替えは、あいにくなかった。


中尉を預けて、現地部隊の戦力を掻き集めつつ、《慈聖体》の確保に乗りだす。


マダ部隊を指揮するルドゥス・アレアエは、正直《慈聖体》などどうでも良い。仲間を墜とした奴らの首だけ取れれば良い。


何故ならば、奴等の情報は、既に筒抜けなのだから、《慈聖体》は、複数存在する。邪魔者の一人を消したとしても問題ない


そんな思惑を抱えつつ、時間は通り過ぎ、日数を経過させると、戦場は、砂漠から、アフリカの大地へと変わっていく...



《R.I.P》と《エンゼルフィッシュ》はサハラ砂漠の砂粒を越えて、進路をやや東の方向へ舵を切ると、

大陸の中央部付近を目標にして、砂漠化の波を酷く侘しい面持ちで、船の乗組員は眺め、


各自警戒の色を強めたまま進む。


哨戒任務を第三部隊から、第五部隊へと交代し、居並ぶ四機編隊のスラスターの稼働により飛び跳ねる僚機の姿を仰ぎみながら、


それはアフリカの大地を疾走する。


かつては広大な半乾燥地帯であると呼ばれたそれは、その領域が砂漠化され、更にはその南部に広がる森林地帯は、乾燥地帯へと置き換わって居た。


その道無き道を歩み、新しく新造した換装パーツで、巨大な二輪バイクの様相を魅せつつ、枯れた大地を直走る。


表向きは、起動テストを伴った哨戒活動。


第六部隊の面々は口々に、アイジェスに向かって話しかける。


「新しく用立てて貰ったこの盾、良い具合だ。これでコワイもの無しだ。」


「隊長が怖くないなんて、雪でも降るかな?」


ネライ=アッタラナは、冗談交じりに会話に参戦する。


「そのシールドは、適度に端材を重ねて強度を増して、更にギミックを追加してる。」


「稼働時間に制限はあるモノのあんたらの戦い方には、丁度良いだろうさ。エネルギー残量には注意しておけ?」


いつのまにか、すっかり打ち解けていた面々と、語らいながらも、任務に従事する。その姿を同行していた春幸がサブシートに座りながらも見守る。


(。´・ω・)ん?


「どした春坊、飴ちゃん舐めるか?」


新換装パーツの稼働テストを行うと、申し出た場面に、其れだったら俺も乗せてくれと、懇願され、

少し、思案しつつも、これも経験だなと、乗せる事になった。


第五部隊と入れ替わった第三部隊の面々は、機体の整備のローテーションに入り、その穴を、機体がそろった第二部隊が後詰として、待機している。そちらの面々も新装備を備えて、シュミレーションでのテストを行い。あとは実戦を待つばかり。


そんな状況を夢想しつつ会話は続く、


「良いよ。子ども扱いしないでくれよ。」


「まぁまぁ、知ってるか大人は、普通、若く視られたらうれしがるんだ。子供と呼ばれて怒るのは精神が子供だけだ。」


「自分の弱さを知っている強い大人は、そもそも弱いと言われても、自分の弱さを知って居るから、ただ笑うか、怒るポーズをするだけさ。」


「覚えて置くと良い。その返しが出る様じゃまだまだ子供だな。」


ムスッうぅぅぅぅぅぅーと、拗ねる春幸を他所に、大型の二輪状の躯体が直走る。


「《臆病者》(クヴァイリス)各機、警戒を強めてくれ、換装パーツのテストは十分だ。あとは...」


「《臆病者》(クヴァイリス)02ッ、八時の方向だッ構えろ!!!!」


咄嗟に飛んできた叱咤に、反応して、新しく作られた対ビームコーティングと敵機から回収したオービット・マインの部材を積層構造で重ね瞬間的に展開されるビーム状の盾を二重にしたそれを、狙い見ないまま、展開。


長大な射程を誇る敵機の奇襲を盾を斜めに構えて、角度を付けてその威力を弱めつつ、吠える。


「敵襲だッ!!!《臆病者》(クヴァイリス)03、母艦に打電。戦闘配備と予備機の出撃を要請。」


「各機応戦しろッ!!!」


「隊長ッ!!!」


「なんだ!」


「怖くて漏れそうです。トイレ行ってきていいですか?」


「よし、トイレ(通れ)」


「まて、戦列から離れるな。」


「ですが、我らの尻に奴等は届くが、こちらは射程外で狙いがあったりません。漏れそうです。」


(・д・)チッ


「各機、反転、接近しつつ、射程距離に入り次第、応射。ドンキ・ホーテは、先行して追撃してくれ、俺達は怖いから、後からゆっくり行く。」


「焦ってシールドのエネルギーパックを無駄遣いするなッよ!」


攻撃が加えられた八時方向へと、ブレーキを掛けつつ機体の軌道を変えて、走る。ロードマスターを借り、


重力感覚器官《Sensorium Gravitatis》(センソリウム グラウィタティス)を起動、先んじて察知した方向へ、


車体を傾け、咽せ返る様にコックピットないで香る匂いに目掛けて、駆動する機体の後輪部に設置された砲身を稼働。


同じく異臭に気付く春幸に...。対して、気遣いを見せるも、この場で後退する訳にも行かず、そのまま突き進む。


「センサーに感アリ。これは…前回見かけた...合体する新型機…それにグヤスクトゥス多数に、見た事が無い…が取得した敵機のデーターベース上では...アベレと呼称される...これは...。」


思考砲台の《falcis(ファルキス)》の近似値たる機能を有し…そのスカートを履いた女性の様なフォルムの機影が、僚機と思われる機体を引き連れ、その威容を魅せつけてくる。


向うの長距離射撃を行ってくるのは、砲身がまだ治って居ないのか?三機の新型機のみに限定される...


