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無法者の詩  作者: 唯の屍
3/14

第三話「人喰い」

白と黒の光の影を残して彼我の距離を一瞬で0として、退避中の親機を貫き、撃沈する。


その光景を目にして、自らの手足の半数以上が喪われた事に驚愕する何者かは、一言。


「撤退だ。」


脳裏に過る警戒色を滲ませ、


そう告げる後姿を目撃すること無く、物語は終わり、そして続く、


撤退行動に入った。その機体は、挽回の機会を得る為に、奇怪な軌道を描きながら、その周辺宙域から離脱していく。


アイジェスは、当面の危機が去った事を悟り、その言葉を告げる。


「デコード、《 トゥ フイ、エゴ エリス(我は汝であった。汝は我になるであろう)》」


音声認識による識別により、使用者権限を確認。


それまで行使していた機体と駆動系等の解放を解除。


コックピット内部では、身体の各部で飛び出したアームや、拘束具による、パイロットの手足を固定が解除され、


包み込まれていた円筒状の基部が、再び収納同時に、


機体の外部のバイザーや各種部位内蔵されるロックボルトが水蒸気をあげて、再度固定。


長方形のバイザーから露出したツインアイが再び、その姿を覆い隠す。


バイザーから突き出されたそのアンテナは光を喪いその姿が消え、それまでの威容が何の変哲もないその機体のモノへと還っていく。


そして、覗く、線型は解放収縮を繰り返し、その面差しが、牙剥く鬼の口腔から鋭く無骨で且つシャープな主顔(おもがお)の景観へと也。


最後に特徴的な一本のブレードアンテナが頭部へと下がり後頭部へと収納され、


其れまで、マニュピレーターと鬼面のカバーとなって機能していたそれらが思い思いの軌道を描きながら


元の手足へと変わり、それまでの変態的な八つの顔と、六本の腕、から一眼、その何の変哲もない四肢へと其の様相を魅せる。


一瞬の法悦の表情を経て、アイジェスは、意識を取り戻すと、はっとなり、360度のオールビューの視界の端で、瞬く救難信号をキャッチすると、


重い腰を上げて、思い思いにフットペダルと操縦桿を操作し、メインスラスターを吹かし、相対速度を調整しながらゆっくりと近付き


反転したまま浮遊する《スプーマ》の一つを回収。


無事を確認するべき短波レーザーによる近接通信を試みる。


其の頃…


アンザスは、迷っていた。今の...。光景は、まるであの時みた正体不明機、ボギー1だった。


あの動き、あの武装、その全てが、あの時みた姿を想起させる。

もし仮に、あれがボギー1であれば、


あの事件では、其の頃、唯の学生であった自分にはうかがい知れないが、敵味方にそれぞれ多数の死人が出て居た筈だ...。それが、気の良さそうな一般人である。


アイジェスが起こした事とは到底信じられなかった。


他にも...。疑問点は数あるが...。このまま、上官に報告するのが、軍人の務めであるが...


こちらを心配そうに声をかけてくるその声音に、それまで、正体を隠すべく、握りつぶされるかもとの?びくつきながら、


カップラーメン用のお湯を愛用の小型ケトルで、沸かしながら混乱の舞を舞っていたが


懸念もあったもののいつもと変わらない声でこちらの事を心配してくる。


ボギー1の謎もあるにはあるが、今は、UNKNOWNの事もある...。


頭の中を駆け巡るその情報に熱暴走を起こした脳内CPUの排熱の結果…


アンザスは、確保していたサンドイッチをハムスターの様に頬張りながら、考えるのを全て忘れた。


...


...


...


出動した、第四、第五部隊に哨戒していた一番隊、そして撤退し始めていた、三番隊が達磨になった僚機を連れて帰還後、


戦場へ合流を果たす。


周囲を都合、12機の僚機たちに囲まれながらも、回収したアンザスと共に、機体の制御を行い、逆上がり状態から、足をカタパルトデッキに向けて降り立ち、エアロックを抜けて


メンテナンスドックに、収まるまでの間に、状況の説明を求められるも、新しく作った多連装のビームライフルを駆使して、


敵機であるUNKNOWNを追い返す事に成功したと、申告。


そして、回収されたアンザスは、いつもの通り、何かを一心不乱にかぶり着くその姿をみて、機体は失ったが、まぁ良いだろう。


無事を喜び、そして、周辺宙域での敵機の活動を確認でないこともあり、再び船団の進路をL2宙域へと転進


一陣で出動した第一、第二、第三隊を収容し、各機の修理と装備の換装を開始。


代わりに第四、第五、第六隊による掃海を開始。


休憩の合間に、メンテナンスを行おうと、アイジェスが駆る。愛機に、メカニックである作業員が工具を抱えて、集い始めるが、直ぐに困惑顔となる。


その機体には、互換性があり、部品の共有も可能ではあるが、コックピットの内部の機構や、装甲以外の各部フレームの


関節部や本来であれば、消耗品として、戦闘に出る度に交換が必要な部品を取り換える個所が、どう考えても、工具やメンテナンスを行うのに必要な個所が見当たらない。


帰艦してきた、ディエムは、次々と消耗品である駆動系やセンサー類を改修作業と同時に、取り決められた交換時期によるローテーションを組みつつ

作業を行っているが、一機だけ、それが出来ない。


困惑顔のメカニックが、集まり、アイジェスは、一堂にむかって、語り掛ける


「こいつのメンテナンスにはコツがあるんだ。整備は俺がやるから、みんなは、他の機体の整備をしてくれ。」


(まさか、メンテナンスフリーで動いて、動力源や燃料すら、装甲部の外部タンクに入れる推進剤以外、まるで分かって無いなんて言えない...)


(燃料を入れないまま、10年近く、稼働し続けている…)


(今は、余計な詮索をされても、(俺以外が)まずいだろうし、適当な事を言って置こう)


設備艦エンゼルフィッシュにて、繰り広げられる、騒動はそれだけではなく。


コロニー、ミーミルにて、鹵獲した敵機の内、一機から、複数存在するであろうジェネレーターを機体を解体しながらも、


数基取り出し、整備艦に乗せて移動しながら、行方不明になった人々の姿を探すが、航海に出る前のかれこれ一週間以上前から解体作業を行っているが、その犠牲者の姿が何処にも見られないし、それは、死体すら見つけられていない。


数基あるジェネレータは、幸運な事に破損は見られず。どうせなら、ディエムの改修と共に、流用できないか?と上級技官のコーディーが陣頭指揮を執りつつ、


余剰パーツを汲み上げ、新規機体をくみ上げる事を提案。ジェネレーターの動力は、分からず。だが、基部の内、イゴールのビームサーベルの一撃で潰された、


コックピット以外にも、人が乗り込むスペースを発見する。それは期待していた行方不明の人間がまとめて納められるような広々としたものではなく、


円周状の内部に人一人がすっぽりはまり込む程度の空間しかなかったが...コロニーで登録されていない人物の死体や捕虜などは、発見されていない


これには、敵機に乗っていた何者かが、まだ存在していた可能性がある。


と色めき立つが、それは今度の長距離レーザー通信が行えるポイントまでお預けとなる。


コックピットのコンソールパネルでは、動力の灯が落ちて久しく、どのような操作方法なのかは、これからの研究と検証次第ではあるが、


薄っすらと見える。燃料系らしきゲージは、満タンを指していた。


恐らく実戦に投入したとしても、稼働に耐えるだろう。まぁ燃料がなくなったら都合4基あるジェネレータだけ入れ替えて交換すれば良いだろう、そんな安直な考えを以て、それを流用するべく。


整備艦エンジェルフィッシュでは、Diem(ディエム) Perdidi(ペルディディ)と名付けられた


吊り上げられた機体の胴体と、手足が、第一格納庫(ハンガー)で、分解されたまま、


実弾系の追加武装も施し、鹵獲した敵機のジェネレーターの一基をボディーに組み込む


作業が進んでいく。


慣らし運転で、稼働させるも、その出力は、既存のディエムの出力を大きく超え、確かな手応えを感じていた。


一人、機体のメンテナンスを行うふりをしているアイジェス以外には...


