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無法者の詩  作者: 唯の屍
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第二話「窮地の中の小休死」

アイジェイス=ブラットワーカーは、イゴール大尉の先導の元、L5領域に駐留するコロニー、ミーミルに存在する。Carpe Diemカルペ・ディエムの基地内部に招待される。


背後でトレーラーに積まれていた遺骸を荷ほどきをしながら、作業と会話は続く。


「時に君は、あの時、なんで、あの攻撃が奴に通用すると思ったんだ?」


少し、疑問を顔のまま、答えを選んで言葉を繋ぐ


「ただ単純にビーム兵器が聞かないのであれば、物理的な攻撃であれば通るのかと?思っただけです。」


確かにディエムの攻撃が、渦を撒くように何かの力場が弾いている様に見えた。

だからその発生機関を切り取れば…。


そう答えると、確かにな。と頷き、その機関と言うのは、あれかね?


と、残骸を指差し、告げる。


試しに我々でも使えるのか?あれが仮に生物ではなく機械的な兵器であるのであれば…あるいは?と、

既存機種に現場でジェネレーターと直結して接続試験を行ったが、その結果は不発だった。


「君の気の所為ではないのか?偶然、相手の防御を超えることが出来ただけかも知れないし、

そもそも有機体の異星からの来訪者である可能性の方が高いのでは?」


むー?っと、こめかみに皺を寄せながらも、思い悩み、思案し、言葉を選びながら声をあげようとした瞬間に、「ちょっとまっていてください。」と、断りを入れ


自分でも確保していたその発振器らしき部品を愛機の背面ラッチから取り出すと、溶解しかけた肩アーマーの盾を備えた基盤フレームの接続箇所に、合うように、インゴットから部品削り出し破損部分を補うように併せて、多数のアームを起動しながら、接続してみる。


コックピットのコンソール上では、《connect on》の表示が踊る。


すると其れはまるで、予め合うように作られたかのように接続し、コネクタを通して送り込まれた、ジェネレータの出力により、


駆動音を上げながら確かにあの時の現象の様な光の渦がうっすら見て取れる。


そこに何を思ったのか一体のディアムが、ビームサーベルを、弱装状態で、差し入れると、あの時の様に、四散、霧散を繰り返し、弾き飛ばされるビームの雨が


周囲に飛び散る。


すわ大事故となる瞬間に、アイジェスはフィールドの展開を停止。


「アンザぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁス!!!!!」


(*ノω・*)テヘペロ?


激高し、己の部下に、注意をくれながら、幸い怪我人は出なかったものの、基地の地面が軽く焼け焦げた。


後で始末書提出しろ?それまで飯を食うな!


えーしょんなぁーとションボリとする。部下を他所に、


「なんにしても、君の機体の動力で稼働できるというのであれば、あれは生物なんかじゃない?機体である線が濃厚だ。」


「そもそも貴君の機体はなんだ?失礼だが、特に戦闘用の機体の様に見えないのだが?」

其の問いに答える答えは自分でも答えを持っておらず。ただの随分と前に人から貰った旧式の機体ですよ。と答える。


「そうか…。だが、敵の機体にビーム兵器を無力化する機構があるというのならば、今の時代、主流となっているビーム兵器は其の効力が、不確かとなる。」


「既に実体弾による兵器は、携帯性と利便性から廃れて久しい。これは、上に実弾兵器の配備を具申する必要があるな…」


ありがとう、と答えながら、


しかし、此れを我々にも使えるようにするには…。


とブツブツ、独り言を繰り返す。


「それで貴君の希望は、L2コロニーへの調査作業への同行を希望しているのか?」


「協力して貰った手前、叶えてあげたいものだが…それには、君に、より一層の協力を求める事になるかもしれん。」


「あとの事は上官と艦長に相談することになると思うが…」


暫く待っていて貰えるだろうか?と、背後で消火作業を行う作業員達の姿を横目に、Carpe Diemカルペ・ディエムのコロニー基地の内部に通される。


エントランスホールを抜けて、エレーベータで3階に上がると、奥まった建物の内部に通され、暫しの猶予の時を過ごす。


マリア=アッカンバーグと名乗る。女性士官に、低重力下用の品であるパック入りの飲み物を提示され、それを飲みつつ、責任者の到着を待つ。


暫く放置され、こんなに時間が有るなら、機体の調整を行っていれば良かったな。と、既に頭の中で次の改良案は出来ているが…それには、あの遺骸の部品が必要だ。使わせて欲しいと言って素直に通るのだろうか?思案しながら、持ち込んだタブレットに製図案を書き込んでいく。


考えられる武装案は、いくつかあるにはあるが、其のどれも、未だ机上の空論、確かな形も素材もいまだ足りないが、いつそれが必要になるのかはわからない。故に、俺は考え続ける。


そのパーツを組合わせたピースがいつどこで上手くハマるかはわからないのだから。


機体のドックから接続された接触回線から、基地内部のデーターサーバーへと潜り込み、

廃棄と使用期限ぎれ間近のそれらの装備、兵装についての情報をゴミ箱からサルベージし、


思い描く武装の組み合わせを試してみる。一応、今後想定される、制宙戦や地上戦それに水中戦に使えそうな物を探ってみるが、ピースがいまだ足りない組み合わせがある。


存在しないモノについては、愛機の加工性能と俺の技術を混ぜ合わせて、組み上げるしか無い。


果ては、夢想を描く、絶望に対処できるように、型の枠組みだけ、アウトラインを引いてー製図を描いてみる。


いつか思い描く絵には、あれが使えるかもしれない?と夢窓を眺めて妄想を膨らませる。


どれだけ時間がたったであろうか?