恐らく向うの大多数の射撃武器は通常のビームライフルへと限定されているのか?


荒れ地を走り、疾走する車体を左右に揺らし、その攻撃を回避していく。他の機体からの攻撃が無い…減衰したとは言え、新型の盾とビームシールドで防げたという事は...


「ある程度、まだ距離が開いてるという事、此方の射撃の射程距離まで...1500...1000」


彼我の距離は悠々と20キロメートルは離れているが、


「ロック解除…砲身連結…拡散砲…照射ッ」


「弾着…今。」

後部ユニット上で多重身の砲塔が並列励起し、後尾に繋がったミサイルポットと連結、高射砲となった砲身から、スプレッド状に分割され、粒子加速するビームの雨が、大きく弧を描きながら、目標たちに着弾する。


着弾した光の雨を傘を差す様に差し出された。光波の盾により防ぎつつ、此方に接近してくる。


僚機が、長距離通信で援軍を呼ぶまでの間に、数を減らす。


誰かが唄う歌声が、コックピット内に響き渡る


その耳元に微かなに残る詩声に呼応するかに、その言葉が響き渡る。


「エンコード...、《バラッド・オブ・ザ・デスペラード》」


(やれやれ...まぁ良いだろう。このまま、初手から削り倒す...)


(えっ、いきなり此れなの?????!)


春幸は、突然の変形ならぬ変態機構の稼働に、慄きながら、二度目の戦場で、目の前の男の動きをその目に収めようと目を見開き、自らも見様見真似で、その言葉、その声を繰り返す。


前後を挟み込む様に、連結されていた二輪の車体が、前後に二つに割れ、一瞬各部の機構が、覗き、


変態、変型機構を稼働させると、半展開状態になった基部を覗かせかと思うと、機体が駆動し換装装甲で挟み込む様にその姿を覆い隠す。


変態可動する機影を偽装し、走るその軌道が一斉に加速する。


躯体から飛び出ている頭部の鬼面の口腔を解放。


電磁加速を開始。加圧され、光り輝き擬似的に形成された電磁誘導のバレルが、大気を斬り裂くような異音を奏でながら周囲にイオンが焼ける匂いを残して


大音量の射出音を発生させつつ瞬光、瞬く間に撃発と伴に発射。


予め補充し基部に装填されていた弾帯を、放つ一射に巻き込まれて、敵機が、遅れた音の衝撃に巻き込まれ撃沈する。


遠くで、ジェネレーターが誘爆し、極大な爆発を引き起こし、戦場の華と散る。


しかし…走行中のデスペラード内で、舌打ちを撃ち、自らのミスに気付く...。


大気のある地上戦で、レールガンの一撃を放てば...その流れ弾が...遥か彼方のどこかに着弾する。


今の一撃で砕けた機体以外にも貫通した弾帯が地上に降り注いだ…


此処が、荒野の只中であった事を喜びつつ、切り札の一つに使用制限を設ける。


対策の一つは考えられるが...それは、別の話、


車体の左右から覗く、腕部から、その掌中を解放。向かい来る敵機に対して、慣性ドリフトを開始、滑る様に流れる車体を


掌中の衝撃波で機体を立て直し、方向転換すると、敵陣に斬り込みながら、一射、二射と、敵機に撃ち込み、そして荒地の大地の最中、距離を取る...


敵機は接近してきた機影を初めて目撃し...敵の新しい機体なのか?と


三機の分離したマダが、牙状の砲身を掲げて撃ち合いながら、


グヤスクトゥスと、見慣れぬ、まるでスカートを履いた女性がラインダンスするかのように踊る機影が一気呵成にが散開する。


(・д・)チッ


舌打ちを一つ叩いて、後から来るであろう僚機の安否を思いつつ、散開しつつ遠ざかる機影に向かい。


砲身で狙いを付けて狙撃する様に一撃を加える事を断念。


車体を傾け、後進しつつ、接近する四機の機影に向かて、拡散する砲撃を繰り返す。


分離したマダの四機は、フォーメーションを組みながら、砲身を喪った一体を庇いつつ、砲撃戦を開始。


彼我の相対距離を取りながら撃ち合う。


遥か後方で、嫌嫌そうに、第五部隊の面々が、防御を固めるも、遮蔽物の無い荒野の中で、


丸裸のふるちん状態で、心もとない最中に、数機のグヤスクトゥスと接敵する。


盾を構え、応撃を繰り返し、


「隊長、体調が悪いです。早退してもいいですか?」オマエ=ナニモノが、弱音を吐くも


「帰りたいのは俺の方だ。逃げるな、履くな、漏らすな、尿漏れパットが溢れるまでッ撃ち続けろ。」


「《臆病者》(クヴァイリス)03、援軍は未だか????」


「隊長、甘い目算で良いですか?既に出撃してる模様、このまま時間を潰して、待ってればディエムの機動性であれば30分ぐらいで到着するのではッ?」


シナドロ=アマイが叫びながら、銃身が焼け着くまで撃ち続ける。


敵機の攻撃は、此方のシールドを破ること敵わず。さりとてこちらの攻撃も向うの防御を貫かせず。膠着状態になるが...