《ここら辺端折って先に進む後で肉付けする》


再び、反転した進路をL2へと向け、各隊のローテーションによる哨戒任務に繰り出しながら、艦は進む。


数日後...


追跡者らしき影はとうとう、再発見する事も無く、目標の宙域へとたどり着く。


旗艦である《R.I.P》の艦長ナンネン=ハイマンは、オペレーターに指示をだし、目標のコロニー、アイリスに向けて、通信による呼びかけを行うも


一行に返信も、反応も見られない。


オニール・シリンダー型の二対並んだコロニーの外部で稼働しているミラーも通常通りに動き、熱源センサー、対物センサーを全開にして、対象を走破させてみるも、所々で稼働しているであろう動力炉や、ミラーが照らし出す陽光の存在は確認できたものの、


人や生物の反応が、見られなかった。


やはり、コロニーから全ての人が消えている...。


「艦長、対物センサーには、反応が見られませんが...もしやセンサーの走破範囲から漏れた生存者がいるかもしれません。」


「直接的な、探索を具申します」


オペレーターの一人であるマリア=アッカンバーグは、そう艦長に申し出ると、


大きくうなずく、艦長は、捜索隊として繰り出す部隊を慎重に思案し始める。


第二部隊は、乗機が、中破及び大破して、隊長機以外、稼働できず。さりとて、本体の防備も疎かにできない。


何故ならばこの宙域を訪れた捜査隊は悉く、撃沈されてる。


此処へ向かう途中で、艦船らしき残骸の群を避けてここまで到着している。


周辺の救難信号を出しているであろう友軍機を探したものの、その全てが、残骸のみで、その遺体すら発見できずにいた。


...


旗艦の艦橋では、思案が続く中、


一人、乗機を喪ったアンザスは、コーディー=スルー上級技官と共に、アイジェスの乗機のカスタムを具申していた。


メンテナンスの為に、整備艦エンゼルフィッシュに着艦した、第三部隊は、待機命令を受けていたが、


アンザスが、頻りに、アイジェスの機体の改造を主張し始める。


そしてアイジェスに向かって、不器用なウィンクを向けて、それを視ていたイゴールが、気色悪そうに、不思議な面持ちで、眺める。


(アイツ...。もしかして...それは銃殺ものだぞ?!!)


(男が漢に惚れるとは?!!アイジェスのケツが危ないッ!!!!)


...


頻りにウィンクをしてくる其の意図が、分からず困惑しつつも、恐らく好意であろうことは分かる。


が、何故?だとアイジェスは困惑する。


アンザスは...分かってるぞ?君が、ボギー1の操縦者だって、でも、俺の事を助けてくれた…恐らく理由があるのだろう。此処は黙って、UNKNOWNの対策で、その操縦技術を振るって貰おう...


と、モグモグと、何処から取り出したのか分からないドーナッツを頬張り始め、


三者三様の誤解と思惑が絡み、その裏で、イゴールは、アイジェスの尻を守れの命令が下る。


その中にはCP萌えは?逆では?逆CP許すまじと苦言を呈する者も現れる。


それを知ってか知らずでか、コーディー=スルー上級技官は、コロニーで一度試して置いた武装案を採用し、


再び、左腕には、最新型の試作大型ビームラム発生用の機構を備えた装甲を施し、


大型の弓状の弾性ベアリング射出装置を設置其の姿は、大型の弓にレールを付け足し、其の部分にベアリングボールを並べて、アームの力を使って射出させる。


実に単純そうな武装であるが…一定の攻撃力を担保できるだろう。


さらに右腕に装備した大型のシールドの影に、多連装のロケット砲を打ち出すアームカバーを装着


背面部に実弾の380mmバズーカ砲を二門に多連装ミサイルポットを増設。


更には、各部のマニュピレーターに、同じく鹵獲した敵機の武装の一部を移植済み、開いている他のマニュピレータにも機関砲や多弾倉の砲身を装着


頭部にはバルカン砲を撃ち出す増加装甲を設置し、


脚部には大型グレネードを三基づつ備えたウェポンラックに、ミサイル発射機構を備え推進機付きの増加装甲の数々


最期に、星型の大型ブースターを四基、背面部に繋げると、


其れまで剥き出しのフレームを見せる頼りない姿から、完全武装の一機の姿が見える。


その一機を、アンザスの乗機が大破された代わりに第三部隊に組み込まれる。


...


《R,I.P》の艦橋では、イゴール大尉、リン=山崎の両名からの報告により、謎の物体による攻撃に晒され、

何故かシュミレーターでは、ふがいない結果を見せていたアイジェスが、一人奮戦し撃退したとのこと、


敵機が隠れている可能性がある目標のコロニーへは、第三部隊を中心に、追加の二部隊を派遣し、

残りは母艦の守りへとする事に決める。


その緊迫した最中、何処から現れた、アンザスが、ドーナッツを頬張りながら、うんうんと、首を縦に振り、艦長の後ろに立っている。


その光景を見た、艦橋スタッフは...既に、イゴールが隊内で廻したメールの会報を元に、もしや艦長の...。も狙っているのか?と、また別の誤解が発生する。


調査作業の為に、船速を第一戦速 (Combat Speed 1)の侭、それぞれの艦船から


次々と部隊をカタパルトから射出していく。


此方の船団に存在する部隊は四機ごとの小隊を七部隊


計二八機の集団及び、数機の予備機を要する調査隊において、


第一部隊及び壊滅した第二部隊、第五部隊、第六部隊で、防備に哨戒作業を行いつつ


そして調査に向かう第三部隊に第四部隊と第七部隊を加え、


飛び出していく友軍機を見送りながら、自分の番を待っていた。


アイジェスは、手のひらを汗ばみながら、事前に聞かされていた注意を思い返す。


戦域での機体の射出時に気負付ける事は、射出進路の確保と、事前の各部動作、武装の安全確認、そして、最後に、射出直後に狙い撃ちetc


そしてアイジェスは、コンソールや各部操縦桿の動作確認をする。

誤って格納庫内で誤射をしない様に慎重に済ませ。


今回、フル装備した武装に暫しの改良も加え、今か今かと、待ちに待ち、


そしてその時が訪れる。


オペレーターの離陸許可を受け、格納庫(ハンガー)から慎重に一歩一歩踏み出しカタパルトに


脚部を肯定すると


オペレーターの声が、ヘルメットの内部に響き渡る。



「えっと、アイジェスさんでしたっけ?そう言えば、機体名は、なんでしたっけ?前回は聞きそびれてしまって」


と、鈴の音を散した様な、声で語り掛けられる。


「とりあえず。発射タイミングは、初心者さんなのでアイジェスさんにお任せします。」


「お好きなタイミングでどうぞ」


「そうだなぁ。」


少し思案して、その名を告げる


「アイジェス=ブラットワーカー、デスペラードフルアクチュアリーカスタムVer0.0出る。」


そう言えばこういう時は...。


「ブラストオフ(BLAST OFF)」


その声と同時に、加速する勢いのまま、直後の狙撃に警戒しつつ、滑走路を飛び出し、


先行する僚機の隊列へと向かっていく。


「お嬢さん、二度目の出陣らしいな。オムツの準備は、万端か?戦場じゃぁクソの世話はして貰えないぞ?」


(。´・ω・)ん?


