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無法者の詩  作者: 唯の屍
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第五話「確率機跳《鶴立企佇》(かくりつきちょう)」

そそり立つ大地に向かって、降下、落下し、そして墜ちる。上下左右も分からないまま、地球の重力に惹かれ、


大気との摩擦によって生じる。炎に包まれ墜ちていく、その機影を目撃し、


「アンザぁぁぁぁぁぁぁぁス!!!」


其の名を叫ぶ。


地上降下用の装備を討ち抜かれ、今にも燃え尽きそうなその姿に、


いち早く旗艦へと帰還していた。仲間達は、視界の端で、今も燃え続けるその姿に、


イゴールは戻って来て居ない。仲間を識別ビーコンの有無を確認し、対象者を確認する


「あと戻って来てない機体は誰だ?」


コンソールを操作する通信士が、答える


「アンザスさんと...アイジェスさんです!!!」



「予備の降下装備は?!!」


「ありますが?もうこのタイミングだと...。救助に向かうのは推奨できません。危険です。」


複数の敵味方区別が視認し難い赤い機影が、落花の炎をなって、舞い散るなか、


今も尚、戦闘が続いている。


末期の叫びの様に吠える。詩が響き渡る。


・・・


・・・


・・・


機体の修理・改修を行い。目的地の月に向かって船速を早める。三隻の艦影が、しずしずと、その穂先を向け、


何度目かの長距離レーザー通信を試みるが、月からの返答は無く。


艦長その他の艦橋内でその経緯を見守るクルーたちは、一抹の不安を抱えていた。


月は自転と公転を繰り返しその相対距離は軌道の予測演算を行う我らが艦船の道標たる


ナビゲーションシステムで、月都市《静かなる都》(ウルブス・トランクイッラ)に向かい、座標を固定。


かつて人類が偉大なる一歩を踏み出したその場所に建設された。


月都市には、本来では何隻もの艦船と機体が配備され、月の鉱床と共に工廠を備えている。


早晩到着できれば失った機体の補充も、可能なはずである。


だが、アイジェスは、心なしか不安を感じる。自機メンテナンスをするフリをしながら、


目の前で急ピッチで組み上がった四機のDiemPerdidi(ディエムペルディディ)の雄姿を眺め、

コーディー上級技師は満足そうに頷く


それを眺めながらも、ハルズ=アルマインは、新型が最初から自分に配備されなかった事に、いたく不満を募らせ、


アンザスが前回活躍できたのは、新型のお陰だ。と、睨みつける。


それと、前回の奇妙な機体機動をおこなっていたアイツ…あれはいったいなんだ?あれから実力を試す為にシュミレータ―に引っ張ってきたが、


あの時の動きとは全く違う、つたないその操作に、ますます何かのペテンを仕掛けているのかと怪しむが、


汗をかきながらも必死に操作し、その戦績は10戦10勝。この男の勝利に終わった。


おかしい、実戦でのあの機敏な動きと全く、結果と行動が折り合わない。となると、問題は、あの機体に秘密がありそうだ...


メンテナンスも自分一人で行い、メカニックに不満と、手間がないから助かるとの賛否両論のその評価に...


益々疑念を膨らませていく。


きっと俺が同じ方法、同じあの機体を操作すれば、同じ事がきっと出来る筈だ...。


あいつには何の実力もその拙い操作技術で、其の戦果を得られているのは...間違いなく...あの機体のお陰だ...。


(っ・ω・c)ジーッ


うーん、やり難いな...整備の様子をバンデラスが、凝視続けて、何かを探る様に見てくる。


燃料替わりに注ぐ水を補給しつつ、機体関節部の動作チェックと、ERROR診断を走らせ、

機体に異常がない事を確認し作業を終えたアイジェスは冷や汗をたらす。


...


「うーん、バンデラス大尉?そこで見られてると、気になるんですが?」


「気にするな。」


・・・


・・・


・・・


その様子を無言で眺める。男が一人、アハト=佐伯は、無言のまま。格納デッキの上部通路からその様子を眺め無言を貫く。


「・・・」


あの操作は、まぐれな訳ではない。聞くからに、単騎で敵の襲撃を切り抜けたという話もある。


そしてアンザスやイゴールが敵を退けた場所に必ずあいつが居る。恐らくまぐれや、偶然じゃない。


問題は、どんな方法を使ったのか?


撃墜された敵機の状況を見るに、膨大な熱量と出力による破損が見られる。あんな装備は、確かにアンザスが持ち出した高出力のビームランチャー以外

ありえないが...圧壊した形跡は、自沈させて巻き添えで破壊したとの証言とも一応は一致するが...。


少し違和感がある。


そこにアンザスは、「アイジェス殿ぉー」っと軽快なステップを踏みながらも、尻を振り振り、声を掛け、いつもの様にドーナッツの差し入れをする。


「怪しい…」


それをイゴールや他のクルーがその様を観察する。


なに?なに?なに?三角関係?いや四角関係だろ???様々な思惑と視線が絡み合い。船は、進む。


「おーぃ、おっさん。さっさと艦長に捕虜の尋問に立ち合わせてくれって、頼んでくれよー。」


(。´・ω・)ん?


そうだな。一応、アンザスが、隊長経由で希望を伝えてはいるが...。未だに意識を失ったままらしい、


誰が一体あそこ迄、追い込んだのかは分からんが、面倒な事をしてくれる...


とりあえず、重症ではあるが、メディカルカプセルに、収容し、後は治療を待つだけ...


通常であれば、数日でその意識が戻るはず...だが、確かに脳裏に嫌な予感が過ぎる


「そうだな、春坊。」と、答えると、アンザスに声を掛け、機体のコックピットを閉じると、三人で、艦長の元へと向かう。


その様子を眺め、三人が居なくなった後に、どうにかアイジェスが居ない間に、その秘密を調べようと、


こっそり機体のハッチに触れるが...一向に開く様子がない...。


(・д・)チッ


こいつを俺が使えれば...。そう思い注意力が散漫になった。ハルズ=アルマインは、背後から声を掛けられ肝を冷やす。


「君は、何をしてるのかな?」


Σ(゜Д゜)


びくっと、身体を震わせ。振り向くと其処にはアハトが立っていた。


「...」


無言のまま見つめ合う二人を眺め、


遠くで眺めるリン=山崎は?修羅場?!!と、色めき立つ。


・・・


・・・


・・・


船体の指揮を副長に任せて、休憩中の艦長に、直談判する為に、整備艦のエンジェルフィッシュから


旗艦の《R.I.P》へと、中央部の回転するシリンダー状の居住区に存在する艦長室へと向かう。


二つの艦船を行き来するには、二つの艦船を繋ぐドッキングベイを通り、最重要人として捕らえられた、

捕虜も旗艦の治療室で治療されている。


うまく行けば、向かった先で、彼女の行方の情報が得られるかもしれない。


向かった先では艦長のナンネン=ハイマンと上級技官コーディー=スルーが、何事かを相談していた。


「敵の使用している機体のジェネレーターについては、その燃料も素材も何もかも分かって居ない。」


「ただ一つ分かって居るのは、捕虜を収容した時に確認できた。ディスプレイに表示され消えた。内燃機関と思われる機器の名称らしき名のみ。」


「あれはたしかリアクティブジェネレータ(Reactive Generator)と言ったか?」


「それは、此方にも活用できそうだが...。」


すると「失礼します。」の声が響き渡り、ドアをノックして、入室の許可を得て、


ずずいっと三人そろって入って来たその姿を見て


艦長は、ぽつり呟く


「話は聞いている...。」と、ぽっと頬を赤らめ、仲人は任せろ...


と、素っ頓狂な答えを答える。


?????????????????????????????????


頭にはてなマークを並べる三人はそれよりもと、話を切り出す。


「ああ、そうだったな捕虜への尋問だったな。」


そう答えた瞬間に、部屋の端末から、緊急コールが響き渡る。すわ、敵からの襲撃かと思われたが、

その知らせは何よりも最悪の一報だった。


知らせを受けて、急行すると、そこには...捕虜が治療を受けていたはずのメディカルポットが、赤黒い、血の色に染まっていた。


「おい、これは一体どういうことなのか?責任問題になるぞ?」と、船医に詰め寄るが...。


それに答えて言葉を吐き出す


「昨日までは何の異常も無かったんです。だが、さっき確認したら機器の数値がまるで出鱈目で、酸素濃度や、治療に使用する溶液の成分が、全く違うモノに差し替えられていました。」


「私は、こんな設定をしていない。」


ふわふわと、溶液の内部で何かの物体の欠片が、浮遊するように漂う。その光景を、見えない様にアイジェスは、春幸の視線を遮る。


それに猛抗議する子供を背中に隠し、


アイジェスは、口論する艦長たちに、意見を告げる。


「誰も設定を間違えていないというのであれば、これは意図的に誰かが、設定を変えた可能性もある。」


Σ(・ω・ノ)ノ!


その指摘に、はっとなる二人に、コーディー=スルーは、


「そうであれば、艦長、責任問題を追及するよりも、監視映像や入出記録を確認するのが先でしょう。」


「もしかしたら、《人喰い》…これは生存者からの証言に元づいて呼称しますが、憎む誰かが、報復をおこなったのかもしれません。」


「俺達は...」「僕は知らないぞ?!母さんは何処にいるの?か分からなくなっちゃうよ」と、否定する言葉を答える


それもそうだな...と、


部下を呼び出し、入出記録と、映像の確認をするが、そのどれも改竄を受けたかの様に、欠けていて、何も分からない。


誰もが怪しく、誰もが怪しくない。


そんな疑心暗鬼の最中、残された問題は、メディカルカプセルに収容されるまでの間に、聞き取りを行った情報を元に


敵対者、以後は、生存者の証言から《人喰い》カルニヴォルス (carnivorus)と呼称する。


その存在が、何処から来て、何を目的として動いているのかについての分析を行う。


現在判明している情報は、相手が人を狩り、何かの目的の為に集め、


そして敵が使っている高性能のジェネレーターの固有名称と回収した後で捕虜が呟いた。ダグザの釜と言う言葉


辛うじて、敵機の名称や一部機体データが、起動中の機体からサルベージをする事が出来たが、


肝心の敵の本拠地や何故人を狩り集めている理由については、不明。


以上の事を踏まえて、月都市の月支部において機体の解析を行うしかない。

今我々が、持っている機材と人員では、対策の打ちようがない。


引き続き、コーディー=スルー上級技官は、敵機の装備や技術の解析に励む。


各員は、自らの持ち場に戻り、警戒を厳に、月都市への到着を待たれたし、


ローテーションで哨戒任務をこなしながらも、その進路は進む。



戦果を上げている第三部隊と新型を配備した第四部隊が、警戒度が一番強いタイミングである

月都市への到着時期の前衛を担当


機体を喪った第二部隊は、未だ待機状態で、機体が存命しているリン=山崎が中破して機体を喪った


第四部隊員と入れ替わり一時的に、移籍。


第七部隊の大破したイングリット=ワークマンに変わり、アンザス=フライ・ハイが一時的に移籍。


無傷の第一部隊、第五、第六については、後衛として待機。


エース部隊とする第七隊を温存したまま、月の周回軌道上に船足を固定、


天体との相対距離を測りながら、もうそろそろ、通常であれば月の軌道部隊との接触により、


味方識別コードと、船籍の確認が行われるであろう距離まで近づいたのだが、


まるで凪の海面の様に、何も変化が見られない。


いや、唯一つ違いがあるとすれば、酷い通信妨害を受け、各種通信が酷く不鮮明なものとなる...