相手の数が、自機たちの数に比べて三倍近い。


「ええぃ、そんなに時間掛ったら、勝負が付いちまうぞ?ドン・キホーテ―は如何してる?!!」


「隊長狙いがあったらねぇ?!」


「《臆病者》(クヴァイリス)04、それはいつも通りだろ?ドン・キホーテは、先行して敵を釘付けにして、砲撃を受けてる。恐らくこっちにまで手が回らんのでは???」


シナドロ=アマイは、希望的観測を打ち消す言葉を吐く。


「そうか分かった。逃げるぞ!!!!」


「「「了解!!!!(やった)!!!」」」


「全機、前進ッ、子供を守れッ」


「「「了解(ヤダ)」」」


(´・д・`)ヤダだなぁーと言いつつ、全力で前進して、前向きでの逃走に入る。


(まぁ、ドン・キホーテ―と合流できりゃぁ何とかなるだろ。)


「各機、ビームシールドのエネルギ―残量は気を付けろよ。」


...


...


...


車体を左右に回避しつつ、上空のマダ4機に向かい射撃戦を繰り返す中で、此方の面制圧の攻撃を向こうも回避行動を行いつつ


砲撃を繰り返し、大地に鮮烈な火砲の着弾点を描きながら、ジグザグの軌道を描き彼我の距離を数キロ圏内の至近距離での撃ち合いなる


僚機達の奮戦はこちら側からは伺い知れないが、センサーが感知する味方識別コードに欠損はみられず。包囲戦を仕掛けられつつ、次第にその動きが止まったかと思うと、


一斉にこちらの方向へ前進し始める。それを察知したのか、複数のグヤスクトゥスがその包囲を徐々に狭めつつある…


(少し...。危ないな...。どうする前面の敵を抑えなければ、長距離砲撃戦でジリ貧になる...だがこのままだと僚機が墜とされる...)


...


...


...



「隊長、ビームシールドの残量がもうありません。」


「右に同じく」


「左に同じく」


「隊長、尿漏れ激しく、溢れちゃいそうです!!!!」


(・д・)チッ


前に出たのがまずいか?四方を囲まれ背中合わせになる四機が、積層シールドを構え、防戦一方になる。


何度目かのリロードを繰り返し、ライフルの替えのエネルギーパックが尽きる


そこに掌中の鼠を狩る猫の様に、一体のグヤスクトゥスが、発振する光刃の掲げて突撃してくる。


積層シールドで、その一撃を受止め、弾切れしたライフルを撃ち捨てて、袖口から取り出したビームサーベルを腕部で保持すると、


返す刀で、敵機に叩きつけるモノの敵のビームシールドに阻まれ、攻め手を欠く。


動けぬ機体の《臆病者》(クヴァイリス)03に向かい、敵機の射撃が三方向から迫る...


スローモーションで、機体を貫かれ、熱量を防ぎ切れず焼失するかに見えた瞬間、


三方向に向かって、放射状に飛来したミサイルポットの斉射が、光の弾体に直撃。


爆風と共に巻き散らされる。ビーム攪乱幕が寸前のところでその攻撃を防ぐ。


すわ撃沈となるその瞬間に現れたのは、《フルアクチュアリーカスタム》、《ガトリングマスター》、《HHBカスタム》、《サンドマスター》のそれぞれの装備を地上戦用に不要なパーツを外し、脚部に《マグレブ》磁気浮上式低重力ホバーを装備して、機動性を増した四機のディエムが踊り出る。


「インヴィクトゥス《不敗》??第二部隊が来た?!」


「間に合ったッ!」


「いや違うおぃッ遅刻だぞ?」


「遅刻じゃないわ、あんたらの連絡が遅いッ!!!もっと早く合図を送れ、刻が来たら合図を出すはずだったろ?!」


(。´・ω・)ん?微妙に噛み合わない会話をしつつ、オウ=コワイイが叫ぶ


「あれ?でもなんか見た事ある装備付けてますね...」と、オマエ=ナニモノが呟くと


その声にリン=山崎が答える


「私達が来たから大丈夫だぞぉー。味方機には当てるなよ、奴らの尻が熱くなるまで撃てッ!!」


「各機、ビーム攪乱幕を投射しつつ、実弾兵器での一斉掃射。」


「撃ち方用意…奴らをおサルさんにしてやれ、てッ!」


戦場に飛び出した四機のディエムが、それぞれに装備されていた実弾兵装を解放。


脚部の《マグレブ》磁気浮上式低重力ホバーで、疾走する様に奔りながらも、その狙いは、正確に敵機の機体を撃ち貫く、


周辺を囲む様に展開されていたグヤスクトゥスの包囲網に穴が開く


各肩部ミサイルポットから放たれる炸薬弾頭に、バズーカの砲弾。さらには、360度に展開されていたガトリングガンの銃弾、穿孔用のミサイル、そして、ライフル基部をビームライフルから、レールガン式に変更した銃身の斉射が解放される。


周囲に爆裂の華を咲かせつつ奇襲に成功して、敵陣を適宜、斬り込むその姿に、負けじと《臆病者》(クヴァイリス)達、第五部隊も息を吹き返し始める。


「各機、失ったエネルギーパックに、シールドの積層装甲にチャージした粒子を充填しろ。」


それまで赤熱化していたオービット・マインの装甲を積み重ねた積層シールドが、急激に冷却されそしてエネルギーパックに充填されて行く。


次々と体勢を整える僚機達の姿を幻視して、砲撃戦を繰り広げる


(・д・)チッ


「向うの援護は...ひとまず」


舌なめずりをしながら、笑うその表情のまま操縦桿のレバーを倒し、急制動を掛けつつ、装甲パーツを前方中央後方の独立する三パーツ内、後方と前方のパーツを分離、


中央部の下部から履帯りたいが迫り出し、疾走。


都合、三機に別れた換装装甲を思考制御により、


前輪が多重のマシンキャノンがその仰角を変えて吠える、更には分離した後輪が、通常時に戻った砲身から射撃を再開する。


中央部の履帯りたいに騎乗したまま土煙を上げて疾走するデスペラードは、


その掌中から光る衝撃を撃つ狙いすませた一撃が交差するように命中したそれが、数機のマダが、互いに攻撃の隙を埋めつつ、包囲射撃戦を開始。


それに対抗する様に、分離展開した、車輪の徒が、大きく左右から旋回しつつその包囲を崩すべく、撃ち合う。


敵機の一撃が疾走する車体の側面に命中する。


装甲を融解する。高熱源体である粒子にさらされ其の装甲が爆裂したかに見えた瞬間


光りを放つ光膜の盾が広がり、その一撃を防ぎ切る


「オートで起動したの??!!!」驚愕の顔の侭、春幸が叫ぶが...