一人のメガネを掛けた、ぼさぼさ頭の四十絡みの男性が、鼻息も荒く、大声で何事かを吠えながら駆け足で入ってくる。


「君かね?あの機体の持ち主は?!あれは一体何なんだ、何故敵機の装備と互換性がある?」


ぐいぐいと、いきなり距離感を詰めて胸ぐらを掴んでくる。


その手を払って、「一体何ですか?」


「コーディー上級技官、流石にそれは失礼だろう。」


と、声を掛けて、其の人物は、名を名乗る。


「本官は、ナンネン=ハイマン艦長だ。この度の調査隊の責任者を拝命している。」


「貴君の協力に感謝を。」


「艦長、そんなことよりも、さぁ、問題の機体を見せて頂きたい。」と


ふんす、ふんすと、鼻息も荒く、催促する。


「とりあえず、本官も其れを目にしたい。ご協力願えるだろうか?」


腰の低いその申し出に、掴まれた手を払い。「良いですが、接収しようとしても、あれは俺にしか、そもそも起動できないですよ。」


ほぅ、網膜認証か?生体認証か?それらに類する、其の様な機能があるとは、興味深い…

糸目のように細めた視線でアイジェスを眺めて、先を促す。


その視線を受けて、背中に冷や汗をかくものの、其の脚は確かに地面を踏みしめ、それでも尚、進む。

建物を抜け、基地の敷地内のメンテナンスドックに設置された。アイジェスの愛機を眺め、


先程とは、うってかわって、安全マージンを取りつつ、敵機から鹵獲したフィールド発生機の可動実験を試みる。


確かにビームは偏光され、展開された其れにより散らされる。其の姿をみて此れは一体同どういうことなのか?


説明を求めるように詰め寄るコーディーに、アイジェスは答える。


そもそもこいつは、複数の規格に対応できるように、コネクター部やOSに改造が施されている。恐らく異なる全ての規格に対応するべく開発された


Multi-Purpose Typeマルチパーパスタイプ及びAll-Compatible Typeオールコンパティブルタイプと呼ばれるものだろう。


試しに、此の基地に嘗て納品されていた品。MSの旧規格の装備を試しに装着してみろ。恐らく問題なく使用できる筈だ。


そう促され、コーディー上級技官は、艦長に詰めより、仕様許可を奪い取っていく。


勢いに押され承諾するハイマン艦長の指揮の元、イゴール=マッケンジーは、すまんなと、手で拝むように謝罪のポーズを取りながら、


其の作業に取り掛かる。


確かに今現在のディエムでは、規格が合わない一昔前の実弾兵装のオプション装備各種が、確かに倉庫内でホコリを被っていた。


実弾兵装よりもビーム主体となっている現代に置いては、不要の長物ではあったが、襲撃者には、実弾兵装の方が効果的と判断され、既存のディエムについても、OSの書き換えを行っている最中だったが。モノののついでに行われた換装作業を開始する


ひと手間の掛かる其の作業をただ観ているだけではと、昇降用の縄ばしごを使って上りコックピットに乗り込み、ディスプレイを起動させ。


運ばれてくる各種装備を、カメラでの目視で、その姿を捉え、6つのマニュピレーターを半自動的に操作、パズルのようにアイジェスは既存の装備の組み合わせを頭の中で考えると、それらを次々と装着させる。


両肩の城壁のようなマニュピレーターに備わった盾には、鹵獲したビーム偏光用の発生装置を二基備え、左腕には、最新型の試作大型ビームラム発生用の機構を備えた装甲を施し、


大型の弓状の弾性ベアリング射出装置を設置其の姿は、大型の弓にレールを付け足し、其の部分にベアリングボールを並べて、アームの力を使って射出させる。


実に単純そうな武装であるが…一定の攻撃力を担保できるだろう。


さらに右腕に装備した大型のシールドの影に、多連装のロケット砲を打ち出すアームカバーを装着

背面部に実弾の380mmバズーカ砲を二門に多連装ミサイルポットを増設。


更には、各部のマニュピレーターに、同じく鹵獲した敵機の武装の一部を移植済み、開いている他のマニュピレータにも機関砲や多弾倉の砲身を装着


頭部にはバルカン砲を撃ち出す増加装甲を設置し、脚部には大型グレネードを三基づつ備えたウェポンラックに、ミサイル発射機構を備え推進機付きの増加装甲の数々


最期に、星型の大型ブースターを四基、背面部に繋げると、其れまで剥き出しのフレームを見せる頼りない姿から、完全武装の一機の姿が見える


確かに、規格外の新旧合わせた規格に全て対応してみせた其の姿を観て、技術士官は、納得すると伴に、一体誰が作ったのか?と問いかける。


それに答える言葉は持ち合わせず。ただ、人から譲り受けたもので自分自身も詳しくは知らないという説明を添える。


其の言葉に若干の疑念を混じらせつつも、其の言葉通りの結果に、あらゆる可能性を考慮して、考えあぐねる。


「ふむ、試作品も含め多数付けてみたものの、兵装の煩雑さがあるので、ある程度取り外したほうが良いかも知れないが…それでも此れなら活用できそうだ。」


「問題は、彼が、正規の軍人ではなく…ただの一般人である」艦長が声を漏らす。


「それはそうかも知れませんが…私見を述べさせていただければ…」と、イゴールは、言葉を繋ぐ。


「初接敵時に、的確に敵機に有効な戦術を提案し、実行したその技術は、確かなものかと?現状、実体弾の積み込みが可能なのは、改修を行っているディエム数機と此の機体のみ、本部からは、早急に調査を打診されている関係上、同行させても良いかも知れません。」


「あくまで補助用意員としてですが?失礼ながら、個人的に調べさせて頂いたが、取得している免許は低いモノの、其れまでに作成し続けていた実績を見せて頂いたが…あの右手の武装…何もないインゴットと有り合わせの部品を使って、その場で削り出して居た。」


「戦闘には参加させずともメンテナンス要員として連れて行くのもアリかと?」と、助け舟を出す。


「あの弓は、基本動作をOSに設定するのみで、ディエムにも同じものを搭載出来そうですし。」


「そうだな…。同行を許可しよう。出向する前に、イゴール大尉、彼に、簡単な訓練を施して置くように。戦場で混乱してフレンドリーファイアをされても困るからな、最低限の連携は取れるようにして置いてくれ。以上」


目深く被った軍帽を被り直し、今もな根掘り葉掘り聞き出そうとする上級技官を連れてその場を離れていく。


「良かったな。」と、話すイゴールに、ほっと胸を撫で下ろし。ありがとうと答える。


さて、そうと決まれば…。会社には、休職届けや諸々の手続きに、どうやら訓練を受ける必要が有るらしい、忙しくなりそうだ。


それから一週間、基地内部のシュミレーターによる完熟訓練を開始するも、結果は芳しくない。


問題点は、まずシュミレーターと普段使っている機体の操作感覚に大きな開きがある所為が、主な理由だと思われるが、アイジェスは一般的なその操作感覚を未だ上手く掴めずに居た。