何時の頃から自然と生じる通信妨害の後には、人が消えるという噂が、都市伝説があったが...


今までの経緯から考えるならば...。



そう目するナンネン=ハイマン艦長は、船速を第一戦速へと待機中の僚機については

第一戦闘配置とし、前衛が崩れた場合の警戒を行う。


艦橋ではDEFCON(デフコン)を発令


艦橋を船体内部へと格納し、臨戦態勢へと入る


前衛となる第三、第四部隊が次々と、電磁誘導のカタパルトから次々と出撃して行き、


最後に順番が回って来た、アイジェスは、何度目かの出撃に入る。


それまでに出撃して行った僚機たちは、軽口を叩きながら駆る口をまわし、未だ緊張の解けない。アイジェスに向かって声を掛けていく。


それでも、アイジェスの緊張は途切れず。始終何かのプレッシャーを受ける。だがいつも実戦になると其の強張りは、取れスムーズな軌道を描き


その機体を舞い踊らせていたが、今回は、いささか趣が違う。


この戦闘で、何人生き残れるのか????はて?何故、今から戦闘が起こる事を知っているんだ?


緊張する手のひらを汗ばみながら、いつも通りの安全確認と射出進路の確保を行い。


オペレーターのマリア=アッカンバーグが、「大丈夫ですよ。結婚式には呼んでくださいね。」と、謎の言葉を残して、発射タイミングを譲渡し、


重い思いを胸に、オペレーターの離陸許可を受け、格納庫ハンガーから既に脚部を固定したカタパルトから、


重い決断をする様にその名を告げる「アイジェス=ブラットワーカー、デスペラードVer0.1ガトリングマスター、出る。」


「BLAST OFF(ブラストオフ)


警戒を怠らずに、砲声の様に無音の空間で轟く加速音と同時に、勢いのまま、滑走路から飛び出し、


先行する僚機の隊列へ追従していく。

※これは別に直す所ないからそのまま行くよ。てか、全ての修正希望案を受け入れる訳ではない。


「ドン・キホーテ―、相棒が他の部隊にいっちまったが?落ち込むなよ?その重いケツは俺達が持ってやる」


謎ではあるが、実力的には、問題ないだろう。どっちかっていうとアンザスの奴がまた死にそうにならないか心配だが...。


「いや?別にあいつは俺の相棒じゃないんだが?!」


そう思われてる事実にいささか驚きつつ、周囲の警戒を厳にする。


濃い謎の粒子の濃度が上がった為、通信にノイズが入り始める。


吸い出した機体データの一部から奴らが、罪の息子と呼ぶ、その余剰の散布されるそれらが、


濃厚に、漂い始める。


どうやらコーディー=スルー上級技官の話では、奴らが使う機体のジェネレーターから排出されるものらしく


Diem(ディエム) Perdidi(ペルディディ)からもある程度の流出されるものの、二機の機体から漏れ出る

粒子量以上のものがこの宙域一体に散布されている。その量は実に20倍以上にまで濃縮されている


その意味は...


月への降下を開始し、ながら、


第三部隊と第四部隊は、二機のDiem(ディエム) Perdidi(ペルディディ)を先頭に、陣形を組みながら、

進む先から、一筋の閃光が瞬く、



閃光を通り過ぎる刹那の間に、咄嗟に蹴りだしたデスペラードの足撃が、僚機の腰を強かに、強打し、

その進行方向を反らすと、


何もない空間を何かの光が通り過ぎ、背後へと流れていく。


「なんだ今のは?こちらの射程距離外からの狙撃か?各機、センサーでの索敵結果を報告。」


「いてぇ、なんで今ケツ蹴ったんだ?ケツを狙うなら相棒だけにしとけ、トルウス02、フォイマン機、機影確認できず。敵味方識別コード不明。」


「トルウス03、ミスルギ機、右に同じく」


「こちらドン・キホーテ。センサーに感あり、此方の通常攻撃の射程距離外からの機影を確認。」


「その距離…100km、数多数、敵味方識別コード、確認できず、UNKOWN、《人喰い》だ。大小合わせれば、100機を越えてる。」


「データーベースを確認。以前確認したグヤスクトゥス20機、《傾城魚》(チンチェンユー)5機及びマンティコレ(獅子型)5機に同型機の別機体と思われるサテュラル(虎型)5機


それに初遭遇と思われるアケファロス5機、ファーマ10機、ササボンサム2機、敵母艦と思われる艦船の姿が多数…その他は、データベースとの適合不明確認できずッ」


「おい、どういうことだ月の艦隊は?もしかして戦闘中なのか?」


多すぎる...イゴールが焦りながらも確認する。


「敵味方識別コードで、友軍機は100キロ以上先にも見当たらない。敵機しかいない。」


(・д・)チッ


まずい、既に月拠点が奪われてる。何故、本部は気付かなかったんだ?完全に待ち伏せされているぞ?


「此方、トルウス01、艦長に打電。敵を多数確認その数100機以上。このまま会敵すれば、全滅する。撤退を具申。」


DiemPerdidi(ディエム ペルディディA(アドバンスド装備型を駆る。イゴールは、焦る思いを抑えつつ冷静にその提案を行う。


同じ機体を駆る。B(バリスティック)装備のハルズ=アルマインに対して、同様の具申を行い、艦長からの同意を得た上に、撤退信号弾を撃ち、


自らを殿に、撤退行動へと入る。


次々とはねる様に二条の光の柱が、此方を貫こうと、迫る中、2部隊及び艦船が180度回頭、迫る。敵ビーム兵器に対抗する為に、


ビーム攪乱幕を展開。後方から多数飛来する。遠隔砲台の雨あられが、降り注がんとする最中、


アイジェスは、思案する。このままだと、全滅だ...。殿は、イゴールには任せられない。


「此方、ドン・キホーテ、コーディー=スルー上級技官に打電。予備のボールベアリングボウを射出してくれ、あれなら、空気抵抗と重力の無い宇宙空間であれば届く。」


割り込む様に後方へ向かって、転進し、イゴールのカバーに入る。


その頃、折角の新型の初陣となり、張り切っていたはずのハルズ=アルマインは、前回の戦闘で機体が中破し、機体を喪った同部隊のコムラを副座席のシートに乗せて、新型装備を披露するべくタイミングを逸するものかと、迎撃する動きを見せる。


後部ラッチマウントを備えたバックパック及び、多数の銃身と複数の弾帯装備を備える砲口から咆哮をあげ、後方に向かって迎撃の斉射を加える。


通常のビーム兵器の射程は、精々数キロメートルに過ぎないが、実体弾であれば届く。


「おぃ、バンデラスッ?!無闇に実体弾を撃つな?月の都市に被害が出る?!」若干の怒りを含ませた、その制止を聞かぬまま放たれる咆哮は、火器管制の一部を、複座の味方に任せる為に


幾重にも狙いを済ませ、放たれるが...その狙いをまるで事前に察知したかのように、多数の親機と子機の砲台たちが、回避。


応撃の火の柱が降り注ぐ中、緊急出動した。サルバトーレ=レトリバー率いる第七隊が参戦。巨大なシールドを副腕と併せて四枚装備した。


アンザスのDiemPerdidi(ディエム ペルディディD(ディフェンス)装備のそれが、


「メイン盾が来た!?!これで勝つる?!!!!!」と、僚機たちの前に躍り出る。


都合四つの対ビームコーティングを施されたその盾の中央部が開き、偏向器が稼働。余剰のエネルギーを放出しながら、降り注ぐ小口径のビームの弾幕を弾いて行く。


(。´・ω・)ん?


なんだりゃぁ?


嗚呼あれか?ミーミルを出立してから、鹵獲した兵器の構造を解析、分析して、《Gifted Unchained Navigators Defying All Misconceptions》を使用して複製したそれを搭載した。


その機構が搭載されて居た。その事は、上級技官以外には知らせて居なかったが、その効果により、弱い弱装のビーム武装は、防げる。


問題は実弾の誘導弾だ...それについては、と、装備を受け取る隙を埋める様に、迫り出したその盾に守られながら、その腕部にボールベアリングボウを取り付け、


弾体を確認しつつ、引き絞る様に放たれた一射が、赤雷を引きながら放たれる。


放たれた一撃は接近する小型の砲台らしき一機を撃墜し、繰り出される迎撃の一手の嚆矢とならん、


さらに、振乱し、奮戦するアンザスの横から、白いエースカラーのC(コンバット)装備のDiemPerdidi(ディエム ペルディディが、四連銃身のライフルと、左腕のマウントラックに備えられた近接用の実体剣を引き抜き、迎撃に入る。