「いや、違う。敵の動きも、その反応も全て見えてる。」


攻撃が命中し、勝利を確信して気が緩んだ隙に向かって、車体から放出される。レーザーによる短距離誘導のミサイルを、チャフらしき熱源体を周囲にばら撒きつつ


同時に発射。


(・д・)チッ


砲身を抱えたマダが、それぞれの機体に装備されていた迎撃用のワイヤーの両端に炸薬を伴った。ワイヤーを放出。


接近してくるミサイルに向かって絡み合う様に炸裂したそれが、誘爆を起こして、此方の攻撃を防ぎ切る。


分離したままでは、不利とみて、距離を取りつつ、合体を行うまでの隙を作ろうと砲身から放つビーム光を


収束モードから拡散式へと変更。


面制圧の手で、三方に別れて叩かうアイジェス機の逃げ場を防ごうと奮戦する。


その頃、突如、乱入してきた第二部隊の猛攻でグヤスクトゥスがその数を減らす中、友軍機が撃墜され、


不気味に沈黙を守る。機体群が、動き出そうとしていた。


その数は中央に鎮座する。青いボディーに黒いスカートユニットを纏い、同じように宙空に舞い踊るその姿の機影は、


地面にその噴霧する何かを放出して準備が出来たとばかりに一斉に行動を開始。


その数13機。その絶対の物量を以て戦場を横断し、


その手に構えたやや大型のビームライフルと、円錐状に伸びた突起物を構えて、その銃口から淡い光を放つ閃光を放射し始める。


相手の気勢を制止て、奮闘する僚機達は、突如現れた敵の援軍に、驚きつつ。


補充したエネルギーパックを活用したビームシールドで僚機をカバーしつつ、一度は落とした獲物を持ち直して、


迎撃に入る。


中央部を《HHB》の大型シールドを構えて前線を押し上げる様に進む。リン=山崎が駆るディエムが受け持ち、


四方に、シールドを構えた第五部隊の面々が思い思いに、展開するビームシールドの面積を縮めて、


器用に敵機の攻撃を捌き始める。


そして《フルアクチュアリーカスタム》、《ガトリングマスター》、《サンドマスター》の装備を装着した、友軍機と連携し、それぞれっ手に持った武装を展開し、応撃する。


光りと炸裂する砲撃音を奏でながらも、疾走する三機のディエムが直線で走る光と大きく弧を描き遅まきながらに着弾する。


榴弾と炸裂兵器のコントラストを敵機が踊る様に、脚部のスカートから噴き出すスラスター音と共に、


回避しながらも、その狙いを一気に眼前に展開され応戦する一機に集中する。


《HHB》から放出される粒子偏光防御が、その五月雨式の雨を事も無げに防ぎ切る。


その防御能力に、ヘルメット内部からその表情を窺い知れぬ何者かが、集中攻撃の目標を、リン=山崎から、僚機を守る。ネライ=アッタライナの機体全面に集中される。


掃射の一部は盾で防ぎ切るが、その一部が機体の装甲の一部を抉る様な射線で迫る。


とっさにネライ=アッタライナは。後方の僚機、《ガトリングマスター》を駆るソウハ=クワナイに


「俺は狙いは当たらないが、敵の狙いもあったらないねん!!!こい」


「奴らをモロだしにしてやれ。股間を狙えフルちんぐだ!」


「なんだッ?!それ?!」


「何となくだ!」


一声かけると、二重にダブる軌道を描きながら、一斉に前へと出る。と、放射される閃光を避けつつ、


器用に展開したビームシールドを最小限の大きさに抑え、一発一発を器用に処理していく


背後から追従するソウハ=クワナイは、そうは喰わぬは?!とばかりに前に踏み込んだまま、一機に各部に装着されたミサイルポットから炸薬弾頭を放出ばら撒かれる弾帯の更なる雨に対して


周囲のグヤスクトゥスと共に、対面で踊り続けるであろう新機体、アベレに向かって展開。


僚機達は、勝機を見出したかの様に、互いに攻撃の隙を埋めながら、繰り出す砲撃の光に炙られ


その数を徐々に減らし始める。


それでも、前方の敵は不敵な余裕を見せて徐々に後方へ下がっていく、


その隙にここぞとばかりに攻め立てる二機の機影が、スラスターを吹かせて空中で機体を錐揉み状に回転させながら進む先に着地すると...オートバランサーが利いている筈なのに、その脚元が崩れ


