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無法者の詩  作者: 唯の屍
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第六話「砂漠の魚の捌き方」

そろそろ、限界点が近い...。落下するアンザス機は。どうにか無惨な機体の侭でも、シールドに残る偏向機を駆使しつつ何とか熱に耐えているが...。


腕部の手掌をワイヤーを結ばずに、射出。


その機体前面へと割り込みさせると《Pyrolysis Hands(パイロリシスハンズ)》を発動。


熱分解の火により、迫る熱を熱で分解し、2万度を超えるその熱量を防ぎ一筋の流星へと変えていく。


武装を切り離し、自らは《Pyrolysis Hands(パイロリシスハンズ)》を繰り出す一部の機構を放棄し、大気との摩擦に爆散するかに見えた。


デスペラードが、逆さの機体の侭、鬼面のレッグカバーで覆われた脚部が展開し、敵の各機が、《傾城魚》(チンチェンユー)のオービットマインやブラインドアンカーを盾に、


大気圏突入へとその機動を変えた瞬間に、何を思ったのか、跳び蹴りを加え、八艘飛びの要領で次々と、その脚部で、踏み折りながら、


次々と撃墜していく


「おぃ!!!!!!!!!やめろ、今はッ」


「ママぁーーーーーーーーーーーーー!」


「辞めろ!辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ!卑…ヒッ」


「死にたくない。死にたくない。死ッ!」


「おおッ!ちょぉぉっケツを掘るなッ!」


「クソッ!あっ糞漏れ…あッ♥」


「あ”ッあ”なんで、蹴らないで蹴らないで今はッ!!!!!ああああああああああああああああああああああああああああ」


確率機跳《鶴立企佇》(かくりつきちょう)…機体を跳ね跳び、繰り返す確率の低い賭けに出て、まるで獲物を待ち構える鶴の如く伸びるその脚で、


大気圏突入で生じる炎を踏み砕く敵機を乗り換えながら、移動してやり過ごす無法と思われるその所業に、


慄きながらアイ=アシンは、機体を安定しつつ徐々に戦場から外れながらも《Pyrolysis Tooth(パイロリシストゥース)》を


発動し、緋色の炎で、大気圏突入する炎を相殺しながら、流れていく。


その日、地球には、星が降った。


散った命は還らず。その猛威を避け、救われた誰かの姿のみが地上に降り注いだ。


地球への落下軌道に乗った母艦は、放出される発砲状のスプーマに包まれ、大気圏の摩擦をものともせずに、


大きな衝撃を伴い着水する。


だが、部隊の戦力は大きく二分され、地上へ降り立った《R.I.P》と整備艦エンゼルフィッシュと、重力圏内からのスイングバイにより離脱した《ASAP》へと別たれる。



《ASAP》側に乗機し、離脱した人員は...


ハルズ=アルマインの第四部隊、臨時で編成されたリン=山崎を除く、ゼリトス、コムラ、コリストスのディエム ペルディディ(複座式)1機、ディエム2機


サルバトーレ=レトリバー率いる第七部隊のアハト=佐伯、イングリット=ワークマンのディエム ペルディディ1機、ディエム1機


第六部隊、各員…ディエム4機


搭載できる機体数を大幅に超過していたが...恐らく機体を捨てるか?甲板にでもあげておけば…問題はないだろう。


無事、戦線を離脱した事を祈る。


敵戦艦は、本艦を追尾して、大気圏下に降下していった。寧ろ、戦力を喪ったこちらの


艦長であるナンネン=ハイマンは、艦船が無事着水したことを確認し、各員の生存者及び船体の破損確認を指示。


「本来の目標の帰投には、叶わなかったが...。オペレーター現在地を割り出せ。これより、予定を変更僚機を回収後、地球のCarpe Diemカルペ・ディエム本部へ向かう」


「艦長、本艦は、航行可能ですが...。《エンゼルフィッシュ》は...。」


「ええい、月面移動用の《マグレブ》磁気浮上式低重力ホバーがあるだろう。機動力は落ちるが、航行に大きな支障はないはずだ。」


「現在地判明、周囲に敵影無し、地中海、34°22'55"N 17°59'39"E付近の陸地から300キロ程度離れた地点です。」


周囲に現存する僚機の姿をイゴールは、粒子の濃度が濃い場所を重点的にセンサーを駆使して、味方識別コードを持った機体の捜索を行う。


・・・


・・・


・・・


大気圏を僚機や母艦から遅れる事、降下地点を大きく離されたデスペラードは、残るマニュピレーターから、噴射される、その勢いで、


眼下に広がる。水面へと着水する。


各機器から提示される情報を眺め、僚機達の安全圏への離脱を確認。


先ずは、孤立しているであろう。アンザス機の姿を探す。


周辺に展開された重力感覚器官《Sensorium Gravitatis》(センソリウム グラウィタティス)を起動、味方識別コードで対象を検索し、


互いを互い探し続ける。その捜索は、遅々として進まず。日が暮れる。


その間にもエンコード状態のまま、低速状態をキープし、向かった先で、ダミーのバルーンを展開し、半ば水没しつつ浮かぶ、


機体を発見。


機体の上では、火が踊り、魚の焼ける良い匂いが漂う。


「おや?あれはアイジェス氏では?」


...


...


・・・


ここ迄は、やってやった。あとは自分でどうにかしろ…


「デコード、《 トゥ フイ、エゴ エリス(我は汝であった。汝は我になるであろう)》」


脳裏に過ぎるその声に併せて眼前で、その機構が可変していく。


音声認識による識別により、使用者権限を確認。それまで行使していた機体と駆動系等の解放を解除。


コックピット内部では、身体の各部で飛び出したアームや、拘束具による、パイロットの手足を固定が解除され、包み込まれていた円筒状の基部が、再び収納同時に、


機体の外部のバイザーや各種部位内蔵されるロックボルトが水蒸気をあげて、再度固定。長方形のバイザーから露出したツインアイが再び、その姿を覆い隠す。バイザーから突き出されたそのアンテナは光を喪いその姿が消え、それまでの威容が何の変哲もないその機体のモノへと還っていく。


そして、覗く、線型は解放収縮を繰り返し、その面差しが、牙剥く鬼の口腔から鋭く無骨で且つシャープな主顔おもがおの景観へと也。最後に特徴的な一本のブレードアンテナが頭部へと下がり後頭部へと収納され、其れまで、マニュピレーターと鬼面のカバーとなって機能していたそれらが思い思いの軌道を描きながら元の手足へと変わり、それまでの変態的な八つの顔と、六本の腕、から一眼、その何の変哲もない四肢へと其の様相を魅せる。


最後に、水没したDiem(ディエム) Perdidi(ペルディディ)が、掴んでいた腕部が、起動。逆回転で、デスペラードの腕部に収まると


いつもの姿へと変わる。


焼けた魚を振りながら、ぴんぴょこ跳ねるアンザスは、お魚を咥え、急いで機体に乗り込むと、モガモガとワイヤーでの接触回線での接続を試みる。


「アイジェス氏!無事でござったか?生憎、某の機体スラスターが逝かれて、身動きが取れないでござる。」


(。´・ω・)ん?


「アンザスか?どうやら無事だったみたいだな。ここは地球か?」


「そうでござる!お陰で助かったでござすッ!」


(。´・ω・)ん?俺は何もしてないが???