「問題ないですよ。えっと誰でしたっけ?俺の機体には、トイレも完備してますし。まぁ今まで実戦中に使った事は無いんですけどね?」


「なんだろ?この人?確かアントニオ・バンデラスみたいな名前だったような?」


「ハルズ=アルマインだ!!!!アとンしかあってねぇじゃねぇか!!!!」


「それにトイレついてるのかよ?!」


ついでの様にシート下に備え着けられた冷蔵庫から取り出した飲み物を飲みながら、

我関せずと答える


「おっ?貰った飲み物。青リンゴ味か?旨いなぁ」


「緊張感ねぇなー。前回の戦闘では、4機も墜とされたて言うのに、ビギナーズラックで敵機を墜としたからって調子に乗るなよ。」


ちゅーちゅー音を立てて飲み込む小気味よい咀嚼音を奏でながら、答える。


「別に調子に乗った事、この方生まれてから、一度だけで。ノーベル賞を取った時ぐらいにしかないけどな、まぁノーベル賞は俺が取った訳じゃないんだが。」


「なんだそりゃ?ミスタードン・キホーテ。」


「おぃ!無駄口叩いてるな。早く隊列に加われ。」と、叱咤の声が響く


隊長機のディエムが先導しながら、まごついてるアイジェスと、ハルズに向かって、声をかけ、早く隊列を作れと促す。


「でもなぁ、《仏頂面》(トルウス)、防衛任務だけなら、適当に第三部隊とか言ってりゃいいが、そいつにもコールサインは、必要だろ?」


「雑談がてらに決めようぜ?」


「そうか、なら、俺の事はドン・キホーテで良い。竜に立ち向かう愚か者にはお似合いの名前だ。」


「(。´・ω・)ん?ドン・キホーテが立ち向かうのは、風車に見立てた、巨人だったはずだが?まぁ、アンフォールンダウンによって文明が崩壊する前の物語だ。」


「どこかで記録の改変や失伝が生じたとしてもおかしくはないがな...。」


(そう言えばあの物語を初めて教えて貰ったのはいつの事だろうか?あれは、不思議な老人と出会った頃のこと、確か、そんな話をしていたはず。)


「相談事が終わったなら、来い。」と促す様に言葉を紡ぎ、それを聞いた二人は、


互いに、「了解」と、答えると、フットペダルを踏み込みメインスラスターを着火させると、


火を噴きだしながら、姿勢制御を行い、隊列へと加わる。


目的地は、L2に存在する大型のコロニーアイリス。事前のセンサー走査では、生存者は確認できなかった。


コロニーの基部には、深く厚い、構造体に阻まれ、走査が行き届かない個所が存在する。


だが、ふと、イゴールは思い立って、アイジェスに問いかける


「アイジェス。貴君の機体のセンサーには何か?映って居ないのか?」


(そういえば、彼の機体は、我々が捉えられなかった、敵影をマーキングできた。もしかしたら索敵範囲やセンサー性能に違いがあるのでは?)


と、問われ。


試しに一通りの走査を実行する...。


すると、コンソールの一部分に反応を確認。


既存の機器の有効範囲から、逸脱したそのセンサーに、微弱な生態反応に、そして、数機のその全長は、18mから20m程度の動く

動態の反応を見る。


恐らく微弱な反応は、生存者で、残りは...


コンソール画面上では、重力感覚器官《Sensorium Gravitatis》(センソリウム グラウィタティス)の複数の言語が入り混じりで書かれた。文字が躍る。


その言葉の意味も良くわからないまま、


アイジェスは、慎重に言葉を選び、語りかけ、機体で捉えた動体反応、戦術データリンクにより、僚機たちへ情報を共有させる。


恐らく、敵機の大部分は、此処から撤退したのか?若しくは何かの狙いがあって、周辺宙域のどこかへと、移動して、近付いてくる船舶を撃沈若しくは拿捕を行っているのか?


此処で重要なのは、生存者を確保する事と、部隊及び艦隊の安全を確保する事。


先に、保護するべきか、それとも三部隊を以て敵を排除するべきなのか?


部隊を二手に分けて、回収と迎撃を行うのか?


「ここは俺達、に任せて貰おう。お嬢ちゃんと《仏頂面》(トルウス)の部隊に任せる。俺達は、主戦場である舞台の華となってやる。」


「ゼリトス、隊を連れて敵機を撃滅するぞ?」


「バンデラス、敵機は、360度の方向から撃ってくる。後ろに目を付ける必要がある。」


「はんっそんなこたぁ戦闘記録を見た。謂れんでも分かってる。」


くいッと、コックピット内の増加部品の角度を調節し、自信満々にその言を謳歌する。


「点で攻撃するんじゃなくて面で攻撃すれば良いんだろ?」


そう言って、掲げられた機体が所持する多段層のビームライフルを構え、実弾武装の増加兵装を施された緑いろのディエムが


(`・ω・´)ゞ敬礼するように、その手を掲げる。


ハルズが、面白がって、OSの基本動作に組み込まれていない。その動作を余剰の空きリソースを使って、

お遊びで設けたその動きをみて、


アイジェスも同じく、(`・ω・´)ゞ敬礼するように、返礼する。


(。´・ω・)ん?俺の隊以外にも酔狂な事する奴がいるんだなと、一人勝手に納得し、


第四部隊と第七部隊を引き連れて、急速反転。反応の地点へと一目散に、後背部から、

明光波打つ、星の光を瞬きながら、


隊列を組みその目標へと向かって行った。


その姿を見送った、イゴール達、第三隊は、その光点から、


円柱状に横に伸びる直径6.4km、長さ、36km前後のシリンダー型のコロニーの本体の片側、中央部からやや外れた


センサーの反応があった区画へと、0.55rpmで回転(1分50秒で1回転)する速度に、慎重にスラスターを小刻みに噴出しながら、相対速度を合わせ、


メンテナンス及び搬入口となるハッチに憑りつくと、緊急用の手動開閉装置に向かいマニュピレーター操作


手動で開き始めたハッチを慎重に抜けて、互いの死角をカバーしながら、徐々に一歩一歩進んでいく。


後ろ手で開いたハッチを閉じ、眼前に広がる、コロニー内部の風景を望み見る。


確かに、人影が途絶えたコロニー内でも、太陽の光を受けて輝くミラーによる人工太陽の耀きは健在で、空調の動作も変らず稼働し続けている。


みると、眼下に広がるには、建物が破損した光景は、見られず。


其処に残されていたのは、普段と変わらぬ。街並みのみ、ディエム各機は、動体センサーを最大にして、生存者を探すがその姿は、見られない。


暫しの捜索活動の中で


「アイジェス、そっちは何か分からないか?」


アイジェスは、デスペラードのセンサーも稼働させて、その姿探そうとするが...脳裏に、…声が...微かに聞こえ、


そして、気密されている筈のコックピット内部で、不思議な懐かしい匂いを感じ取る。


(。´・ω・)ん?