素直に思い返すとあの手にフィットした操縦桿が恋しい。


イゴールは、まぁ慣れない戦闘シュミレーションだと、そういうことも有るだろうさと、はげまし、訓練を繰り返す日々がすぎる。


ディエムの四機編隊同士の空中戦を経て、狙いすまして撃ったはずのビームライフルの一撃が、味方機を掠めて、弾着するも、


イゴールは、構えたシールドで、其の一撃を防ぎ切ると、逆に一射を放ち、相手の防御が反応する隙を与えないまま、一撃を見舞う。


噴射するスラスターのゲインを確認しつつ、思っていた以上に噴射剤を浪費してしまい。足が止まった瞬間に、二機のディエムからの集中砲火により、無惨にも墜ちる。


これで10戦中、自分が脚を引っ張ったせいで、全敗を喫する事になる。中には味方への誤射も含め、その勝敗の原因は、一つだけ。


自分の不甲斐なさのみ。


苦虫を噛み砕いた表情のままその日の訓練を終えて、街に繰り出そうとするも、其れを固辞して…。


こういう時は…なにか甘い物を食べるに限る。と、と一人、とぼとぼと、行きつけの、ドーナッツショップに向かう。


店に入って、馴染みの店員さんに、今日のおすすめは何かな?

そうですね。いつものふわふわ当店自慢のドーナッツですかね?と答える声に被さる絶叫が聞こえる。


「アンザぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁス!!!!!」


聞き覚えのある声が響き渡り、何やら騒いでいる集団が目に入る。


複数の軍人らしきその集団は…


一人の男が山盛りのドーナッツを頬張り、食べきれば、お題無料のビッグチャレンジに挑戦しているのか?タイマー片手に、ドーナッツを頬張り、喉につまらせ、顔面蒼白の男に向かい。


イゴールが叫びつ続けている。


全く何をやっているんだ?あれは?と、疑問顔を投げかけると、

あー、アンザスさん達ですね。軍人さんで良くうちのお店に通ってくれる人達ですよ。


今日は、ドーナッツビックチャレンジしてるみたいですね。そうか…と納得し、品物の注文を終えて席を見繕っていると、眼の前で、項垂れて倒れ込む、男を見下ろしながら、


なぁ、あんた、なんか?毎回死に掛けるか?問題起こしてないか?


ジト目で話しかけ


「おや?アイジェスさんではないですか?こんなところで奇遇ですな。」

知ってますドリンクバーのドリンク、全部混ぜて餐むと不味いんだよ!どうぞ!と差し出された


何か異様な色と香りが漂ってくる飲み物を差し出してくる。


確か、此の店のドリンクバー、珍しく野菜が混じったスムージーもあったはずだぞ?なんだその学生のノリは?正気か?


「そもそもドリンクバーの飲み物を他人に勧めるなよ。」


「あんたらも常連だったんかよ?」


「最初はダイナーにくりだしたんだが、食い物が充実してないって、こいつが駄々を捏ねてな、こっちに河岸を変えたんだ。」


そうかよ。これじゃぁ気分転換にならないなぁ。と、暗澹たるアンチャン?顔色が良くないぞ?ドーナッツ食うか?


いや、注文してるのがあるから良いよと断り、少し離れた席に陣取り、ドーナッツを頬張る。ふわふわの生地のリング状の其れを


ひと千切、ふた千切して、口に放り込む。


甘く柔らかい生地が口の中で溶ける。うーん、旨いだが此の味が調査に向かえば味わえなくなるのは?ちと残念ではある。


なーなーこっちきて、ドーナッツビックチャレンジしようぜ、結局、アンザスのやつ食べきれなかったよ。


我々は次の挑戦者を待っている?!!!


いや、なんでだよ。俺は、美味しいものを少しずつ食べたいおじさんなんだよ。


挑戦者なんて求めてねーよ。平穏無事で過ごせれば良い。偶に、ドーナッツや旨いもんくって、だらだらと読書と動画を眺めて、日がな一日ゴロゴロできりゃぁそれで良かった。


そんな姿をみて、もーしゃっきりしてよねっと、呼びかける誰かの幻影を幻視する。


それに一瞬微笑みを覚えるも、


ワイワイがやがや、席を乗り越えてこちらに向かって、話しかけてくるむさ苦しい、男たちに、

やれやれと、応対し始め、年若い士官の一人が不思議そうにこちらに話しかけてくる。


「そう言えばアイジェスさんはなんで、調査隊に志願したんですか?」


「やっぱり理由は、家族か知り合いが…」


「おぃッ」


イゴールが士官をたしなめ、静止するが。


「いや、家族じゃない、いやまだ家族じゃない、其の可能性があるかないかは?これから次第なのか?」


(俺はいつまでも…だけど、向うがどう思ってるかは、わからないからな。希望的観測から…だとは思うが…)


ほぉー嘆息する声が聞こえ、


「あまり詮索してやるな。唯、私情で、隊を乱されると困るがな、見つかると良いな。」と


イゴールが言葉を切ると、おっし、じゃぁドーナッツビッグチャレンジやるぞ!


タイマーとドーナッツを持て、と意気揚々と、頬張り始め、瞬く間に、アンザスの二の舞いとなって

撃沈する。


イゴールは隊のみなに抱え込まれながら店を後にして、仮宿となっている、軍の宿舎へと向かう。

途中、街のネオンが眩しく瞬くが、その光景を眺めながら帰路に付き、汗臭く蒸れる、群れの後を、お土産に購入したドーナッツを齧りながら追従する。


気のいい奴らではあるが、少し子供っぽいな。


まぁ、いい大人の男なんてみんな、そんなもんだよ。大抵の大人は、子供がそのまま身体がデカくなって年を理由に大人だと呼ばれているだけで


そうじゃなかったら、この世に職場いじめも、パワハラも、あらゆる仕事上の軋轢も、そんな物は皆無のはずだからな。


まぁ、操縦技術に難点がある俺に変わらず接するあたり、良い奴らなんだろうさ。

と、就寝台に登り、眠りにつく。


今日はいい夢が見れそうだ。


コロニーの宇宙港に現在停泊している船籍は、小型、中型の貨物船に、複数の戦艦。其れ以外に、調査隊の中核となるべき三隻が存在した。


宇宙港を抜けて、眼前に広がるのは、旗艦となる中心部に回転するシリンダーを備えたリボルバーの銃身が空に浮かぶような灰色の強襲揚陸艦《R.I.P》


そして、兵站や調査研究を行う補給艦、白い白磁の柔肌を魅せる大型の設備艦エンゼルフィッシュ


最期に、一対の上下反転されたカタパルトを備えた尖った剣の戦端の様な駆逐艦、《ASAP》


その威容を覗かせつつ、出向の時を迎えるべく、準備が進む。


「これで、此の古巣とも、お別れか…。そう言えば同僚には、別れの挨拶もしてなかったが、まぁ、これが今生の別れだと言うわけでもないしな」と、宇宙への旅に出るべく、出航の準備に入る。