スラスターを噴かせ着水すると。沈みゆく機体を咄嗟に膨らませた、ダミーバルーンを放出


浮力を利用して、水面に固定すると、一先ずの一旦、陸地を目指すべく


マニュピレーターを稼働させ破損した機体の修理を開始する。


機体操作を自動修理モードで起動、ディエム ペルディディのスラスターの調整を開始する。


火花を散らしながら、一時的な破損部位の補強を開始


「へー、そんな事できるんですな。で?魚食べます???」


と、ぴちぴち跳ねる魚を咥えて、話しかけてくる


(。´・ω・)ん?その魚いつ獲った???意外にサバイバル技術高いな。なんでものともせずに

生活感だしてるんだ?と、疑問(/・ω・)/がぉーとなる


「ん?いや、某、地球暮らしも長かったですしな、任務で降りた時に、訓練期間中にいつもトラブルで撃墜状態になるでござるので、何気にいつもの事でござる。」


...なんで、敵の存在しない訓練で撃墜されるんだ...。


まぁ、腹も減ったし、コックピット内の冷蔵庫からの飲み物を取り出して、

機体から降りると、


機体を伝って、ゆらゆらと揺れる足場を降りて合流する。


海面は酷く穏やかで、それでいて、嵐が訪れる様な真近を匂わせる。


それでアンザスは、我関せずと、機体の上で魚を焼く。


「おい、それ整備士に、後で怒られないか?」


「背に腹は代えられないでござる。」


ほれ、とホクホクの白身魚。何の魚かは分からないが、こいつが平気で喰っているし、

まぁ大丈夫だろうと、かぶりつく、


仄かな塩味を感じ頬張り、修理が終わるまでの間、世間話でもするかと、


アンザスは、気になった話を振り始める。


「隊長たちは、無事に、到着できたでござろうか?」


「最後に見えた状況では機体の損傷は無かったし大丈夫だろう」


「そうでござるか。」


「時に、アイジェス氏、ボギー1ついて、知ってる事はあるでござるか?」


特に、今話す内容もないし、唐突に話題を振る。


「ちょくちょく、その話題を出すけど?一体なんだ?それ?」


そうでござるか...


ぱちぱちと何処から取り出したか分からない木片のチップを焚き木にして、炎が踊る。


アンザスは...脳裏でかつて聞き知った。話を思い返し言葉を切って行く。


アドサドレ…資源衛星の一つとして、L5宙域に牽引されて来た。


そのひと際大きなその存在の既得権益の奪い合いにより、生じた。


牽引してきた作業者と、それを横取りしようと権利を主張する。財閥の台頭。


そしてそれを納めようと、駆り出された軍閥の一部が、それぞれの権利を主張した。


奪い合いに発展。血みどろの戦闘へと変わり、正式な発表では、


253機とも言われる機体の被害と多大なる人的被害を以て鎮圧されたとされる。


その事件についての語り始める。


それは、今から10年ほど前、まだ13、14歳程度の学生だった頃の話でござろうか?


まだぴちぴちのローティーンの利発だった、某は...


(。´・ω・)ん?


その表現今の話で必要だった?


まだぴちぴちのローティーンの利発だった、某は...


あっそれまだ続くんだ。で?


塾の帰り道に、偶々街頭に備えられたTVの画面に釘付けになったでござる。


それは、三色のトリコロールのカラーの機体が、次々と、其の頃は最新機とされていたディエムと、前時代機となる、ヴェリタスの群を


敵味方区別なく次々とその手で撃墜していく姿が、戦慄を以て某の目に焼き付いたでござる。


詳しい話は、事件が解決した後の報道でしかの情報しか分からなかった。が、その様子は...。と目撃した光景を語りだす。



そのある意味目立ちそうな三色の輝きを放ちながら、上下逆さまで踊り舞う


その優雅な姿は、質実剛健、光り輝く閃光を振り撒き、光の星々がとなった、それに触れた機体が十字疵の形に消滅していく、


抉られたコックピットから投げ出されスプーマを放出しながら視界から消え去るその姿に驚愕しつつも、


場面が切り替わり、次の瞬間には人が死んだと、その事実のみが伝えられる。


その犠牲者の数は...百余名


生存者は、その恐ろしさに驚愕し、精神を病んで、次々と退役していった。


結局はその資源衛星の管理権限は、全くその争いに加わらなかった、コロニー公団預かりへとなる。


...


...


...



某が見た光景はそれだけじゃない...。


画面で踊る最中、コロニーに穴が開き、数機のディエムとヴェリタスが、コロニー内部へと逃れ、


その錯乱気味に発射された光が、某の眼前へと迫り、非常用のシェルターに入り込む間も無く、


撃墜されたヴェリタス…


淡いクリーム色に塗装され、各部がディエムほどの先鋭的なデザインでもなく、


さりとて、重厚な表面とも言えないスタイルに。ややスリムで各部の関節部を覆う様に展開された多重装甲を備えた


一機がその光景がスローモーション流れる中で、同じタイミングで降り注ぐ。


ビームの放射を逃れたとしても誘爆するその機体に巻き込まれ、絶死となるであろう瞬間に、、


視界が一切の目視を拒絶する様な光が、一体を包み込む。


気付くと目の前にトリコロールの彩色を放つ異貌の徒が、逆立ちではなく、その手でつかんだ、ジェネレーターらしき部位を氷結し、貫き掴む拳を振り抜き、機体を優しく地面へと置くと、何事も無く、去って行った。


最後に観たその姿は、三色の鮮やかな色から赤黒いフレームへと変色を繰り返しその姿を魅せつつ消えさる様が目に焼き付き、


ふわりと、周囲に何の影響も与えず、スラスターを噴かすことも無く飛翔するその姿をいつまでもいつまでも眺めていた。


助けて...。?くれたの?


少年は...アンザスは、TVのニュースで流れるその情報と、その時の光景の乖離に、思い悩み懊悩する。



彼は人殺しだ...それは間違いない。だが、その姿に、その行動に、一抹の違和感を感じる。

果たして、本当にそうなのだろうか?



そんな、話を聞かされて。アイジェスは呟く。へー大変だったんだなァ。


まるで自分には関係ない話の様に、答える姿を見て、やや、自信がなくなってくる。機体の配色もその姿もややあの時と違う。


だが、戦闘のシーンでは、虹色の炎を使ってディエムたちに応戦する姿も目撃している。


まだ、何か謎があるのか?それとも同型の別機体なのか?其の謎に斬り込むために、その謎の大本たる。


機体を手に入れた時の経緯を聞いてみる事にする。


「それで、アイジェス氏、その機体は何処で手に入れたのでござるか?」


そうだなぁ、あんまり話すようなことは無いんだがな、と、過去の出来事を話し始める。


それは大体10年前後の時期に、彼女と別れて暫く立った頃、名も無い老人に、この機体を渡された。


「その由来は何も知らない。唯の貰い物だよ。」


「そうですかな...」(同じ十年前の時期に手に入れた。これはあの事件が起きた前に贈られたのか?それともその後なのか?)


「ただ、ちょっとおかしなことを言って居たかな?」


「《 トゥ フイ、エゴ エリス(我は汝であった。汝は我になるであろう)》この言葉を忘れるな。己の命運は己で変えろ。」


全く意味が分からないよなぁっと、ため息交じりに応えるその声と共に、遠くで雷雨が発生する稲光を感じる。


これはそうそうに雨が来るな?丁度、スラスターの補修も終わり、互いの機体のコックピットに乗り込む


その間にもアンザスは、思う。あの時助けてくれた誰かの姿が、彼でなくても良い。それでも協力しようと、


小さく頷き、その拍子で喉に魚の小骨がささり、嗚咽する。


oh...No


既に探査済みの母艦の方向を機体で指さし、ダミーバルーンを切り離すと、スラスターを点火し、水面から離脱。


「みんなも、某たちを心配してるであろう。」


イゴール達は、母艦たちの推進器の調整を行いながら周辺を警戒と共に僚機の捜索をおこなっていたが、


ディエムを駆るリン=山崎が、二人の機影を確認し、合流。


此方に戻ってくるとの事、


その知らせに安堵しつつ、疑問が残る。何故あの絶対絶命の状況下で、二人とも無事だったのか?そして、アイジェス…


特に訓練も受けて居ない三級運転技師者が、ハルズ=アルマインやアハト=佐伯と共に、奮戦し、寧ろ歴戦の二人を牽引する様な動きを見せていた。


営倉行き間際のフレンドリーファイアーを行った、ちぐはぐさに、疑問を持ちつつも、


それでもエース部隊と虎の子のDiem(ディエム) Perdidi(ペルディディ)を喪った痛手を考慮して、謎はあるモノの奴の力は必要ではある。


戻った機体を随時修理と補給に入り、船体の駆動系に手を居れつつ、コーディー=スルーは、改修ついでに敵から鹵獲した機体及び、新型ジェネレーターを


取り出し、盗聴や怪しい信号を発して居ないか?の点検を行う...