「あれ…?」


嵌った機体と後続が縺れて、大地に衝撃音を奏でながら、斃れ伏す。


その状況をまるで解って居たかの様に、スカート上に開くスラスターを操りアベレとそれに追従する機影が、一斉に射撃を行う。


反扇状に集中される一撃が…その防御する暇も無く直撃、


電子殻チタン合金セラミック複合材の外殻を貫き、コックピット内の融解する熱で炙り、


触れる端から溶解し、核融合炉を直撃した一撃により二機分のエネルギーと爆圧を巻き散らし、


僚機達の視界を防ぐと、俄かに広がるきのこ雲を幻視する。


「あっ!」と叫ぶリン=杉山の手から《HHB》と赤黒い砲身を魅せるセットで展開する銃口がその手を離れて、舞う


直撃する瞬間に展開されたその盾と、返す手と手を絡める様に、その一機を逆に蒼閃光の電磁加速の一射をもって撃ち落とす。


(・д・)チッ


舌打ちを掛けて、自らが張った罠が無為に終わる最中、


その危機を察知して、思考を伸ばした、アイジェスは、同時に操作していた。《ロード―マスター》の車体を操り


マダに対して攻勢を強めていたが、思考のリソースが削れたその一瞬で、


四機のマダが空中で、可変変型、合体し、巨大なMAへと変わる。


一呼吸を置いて繰り出される攻撃を四機のジェネレーターから発振される粒子の壁により、悉く防がれる


・・・


・・・


・・・


「やはり...敵が【falcisファルキス】を使っている...。友軍機を巻き込む恐れはあるが...」


「このまま斃すぞッ」


再びの《天地併呑》(ウニヴェルスム・デヴォラーレ)を起動、周囲の機体の操縦者を酩酊させ、


その絶対的な粒子砲により、背後に控える敵共々駆逐するべく、銃身が淡く光輝く。


稼働する車体をそれぞれ稼働しつつ、アイジェスはその手を試みる...。


一斉に放射を繰り返しながら接近する分離した車体を操り、踊り出るかの様に奔り、そして...。


敵機の側面の10時と12方向から迫るその軌道から放たれる攻撃は全て防がれ、無効化される...。


疾走する各部から、ビーム発振器を取り出し、構えると、光の刃が瞬き、そして湾曲して形成されたビームショーテルを構えると、


其の儘、敵機に接近して、跳びあがる様に飛翔し、すれ違いざまにその一撃叩き込む。


酩酊するぼやける視界の中で、揺れる視界は意味を為さないと、アイジェスは何を思ったのか?


その目をつぶる。


つぶらな瞳のお目目がその光を隠し、酩酊する感覚を捨てて直感のみで、対応する。


斬られた装甲の端を、パージしつつ、放つ砲身の向きを、背後に向かって180度回頭するも


背後から迫る後輪部分が、跳ねる様に飛ぶと、その車体事敵機に突撃、その衝撃によりマダのコックピット内のエアバックが発動。大きく身体をぶつけたパイロット達が鼻血を巻き散らしながら、その衝撃で目が眩む。


更には12時方向から迫る荒れ地を駆けと前輪部分と、中央部の装甲が、接合。


前輪のタイヤが左右に割れると、中央部から放たれるビーム発振される車輪


ビームローダーが展開、敵機の一部を轢殺する様に巻き込まれ、敵機の砲身ごと、


その機影を飲み込むと、溶断するその刃に炙られ、咄嗟に解除しようと心見たその努力は


僅かに花開き、ルドゥス・アレアエ機を筆頭とする四人のパイロットは、運が悪い

銃身を喪っていたアドゥルテリウムの機体を貫通させる。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、光が...。迫ってくるッ!!!」


「「「アドゥルテリウムッ?!!!!!」」」


誘爆しつつ巻き込まれた前輪を他所に、その換装装甲を放棄し、離脱。


荒地の大地を疾走しながら、通り過ぎる機体を仰ぎ見て、


分離した機体の内、一体が宙返りをしながら、後方へ流れたアイジェスに向かって射撃を発射、


狙いあたわず直撃したかに見えたその閃光が、換装装甲を融解しつつ、迫る。


特大の爆裂を起こして爆散する、機影に対して...


ルドゥス・アレアエは、疑問を口に出す。


「なぜ、マダの《天地併呑》(ウニヴェルスム・デヴォラーレ)の影響を受けていない?!」


互いに弾けとんだ機体を大地に着地させ、その疑問の答えを答えないまま、


土煙を上げて、融解されたと思われるその目標に...止めとばかりに、射撃を繰り返す。


「その想い。二度と亡くさない様に、啼けッ!!!《ムスペルヘイムッ(灼熱の国)》ッ!!!!!」


脳内に響き渡るその声と唄に応えて...大きく歪み破損したはずの車体が、破損した電子殻チタン合金セラミック複合材の装甲をパージ。


赤黒く輝くその基礎フレームが浮かび上がり、その躯体が、三色の眩いトリコロールカラーを魅せる。


歪んだ基部が、焼けたフレームが、形状記憶合金の様に元の形へと復元し、一斉に稼働を再開、放射状に金属の枝が、


分散して射撃戦を再開したマダの各機に向かって伸びる。


その枝はに貫かれ、眼前の光景に慄きつつ


燃え上がる焦熱の光景の中で、その掌中から放たれる光りに包まれながら、その機影が


煙の中から飛び出して来る。


そして、射出されるその(たなごころ)から放たれた一撃が、マダの一機に対して伸びる。


放熱する蒸気が、その場を呑み込む。酩酊する蒸気を悉く燃え上がらせ、敵機の優位性を、融解させる。


放たれた一手が、分離したマダの腕部と掴み圧壊させ、咄嗟に構えたビームの刃が掴まれた腕を切断させ、機体に接続され保持されていた


牙を模した砲身をアームで保持しないまま発射。至近距離で放たれる収束式のビーム砲が、


デスペラードの機体に直撃するが、その一撃を掌中の虹の光が悉く防ぎ、謎の熱暴走により機体の操作が危うくなる。


さらには吹き上がる煙の中から現れた赤黒い楕円形のシャープな面差しを魅せる二輪の基部が、破損した箇所を利用せずとも


再び組み上がるかの様に接合され、再び換装装甲となる...