残りの僚機たちは、後方に下がりつつ引き気味に、それぞれが思い思いに、銃火を放ち、迎撃を試みる。


旗艦の内部では、艦長は、急速旋回からの緊急離脱を選択。


各砲座担当に、弾幕を張る様に指示をしつつ、同時にビーム攪乱幕の展開を指示、


「艦長、それではこちらの弾幕が通りません」


「ええぃ、時限信管で、5分後に起動させろ。僚機を避けて後方の戦場に投下するんだ。それで、相手の相対位置で炸裂する。」


「弾幕、ダメージコントロールは厳に、一機も艦船に近付けるな!!!!」


降り注ぐ極太の光の柱を四機に増設された偏向機によりそれを火花を散らしながら、防ぎ、


視界いっぱいに広がる死神の閃光とダンスを興じながら、生きた心地をしないまま、アンザスは、僚機へ狙いを付けた死神の鎌を防ぎ続ける。


乱れ飛ぶ長距離射線を手に保持した偏向機構を備えた楯と盾を並列接続し、球体状の空間を形成、


真正面から敵の狙撃を後方へと通させずに、鉄壁の防御を見せる。


其の防壁の枠外へと飛び出したアイジェスは、乗機の腕部に備えられたを引き絞り、カウンタースナイプを敢行


赤雷を纏って直進し、目標へと直撃するまでのわずかのタイムラグの間に、射撃位置をスラスターを吹かせて、


謳う様に踊る様に回避しながら、狙いすませて撃ち放つ。


戦場にはいつの頃からか、唄が聞こえ始める。


「戦場で詩だと、おぃ、お嬢ちゃん何のつもりだ?!」


乗機に乗るハルズ=アルマインは、折角の新機体のお披露目が負け戦かよと、悪態を吐きながらも、各部に備えられた幾重の砲身とミサイルポットから


短距離レーザー誘導での火器管制を複座のパイロットに任せ、己は、二本のマニュピレーターのライフルと、腕部の武装付きシールドを構え、機体の機動に専念しつつ、


複座のパイロットの狙いやすい位置へと、アンザス機を盾に、火力で押し出し、向かってくる子機の群に対して、散弾と放射状に幾重にも放たれる


複数のコンバージョンリングを通り加圧されて多重加速器から放射されるビームの連続射出による弾幕により、次々と戦場に閃光の火花を散らせ始める。


狙いが付けずらい子機で合っても真正面からの接近が分かって居れば、面での火力推しでどうとでもなる。


器用に敵機のビームの一撃を避け、返す刀で、四連銃身のライフルで、加圧され炸裂する光の奔流が、敵機の先兵たる子機を撃ち落とし


返す実体剣の刀身で振り払いつつ、一撃を加え、転進すると、


「...」


男は、無言のまま、操る機体の性能に思っていた以上の手応えを感じつつ、第七隊の隊長、サルバトーレ=レトリバーの指示に耳を傾ける。


アンザス機の陰に隠れつつ、残りの僚機に対して、迫りくる子機共…データベース状では《falcisファルキス》と呼称される死神の鎌が、


此方の応撃を避けて回り込んでこない様に、上下左右へと射線を展開し撃ち落とすように指示をだす。


オールレンジ攻撃の強みは、死角や意識外の何処から撃たれるのかが分からない事にある。


ばらける前に面制圧ができれば...。


中央部の陣容を崩すのにハルズ=アルマインのB型で、墜とし、逃れた獲物を各自が狙い撃ち、


無重力下での長距離射撃が可能なアイジェス機が、相手の狙撃手に向かってカウンターを叩き込む。


戦場は形勢を不利とみなしつつも、絶望的な崩壊を避けながら進んで行く。


先行する敵機の先兵は、彼我の距離を詰めるべく、《傾城魚》(チンチェンユー)5機の陰に隠れつつ突撃してくるグヤスクトゥス20機の群との接敵まで...


前回は敵の《傾城魚》(チンチェンユー)とマンティコレ(獅子型)と数機のグヤスクトゥスに、数に勝る三部隊(12機)+αで掛かり何とか撃退できた。


だが新型機を用意し出来たとは言え、彼我の戦力差にこのまま正面衝突した場合...。味方の損耗は避けられない...。


そんな危機的状況に置いて、何を思ったのかアイジェス機が、クルリと宙返りを行い、狙いを遠くの狙撃手から僚機の一体に向かって


そのボールベアリングの一射を撃ち放つ、放たれた弾体は、偶々構えていたであろうシールドに浅く命中、バランスを崩し、突然のフレンドリーファイアに、狼狽しつつも


態勢を整えた僚機が、避けた。その位置にむかって、長大な火の光を纏った閃光が通り過ぎる。


僅かにそれたその一撃に肝を冷やしながら、


「おぃ、ドン・キホーテのクソッたれなんで味方を撃つんだ。」


その事には何も答えず、再び、目の前の敵機に向かって狙いを付けて弓を引き絞る。ガトリング砲を使うには...敵が離れすぎているし、且つ味方機が近い…


元々乱戦を想定して組んだ装備の為、長距離砲撃戦での強みを生かせずに、乱戦にならんと使えんな。と断定し対応する。


...



...



...



「アイ=アシン中尉、君も行けるかね?前回の戦闘で、機体を喪った後だが...無事回収できた事、嬉しく思う。」


「( ゜д゜)ハッ!問題ありません。閣下、貴重な機体を喪い、申し訳ありません」


「ジンボ少佐たちの事は残念だが...君は、貴重な純粋な《聖痕》スティグマ持ちだ。」


「君には新型を預けたい...基本操作は、マンティコレ(獅子型)と、そう大差はない。マニュアルを渡し熟読するように、だがぶっつけ本番にはなるが、使い方は機体が教えてくれるだろう。」


「新兵装があれば、報告にあったであろう、邪魔者を排除し《慈聖体(じせいたい)》らしき逃亡者を捉える事も出来るだろう。」


「貴君の活躍に期待している。」


「( ゜д゜)ハッ!」


数々の戦闘での苦々しい思いをしていた。彼女は、今度こそはと、捲土重来を誓い、与えられた、乗機となるそれを仰ぎ見る。


格納庫のメンテナンスドックらしき、設備には二対の赤い赤い燃える様な放熱板を備えた真紅の機体、


特徴的なのは、怒りを表現したかの様に、開いた頭部の口の部分に乱杭歯の様に突き立った放熱板らしき、

隙間から燃える様な炎と水蒸気を吹き出しながら、


機体の動力炉には火が入り、濛々煙るその異様な機影が覘く。


それはフレイミングティース(燃え立つ歯)と名づけられた。その機体が、出撃する。


暫く前の事、《人喰い》カルニヴォルス (carnivorus)と呼ばれた存在が、戦況を見定める頃、


遥か彼方の戦域で、噴き出される光の粒子が舞う。


突然の通信障害と思考制御の砲台である子機と親機の連携が突如乱れる。


一体何が。


観測班がその事象を報告する。


閣下、異常事態です。何者かが《ニヴルヘイム(霧の国)》らしき現象を発動させていますッ?!!


「何を世迷言をニヴルヘイム(霧の国)は、まだ開発中の我らの試験中の技術だぞ。それと同様の事象をおこなえる機体が他にあるはずもない。それに、目標にはMAは確認されていない。小型化は不可能な筈だ。」


「しかし…」



...



...



...


振り撒く戦場の中で、イゴールが駆るA(アドバンスド)装備のDiem(ディエム) Perdidi(ペルディディ)各部、ディバインダーと


射出口を模した牙の様なノズルから、高密度の粒子が霧状に噴出し、結晶化された氷状に形成される。


更には戦場と展開される機体及び船舶を覆い始め、次第にその空域の視界を司るセンサー類や通信を完全に攪乱。


急遽狙いを喪った《人喰い》カルニヴォルス (carnivorus)は、アイジェス達の姿を見失い。


その間に転進した艦隊は、戦場を離脱して行った。


「ぶっつけ本番だが...。上手くいったな。しかしコーディー=スルー上級技官。この技術は一体どこから?君が研究して居たののかね?私はその様な計画を聞いた事もプロジェクトが存在した事も知らないぞ。」


「いや、それは...。」


...


...


...


...



果たして、上手く行っただろうか、且つて死んだあの人達が、生きる未来を果たして捻出できただろうか?


そんな誰の声とも知れぬ夢を見ながら、男は進む。


かつて人類が宇宙に進出して、その一歩を踏み出した《静かの海》から、


月の裏側にある月最大のクレータ《南極エイトケン盆地》へと進路を変える。


月の鉱床としては、最大で、推進剤や燃料として使用できる水やヘリウム3が豊富に存在する。

それを喪った資材や燃料の一時的な、補充とする。


「それで、A(アドバンスド)装備の機体の攪乱効果は、どの程度保たれるのかね?」


「それは、過去の未考証のデータベースのそこで眠っていた技術の為、検証が進んでおらず。しかも、ぶっつけ本番で使用した為、正確には割り出せませんが、想定していた粒子放出量の観点から、


結晶化された氷が解けるまでの期間だと思わるので、幸い夜間及び影が出来るルートを選択した為、恐らく暫くの間は問題ないでしょうが、月の昼夜のサイクルは約14地球日毎に切り替わる為、分かりません...」※月齢を天体の高度計算ソフトで割り出す必要があるので、若干の修正が入るかも?今だ届かず無念


「また、再度の使用は、極度のジェネレーターの損耗が考えらるので多用は、燃料が不明の為、継続的な機体の稼働を考慮すると、一度や二度が精々...。燃料が何か分かって補充できればよいのですが...」


「そうか...とりあえず。」と


各機共々採掘船《子亀》に僚機の護衛を付けて、ローテーションで警戒しつつ、採掘作業を行う様に指示を出す。


採掘さえ済めば、整備艦エンジェルフィッシュの科学工房で、燃料を生成できる。


そうすればL5宙域への帰還が見込める。


急ピッチで進められる作業と共に、月の裏側で、アイジェスらの奮戦が続く、


一方、目標の存在を見失い、艦隊の一部を偵察に出し、月の表面の幾つかの地域への捜索を開始する。


機体の整備準備に暫しの時を有し、出撃可能になるまで、数日が経過、その時を今か今かと待ち続け、張られた絃に押し出される弓矢の如く


その意志は張りつめたモノとなり、逸る気持ちを抑え、独白する。


奴と再び相まみえ、この新型、フレイミングティース(燃え立つ歯)を駆れば、あの機体にも対抗できるはずだと、その操作性を愉しみ、その手に操縦桿を馴染ませ、


点火されるスラスターを全開にして、月都市から捜索へと出撃した艦隊を置き去りにして、自らも捜索隊に加わる。


機体各部に備え付けられた放熱ファンや口腔から放射される熱量を推進機の推力へと転換、揺らぐ炎の火を放ちながら、後続機を置き去りにしたまま、一機の真紅の機体が突き進む。


その陽の光の如くさんさんと輝く、光を遠目に、一筋の流星の如き光を視界の端に、《子亀》の稼働を見守りつつ、


第三部隊の面々が、掘削作業をするガントレークレーンや、掘削機を稼働させ、次々と資材を積み込み補給作業を開始する。


見ると巨大な月のクレータ後には、崩落した壁面や、それまで、この鉱床に存在していたであろう、設備の残骸が幾重にも折り重なり、


作業の妨げになるであろう金属の破片を電磁磁石付きのクレーンを操作し、資材への転用も考慮して回収。


やはり、元々あった月の施設が破壊されている...月は既に奴等…《人喰い》カルニヴォルス (carnivorus)の手に堕ちたとみてよいだろう...


この分だとL1宙域のコロニーに関しても絶望的であろう。


船舶の内外で、薄っすらと流れる、不穏な空気と、焦燥感に焦がれながらも。


その作業は、数時間から数日ほど経過、形成された氷状の結晶体が消え去るまでのその猶予時間の間続く。


センサーの妨害を担当していた、イゴール機は、アイドリングをしつつも終始稼働状態のまま、他の僚機と一緒にローテーションで、入れ替えながらも


連続稼働を維持していた。


昼間のエイトケン盆地では、上空に向けて高速のイオン風が吹き荒れ、崩れたクレーターから差し込む日の光によって、昼は100~125℃前後まで上昇し、


陰に隠れた場所ではマイナス160~マイナス233℃まで、下がり続ける...


結晶化した氷を保持する為、クレーターの陰に隠れつつ、吹き荒れるイオン風を避けながらの長時間の稼働に、ジェネレーターの燃料が心もとなくなりつつも、その作業が佳境に入った頃、其れ迄対応していた、第一部隊と入れ替わる様に出撃した


第三部隊が展開し、周囲を警戒を行った際に、A(アドバンスド)装備の展開されるその効果に紛れ、其れ迄センサー類の効果が阻害され際


望遠を伴わない目視による警戒の端に、何かの光が引っかかる。


遅れて出撃した。アイジェス機に向かい。腕部から伸びるワイヤー接続により、接触回線で、フォイマンが話しかける。


(。´・ω・)ん?