ドッキングブリッジを船舶から切り離し、最終確認を行った作業員が退避


「こちら、《R.I.P》此れより、任務へ向かう。エアロックの解放及び、出航の許可を求める」

※実際の航空機のやり取りを参考にして描いてみる


「こちらコントロールセンター《管制室》、離陸許可OK、前方を注意の元出航されたし。」


「コントロールセンター《管制室》、クリアランス・デリバリー、[フライト番号AF2718B]クリアランスをリクエスト。」


「[フライト番号AF2718B]、指定ルートの確認了解。オールクリア。出発手順に従い。発進してください。」


「微速前進、準備完了。」


「《R.I.P》三番滑走路に入り、微速前進、開始してください。」


旗艦である《R.I.P》を先頭に、次々と格納デッキから離れ、背面のスラスターを点火、

ジェネレーターから転化されるエネルギーを放出して、微速前進の儘、コロニー内部の

宇宙港から出発する。


格納デッキから、宇宙港の出入り口まで数キロ、その間、焦らず騒がず、そのまま進み、


「コントロールタワー《管制室》こちら《R.I.P》[フライト番号AF2718B]、滑走路上にラインアップ完了」


「[フライト番号AF2718B]、エアロック解放。出向されたし。」


エアロックが解放されると同時に、微速前進のままエアポートの開口部を通り抜け、船は進んでいく。


「コントロールセンター《管制室》から各機へ、良き旅路に向かうことを祈らん。ボン・ヴォヤージュ (Bon voyage)」


同じく、各船舶が別々の港から時間差で、次々と出航を果たすべく慢心せずとも邁進する。


アイジェスは、純粋な戦闘要員でないため、調査艦エンゼルフィッシュに乗り込み、其の際に一つ注文をつける。

その要望に、なぜ其れが必要かについての回答には、決められた積載量には限りが有るため、問題になったが…何かに気づいたコーディー上級技官が二つ返事で、


その要望を押し通した。


時間ギリギリまで、搬入作業が続き、その要望取りの全て通りの搬入作業が完了すると。

大幅に船体重量をました《エンゼルフィッシュ》がのそりのそりと、船団の最後尾に追従していく。


向かう先はL2宙域にある。連絡の途絶えたコロニー、アイリス。


使用する航路は、燃料の消費を考えずの直線航路、途中、月基地への補給も考慮し、帰還時には、地球の重力を利用したスイングバイでの帰還を選択する予定だが、帰還時の状況次第で、予定の変更も考慮する。


片道であれば、約1億5000万キロメートル前後のその道程を数日程度の時間で走破する。


本来であれば、推進剤の消費を抑える為に、迂回航路での天体の重力を使用してのスイングバイを駆使しての航路を選択するが、其の場合経過する時間が大幅に増える。


その為、直接航路を選択する事により、迂回路で進むよりも一ヶ月以上の時間短縮を行える。


迅速かつ、効率を重視したその一手で、進む先には、敵機との遭遇を想定し、偵察を兼ねた掃海任務を行うL5からL2へ向かう途中の宙域に点在する、本来の航路から外れた直線航路で、目的地であるL2では恐らく近くのラグランジュポイントのコロニーや月基地からも調査隊が出ているはずだが其の全てと通信が途絶。


警戒するには越したことは無い。


念の為、周辺の暗礁宙域の隕石郡に混じって、風船と金属反応を与えるための甲板を貼り付けたダミー隕石を放出。


船体を隠しながらしずしずと、静音航行を行いながら進む。


母艦達に先行して、周辺宙域に、展開した僚機達は、

ビーム兵器以外の兵装を備えたディエム3機と通常装備型と狙撃タイプのディエム9機に+アルファのアイジェスの機体を合わせた計13機で構成される哨戒部隊を展開。


それぞれ三隊に別れ、実弾兵器を装備した機体を隊長機とし、


うち一隊のイゴール率いるディエム隊にアイジェス乗機が加わる。


アイジェス機は、未だその運転技術に不安が残るため、

装備を左手に装備した弓状のベアリング射出機以外には、バルカン砲を撃ち出す


頭部の増加装甲、其れまで装甲が付けられて居なかった箇所に増加装甲を付け加え仮装甲代わりに設置、お情けで、推進機付きの脚部増加装甲に付随されたグレネードが付けられる。


「貴君は正式なパイロットと認定された訳では、無い。後衛に周り、味方機への誤射にのみ気をつけ、生還することだけ考えろ。」


可変式のメインスラスターとバーニアを吹かせながら、隊長機を中心に、楔形の陣形で周囲の掃海任務に当たる。


索敵には船籍のセンサーや目視類で、行えば良いかとも思われたが、

奴らは何故か、酷くセンサーやレーダーの網に掛かりにくい。ディエムも、レーダー波に捉えにくい形状をしてはいるが、それに輪をかけて奴らは其の姿を捉える事が出来ない。


まるで、おとぎ話に出てくる人攫いの人喰い鬼の様だと、嗤う。だが其の姿を馬鹿には出来ない。


コロニーでの襲撃も、一切警戒網に引っかからずに奇襲を仕掛けられた。

その為、訓練がてらの警戒に乗り出す。


其の頃、三方に別れた隊の機影を眺める一団の姿を、警戒する何者かの影が、迫る。


其の耳に、何かの唄声が、耳朶じだを躊躇せる。


「おいッ?!今の声を聴いたか?」


その声と同時に遠くで、何かが爆発する。閃耀の稲光が奔り、其れを察知した、アイジェスが、いち早く察知し、警告の声を上げる。


イゴールは、一体何事なのか?と、対物センサーを全開、望遠を最大にしたカメラが、確かに何かの閃光を其の目で確認する。あれは、確か第二隊が向かった、母艦の左舷斜め後ろ方向の僚機が居る方向だった。


僚機から、母艦へと通達。


「戦端が開かれた。戦場へと友軍機を送れ。」


其の通達を受け、母艦の含む船団三隻は、急制動を掛けて転進、第一戦速 (Combat Speed 1)へと、其の戦速を上げ、緊急配備を敷く、ハイマンの指揮の元、襲撃を受けた友軍機の救出へ向かい。