遠く離れた、戦場ではアベレが機体各部のスカート上のスラスターを、たくし上げるかの様に展開し、円周上に展開冴えた光刃を


揃えた大型のギロチンを携え、突進してくる。


浮遊する《HHB》の各武装が、射撃を行い。一機、また一機と撃ち落として行くが、縦に並ぶラインダンスの様相を見せて、


集団で襲い掛かる暴虐の刃がビームシールドとビームサーベルを構えて、応戦するネライ=アッタライナと、交差する。


大型の刃に炙られ、オービット・マインを張り付けたシールドが熱を帯び、ビーム刃の出力差に押されて、


多重に、連続攻撃を行うべく、更に群がる人喰いの刃の一手目を防いだものの、


次の機体が放つビームライフルの一撃がディエムの装甲を弄り、最後に突撃してきた、円錐状の槍から放出される


戦場を覆うビームラムが襲い掛かる。


同時に、展開されるジェネレーター欠損率1%


コンマ数秒で展開され一分限りの《一葉灼伏…》都合、動力炉の最大出力を6%ほど墜としたモノの


瞬間的に膨れ上がった動力炉の稼働により、


戦場一帯に、《ムスペルヘイムッ(灼熱の国)》の第一段階が展開される。


熱暴走を起こす圏内の中で、敵機の動きがまとめて緩慢になる。その隙を逃さぬ様に、奔る。


黒曜石の様な輝きを放ち疾走する二輪の車体が、後方へと噴き出す。蒼い炎のバックファイアーを吹き出し


音の速さを越えて、特大のソニックブームを巻き散らしながら駆けると


その機体に保持していたビーム―ショーテルの刃ですれ違いざまに、数機巻き込み一気に溶断する。


後方からの奇襲に慄くアベレは、機体の制御を喪うも何とか機体の制御を取り戻そうと操縦桿を動かしながら、


それでも応戦しようと奮戦する。


パイロットは、残像を残して迫って来た何者かの姿を、地上を駆ける機動兵器と見て、


スカートを卸して、噴出されるスラスターを罠を張る為の噴霧機構へと戻し、


大地の地盤をグズグズの沼地へと変え、その亡者の呼び声と化して、罠にかかるのを待つ


ふわふわに、飛行しながらも周囲の思考誘導性の《falcisファルキス》を機体操作に流用したそれらの機影は、


未だ精彩を欠いたまま。


瞬時に移動し彼我の距離の僚機達への影響を鑑みて、効果時間を待たずに収束させた《ムスペルヘイムッ(灼熱の国)》に対し、


その隙を逃さぬようにと、機体の冷却システムをフル稼働して立て直し、熱暴走から徐々に回復していく。


再びのビーム刃を展開し、ビームラムを前面に展開、疾走し、切り返した車体を戻し再び、突撃を仕掛けてくる換装装甲を纏ったデスペラードが


何かに誘導されるかの様に、その大地の罠に沈むこむ。


「獲ったッ!!!」


そう叫び声をあげながらも、反応が鈍る機体を操り、その一撃を叩き込もうとした瞬間


男は、笑う。


「勝ったな...」


いつの間にか背後に回っていた。一機のディエムが、アベレの主機に向かってその光刃を差し込み、


コックピット内をその光量と熱で炙りながら焼き尽くし、融解する装甲と消えゆく人の影を残して、


その行動を完全に停止させる。


主機の誘導を喪い一斉にその動きを止める機体たちと、その攻防の間にも、攻撃の一手を繰り返していた、僚機は、徐々に


敵機の数を減らし始めていた。


起動した《一葉灼伏…》の出力任せに泥沼に嵌った前輪と後輪を滑らせながら、ターンを決めて、一回転


弾き飛ばされる泥の波を僚機に浴びせかけ、


「うえぇぇぇなんぞ?!」と、抗議の声を上げる間もなく、迫る敵影に対しての警告を受け、防御態勢に入る。


その機体色は、いつの間にか元の紺鼠色へと戻り、


あれ?一瞬、ドン・キホーテ―の機体ってこんなデザインだったけ?あっ換装装備の何かなのか?と、気が逸れたのも束の間、


緋の華が咲き乱れる戦場の中、敵機の攻撃を引き受けて争う僚機の背を眺めながら、残敵数は6機のグヤスクトゥスと一機欠けた三機編隊のマダ。


漸く終わりが見えてきた攻防の中で、アーデルスワットは、予め記録していた弓を引き絞るモーションで、射出するボールベアリングの一射を放つも、


大きく狙いを逸れて舌打ち一つ叩いて、愚痴る。


「クソ、ドン・キホーテ―なんでこれで精密射撃が出来てたんだ?地上と宙間戦闘の違いなのか?」


重力と空気抵抗を計算して、慎重に引き絞り次弾を放つ、続いて外れたその行為に、嫌気を指して弓を折り畳みつつ


獲物を背面の380㎜バズーカに変えて、散弾を巻き散らしながら敵の防御を切り崩そうと奮戦する。


徐々に僚機達の火力に押されてじりじりと後退していくその状況で、


アイジェスは、吠える。


「母艦は今どうなってる?!」


黒い車体に包まれ、その実情の見えない機体を眺めながらも、リン=山崎は、答える


「確か、第三部隊は整備に入って居るから、残ってるのは第一部隊だな、だがそれも半分は整備中の筈...」


(やはり...そうか...。)


当りを見回し、言葉を紡ぐ、


「装備の一部を寄越せ。あとは俺が遣る。残機の狙いは、これから母艦に切り替わる。」


(奴らは短時間とはいえ、《ムスペルヘイムッ(灼熱の国)》を観た。こちらを狙うより、無防備な母艦を狙って起死回生の一手を打つはず。)


(。´・ω・)ん?


