第十九話「辿る旅路」
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※イメージソング
PENGUIN RESEARCH「Fire and Fear」Music Video(TVアニメ『杖と剣のウィストリア』オープニング主題歌)
https://youtu.be/-ly2itFTLfQ?si=SlyYq0o37-vDM9Hf
PENGUIN RESEARCH 『敗北の少年』
https://youtu.be/dsuJEe5R1ig?si=b7qUrZCMeVnNhC9t
Nevereverland / ナノ Music Video
https://youtu.be/Hx_nMs-sjZg?si=dMq9Zf-3zoxPZZvA
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ウィンディゴ部隊の追及を逃れるべくコロニーを旅立ち、一路、一行が、一考し向かった先は...同じく、月
亡き母の詩を求める逃避行の中、
しかし、事態は混迷を極め、震える星の宙で、星の瞬きにも似た無数の機体が中空を舞う。
王冠を頂く、その機体と対峙するは、いつかの宙の元で、遭遇した。
合わせ鏡の如く、同じ状況で、遭遇する。
月の都市...
...
...
...
「クソッなんで、突然、こんな状況になってんだよッ!!!!!!」
(俺は唯、母さんの詩を聴きたかっただけなのに...)
月面で知った事実に対して、悪態を吐く春幸は、動揺したまま、戦闘へと入る。
次々と、復興した月面都市から湧き出る。
蛆虫どもへと、《セカンドアーヴル》その銃口を構え、そして吠える。
「なんで、なんでなんだよッ!!!!!お前らそれでも人間かよ。」
春幸は、はじめて経験する大規模戦闘で、且つての自分の言が、いかに幼い夢想の果ての無理難題で有ったかを知る。
親父は...この状況で...最後まで諦めなかったのか?
あの時、どんな気持ちで、あの引鉄を引いたんだ...。
その答えは出ないまま、時系列は巻き戻る。
...
...
...
「袖無し」が暗躍する最中、崩壊までのカウントダウンへと踏み出したヴァルハルに異変が起こる。
コロニー内部での、異変を感じ、自宅に舞い戻ってきた《アンザス=フライハイ》は、
家族と保護したユミナリア達を、自宅の地下にあるシェルターへと非難させ、
不安そうにこちらを見る息子と託された少女を見下ろし、
「大丈夫でござる。」と、言葉を漏らす。
きゃっきゃと喜ぶ、やや色黒の表情の息子のハンザスは、もろだしになった男尻をリズミカルに叩きだし、ボイスカーパッションを奏で始める。
おじいさんは、お嫁さんに、ドーナッツの催促をする。
取り置きしていた山盛のドーナッツを皿に載せて、
「ゆっくり食べるんですよ~おじいさん。ご飯はさっき食べましたからね?」と優しく差し出し、
パタパタと手足をバタつかせながら、旨そうに頬張るおじいさんに、
そーっとハンザス君が、手を伸ばすが、ぴしゃりとその手でシャットアウトする・
皿を抱えて一人、黙々とたぶる。おじいさんとハンザス君の攻防は始まる。
左右にウェービングを繰り返し、奪い合う、血で血を洗う攻防が繰り返され、
最後のドーナッツの頬張り、ハンザス君は、床に膝と手をついて項垂れる。
そして、そろそろかな?と、徐に出した男尻と一筆書きで描かれた横断幕を翻し、
「貴方、そろそろよ。」
「えっそろそろって?」とユミナリアは疑問顔のまま、その行為を目撃する。
唐突に、アンザスが、モロ出しの男尻を振り乱し、書斎の一角の壁を反転させると、露出したコンソールに、鎮座する誤操作防止用のカバーが備えられ、緊急時のボタンに尻を添えて、意を決して、その臀部で、その人生を謳歌するが如く、ボタンを押下する。
基部の一部を剥落し、保有する大気や水を吐き出しながら、徐々に崩れ行くその姿が
一瞬で白い泡の様な物に包まれる。
それはコロニー外壁部と中央の基部より放出される。大型のスプーマ、
何を思ってその機構が備えられたのかは不明だが、覆う泡は、破損した孔を埋めて。
空気と水の流出を止める。
「これで...応急措置は出来るでござるが...」
「はぃ、これ、替えの褌よ。」と手渡されたそれを掴むと、隠し扉から繋がる通路をひたすら進み。
そして、下へ下へと進んでいく臀部の後姿を眺め、ユミナリアは思う。
何故?ふんどし????
そこにあったのは、白銀の輝きを誇る。その姿...
…
…
…
「春幸に、アンザスの奴め、やってくれたな...」
これで、暫くの間猶予が出来る今のうちに修復作業に入る必要があるな...
徐に取り出した。補修用のビームバーナーを手に《ヴェリタス》を駆るアイジェスは、漸く出撃してきたコロニーの防衛隊の面々に、状況説明を行い
そして自らも補修作業に入る。
「やった...なんとかできた...」言葉を漏らした春幸は、ふと視線を泳がせると、
コロコロとした、飴を舐めつつ不思議そうにエメラルドのその瞳でこちらを見上げてくる。《アイ=フライヤ―》の姿を視認しする。
「ダメ...ママがチカクニ、キてヰる。コノママダト…アイツラにミツカル」
ん?その言葉の意味は未だ分からないが、途切れ途切れの言葉に、
何かの危機感を感じる。
そうか...この娘の母親が、ウィンディゴ部隊の手に堕ちて居て、何故か?アイの居場所が、分かってしまうと言う事なのか??
少ない言語の情報から、隠された意図を読み解き、状況を把握する。
うーん、これは一度、青葉ねぇちゃんに相談するしかないな?
だが、且つて、自分もあの戦役で同じ様な感覚を感じた事がある。
ならば、このままこの娘を連れたままコロニーに留まるには。危険だ。
今はウィンディゴ部隊の戦力は大きく削られているが、暫くすれば、戦力の補充が
果たされるだろう...
こちらもコロニーの補修作業に手間を取られてはいるが、今フリーなのは僕だけだ。
なら、このままウィンディゴ部隊が駐留する宇宙基地へ奇襲をかけるべきか?と
思い悩む
…
…
…
「これは一体どういうことですか?!!!!」
このコロニーを管理を引き受ける公団公社のトップである
居住ヰ(いずまい)=忠司は、自らが管理するコロニーの自治権を主張し、
突如始まったウィンディゴ部隊の急襲に、抗議の声を上げる。
「えっあの白と黒の機体はなんだ?ですと?私も知りませんよ。アレは我がコロニーのデーターベース上にも存在しないのですから!!」
「...」
「この件に関しては厳重に抗議させていただく、我がコロニーは、この度の軍事的進行に対して、深刻な懸念を示し、即時停戦を求めます!!!!!」
「...」
「ええ、そうですとも!!!」
「...」
「ん?軍事秘密だから詳細は言えないが、実験体を強奪した者が、我がコロニーに居ると?」
「...そんな訳は...」
「証拠はある?ですと...。」
...
やれやれ問題毎が山積している。市長は、部下が執務室へと入室すると、状況説明と訪問者の来訪を告げる
複数のコロニーを跨り、軍事産業を統括するアストライア社の一角を誇る代表者の名代として
《エクィタス=ユースティティア》は、その場に居た。
「市長...凡その状況は掴んでいます。交渉を有利にする為の材料は、既に、用意しています。」
「それには市長の協力が必要です。」
「争いがおこるのは、原因となる存在がこのコロニーの宙域に存在しているからです。ならば出て言って貰えば良いのです。」
「それならウィンディゴ部隊に引き渡せば...」
「そんなことをしたら、実験体を奪ったことを自ら認める様なもの、口封じにコロニー事焼却されるのが、関の山ですよ。」
「つきましては相談があります...。」
...
...
...
「おうっ、話はついたのか?いつも俺を蚊帳の外にしやがって、怖気ずくとでも思ったのかよ。俺もやるぜ?」
立ち並ぶ柵に体重をかけて足を組んで待ち構えていた《玻座真=外崎》は、戻ってきた《エクィタス=ユースティティア》に対して話しかける。
「やぁ君も来たのかね。」
「まぁな、そういえばユズリハの奴が居なくなっちまって、寂しくなっちまったが、何か知らないか?」
さぁ?ねとポーズを決めて、肩をすくめて両手を広げると、まるで何も知らないかのように答える。
傍に佇む、《領五=羽住》は、おろおろと行ったり来たり、狼狽えるも、
「さぁ、話はついたよ。我が懐かしき古巣より、旅立つ準備は出来ているよ。」
「乗組員も船も既にある。あとは僕らの到着を待つばかりだよ。」
「なぁ?途中で春幸を回収するとして、ユミナリアはどうする?」
「連絡したら、アンザスさんの家に居るらしい。合流して向かおう。」
...
...
...
「隊長、なんで、コロニーを狙撃なんてしたんですか????!あれじゃぁ、無関係な一般人が巻き込まれるじゃないですか?」
「お前は何もわかっていない。アレは、貴重な実験体なんだ。それこそ全ての根幹を揺るがす程のな。」
(…一体何の事?資料で見たけど、年端も行かない少女で、特に特質するような特徴も、ちょっとかわいいぐらいしかないのに???)
(あと、戦闘中の会話で、あの子の母親が、詩の歌い手だって言ってた、一体誰?なの?)
(もうちょっとお話したかったなぁ。)
もさもさとバナナを頬張り食べ終えたバナナの皮を放棄する。ハルナ=山崎に対して、メカニックの面々が抗議の声をあげる。
「おいあんた、なんでバナナの皮を其処ら辺...」
台詞を言い終える前に、クルリと踏み外した勢いのまま、回転し、顔から強打し、ノーマルスーツのメットに罅が入る。
周囲には、バナナの皮を踏んで、転がる。メカニックが多数現れ、阿鼻叫喚の地獄絵図が繰り広げられる。
うーん、なんか殺伐としとるなぁ。我関せずと、ぱくっっひょいっぽぃ。何の呵責もなく繰り広げられるバナナの皮の投擲が、また一人と犠牲者を作り出していく。
「おいッバナナの皮を其処ら辺に投げるなッ!!!」
怒号を上げて吠えるメカニックが一歩踏み出した瞬間、皮を踏んで引っ繰り蛙る。
「MSはパイロット一人だけでうごかすもんじゃないんだぞ?整備する俺達と動かすパイロットが協力しなけりゃ成立せんぞ?!」
「その身一つだけで自立稼働するワンオフ機以外はな?」
ふーんそうなんだ、でも噂のワンオフ機だって別に一人だけじゃ動かせないような?っぽい。
投げ捨てるバナナの皮で視界を防がれた作業員が盛大にコケル。
ヘミングウェイが奏でる詩を潰れた蛙の様に絞り出す様を眺めながら、思考の海に耽溺する。
(あー早くまた彼に合えないかな?もっと詳しい事情を知りたいなぁ...)