休憩中に、見咎められ殴られた頬を摩りながら、「一体どう…」そう言葉を告げようとした瞬間に、何かが瞬き、心得たとばかりに、自らの機体に備えられた


重力感覚器官《Sensorium Gravitatis》(センソリウム グラウィタティス)を起動、重力は全ての物質を貫通する。


その効果を十全に使い。敵識別信号を確認。敵機だッ!《人喰い》カルニヴォルス (carnivorus)が来たッと、


予めコーディー=スルーから提供されていた。《人喰い》カルニヴォルス (carnivorus)の機体データには、存在し無い。機体…新型か?


未だ、その相対距離は、遠く視界の端にその紅翼の翳りが目視できる程度の距離は、100キロ以上離れている。


A(アドバンスド)装備を稼働しつつ、報告を受けたフォイマンは、直接、艦船に接触回線を開き、危機の到来を告げる。


敵機の発見に船内は色めき立ち、それでもアンザスは、食堂で、大盛りに大盛りとよそわれた、パスタを頬張りつつも、


「行くぞ...」と言葉短い声で、無理やり引きはがされメンテナンスドックへと子牛の如く連行されて行く。


あ”~!


次々と僚機達が、カタパルトデッキから射出され、艦船の周囲に耐ビームコーティングを施された盾を並べて、警戒態勢に入る。


整備艦エンジェルフィッシュは、掘削作業を終えた《子亀》を収容しつつ、他の艦船と共に第一戦闘配備へと移行。


撤収作業を終えた艦船が、次々と離岸していく。艦船らが、次第に月クレータの陰から飛び出し、戦闘態勢へと入る中。


「艦長ッ?!資材の回収は出来たが、未だ推進剤へとの加工が終わって居ない。このままではL5宙域に帰還できない。」


そう焦る声を叫びながらも、繋がれた接触回線を有したままコーディー=スルーは、スルーできない問題点を提示する。


「本艦並びに僚艦は、これより、月クレーターより離岸し、地球の重力圏に向かう。」


「重力を利用したスイングバイを敢行し、その勢いで是より本国へと帰還する。」


「艦砲射撃、待て。敵機を引き付けてから、ビーム攪乱幕及び、弾幕を張れ、各員、指示あるまで指をトリガーにセット...。」


「...。」


「...。」


「艦長、敵機のスピードは...通常の三倍近いです。」


「オペレーター、敵機迄の距離を目算で計測、相対距離が50,000を切る迄、カウントダウン。」


「120,000...。」


「100,000...。」


「75,000...。」


「50,000...。」


「トルウス01、攪乱解除、センサー狙え、各座、並びに主砲、撃てぇぇぃ!」


一斉に放たれる。閃光と、制圧射撃による弾幕の壁が華開く。閃光と共に先行する。真紅の機体に追従するべく展開されていた


数機のグヤスクトゥスが鮮烈なる光に包まれ、戦列から次々と離脱していく。


長距離艦砲射撃の奇襲により、戦果を上げつつ、離岸、一路艦隊は、弾幕を張りつつも、月の裏側から、地球圏へと向かう


ハルズ=アルマインは、B(バリスティック)装備のDiem Perdidi(ディエムペルディディ)を駆りつつ、



機体に装備された多数の砲身及びビームライフルから、実体弾及び格子状の光子を嚆矢となる艦砲射撃に交じり撃ち放つ。


点ではなく、面制圧を目的としたその射撃に巻き込まれ、複数の花火の華が開く。


やはり、戦果が得られたのは、この機体のお陰だ、新型さえあれば、俺も...


そう言って、さらなる戦果を上げつつ、繰り出される砲火を他所に、


戦場を翔けるアイ=アシンは、僚機の一体を伝令として、月の裏側から表の味方へと送り出す。


突然の奇襲に驚きつつも、目標は、《ニヴルヘイム(霧の国)》を行使している。その技術どこで手に入れたかも気になるが、


既に、《慈聖体(じせいたい)》も奪われジェネレータも、全てあの船舶に回収されたであろう。


ジェネレーターに施されたマーカーが其の位置を再び知らせてくる。


それま結晶化された《ニヴルヘイム(霧の国)》により偽装されていた。その姿が、センサー類に次々と表示されて行く。


降り注ぐ艦砲射撃の中、追従する。味方機を引きつ入れながら、フレイミングティース(燃え立つ歯)は、踊る様に


各部から吹き上がるスラスターの火を小刻みに噴出しながら、直近を通り過ぎるビームの余波すら、物ともせずに突き進む。


回避運動を繰り返す最中、ハルズ=アルマインから放たれる光の奔流が、敵機に命中する。


その直撃コースに入る直前、アイ=アシンは、放熱板を可変させ、その機体の機構の稼働を開始する。


命中する瞬間に、その光が霧散、そして、その口腔へと吸い込まれ、各部の放熱板から放射され更なる加速を実現、一機のみが一気に躍進。彼我の距離を詰めて、


その姿にハルズ=アルマインは、狼狽えつつ、複座のコムラに指示を出し、有線遠隔操作のドローンを放出。リモコン操作で、展開されるそれらを


有効活用する。オールレンジ攻撃を展開。


相手の視覚の死角へと回り込む、その動きに、知らせを受けて転進してきた。


マンティコレ(獅子型)とサテュラル(虎型)の二機が合流。


連弩の様に放出される。子機と親機の群たる《falcisファルキス》が踊り、アイ=アシンの後方から群をなして、アイジェス達の元へと殺到していく。



親機4×2+子機16×2の合計、40基の小型の《falcisファルキス》が乱れ飛びながら接近してくる。


その場に陣取り、狙い撃つ、ハルズ=アルマイン機と共に周囲の僚機たちが、手に持った得物から


光彩を放ち、反撃を試みる。


躍る様に飛翔し、次第に接近してくる。真紅の機体がその両手にそれぞれ保持していた。


大型のライフルを構え、舞う様に、回避運動をしなが、前面に展開、逆三角形のエネルギーフィールドを形成し、ビームシールドらしきその威容を以て突撃。


光る緋色の閃光をその手に持った得物を傘として、僚機の小型砲台を伴い接近し来る。


中央の真紅の光に向かって、弓を引き絞り赤雷を纏ったアイジェス機のボールベアリングの弾体が、その前面に直撃するも


フィールドに阻害され、触れた瞬間に溶解。長大な獲物が、銃身の後部に備えられた、小型のジェネレーターから、流れ込んだ


加圧変換された粒子が、逆三角形のフィールドと共に、銃身に多重に重なったコンバージョンリングを経て、


長く機体の半分を覆うほどの、光の御柱を注ぎ込む。


閃光の一撃が、僚機のディエムを包み込み、構えていた対ビームコーティングが施された盾が、まるで燃え上がる紙の如く


溶解、融解、熱分解され、その保持していた腕部ごと、光を伴う炎に炙られ、その上半身が消失し、末期の叫びをあげる事すらなく


漏れ出た便意と共に去りぬ。炭化し消え去る姿が幻視される。


・・・


・・・


・・・


長く機体の半分を覆うほどの、光の御柱を注ぎ込む...。その光に包まれる直前に、急遽反転し、後方の味方機にその弓を引き絞り、


背後から飛来する閃光を機体を捻り回避しつつ一射を放ち、構えたシールドへと直撃させる


その衝撃でブレるスラスターの動きに併せ、燃え上がるその非を示す様に放たれた、一撃が、その目標を喪い、消え去りさん霧散する。


砲火の最中、続々と第七部隊の僚機が、偏向機構を備えたD(ディフェンス)装備のアンザス機を筆頭に、楯を構えて続々と出撃し、


敵機のからの砲撃を防ぐ為に奮戦する。


白いエースカラーのC(コンバット)装備のDiemPerdidi(ディエム ペルディディは、独特の形状の四連銃身のライフルで、


僚機と併せて包囲射撃を敢行。


制圧射撃をを行うB(バリスティック)装備と共に、面制圧の砲撃から漏れてきた。迫る子機の一群を狙い撃ち、


敵機が、散開し、オールレンジ攻撃に移行する直前でその出足を叩く。


通常のディエムより、大型、強化されたスラスターを吹かせながら、アハト=佐伯は、「...」無言のまま、短い動作で、腕部のマニュピレーターを操作。


予め決められていたハンドサインを描くそれに了解の意を以て、答えると、別部隊の僚を連れて、敵エースを叩く為に、前へと出る。


味方機と艦船への砲撃を防ぐ為に壁となるアンザス機と砲撃戦を仕掛けているハルズ=アルマインを他所に


すれ違いざまに、子機の一機を左腕に装備したままの実体験を裏拳を放つ様に叩き込み、撃墜させると


この敵機への対応方法は、分かって居るぞ。とばかりに、背後や上下から迫る子機を宙返りをしつつ、回避、2機の僚機と共に互いの死角を補いつつ、


散弾式の実弾兵装を駆使したディエムと共に、一機づつ、撃ち落として行く。


「...」


やはり、この子機…《falcisファルキス》達の動きに、僅かばかりだが、以前会敵した敵機より、その追従性能に陰りがある。これであれば、後ろに目を付けるバックミラーを駆使して、


味方機との連携をおこなえば...。既にバックミラーの弱点は把握している。


であれば...問題は無い筈。


新型機の初陣での活躍は叶わなかったが、まぁ良いだろう、自分は《自信家》コンフィデンスとは、違う。冷静に物事を見て、判断する。


敵の新型の脅威は不明ではあるが...機体の反応速度に満足しつつ、慢心せず、脅威に対して対処する。


傲慢な人間は、人に自分の傲慢さを押し付けてくる。傲慢さなど、ごみ箱にでも捨てておけと、ばかりに、マウントの取り合いなぞには、まるで興味なく、敢えて指摘する事も無く、


生じる死角を僚機の機体でカバーしながら、視界を確保し、狙うは、敵の不明機…恐らくエース機と目される。フレイミングティース(燃え立つ歯)へと向かっていく。


機動性と位置的に、出足が遅れているグヤスクトゥスを置き去りにして、親機と子機の《falcisファルキス》が密集する最中に飛び込む。


編隊を背中合わせでの密集形態へと変更、突撃するアハト=佐伯は、肩部の実体弾のオプションを選択し、榴弾による散弾を放つ、


くるくると回転しながら、生じるGに、抗いつつも、視界の中次々と、戦場の華が咲き乱れる。


乱れ飛ぶこちらへの小口径のビームと、思考誘導の弾体が乱れ飛び、それぞれの攻撃を器用に避けつ、撃ち落とし、自らも戦場の華ある花となるべく奮戦する。


そこに、陰から突如、いつの間にか並走していていたのか?一機の僚機...。暗闇では見にくい紺鼠(こんねず)色の機体色のそれが、突如、アハト機を踏み台として、


現れ、その蹴り脚に押し出される様に、月面の下方へと、押し出され、


その通過下した、背後に、フレイミングティース(燃え立つ歯)...その両手の独特の形をした、湾曲する長大なライフルから生じる


光を伴う炎に炙られ、機体の一部が溶解する。


あまりの事に、激昂しつつ、無言でその衝撃を産んだ対象を睨む。


「...」


見ると、今まで自分たちが存在していた。一群の中心地に機体が躍り出る姿が、垣間見える。


いつの間にか、僚機を合わせた三機のとも、アイジェス機に蹴りだされ、バランスを崩して、月の軽い重力にやや引き寄せられながらも落下していくのを姿勢制御のバーニアを吹かし、

態勢を整え、その姿を見る...