機体の向きを変えて、眺める先で、


「おい、何処に行く?」の静止の声も聞かずに、機体を走らせ、その振動により、何かを感じた誰かが、動く気配を感じ取る。


気密壁からの進行ルートに存在する舗装された道路を抜け、いくつもの街角を折れて、急ぎ、向かう建物の先で、何かの人影を捉える。


望遠されたその映像には、奇妙な金属片を纏った、恐らく身長140cm前後の人型の何か。


「もしかして...子供なのか?」


逃がすまいかと、急ぎコックピットのハッチを解放すると、昇降用の梯子を卸し、その姿を探す。


追従するようについてきた、イゴール機が、「どうした?」と呼びかけると


アイジェスは、「今生存者が居た?!」と、一言、言葉を告げると、


一目散に人影が消えた地下に伸びているであろう、階下に伸びる階段を手に持ったライトで光を照らしながら、声をかける


「おーぃ、俺達は、生存者を探してる。軍の者だ。逃げずに話を訊いてくれ。」


そう呼び掛けても一向に反応が返ってこない。


懐かしい匂いを嗅ぎながら、その跡を途切れない様に追跡していく。見ると足元に、飲み物や缶詰が幾つか転がっている...。


もしも人の居なくなったその場所で、子供が暮らしているのであれば、予め備蓄をしている用意がない場合


地上に出て、保存の利く飲食物を人の居なくなった場所から集めるしかない。


だが?何故この子供は、地上から逃げ隠れしているのか?やはり、さっきセンサーにあった反応は、UNKNOWNのモノなのか?

それよりも他に生存者は居ないのか?事情を知っている様な大人は誰か残って居ないのか?


零れ落ちたそれらを拾い集めながら、一歩一歩確かな足跡で歩いて行く


彼女を知る誰かと、偶々出会う様な幸運は恐らくないだろう。だが、その行方や、このコロニーで起こった事情をしる誰かは、

出会える可能性はある。


何故か、安心するその匂いを嗅ぎながらも、警戒しながら、暗闇を進んで行く。


狭まった通路の先にある換気口らしき壁面に空いたその穴に向かって覗き込み様子を伺うが、


微かに背後で空気の揺れが感じられる。その半瞬あとに、何者かが振り上げる何かの風切り音が、耳朶に到達するその時に、


背後を振り返ろうとして、その行為が失敗する。


何故かと?疑問に思い訝しむが、通気口から伸びる人の手が、振り返ろうとするその時に、その行為を阻害する。

目に火花が散る程の衝撃を受けた瞬間、咄嗟に身体を捻って前転を行い、掴んだ手が捩じられ、


痛っと言う言葉と共に、その手が離れ、頭部を掠めたその一撃を喰らった衝撃毎、前転で勢いを殺す。


急ぎ振り返り、ライトでその人物の姿を照らす。


身長140cm前後の小さな体に、白く雪の様に染まった髪に一部赤みがかったメッシュのその御髪は、その名を表す様に春の日に残る雪景色の如く、

後で聞くことになるが、産まれ付き親から与えられた者で、本人曰く、雪兎見たく、余り好きでないらしい。


「おぃ、暴れるな?俺は、軍と一緒に、このコロニーの生存者を探しに来た。調査隊の者だ。敵意は無い。」


「俺にもこのコロニーに知り合いが居る。なにか事情は知らないのか?」


その言葉を聞いて、小さな声で春幸と呼ばれたその少年は、


確かにそう言った。


「人喰いの奴らじゃないのか?」


人喰い??????


その不穏な言葉を残して、場面は暗転する。


アイジェス達と別れて向かった第四隊と第七隊のハルズ=アルマインの一団は、敵機らしき機影を探し、

コロニーの外周部を、推進器の光を最小限にして、索敵を開始。


相変わらず、その姿は、様と知れず。


それでも、共有されたそのセンサーの反応範囲をデータ補正を行った、映像を拡大望遠で、捕らえるべく奮闘するも、


こりゃ、アイツの機体をこっちに持って来た方が良かったか?癪だが?奴に頼らざる負えない状況に歯噛みしながら、

その事を知ってか知らずかな?年相応に老けて居ない、あの生意気な面を思い浮かべる。


「隊長ッ?!」


(。´・ω・)ん?なんだ?!?と聞き返したその視界一杯に光点を瞬かせた複数の小型の機影を捉える。


(・д・)チッ


「各機、密集形態に移行、互いをカバーしつつ死角を潰せ。」


編隊を組んでいた機影が、先頭を進む隊長機を中心に、防御陣形をしきながら、

同じタイミング、同じ動作で、隊列を組む、僚機の姿を眺め。


ハルズ=アルマインは、あの時、その装備があれば、誰だってお前と同じ事が出来た筈だと、豪語したその言葉通り、

戦場で簡易的に作られたその武装、5連装のビームライフルを構え、


それを証明する時と場所を得る事が出来た。とばかりに勢いこみ、そして、動く物体に対して照準を構え。その戦端が切って開かれる。


・・・


・・・


・・・


アイ=アシン中尉、貴殿は確か?私の記憶が確かならば、虎の子の新型ジェネレータとそれを搭載した、大型MAクシェドレの試験運用を任されていたはずでは?


そう言葉を掛けられた。まだ十代後半に差し掛かったか、の様な、うら若き少女は、燃える様に赤い、髪を棚引かせながら、一歩も引かずに

事情を説明する。


「残念ながらクシェドレの試験運用は、失敗しました。。」


「ん?不具合でもあったのかね?」


「不具合と言えば不具合ではあります。ビーム兵器を完封する装備を備えていたモノの盲点を突かれて...

メインパイロットであったジンボ少佐は、討ち死に、機体は撃墜…新型のジェネレータ諸共、鹵獲されました。」


苦虫を噛み砕き。苦々しくも、はっきりと、声を上げる。


「それは責任問題になるぞ?くべる為の薪共々貴重な資材を奪われたとするか?」と、声を荒げて詰問する相手に向かい。


「クシェドレを撃墜させ、鹵獲した隊が、此方の宙域に向かって来ています。途中、追撃を試みましたが、小手調べでは、止めはさせませんでした。


貴重な、薪を消費して、先回りしましたが...敵も逃げられぬ。この宙域であれば、必ず我がマンティコレを以て撃滅いたします。」


「つきましては、少佐の部隊には、露払いをお願したい。」


背後では赤く燃える鬣を模した、奇妙な機体と類型の竜を模した機体が並び、それらが治められた格納庫らしきメンテナンスデッキが立ち並ぶ空間で、破損して欠けたと思われる。


尾底部に並ぶ、大小の球体状の何かが絡んだシャフトを都合数機、補充作業を完了していた


(やれやれ、大量の薪共を回収したものの、目的の《慈聖体(じせいたい)》の回収は今だ果たされず、貧乏くじでの捜索任務に嫌気を指していたが、存外楽しみが残されていたか?)


(しかし、同じ、身の上とは言えこの匂いは堪らんな。この身に宿る《聖痕》を宿した身体がそう拒絶しているのか?欲しているのかは分からぬが。そう言って、術痕が生々しく残るその傷に指を這わせて思う。)


「良いだろう。我が部隊も、君の尻ぬぐいに協力しよう。しかして、その対象の名は...?」


・・・


・・・


・・・


赤く染まる、身体には、獅子を思わせる鬣の輪が円周状に回転し続け、各部の装甲は鱗状の対弾装甲を備え

背面に伸びる、尻底には、団子状に連なった親機と子機が並び、


紅く染まった頭部には、蒼く光るツインアイのカメラと三列に並ぶ頭部下部に備えられた、放熱機構から、煙が噴き出し続ける。


その威容を魅せる。


人喰いの少女が駆る。マンティコレは底尾に繋がる。移動する砲台たる親機を切り離し、そこから先に繋がる都合16機の子機と4機の親機が、


集団で襲い掛かる。


遠間から、徐々にこちらの死角に向かって接近してくる16機の子機が襲い掛かる。


それぞれに備わるビーム発振器から照射される。小型の光が、対ビームコーティングを施された構えていた盾に命中。


火花を散らしながらも、その一撃を防ぐも上下左右から降り注がれる。


それでも互いに盾を並べた4機の優軍機は、互いに盾でカバーしつつ、放射される火線の動きを読んで、


構えた多連装ライフルを撃ち放ち、迎撃に入る。五条の光の柱が点ではなく面の動きとして、その一機の脇を掠める。


一射では慣れない得物では仕留める事ができないと、二度、三度と繰り返し、飛び出す火線が戦場を


田畑に刻まれる鍬の稜線の如く、次第に子機たちの動きを牽制し始める。


「識別信号。UNKNOWN。敵機です。」


僚機が叫ぶ声に呼応して、


心の中で思い描く通り、やはり奴の戦果は、その使っている道具に寄ってのみで、アイツが特別な訳ではない。


それを証明するべく、第四部隊の四機は、追加された固定武装及び実弾兵器を展開し始める。


その動きに、奇妙な感覚を覚えた人喰いの少女アイ=アシンは、この動きと得物は…聞いていた通り、あの戦場で出会った何者か?