現状のウェンディゴ部隊で稼働可能な戦力は、新機体披露用の一機に、複数のアタッチメントを有する《ブレイズ=ガルヴ・ディム》の中隊と
戦火を逃れて補修中の中破した《アイン・アングリフ》に《アド・アストラ》を残し、後は、整備の進捗状況を見守るのみ、
其れを見守るヴァルク・チラヴェクのノーマルスーツの袖は片側を大きくもぎ取られ、強靭な前腕二頭筋が顕わになる。
んーあれってさぁ、ノーマルスーツの意味あるの?なんでも《袖無し》はみんな着用する衣服全ての袖をもぎ取ってるらしいけど、意味があるのか?謎ではある。
まぁ緊急用のスプーマがあるから問題ないとは言え、何故?の一文字が浮かぶ、なんでも過去の有名なパイロットの服装を真似ているらしいけれども、
恐らくパイロットスーツに関しては、其処迄はしてい無いはずだが、その袖は無惨に引きちぎられて居たままであった。
・・・
・・・
・・・
その頃修復作業に掛かりきっていた、アイジェスは何度目かの推進剤と燃料の補給の為の往復を繰り返す。
最中に、何かの違和感を感じヴェリタスの機体に追加の増槽とブースターの追加と共に、
背面ラックへ、大型のリボルバー型のハンドカノンとそれに装填する為の展開型のスピードローラーと各種弾倉を補充し
来るべき時に備える。
そう言う事か?と、懐かしき友人との会話を弾ませ、その途中で、青葉=穣に、旅立つ子供たちの未来を託す。
対する春幸は...《セカンドアーヴル》を高速フライトモードへと変形させると、
L4宙域の外れにある。かつての古戦場跡である小惑星帯...ウィンディゴ部隊が駐留する宇宙基地の存在する空域へと転身する。
加速し流れる星の風景に身を躍らせながら、突き進む春幸の元に、長距離レーザー通信用の光が、瞬く...
ん?通信?高速移動しているのに、なんで補足できるんだ?そんな事が出来る奴がいるとすれば...親父か?
「長距離通信は傍受される恐れがある。黙って聞け、事情は、大体の話は友人たちから聞いた。お前はその子を連れて、みんなと一緒にコロニーを離れろ。」
「その間、俺たちは、仲間を集めて連携して、どうにか対抗策を考える。最終合流地点は姉さんに聞け。」
「あとの事は、良く昔遊んだ遊び場で、合流だ。後の事は、俺達に任せろ。」
微妙に音声を変えているがその口調は。親父だ。
遊び場、仕事の手伝いがてらに、そう呼んでいた場所は、俺達家族しか知らない、であれば。
返答用の長距離レーザーをモールス信号で了解を表す様に瞬き返し、更に告げる。
ただ、それは奴らに一泡吹かせたあとだ...
-・/-・/・・/・-・-・-/---・/---/-・・・/・--/・--・/・・・/-・-・/--・・-/・・-・・/--・--/-・-/--・・/・-・・/・---・/-・/--・--/・・-・・/-・/・・/
満足した様に。翼を振って転進する姿を確認し、やれやれと、息を吐く。
通信を傍受していた、ウィンディゴ部隊が駐留する宇宙基地では、詳細は分からないものの、敵影の接近を察知し、慌ただしく動く
《ハルズ=アルマイン》より現場を任された。《コリストス=メギトス》は、指示を出しながら、自らは、新型に乗り込み
新型機の操縦桿を握りその感触を確かめる。
《マレディクト》と、自らが所属する組織と同じ名前を冠するその機体は、四本の腕を保持しつつ、背面部にテールユニットが備わる。
それは《ハルズ=アルマイン》や《アハト=佐伯》が、且つて駆っていた。
異形の進化を遂げたディエムペルディディの機体を更に洗練し、規格化したモノとなる。
機体半分に分かれて塗装される藍と白の互い違いのブロックが彩を魅せ、その威容を見せつける。
「出せる機体は全部出すな(出せッ)!!!」
引き千切られた袖をそのままに、酷い生傷に晒され、頭皮の一部や、顔の一部がケロイド状の皮膚で引きつらせ、
手足の一部を義手や、義足で補ったその男は、意を決して飛び出していく。
「《マレディクト・レフトガンズ》、コリストス=メギトス出ないぞ(出るぞ)!!!」
相変わらず准将達の言っていることは分からんが。後に続くべく、中隊規模の《ブレイズ=ガルヴ・ディム》と、補修が完了した《アイン・アングリフ》と《アド・アストラ》の4機編隊が
次々と電磁加速のカタパルトから射出されていく。
最後尾から飛び出していく《ブレイズ=ガルヴ・ディム》の数機が、直上よりの急降下から繰り出される機銃掃射に巻き込まれ
甲板上で、炎の華を華々しく散らし、その袖口を引きちぎる間もなく、散りじりに果てていく。
その余波を受けて上下二対のカタパルト備えた巡洋艦が、爆炎に巻き込まれその船体を大きく曲げて、轟沈
「対空警戒、なにやってんの?!弾幕を張れ、機銃砲座開け、ミサイル、主砲。他の艦船と連携して撃てッ!!!」
思い出したかのように機銃と、パラパラと散発的に降り注ぐ弾幕の波状攻撃を...
その動き、その射線は、且つて見た激戦とは程遠い練度であり、何するモノかと?位相空間固定アンカーを使用するまでもなく、
ただ単純な各種推進器を駆使する軌道により難なく回避し続ける。
はたりと思い出したかのように、やってみるか?と、位相空間固定アンカーのトリガーに指を掛け、
一番を射出、右腕から放たれるそれが、敵艦船へと射出されるとその張力に引っ張られる様に、急襲軌道を取り擦れ違いざまに、
龍牙連爪を起動、大きく伸びる咢から、射出される熱分解の炎が、巨大な斬艦刀となって、敵艦船の艦橋ごと、融解、分解現象を生じさせ
何の抵抗も見せる間もなく轟沈し、その狙っていた主砲の一撃が、空域で待機していた友軍機の船体へと流れ、
誤射による更なる被害を拡大していく。
「《自信家》コンフィデンス04...目標の脚が早すぎるッ!!!射線で目標の動きを制限して、追い込む。准将の子飼いたる袖無しの実力見せて頂こう」
「ははッ了解だとも、奴の味はどんな味なのか?見せないでもらうぞ(見せてもらうぞ)」
近距離通信での会話を傍受した春幸は...
「その声、其のコールサイン、コリストス=メギトスさんか?なんで?貴方が居るのにコロニーを襲撃したんだッ!!そんなにこの娘が必要なのか?」
ん?なぜだ。私の本名を知っている?その声には聞き覚えがないのだが?
「貴様こそ何者だ?なぜ私の名前を知っている?!」
「そもそもなんで、クピドレスを実際に撃退したのが、おっさんじゃなくて、ハルズ=アルマインたちあんたらの手柄になってんだよ。」
「あんたらなにもしてないだろ?!」
ふむ。何故そこら辺の事情を知っているのか?その事を知っているのはあの戦役で戦場に出た者だけだ?誰だ?乗っている奴は?
「何もしてないとは敬意ある言葉(失敬な)」
ん?なんか話が嚙み合わないな。
終始する会話の中であっても、繰り出される砲撃と亜光速の牙の応酬が重なりそして、離れる。
連撃の機関銃の如き連射速度を誇る《ブレイズ=ガルヴ・ディム》の銃撃が、各機体に砲座を追加したT型装備を備えた友軍機の援護射撃と合わせて、
《セカンドアーヴル》の動きを牽制し続ける。
背面稼働アームに備え付けられた砲塔から延びる射砲の一撃が、放たれる度に、生じる反動を背面スラスターを駆使して、
多数のAI制御による有線式の誘導実体弾を一斉に投射。
広がり行く爆裂の華が、散開陣形を取りながら、狙いを付けて、所定の空域で待ち構える《マレディクト・レフトガンズ》へと追い込みを駆ける。
降り注ぐ実体弾の雨を、左右に機体を旋回しつつ、砲撃の数々を回避し、虚空に対して位相空間固定アンカーを射出、
空間に突き刺さり固定化されたアンカーを起点として、最小限の円周軌道を描き、機体を反転させると、
居並ぶ弾幕に対して、機首部のガトリング砲と結晶自在剣の砲塔より、結晶体の実弾をばら撒き、空域に安全地帯を作り出し、
その意図を事前に読み取り、その意図を外し、無防備に腹を見せた《ブレイズ=ガルヴ・ディム》に対して、
高速機動からの変形により、その脚部を180度回転、クイックモードによる、プラズマ推進器を利用した蹴撃を叩き込み、
大きくそのフレームを歪ませる。と、都合三機目の撃墜を行うも依然として数の優位性はウィンディゴ部隊にある。
高速機動による一撃離脱を繰り返すなか、長距離レーザー通信による照準が《セカンドアーヴル》へと到達する
...
...
...
数度のやり取りをして、春幸は、アイジェスの意図を読み取る。
数隻の艦船に対して攻撃を加える事に成功し、出来れば稼働中の艦船にたいしては損害を与えて離脱したいが...