「...」


(・д・)チッ一体何を?功を焦ったのか?


見ると、一群の中心点へと向かったデスペラードの機体は、その機体全面に備え付けられた、ガトリング砲を駆動し始め、


360度の全面射撃を敢行。


...


...


...


時は暫し戻る。


アイ=アシン中尉は...狙った獲物に、狙いを付けて、格好の獲物だとばかりに、味方の思考遠隔砲台の群の中心に躍り出たそれらに対して


子機達の砲撃に紛れて、自らの狙いを隠し、降り注ぐ砲撃をかいくぐりながら、


絶死の砲撃を撃ち放つ。


すわ、多数存在する子機達を囮に、回避不能のタイミングで放たれたそれに対し、突如として、割り込んできた機体が...あれは?!


僅かな動揺を見せつつも、狙いが外れて、攻撃が無為に終わると、入れ替わる様に群れの中心点に躍り出た。その機影に、確かに見覚えがある。


装備している武装に差異は見られるが、そこに存在したのは幾度となく我らが、狩りを阻んできたその元凶。


それが、視界一杯に広がる物理射撃とビームによる二面射撃の雨を360度、全方向に向かって撃ち始める。


まるで背面どころか左右上下、前方に向かって、縦横無尽に駆動する砲身を咲き乱れさせ弾丸の雨を五月雨状に、頒布するかのように


ばら撒き、その姿は、見るモノには敵味方区別なく、獲物を狩ろうとする様にしか見られずとも、


その狙いは、器用に友軍機を避けつつも放たれる。


戦場に咲く、爆炎の炎の華が、咲き乱れ、攻撃を避けつつ応戦しようとする。思考制御による砲台が、避けようと向かった先に


予測射撃を行うかの様に銃身の火線が敷き詰められ、回避する間もなく爆発炎上。


周囲を包囲するかのように舞い踊る。《falcisファルキス》の小口径ビームの檻が、直撃するかのように降り注ぐ中、器用に機体を傾け、


最小限の動きで回避。


砲身の連動を終える間も無く、追えなくなったその機体の機動に誘われ、二機のマンティコレ(獅子型)とサテュラル(虎型)が


発振する獲物をその手に持ちて、挟み込むように、襲い掛かってくる。


かつて、その対応に手こずった機体の類似機らを前に、臆することなく、急制動の機動を描き、ガトリング砲の銃身の方向を


機体全面に集中。


放たれた豪雨の如き、射撃の雨に、巻き込まれ。何かに誘導されるかの様に、射撃の牽制を受けつつ、敵機は、回避運動を選択。


その動きに追従する様に、避けた先には、実体剣を構えて、態勢を整えた。アハト=佐伯の機体が待ち構えていた


地点へと至り、すれ違いざまに、一閃。


サテュラル(虎型)の機体がその前腕に装備する、発振するビーム形成された爪と、接触。


震える様に斬線が重なり、互いに弾かれるも、駆動する砲身が追従し、構えたビームシールドらしき光る盾と衝突。


連打される銃弾の雨が、降り注ぎその場に釘付けとなり、動けぬ背面から、ディエムの一機が、光り輝く光剣を翳し、肉薄、


それに気付いた真紅の機体が撃墜するべく、火を纏った閃光を放とうとするが、更に砲身を駆動し、牽制射撃により、


構えたライフル全面のフィールドと衝突。その攻撃を防ぐも、狙いを絞らせない牽制を嫌がり回避運動へと移行、更に駆動する砲身が、その動きに合わせて、襲い掛かり攻撃の手を緩めさせる。


その間にそれぞれの機体が接近武器を手に斬り合うなか?思考制御の残りの子機達に命令を下し、


包囲射撃による光の檻を形成しようと画策するも、急制動を掛けながらも砲身の狙いを外さず撃ち落とし、宙返りをする蹴り脚により、


脚部に装備されていたチェーンソーブレードをすれ違いざまに僚機と斬り合う機体に向かい叩き込むと、


その衝撃で、前腕の一部を切断しつつ、逆包囲射撃を敢行。射撃しつつ、繰り出された腕部に備え付けられた


右腕のガトリングガンの砲身より、伸びる。発光する刃が、生じたそのまま突き出され、防御に入ったビームシールドに叩きつけ、


火花を散らせながらも拮抗するも、発振器である装甲板に接触、抉る様に溶断され、爆発と共に、腕部が破壊される。


切り合うアハト=佐伯機も、負けじと、機体と装備に備えられたギミックを解放。


マウントラックにライフルを固定、手の空いた右腕の手首より射出したビームサーベルを取り出し、


振るう実体剣に接続、発振する光が、装備の基部から、供給されるかの様に、瞬き、実体剣の発振がひと際高く


振るわれる。


大型のビーム発振器となった鬣と撃ち合い、撃ち負けたアハト機は、その勢いを殺さず後方へと機体を流したまま、下部へと滑り込む様に敵機の刃を流し、態勢を崩した瞬間に、敵機の脚部を切り飛ばす。


以前として、銃弾を撃ち続ける。アイジェスの駆るデスペラードは、残り僅かになった弾数を気にしながら


増加装甲に隠された、レーザーによる短距離誘導兵器を解放。僚機を狙う敵機共々相手の子機を封殺する為に


放たれるが、応射する親機から放たれる。思考誘導弾が、対抗するように放たれ、


戦場のあちらこちらに火の華を咲かせ、それに巻き込まれない様に僚機たちが不満を漏らしつつも、回避。


更に、その場に釘付けとなった、親機をハルズ=アルマインの遠方よりの援護射撃により、撃墜。


その数を次第に減らし始める。


破損した機体を抱えたアイ=アシンは、友軍機へとブラインドアンカーの使用を指示するも、


乱戦では、同士討ちや各機体との接触及び、同時展開数の限界を超過する為、使用を渋る。


コックピット内では、鼻血をたらしながら懊悩するパイロットたちを苦々しく思い。


自らが戦局を変えるべく前へ前へと進む。


その間にも戦場は、次第に月の重力圏内から、離れ、地球へと転身しながら、向かう。


艦船は、各機に向かい。旗艦周辺への集結を知らせる信号弾打ち、撤退戦へと移行。


機体の進行方向を変えて、撤退する。その終点の終わりに、大量の実弾兵装をばら撒きつつ、


後方へと下がるアイジェスと僚機達を他所に、次々と誘爆していく子機らを仰ぎ見て、


アイ=アシンは、友軍の不利を覚も、未だ、己の操る真紅の機体は、健在。


ならばこの状況を打破するべく、


設定されたコマンドを入力。起動音を鳴らしながら解放され、


ベベンッ!!!コンソール上で《Pyrolysis Tooth(パイロリシストゥース)》の文字が踊る。



機体の頭部に備え付けられた。口腔から漏れ出す炎の緋が、太陽の光にも似た輝きを放ち、


展開される。黄金色に輝く緋のそれが、前方に展開される敵機目掛けて放射する。


機体の身長よりも倍する大きさに膨れ上がった炎の勢いが周辺に展開されていた。


子機や親機に火を付けて、機体に損傷を抱えた友軍機を巻き込み誘爆。一瞬の命の耀き見せて、花と散せる。


狙いすませたその一撃が、アイジェス達僚機を掠めようとするも、振るわれる威力に狙いが外れ、


彼方に存在する。旗艦《R.I.P》に向かって放射される無音の世界の中で、


咄嗟にカバーに入ったアンザスを光が照らし、影が消え去る。


四機の偏向機を並列励起し展開されたフィールドに突き刺さり、そして、その盾を貫き


輝く緋が直撃。


爆発炎上する光景が離れたアイジェスの元へも届く。


アイ=アシンは、その威力に慄きながらも、確かな手応えを感じるも、先ほどの一撃により、


負傷した友軍機を巻き込み撃墜してしまった事に狼狽えつつも、その威力に確かな高揚感を

感じ取る。


《Pyrolysis Tooth(パイロリシストゥース)》初使用に、その威力の調節を見誤った事実に


己の失敗を顧みるが、《聖痕》の傷跡が、痛み、そして身体を熱くさせる。


だが、これなら...あの機体にも対抗できる。戦闘中に嗅いだ、この匂い覚えたぞ...


子機と親機は、既に本体を喪い、その機動を喪うが、フレイミングティース(燃え立つ歯)は、大きく機体を発振し、


黄金色の光を放ちながらも、その余剰の力で、周囲に浮かぶまだ動く思考制御の砲台を掌握。


いささかの不具合や不慣れな機体での遠隔操作に手こずるも、次第にその操作を掌握していく。


「「「「「「「「「「「「「なんだ?!今の光は?」」」」」」」」」」」」」


濛々と上がる煙の陰からアンザスが駆る。ディエム ペルディディが現れる。


一対の盾を喪い。その陰に隠れて居てたビームシールドを展開するもその防御も同時に喪い。


機体の兵装の幾つかも失いながらも尚もその機体は原型を止めるが...


次射は防げない...


イゴールは、2度目の《ニヴルヘイム(霧の国)》を発動。再びのセンサー類の攪乱を行使し、


地球の重力圏内へのスイングバイによる。加速機動の計算に入り、船脚を速めて、巡行へと移行する。


咄嗟の判断による攪乱する広範囲の結晶体を散布。一先ずの安全を確保しつつ、僚機と共に船は、月の重力圏を脱し、


L1宙域よりさらに向うの地球の重力圏へと向かう。


残りの推進剤は、L5宙域への直線移動には心もとないが、整備艦エンジェルフィッシュで、並行して化学処理された鉱床から取り出した資源を加工し、随時、補給を行っていく。


戦闘で負傷した機体を回収し、弾薬、推進剤等の補給も並行して行い。


我らが、船は、目的地へ進む。


最中、船中の通路内で男たちの怒号が響き渡る。


人の肉を拳で撃つ盛大な音が鳴り響き、一体どういうつもりだ?功を焦ったのかと、叩きつけられた罵倒を


何も言わずに黙したままのアイジェスは


「・・・」


無言のまま、怒りの視線を叩きつけるアハトに向かい、何も言わない。


「何事でござるか????」と、アンザスがひょっこりと尻を振りながら仲裁に入る。


「無茶苦茶しやがって次は営倉入りだからなッ!!!」そう言って去って居く男達とオロオロしながら、クッキー食べる?


と、空気を読まずに、その口にぐいぐいとチョコチップクッキーを押し付けてくる。


それを断る様に無言のまま立ち去るアイジェスの背中を追って、アンザスは咀嚼する。


その光景を通路の陰から、三つの串団子の様に連なるハルズ=アルマインと、リン=山崎らと、イゴールが何事か?


「どうやらお嬢が、功を焦ってまたやらかしたらしいな。殴られても分からんのか?」


「うーん、でもあの子がそんな事するかな?正規の軍人でもないし、撃墜スコア稼いでも、利点ないでしょ?そうお母さんは思うの。」


「確かにな...。貴君らはどう思う?」


「まぁ、俺が次々と撃墜スコアを塗り替えたから焦ったんだろう?つまりは俺の所為って訳だなッ?!」


「「それは、そんな事(ヾノ・∀・`)ナイナイ」」


...。


あとで、機体のフライトレコーダーを確認してみるか?