それにしても乗っている機体も、動きも前回に比べて、その狙いは繊細なものの、前ほどのプレッシャーを感じない。


そんな感想を漏らす相手の事を知ってか知らず。


操る獲物のの有用性を示すべく、続く一射で、子機の一基を撃墜するべく、同時に片部分に取り付けられた短距離レーザー式誘導ミサイルを


視界いっぱいの散弾放射を敢行、それに巻き込まれて、何かが小さく爆破。光の球を形成するその光に、


確かな手ごたえを得て、残りの子機たちも残らず平らげるべく奮戦する。



馬鹿めそれは囮だ。


どこかで誰かの声が聞こえた様な気がする。その異音を気の所為だと片付けるには、狙った目標が、子機ではなく、


親機から脱落し、浮遊する弾体の一部が、放射されるビームに巻き込まれ爆裂の光を魅せただけだった。


それを知らずに獲物を狩ったと、手ごたえを感じたハルズ=アルマインは、撃ち貫くように、


火線の華を開かせた360度の光の牙により、増加装甲につけられた実弾兵器を撃ち抜かれ、誘爆する瞬間に

咄嗟に装甲のパージを実行、生じた爆風に押され、4機の隊列が乱れる。


第七隊を率いるサルバトーレ=レトリバーも、第四隊と同じく陣形を構えつつ、応戦していたが、

僚機の陣形が崩れるや否や、数の有利をとって逆に包囲網を縮めるべく。


スラスターに火を入れ始める。


死角を現した、4機に乱れ飛ぶように飛来する16機の子機が襲い掛かり、


やや小型の竜系の機体グヤスクトゥス数機と、手に菱形の盾を並べて、突き進んでくる、大型のエイを思わせる様な

大型の肩と頭部が、あわさった様な流線型を見せる。


初遭遇する。その機体が、ふわりと盾を回転させ、楯から飛び散る菱形の鎖が、縦横無尽に


刎ね跳びまわり、此方の狙撃を悉く、弾き返しながら突貫してくる。


新手の出現に、慄きながらも冷静に集中攻撃を仕掛け、その防御を破ろうとするが、

盾に命中した、高熱の筋は、まるで氷に突き入れた蝋燭の火の如く、その熱を盾に奪われ、

此方の攻撃が届かない。


なんだあれ?


《傾城魚》(チンチェンユー)と、呼ばれる。戦城用機体とは露知らず。それぞれが、対応する敵機との接敵を果たした頃…



アイジェスは、後を追ってきたイゴール達と合流し、その話を訊く。



「人喰いの奴らじゃないのか?」


人喰い??????


「人喰いってなんだ?UNKNOWNの事か?」


「そんなの知らないやい!ある日突然、現れて、次々とあいつらは人を喰っちまいやがった。」


「建物に隠れても、人間大の大きさの大量の大口を開けた何かに襲われて、母さんも、父さんもみんな持っていかれた。」


通風孔から覗く、子供の手が、のそりと飛び出してきて答える


「そうだよそれで、アイツらの目を眩ませる為に、防衛隊との戦闘で剥落した。奴らの装甲の一部を使って、何とか活動してたんだ。」


目の前の少年よりも一回り小さい少女が答える


「私達は、奴らの事を《人喰い》カルニヴォルス (carnivorus)って呼んでるの。 」


...。


(人喰い...じゃぁ?彼女は...何処に?)