その意図に従い、急速反転。青葉たちとの合流地点とは、異なる親父...。アイジェスたちが、待機している宙域迄、こいつらを引っ張っていく。
加速を微調整しながら、気づかれない様に、時にフェイントを駆使して、その狙いを気付かせない様に、高速機動を実現。
此処まで離れれば、問題ないだろう...。
そう油断した瞬間に、何かの光が、瞬き、閃光を感じた瞬間に機体の保護機能が発動、瞬きすぎるその光をカットし
網膜への被害を防ぐも長大な尾鰭を付けて到達した亜光速の射撃による一撃が、《セカンドアーヴル》の側面を炙る
この威力、この射程。単独で、《天地併呑》(ウニヴェルスム・デヴォラーレ)を超える出力の砲撃を繰り出してる。
機体の望遠を最大に迄絞り、其の機影を確認する。大きく特徴的な副腕を備えたその機体が、背面部の銃口を備えたマニュピレーターを
左腕と連結し、銃口をこちらへと向けていた。
この機体は...追加で ダウンロードしたデーターベースの情報に存在しない機体...恐らく噂の正式採用機だと思われるが、
その姿は、且つて見た事のある何者かに似ている。
他にも何かギミックが隠されている様な気がするが、急ぎ、親父との合流を急ぎ、向かう。
そこは、コロニーが滞留する宙域から4時方向へズレた空を泳ぐデブリ以外には何もない宙域、月の付近の10時方向近くにある遊び場とは反対方向にあるが、
《セカンドアーヴル》の脚であればまだ間に合う。
《ヴェリタス》を駆る《アイジェス》は、アレは、新型か?確かに先に叩いて置いた方が良いな、出来れば春幸達が逃げる後を追えない様に、艦船を墜としておいた方がいいな。
その意を汲んで、未だ射程外から降り注ぐ長距離砲撃を器用に回避しながら、その刻を待つ。
その機体構成は《マレディクト・レフトガンズ》一機+《アイン・アングリフ》一機+《アド・アストラ》三機+《ブレイズ=ガルヴ・ディム》九機が、
こちらの様子を伺いながら砲撃戦を繰り返す。
遠い間合いから到達する宇宙での慣性軌道を利用した実体弾による長距離狙撃も、そろって、回避軌道を繰り返す《セカンドアーヴル》と《ヴェリタス》へと届かない。
見ると、親父の機体、武装が変わってる?あんなデカいライフルで取り回しは良いのか?と疑問に思うも、
器用に宙返りを繰る返し最小限の動きを以て、それらの投射攻撃を回避し続ける。
どうやら有線接続を切られた実体弾の攻撃程度では掠りもしないらしい。
「《自信家》コンフィデンス04...どうしますか?ここからじゃ埒があきませんよ。」
ハルナ=山崎が問いかけ、やや思案する時間が経過し、
「各機、砲撃戦を仕掛けつつA型装備とH型装備機を浪費し(温存)。敵を宙域へ釘付けにしたら、後退させ(先行させ)。十重二十重と、取り囲んだ策で生かし(封じて)、実験体を取り逃がすのだ(取り戻すのだ)」
「「「「了解?????」」」」
「隊長、意味わかります?」とぼそぼとと、ハルナ=山崎が聞き返す。
「嗚呼、《袖無し》の面々と話すのは初めてなのか?あれは、奥ゆかしい謙遜なのか?いつも准将達は反対の事を言う。それを読み解くのは我らの使命なのだ。遅れるな。」
あーめんどくさい...とは言わず。展開する状況を前に辞退は進展する。
コリストス=メギトスは思考する
奴の主力武装は、多弾装のビームと実体弾を使い分けるガトリング、連続射撃を受ければ基本搭載されてるビームシールドでは防げないが、
一斉射後に切り離せば、防げる。後は、警戒すべきは脚部の実体兵装と、距離を開ければ、あのヴェナートル・ノクティスを撃ち堕とした超超超長距離砲撃が待っている。
何故今使わないかは謎ではあるが、砲撃戦を仕掛けつつ接近戦で墜とすしかない。
「春幸、さっきのアレは使わないのか?」
(あの機体が俺の想定している機体であれば、可能なはずだが?)
「親父、実はさっきから何度か試してるんだが?ウンともスンとも言わないんだよ。」
(まだ、何か条件があるって事だな?)
「マニュアルは無いのか?」
「それが、どうやら外付けのマニュアルは無くて、実機上の操作すると、マニュアルらしき解説が出る感じみたいなんだよなー。」
「コロニー内じゃ、おいそれと変形出来なかったから、確認できなかったんだよ。」
(まぁそれもそうか?コロニー内であの一撃が迂闊に出たら...ただ事じゃすまない。)
「取り合えず。奴らはあの砲撃をまず警戒するはずだ。だから十中八九接近戦を仕掛けてくるはず。近づいてきたら一機ずつ落としていくぞ。」
その頃、戦闘継続中のコリストス=メギトスのパンツのゴム紐が千切れ飛んでいた。
必死にずり上げる物のその衣服は機体に備えられた重力発生機により、床へと何の抵抗もなくストンッと落ちる。
パンツのゴム切れたな?不吉な?!必死にずり落ちるパンツを上に押し上げながらも戦闘は継続される。
敵からの超超超長距離狙撃を警戒して、静々と進む艦船と狙いを外すために艦船への射線を作らせない様に散開し、
互いにカバーをしながら、ランダム回避を実行し続け接近してくる。
「春幸、先行して引き付けるから、敵陣の側面から叩けッ!!!」
「いや、其処は親父より俺の方が適任だろ?その機体じゃ集中攻撃を受けたら墜ちちまう。」
「子供が親より先に逝くな。そんなに心配してくれるなら、さっさと敵陣の腹を食い破ってくれ。」
そういうとフットペダルを強く踏み込むと、増加装甲と思われるバーニアーを吹かせ、推進力を増した《ヴェリタス》へと、
敵の射線が集中していく。
(・д・)チッ
分ったよ。親父、死ぬなよ。と、良い指して、高速フライトモードに変形すると、大きく迂回する軌道を描き、
敵陣の側面へと移動を開始する。
その動きに気付くか気付かないまま、事態は急変する。いくら戦力差があるとして瞬く間の機体性能を差を物ともせずに撃墜し続けた
異常な動きを魅せる旧型機を甘く見るモノは、相対する友軍機から余裕と同時に消え失せる。
それは銃口が吠え、刻む。戦場での事。
大型のリボルバー型の銃身から放たれる閃光は、通常のビームライフルに使用される6発分の粒子量を一射へと込めて撃ちだす。
やや小刻みの最小機動により回避運動を行い。その長大な閃光を回避したと思った瞬間、掠めた閃光から延びる。
射線に纏わりつく様に展開された余剰エネルギーが、回避したはずの《ブレイズ=ガルヴ・ディム》T型の砲身を誘爆し、撃墜させる。
「なんだと?あんなもん旧型の機体で撃とうものなら、その反動でマニュピレーターが全損するぞ?!」
見ると、射撃を行った《ヴェリタス》は、機体各部のスラスターとバーニーアーの灯を器用に吹かせて、反動の勢いのまま
宙空で一回転し、その反動を何事もなく殺し、そして、次射を瞬かせる。
その動きに、釣られて、隙とみて撃ちかける《ブレイズ=ガルヴ・ディム》の友軍機が、瞬く間に連続射出された
六連射によって、こちらの攻撃は捻転する動きにより回避されながら、あるものは構えたビームシールドごと貫かれ、またある者は、砲撃の一射を撃ち抜かれ、
そして、あるものは、逃げ出した背後から撃ち抜かれ果てる。
あっという間に9機いた《ブレイズ=ガルヴ・ディム》が3機まで減じられ、
《アド・アストラ》と破損した機体を《アド・アストラ》の部品で補修した《アイン・アングリフ》がそれぞれ、シールドと反射板にとなる肩部の【falcisファルキス】を展開
次の攻撃に備え、機体前面へと移動させる。
射撃の雨が途絶えたという事は、奴の装弾数は6発限りとみて良いと、安心しきった次の瞬間、目の前の【falcisファルキス】に一撃が降り注ぎ、明後日の方向へと反射される。
見ると既に《ヴェリタス》は、装填作業を終えて、再度の攻撃を仕掛けてきている。
その互いの行動の合間に、アイジェスは機体に備え付けられたリボルバー式のライフルで、エネルギーパックを排莢とリロードを装填し終えていた。
フレーム左側にあるラッチを押下し弾倉を横にスイングアウトし排莢ロッドを押し込むと同時に排莢し、
予め備えていた通常時は展開される状態からラピッドローダーを引き抜き、瞬時に巻き取られる様に変形し、
シリンダーに装填すると、引っ張りシリンダーが回転しながら元のフレームに収まり、すぐさま次射への準備が整い、放たれた一撃が、防御される。
(・д・)チッ
「一般機とは違って防御が固いな。次は...」
・・・
・・・
・・・
「おいおい、おやじ、此れ俺居る意味ないだろ。挟撃する間もなく墜としまくってるぞ。」
「ハルユキ、仕事ナイナイ??」心配そうに眺めてくる少女に、
「まぁ、やるだけやってみるさ。」
手にフィットする操縦桿とフットペダルを強く踏み込み、突撃槍を掲げての突撃を
敵陣の右陣から徐々に斬り込んでいく。
対応する陣形で、異変を感じ取ったハルナ=山崎は...
これはチャンスかも...。彼ともうちょっとお話がしたい。
続く場面の最中でA型装備とH型装備を備えた《ブレイズ=ガルヴ・ディム》を【falcisファルキス】の反射板で防御しつつ、前面へと押し出していく
「悉く熱に厭いやかされ死ね。《ムスペルヘイムッ(灼熱の国)》!!!!!」
「悉く寒さに震えて眠れ。《ニヴルヘイム(霧の国)》!!!!!」
膨れ上がる粒子放出を掲げ、吠える炎熱と雹雪の嵐が吹き荒れ、突如、現れる氷壁に囲まれる。
その囲いに対するは、旧式機体の《ヴェリタス》
動きを封じて三重の囲いを以てその武装、その動き、その姿を隠す。
且つて指摘された様に、無駄な射線の放出を控え、完全にその動きを止めたタイミングを待ってから
攻撃する瞬間を待ち構えている。
「獲ったッ!!!!」
絶対致命の一撃となった囲いが閉じた後に、視線が集中し、氷壁の解放と共に...
数多ある銃口が一斉にその咆哮を上げる。
視認できぬ霧の中で、怪しく光る。象眼からの砲撃と可変式大口径ビームライフルによる
一点集中の砲撃が十重二十重と重なり、既に武装を破壊され熱暴走による停止で身動きの取れぬはずの
アイジェスが駆る《ヴェリタス》へと降り注ぐ。
その絶体絶命の窮地において...前方の氷壁が開かれたと同時に、何かの機影が飛び出してくる。
真空の音の閉ざされた空間の中で、クルクルと何かが回転し排莢される空薬莢が、放出され、
浮遊する中、流れたデブリとなって、そして集中攻撃の荒波に揉まれ融解、その姿の輪郭が消え去る中、
瞬断する刻の中で、それは密に実行され。
封鎖された逃げ場のない空間でそれは、熾る。
じっくり展開されそして燃え上がる様な氷と熱に包まれた最中で、脳内で目算として、
《ムスペルヘイムッ(灼熱の国)》による機体の損傷迄のタイムリミットを計算、それに合わせて、
レバーアクション式のグレネード射出機を取り出し、断続的に、ビーム攪乱幕ならぬ、粒子攪乱幕を射出。至近で炸裂するその弾頭が、粒子を変換と変質を繰り返し、粒子を散布したその空間に対しての急激に温度変化を及ぼす。
展開された粒子自体にジャミングを掛ける...