...



・・・


・・・


それでも、尚、俺は唄を謡い続け、その声に耳を貸す。いつも斃れそうになる俺自身を奮い立たせてくれたのは、別れようとしても責めるような唄ではなく


唯々、側に居ずとも伴にあり、支えてくれたあの詩声達だけだ。別れるその瞬間ですら愛を謳う...



(。´・ω・)ん?どうした?


耳に掛けていたイヤホンを取り外し、その声に応える。


「アイジェス氏ぃぃぃー?!お菓子たべりゅ?」と差し出された。お菓子を断り、それよりもと、


「敵の攻撃が直撃して良く生きてたな...身体は大丈夫か?」


「それはこっちの台詞でござる。まぁ、機体の損傷は一応の戦闘継続も可能なレベルなので、引き続き出るでござるよ。」


「みんな整備艦に集まって機体の整備してるけど、艦長からの念の為、大気圏突入用の装備を装着するようにって指示が出てる。」


「アイジェス氏は、未経験だから、一通りマニュアルを読むが良いですぞ。単独での大気圏突入は、恐ろしいで在ります。まぁ、無事、スイングバイに入れればいいでござるがね。」


手渡されたマニュアルを一読して...しかし、心の端に何かの違和感を感じる。だが、そこまでは見えない...立ち尽くす側に、通り過ぎて行ったノーマルスーツを着込んだ何者かの香りを嗅いで、


仄かな異臭と不穏な香りに包まれる。


...。


弾薬の補充と機体のメンテナンスを終えて、追跡してくる機影を警戒しつつ、部隊を展開、各自に警戒を促しつつ、地球の重力圏へと向かって進む。


未だ、攪乱の結晶が、三隻の艦隊の姿を覆い隠してはいるが...。追跡は確実にあると見て言いと、


第一戦闘配備の侭、《R.I.P》の艦首に、鎮座するイゴール機は、稼働する限界を見守りつつ、艦船がホーマン遷移軌道 による軌道計算を行い、


地球圏内への大きく迂回しつつ最適なルートを割り出し、向かった先に...。


何故か、攪乱に妨害されないデスペラードのセンサーを頼りに、斥候として駆り出され、


アイジェスが駆る。デスペラードのセンサーに、多数の機影と数隻の船舶を確認。


敵味方識別コードは、《人喰い》カルニヴォルス (carnivorus)だッ


敵機多数。艦船と思われる。機影、確認。待ち伏せされてるぞ?!


と、アイジェスの警戒の言葉が延長ケーブルに接続された接触回線を結んだ艦橋に伝わり、通信が攪乱される結晶体の範囲内で、


予め決めていた。敵機の到来を知らせる信号弾を船体の位置を知らせない様に明後日の方向へと射出する。


ナンネン=ハイマンは、各機に戦闘配備を発令。


艦長は冷静な態度を取りつつも、何故?こちらの動きがバレた?まるで私たちの推進剤の残量が心もとない事を知っているかの様な動きをする。


盗聴でもされていたのか?敵機から鹵獲した機体の調査をする必要がある。と、動揺を隠しつつ、士気を上げるべく指揮を執る。


「本機は是より、ビーム攪乱幕を展開後、敵陣を抜け、スイングバイに入る。各機、ダミーを放出後、散開し遅れるな。」


「軌道に入る前に、乗り遅れずに、帰投せよ。」


「主砲の射程に入った瞬間より、偽装の解除、用意、撃て、弾薬を惜しまず、弾幕を張れ。」


「主砲及びレーザー短距離ミサイル発射始め、CIWS(近接防御兵器/機関砲)起動。敵機を一体でも本艦に近付けるな」


「《ASAP》は、本機の直掩に入り、エンジェルフィッシュは、後衛へ。」


「インターセプト20秒前」


「スタンバイ、マーク、インターセプト」「ターゲットキルorサーバイブ」


光る炎を纏った黄金色の緋が、此方が放った射撃を真っ向から撃ち落として行く、


敵の陣容の中心点には、真紅の機体、フレイミングティース(燃え立つ歯)が、鎮座し、その周囲には、破壊された友軍機の親機、子機を引き連れ


此方に向かって砲撃を敢行。


両手に持った湾曲した砲身を備えたライフルから緋を纏った炎が、放たれる瞬間に、何を思ったのか、艦長の指示を待たずに、


左腕に装備された折り畳み式のボールベアリングの弓を引き絞り、長距離射撃を敢行。


放たれた一射が眼前に展開するエネルギーフィールドに触れ、その狙いが僅かにそれる。


あッ?と、艦長の指示を待たずに放たれた嚆矢の矢にまたしても命令違反ととられかねない行動に、抗議の声を上げる


ハルズ=アルマインに、我関せずに、指示を出す。


「バンデラス、有線ドローンを敵陣に射出して、俺と一緒に来いッ!やるぞ。」


「アンザスは艦船への砲撃を防御。」


「俺は、バンデラスと共に敵陣に突撃する。ついてこい。」


「正気か?オマエおれの機体は砲撃戦仕様だぞ。敵陣に突撃してどうすんだよ?」


「そうかお嬢さん、臆したか?」


「なんだとテメ―」


「おい、アハト=佐伯、エースだろ。敵の長距離狙撃を接近戦で防ぐぞ。相手の攻撃はアンザス機では、防げない。」


「母艦が沈んだら終わるぞ?」


「...」


「おいなんで俺の名前は間違っててそいつの名前はフルネームで覚えてんだよ。」


「ハルズ=アルマイン、アイジェス機、持ち場に戻れ、命令無視は、営倉行だぞ。」


「ドン・キホーテ勝手に指示を出すな...」


「各機は艦船に敵機の接近を赦すな。遠くの敵は無視して回避運動に専念して接近してきた敵を狙え。」


このままだと、全滅までは行かないが、大多数の僚機が、戦闘の緋に巻き込まれて死ぬ…


それを打開するには...敵陣に飛び込み、長距離射撃を封じながら、血路を開くしかない...



艦船のそれぞれが主砲及びミサイルの雨を降らせて弾幕を張り、敵陣に叩き込んだビーム攪乱幕により、攻撃を無力化させようとするも


敵機の強力なビーム兵器が、問答無用に、無慈悲にも襲い掛かる。


「...了解」


(。´・ω・)ん?


オマエ話せたのかよ?


三機編隊のデスペラードと二機のDiem(ディエム) Perdidi(ペルディディ)が、進行方向の右手側へ、一気に敵陣へと斬り込む。


前面にデスペラード。後衛に砲撃仕様のハルズ=アルマインを他所に中衛にアハト=佐伯機が、我先に負けじと追従する。


俺の機体の偏向機付のシールドとしても恐らくは、四枚重ねのアンザス機が防ぎ切れなかった一撃を防ぐことは叶わないだろう。


命中したら一巻の終わりとみてよい。


「各機、俺と同じ軌道で、避けろ。」


「なんでお前の後に続かないといけないんだ?」


「…」


「それぐらいできないのか?」


「出来るに決まってるだろッ!!!」


目前に迫る緋色の炎が迫る中、背後に控える僚機や母艦を絶妙に避けつつ、敵機の狙いを一身に背負いながら、


ふわりと、スラスターを吹かせて、回避し、それに合わせて二機のDiem(ディエム) Perdidi(ペルディディ)もふわりと、踊る様に回避する。


接近してくる機体に、気付き


地球の軌道上で、母艦の進行方向を塞ぐ


前回から僅かにその機影を減じつつも、補充されたのか格納されていた機体で補充したのか?


グヤスクトゥス20機、《傾城魚》(チンチェンユー)5機及びマンティコレ(獅子型)4機に同型機の別機体と思われるサテュラル(虎型)4機


アケファロス5機、ファーマ10機、ササボンサム2機、


敵母艦である深緑の塗装の曲線美を描き、艦首を望み、その左右に同じく曲線を描くスラスター類が付属した。

人間の右腕の様な形状のアガートラーム3隻に、他にやや小型の哨戒艇4隻、中型の駆逐艦5隻が並び


一斉に、接近してきた機影に向かい主砲及びミサイルにCIWS(近接防御兵器/機関砲)が乱れ飛ぶ。


謳歌する様に往過おうかする火線のに、煌めきつつ迫る脅威に


「ダメージコントロール。被害報告」


「敵機の火砲による被害なし。」


(。´・ω・)ん?なずぇ


幾つかの火砲が、此方に届く寸前で、アンザス機のシールドが予備を含めて展開され、


ケツをフリフリしながら、操縦桿を握り、唄が、唄が聞こえると、踊る様に艦船への直撃を防ぐ。



それを知ってか知らずか、クルリと円周軌道を描きながらも、古びたレコーダーから聞こえる詩を響かせながら、


前後、上下左右から飛来する。避ける場所が存在し無いのでは?と、疑問に思うほどの弾幕の網を


するりと、避けながら。


「…」


なんだ、こいつの後ろについて行くと、降り注ぐ弾幕の雨がまるで俺達を避ける様に、過ぎていく?


何故だ?


その事には全く気付かず、追従するのに必死なハルズ=アルマインは、光り輝く弾帯の天の川を渡るうおっとなり、


突き進む、其の勇壮的な、光景は、死と隣合わせの戦場に置いて、一抹の不安も無く感傷的な感想すら持たせられる。


敵機の陣容の前方に到達するとそれまで、弓の一撃以外射出していなかったアイジェス機は、


ハルズ=アルマイン機が展開する有線式ドローンを前方に移動させる事を指示する。


不承不承に、了承し、背後ではアハト=佐伯機が振るうライフルから飛翔する、献花を備えるかの様に飛来する四条の光が、


周囲に展開されていた敵機のグヤスクトゥスを撃ち抜き爆散させる。


伸びた有線式ドローンの本体をデスペラードの前腕で掴み取ると、その勢いの侭、謎のジェネレータより供給される剛性の駆動により流体制御も加えられたアクチュエーターが稼働


多大なるGを加えながら、振り回される。


突如の暴挙に振り回されるGにパイロットのハルズ=アルマインと火器管制要員のコムラは、叫び声を上げながら戦場を横断していく


「今だ、撃て、撃て、撃て。アハト機は俺の背後に回って、着いてこい。」


有線ケーブルに繋げられたたまま振り回され、ヤケクソになりつつ、機体に搭載された火器を解放、


全方位射撃を敢行。撃ち出された実体弾の散弾と、強化多重加速されたビームの雨が、機体を振り回すアイジェス機と共に回転し


同じ軌道を描く自らも360度の全方位射撃を敢行。背後にいるアハト=佐伯機を器用に避けつつ、


射撃の連打を繰り返し、予期していない方向から飛来する弾丸に、多数の機影が、防御するシールドを避け、


複合素材による強度を誇る装甲が、ビームの熱量に押されて、融解し、着弾した瞬間にコックピットが乗りこんだパイロットと共に蒸発、


その背後にいた敵機を巻き込み誘爆を繰り返す。


ハルズ=アルマインも負けじに、アイジェス機を振り回そうとするが、その機体に備えられたスラスター出力により逆に自機の機動を制御され


降り注ぐ砲火を避ける様に進む。


アイ=アシンは、敵母艦に照準を合わせようと、構えていたが、捕獲目標と思われる機体の動きに翻弄され、


いつの間にか背後を取られ、降り注ぐ二重の360度の全方位射撃の変態機動を見せられ次々と撃ち落とされて行く


その光景に、怒りを覚え、転進。


自らの母艦へと向かい突き進むそれらに追撃を加えるも、此方の攻撃が当たらない。


釣れたッ!!!!…


自らの狙いが的中し、ほくそ笑む。あの真紅の機体は何故か、自分自身に固執し、執拗に攻めてきた。


自らが敵陣に突っ込めば、此方を追ってくる筈。そうすれば母艦への脅威は、アンザス機のシールドと僚機達の奮戦で防げるはず。


後は、このまま相手の狙いを俺達三機に集中させ、二機の僚機の動きをコントロールしつつ被弾を抑える。


互いに有線ケーブルを牽引しつつ、振り回し乱れ飛びながら回避し、戦場を荒らしまわるも、


次第に、包囲網が狭まってくる。


緋色の炎を吹かしながら、放出される閃光を回避し、返す刀で放出される短距離レーダによる誘導の弾体をばら撒きながら、ダミーを放出、機体の代わりに撃墜される。


人形たちを他所に、更なる攻撃を加えていく、その姿に...。痺れを切らし


この匂い…アイ=アシンは、コックピット内にまで香るその匂いに辟易しながら、その到来を待ちわびているが...