やはり、何かの信号がジェネレーターのに付随されている。現在地を知らせるであろうその追跡装置が発見され。


それまでこの部隊が先回りされていた理由が判明する。取り出し破壊するも、捕虜を殺害した謎については、保留したまま。


何者かが潜入した形跡はなく。裏切者の線は考えられず...恐らく、恨みを持った何者かが...。行った事だろうと結論付けて、


Diem(ディエム) Perdidi(ペルディディ)の作業に取り掛かる。


新型もこの二機しか現存せず、イゴール機は、その大半のエネルギーを消費している。戦力の減退に頭を悩ませ、一応の目的地を定めはしたが、


航行間もないエンゼルフィッシュに問題点が出る。


本部があるギアナ高地までは、約7500キロから8000キロ…船足の遅い《エンゼルフィッシュ》に併せるとしたら、


数日から一週間かかる。


然も、《R.I.P》は、内蔵している大型スラスターと地軸の地場と反発して浮遊する《レヴィタス・ヴォラーレ》により、重力圏内での飛行が可能だが、《エンゼルフィッシュ》に関しては、山岳部や高原地方を抜けるのには、どこかの基地やドックに入港し改修を行う必要がある。


現状では直線距離での進行は、かなり難しい。


基礎の離陸用の装備に関する設計図及びデータは、既に所持しているが、問題は何処の港に寄港するか?


Carpe Diemカルペ・ディエム「今を生きよ」との慣用句と伴に、地球圏を統治する。その組織が保持する重要拠点は


かつての、隕石落下の影響で、基本的に、気候の変動が少ない、赤道直下に集中している。


拠点の一つとして、かつての訓練の任務地として、東洋の幾つかの拠点に当りは付けられるが、此処からは遠い。


南米の本部に向かうには、大西洋を横断する必要がある


となれば、と、艦長たる自分がその進路を決めねばならない...。


アフリカのキブ湖周辺には、比較的大規模な基地と設備があるブカヴがある。


世界に降ったとされる。五つの巨大隕石の跡地からもある程度距離があり、かつ、避難してきた人々の流入により、血で血を洗う闘争と、文化交流が起こり、それまでの文化圏が混じりあい。


人の肌の色も、かつてのモノとも気候も地形もそして街並みも様変わりしていた。


そのかつての姿を知るモノは、存在せず。それでも人々は生き続ける。


先ずはここをに向かうべくかと、思い悩み懊悩し、思案する。


「艦長、目的地は如何しますか?」


操舵手が、艦長の決定を促す。


「航行する進路はこのまま南へ。微速前進。砂漠を抜けてキブ湖周辺のブカヴへ向かう。」


スラスターを吹かせ、進路を定めて船は突き進む。


次の転進地が、砂漠と聞き、アイジェスは、回収された機体を目の前にそれまでの稼働に悲鳴を上げているかの確認作業に取り掛かる。


最後まで残って戦い続けて疲れているだろうと思われ、メンテナンスに手伝いを申し出るモノが現れるが...


機体のメンテナンスに必要なモノが...。現状、水の補給と、推進剤の充填と弾薬の補充のみになる...。機体のメンテナンスには手伝いは不要だが、


充填と補充に関しては確かに手間がかかる。他に任せられる事については、手助けを頼み、


作業に取り掛かる。やはり、機体のチェックでは、不具合や破損は見られず。


次の舞台になるであろう地域用の装備を思案し始めるが...。機体の備えられたタブレットを使用して、謎に描かれている図面を再確認して、


次は、これが必要になるのか?と、素材になりそうな、既存の兵装を持ち出し、使用の許可を取る。問題は...あの部分が必要だが...許可を取るのは難しそうだな。


「おーぃ、アイジェス、ガトリング砲のエネルギーパックと実弾の補充は終わったぞ?他に何かあるか?」


「推進剤の補充を頼めるか?」


「了解、了解」と、オーバーオールにTシャツ姿のメカニックが、風船ガムを膨らませながら答える。


「アイジェス氏~手伝いにキタで、ござそうろう!」


手に大量のドーナッツを頬張りながら、もしゃもしゃと、話しかけてくる。


「アンザスか?特に手は足りてる。」「おや?珍しく手伝いを許可したでござるか?良い傾向でござる!」


「次の戦闘は、恐らく砂漠戦になるし、大西洋を横断するとなれば、水中戦用の装備も必要になるかもな?何か使えそうな装備はあるか?」


「地上戦用の対地ミサイル程度なら恐らくあるでござるが、流石に魚雷はないでござろう。船体の改修で、基地によるらしいから、その時の補充品に入れて貰えばよかろう?」


そうか、水中戦なら、水中銃のハープーンが必要になるかもな、とブツブツと独り言を言いながら、装備の組み立てをタブレット上で操作していく、


以前、船舶に持参して持ち込んできたインゴットを使用。それは、この機体を貰った時に一緒に渡されたものだが...。


上手く行けば新しい武装を作れるかもしれない。そうしてコックピットに乗り込み、


書き溜めて置いた部品の製図を元にCNC(Computerized Numerical Control)機械と3Dプリンターを組み合わせた、自動実行プログラムを起動


その画面に表示された文字は、《Gifted Unchained Navigators Defying All Misconceptions》と刻まれ「天より与えられし力を持って、何者にも束縛されず、すべての誤解に立ち向かう案内人」を自称するべく、其の行動を開始する。


其処には、一枚の黒く長く分厚い。デスペラードの基礎フレームと同じ材質の赤黒いフレームの彩ヲ見せた武装コンテナとなるシールドらしき装備を組み立てる。


その内部に様々な置き換え可能なアタッチメントを時に、《エンジェルフィッシュ》で精製されたインゴットを使用し、次々と積み込んで行く。


多目的溶断ビームナイフと組み合う用に作られた、赤黒いアタッチメント。


その短い短銃身のそれが組合い、一丁の拳銃型のその姿を露わにする。


コックピット内のコンソールの画面上に、武装名の選択画面が踊る。


慎重に《Hand Hundred Babylons》(ハンドハンドレッドバビロンズ)と命名し、そして、武装ラックに懸架する。


その姿を不思議そうに眺めるコーディー=スルーは、まじまじと眺めるが、まぁ、見た目状は

少々大型のそのシールドと、余り見られない単銃身のビームガンに、興味を失い。


アンザスが駆るであろうDiem(ディエム) Perdidi(ペルディディ)の改装に専念する


D(ディフェンス)型だけでは、燃料が残り少ないA(アドバンス)型と、別たれた別機体の


役目も兼ねる必要が出来、CD(クリティカルディフェンス)型への改装を開始する。


目指す方向性は、敵から鹵獲した機体のデーターバンクに存在した…機構と、


撃墜した敵機の素材を使い、新武装を試みる。


一仕事を終えて、タラップを降りてきたアイジェスに向かい、不思議そうに問いかける


「準備は出来たでござるか?しかし、あれ?でもなんでアイジェス氏次の敵の襲撃が、来る事知って居るでござるか?」


頭に??????を並べ立て、不思議に思いつつ、アンザスは、食べる手を止めずに頬張り続ける。


あッ!


と、いつの間にかおいて行かれた事に気付いたアンザスは、去り行く背中を追いかけ、


その場を去って行く。


格納庫からでて、右手の通路を抜けて、進むと、春幸が、不満そうに、此方を睨んでくる。


(。´・ω・)ん?


どした?


「どうしたもこうしたもあるか?あんた何考えてるんだ。味方を撃って営倉行になりかけてんじゃねぇよ。」


(。´・ω・)ん?