「効果時間は精々、1秒から2秒か?...粒子由来の効果に限定されるが、それであれば...阻害できるはず。こいつが...消え去るまでに、」
当初の目算よりも更に効果時間が延びる。
敵はたっぷり十秒を数え、その間、途切れた瞬間に再度の投射を繰り返し、氷壁の解除と共に、一斉攻撃を開始...
その砲撃のタイミングを読み切り、解放されるタイミングと共に、背後の氷壁を蹴り、
フットぺダルを踏み込み、急加速を発動と共に背面に向かってグレネードの一射を撃つ。
爆裂する噴煙と衝撃に押し出され加速
すり抜けるように、沸き立つ霧の範囲外に飛び出していたH型装備の《ブレイズ=ガルヴ・ディム》と相対すると、大口径の射線が、連続射出され、宙域の中心で、光の波涛が、衝突し、
前面を防御している【falcisファルキス】の反射板を一射、命中した端の一点に連続射出。
部位が僅かにブレた瞬間に立て続けに繰り出された大口径の射線に、その反射板の角度がズレ、
そして無防備な側面及び無防備な背面を晒し、撃墜
更には纏わりつ余剰エネルギーを以て、その一射で、敵機の脇を掠め、撃沈させる。
生じる反動を逆進するスラスターとバーニアを駆使し、機体を斜めに回転しながら、居並ぶ氷壁の囲いを生み出すも次々と直前に回避、
宙域に展開される。粒子攪乱幕の炸裂で、形成される氷壁が阻害される
互い違いで、左右から放たれる。跳ねる反動と合わせて銃口をコントロールしながら、敵機の砲撃を回避し続ける。
「おい、一体どういうことだ?《ムスペルヘイムッ(灼熱の国)》が効いてないぞ?!」
「大佐ッ!!!粒子が拡散して、こちらの攻撃が届いてない?」
「ビーム攪乱幕か?だが?何故奴は撃てる???」
射撃と共に、転進、次の粒子攪乱幕投射地点へと移動し、回避を繰り替えし向い合い。
中距離戦の間合いでヴァルク・チラヴェクは、頭部と腕部を《アド・アストラ》の部品で補修した《アイン・アングリフ》の露出した象眼部によって《ヴェリタス》からの攻撃を
防ぎ、その攻防は、鼬ごっこの様相を見せる。
その最中に、遅れて参じた《セカンドアーヴル》が敵陣を切り裂き、一撃離脱と共に、敵陣の真ん中へ、結晶体による実弾投射を繰り返し、
【falcisファルキス】の反射板で防御され、こびり付いた結晶体は、すぐさま【falcis】を分離、集合を繰り返し引きはがし、
その攻撃を防ぐ、其れ迄、《ヴェリタス》へ集中された攻撃が、右陣から斬り込んできた《セカンドアーヴル》へと分散される。
急激なブレイクを掛けつつ、位相空間固定アンカーを投射、機体の旋回円周を極限まで減らしたその軌道を以て、直前に回避と共に、
戦場にバラまかれた大量の結晶体の弾痕の姿を確認し、次の一手へと繋げる。
「あれは...確か親父が開発してた。粒子攪乱幕...。昔の戦役でもやってたが、戦場でのビーム攪乱幕の効果範囲をギリギリまで読んで、効果範囲外に銃口出して撃ってやがるな。」
「なんで不可視の効果範囲を把握できてるんだよ?普通は無理だぞ?」
と、疑問を呈しながらも、自らも仕掛けた仕込みに対しての着火作業に取り掛かる。
射かける高速回転する銃身から吐き出される牙を、敵機は、ある時は、反射板の【falcisファルキス】や、一時展開したビームシールドを楯として、切り放し、その暴風雨が通り過ぎる事をただ祈る。
防がれた結晶体は砕けて、宙域へと散乱し、その形状を元の姿へと戻す。その瞬間には、連弩する波涛の連鎖が、宙域に散乱する全ての結晶体が、
元のプラズマ上の熱源体へと還って行く。
その時、残り二機まで減じられた《ブレイズ=ガルヴ・ディム》は、奇妙な動作不良を起こしていた...
機体の油圧部品と電子機器の内部で、絡まったバナナの皮がショートを誘発させ、僅かにその脚が鈍ったところへと瞬く光に晒される。
一時的に、機体のディスプレイが、対閃光防御の機構が自動展開するもその余波を受けて、機体の各部が焼け付く様な光に炙られ、
推進剤の燃料へと引火し《ブレイズ=ガルヴ・ディム》の機影がこの世から消え去る。
一気にその数を減らしたその仕掛けに、狼狽える友軍機を叱咤するべく《コリストス=メギトス》が吠える。
互いに、獲物を構え一進一退の攻防を繰り返し、その防御と攻撃の手を緩めぬまま、場面は暗転し続ける。
(うーん...ちょっと想定より派手な被害になっちゃったけど...)
「このまま頼もしいままはじまるつもりか?(不甲斐ないまま終わるつもりか?)」
「貴様ら、何者だが?名を名乗るな(名乗れ)ッ!!!!」
ん?
頭の中で何かの違和感を感じ、クルクルと回転する視点の中で、互いの一撃が宙空で炸裂し、粒子の火の粉を薪散る。
その違和感を噛み殺しながらも、春幸はその問いかけに返答する。
「おぃ!コリストス=メギトス。なんで、《Fictumフィクトゥムドライヴ》も何もかも、クピドレスの技術体系も全部、コーディー=スルーの奴が開発した事になってんだよ。」
「おかしいだろ?!」
(ん?一体どういうことだ?何故それを知っている?)
互いに、目標の背面を執ろうとする乱戦へと突入し、飛び回る【falcis】とビームシールドの鱗光が
舞い散りながら、銃火の瞬きが交差する。
(まさか?この声、あの戦役で一緒に戦った誰かなのか????)
だが?
「お前か?(誰だ?)お前か?(誰だ?)お前か?(誰だ?)お前か?(誰だ?)お前か?(誰だ?)」
《マレディクト・レフトガンズ》の基部の砲身連結を解除し、四つ手の腕部から互い違いに伸びる発光する爪と握る光剣の
瞬きを背後に残像として残し、《セカンドアーヴル》に対して肉薄する。
対する《セカンドアーヴル》も射撃戦から、左腕の袖口から取り出した確変する伸縮を繰り返す刃で対抗するべく振るう。
互いの機体を絡めさせながらの接近戦を繰り広げ、互いの友軍の援護が空中で衝突し霧散する。
推力でやや分のある《セカンドアーブル》に対して、多数の腕部を駆使する《マレディクト・レフトガンズ》の攻撃が、
左右の連打を繰り出し、一撃を光剣で受け、二撃目を突撃槍と腕部のカバーで防ぎ、そして掬い上げる様に繰り出される発振する爪の一撃を
脚部の結晶自在剣で、受け止め、次の瞬間には、距離を取り、伸びあがる螺旋の機動をもって、撃ちあいを継続
「その武装の安定さ(不安定さ)、正式採用器(試作機)だな?」
「その物言い...あの技術に関わっていた人員は...協力者(裏切り者)のクルーニー=ブルースとトゥルス=スミスか?」
「だが、おまえか(だれだ)?」
「あれらの技術は。親父がッ!!!!」
(ん?一体何の話をしている?親父というと、クルーニー=ブルースの子供か????)
乱戦状態となったその戦場で、一声、その声明を告げる。
「下がれ...こいつの相手は俺がする。ここは俺に任せて、仲間との合流を優先しろ。」
「親父ッ!!!!」
接近戦を繰り広げるその終端の位置を読み切り、二機の間に絶妙のタイミングで押し入り、
出力負けするであろうビームサーベルの出力を調整し、その刃を3分の一迄減じたもののの振るわれた刃は、敵陣の敵刃と一瞬の交差を過ぎ去り、
返す刀の爪撃を、器用に操作した脚部による蹴りで弾くと距離をとって、大型リボルバーの一射を加え、防ぐ光膜による防御を誘発させるが、
一瞬の判断で、回避を選択。
やや、焦燥感を交えつつその答へと到達する。
「その声は...アイジェスじゃないのか?(アイジェスか)?!!?」
避けた一撃が、《マレディクト・レフトガンズ》の後方から援護に入ろうとしたフルーツ=ポンチの機体を浅く撫でつける
咄嗟に破損部位をパージし、戦線に復帰する友軍機にほっと腕を撫でおろすも、既にハルナ=山崎の攻撃の手は止まっていた。
「何故だ。大尉動かない?!」ヴァルク・チラヴェクは吠えながらも銃口の引鉄を引き続け、それを回避する。閃光の瞬きが星の光芒の様に煌めく。
...
...
...
「虐殺者め!!!!今さらな何のつもりだ。協力する気か?(邪魔する気か?)」
(。´・ω・)ん?
(何故だ。言ってる事があべこべの様な気がする?)
「確かに、何故そうなったのか俺にも分らん。俺が全てを作ったなんて言わないが、こいつの言う通り、其の全てをコーディー=スルーが作ったという訳でもないだろ?」
「少なくともあの時、関わった人間での合議制で決めたはずだ。検証と考証をしたモノ、基礎設計を撃ちだした者、実際に作った者、それぞれの努力があってこそのモノだ。」
「それを認めないと言うのは勝手だが、他人の専門性を認めないのであれば、その先に待っているのは、他の誰の専門性も認めない世界が待っている。」
「俺の事は、別にどうでもいい。だが、どうして、開発者にクルーニー=ブルースの名前がないんだ?何故、人は、自分だけはその対象に入っていないと誤認するのか?」※誤字修正2025年11月3日
「自分以外の権利や専門性を認めないのであれば次に待っているのは、自分自身の価値も同じように棄損される世界だけだぞ。」
「どうして憲法で人の権利が認められている理由を一度でも、思い返したことがあるのか?」
「譬えば誰かが描いたイラストに対して、そんなものに価値はないと宣う物書きが居たとすれば次に待っているの自分が描いた文字に価値などないと言われる世界だぞ?」
「俺はそんな世界はまっぴら御免だ。だから他者の権利も尊重する。」
だから、俺は...