混乱する頭の中で、問いかける。


そう言えば名乗って無かったな。


「俺の名は、アイジェス=ブラットワーカー。助けに来た。君の名前は?」


「俺か?俺は...」


たっぷり時間を掛けて悩む様に答える。「春幸、親が春の日に残る雪の様にって、名付けてくれた。」


ん?心の琴線に何かが触れたが、その想いも記憶も一瞬の事で、


背後を経過しながら、急かすイゴールが、


「アイジェス、詳しい話は、旗艦に戻ってからにしよう。迎撃に向かった隊が心配だ。」


「もしも、アイツらだけで抑えられなかったら...ここにも?」


そうだな、と、逸る気持ちを抑えて、「分かった。生存者は、他には?」と問いかけると、「奴らに見つかるよりも、此処で隠れていた方が良い。」


「助けに来た人たちも、外の戦闘で、軒並み何もできないままやられちまった。あんたらも、きっと…」


「安心しろ、我々は、二度、奴らを撃退している。そうでなければ、L2から離れたL5から、此処には到着できん。」


「奴らの弱点も分かってる。撃退できない相手ではない。」


イゴールが後を引き継いで説得にとりかる。


「本当なの?」


ああそうだよ。早く俺達も戦列に加わるか撤退しないと、僚機たちが不利を推して戦い続けなければならない。


そうなっては勝てる相手にも勝てない。


そう説得して、連れ出した子供の数は、5人。


呼び出し、其の身柄を保護して、機体が待つ場所へと戻って行くと、やや抵抗があったものの


隊長機に二名、それぞれの僚機に一名づつ、最後に、春幸をアイジェス機が保護を行い。


その場を逃れて、旗艦へと向かい帰艦していく。


コロニーの外壁の外では、奇妙な形をした。盾と菱形の鎖状の小盾が、


白色のエースカラーのディエムに向かって飛来。クルクルと廻るそれらに対して、陣形の維持を中断して、


一機のみ先行し、アハトは、自嘲しつつも、その攻撃に応える。


エース用にカスタムされた。二重螺旋を描くコンバージョンリングから放射される。


通常のビームライフルに比べて、強化されたその一射が、枠乱する様に飛来する、何かに命中するも

相も変わらずその表面を浅く炙る程度で、


此方の攻撃が通らない。ビームは効果が低いとみてとり、各部に取り付けた実弾兵装へと切り替える。


クルクルと飛来する菱形のオービット・マインと呼称される。それらが、その基部に貯め込んだ。


熱量を解放。


アハト機が、実弾へと切り替えるタイムラグに、僚機の一体が、その隙をカバーするように


応戦の一撃を器用に、その物体に当て続けるが、その色が、青から赤へと変わり赤熱化。


寸断するように放たれた。分解された菱形の鎖が、回転し、脚部を溶断し、続いてライフルを構える腕部から乗機の上半身を削りながら、


頭部のメインカメラを全損させ、そして頭頂部に到達すると、炸裂し、大破させる。


アハトは、僚機が撃墜されたものの。冷静に視界の端から噴出する白い何かを捕らえ、


冷静に、脚部及び肩部に取り付けられ、短距離レーザー誘導の散弾式のミサイルと一斉放出、と同時に


メインスラスターとバーニアを噴射し、側転する様な動きを繰り返し、


敵機の攻撃を回避しながら、ライフルの一撃と共に、乱れ撃つ、回転の終点の上で、


一気にその光芒を輝かせその勢いの侭、反転、駆ける軌道の元一撃離脱を敢行。


更には、追いすがる菱形の鎖に向かい、脚部の増加装甲をパージ。


足下に向かってビームライフルを照射、撃ち貫かれた推進剤を満載した増加装甲が炸裂。


燃料に引火し、小型の火の玉を形成し爆炎と共に、巻き込んだ。搭載された炸薬と共に基部が破損。撃墜するも


追撃で放った散弾の雨が、次々と盾を構える《傾城魚》(チンチェンユー)に着弾、菱形の鎖、オービット・マインを分解しながら操作し、


防御と共に、反撃のの一手を加える為に、胴体部に備わった二つの拡散粒子砲を放射。


散弾の雨に撃墜される。基部を他所に応撃の粒子の雨が応戦する。


互いに、相手の死角を取ろうと、ドッグファイトを仕掛ける最中、赤く染まるマンティコレを駆る。少女は、


相手の持っている武装に、警戒色を強めに、遠巻きで親機と子機を操作しながら、


どうにか生け捕りにできないか?試みる。


だがやはり、相手の動きに、あの時の様な圧倒的な、軌道を描く機動は感じられず。


もしや単純にその得物を取り換えただけなのかもしれないが...可能性がある限りは...もう少し情報が欲しいな。


少し、攻撃の手を強めるか?


と、展開される子機と親機を思考で操作しながら、本体に装備された武装も合わせて、攻勢を強める。


縦横無尽に放たれる小規模の粒子砲が発振され、取り回しの利かない。多連装ライフルに振り回されながら、


撃ち出される鍬の稜線の如く五条の光を放つ、その閃光が、どうにか子機の一基を撃墜するが、代わりに援護射撃を行う僚機の


腕をもぎ取って行く、破損した僚機は、それでも実弾の雨を降らし続けるが、その頭部と脚部に、敵機の実弾兵装である。


誘導弾が突き刺さり爆炎を引き連れ乍ら中破させる。


「クッソ?なんて敵は、誘導弾を自由自在に使えるんだ?迎撃、各機、弾幕を張って迎撃しろ。」


警告の言葉と共に、放たれる銃弾と炸裂弾の雨を器用に避け続ける。


数の優位がいつの間にか覆されている。


エースを要する第七隊は、新手の対応に掛かり切りでこちらには、援護できない?


せめて、もう一隊いれば...脳裏に過ぎる弱音を振り払い。ハルズ=アルマインは、自機と僚機が保持する残弾数の

残りを計算しながら、この戦闘が、もうすぐ終わる結果を夢想し、頭を振って迷いを遮る。


「各機、後ろに目を付けろッ!!!!」


降りしきる光の雨の檻を潜り抜けながら、360度のオールビューのコックピットに新たに増設された、


バックミラーを一斉に起動。オールドビューのパネルの一部が反転、その鏡面を表すと、


背後から迫る火線を、鏡に映した、その増設された視覚により慣れない軌道でありつつも何とか、スラスターを吹かして寸前で回避。


姿勢バーニア―を可変させ、火を吹かせながら、機体を反転。


制圧面攻撃である。射線を放つと、子機を更に一機巻き込み撃墜される。


不慣れなその稼働をしつつも、次々と敵機の攻撃に対応し、増設された実弾兵装をばら撒きながら、徐々に削り始める。


ん?


動きに精彩を欠いていたが、急に動きがぎこちながらも、対応し始めた。


どんな手品を使ったのか?まるで後ろに目が出来た様なその反応に。


舌打ちを一つ、叩きながら、自らの子と呼称する、移動砲台である子機と親機を操りながら、


幾度となく、艦隊やコロニーで戦果をあげ続けていた。人喰いの少女アイ=アシン中尉は、研ぎ澄まされた感覚と元に、


敵機の分析を開始する。


不用意に背後を取った子機が、振り向きざまに狙いを付けなくとも五条の光が奔る、それの端に広がる瞬きに引っかかり、


打ち落とされる。


是は、既に対応されている。種の元は分からないが、恐らく奴らの後ろには、目がある。威力の弱い子機の連携の基本戦術である。

相手の死角に回り込んでの挟撃が機能していない。


恐らく、奴らの中に《聖痕》持ちが居るとは考えられない、あれは、我らの国の独自技術の賜物、幾度かデーターベースを漁ってみたが、

他に類似は無かった筈。


ならば、何かのネタがあるはず...鹵獲した敵機のコックピットには...。


次々と撃ち落とされる子機を使い相手の射角、メインカメラの視線の先を眺める。上方からと下方からの火砲の連携に、


敵機の一体の脚部とシールドを持った腕部を撃ち抜き、ビーム発信器が発する熱量により、溶断、保持していた炸薬兵器に火が映り、誘爆し爆散する瞬間に


増加装甲のパージを試みる。


破裂するように広がったオレンジの爆炎の炎を寸前のところで、直撃を免れる(まぬがれる)が、


目が眩まんばかりの光を周囲に巻き散らし戦闘の続行が不能なまでの損傷を受ける。残った姿勢制御用のバーニアを吹かせ


戦域から離脱していく僚機を見送りながら、敵の隊長機だと思わしき、奇妙な形を持った多連装のライフルを持ったその機種に目掛けて、


同じ様に、攻撃を仕掛け、


その背後からの奇襲は防ぐものの、下方と上方からの一斉射に対して、半歩遅れて反応し、

その放射が、構えていたシールドに着弾。


火花の華を千々に咲き乱れさせ、防御。


今の一瞬の動きで、相手の前面の恐らく上部若しくは下部の一部分に死角が出来ている。


...。思考を巡らせ、推測するに、鏡か何かを使用して、背後の視界を確保しているのであれば、前面の斜め上に存在するその死角を狙う。


とならばと、アイ=アシンは、弾幕を張りつつ、相手の死角であろう。其の一点目指して、


一条の光となり、その身を躍らせ、接近戦を試みる。


獅子を思わせる鬣の輪を白熱化させつつ駆動させ、すれ違いざまに、一撃を加える。


咄嗟に、シールドでその一撃を、受け止めるが半ばまで溶断、切断され、


ハルズ=アルマインの駆る機体が大きくぶれる。


隊長機の危機に嬉々として、残る2機の僚機は、互いに死角を補う様に動くが、


接近する機影を捉える間も無く、子機と親機から縦横無尽に発せられる五月雨式のそれに


翻弄され、僚機が近付けない。


思考のギアを一段階あげて、降り注ぐ光のシャワーを以て、その動きを釘付けにする閃光が、

徐々に機体の端から削り取り、光り輝くその荒ぶる機影を乱れ飛ばして、


ライフルや、追加装甲の武装が、次々と引きはがされて行く。


ハルズ=アルマインは、取り回しのしにくい、多連装ビームライフルで、接近してくる機影に

向かい、予測射撃による。面の攻撃をし続けるが、放射される粒子が、


敵機の周りを回る。浮遊する断頭台に阻まれ、弾かれる。


周囲に漂う子機の牙が、此方を狙い続けるなか?敵機の直接攻撃と併せて

此方が取れる選択肢が徐々に消えていく。


再びの突撃、敵の機影が、バックミラーの陰に隠れて見えない...


何故だ?!