そういやぁそんな話し合ったな。と、他人事の様に思い返す。そもそも実際に撃たれた人員が宙に残され、事実関係が不明のまま、



気を利かせたイゴールが、実機の機体のフライトレコーダーを確認。


位置関係及び、放たれた射線の状況を確認したところ、その狙いが、僚機の救援の為、放たれていた可能性を示唆し、艦長にとりなして、不問とされる。


以後は、口頭の警告で済ませる様に訓告を喰らう。


その様子を眺め、アンザスは確認する。こやつ、誰かを助ける為なら同じ事するな...。


さて、御小言も貰ったし、次の目的地に...いや、戦場に入る前に、出来る事をしよう。


大気圏への落下により回収できた。アイジェスとアンザス機以外の各機も踏まえ


艦橋では、欠けた第四、第六、第七部隊の人員を補う為に、今までの部隊編成を組み直しし始める。




第一部隊

・宗谷=大石・・・乗機ディエム現存

・パルメ=ザン・・・乗機ディエム現存

・ソッチ=コッチ・・・乗機ディエム現存

・アッチ=コッチ・・・乗機ディエム現存


第二部隊

・リン=山崎・・・乗機ディエム現存

・秋桜=アーデルスワット・・・乗機ディエム機体修理中

・ソウハ=クワナイ・・・乗機ディエム機体修理中

・ソコニ=アルナ・・・乗機ディエム機体修理中


第三部隊

・イゴール=マッケンジー・・・乗機ディエム ペルディディ

・フォイマン=ハイマン・・・乗機ディエム現存

・ミスルギ=劉・・・乗機ディエム現存

・アイジェス=ブラットワーカー・・・デスペラード


第五部隊

・オウ=コワイイ・・・乗機ディエム現存

・オマエ=ナニモノ・・・乗機ディエム現存

・シナドロ=アマイ・・・乗機ディエム現存

・ネライ=アッタライナ・・・乗機ディエム現存


第七部隊

・アンザス=フライ・ハイ・・・ディエム ペルディディ

・アニス=フライヤ-・・・乗機ディエム現存


残っている部隊は・・・第二部隊のみ、リン=山崎が宙ぶらりん状態、

その結果を鑑みて、一先ず修理が終わるまで第二部隊は待機。残り三部隊のみで切り抜ける必要がある...と


一抹の不安を覚えつつも、船足を速めつつ、海上から、海岸線を越えて、陸地へと乗り入れるべく進む。


地球は、未だ敵勢力圏では、ないはず。だが警戒した事に越したことはないと、第五部隊を前面に展開し、哨戒活動を行いつつ


砂漠地帯へと差し掛かる。


未だ、敵の機影は確認できず。跳ねる様にスラスターを吹かせて進む機影を何者かが...覗いていた。


...


・・・


・・・


「中央から連絡があったあれが、目標か?我ら砂モグラ部隊の網にかかった獲物は???」


「タルパ・アレナリア 、目標は、中央の《聖痕》(スティグマ)持ちが束になっても斃せなかった相手ではある。」


「ここは回収した生き残りの新型機の補修が終わるまで待った方が賢明なのでは?」


そう言って具申する。副官に向かい。その胸元の筋肉をぴくぴくと躍らせる男は、その意見を否定する。


「敵の総数は、艦影2、機体総数4機か...新型の加勢が無くとも、我らが部隊で、対応可能だ。」


健康そうな小麦色の褐色の肌が、太陽の光に晒された、長髪の男性が、その身の厚い胸板をを晒して挑発するかのように、双眼鏡で、目標をつぶさに観察していく。


「敵の進路は、このまま南下するらしい。先回りして、網を張るぞ。砂漠での戦闘で、我らに敵うモノなぞ無い。」


「例え残存兵力が他に在ったとしても、我らタルパ・アレナリア 隊の機動力を持ってすれば、なにするものぞ。」


「それに腐っても新型機だ。少なくとも敵にダメージを与えている筈だ。補修される前に叩く。」


零れんばかりに溢れる胸筋を震わせ胸襟を開いて語り、その場を離れる何者かの機影が砂地に沈み消え去る。


(。´・ω・)ん?


「どうしたでござるか?アイジェス殿?今は待機時間ですぞ?休める時に休まねば?」


格納庫での一仕事を終えて、いそいそと、ふるちんのままシャワー室からと駆け出すと、


パイロットスーツを着込んで足早に格納庫へと向かい、乗り込むと、通信機能を使用し、



月都市での補給は叶わなかったが、月面での採掘で、水も燃料もある程度補充できた。


譬え、水の無い砂漠で置いても、問題は無さそう。それでも、精製までに時間がかかる。


《マグレブ》磁気浮上式低重力ホバーで地上から数メートルの地点で浮かぶ、《エンゼルフィッシュ》の船足は依然として遅く、そして...


機体の調整の陣頭指揮摂る。コーディースルーに向かって、「そろそろ敵が来るぞ?」


(。´・ω・)ん?君は何を言ってるのかね?と訝しみ、次の瞬間、砂柱が、上り、船体に振動を響き渡る。


とっさに有線式インカムで、「おぃ、何事か?損害を報告しろ」と、がなり立てる。


その時にはまるで、其の襲撃が来る事を予想したかの様に、機体へと乗り込み懸架された

装備を身に着けると。


格納庫ハンガーから慎重に一歩一歩踏み出しカタパルトに脚部を固定すると、


「アイジェス=ブラットワーカー、デスペラードVer0.2ガトリングマスターHHBカスタム出る。」


「BLAST OFF(ブラストオフ)


突如、出撃するアイジェス機を他所に、艦船の外部では、次々と砂柱が立ち上がり、


周辺に散開するディエムたちが、突如防衛ラインを越えて放たれる。攻撃に狼狽えつつ避けぶ。


「(ノ・ω・)ノオオオォォォ-オッ、コワイ、コワイ。敵だ。折角、あんな大部隊と遭遇しても生き残ったのに。とんだ貧乏くじだ。」


「第三部隊の仏頂面》(トルウス)どもに任せりゃよかったッ!!!!」


「隊長、前回の戦闘前に出ないで、引き討ちしながら、誤魔化してたもんなぁー。基本的にうちの部隊は、エース部隊が出るまでのお膳立て部隊だし、肝心のエースがなんで、宙に残って付いてこないんだよッ」


オマエ=ナニモノは隊長のオウ=コワイイと同調して悪態を吐く。


「嗚呼、僕は、敵を撃墜するの嫌だなぁ、死ぬなら勝手に僕と関係ないところで死んでほしい。」


やる気のない言葉を吐く、シナドロ=アマイは、


必死にトリガーを引きつつも目標に一切かすりもしないネライ=アッタラナイの応射に呼応して、


砂地の地面から襲い掛かる機影に向かってビームライフルの一撃を叩き込むが、


機影が残された砂地に命中するも、コンバージョンリングを通り加圧された高出力のビームは、


砂地をその高熱で硝子状に変えながら地面を穿つが、その威力は、砂地に吸収され、その下に居るであろう


その機体まで届かない。


熱砂の戦場で繰り広げられる戦闘としては、甚だやる気のない会話が続くも、


後方で随伴する《エンジェルフィッシュ》の機影から一体の機体が躍り出る。


フットペダルを強く踏み込み。呼応するように噴出するメインスラスターを吹かせ。輝線を描きながら飛び出した


一機に、敵機の注目が集まる。


手に持った短銃身の拳銃型のビームハンドガンの引き金を引くと、機体のジェネレーターと直結され、流れ出る粒子放出を赤黒い銃身内の短い間隔で重ねられた多積層コンバージョンリング経て通過し増幅され放たれた。青白い光の短波ビームが、蠢く砂地にむかって放たれる。