苛立ち紛れに振るわれる、その刃を機体を傾け回避し、撫で斬り気味に払われる刃を潜り抜け、相手の機体の関節部目掛けて、その刃の長さを減じた光剣で浅く撫でつける。
返す刀で振るわれる爪牙をスラスターとバーニアを点火、急速反転を駆けて、その攻防から離脱する。
引き離そうと加速するも、その推力の絶対値には大きく開きがある為、距離をとっても直ぐに追い付かれる。
逃げ場のないその牢獄の中で有ってもアイジェスは...
「親父ッ!!!!」
唐突に表れた、銀劫纏う、一射が―挟み込むように挟撃するヴィクトム=フォルストが駆る《アド・アストラ》の前腕部へと射抜く様に貫く。
「クソッ何故、さっきから《アイン・アングリフ》の粒子吸収の効果範囲外から、攻撃が飛んでくる??効果範囲を読まれているのか?それとも...しかも、粒子が攪拌され、上手く機能しない?!」と、ヴァルク・チラヴェクは吠える
「艦隊に、援護射撃を要請しろッ」
「乱戦で無理です。味方に当たる?!」
あれは?!
「隊長、データベース照合ッ?!78%の確率で...ヴィキティですッ!!!!」
「ええい何故100%一致しない?!そもそも誰が載っている?!将軍は死んだはずだぞ?!」
最大望遠の視界の端に、その威容が見えかくれする。
空気抵抗を極力減らしたかのような流線型に、鋭く伸びたバイザーから突起状に見える一対のねじれたアンテナと怪しく光るツインアイに、流線型の盾と実体剣を両腕に装備し、
大型のスラスター内蔵の滑空翼に、旋廻する砲門を備えた副腕を持ちて、宙を逝く、白と黒のまだらの翼をはためかせると、天使と悪魔にも似たフォルムの機影が踊る。
ばっばんッ!!!!と、突如全チャンネルで語り掛けるは、画面に映るは、男の臀部。
「この男尻は?アンザスさん?!」
「貴様ら、そろいもそろって我らが功績に賞賛する(ケチをつける)のか?」《コリストス=メギトス》ががなり立てる。
「椅子にしがみつく男になにするものぞ?!」
砲門を備えた副砲から、銀劫の光が降り注ぎ、防御に回る各機の動きを牽制し、互いに回避運動を挟みつつ会話が進む。
「拙者達を勘違いしてるでござる。権力なんぞはなから抱え込む機などさらさらないでござるよ。そんなもんいつでも捨ててやる。」
「そもそも地位も名誉も、天より授かったこの男尻の輝き以外、他の祝福すら、当の昔に捨て去ったわ。」
「今はしがないドーナッツ売り。」
「俺が欲しいのは、誰でもない家族の平穏を守る事だけ、ただ一つ、必要だから闘い。最後の一時、死ぬ最後の時迄、この男尻を張ってやる。」
「すまんが、アンザス、めちゃくちゃ真面目な話してるが、通信画面一杯に男尻を映す必要はどこにある?」
アンザスの援護によって、アイジェスは、機動変更への時間的、空間的余裕が出てきて、射出するリボルバーの空薬莢を輩出しての
ラピッドローダーによる再装填、動作を開始する。
アイジェスは、交互に別々の弾倉を装填されてるシリンダーを回転して、装填してる弾丸を切り替えながら、射撃戦を展開しはじめる。
粒子攪乱幕の投射により、吸収フィールドの防御領域が乱れる。
その応酬の最中で、舌戦も続く。
「そもそもお前らは、はき違えてる。」
「誰が護ったかは重要じゃない。そんなの誰が護っても良い。何より大切なのは、何かを護れたという事実のみ、それ以外なんてもんは、こいつの男尻の穴にでも喰わせて置け。」
「拙者の男尻のお口に変なの詰め込まないで貰えます????」
(…)
「あっ無視された」
「折角、拙者の男美尻を堪能して貰おうと思ってたのに解せぬ。」
「黒と白の機体のパイロットに言うぞ。此処は俺とアンザスに任せて、先を行け」
「はぃ!!!二人とも墜とされないでよ。」
「「了解だ!」」
急加速する。《セカンドアーブル》に対して、その進行方向を塞ぐようにハルナ=山崎が駆る《アド・アストラ》が立ちはだかる。
「ちょっと、君。教えて欲しい事があるの?」
「なんだ?男尻に魅了されたのか?アンザスさんは既婚者だぞ?」
「違うの!!!」
コックピット内で懐かしい詩が流れ、
ハルナ=山崎は、今流れている詩についての言及を行う。
「この詩の歌い手が、貴方のお母さんって本当なの?」
「ん?そうだが?」
「そう...じゃぁ、私も一緒に行く。」
「「「?!?!」」」
「大尉それは、我らに忠誠を尽くす(寝返る)という事か??!!貴様、袖を付けてやろうか?!(引き千切ってやろうか?)」
苛立ち紛れに放たれる銃口からの照射を反射板の【falcis】で、射かける一撃を防ぎながら、《セカンドアーヴル》の防御位置へと滑り込む
「あんた?本気か?」
「そもそもコロニーを攻撃するのに反対だったし、この部隊、飯が不味いのよ。バナナは美味しいけど、流石に毎日は飽きちゃう。美味しいご飯が食べられればお姉さんはどこでも行く。」
「そうか...」
一瞬、逡巡したもののその意を汲んで、高速フライトモードになると、
一言、「掴め」と呟き、展開する【falcis】を肩部へと収容すると、機体の端を掴み、
それを確認後、六時方向で、援護射撃も出来ないまま、転進し、こちらに向かってくる艦船の群れに対しての一撃離脱攻撃を仕掛ける。
「あんたの仲間だけど、止めるなよ...」
「わかってる」
手短な会話の中でその覚悟を確認し、艦隊への攻撃を開始する。
その頃、その空域から12時方向にある空を泳ぐデブリ以外には何もない宙域において戦闘行為が続く
敵の反応速度を凌駕する反応を以て、迫る敵を翻弄しながら、心の中でアイジェスは反芻する。
(吸収領域の効果範囲は。恐らく8年前に投棄したナインテイルを学習して使っているのだろうが?ナインテイルと違って起点を動かしたり、展開す効果範囲を拡張できない。
その効果範囲は恐らく十数メートルから三十M前後に抑えられるとみて良いだろう。様は効果範囲に入らない様に打てば良いだけだ。)
(あとは僚機の援護を外したら、実体兵装か接近戦で仕留める。)
その思考の合間に、重なるようにまるで事前に打ち合わせたかのように撃ち合わせ、
互いの放った射線が、重なるように射出され、【falcisファルキス】の反射板を僅かに逸れて、ビームシールドを展開し、防御態勢に入った
フルーツ=ポンチの機体へと吸い込まれ。まず一射目をその光の盾で、防ぐも、その防御がブレたその部位に、寸分たがわず放たれて、
閃光の一閃が機体を貫き爆散させる
最後に残した言葉は...
「フルーツポンチ食べたかったな。男尻はいッ...らな...逝。」
「フルーツ=チン○ッ!!!」
一人が抜けて、二人目が墜とされ残るは、《マレディクト・レフトガンズ》、《アイン・アングリフ》、《アド・アストラ》の三機のみ
数の上での優勢は有るもののその優位性は既に逆転している。
宙を翔ける。五つの螺旋は、互いに絡みあいつつ、光る刃が交錯し、瞬く光を残して、更に加速していく。
その光景から過ぎ去りしは、破劫の瞬き、遠くで数条の命の煌めきの
光が踊りそして、幾度も繰り返し果てる。
脱力する手掌の中で固い操縦桿を握り、転進する。
向かうは、合流地点。
一撃離脱を繰り返し、何隻もの艦船を撃ち堕とし、一路反転し向かうは、最初の遭遇戦を行った場所から、月の付近の10時方向に進むと
見えてくる、通称:遊び場、
放棄されてから数年経過したコロニーの残骸。
親父は、良くここで部品や機体の残骸を集めて加工していたの
を覚えてる。
ここに来れば...みんなに会えるはずだが...。
高速フライトモードのままで、静々と進む中。遠くの障害物に隠れた一角に、重力感覚器官《Sensorium Gravitatis》(センソリウム グラウィタティス)による感あり、
その全容は、
左右に大きく左右非対称の船形。
右翼側に、大型リニアカタパルトによる可動式のカタパルトデッキの射出口と砲門に、
さらに左翼側に艦橋らしき陽光放つ建造物に、ソーラパネルを備えた一対の尾翼の
やや小ぶりの大型艦は、中央部に何かの機能を備えた上下に二枚の鰭の如き姿が見える。
春幸は、見た事のない艦船だな...てっきり親父が使ってるボロ船のロシナンテで来るものと思っていたのに、訝しみ静かに近づいて行くと、
長距離レーザー通信による。音声が機体内へと届く
「やぁ、春幸君、元気だったかな?僕らは、誰一人欠けることなくここに居るよ?で、そちらのお嬢さんは鹵獲でもしたのかな?」
「エクィタス?!なんでお前迄?この人は、こっちに裏返ったよ。」
「そうかい、それは僥倖僥倖。でも、やだなぁ。僕と君との付き合いじゃないか?そんな遠慮は無用だよ。」
「ハルユキ、オウチ、カエラナイナイ??」
「そんな事よりも機体を回収して、この宙域から離れるよ。」青葉が二人の会話に割り込み告げる
「姉ちゃん、離れるっていうけど、これから何処に?」
「それを決めるのは貴方だよ。とりあえずウィンディゴ部隊から、逃げられればどこでもいいよ。」
わかったよと、思案して、ふと脳裏に、亡き母の詩が過る。
逃避行の旅路のついでに、今も宙に響き渡る母の詩を探しに行っても良いかもな?と、
そうだな、向かう先は...