「なんでなの?何故そんな事が分かるの?第一敵は総崩れだよ?」


疑問顔のリン=山崎を他所に、そっと車体を応戦する僚機達の横に添えると、その掌中から、衝撃波を伴う光を、撃ち出し


ついでとばかりに、敵機と、構えたシールドごと、後方に吹き飛ばしつつ、


小さく


「装備の連結ロックを解除しろ?!」と、指示を出しつつ


換装装甲から覗くマニュピレーターが次々と僚機からその武装を引きはがして、疾走を再開すれ違いざまに構えた


ビームショーテルの一撃が、敵機のビームシールドを避けて腕部と装甲を斬り斃し、その場に叩き落す。


残りは散開して弱腰になったグヤスクトゥス四機…この場は任せて問題なかろう。


(未だ、完全に機体の冷却は終わらず、暫く敵機の攻撃は考えずとも良いが、位置関係的に…どっちが先に到着するのか?)


浮遊する《HHB》の武装を引き連れて、音の壁を破って疾走する黒曜石の車体の向かう先は...荒れ地を警戒しながら進んでくる《R.I.P》と《エンゼルフィッシュ》の艦影…


艦橋を内部に収納して警戒状態に入ったナンネン=ハイマンは、指揮を取りながら、現在出撃できる機体の有無を確認する。


出せる機体は、整備待ちで、手付かずで合った第一部第の2機のみ、


DEFCON(デフコンを発令したものの。空の機体は全てだしてしまったが、オペレーターが、レーダーと無線の妨害区域に侵入し、


恐らくとの前提を指摘するも敵機の機影を確認する。


「ええい、第二部隊に戻ってくる様に長距離レーザー通信で打電」


「目標があやふやで、届きません。」


(・д・)チッ


「帰還信号を撃て、出せる機体を出して、時間を稼ぐぞ。」


「射程距離に入り次第弾幕を張れ。主砲及びレーザー短距離ミサイル装填準備、CIWS(近接防御兵器/機関砲)起動。」


ソッチ=コッチ、アッチ=コッチの兄弟は、整備ローテーションに入る間際の休憩中に、叩き起こされ不満を言うモノの


オペレーターから敵機の接近をしらされ、現状出られる機体が、自分達しかないと知ると、


右往左往してアッチコッチに、嫌がる様に転がり、駄々を捏ねる


その様子を...。微妙な面持ちで眺める。アンザスは...。


「拙者が出ようか?」


「やだ僕のべイヴを他の奴に触らせたくない。」ぷぃっ


と、更にへそを曲げる


うーん、どうしろと?


そうして嫌々ながら、最低限の武装を装備した二機のディエムが迎撃に出る。


「セレブルム03、なんでみんないないんだ、死にたくない!!!」


「セレブルム04、同じくサボりたい!!!」


「「逝きたくないよぉ~!!!」」


若干の頼りなさを滲ませながら、二機のディエムが、戦場の大地で、迎撃に出る。


...


...


...


仲間の一機を喪い、熱暴走により、装備の大半が使用不能な状態のまま、突き進む三機編隊のマダは、


お互いに先ほどの出来事を分析する...。


先ほど、敵機が開発中の《ニヴルヘイム(霧の国)》だけではなく、試作機構である《ムスペルヘイムッ(灼熱の国)》すら操った。


あの機体には、いくつ武装があるんだ??!!


「各機砲身の冷却及び、機体アクチュエーター各部の冷却機構を最大。敵母艦に接敵するまでの間に、墜とすぞ。」


「帰る場所を喪えば、唯の烏合の衆となり果てるだろ?」


そう断定しつつ進むと、敵母艦に察知されたのか?主砲やミサイルの火砲が、俄かに周囲に着弾し始め、


それを、展開するべく起動させたビームシールドは、熱暴走の余波で起動できず、仕方なく機体をローリングしながら、回避運動に入る。


更には向かう先で、二機の敵陣営の標準機…確かディエムと言ったか?その機体が、ビームライフルの銃口を向けて、


此方に向かって射撃戦闘へと移行するような動きが見える。


此方の砲身の冷却は、僅かに出力が弱いままではあるも、最低限の射出が可能な状態まで戻り、


三機のマダが、互いに動きをフォローしながら、駆ける様メインスラスターを吹かせながらも浮遊し、そして飛ぶ。


一行にこちらの攻撃が当たらない事に、冷や汗を流しながら懸命に乱れ撃つが、敵機の動きに翻弄され

無為にビームライフルのエネルギーパックが尽きる、互いにフォロ―しつつリロードに入るが、


その隙を縫って、放たれる低収束率のビームが母艦に襲い掛かる。


弄る様に放たれた一射が船体装甲の一部を融解させ、その一部が弾け飛ぶ。


「ダメージコントロール。何処に当たった?」


左舷(ひだりげん)第三区画。火災発生…」


「各員に消火に当たらせ、負傷者を確認しろ。CIWS(近接防御兵器/機関砲)を密にして、当たらなくとも相手に撃たせるなッ!!!」


「ええい、フリーのはずのアニスは、出せんのか??」


「それが...機体トラブルで出せません。」


揺れる船内の中で。これはヤバいのでは?とアンザスは、自らの乗機であるディエム ペルディディを視るが未だ、整備が終わらず、


仕方なくあたりを見回し一応の整備を終えたディエムを見つけると咄嗟に乗り込み、懸架されてていたビームライフルとシールドをその手に


予め登録されていたモーションに併せて受け取ると、制止する整備員達の声を無視して、出撃する。


射出するタイミングで降り注いできた閃光を、機体を倒して回避して、宙を滑空し大地に降り立ち当りを見回すと、


周囲に三機の敵機が宙を舞い踊り、僚機を翻弄して、次第にその攻撃の精度が上がって良く、


その状況を覆す為に狙いを付けて、光放つビームライフルを一射するが...。


なんの圧も与える事なく回避される。やはり通常の兵器だと、敵の機動性に対応できず、当たらない...