砂地をガラス状の結晶へと変え、敵機に命中したかに見えたが、砂地の盾により、同じ結果に終わる。


敵は砂地を盾と移動手段に変えてこちらに短波誘導による地対空ミサイルの連打を繰り返し、

味方機はその防御に手一杯で、敵機の撃墜迄手が回らない。


アイジェスは少し思案して、一案として、思考しながら、敵機のミサイルを撃ち落としながらも、データーの取得を行う。


ビームハンドガン・・・効果弱


ガトリング砲・・・実弾、ビーム両方とも効果微弱


実体弾のミサイルによる迎撃・・・若干の効果あり、だが決定的な効果は見られない。


繰り出されるミサイルの雨を地上に降りつつ、此方もミサイルの実体弾で応戦しつつ、次の一手を切る


《Hand Hundred Babylons》(ハンドハンドレッドバビロンズ)と、即興で名付けられた、大型シールドに、単銃身の拳銃ユニットを、


接続し、押込み。


コックピット内の操作で、使用するアタッチメントを選択。


一気にその手を引き抜くと...そこには...鎖に繋がれた棘の付いた鉄球が、勢いの侭引き抜かれ、


勢いのままに振り抜かれ、鉄球が火を噴いて回転しながら、今まさに僚機へと降り注ぐ火砲の一撃を撃ち落とす。


爆発に弾かれバランスを崩しつつも、態勢を整え、砂地の足元を踏みしめバランスを取りながら、更なる一投を投じる。


火が灯る鉄球が大地の砂地に吸い込まれ、その下で蠢く機体に届くか...。と思われるが


分厚い砂の壁に阻まれ、その効果も薄い。


(・д・)チッ


是も駄目か?...。敵機が、砂地の下を潜り、一撃離脱の攻撃を繰り返して来る。


その対応で、艦船の下部を守る様に鉄球を振り続ける。デスペラードの様子を把握できないまま。


第六部隊の面々は、一機を《R.I.P》の甲板上で降り注ぐミサイルの雨を撃ち落とし、


残る3機が周辺にばらけ乍らも、砂地の足元に機体の機動を取られながらもなんとか、堪えている。


その一機の背後から忍び寄る。燃える様に光る鉤爪を振るう。一体に向かって鉄球を投射、


此方からの位置では僚機が陰になって当たらない...。


その瞬間に、手元のトリガーを引き絞り、鉄球の側面から火が吹きだし、その機動が大きく湾曲して、


襲い掛かるその鉤爪を叩き落し、その巨大な砂モグラの様な容姿の機体の攻撃を阻止し、手元に戻した鉄球を振り回わし


その敵機の動きを牽制し続ける。だが、新しく用意した、武装でもやはり思っていた通りに砂地での戦闘に、生かし切れていない。


だが、データは取れた、後はこれをフィードバックして...


問題は、このままの状況で自分が戻った場合、僚機達が...。ここ味方機は…が必要だが、どうする?


そこで脳裏に、何かが閃く。再び武装アタッチメントの切り替えを行い、長銃身のライフルを構えると、手元の《Hand Hundred Babylons》(ハンドハンドレッドバビロンズ)...


略して《HHB》を砂地に置くと


すいぅーっと奮戦する第六部隊のネライ=アッタライナ機の足元へとスライドさせる。


それと同時に指示を出す。


「そいつに乗れ、あんたら第六部隊の《臆病者》(クヴァイリス)で、合ってるよな?」


「それはそうだが?狙いがあったらねぇんだよ。クソッ(´;ω;`)ウッ…漏れそうだ。あっちょっと出た!俺はお頭が悪いが未だにオムツが取れてないんだッ!」


「そいつで砂地の上で動き回って、僚機を援護しろ、狙いは当たる。俺は一旦船に戻って準備をしてくる。それまで持ちこたえてくれ。」


「お前の狙いが当たらないかもしれないが、お前も敵の狙いに当たらないだろ?エース部隊を陰で支えてたアンタラなら、それぐらいの時間稼ぎできるだろ?」


「撃墜する事は忘れろ、防御にだけ専念しろ。それだけでいい、後で俺が片付ける。」


(…なんだ此奴、初対面なのに、俺達の何が分かって居るんだ?)


そう言ってスラスターを吹き出し、何を思ったのか手に持った武装と多目的溶断ビームナイフとの接続を解除し、獲物を明後日の方向へと投擲する。と、いそいそと《エンジェルフィッシュ》のデッキへと戻って行く。


今まさに準備を終えて発進させようと奮戦する中に、いきなり戻って来たアイジェス機に、格納庫が混乱する。


その混乱の侭、スピーカーを全開にして、道を開けてくれと問いかける。


向かう先は。旧式の実弾兵装を集めて小山にして置いた《子亀》の格納されている一画へ。


「おい、危ないだろ?!踏みつぶす気か?」


「今は時間がない。コーディー。こいつは使わせて貰うぞ?」そう言って大胆に《子亀》に備え着けられたクレーンの一部をいきなり溶断ナイフで切り取ると、それを担いで


更には《子亀》の各種設備も接収して、何かを作り始める。


コーディー=スルーのが抗議の声を上げる間もなく、対地ミサイルポットの弾頭を、《子亀》に搭載されていた小型の掘削機構端末を借用し、先端に取り付け、多目的溶断ビームナイフを振るって、


繋げ組み換え、装填させたミサイルポットを仕上げていく。


続いて、背面部分の増加装甲をガトリング砲が懸架された部分を取り外し、クレーンの機構を繋げ、ついでに、予め作って置いた多数の機雷を取り出し、見繕い作業を開始する。


あり合わせのモノで作った懸架台に装填された機雷群に、少し手を加え


暫しの奮闘の後、


それを掲げて、味方が止める間も無く、再び出撃しようと、格納庫を右往左往する。


その間に、泣き言は居ながらも、各自が引き撃ちをしながら、僚機それぞれが防御態勢に入る。


「狙いがあったらねぇんだよッあッ当たった?」


なんでだ?足元で蠢く、楯が砂地上での動きをフォローし、敵の動きを回避したと思ったら、明後日の方向に飛び出そうなビームライフルの一撃が、


その動きに併せられ、その狙いが当たる。


「隊長、隊長。どうしますか?」


「まぁ、後始末を任せて欲しいなら、俺達は今まで通り、後に任せて、時間稼ぎをするだけだ。」


「それだけで良いなら、得意分野だ。各機いつも通り、腰を引けたままで後に繋げるぞ。」


「「「了解((´・д・`)ヤダ!!!)」」」


スライドするスノーボードの様に疾走する。《HHB》が、敵機の攻撃を避けつつつ、明後日の方向へ飛んでいく射撃の射線をずらして、命中させる。


一斉に機動力を手に入れた敵機に注目が集まり降り注ぐ弾体を潜り抜けつつ、飛来するミサイルの群を撃ち抜きそして...


ネライ=アッタライナの背後から僚機の警告が飛ぶ


「クヴァイリス04後ろだ!!!」


囲む様に現れた砂モグラたちが、一斉に狙いを付けて放蕩息子を片付ける様に砲塔を向けて、飛来する弾体に向かい、


一条の光が瞬き、その趨勢を決するべく放たれる。


一同が驚愕し、見ると、何もない空間に、放棄されたはずのビームライフルが浮かび、此方に向かって斉射を繰り出していた。


地上に現れた隙を狙われ爆散する。砂モグラ…機体データ上では《タルパ・アレナリア》…通称砂モグラと呼ばれる局地戦闘用の機体が、


直撃するそれによって四散、爆散する。



「なんだと?」


(今何が起きた?敵機には死を刈る鎌たる【falcisファルキス】を所持して居ない筈だが????そう言えばあの楯も...可笑しい。まさか...)


(しかも、此方の攻撃が命中しなくなってきた)


第五部隊の僚機達は、降り注ぐ砲撃を手に持ったシールドで、器用に弾き、最小限の被害を以て防ぎ続ける。


若干、腰が引けたその操縦技術は、敵機を墜とすにはいささか及び腰ではあるが、母艦の防御を行うには十分なものだった。


さらには浮遊する盾に乗って駆けまわり、ネライ=アッタライナは、狙いを外し続けるが、その代わり他の僚機達の攻撃が、


射線を避けた先に追い込まれて、砂モグラ、《タルパ・アレナリア》に攻撃が命中し始める。


(さっきまでの統制の取れなかった動きから...。変わった。一体何が???)


「各機、潜航モードへ移行、砂地を盾に態勢を整える。砲塔のみを地上に出して、一方的な蹂躙を!!!!!」


(・д・)チッ


「隊長、奴等、砂に隠れやがってこっちの攻撃が届かなくなった。どうする?」


(撃墜しないで良くなったけど、僕ら死んじゃう><)


「今は、時間稼ぎだけで良い。飛来するミサイルの雨を撃ち落として、一発も母艦に当てるな!」


オウ=コワイイは、虚勢を張りつつ、楯を構える。


「弾幕が薄いぞ。おい、僚機の出撃が何故遅れてる?!出せる機体は全て出せ。」


ナンネン=ハイマンが叫び、オペレータが答える。


「何機か、オーバーホール中の機体があるんです。」


「換装、せずにそのまま出せ。」


「あっ?アイジェス機が、再出撃するそうです????」


(。´・ω・)ん?


(アイツさっき出て行って、早々に帰って来たはずだが?一体何を考えているのか?)