今度は死角から襲い掛かる回天刃がシールドごと、胴体を引裂くように叩きつけられた瞬間に


盾に隠れた手元から取り出したビーム発信器を構え、その一撃を防ぐが、更に機体の

機動がブレる。


包囲射撃と接近戦のコントラストが戦場を謳歌する。


迎撃に対応する為の実弾兵装を使いきり、残るライフルの一撃も虚しく空を切る。


また一機、と光の勾配に、断たれ、そのごうする時を感じる宇宙のキャンパスを描く中、


再びの邂逅を得る。


痺れを切らして高速移動による惑乱にハルズ=アルマインのディエム機が入るも


逆に偏差射撃を仕掛けられた。背後からの一撃で、脚部及び多段層ライフルを保持する

腕部が撃ち抜かれバックパックの端が削れる


バックパックの一部をパージ、誘爆を防ぐが、半狂乱になりながらも、姿勢制御を行い


何とか一射の檻を防ぐ。


「クソ、クソ、クソ、クソ、クソ、クソ、何故だ?」


「あいつと、俺のどこが違う?!」


カンッ空気の無い真空の空間に、もしも大気があったのであれば、そう響き渡るであろう


その音が幻視される。


赤い稲光を纏うその光が、止めを刺そうと動いた一機の子機を撃ち抜く。


「アイジェスッ!各員、子供が居るのを忘れるな。僚機の援護と離脱を確認したら、引き際をわきまえること!」


「俺達の事は、気にすんな。おじさんッやっちゃえ」と子供の歓声が上がるも


「いや、私は、まだ24のお兄さんなんだが?それにサブシートの対G性能はたかが知れてるからな、

喋ってると舌を噛むぞ?」と、僚機の一人フォイマンが答える。


「一撃離脱で、友軍を援護を行ったら撤退するぞ。」と、信号弾を撃ちながら、


二分する二つの戦場に向かいそれぞれの機影が援護に入る。


友軍の到着を見て、アハトは、「...」無言のまま、撤退信号を宙に撃ち放つ。


今も尚、ドックファイトを繰り広げ、相手の攻撃を捌きつつ、僚機との連携で、

対抗するも、その疲労は、徐々に溜まっていく。


ここら辺が、引き際だと、判断。何も敵機の有利な条件で相対する必要もない。


残る部隊全機を以て、相対した方が良いと、判断し、その一手を切る。


友軍機を狙う羽虫の様に群がるそれらの子機に向かい、背後から、僚機を巻き込まない角度で

撃ち込まれる実体弾の放射が、降り注ぐ。


実弾の雨による奇襲を受けて、二つの花火が討ちあがり、活路を開く


肩部の隠し腕を起動し、背面に設置されていた二門の380mmバズーカ砲を構え、


散弾状の実弾の放射を行ったアイジェス駆る。デスペラードは、右腕部の多連ロケット砲に続き


ボールベアリングを次々と射出する。弓状の射出機を引き絞り、僚機を取り巻く、牙向く羽虫を


一機ずつ、正確に射抜き始めるも、


その光景を、初めて見た。モノは...くぁwせdrftgyふじこlp;


脳裏にあれ?なんでこいつ目標に正確に当てられてるんだ?と、疑問が浮かぶ。


まぐれ当たりじゃないのか?


「おっさんッ?!あいつらは獲物が弱り切るまで、止めは刺してこない。みんな、手足や武装をはがされてから、みんな捕まった。こっちを舐めてるんだよ」


ん?春幸のその言葉を受けて、アイジェスは呟く。


「そうか...なら、イゴール。俺が援護するから、今の内に、僚機の保護と回収を。」


その機影を確認し、正確にこちらの子機を射抜き続けるその機体は、


確かにあの時、感じた感触と同じだ。


「ミツケタ・・・少佐、残りの獲物の相手は頼みます...私は、奴を頂く。」


舌なめずりしながら、残る子機と親機を操りながら、味方機への援護を繰りかえす。


アイジェス駆るデスペラードに向かい、一斉に方向転換。


それまでの動きに比べ、倍する程の変速軌道を描きながら、射出するビーム発信器から、


光の檻を一斉に展開。


咄嗟に機体を傾けると、その斉射を事も無げに回避。


機体を捻り込みを入れながら、上下に機体を稼働させ、次の瞬間には、滑らかな動きを見せた

一射により子機を一機撃墜


( ,,`・ω・´)ンンン?


(。´・ω・)?



なんぞ?


なんだあれ?


気を抜いたら掘られそう...


「...やるな...」


奴等の狙いが、自分に向かって集中したのを感じ取り、僚機を巻き込まない様に後方ではなく


背面の大型ブースターを点火、戦場の真ん中に躍り出ながら、各部の武装を一斉展開。


多連装ミサイルポットと大型グレネードをバズーカを撃ちながら弾幕を形成しつつ、相手の親機からも、誘導弾兵器の弾幕が射出。


光点が瞬きながら、事態が好転し始める。彼我の距離の中間点で、互いの火力の応射が激突する。


敵機の誘導弾を封殺しながら、それを凌駕するように、ボールベアリングの一射が稲光を伴い


放たれし、その一撃が相手の機体の周囲を回る回天刃に遮られるも命中。


機体の制動を、揺らしながら、


相手の攻撃が当たっただと?と驚愕の表情を引き出す。確かに、回避運動をしていたはずなのにも関わらず、予測反応されて命中させられた…。


その事実の慄きながらも、敵機には、あの時のプレッシャーを感じない。


アイジェスは思考をしながら相手の遠隔式武装は、未だ親機子機を合わせれば十数機弱

一々、個々に潰していても仕方ない。


あの時とは状況が違う。頭の一機のみを集中して叩けば…事足りると、


大型ブースターを更に点火し、捻り込みつつの円運動を行いながら、


回避運動を混ぜつつ、対象に肉薄していく。


追う立場から追われる立場となった赤色に輝くマンティコレに対して、


今度は放たれる閃光が撃ち出された実弾の強撃から防御するように光の光点が交点となり、

撃ち落としの妙技を披露しつつも、防戦に入る。


互いの一撃を撃ち落としあうその光景を眺めて、大破及び中破した僚機を回収した第三部隊は


呆けた様にその光景を眺める。


その間に、振り回されるGにより、少年の息が詰まる。一呼吸を入れる為に、


半瞬の制動をかけ、再びの移動。


魂が欠ける程の急制動を繰り返しながらも、それは起こる。


背後から急接近してくる子機をマニュピレーターを稼働、

ノールックで体軸を合わせたバズーカーの一射により迎撃。互いに放った閃光と実弾が互いに命中。


熱を生じた一撃により半ばからバズーカが溶断。弾帯に引火しつつも、咄嗟に曲芸にも近い

挙動で、蹴り上げると、そのままの勢いで、弾き飛ばされたそれに


巻き込まれ先に撃ち落とされた子機と併せてもう一機が誘爆に巻き込まれ、消失する。


「ええぃ?なんだ、今の動き?!まるで実際の人間が動いてる様な滑らかさ?」


えっ?なんだあれ?


MSの基本動作にあんなの無いよな?


あいつの機体には、(`・ω・´)ゞ敬礼みたいな特殊モーションでも登録してるのかな?



「・・・」(奴は、何者だ?UNKOWNを撃墜し撃退したって話は聞いては居たが...)


(ここは、笠に着て、畳みかけるべきか?だが、生憎残弾数が心もとない。深追いは危険だな...)