「春幸達は、行ったか...」
次第に離れて行く感覚を感じながら、操縦桿を握り、前後左右に機体を揺らして、敵の猛攻を回避しながら、悠々と何も見えない虚空を指さし、見送る。
春幸=ブラットワーカー/ユミナリア=ニドフェアー/領五=羽住/玻座真=外崎/
青葉=穣/エクィタス=ユースティティア/ハルナ=山崎/アイ=フライヤー
計8名
は、争いが続く宙域を離れ、その姿を暫し消す。
「それじゃぁ拙者達も、晩の夕飯までに、片付けちゃいましょ。」
その意に合わせて、機体各部より放出される龍鱗と白黒の羽根が組み合わさったような基部が踊り、
そして放出と共に、光を銀劫を揺らし、投射される。
宙空で破断する威を以て、互いの反射板と股間を残してもろだしになる片肌脱ぎ(かたはだぬぎ)で肌を晒し乳輪ならぬ龍鱗を操作する。
煌めく銀劫は、《アド・アストラ》の操る【falcisファルキス】と正面衝突。
何の抵抗もなく、両断されるその姿に、衝撃が奔る。
「何故だ?ヴィキティは?数世代前の機体のはずなのに?!機体性能が上がっているだと?」
その光景を眺め、《ヴェリタス》は、その推力の不利をものともせずに、先行する《ヴィキティ》の援護に徹し、二人は手慣れた、感覚のまま二機編隊による変態機動を開始、
かつてロッテ戦術と呼ばれた、その古い戦型は、
長機、アンザス機が攻撃に集中する最中に、僚機であるアイジェス機が長機の後方に付いて援護・哨戒を行う。
長機の死角をカバーしての高速機動で、水平バレルロールで敵機との距離を調整しながら左右に交互に旋回するシザーズ(Scissors)を繰り出し、
迎え撃とうと、射撃戦を展開している対象へと肉薄する。
機体の僅か数Mの距離で炸裂する粒子の砲撃の雨をまるで、其処に飛来する事が解っていたかのように、
龍鱗を操作し、そして着弾する。今ッ!に煌めく刃を翻し、亜光速の光弾を切り裂き、霧散させる。
(・д・)チッ
龍鱗の先端と分離した反射板の砲門からそれぞれ小口径の粒子の砲閃が瞬く。
《アド・アストラ》を駆るヴィクトム=フォルストの思考が、防御の手となる次第に削れていく、【falcis】の動きに
更なる命令を下し、穿孔する様に先行する。
その動きに合わせて《アイン・アングリフ》も追従する。
象眼部より放出される。湾曲する粒子砲の斉射も、周囲に舞う龍鱗の【falcisファルキス】に阻まれ届かない。
同じく《ヴィキティ》の銀劫の射撃も前を行く《アド・アストラ》の後方から援護する構えの《アイン・アングリフ》の吸収フィールドに阻まれ互いの攻撃が
届かない、ビーム兵器の効きが悪いと、鬼気迫るその動きで二条の光が、宙を平行移動しながら、互いの攻撃の手を緩まず交差していく
機体性能差の為、ややその攻防に置いて行かれつつある《ヴェリタス》に対して、《マレディクト・レフトガンズ》を駆る
《コリストス=メギトス》は、准将には悪いが...
決着は此処で付けさせて貰おう...
グルリと、回る銃のシリンダーを回転させ、装填されるエネルギーパックと粒子攪乱幕の弾帯を器用に切り替えながら
敵の防御を切り裂き更なる一案を戦場の盤面に布石する
都合投射された。粒子攪乱幕とビームによる射撃回数は交互に3発づつ...最後の銃撃の光は、それまでと比べてやや、薄い光の様に感じられていたが...
リロードの隙に殺しきるッ!!!と弾切れの瞬間に反転攻勢を賭け、
先行する《アド・アストラ》に追従する形で、突撃を敢行。数機の反射板を喪うも都合、反射板を形成する12基とは別に、分離し手展開される、2基の分離した
【falcisファルキス】を手繰り、防御の手を薄めて更に先行させ、基部を叩きけてでもその動きを止めるべく連続射撃戦を試みる。
可変式大口径ビームライフルから吹き出す大容量の粒子砲の一射が、鈍足の《ヴェリタス》に襲い掛かるも、龍鱗の《falcis》がカバーする様に、
その攻撃を拡散させる。
「隊長は、《ヴィキティ》と邪魔な《falcisファルキス》を止めてください。」
飽和射撃と共に、接近戦で仕留めるッとスラスターを全開に開き、交差する一瞬の隙を繋いで、斬りかかる。
リロードに両手が塞がった《ヴェリタス》は、何を思ったのか、弾切れを起こしているはずの銃口をこちらに向けて狙ってくる。
其れを鼻で嗤って、繰り出す射撃を《ヴェリタス》は宙返りをしながら回避と共に...
光が迸る...
やや、強弱の差が仄かに見られるも、薄く通常のビームライフルの2発分程度の出力で放たれたその一射は、勝利を確信し、油断した
《アド・アストラ》の基部を貫くと、その胴体部分んを半壊させ、貫いた一撃が背面の推進器の推進剤と誘爆、宙に火の粉が香る、一瞬の花火を打ち上げる。
それを綺麗だと、感じる間もなく。大出量の閃光の一射が伸びるがそれを事気もなく、宙返りをして回避すると、
漸く《コリストス=メギトス》は手品の種を指摘する。
「その獲物ッ!!!!出力を絞って撃てなかったのか(撃てたのか)?!」
最後の一射の威力を絞ってこちらの油断と攻撃を誘発させたな?!
これで、残りは二機のみ...空薬莢の排出共に、ラピッドローダーによる高速装填を実施。
残る残弾は、銃に装填された分以外の一度のリロードを残すのみ...
それで、奴らを墜としきる。
大型リボルバー式の獲物を右腕に、予備弾倉を機体腰部に移し替えると、残る開いた手にグレネードの射出機構を構え、
デットウェイトとなった背面部のラッチを投棄する。
戦場では数の有利を喪い焦りが見えた中...
宙の端で、大きく二つの華が開く。その光を放ったモノがいずれかは、判明しないまま事態は収束し、
場面は暗転す。
《マレディクト・レフトガンズ》、《アイン・アングリフ》、《アド・アストラ》
戦場を離れて月までの航路は、新造艦である。
《サルヴァートル・エクス》(超越する救済者)と名付けられたその船の船足をもってすれば半日あれば到達できる。
「しかし、超越する救済者とは仰々しい名前の船だな...」
機体を収納して、メンテナンスブロックから続く通路を抜けて、エクィタス=ユースティティアに誘導され、船の内部を案内されていく、
最後に残った艦橋へ、春幸、アイ=フライヤー、ハルナ=山崎、エクィタス=ユースティティアの四名は、目的地に到着すると、
残る仲間たちが、操船作業に追われていた。
「春幸君ッ!!」「もどったんだ?」ユミナリアと領五の二人が反応し、
「あっ春幸ー、戻ったの?今操船に忙しいからまたね。」と、
青葉が答え、艦橋へと入室した三人は会話を続ける。
「みんなちゃんと居るみたいだな?だけど?この船、大きさに対して、操船する人の数が少なくないか?」
「嗚呼、この船はうちの会社の虎の子だよ。操船や修復作業に関しては、凡そ自動化されていて、4名も居れば操船や戦闘行動すら可能だよ。」
「へー、そうなんだ。でもそんな事、敵軍のあたしにまで教えて大丈夫なの?」
「大丈夫ですよ。バナナ好きなハルナ=山崎さん。」
Σ(・ω・ノ)ノ!
「なんで、あたしの名前を?!」
「なんだ知り合いだったのか?撃墜しなくて良かったな。」
「知り合いなのは、僕じゃありませんよ。春幸君、君の知り合いです。」
「名前に覚えがありませんか?失礼ですが、機体から降りた時に顔写真を取ってデーターベース上で画像検索を掛けました」
「そしたら君の思い出アルバムとデーターベースにヒットしました。リン=山崎さんの妹君ですよ。」
「「えっ?」」
きょとんとするエメラルドグリーンの目で上目遣いで春幸を見上げる少女は、
「ケンカ...ナイナイ??」
「なんでお姉ちゃんの知り合いなの?!」
「僕らの内、僕とこの娘を覗いて、5人は、且つてのエーリヴァーガル戦役で、リン=山崎さんと一緒の部隊に加わっていたんですよ、」
「もちろん、ウィンディゴ部隊を率いる。《ハルズ=アルマイン》はもちろん春幸君が交戦したコリストス=メギトス氏ともみんな顔見知りですよ。」
「春幸君は、頻繁にリンさんとも連絡を取り合ってますしね、」
「はぁッ?!!」
「やらかしたーッ!!!!お姉ちゃんにケツバットされるッ!!!!」
「イタイ、ナイナイ???」
一瞬で打ち解けた一同は、歓談しつつ間断なくするむ船は、月へと向かう。
「どうでもいいけどさーなんで俺たち迄、月に行かなきゃならないんだ?」外崎が、不満を漏らし、春幸が答える。
「嗚呼、船に合流するまでの道すがら、ハルナさんに話を聞いたんだが、母さんの詩が、特定の地域や、場所からゲリラ的に、流れてるらしいんだ。」
「しかも、僕も知らない未発表の詩が...」
「それって、もしかして生きてるかもしれないって事?」
「でも、あの時おじさんが引鉄引いて敵の要塞ごと、叩き潰しちゃたじゃん?」
「それはそうなんだけど...」
やや、重苦しい沈黙が流れるが、ハルナ=山崎が、何とかケツバットから回避しようと、話題を回避すべく思案する。
お姉ちゃんのケツバット、猛烈に尻が割れるんだよなー。
と思い浮かべながら、会話を続ける
「そう言えばみんなは、ウィンディゴ部隊が、何をどうしてこの娘を探してるかの理由は知ってるの?」
「「「「「「知りません(ね)」」」」」」
「ナイナイ!」
代表して
エクィタス=ユースティティアが、問いかける
「それはどうしてですか?」
「あーあたし、説明の時、立ったまま寝てて、隊長にケツバットされて起きた直後の話しぐらいしかしらないんだけど...」と
前置きを置いて、会話は続く。
「なんでも何かの重要な計画を進めるのに必要な、素体らしく。あたしも、こんなに可愛い女の娘とは思わなかったよー。」
と、アイ=フライヤーの顔をムニムニとそのほっぺたの感触を楽しみ。
「そうか?じゃぁこの娘のお母さんがどこにいるか知ってるの?」
「えーお母さんは見かけた事ないな、捜索用に、箱型の機械を持ち込んではいたけど、人の大きさじゃなかったしなー関係ないのかも?」
そうか...と落胆するも、とりあえずエクィタス=ユースティティアの話では、親父たちが反抗する準備を整えるから、
それまでは、ウィンディゴ部隊の追撃を振り切る為、亡き母の歌声を求めて、月へと向かう。
その頃、別の宙域にある。ウィンディゴ部隊の駐留地において、
当初の任務を受けて実験体を確保しようとした部隊は、そろって
MIA(戦闘中行方不明)となり、
遠く離れたL5の部隊を率いる。
デ・ポク・ポクチンは、丸々太った贅肉が詰まった袋の様な
其の体型からでるくぐもった声を放ち、
「ぽくちんに、追撃の任務がでちた。狙うは実験素体と、それを匿う不届き物でつ。(´Д⊂ヽ」
「問答無用のぽくちんのおやつ代にするでつ。」
その姿なき追跡者の影は、未だ見えないまま。
一行は、月宙域へと到達する。
月都市からの索敵効果範囲のギリギリの位置に陣取り、移動中に、回収した《セカンドアーヴル》《アド・アストラ》と他二体の当初より搭載していた
《ヴォーパルバニー》《ホーリーグレイル》の二機を他所に、
整備作業が行われ、不思議と《セカンドアーヴル》には、整備の必要のある個所が見つけられなかった。
当面の問題は、無いと黙殺し、そして、半自動的に整備作業を行う作業機械《「リペアマトン》(Repairmaton)を駆使しての整備作業を実行する。
幸い破損状況はそれほど酷くもなく、其の作業は程なく終わる。
(。´・ω・)ん?