「良いから、直ぐに出せ。」


報告と、指示の最中で、機体を揺らす爆音が鳴り響く


「艦長、船体右舷部に直撃。」


「ダメージコントロール。被害状況を報告。火を消せ。消火活動を行い。隔壁閉鎖、火を喰い止めろ。」


再出撃を行おうとするアイジェスに向かいオペレーターが、早々の出撃を促し、それに応える。


「アイジェス=ブラットワーカーデスペラードVer0.3サンドマスター出る。」


「BLAST OFF(ブラストオフ)」」


電磁加速のカタパルトで射出されるその威容は、射出のタイミングと同時に、ガトリング砲の代わりにその肩部に搭載された。


掘削機能付きのミサイルポットを一斉に射出。リズミカルに奏でられる音楽と唄と共に、現れたるその雄姿は、


作業用のローダーの様な武骨な様相を呈し、放たれた吠える猟犬たちが放たれる。


砂地に命中すると穿孔を開始、潜航する機体を下部から追いながら命中。砂地の底で、火が荒ぶり、燃える炎と爆圧に押し上げられ、


打ち上げられる。其処に浮遊するビームライフルユニットが、その手元まで戻ると、狙いすませた蒼い一条の光が貫き、爆散。


多重装甲に守られた、コックピット部に突き刺さると。溶解、溶断、融解、させ、断末魔の叫びと共に爆散させる。


更には、砂地に着地すると、脚部に搭載した《子亀》用の《マグレブ》磁気浮上式低重力ホバーを稼働させ、


機体を基本装備のシールドの部材をスキー板上状に加工した、脚部装甲と共に、スラスターを吹かせ、スピードに乗りつつ、


戦場を横ぎり、各部に残されたガトリング砲の乱れ撃ちで、敵機のミサイルを撃ち墜としながら僚機の援護を行う。


そして何を思ったのかアイジェスは、戦場で、釣りをし始める。


「釣り堀大会だ。入れ食いにしてやる。」


肩部に搭載された。《子亀》の電磁磁石付きのクレーン…を釣りをするかの様に、投擲すると、


Multi-Purpose Typeマルチパーパスタイプ及びAll-Compatible Typeオールコンパティブルタイプのコネクトで接続され


その磁力を内蔵される。二基のジェネレータを稼働。その磁力の出力を大幅に強化。


地中を進む機影と砂鉄を一緒に吊り上げると、クレーンを巻き上げ地中から地上へと持ち上げると、


無防備な、その腹を魅せる機体に向かって。ジェネレータと再接続を行った赤黒いフレームを湛えたビームライフルを向けると、


蒼い光を放ちながら撃ち抜き、声なき声も上げる間もなく撃ち貫き爆散させる。


「二つ、敵機は俺が追い込み漁をしながら釣って墜とす。砂漠の魚の捌き方を教えてやる。其の儘の状態で、戦線を維持して、待て。」


(さっきの様子だと、もうすぐ第一部隊が、出てくるはずだ。そうすれば数と、サンドマスターの機構で、押し返せる。)


...



・・・



・・・


第一部隊の隊長である大石は、最近、部隊の《頭脳》でもある自分が指揮を出すまでもなく、唐突に指示を繰り返す。部外者に、憤慨していたモノの。


外の状況はどうなってると?その戦局を見て、ある種の納得を得ていた。


何故、奴は、砂漠専用の装備を予め用意できている?そして、お膳立てのみを行ってきて、エース部隊を喪い。折れかけた第五部隊の士気を


一気に持ち直し、戦局を一変させた。その行動に訝しみながらも、其の身柄を預かり、文句を言おうとた、我らを制止してフレンドファイアーを繰り返す問題児を庇う。イゴールからの言葉を思い出す。


「あれは、きっと何か考えがあっての事だ。今まで何度となく仲間達を助けて、一番危険な殿を、本官よりその役目を奪い、見事果たしている。きっとその行動にも意味があるはずだ。」


(…確かに、奴の行動が無ければ。先の戦いも最後まで奮戦していたし、いなければ切り抜けられなかったかもしれない。)


船外に備えられたカメラを切り替え、戦場の様子を伺い知りながら、冷静に分析していく。ここは奴に乗って置くか。


後でその理由(ワケ)を聞かせて貰うぞ?


「セレブルム01、ディエム出るぞ。各機お嬢に遅れるなッ」


「セレブルム02、了解。」「セレブルム03、了解。」「セレブルム04、了解。」


パルメ=ザンは、今晩の晩飯に掛けるチーズを思いながら、先ずは目の前の獲物を片付ける事に意識を向ける。


砂地での移動に難ありとみて、格納庫から無理に射出せずに、格納庫から徐々に出撃し、


移動する砂地の上をスラスターを吹かせつつ着地すると、基本装備のビームライフルを構え、次々と、敵機をその釣り竿で吊り上げ、


地上と空へと打ち上げ、地上に打ち上げられた無防備な唯の魚となったそれに対して一撃を加え始める。


「各機、釣り人の支援を。墜とさせるな。《臆病者》(クヴァイリス)は、引き続き母艦の防御。攻撃は、《頭脳》(セレブルム)たる我らが受け持つ。」


「お嬢、入れ食いだ。釣れッ!!!」


大石が、今まで出来なかった指揮を執り始め。その指示に沿って対応が開始される。


炸裂する穿孔する弾体が、機体を爆発させ、吊り上げられた敵機をディエムの攻撃が一斉に集中され、その頑強なボディーに穴を開けつつ爆散


次第に戦局は襲撃者の有利から、防戦に回っていた臆病者たちへと軍配が上がって逝く。


「タルパ・アレナリア?!ッ撤退だ?!何故、宇宙から降りてきた相手に、砂漠の局地装備があるんだ?!」


「いや、まだ、味方は半数は残っている。まだ戦える。」


「何を馬鹿な事を三割損耗した時点で壊滅と同意義だ?!」


「そんな常識など無い。一兵足りとも逃げずに戦え。敵艦を墜とせば我らの勝ちだ。」


...



・・・


・・・


口論が続く戦場の最中で、時間は暫し巻き戻る。


その戦いの開戦の狼煙があがっただろうその時に、洋上のアガートラームの船舶内では、フレイミングティース(燃え立つ歯)破損個所の修理が終わろうとしている。


「友軍が戦っているんですか?それなら、私も!!!!」


「君の意見ももっともだが、貴重な適応力が高い《聖痕》持ちを悪戯に損耗する訳には行かない。本艦も閣下の旗艦と離れ離れになってしまった。」


「地上に降下できたのはこのアガートラーム、一隻と駆逐艦三隻、哨戒艇の4隻は大気圏突入時に、失敗して爆散した。これ以上の損耗は控えたい。」


「恐らく閣下は、我らが拠点エーリヴァーガルへと帰還されただろう。君が報告した《慈聖体(じせいたい)》らしきモノは、確かにあの機体のパイロットなんだな?」


「だが?《慈聖体(じせいたい)》であれば、【falcisファルキス】を使いこなして居たのも分かる。問題は、我らが技術が何故?敵に悉く漏れている。」


「素材を加工する術すら奴等は持ち合わせていないはず。」


「機体を鹵獲されたと言えアレには、生体認証が組み込まれて居て、データの抽出は生半な事ではない。既に捕らえられたジンボ少佐は、処断されて、それ以後の情報流失は無い筈。」


「理由は分かりません。だが、奴は私とフレイミングティース(燃え立つ歯)で必ずや捕らえてみせましょう。奴との戦闘データと、機体の操作にも慣れました。次こそは...」


《Pyrolysis Tooth(パイロリシストゥース)》と奴の武装は、拮抗していた。それなのに戦果に多大なる差異が生まれたのは、ひとえに私の未熟故、


だが、危険だが試作の追加武装を...


あれを使いこなせれば…引けを取らない筈。


「行かせてください。」


(ふむ…まぁ、良いだろう。既に彼女の遺伝子マーカーは本国に送ってある。例え死んだとしても...。培養期間が惜しくはあるが...)