待機中の部隊を次々、「第四、第五部隊、出動」


格納庫から踏み出し、開放されたエアロックの開閉を行い、其れに伴い、発射カタパルトに


機体の脚部を固定。


オペレーターの離陸許可を受け、


「ハルズ=アルマイン出る。」「ブラストオフ(BLAST OFF)」


その声と同時に、加速する勢いのまま、滑走路を飛び出し、戦端が開かれた方向へ、次々と機体を射出して行く。


・・・


・・・


・・・


なんだ?これは?第二隊を率いる。リン=山崎は、突然の暴力の渦に巻き込まれ、


燦爛と輝く光の帯が次々と僚機を猟奇的なまでの暴力で引き裂き、撃沈していく。


「隊長、なんだあれ?ァ゙ッーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー誰だ俺のケツヲ刺しやがったのは?!」


次々と尻を押さえて、「どこのどいつだ?俺のケツヲ掘った奴は?!」と、喚きつつ、飛来する危険に、身を震わせながら。


「隊長、隊長、体調が悪いです!!!!」「オ”エァ~!!!」


吐瀉物を撒き散らすも、ノーマルスーツのヘルメット装備された吸引きが内容物を吸い込み、視界を確保する


周りの僚機達の様子を観察し、その危機に皮膚をひりつき、させながら叫ぶ。


「アーデルスワット機中破、中破。」


錯乱しながらもその手に持った獲物を操縦桿を操作して、目標が定まらぬ儘、宇宙に向かって撃ち合う。


死角から突如加えられた脅威に、リン=山崎は散開せずに互いの僚機を背中合わせにして、死角を作らないように、指示を出すが、


半狂乱のまま、一体一体、スラスターが灯る光を覗かせ暗闇に紛れる何者かの動きに翻弄される


撃ち出された閃光がそれらに到達することは無く、逆にディエムのその機体の武装を保持した腕部と左脚部が撃ち抜かれ、持っていたビームライフルは、宙に流れ周囲のデブリ帯に紛れて飛んでいった。


シールドを構え、飛来する。小口径の光の連撃を防ぎながら、周囲を見回すが


その放射される高熱に伴い電子殻チタン合金セラミック複合材を触れる端から溶解し、スラスターの内部に存在する推進剤に火を付けて、


爆発炎上、イゴール達の目にも見える様な光の瞬きを魅せ、其の緊迫する空気を隊の全員に知らせていく。


その攻撃は、まるでその機体に騎乗する。パイロット、つまりは人を殺さず無力化するように、次々と僚機の手足を奪い達磨状態にしていく。


リン=山崎が、指示した通り背中合わせの隊列を組もうとした時には、既に3機の僚機は、物言わぬ置物へと変わっていた。


死角から飛来する攻撃に対応するべく、目を皿の様に見回し、敵の姿を探す。

しかし其の目に写るは闇に紛れるなにかの影でしか無かった。周囲360度の別々の方向から別々に飛来する


燦爛と輝く光を、フットペダルを踏み込み、スラスターとバーニアの噴射により、ぎりぎりの射角を避け、


撃ち出された六方向からの狙撃の内、三射を回避、残りの二射の内、二射が、バックパックと、脚部に、直撃。


コックピット内部で、エアバックが起動、視界を塞ぎながら、衝撃を殺すも、其の一瞬で、


押し出されるように前へ飛び出した機体前面のコックピットに向かい。何者かが狙いを付けて燦爛と輝く光が撃ち出す様に瞬く。



すわ撃沈かと、見られた状況で


音もなく遥か、前方から放たれた。ボールベアリングの一射する一撃がその何者かに命中。くるくるとスラスターを拭き上げながら、姿勢制御を繰り返し元の機動に戻ろうとするが周囲に浮遊する暗闇に浮かぶ暗礁領域に存在する小惑星帯の一部と衝突し、爆発。


・・・


・・・


・・・


チッ、ここからじゃビームは減衰し、到達出来ない。実弾の誘導弾も射程外…だ。此の儘だと間に合わないと、観た。イゴールは、全隊に向かい全速力を指示するも


その指示を無視して一時停止する。


一機に向い、一瞬怒りを覚えたものの、戦場に臆したかと、仕方ないと、その場に残し僚機の救援に向かう。


脚を止めたアイジェスは、愛機の左腕に装備した大型の弓を展開し、右腕のマニュピレーターにより大きくその弓を引いて、弓の左右で廻る滑車がその威力を増幅させていく。


レール内部に装填されたボールベアリングの弾体を力の限りに、引き絞る。其の動きは、まるで、実際に人が弓を引くかのようになめらかに動き、狙い済ませた一撃が、赤い電光を閃かせながら飛来。


真空中の宇宙空間では一切の減衰を見せぬまま、先行する僚機の横を滑り、進んでいく。現在の時代で、実弾兵装が廃れた理由は、宇宙空間では、重力や小惑星等の障害物に


影響を与えられない限り、無限に進み続けるその直進運動は、多用した場合危険が生ずる為、故に、物理法則に即したその一射は、何の影響も無く


其処へといち早く到達する。


突如の援護射撃に、リン=山崎は、囲いを破って離脱。身動きの出来ない友軍機をそのままにするのに、一瞬躊躇するも、遠くから飛来する。謎の援護射撃に、味方機が接近してくる事を察知し、苦虫を噛み潰した表情のまま


残ったスラスターを点火、此の儘だと足手まといと見て、手持ちの火器を、目眩ましに使うように一斉発射、肩部に追加された、ロケット砲とミサイルを乱れ飛ばし、着弾を確認する間も無く戦場を離脱。


入れ替わるように、イゴール達の一隊が、戦場に躍り出る。


「援護感謝する。敵は何機存在するか分からない。注意されたし。」と告げられた短波式レーザー通信でのやり取りを不思議な面持ちでイゴールが答えるが、


脳裏に?援護だと?これからなんだが?と、頭に???を複数浮かべて、戦場に残る敵機の姿を探すが、物理センサーにも、目視にも其の姿が確認できない?