「なぁ、春幸、こいつの動力炉っていったいなんなんだー?」
「さぁ、俺にも分かんねぇよ。まぁ、《Fictumフィクトゥムドライヴ》と同じように、水を入れて置けば良いと、動作マニュアルには書いてあったから、俺たちが出来る事はそれぐらいかなぁ?推進剤を補給する仕組みすらないからなぁ。」
(まぁ、動けるって事は、まだ燃料に余裕があるって事だし、インジケーターも減っていないしまだまだ余裕があるって事だろ?)
と、早々に夢想を切り上げ、月都市への上陸準備に入る。
「春幸君、目的のお母さんの詩がどこから聞こえてくるのか?分ってるのかい?」
「嗚呼そうだな、ハルナさんの話だと、定期的に都市部の環状線通りを準繰りと、回って、月一のスパンで新しい詩が、流れているらしいことぐらいしか分かってないよ。」
「とりあえず、《セカンドアーヴル》単独で、潜入してみる。」
「まぁ、月都市は長らく中立を護り、ウィンディゴ部隊の駐留もなかったはず。それであってますよね?ハルナさん?」
「そだねーあたしも詳しくは知らないけど、駐留してる部隊の支部は確かなかったはず。」
そうなると、潜入できるのは僕ともう一人か二人ぐらいか?
一人は、青葉ねぇちゃんとして、もう一人は...
...
...
...
「春幸=ブラットワーカー...《セカンドアーヴル》出るぞ!!!!」
カタパルトデッキに機体を固定すると、電磁加速する射出機構に乗せられ加速と共に射出される。
機体の発艦及び着艦シークエンスにおいて一番危険なのは出撃と機体回収をする
その無防備な瞬間
今は、周囲の警戒を厳にして、敵機や追跡者の影を確認できない事を把握しての出撃、
何のトラブルも生じないまま事態は進む。
高速フライトモードで月面の低重力下の宙を飛ぶ、《セカンドアーヴル》の加速を、重力制御機構により、その影響を無力化し、突き進む
「ねぇ、このまま月面都市に潜入する手立てはあるの?」
と二人の女性から詰められる。
青葉ねぇちゃんとハルナさん。
しかしどうしてその手には大量のバナナを抱えているのか?中にはバナナの形をした銘菓らしき姿すら確認できる。
「えっへん、お姉さんの私が、エスコートするからね。湯船に浸かった気持ちで、頼るががよぃ。」
「それを言うなら、大船だろ?いやこの場合泥船なのか???」
まぁ良い、月の渓谷の隙間を飛行しながら、目的地は、且つて《静かなる都》(ウルブス・トランクイッラ)が存在していた。跡地、
そこに待ち受ける自らの運命も知らずに、ただ、母の詩を子供の様に、探し続ける。
機体が徐々に目的地へと近づくごとに、違法ラジオの電波に乗って、聞こえてくる懐かしいその詩が耳朶に、其の音階を仄かに刻み付ける。
この声、この詩は...母さんの詩だ。
どうして、死んだはずの時期から数年も経った現在においてもその詩が作られているか?の理由は分からないものの
その電波が放送している、場所は...確かに、都市部の中を移動しながら、展開されている。
とりあえずここから先の接近は、都市部の警戒網に引っかかる。
機体のモードを選択。基本のスタンダードではなく、クイックモードを選択、脚部を高速起動用に180度回転させ
変形を終えると
透過する実体を持たぬ存在でも熱量を持った粒子でもなく、その姿が、0と1との間の無限に存在する実数の間にある原子の隙間に機体を滑り込ませると、
その宙域一体に展開されるセンサーや照査されるレーダー波の隙間へと機体を滑り込ませる。
クイックモードの展開、制限時間は、凡そ5分、そして隙間に入り込ませることが出来る対象は唯の一種類のみ、
このままではレーダーの感よりは逃げられるが?熱感知や、目視による警戒に対しては、対応できない。
意を決して隙間に滑り込む対象を変更する。
徐々に高度を下げつつ、向かうは月面の地表...
初めての経験で狼狽える。年上の女性をリードしつつ、その行為に思いふける。
「ちょぉ、春幸ッ地面地面ッ!って?」
「ふふっんあたしは知ってたよ。だって見たことあるもん!!!」と、いうハルナの目には若干の驚きと涙目の形跡が見える。
「そんな便利な機能があるなら、先に言ってよッ!!」
んーまぁ説明するのめんどくさいしな、なる様になるさと、突き進む
月面を潜り込みながらも、推進機関を全開にして、突入。
月面都市へのエントリーを地面を潜る事によって回避したものの
放出する推進機構の勢いのまま、地上へと慎重にセンサー類を駆使して、人影や建物を器用に避けて、
都市部の離れにある。樹木が生え空気の浄化をになう森林地区へとの侵入を果たす。
一応、食料類やキャンプ用品に関しては事前に用意はしたものの服装も、一般的な、作業服から、ラフな、デザインの衣服へとモデルチェンジをする。
比較的温暖で、一定の温度に保持されている月都市の気温に対して、ややダメージの入ったジーンズと、クソダサTシャツに身を包む。
青葉は、若干、ファッションを意識して、Tシャツの端を縛って、その細い腰を強調するも、
そのTシャツに刻まれるは。死んだ目をした黒猫が、蛸と一緒に茹で上げられた奇妙の絵の所為で、全てが台無しになる。
んんーこのデザインどうにかならないかな?私、ひらひらのスカート付の動きやすい服装の方が良いんだけど?
「青葉ねぇちゃん、そんな気の利いたものが領五が用意した衣装で有ると思うのか?」
「そりゃぁそうね...」
クソダさセーターや変わった絵柄のTシャツをこよなく愛するその男は、胸に大きく、墨文字の男尻一筋と書かれたシャツを着ており、御他聞を洩れず、潜入用の衣服に対しても、その趣味を全開にしていた。
かといって外崎に任せると、童貞を殺すセーターとか着せようとしてくるからなぁ、いやなんでそんな服持ってるんだよ。
性癖捻じ曲がってんだろ?
まぁ、とりあえず、することと言えば、《セカンドアーヴル》の姿を隠す偽装工作をしてから、散策と調査を行う。
親父たちが、準備を終えるまでの時間はどれくらいかかるか分からないが、問題が無ければ、補充物資の補給もしておきたい。
この逃避行がどこまで続くか分からないからなぁと、
キャンプ用品で、テントを張り、シャワーの準備をする中、周囲の空気を嗅いで、何かの違和感を感じた
青葉が、険しい顔をする。
この匂い、この感覚...何故だ?どこかで感じたデジャヴを感じる。
いそいそと、キャンプの準備を放棄してゲリラ放送の音源の録音に入るハルナを他所に、
青葉の表情がどんどん暗くなっていく。
ちいさく、人の焼ける匂いがする...つぶやた声は、近くの住宅から香る食事を用意する匂いに違和感を感じたまま、
時間は経過する。
「どうしたの青葉ねえぇ?」
(。´・ω・)ん?
「いや、昔嗅いだ匂いが...」
嫌な予感がする。
「おいっバナナんボーイッ」
「あのぉ~あたしの事?今、丸ごとバナナの最終調整に忙しいんだけど?それに、んにゃのこなのよッ!!!」
「あんた。ウィンディゴ部隊が、普段食べてる糧食について何か知ってる事ないの?」
鼻の頭に、クリームを載せながら四苦八苦するハルナを他所に、
その詰問する口調は次第に強くなっていく
「んにゃのこなのにー。あれ不味いから知らないッ!」
ぷいっっとそっぽを向いて、丸ごとバナナにかぶり付き、顔いっぱいにクリームとフワフワの生地を頬張りご満悦。
(・д・)チッ
「春君。ちょっと嫌な予感がするの、街に降りるよ。良いね?」
クソダさTシャツを纏った三人は、思い思いに、念の為の自衛の装備を隠し持ちつつ、
月面都市の中央部のやや北側にある山林地帯から、街中へと降りていく。
街の様子は、特に問題になる様な気配は見られず。途中路面電車に乗り込み、街の最中を散策しつつも、
さっきの匂いは気の所為なのか?と、
街で売られていた、食料品を試しに購入し、且つての月面都市での一幕の様な、生体認証を求められる事もなく
唯々、コロニー間の共通のクレジットによる支払いを完了させる。
意を決して、包装紙をビリビリに破いて人齧りするものの、
その味その匂いを嗅ぎ食む...。
(。´・ω・)ん?
「普通の食べ物だね?あの匂いは私の気の所為だったのかな?」
と、もしゃもしゃ一息に食べ終わる。
しかし、街並みの中の建物の一角に違和感を覚える。
立ち並ぶ一角の壁の構成素材を、手持ちの検査機に通し成分を確認する...その成分は...