不敵な笑みを湛えつつ。


(行かせろ。腰ぎんちゃくの腰抜け目...。)


互いの目が笑っていない。


「良いだろう、前回の戦闘でまだ出撃しなかったマダ四機を随伴として付ける。友軍を支援されたまえ。」


お互いに腹芸を見せつつ、あり合わせの配下を与えて、出撃する事を許可する。


(狸オヤジめ?)


でっぷりと脂肪を付けて膨らんだ腹と。薄く禿げ上がったその禿頭を帽子で隠すその姿に、その場限りの言葉で謝意を伝える。


「はっチャンスを頂きありがとうございます。」


真紅の火を上げ乍ら飛翔していくその機影を見送り、トゥル・マンティンヌは、次の手を打つべく期待を以て機体の準備に取り掛かる。


...



...



...


視界の先に、唯々、広大な砂地のみが見える大地の園で、火花の華を開かせて、一台、また一台と、消え去る機影の陰で浮遊する《HHB》を操作し、すれ違いざまに


アタッチメントの換装を実装、赤黒い鎖状の鞭を振り上げて、短く巻き上げるとマニュピレーターを稼働させて、マウントラックに懸架された、機雷へと接続。


即席のハンマーとして活用し砂地の表面に叩きつけると、衝撃を伴い火閃を引きながらも砂地にめり込むと、敵機と接触した瞬間に大輪の花を描かせて爆発する友軍機を他所に、


タルパ・アレナリア…自らの名と、同じ機体に乗って狩る。男は、相手の攻撃手段がクレーンから伸びる釣り堀の釣り竿の如く、差し出された、其れに、機体を取られて無防備な腹を見せさせられている事に気付く


最後の友軍機が、炸裂する機雷に巻き込まれ、爆発と共に、大地へと共に其の死を悼む墓標の如く突き刺さる。


そうして地上に打ち上げられた魚として、処理される友軍機を眺め、


クレーンが展開されている前面を避けて、背後から回り込む様に、接近。


機体に搭載されていた音響ソナーにより大地の上で蠢く機影は確認できる。相手は、目視できず。機体が爆発され粒子の濃いこの領域では、レーダーなどのセンサー類が馬鹿になっている筈、


視覚外から一撃離脱に置いて、打開策を試みる。


更には、東の遥か先のから、緋色の炎の射線が、アイジェス達の僚機に向かって放射、


警告の声が間に合わない。


光に影撃たれた、閃光が伸びセレブルム04...アッチ=コッチが、あっちこっちと右往左往して、


貫かれる瞬間に、サーフボードの様に砂地の波を捉えて走る。


機影がヒャッハーと叫びながら、その盾の壁面を立てて、直撃するそれが展開され、


偏向機の光が瞬き、防ぎ切る。


通り過ぎる火箭と重なり合う様に、波打つ波に乗り、通り過ぎる機影に


アイジェスは、手に持った得物を差し込み、すれ違う様にアタッチメントの高速換装を行い、


盾の向きを変えて、再びの獲物の変更。長大な盾を地面へと立て掛けたそれに載せて、輝きを伴い


赤黒いフレーム内に蓄えられていた粒子を収斂し、内蔵し増幅されたそれを放出し、


蒼い炎の一射を撃ち放つ。放たれた火の射線が、延々と続く砂の山の一部をその砲撃で


消し飛ばしながら、向かってくる緋の炎と真正面から撃ち合い。


相殺し、砂山が硝子の破片を巻き散らしながら、それでも撃ち合いに発展。


その無防備な背を眺め。


残るミサイルの残弾と砲塔の弾薬は、僅か、それでも、私にはやらねばならぬことがあると、

叫びながら、


目標を照準に併せて、奇襲を仕掛けようと、気付かぬ敵機の後ろを獲ったッ。


地上へ躍り出て、叫ぶ砲塔が、吠える。


咄嗟に盾とした《HHB》へと三度の武装換装。獲物を引き抜き。


今度は長獲物の銃身と共に赤黒い鎖が一体化されたそれが、懸架されていた機雷に接続。


釣りのルアーを投擲するような動きを見せ。


振り向きながら大地に突き刺さる機雷を嫌う様に、回避する動きを逃さず蒼い炎の射撃が突き刺さり


盛大な爆音を立てて炸裂、崩れ落ちる機影に、慄きつつ


浮遊する《HHB》に乗って、敵機の狙撃を防ぐネライ=アッタライナは、その動きに合わせて揺れるコックピット内で


あッさっきからすっごい動く。(´;ω;`)ウッ…産まれる?!出ちゃっう?!


男が産めるのは...だけ...そんな言葉が脳裏に過ぎりつつ、


更には対峙するように向かい遭うその機影が、胴体を追撃の蒼い光が通り過ぎ蒸発させながら消え去る。


「敵機。排除完了。クリア。各機、狙撃手に警戒しつつ、被害報告。」


「此方のセンサーには、五機の機影を確認している。各機、直撃だけは避けろ。アレはディエムの盾じゃ防げない。」


...


戦場の趨勢は未だ定まらず。


歯を模した巨大な放熱フィンを備え各機が一本の牙状の砲身を構えその機影から


フレイミングティース(燃え立つ歯)の砲撃と共に光の柱を、照射し始める。


沸き立つ炎を光が、砂の山を崩しながら、母艦の脇を掠めて通り過ぎる。


「今のは、近かったぞ?ビーム攪乱幕、投射ッ急げ。」


次々と空中に散布されるそれにより、光の柱が、散乱し、火の粉をばら撒きながら、地に墜ちる。


それでもその余波が、艦船の至る所に、その傷を増やし始め、



砲撃の火線を避けつつ、懸架している機雷を、弾切れを起こしたミサイルポットと共に


ラックごと、目算で見定めた場所へ投棄。


構えたビームライフルから蒼い火線と伴に放たれる。


光と緋の光が、命中し、空中でビーム光の火の粉をばら撒きながら、


それでも敵機からの狙撃が続くなか、奮戦は続き。


コックピット内に咽るほどの匂いが香る。遠く離れたこの場所にも詩が聞こえる。


《慈聖体》の匂いだ...


心が勇み、操る操縦桿が奔り、陽光と見紛うばかりの光が降り注いでくる。


「《臆病者》(クヴァイリス)、《頭脳》(セレブルム)各機は、そのまま南進して、戦場から離脱しろ。」


「ここは、俺が殿を受け持つ。」


「馬鹿な、東から迫る敵との相対距離は、目算でもセンサーの測定範囲外である20キロ以上の距離だ。地上の大気の減衰を鑑みてもこちらに一方的に届くと成れば、可成りの出力だ。」


「死ぬぞ!!」


大石が、吠えるが、それでも誰かが残らねば、船に追撃が入る。


「ここで船を墜とす訳には行かない。」


船には...春幸も、他の子ども達もいる...


「敵の射程に対抗できるのが、俺の機体しか居ない。乗り換えるにも、俺以外には動かせないんだ。」


「良いから行けッ!!!!」


その通信を聞きながら、アンザスが、割って入る。


「それが良いでござるッ、足の遅い《エンジェルフィッシュ》を放棄せずに離脱するには、それしかないでござる。」


「アイジェス殿は、こちらが離脱したのち撤退して貰えればッ」


(それに...。もうすぐ…)


「殿なら得意な…(筈だ...)」


《HHB》を盾にしつつ、去り行く船の後ろ姿を緋の射線から庇いつつ、アイジェスは、今までの事を思い返す。


(理由は分からないが、このコックピット内で香る匂いと共に、奴らの狙いが自分に集中している事を何となく感じる。)


(この戦場に残れば...恐らく《エンジェルフィッシュ》は、逃げられる筈だ。)


応戦の射撃を加えながら


「死ぬなよ?」


「オムツが外れたら向かいに行くからな?」


思い思いに声を掛けつつ、第一部隊と第五部隊の面々が、艦船に随伴しつつ、戦線を逃れていく。


(俺の直感が正しければ...。このまま僚機が残ってると、全滅しかねない...。)


何故かは、分からない不穏な予感が、その身に突き刺さる。


...



...



...



(。´・ω・)ん?


おかしい、相手の射撃が熾烈を極め始めるが...。目標が二手に分かれているのか?