敵の目的は既に判明している。地球圏の重力を使っての加速により、この宙域からの離脱、其の一点であれば、何時までも当たらない敵機に関わる前に


敵の母艦を撃ち落とす方が先決だと思い直し、銃口の照準を遠く離れた。敵の母艦へと変更する。


それまで、感じていたプレッシャーと匂いが次第に遠ざかって行き、さらに後頭部の一部が痺れ、何かを自分に伝えてくる。


放射される緋の炎が、今まさに放たれようとした瞬間に回転する運動を変えながら折りたたんだ左腕の弓を展開し、背後に向かって撃ち放つ。


赤雷を纏ったボールベアリングがまたしてもその狙いを僅かに反らす。


僅かにそれたその咆哮を避ける為に船体が下方向に向かって下へ下へと重力に惹かれて落ちていく。


数射、繰り返し、狙いが付けられないのならば、敵機には宙間戦用の艦船が混じってる。このまま地上へ墜とし、機動力を殺した上で


捕らえる事も考慮し、更には、この大気圏へと突入する熱を以て、軽微の破損も命取りとなる。


また、熱を操るフレイミングティース(燃え立つ歯)は、問題なく大気圏への突入が可能だ。そうなれば我が機の独壇場となる。


狙いを付けられないままの牽制射撃を繰り返し、艦船らの進行方向を限定し、次第に大気との摩擦による熱が生じ、


自らの狙いが上手く行った事にほくそ笑む。


「各機、艦船と合流しろッ、アイジェス、《自信家》コンフィデンス、《切り札》エース戻ってこい。」


叫ぶイゴールの指示に、急制動を掛けつつ、帰投するべく二機が退避していく。


「誰かが殿を受け持たなければ、母艦が落ちる。ここは俺が、受け持つ、先へ行けッ!!!」


脳内CPUをフル回転しでシュミレーションによって割り出された軌道を描き、熱による誘爆を回避するべく、


全身に搭載された炸薬の弾頭と弾丸を全放出。祭りの大玉の花火の如く花開く熱い弾幕に覆われ、敵機の狙いが、鈍る。


その隙にハルズ=アルマインとアハト=佐伯機は、悠々と帰投する軌道へと乗って行く


僚機達は、大気圏へと突入する《R.I.P》と《エンジェルフィッシュ》そして、僅かに敵からの砲撃からそれ、少し離れた場所でスイングバイの軌道へと乗る《ASAP》へと二分される。


機体の陰に隠れつつ、それぞれの機体が盾を構えて、応撃を繰り返し、


艦船と合流できなかった機体は順次、大気圏突入用の装備。大型の発砲状のスプーマで、機体を覆い、生じる熱に対応する。


大気圏の突入で、敵機も生じる熱に炙られ次第に、その相対距離が離れていくが、未だその状況でも活動するき機体たちが存在していた。


その数、僚機は、牽制を続けるアイジェス機と船の防御を担当するアンザス機が取り残される。


「アンザァァァス、戻れッ」


「ここで戻ったら船が撃ち落とされるでござるッ。最悪、突入用のスプーマを展開するから大丈夫でござる!!!」


あッ


緋に包まれながらも突っ込んできたファーマと《顔無し》アケファロス数機が肉薄その手にもった得物で、包囲する様に狙い撃ち、


繰り出された機体は多数の口を持ち口の中に舌を模したワイヤーを照射。


母艦の機体を守るべく盾を広げた隙に、絡みつくワイヤーで身動きが取れず、次々に放射されるビームの雨を防ぐも、楯から漏れた装備を撃ち抜かれ、


アンザス機に搭載されていた大気圏突入用の装備が融解、泡を空中に散布しながらも、返すライフルの一撃で一機撃墜し、イゴールとアハト機の援護により、飛来してきた


機体を退けるも、焔に包まれ...。


「ウワァァァァァァァァァァ!!ケツが、ケツが割れる!!!!」


それでも遠くから放たれるササボンサムの長距離狙撃を盾を動かし、防ぎ続け、機体のバランスを崩し、


そそり立つ大地に向かって、降下、落下し、そして墜ちる。上下左右も分からないまま、地球の重力に惹かれ、


大気との摩擦によって生じる。炎に包まれ墜ちていく、その機影を目撃し、


「アンザぁぁぁぁぁぁぁぁス!!!」


其の名を叫ぶ。


地上降下用の装備を討ち抜かれ、今にも燃え尽きそうなその姿に、


いち早く旗艦へと帰還していた。仲間達は、視界の端で、今も燃え続けるその姿に、


イゴールは戻って来て居ない。仲間を識別ビーコンの有無を確認し、対象者を確認する


「あと戻って来てない機体は誰だ?」


コンソールを操作する通信士が、答える


「アンザスさんと...アイジェスさんです!!!」


「予備の降下装備は?!!」


「ありますが?もうこのタイミングだと...。救助に向かうのは推奨できません。危険です。」


複数の敵味方区別が視認し難い赤い機影が、落花の炎をなって、舞い散るなか、


今も尚、戦闘が続いている。


末期の叫びの様に吠える。詩が響き渡る。


意を決してその言葉を紡ぐ、流れる音楽は...


「エンコード、《バラッド・オブ・ザ・デスペラード》」音声認識による識別により、使用者権限を確認。


コックピット内部では、身体の各部を飛び出したアームや、拘束具により、パイロットの手足を固定、円筒状に包み込むのと同時に、機体の外部のバイザーや各種部位内蔵されるロックボルトが解放。


長方形のバイザーが上に上がり、それまで隠れていたはずのツインアイが露出。鬼の角の様に伸びバイザーから突き出されたそのアンテナの一部が枝葉となって発光しながら、その威容を魅せる。


そして、覗く、線型は鋭く無骨で且つシャープな主顔おもがおの景観から分解解放を繰り返すその面差しは、まるで牙剥く鬼の口腔を覗かせ、最後に後頭部から、一本のブレードアンテナが迫り出して、三本ツノとなり、其れまで、マニュピレーターと思われていた。


肩、腕、脚、背面にそれぞれ設置されている。隠し腕の内、腕部と肩部のマニュピレータと、バックパックの背面全体に刻まれる、其れまで隠れいてたツインアイの鬼の形相の面が顕れ、そして、2本の腕と脚部には基部に隠れた鬼が踊り、腕部のマニュピレータが可変したアームカバーと、独立機構のレッグーカバーとなるその機構にも鬼の面が顕われる。


都合、八つの顔と、六本の腕、偽装されていてそれらが開放され、異形へと変形・変身、いや、変態する。何かを語るように其の不思議な表情を垣間見せるその機体は、八面六臂の修羅と為らん。


ミサイルを放出し、デッドウェイトとなった装甲をパージ、機体各部のガトリングガンが、変形を阻害しないまま、保持され。踊る様に、


宙を蹴り駆動、躍動、騒動する。


緋の炎をに包まれながら、視界が制限されるその状況下で?


Σ(・ω・ノ)ノ!


なんだ?いま、機体が変形した様に見えたが?ここからでは燃え上がる熱のエフェクトでよく見えない。


迷う気持ちを振り払うように、船体から落ちないように、未だ戻らぬ僚機の援護をイゴールは続ける。


大気圏突入を物ともせずに突っ込んでくる残る敵機の数は、


その数を大きく減らしたグヤスクトゥスは、離脱。ササボンサム2機は、遠くから狙撃を繰り返すも熱による誘爆を恐れ、後方へと下がっていく。


《傾城魚》(チンチェンユー)5機及びマンティコレ(獅子型)4機に同型機の別機体と思われるサテュラル(虎型)4機


アケファロス2機、ファーマ5機、フレイミングティース(燃え立つ歯)


都合、21対2


艦砲射撃を繰り返す敵、艦船数機、絶対の不利の状況下で、それでも漢は吠える。


震える様に稼働するマニュピュレーターから放射される衝撃を伴った閃光が走り、その機体の上下を逆さまに、


各部を稼働し、焔を噴き上げながら跳ねるような急制動を掛けつつ各機が標準装備し此方に向けてくるライフルの射線を回避。


その脚部から放たれる回転刃が、対抗するべく放たれるワイヤーごと、眼前の機体の頭部を刎ね飛ばし、もう一方のマニュピレーターが、敵機の脚部を光の刃で破断させ、


掬い上げる様に放たれた。その手掌が、コックピットを抉る様に突き出されると同時に、


圧壊され潰れるコックピット内で、絶叫を上げながら、その身を火に焼かれ、此の世から消失する。


穿ち断ったその一撃で、デスペラードは、機体頭部の鬼の口の前に置くと、狙い済ませた様に其の砲口に備え付け、電磁加速を開始。


加圧され、光り輝き擬似的に形成された電磁誘導のバレルが、音の伝わらぬ明けぬ夜空の宇宙そらで瞬光、瞬く間に撃発と伴に発射。


レールガンの弾体として打ち出されたファーマが、閃光を伴い射出。


白と黒の光の影を残して彼我の距離を一瞬で0として、MS大の弾体を音速の数十倍までに加速し、射線上に存在した数機(アケファロス1機、サテュラル(虎型)1機)を巻き込みながら、敵駆逐艦の一隻に向かって放射される。