浮遊している機体と武装の残骸を他所に、周囲を警戒しながら、友軍機の無事を確認。


「各員、警戒。」


周囲を警戒して、四機の機体がそれぞれ周囲を警戒する密集隊形を維持したまま、

スラスター光と伴に飛来する。ビーム砲の一撃を装備したシールドで防ぎながら、応撃のビームライフルの


電光に照らされて、その威容が一瞬垣間見える。


それは、大小の球体状の躯体が、団子の串の様に一本のシャフトで接続され、中央部の一際大きな球体に、


なにかの突起が複数見え特記すべきその異様な威容が垣間見える。


「各自、目標を視認後、狙い撃て」


一体何に向かって撃てば?と疑問顔の部下たちに鼓舞し続け、


「撃てば良いんだ。奴を」と、真っ先に率先して、狙いを付けて、銃の引き金を引き、

照らし出された光の反射を利用して、其の動きを捕らえ、一斉に狙いを付けての射撃と号令が飛ぶ。


其のイゴールの指揮が、映えるも、スラスター光を放ちながら、展開される其れは、MSとは、その大きさを小さく纏められた目標には、命中できず、次第に端から、装甲を削られていく。


警戒を行う視界の180度を警戒する視覚の死角に滑り込むように入射角を調整しその直下からの

一撃が舞うなか、続く一射が放たれる瞬間に、無音の真空の中で、遠雷を纏った一射が重なるように飛来、撃ち落とされた子機に、その操縦者は、違和感を覚える。


狙撃手はどこだ?!そう思考する間にも4機の機体を囲むように展開された籠が、間を窄めるように


粒子砲の檻を形成しながら、迫る中、スラスターを吹かせながら猛スピードで、其の宇宙の色と見分けが付かないその武骨なフォルムの紺鼠(こんねず)色の機体が、弓を引き絞りながら突貫してくる。


その一射は、飛び回るその威容に続けざまに弓での斉射を繰り返す。

空気抵抗が無いために飛来し続けるその実体弾であるベアリング彈が、狙いを僅かに外れて、


暗礁宙域の小惑星郡に衝突、其の衝撃で岩盤が崩れ、粒子状の破片が舞い。

すわ、危険域がレッドゾーンを超えるかに思えたその時に、


それまで周囲を旋回していた


浮かぶ砲台状のなにかの動きが、緩慢に統制を取れないまま、明後日の方向へ飛んでいく。

イゴールは、自分たちの窮地に現れた、闖入者が、なにかを目撃する。


シュミレーションでは、連携すら取れなかった男とは打って変わって、正確な射撃を繰り返す其の姿を目撃して、違和感を感じつつも、


敵の狙いが自分たちから、目の前の僚機へと写るのを感じ取り、援護に回ろうとするのを叱咤する声が阻む。


背後から忍び寄るその奇妙な移動砲台の一撃をサッと背面飛びの要領で回避。続く追撃の一射と機体を捻り、制動を掛けながら脚部のグレネードを戦域に放出。


弓でのベアリングの連続射出により居抜き、その爆発に巻き込まれた、子機の一機が破損、其のコントロールを離れて、付近の小惑星帯に激突後、大破。


まるで、後ろに目がついているかの様に、回避するその挙動に、イゴールが目を回し、


アイジェスの愛機を狙って飛来する子機の一つに向かい、援護射撃を開始するも、其の狙いは定まらず当たらない。


ディエムの対物センサーでは捉えられないその機影に、アイジェスは、愛機に搭載されている。センサーでマーキングを施し戦術データーリンクにて、その位置を知らせながら、自らは、敵の砲台の真っ只中に躍り出る。


更には敵機の狙いを自分に集中させ。スラスターを吹かせながら、鼻唄混じりで360度、から縦横無尽に飛来する光の射出光を回避し続ける。


ベアリングの弾帯を、左の弓で構え、そして右腕を引き絞りながら、一射を繰り出し撃ち落としていく。


続くイゴール機の狙い済ませたかのように射抜くビームライフルの一撃が、加速する粒子の一撃を終止一貫、其の存在を忘れるべからずと、主張するかのように、敵機の背面から射抜き撃墜させる。


何故、彼らの意識の外から、まるで宙を泳ぐように。其れまで自分たちが其の動きすら察知することも出来ずにいたその謎の攻撃に対し、見事に対応し、更には、こちらの動きすらサポートする其の動きに、シュミレーションとは全く違う機動と違和感を感じる


そして通信から聞こえるのは、昔、懐かしい軽快な詩がその歌詞と伴に、場の緊迫感と危機感を壊していく。歌詞付きのその曲のリズムに乗って、星屑にすら慣れぬ己を鼓舞する様に唄う歌に合わせ、急制動を掛けつつターンを決め、宙を反転したままの状況で、


また、子機の一機を撃墜する。


襲撃者は、自らが遠く離れた場所から操作する親機4機もそれぞれ付随する4×4の子機16機の内既に4機が撃ち落とされ


残りは親機4機に子機が8機、それでもオールレンジ攻撃は健在なものの、何故か狙っても当たらず

そして回避しながらも的確に攻撃を当て来るその存在に、


忌々しくも攻撃を集中させるが、また一機撃墜される。


その状況の業を煮やし、業深き手を打つ。


それは、四肢をもいだ機体に向かい、狙いを付けて一斉攻撃を行う。

鹵獲し、再利用するべく残していたが…。其れよりも眼の前の脅威の排除を優先する。


それは旧態依然のスナイパーがよく使う作戦ではあったが、其の事を知ってか知らずか其の存在は、

そう自分を納得するべく心のなかで呟き、同時に3機の無防備なコックピット目掛けて放たれた一撃は、狙い能わず。


その口径は小さいもののその威力から鮮烈な光景を演出する光の帯を射出し、

命中すればその高熱の弾体により、その装甲を溶かし、溶解し、撃墜するには足る威力を見せるも


肩部からマニュピレーターを展開しが盾が代わりのアーマーを前面に展開し、同時に鹵獲した、ビーム偏光機を機動、盾に命中したその一撃を防ぎながらその相手の姿を探す


何発かの火線が、左手に持った弓の一部を其の高熱で、溶かし、破損させる。

元々、弦の張力を利用しただけの武装で誘爆する危険性がないものの、唯一とも言えるメインの射撃武装を喪い。


残る武装は増加装甲のバルカンと、脚部の数発のグレネードに、多目的溶断ビームナイフのみ

舌打ち一つくれて、己の振りを噛みしめる。其処にシールドを構えながら、其れまで別の子機を相手どっていたイゴール機及び其の僚機、都合4機のディエムが、動けなくなった僚機3機を庇うように盾を構えて、陣形を整える。