「第七部隊、アハト=佐伯より、各機へ、新入りを援護しつつ、僚機を保護し、撤退だ。」


追いすがる《傾城魚》(チンチェンユー)とグヤスクトゥス数機相手に奮戦する第七部第は、一機の離脱のみで、


数の有利も無いまま戦局を拮抗させていたが、そろそろ限界が近い。


各機の残弾数


サルバトーレ=レトリバー⇒ビームライフル残数4、ミサイル2基、グレネード1基、バルカン砲200発

イングリット=ワークマン⇒離脱

アニス=フライヤ-⇒ビームライフル及び実弾兵装0

アハト=佐伯⇒ビームライフル残数1、ミサイル基、グレネード1基


特に数機の小型機と敵隊長機を抑えていた、アニスと自分の残弾数が目に見えて少ない。


ビームサーベルでの白兵戦のみで固唾けるべきか、逡巡し、決断をくだせなかった隊長機を差し置いて


撤退を具申するも...敵もやすやすと、逃がしてくれる訳もなく、


静止するように乱入してきた第三部隊の2機が、未使用の残弾数の有利を取っての一斉射撃を

慣行乱れ飛ぶ実弾とビームの嵐を以て、敵機及び友軍機の相対距離を引きはがし、


撤退の一助と成す。


「各員、撤退、撤退。」と叫ぶ、イゴールは、自らが殿を務めると、


アハトは最後に残ったグレネードを追いすがる《傾城魚》(チンチェンユー)に向かい


放出。相対距離を詰めようとした。機影に重なると、時間差での起爆を見越して盾で弾こうとする

その動きに合わせて、最後の残弾のビームライフルを発振。


加速された粒子が淡い光を弾けさせながら命中。タイミングをずらして発動した炸薬により、


機体が流れる。


その隙を以て、退避行動へと入り、殿をかって出た。


イゴール機が、射撃を繰り返しながらもアイジェスに対しても呼びかけるが...相対する。


マンティコレの攻撃は苛烈を極め、基部に保持していたバッテリーが切れた子機を特攻の誘導兵器として、再利用。


左右から挟み込むように飛来するそれを上方へブースターの火線を引いて回避。


激突し爆発するそれを他所に、弾切れを起こした子機が次々と親機へと戻り


再充填を開始、手数が減ったその時に、これ幸いかと、退避行動に出る


大きく迂回させながら親機の砲門が開き、大口径の火砲による光の炎が瞬き、


噴出するその光芒が、視界を覆い、回避不能の檻となすが、肩部に備えた楯とビーム偏光用の発生装置を最大稼働。


暴風を凌ぎ切るレインコートの如き守りにより、防ぎ切るが、離脱のタイミングを逸する。


その退避タイミングに、置き土産とばかりにアハトは、意識外の死角からミサイルの一射を放ち、


その一撃が、アイジェスへと集中攻撃を加えていた親機の一基に命中、


内蔵していたジェネレーターの炉が、搭載していた誘導兵器の炸薬と反応を起こし、大爆発。


同心円状に広がる衝撃と炎を乱舞を残して緋色の閃光に照らし出された各機の陰を落としながらも、アイジェス機とイゴール機を残し撤退を開始。


追いすがって行くそれらに対して、追撃に入ろうとする。


《傾城魚》(チンチェンユー)に対して、イゴール機に搭載されている実弾兵装の封を切り、逃げ切る間の時間を稼ぐ為、


一斉発射を敢行。


その防御を崩すのは出来なくとも、一秒でも長い時間を稼ぐ為に、解き放つ


何もない空間に艶やかな色の閃光を瞬きながらそれでも突撃してくるその機体に、対抗するべく


その腕部から取り出したビーム発振器を左腕部の手首から射出される棒状の何かを掴み、くるりと手首を回転させながら受け取ると、すれ違いざまに、


その盾に向かって叩きつける、溶断するかに見えたその輝きは、不思議なその装甲を施された盾により熱量を吸収され、


赤く燃え滾る盾を、ディエムが構える盾へと叩きつける。


熱源を纏ったその盾が、ディエムに装備されている対ビームコーティングを施された盾を真っ二つに叩き切る。


その勢いで、コックピット内で、パイロットを保護する安全機構がが起動。膨らむそのエアバックをそれでも押しのけ、


刃を振るい。叩きつける様に振るった刃と盾がビームを弾きながらも一瞬の均衡を作るもバックステップの要領で排出された

バーニアの噴射が、後方へと機体を流して行く。


「アイジェス?!撤退信号だ。撤退だ。戻れ、殿は...貴君の仕事じゃない?!!本官に任せて下がれ。」


そう叫ぶイゴールを他所に。


空中で射撃の応酬をしながら、互いにぶつかる様に、二つの星が、それぞれ重力に惹かれ反発するように、


近付き、離れ、並走しながら、兵装を展開。


終りの無い撃ち合いをし続ける...



此処で、引いたら、武装の残弾が無い友軍機が逃げきれない...アイジェスは意を決して答える。


「ここは俺が殿を引き受ける。《仏頂面》(トルウス)、は、下がれ。」


お互いに殿を譲らぬ、その刻に...


遥か遠くの宙域から、凄まじい勢いとその機体に搭載された、通常の5倍以上のエネルギーゲインをほこる。


その機体…V8気筒の頭部に、薄緑色に塗装された、まるびを帯びた、流線型を象った独特の造形が栄える。


一機の機体が、みなの期待を一身に背負い、その手に長大な出力を誇るビームランチャーを手に、突撃してくる。


それはDiem(ディエム) Perdidi(ペルディディ)と名付けられた機体を駆る。



「お待たせ、みんなのアイドル。アンザス=フライ・ハイ、だお?!ここは私に任せろー。支払いは任せるけどね?(・ω<) テヘペロ」バリバリと、

マジックテープが剥がれる音がコックピット内で響き渡る。


「「ん?」」


この大出力の火器を持ってすれば僚機の退避を援護できるはずだ、と内蔵したジェネレータと直結されたその銃器を駆って、


一射を見舞うべく、複数ある増幅器を経由し、粒子の加速と増速を繰り返し、∞に交差するエネルギー循環路を通り放たれる。


それはそのジェネレータを基となった機体が放出する。射線とも遜色がない。威力で、戦場を謳歌する。叫びとなって放たれる。


巻き込まれない様にと、退避する二機に盾を構えて突進してくる《傾城魚》(チンチェンユー)に、直撃する。


高出力のエネルギーが、楯と衝突そして熱量を吸収しつつも、その熱量に押され。機体のバランスを崩して、クルクルと後方へと吹き飛ばされている。


大質量のジェネレーターを搭載していたとしても、4基備えていたクシェドレの時と違い、ある程度の充填を時間を要するが、


通常のMSが二基で運用するよりも、ずっとその充填時間は短縮される。


「アンザぁぁぁぁぁス?!」


「お前…珍しく撃墜されそうにないな?!?!」


「隊長、ここは、おいらと兄ちゃんに任せて、味方の退避を!!!!!」


(これで良いよな?他の隊員には、あの姿は見せられない...し)


「お…お前…そんなに…(奴の…漢の尻が好きなのか?!)」


跳んだ飛躍した誤解を生じさせながら、戦場は激化する。


互いに一進一退を繰り返す。戦場の中で、詩が聞こえる。


誰かが唄う歌声を聴きながら撤退する機影が去った後には、その耳元に微かな色を残して、その一言が何もない虚空に響き渡る。


「エンコード...」


そして再びのその唄が戦場を翔ける時、末期の叫びが響き渡る。


つづく


更新時期は、毎月、月末最終週の火曜日に二話更新を予定していましたが、月末日に変更します。

よく考えたら準備期間が一か月未満は無理だった。申し訳ない。

⇒予定より早く描き終えたので、更新します。唯、読み直しの工程を一部省いたので、

誤植や抜けや墜としたカウントに間違いが残ってるかもしれないので、何かあれば指摘して頂ければありがたいです。

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