その船体を半ばまで叩き折り、ぶつけられた機体のジェネレーターが爆圧に耐えきれず爆散。


轟沈する最中に、一斉に敵機の目標が自らに集中する感情の発露をその身に受ける。


背後から忍び寄る舌死のワイヤーの群が、放射状に広がり此方に向かってくると同時に前方からも緋の炎を纏った砲撃が飛来する。


逃げ場のないその死地に置いて、前後左右に、手掌を構え、腕部から、爪が伸びるその手掌が流動するワイヤーを放出させ伸び、射出される。


敵機のワイヤーと交錯し、絡まり合う。行動を阻害され、すわ悪手かと思えたその瞬間、デスペラードから伸びるワイヤーが、


刃を伴ったワイヤーブレードとなり、絡まり合うかと思えたその瞬間に、逆に相手の攻め手を崩して切り刻み。ファーマの機体が一瞬でバラバラになる。


その光景を目にしたフレイミングティース(燃え立つ歯)は、砲撃を加えながら、回避行動に入る。


戦場で繰り広げられる、思考砲台とオービット・マインに、ブラインドアンカーがひしめく中で、


跳ねる機体が、一機また一機と、生き生きとした挙動を繰り返し、放たれる銃弾の雨により、【falcisファルキス】を潰して行く。


それでも追従する様に迫るその手掌に、一計を案じる。飛来するそれは、ワイヤーで繋がられている。ならば絡み合う様に誘導し


自縄自縛させれば武装の一つを使用不能にできる。


そう思い、放熱板を可変させ、生じる熱量を推進器として利用し、ジグザグに動き回り


味方機がその刃に巻き込まれ切断されるのも構わず。大きく紐を結ぶように飛翔その終点の到着して振り返ると、


2機のファーマと敵機が繋がれ、雁字搦めに結ばれる。


獲ったッ!!!!そう思い射撃するが...その動きは、切断後ワイヤーが流動する液体の如く、交じり合い再び


一本のワイヤーとなって射撃を行おうとした機体に直撃。頭部を鷲掴みにされ、機体を振り回され。


オービット・マインを伴った盾を構えて、砲撃を行おうとした、《傾城魚》(チンチェンユー)と真正面から衝突。


弾き飛ばされそのまま伸び。その手掌が発光を重ね炎を上げようとした刹那の時の中で


同時に《Pyrolysis Hands(パイロリシスハンズ)》と《Pyrolysis Tooth(パイロリシストゥース)》が発動。


その威力が拮抗し、その余波に耐えきれず、巻き込まれた《傾城魚》(チンチェンユー)が炎を上げて四散、爆散、拡散され、吹き飛んだ機体の一部が散弾となってフレイミングティース(燃え立つ歯)に襲い掛かる。


「...」


なんだ、一体何が起きてる?勝手に敵機が次々と爆散していく?大気圏突入に失敗にしたのか?


此処からでは、よく確認できない。機体のメインカメラを最大望遠状態で、凝視するが、戦場に巻き散る火の粉と


虹色の光と炎に阻まれその姿が見えない。



機体の爆散に巻き込まれ、機体の一部が焼け焦げ、破片が突き刺さり、カメラの一部が破損。


予備のカメラに切り替え、視界を確保しつつ、バランスを崩し、振り回され制動を掛けつつ、離脱する間にも



戦場の最中で、光が踊り、次々と残りのアケファロス、ファーマの機体のコックピットが握りつぶされ、崩れ落ちる機体が、射出。


他の機体、マンティコレ(獅子型)サテュラル(虎型)それぞれ一機を巻き込み、母艦たちを叩き落して行く。


その刹那の光景で...何が起きていたか?振り返ると...


周囲に展開した多数の腕部を回収。その終点に対して、ビームライフルの雨を降らせる。アケファロス、ファーマの各機の射線を


まるで意を介さずに、避けながら、背面の鬼面が吠える。光の御柱となり、


顔無しのアケファロスの機体に着地すると、その左腕を突き入れ、防御の手を描くビームライフルの砲身毎、抜き手の一撃が突き刺さると


コックピットを引き抜き、飛び出した。パイロットらしき人影が、《人喰い》カルニヴォルス (carnivorus)の僚機が発射した光の柱が


何もない空間に一瞬影を落とす染みと化し、消し去り、狼狽える敵機に対して、再びの電磁投射砲の一撃を加え、


その一撃を防ぐべく展開されたブラインドアンカーの盾を易々と引きちぎり、交差する髭型の近接用ビーム発振器に直撃。


共に、背後に控える戦艦、アガートラームの拳へと着弾。二機分のジェネレーターの起爆により、大爆発を行い。巨大な船体が傅き、大気圏へと墜ちていく。


それでも果敢に迫る最後のファーマ機は、機体の各部に備えられていた口から、ワイヤー及び電磁ネットを照射、跳ねまわる軌道を先読みして、


進行方向を限定させつつ、備えられたビームライフルを乱射。対向射線で、駆逐艦の一隻を守る様に鎮座し、意を決して、接近戦による突撃を


行おうと迫る。サテュラル(虎型)がファーマ機と共に、前後に挟み込む様に接近してくる。


前後の挟撃と、別の敵機から放たれる。【falcisファルキス】が死神の鎌の様に、アイジェスの命を奪おうと、ばら撒かれる思考誘導の五月雨を


翳す鬼面と手掌から放たれる衝撃波を伴った一撃と、各部のガトリングが半自動的に作動。


小口径の光の弾丸同士が空中で衝突し、火花を散らせながら、四散する。


繰り出される発光する爪の一撃を身体を捻り繰り出した足刀で、弾き飛ばし、宙で、逆の足撃を以て、機体のバランスを崩し、それでも


破損する機体をばら撒きながらも向かってくる。逆転する世界の中で、一機の射出す手掌から放たれる。手掌を伴わない流体ワイヤーが


放たれ。明後日の方向へと流れるそれに、嘲笑を加えた背後からファーマが、光る刃を掲げて突撃する。


そこに流れたワイヤが-突如茨の棘をその身に宿し、貫かれた機体脚部を、ビームサーベルの一撃で斬り裂き、

まだ戦えるとばかりに、スラスターを吹かせて接近する。


背後から接近するそれらに対して、宙返りをして回避。


勢い余って、友軍機と正面衝突をし、バランスを崩した機影に向かい回転する車軸と射線を合わせた電磁バレルを展開、


黒と白を混ぜた。刹那の射撃が、サテュラル(虎型)と駆逐艦毎、叩き伏せる様に貫く。


大気圏外より、その長身のササボンサム2機


その特徴的な長い足を備えるその機体が射程外より、長距離狙撃を繰り返す。


意識外の一方的なその攻撃に辟易しつつ、流れ弾がアンザス機へと流れないように、


避けずに、肩部のシールドと《Pyrolysis Hands(パイロリシスハンズ)》を纏った腕部で弾きながら


その対策を講じる。


鬼面に覆われた。肩部分の大型のマニュピレーターが稼働、その接続部分が、離脱し、


腕部のアームカバーへと重なる様に接続。


加圧される虹色の光が、鬼面に注がれ、天地を繋ぐ御柱と也、相手からの射撃を飲み込みつつ、


その光が、軍用艦の一隻共々巻き込み、溶断する。


その衝撃が衝突した瞬間、命中した基部から、漏れ出る炎の球体が、それぞれ膨れ上がり、


機体共々巻き込みながら、その存在を抹消する。


その光景を目の当たりにし、残るササボンサムは、這う這うの体で、離脱しようとするが、


背後から迫る。灯の柱に弄られて消失する。


・・・


・・・



・・・




そんな光景をまるで第三者には視認できずに、何も知らずに独り言をつぶやく


その時視認出来た光は、目視する瞬間には既に終わっており、傍目からは、目標の駆逐艦からの射撃が、逆回転して自沈した様にしか見えなかった。


「は????なんで?戦艦まで大気圏突入に失敗してんだよ?なんだあいつら?大したことないな」と、嘯くハルズ=アルマインを他所に、


戦場の華は開き続ける。



《Pyrolysis Hands(パイロリシスハンズ)》を纏った蹴り脚に盾毎、貫かれ、その熱量を吸収できずに、爆散する《傾城魚》(チンチェンユー)の一体を目視し、


救援へと入ろうとメインスラスターを点火。泳ぐように飛翔し、両手に構えたライフルから緋色の炎を吐き出すも


敵機に命中する瞬間に、虹色の光と、触れ合い、明後日の方向へ偏向され、巻き添えを受けた友軍機であるマンティコレ(獅子型)1機が爆発四散する。


あッ!あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!


己の操作により次々と死滅していく友軍機の姿に、怒りを込めて操縦桿の引き金を引き続ける。


重力操作により高負荷のGを減衰させ続けるコックピット内で、レコーダーから流れる詩声と輪唱する様に紡がれる唄声が、


踏み締められる落ち葉の様に、静かに静かにその想いに答えていく。


降り注ぐ炎の砲撃をワイヤーを巻き込み回収した手掌で、発動する《Pyrolysis Hands(パイロリシスハンズ)》で、相殺。


そろそろ、限界点が近い...。落下するアンザス機は。どうにか無惨な機体の侭でも、シールドに残る偏向機を駆使しつつ何とか熱に耐えているが...。


腕部の手掌をワイヤーを結ばずに、射出。


その機体前面へと割り込みさせると《Pyrolysis Hands(パイロリシスハンズ)》を発動。


熱分解の火により、迫る熱を熱で分解し、2万度を超えるその熱量を防ぎ一筋の流星へと変えていく。


武装を切り離し、自らは《Pyrolysis Hands(パイロリシスハンズ)》を繰り出す一部の機構を放棄し、大気との摩擦に爆散するかに見えた。


デスペラードが、逆さの機体の侭、鬼面のレッグカバーで覆われた脚部が展開し、敵の各機が、《傾城魚》(チンチェンユー)のオービットマインやブラインドアンカーを盾に、


大気圏突入へとその機動を変えた瞬間に、何を思ったのか、跳び蹴りを加え、八艘飛びの要領で次々と、その脚部で、踏み折りながら、


次々と撃墜していく


「おぃ!!!!!!!!!やめろ、今はッ」


「ママぁーーーーーーーーーーーーー!」


「辞めろ!辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ!卑…ヒッ」


「死にたくない。死にたくない。死ッ!」


「おおッ!ちょぉぉっケツを掘るなッ!」


「クソッ!あっ糞漏れ…あッ♥」


「あ”ッあ”なんで、蹴らないで蹴らないで今はッ!!!!!ああああああああああああああああああああああああああああ」


確率機跳《鶴立企佇》(かくりつきちょう)…機体を跳ね跳び、繰り返す確率の低い賭けに出て、まるで獲物を待ち構える鶴の如く伸びるその脚で、


大気圏突入で生じる炎を踏み砕く敵機を乗り換えながら、移動してやり過ごす無法と思われるその所業に、


慄きながらアイ=アシンは、機体を安定しつつ徐々に戦場から外れながらも《Pyrolysis Tooth(パイロリシストゥース)》を


発動し、緋色の炎で、大気圏突入する炎を相殺しながら、流れていく。


その日、地球には、星が降った。


散った命は還らず。その猛威を避け、救われた誰かの姿のみが地上に降り注いだ。


続く。


毎月、月末最終日に2話更新。

※一部内容について月齢を天体の高度計算ソフトで割り出す必要があるので、若干の修正が入るかも?

ゾンアマさんから今だ届かず無念。


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