「アイジェス良くやった。武装を喪ったら戦闘継続は難しい。敵の位置だけ教えて退避してろ」


其処に浮遊していた大破させられたディエムのビームライフルを掴むと。破損した弓を破棄し

「良い案がある。少しの間で良い敵機の相手を任せても良いか?」と、告げると、


盾で、飛来する攻撃を防ぎならが、次々と、現場に残された獲物を展開させたマニュピレーターを駆使して回収し、其の改修を開始する。


集めるは、都合、予備も含めた4丁のビームライフルと、狙撃用の大型ビームライフル

周囲に浮遊する端材と伴に回収したそれらを小惑星帯の影に隠れつつ、次の作業に取り掛かる


それまで、猛攻をしていた浮遊する砲台を操りやりたい放題を行っていた敵機は、

厄介な目標の獲物を破壊させ、確かな勝利を感じ取りながらも、


視界から逃げるように消え去ったその機体を目で置いながらも、未だ奮戦し、子機を撃墜させる

小隊に狙いを変え、動けぬ相手の僚機を餌に、徐々に攻勢を強めていく。


小惑星帯の影で作業を行うアイジェスは、頭の中で組み立てたモノをぶっつけ本番で実戦投入する。

それは、至極単純でかつ、嘗て西洋の中世に同じ形の別のコンセプトの兵器が存在したことは、


想像に固くもないが、其の存在は知っていた。


狙撃ライフルを背骨とし、其の左右に2丁ずつのビームライフルを並べて繋げ、武装の戦術リンクにより、引き金を一つ引くだけで

都合5条のビームが、一度に発射されるだけのそれを手に、戦場へと舞い戻る。


イゴール隊の4機は、僚機の見捨ててくださいとの言葉を無視して、斜め、左右、上下と


放ちながら向かってくる子機達の攻撃を構えたシールドで防御し、撃ち返すも

其の防御の間を縫って攻撃が繰り返される。


身動きの出来ない僚機のコックピットに向かい狙い済ませ頑強である装甲を焼き潰しながら熱する其の一撃をイゴールは、とっさに操縦桿を倒して、機体の右腕を差し出し、防御。


徐々に溶け潰すその光が取りすぎる前に、シールドを持った手で其の影に戻し、返す刀で

肩部の追加装甲のマウントラッチから放出された、3基のミサイルを放出、


散開する散弾を三回、放出。180度全方位に放出される三段の式のその弾で、子機の2機を撃墜するも、戦術リンクにより情報共有されたセンサーのマーキングで示された敵機の姿は、親機4、子機5


窮地である事は、変わらず。叫ぶ僚機達の声に耳を傾けながらも、頭部バルカンでの迎撃を選択する。


「いいから、黙ってろ」と、声を上げて迎撃しつつ。窮地を脱するべく奮戦するも、其の狙いは、

外れる。直上に移動した子機が死線の雨を降らせあわや撃墜となった瞬間。


その時に棚引く五条の閃光が奔り、一度に五連装のその獲物が吠える。


狙いを適当に付けたその一撃が、回避するように動く、子機の一体を打ち抜き誘爆。


「イゴール大尉、僚機を連れて退避しろ。ここは俺がッ!!!」


メインスラスターを吹かせながら、戦場を横断し、遠隔砲台のやりたい放題のその姿を

阻止するべくバーニアの角度調整し、宙返りをしながら、背後から迫る一撃を回避し、


反転しながらの一射により、一機撃墜。


その不機嫌な思考の一端が、何故かその唄声と一緒に、耳朶じだに届く


首を回して、メインカメラが指し示す方向へ向け、


親機からの長大な光の帯が放たれるのを肩部のアームを展開し、ビーム偏向器を展開


無効化すると、何を思ったのか親機から更に漏斗状の機動兵器を展開、其れを、頭部を回して増加装甲のバルカン砲を乱れ打ち


通常弾4発に対して、一発、発光する弾体を投射する曳光弾えいこうだんを棚引くように放ち、迎撃するも、左右を流れるように撃ち続けるも、まるでこちらの思考を読むかの様に回避


チッっと舌打ち一つくれて、多連装のビームライフルを向けての迎撃に移るが、その超高速で突き進んでくるそれの迎撃に間に合わない。


肩部のシールドを構え、全力防御。


相手のビーム兵器に併せて、偏向器を全力で展開するも、次の瞬間に起きた特大の衝撃は、


炸裂炸薬の爆裂。


衝撃に併せてコックピット内で、エアバックが発動。振り回される機体を立て直しながら、


マーキングした対象の残りの数は親機4機、子機3機だが、親機から更に子機が放たれ続ける


その数20機。


一気にその数を増やした、弾の雨に、万事休す。盾が持たない。


その頃、撤退する4機の小隊を率いるイゴールに、アンザスは、


「隊長、援護に向かわせてください。」


短く、言葉を吐き、その提案を破棄しようとするが、ややあって、


「行けッ」


「アンザス=フライ・ハイっいっきまーす!!!!」


背部スラスターと脚部のバーニアーを全開に開き、意気揚々と戦場へと舞い戻る。一機が戦局を変えるべく奮戦しようと向かい


その全面に広がる絶望を見る。多数の乱れ飛ぶ子機らしき弾体が、視界を塞がんばかりに展開され。


「あっ死んだ…?!?!」


とっさに、ビッグマザーの名を叫びながら、大きなベイビーを孕まず産まなかった自分を褒めてやりたかった。難産です。


爆炎を撒き散らし光を上げて、爆裂する閃光が放たれる


「アンザぁッスぅぅぅぅぅー?!」


火薬によって射出された《スプーマ》を確認。視界の端に捉えつつ、数基の弾体が、命中、白煙を上げながら、増加装甲が、崩れ落ちる。


アイジェスは愛機を駆り、射線の途切れた隙を縫って、盾を前面に展開し、一番弾幕が薄い

箇所を抜けて、その子機と親機の動きから、中継しているはずの親機を潰せば、


この攻撃の雨も止むのだろう?と当たりをつけて、


都合6本のマニュピレーターを展開、差し伸ばしたその手から、スラスターらしき、火の瞬きが見えるとその縦横無尽に可変する手足を器用に使い、飛来する弾体が命中する瞬間に


急制動を掛けて、並み居る小惑星帯の岩石を其の脚部で蹴って加速と方向転換を繰り返し回避、回避、回避。


頭部から放たれるバルカン砲の速射が一基のミサイルを撃ち落とし、弾切れを起こし、デットウェイトとなったそれをパージ、推進剤切れを起こした、増加装甲も残るグレネードを一緒にと投射し、炸裂する散弾の雨により、数発を巻き込み誘爆。