僚機達は、当たる確証も無いまま、乱れ撃っているあんな使い方をしたら、あっと言う間に残弾が切れるぞ...。牽制すらできなく成ればそれで終わる...。


ソッチ=コッチとアッチ=コッチの兄弟に向かい、アンザスは、


「セレブルム03、04、無駄弾を打つな?牽制だけで良いでござる。そうすれば...きっと...。」


尻を右往左往しながら操作するコックピット内で、その尻が熱く熱を以て焼ける。


(。´・ω・)ん?


あちちちちッなんで?


・・・


「あーあ、行っちまったよ。あの整備中の機体、ジェネレーターとコックピット回りのの冷却装置が、ぶっ壊れんだよな...今頃蒸し焼きになってるぞ...」


と、先ほどアンザスを静止していた。整備員が、言葉を零す。


動きの精彩を欠いたその機体を他所にマダの各機が、三重連の星の連なりの軌道を描き迫る。


収束率を通常時まで持ち直した、輝くその砲身から、セレブルム03のディエムが標準装備する耐ビームコーティングのシールドに直撃すると


その盾をやすやすと貫通。融解しながら、その機体の腕部が吹き飛ぶ、その余波で、獲物を取り落とすも、


意地なのか、残る腕部に残されたビームサーベルを引き抜き、接近戦での巻き返しを試みるが、牙状の砲身から放つビーム光を、


照射から、刀身を保持し、横殴りに切りつける。


ディエムの振り上げるその刀身ごと、一刀両断に切り臥せるその一撃に、切り臥せられで、機体が爆散する...。


其処には戦場の幻影など無く、ただ事実のみが残る。


煙を上げて放出された、何かが空中でアッチの方へと向かい。アッチ=コッチの構えたマニュピレーターがその泡に包まれたそれを掴みとる。


(一機、殺れた?どっちだ?アッチかソッチかそれはともあれ、アちちぃぃぃぃぃ尻が焼ける。)


此処は自分が何とかせねばと、不調を抱えた機体で、突撃を敢行する。


「母艦は墜とさせないッ!!!!」


意を決して突撃するその光景に、油断なく、フォーメーションを組み乍ら、三機のマダが、それぞれの武装を展開する。


最初に展開された。炸薬をワイヤーで結んだ武装でアンザスが駆る。ディエムの手足を縛り、そして、起爆と同時に、


二機目のマダが砲身から収束ビームを放つ、そして機体が避けた瞬間に、光剣の刃を振り抜き、対象を絶命させる。


そのコンビネーションが炸裂。


一手目の起爆により、脚部と腕部が弾け飛び、無抵抗のその機体に向かって、光の雨が照射され、勝者は誰か?を声高に叫ぶ。


その声に...凄絶な結果が待ち構える。


収束され、そして、一瞬の討ちに、放たれる閃光が、その機体のコックピットを寸分違わず、重ねて撃ち貫く。


溶鉱炉の様に溶けだした装甲が、マグマの様に隆起し、弾け、大地を焦がしていく。


その場にいた者は、見る影も残さずこの世から消え去った。


先頭のマダを駆るルドゥス・アレアエは、驚愕の声を上げる。ッ


「カエデス、エブリエタスッ?!何故だ?!」


蒼く、淡く、そして陽炎を纏って放射された一射が、走行をやめて、地平線の先から覗き見るその姿に、驚愕する。


その手に持った。やや大型の砲身を備えた紺鼠色の機体が、南下する難禍の渦中にて吠える。


機体を反転し、構えた牙状の砲身を抱えて、後ろから撃ち抜いたその対象に向かい、最後の砲撃戦を仕掛ける。


カエデス、エブリエタスの両人とも突撃した時にはビームシールドを展開していたはずなのに、それ毎、二機同時に貫かれている。


もしもタイミングがずれて居なかったら...。一緒に撃墜されていた...。


恐らくこのマダの装備と同じく、ビームの収束率を変更して打っている。


ならば、防御は捨てて、この一射いや、砲身が焼け着くまで撃ち続けるのみ、


決死の覚悟で突撃する。


その光景に、男は二ヤリと笑い。そして、流れる様に耳に残るリズムを刻みながら唄を謡う。


敵機の逃げ場を失くす様に放たれた、380㎜の砲弾と、多数の物理炸薬によるミサイルの雨でその動きを一カ所に限定させる。


その狙いに真向から、向かい来る光の奔流に向かい。狙いすませた一撃が放たれる。その効果は一瞬、刹那にも満たないその僅かな瞬間に、


それは放たれる。


唯の一瞬に収斂を繰り返し凝縮圧縮された一撃が、加速する粒子砲の一撃を真っ向から貫き、星型の光をその機体に刻みこみ爆散させる。


その光景を眺めながら、尻を丸焼きにして、その痛みに叫ぶ男の声が木霊する。


...。


...。


...。


「なんで?」


続く。

毎月、月末最終日に2話更新予定。

誤字脱字、誤りがあったら教えてください修正するので、ちょっと早いけど。前倒しします。

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