逃げる母船を追うべきか?残るこの匂いに誘われその存在を感じる。目標に向かうか?二つに一つの選択肢を迫られる。


が...この匂いは《慈聖体》...。


両手に構えた独特の形をした湾曲する長大なライフルから生じた逆三角形のエネルギーフィールドが、


攻防一体となり、アイジェスが駆る機体の手がから放たれる一撃を防ぎつつ、応射の形で


光を伴う炎を放つ。


(二手に分かれたという事は...囮になって、此処で決着をつける心算だな。乗ってやる。ただ、この程度で死んでくれるなよ...貴様は生きて捕らえる。)


ビームシールドらしきその威容を以て突撃。その後方から追従するマダの四機が、


まだなのか?と訴え掛けてくるが、待ての一言で押しとどめる。


それでも辛抱できない。ルドゥス・アレアエ機を筆頭に、アドゥルテリウム、カエデス、エブリエタスそれぞれが痺れを切らして、


空中での四機のマダが、その変形機構を稼働させ、巨大な放熱フィンが歯を模した様に、巨大なその口に並び、各機が構えた砲身が牙へと模した


多数の手を持った大口の巨人へと変わると、


叫ぶように震えるその顎から、触れたモノを量子の塵へと還す。極太の放射される白い粒を巻き散らす光の柱で、薙ぎ払う。



(・д・)チッ


咄嗟に巻き込む様に放たれた一撃をフレイミングティース(燃え立つ歯)は、回避しつつ、舌打ちを撃つ。


「任務の目的を忘れたか?」


天を覆うほどの光の柱が、流れ、そしてその狙いが、アイジェスの機影を掠めて、


背後に伸びる退避中の母艦に向かって降り注がれる。



直撃するかに見えた瞬間に、吠える雄叫びが響き渡る。


「エンコード、《バラッド・オブ・ザ・デスペラード》」


音声認識による識別により、使用者権限を確認。


コックピット内部では、身体の各部を飛び出したアームや、拘束具により、パイロットの手足を固定、円筒状に包み込むのと同時に、


機体の外部のバイザーや各種部位内蔵されるロックボルトが解放。


長方形のバイザーが上に上がり、それまで隠れていたはずのツインアイが露出。


鬼の角の様に伸びバイザーから突き出されたそのアンテナの一部が枝葉となって発光しながら、その威容を魅せる。


そして、覗く、線型は鋭く無骨で且つシャープな主顔(おもがお)の景観から


分解解放を繰り返すその面差しは、まるで牙剥く鬼の口腔を覗かせ、


最後に後頭部から、一本のブレードアンテナが迫り出して、三本ツノとなり、


其れまで、マニュピレーターと思われていた。肩、腕、脚、背面にそれぞれ設置されている。


隠し腕の内、腕部と肩部のマニュピレータと、バックパックの背面全体に刻まれる、其れまで隠れいてたツインアイの鬼の形相の面が顕れ、


そして、2本の腕と脚部には基部に隠れた鬼が踊り、腕部のマニュピレータが可変したアームカバーと、独立機構のレッグーカバーとなるその機構にも鬼の面が顕われる。


都合、八つの顔と、六本の腕、偽装されていてそれらが開放され、異形へと変形・変身、いや、変態する。


何かを語るように其の不思議な表情を垣間見せるその機体は、八面六臂の修羅と為らん。


喩え、戦場の華として散ろうが俺は逝く。…


《HHB》にケーブル接続された。銃身を接続。さらには、肩部のシールドに搭載された偏向機構を最大発振、母艦の盾になる様に、


一瞬での変態機動を行い。構えた《HHB》・・・《Hand Hundred Babylons》(ハンドハンドレッドバビロンズ)をシールドからガシャガシャと音を立てつつ、その躯体を組み換え、砲身へと変形。


繰り出される。銀射の一撃が白銀の奔流となって、迎え撃つ。砂地の丘陵を一気に抉り取り、霧散させるその一撃と一撃が交差し、


大爆発を起こしたその光を目撃し、僚機の大石たちは...撃墜されたのか?と、身構えるが...



その後にも、アイジェス機が応射しているであろう蒼い閃光が一度、二度、三度と瞬き続ける。


その光景を見て、安堵しつつも、アンザスは、一抹の不安を覚える。


(宇宙空間での戦闘は、ボギーワンと認識された戦闘からみて、経験はあるはずだが、重力のある地上では...経験が無い筈。)


(しかも、この方向だと、あの鬼面の姿になったとしても、得意の空間軌道が出来ない。何故ならば...)


・・・


・・・


...



「ほぅ。マダの《天地併呑》(ウニヴェルスム・デヴォラーレ)を防ぐか?」


四機の機体が合わさり、内蔵されたやや大型の《リアクティブジェネレーター》がフル稼働。


四基のそれが発振しつつ、相乗効果を生みつつ、膨大な量をその罪深き、その力を持って、


まさに飲み込もうとする光景を眺め…


(・д・)チッ


「こいつ等、戦場の血に酔ったな。」


「いや酔って居るのは貴殿だ。我らが操るマダが放射する粒子は、各部のジェネレーターと其の砲身で変換され周囲に散布される。」


(酔えば、正常な判断は出来ず。酩酊する。それは敵味方区別なく襲い掛かる。)


フレイミングティース(燃え立つ歯)を押しのけ、前面に躍り出るその機影を目撃し、


可変した《HHB》から引き抜いた銃身から放つ蒼い炎の一射で、対抗するが、その巨大な口腔から吐き出される大量の粒子に阻まれ、


攻撃が届かない。


代わりに四基の牙からそれぞれ連射される砲撃に、楯を構えて防御に徹する。


アンザスが、予見し、危惧していた事態に陥り始める。アイジェスは...。味方機が射線上に居る限り、避けられない。完全に機動力を封じられている。


・・・


・・・


・・・


「コーディー氏!!!!Diem(ディエム) Perdidi(ペルディディ)の新装備は、もういけるでござるな?!」


「(。´・ω・)ん?アンザス君、確かに出来てはいるが?稼働実験をしていないぞ?」


「それでも行くのかい?」


「一撃を喰らわせればいいでござる。アイジェス氏が活路を開く、その一瞬が欲しい。それ以外は要らない。」


「アンザスさん?出撃どーぞ?」


カタパルトに搭載され今か今かと飛び出そうとするその機体が、その掛け声とともに一匹の獣となって放たれる


「アンザス=フライ・ハイ、Diem(ディエム) Perdidi(ペルディディ)CD(クリティカルディフェンス)装備、いっきまーす!!!!!!!!!!!!!!!」


勢いの侭放たれる一条の光となって、メインスラスターを吹かせつつ、飛翔する。



・・・


・・・


・・・



身動きが取れないまま、増加装甲や、砲身を焼かれ、防戦一方のアイジェスの元に、巨大な顎もつMAの一機が迫る。


発振する砲身を震わせ、至近距離から砲撃を加えるべく、


光が集まり、此方の攻撃が弾かれるるなかで、砲撃の光が、全てを多い尽くして、その姿を唯の影へと還るべく振るわれる


その刹那の一瞬に...


「私の男尻は狂暴です!!!!」


テールユニットが瞬き、一筋の光の毒針が、其の砲身に照射され、絶死の瞬間に消え去るその防御をすり抜け


僅かに刻まれた牙状の砲身の一部が毒針に浸食…


マダを操作するコックピット内のコンソールにERRORを知らせる文字列が現れ、装甲を徐々に崩れさせ始める。



発射タイミングに、放たれた毒針により、砲身が崩れ、発振、共振する一撃の狙いが逸れ、明後日の方向へと消えていく


「アイジェス氏、助けにキターーーーーーーーーーーーーーーーでござる!!!」


Carpe Diem(カルペ・ディエム)の勢力圏内である地球の大地の上で、繰り広げられる。

続く襲撃に、この地上に《人喰い》カルニヴォルス (carnivorus)がいつの間にが

その支配権を広げつつあることを感じつつ


それでも降りかかる火の粉を払いながら、それでも我らは進む。

迫る危機に対応するべく、そろう二機の僚機の姿は、味方からは隠される。


そして...続く


毎月、月末最終日に2話更新。

※一部内容について月齢を天体の高度計算ソフトで割り出す必要があるので、日数関係で若干の修正が入るかも?ゾンアマさんから今だ届かず無念。

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