回転するように、右へ左へ、上下左右、まるで重力を感じさせないサーカスの道化の様に舞い踊り、相手の正面から、逆さに成りながら向かってくるその姿を、アンザスは、眺め、


何かを思い出す。


それは十年近い前の事、自分がまだ学生時分の時の話である。


とある宙域で起きたテロ事件において、偶々居合わせて居たであろう、何に者かは、

並み居る敵機に逆立ちしながら向かい。


その異常な変態機動を見せた赤黒いフレームの機体は、多数あるアームを使いこなし、張られた弾幕の雨を回避し、無手での攻撃手段しか持ち合わせなかったその機体は、


鬼の形相を見せて瞬く間に鎮圧、その姿は子供ながらに鮮烈に残っていた。


・・・


あれはきっと…。


時間は、暫し戻る。


眼の前に移る、兵器の雨が、思考誘導による、誘導兵器で有ることは、アイジェスは知らない。知っていることは、唯一つ、避けても妨害電波で有視界戦闘を強制される状況においても、その攻撃は追尾してくる。短距離誘導の訳でもなく、まるでこちらの動きを先読みするように


向かってくる。


それでも打開点が無いわけではない。問題は…その姿を見せるリスクのみ、しかし、目の前で多数の弾体に襲われ四散する友軍機を視て、その迷いが消え去る。


「エンコード、《バラッド・オブ・ザ・デスペラード》」


音声認識による識別により、使用者権限を確認。


コックピット内部では、身体の各部を飛び出したアームや、拘束具により、パイロットの手足を固定、円筒状に包み込むのと同時に、


機体の外部のバイザーや各種部位内蔵されるロックボルトが解放。


長方形のバイザーが上に上がり、それまで隠れていたはずのツインアイが露出。


鬼の角の様に伸びバイザーから突き出されたそのアンテナの一部が枝葉となって発光しながら、その威容を魅せる。


そして、覗く、線型は鋭く無骨で且つシャープな主顔(おもがお)の景観から分解解放を繰り返すその面差しは、まるで牙剥く鬼の口腔を覗かせ、最後に後頭部から、一本のブレードアンテナが迫り出して、三本ツノとなり、


其れまで、マニュピレーターと思われていた。肩、腕、脚、背面にそれぞれ設置されている。


隠し腕の内、腕部と肩部のマニュピレータと、バックパックの背面全体に刻まれる、其れまで隠れいてたツインアイの鬼の形相の面が顕れ、


そして、2本の腕と脚部には基部に隠れた鬼が踊り、腕部のマニュピレータが可変したアームカバーと、独立機構のレッグーカバーとなるその機構にも鬼の面が顕われる。


都合、八つの顔と、六本の腕、偽装されていてそれらが開放され、異形へと変形・変身、いや、変態する。


何かを語るように其の不思議な表情を垣間見せるその機体は、八面六臂の修羅と為らん。


喩え、戦場の鬼と蔑まされようとも俺は逝く。…


名も無い老人に、この機体を渡されたその時と同じ言葉が脳裏に過る


「この罪深き、火の元も早晩、尽きる。明日この場所に、また来い。お前に、唯一無二の力を与えよう。」


「その時、貴様は自らの命運の行末を知るだろう。」


「戦え、戦え、戦え、抗い、争い、この世のあらゆる理不尽と戦え、其処にしか、貴様の生きる路はない。」


「全ては…〇〇の為に…◯すべき命運を超えて、其の手で掴め、今のままでは唯のモルモットにすぎない。」


「お前の後に続くものなど無い。唯己のみを信じ、そして全ての悪辣なる欺瞞に其の爪と牙立てろ。」


「折れた牙を継ぎ接ぎし、それでも前へとすゝめ。」


「儂が与えられるのは…。だけだ…」


確かに、此の機体に固定武装は存在しない。それは本来の使用用途から逸脱しないであればだが…。

展開されるマニピュレーターと鬼の面から展開される。灯を秘するなく、開示し、告げるは、無常の焔。研磨用の腕部から迫り上がった爪を備えた手のひらが展開。


その各種八面六臂の面の口腔からと腕部の手の平から吹き出す焔をスラスター代わりに点火。


上下左右の違うもなく跳ねるように宙域を駆け巡り、相手から見て、逆向きの起立し、規律を破るよかの変態軌道を描きながら、誘導体の漏斗型のミサイルと次々と躱し、その手のひらから放出する灯を


叩きつけ、直撃する直前で、破壊。


赤黒い機体色から漏れる赫の稲光を纏い次々と、撃沈していくその姿を視て、


《スプーマ》に包まれた。アンザス=フライ・ハイ…思い出し、呟く


「あれは…。」


窮地の中の小休死に、その姿を観た男は、何を語るのか?


殺戮の7日間と揶揄される。その事件が起きた場所で、突如現れた機体。


軍内部での呼称は、「ボギー1」突如戦場に顕れ、其の蜂起の7日目に顕われると、


その手と牙で、ジェネレーター部分を抉り取り、無力化し、休むこと無く狩り続け、瞬く間に

敵味方区別なく、沈黙させ去っていた、謎の機体の姿が現出していた。


その手から放たれる。衝撃波を撒き散らす閃光により次々と撃ち落とされていく、親機と子機が追い立てられるように、転進し、逃げ惑うそれらに向かい視線を向けると。


浮遊する残骸から、ビームサーベルを拾い上げ掴み、くるりと機体頭部の鬼の口の前に置くと、その光のビームを前方に展開し狙い済ませた其の砲口に備え付け、電磁加速を開始。


加圧され、光り輝き擬似的に形成された電磁誘導のバレルが、音の伝わらぬ闇の宇宙(そら)で瞬光、瞬く間に撃発と伴に発射。


白と黒の光の影を残して彼我の距離を一瞬で0として、退避中の親機を貫き、撃沈する。その光景を目にして、自らの手足の半数以上が喪われた事に驚愕する何者かは、一言。


「撤退だ。」


脳裏に過る警戒色を滲ませ、


そう告げる後姿を目撃すること無く、物語は終わり、そして続く。


更新時期は、毎月、月末最終週の火曜日に二話更新を予定していましたが、月末日に変更します。

よく考えたら準備期間が一か月未満は無理だった。申し訳ない。

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