コロニーでも使用されていた通り、人体由来の素材である事を指し示す。
今の世の中では、特段珍しい事でもない。
だけど...コロニーの一部の建物に使われているだけであればわかるが、
この巨大な月都市の構造体全てが、人体由来と言えば、
かつてのクピドレスが行った。大量の神隠しと同様の事件が起きて居なければおかしい。
数か所の幾つかのサンプリングを行ったものの其の全てが、
同一の生体成分とDNAを指し示す。
どう考えても人一人分の分量ではない...嫌な予感がする。
そう言えばかつての戦闘で消えたクピドレスどもは?一体どこに消えて行った?
どこかに連れていかれたかの?情報は未だ判明していない。
コロニーで使われている資材の大半は、他の資材小惑星帯や、月から送られてきていたはず...
「ん?どした青葉ねぇ。」
「春君...確認したいことがあるの。」
…
…
…
何処か適当な、建設現場を見つけ、運ばれてくる資材搬入用の大型トレーラーが積み荷の荷下ろしをする作業員の様子を眺め。
会話に聞き耳を立てる。
「次の資材の受け取りが詰まってるからな、さっさと積み荷の荷下ろして、受け取りを急げよなッ」
「ヘイヘイ、人使いが荒いなぁ」と、作業に取り掛かる
ヒソヒソと、口々に小声で話す。
…
なぁあのトレーラ―に忍び込めば資材の出元に、行けるんじゃないのか?
と、荷下ろしを繰り返す作業員の死角に回り込み、
荷下ろしを終えた作業員は、いそいそとトレーラーの運転席に乗り込み、走り出す。
隠れて荷台に乗り込んだ三人は、
風を斬り裂くその奔る荷台の上で、上下左右に揺れる振動に揺られ、
ドナドナと運ばれていく牡牛を幻想させる。風に吹かれて、再び腐敗臭らしき、匂いに鼻腔を擽られる。
今度は、青葉だけではなく、春幸もその匂いに気付いた。これはウィンディゴ部隊からする匂いに似てる?
これは...
ん?
腐ったバナナじゃねーか?!
真っ黒に染め上あがり、黒く濁り淀んだバナナを取り出して、これ食べられるかなぁ?と
苦心する。ハルナに春幸が突っ込みを入れる。
違うッ
甘ったるく香る匂いとは違う。これは且つて戦場で嗅いだ匂いだ。
街の中心地へと向かって走るトレーラーの上で、丁度、夕食を作り始めるであろう。人工的に陽光を加工して、作り上げられた
一日の終わりにも近い、その疑似的な夕暮れの中、その不穏な匂いの出所を探る為に三人は、警戒しながらも、その目的地へと向かう。
ここは、居留地へとした、山林部から、更に中央部に北へ向かった先、たっぷり時間を計測すると、30分経過し、その頃にはすっかりと夜の色へと変わっていた。
トレーラーが停止し、運転手が運転席から降り、作業に入る間での間に、荷台から飛び降り、
荷下ろし口のシャッターを操作パネルに起動コードを苛立ち紛れに叩き込み、超過勤務に対する悪態を吐く。
開いたシャッターから内部へと侵入すると、居並ぶ資材の山を抜け、壁に掛かれた案内表示を頼りに。通路を遡っていく。
途中、建材を次々と運び込んでいく、輸送用ロボットを通路の陰に隠れて、やり過ごしながら、
案内表示にある。食料品搬出口の通路にはたりと気付き、目的地を変える。
何故、建材と食料品の生産箇所が同じ場所にあるのか?
この時点で青葉と春幸の脳裏には嫌な予感が過る。その気を知らずに、唯々、バナナを食べるハルナに対して...
この人ウィンディゴ部隊だったんだよね?と疑問顔を魅せる。
通路を右に左へと徐々に建物の中央部に向かって進むが、エリアが切り替わった、路に、侵入者の行く手をを阻むかのように、
設置された電子錠付きのドアを青葉が予め用意していた。開錠ツールを駆使して、解錠していく。
機器を翳して、数十秒後、電子錠付ドアは開いたものの、恐らく監視しているであろう。監視カメラには、
小型の伸縮式ハンドワームを取り出し、死角から、すっと、メタマテリアル(※自然界の物質には無い振る舞いをする人工物質のことである)を流用して特殊加工された。
人体のみの映像だけを消し去り透過す鏡面シールを張り付けてやり過ごすと、次々と、警備の網を掻い潜り、生成工場の中心部へと突入していく。
一体その器具の数々はどこから持ってきたのかと不信がるが?
青葉のこれおじさんの発明品だよ。の一言で、黙らせる。
進んだ先には、滅菌室に入る前に動作させるエアシャワーの一角を潜り抜け、通路の右側には、居並ぶ機械にベルトコンベア状の可動部分には、
両手足を切除され、苦悶の表情のまま、炉の内部へと送り込まれていく、あれは人なのか?いや違う。同じ顔、同じ表情、同じ叫び声をあげる。
何者か...クピドレスの馴れの果てだ...。
次々と炉に焚べ続けられて、反対側から、生成された糧食へと加工されていく。
なんで?ウィンディゴ部隊には、確かに人喰いの疑惑があるにはあったが。行方不明者が出ていたという報道は一切されていなかった。
それに月には居ないはず...問題はこの大量のクピドレスはどこからやってきてどこに行くのか?
じゃぁ、8年前にどこかに連れて逝かれた。クピドレス達は...。
ウッ吐きそう...それでも嘔吐感に堪える...
流れ行く材料とされた者どもの出元を探るべく、更に通路を進み、研究棟らしき一角に足を踏み入れる。
そこには...悪夢が蘇る。
天井まで伸びる稼働音を響かせる卵の様な装置に付随する水槽の中に、人の腕が浮いている。そして他には、足、腰部、臓器の一部がそれぞれバラバラになった誰かの一部が浮いている。
ひと際立派な水槽には、人体の腰部のみが浮かび
設置されている端末を覗くと、次々と様々な言語で書かれたテキストを翻訳機を使って読み解いていくと、
其処に掛かれていた一文は、《慈聖体》の生成実験体...1から10までのナンバリングの内9番目のみが欠番となり、中には近親交配を進めた所為で奇形児となった胎児が浮かぶ。
オリジナルに関しては、月都市の崩壊とクピドレスの本拠地と思われるエーリヴァーガルが、崩壊した為、断片のみでの生成が可能。
よって《黒曜鉄鋼》(ブラックライト)の生成が可能となるが、現状では足りない。《慈聖体》の生成が急務。
代替え品として、特定の優性体による、クピドレスに関する交配実験は、男女による配雑では、上手く行かず、
優秀体と思わしき、実験体、アニス=フライヤ-及びアイ=アシンによる交配実験を実施。
母体が未成熟の為、人工子宮による孵化を試みるも、染色体の違いにより、度重なる堕胎による失敗を繰り返すものの成功例は一体のみ。
1.A、2.B、3.C、4.D、5.E、6.F、7.G、8.H、9.I...10.J。
実験体No9、アイ=フライヤー...地球本部への移送中に、襲撃を受け、逃亡を許す。追撃を行うものの未だ所在不明...
「青葉ねぇちゃん、これってどういうことだよ?」
苦虫を噛み殺した様な表情のまま一言...
「8年前と同じだ...いや...むしろ酷くなってる...」
8年前...そうかこれか...親父が何故誰にも相談せずに、都市一つを一億人以上の人間たちをこの世から消し去る為の引き金を引いた理由は...でも、何故だ、クピドレスは既にその勢力が
崩壊してそれまでの技術は、逸失されたはずなのに?どこに残っていたのだ?
しんなりとしたバナナを取り落とし、嘔吐感に抵抗できないままハルナは、食べてた内容物を吐しゃする。
自分は、食べて居なかったが、一度口には含んだ事があるそれが、人体から精製されていた事実を知り、それまでの嘔吐感をこらえきれずに吐き出す。
手早く青葉は、端末へと記憶媒体を差し込みデーターのダウンロードを実行。
「というか、アイのお母さんって、裏切り者のアニス=フライヤーさん?だったのか?...」
助けなきゃと、も思いつつその言葉は舌の根の上で転び、上手く声にできなかった。母さんを殺した奴らを助ける必要があるのか?
父さんだったらどうする?どうしたんだろう?その答えは宙に消えて、思考が上手くまとまらない。
「だけど...こんなのは間違ってる...」
頭を左右に振って、雑念を振り払っても答えは出ず。手足が怒りで震える。父さん、親父...僕はどうすればいいの?
今は人気が無いものの恐らくまだこの研究棟には人が居るはずだと、吐き続けるハルナを他所に、
春幸に対して周囲を警戒させる。と次第に人が歩く歩調の足音が聞こえてくる。
ダウンロード迄の時間には僅かに足りないと...時間稼ぎの為に入口に対して、装備品が詰まったポーチから、
小型の設置型のクレイモア...対人地雷を仕掛け、その時を待つ。
ダウンロードのインジケーターが徐々に100%に近づく中、嘔吐を終えたハルナも、防御態勢に入って、銃口をそれぞれの出入り口へと向けて構える。
遠くで微かな話し声が聞こえる
「どうです?次の配合実験は、まだ使ってない組み合わせは...優秀な素体同士をかけ合わせれば《慈聖体》を作る事が出来るはずなのに...」
「やはり、母体同士の掛け合いにはまだ課題が残されているのでは?」
「まぁ奴らは、幾らでも生えてくる。モノだ。ダメなら有効利用して、また作り直してやればいい。」
「生み出し直せば、どういう原理なのか分からないが、その最後の断末魔の記憶を以て生まれるのは笑える。」
全く笑えぬその会話に、春幸の握った銃把に込められた手に力が掛かる。
ぷしゅぅーと電子音を上げて研究棟らしき一角の奥にある電子錠が開いたと同時に、指向性対人地雷の700個にも及ぶ小型の鉄球が
炸裂する火薬の爆発に押し出され、無数の弾体を以て、研究者らしき一団を、ズタズタに引き裂き、刻まれる弾痕の斉射の直撃を受け、有るものは絶命し、
人影に隠れて直撃を避けた幾人かは、斃れ伏すも、意識を失いながらも血を這う獣となる。
其処に青葉は、近づくと短くダブルタップで、引鉄を引くと向けた銃口から吐き出すそれにより止めを加える。
爆発音に気付き、誰かが緊急警報を発令。
回収した記憶媒体を引き抜くと、浮かぶ水槽に対して爆薬とタイマーを設置し、撤収作業に入る。
「青葉ねぇさん?アイの奴の母親を探さないと...。」
「わかってる。でも...ここは破壊しないといけない。探すのは後だよ。このままだと囲まれる。」
軍靴を鳴らして迫る。何者かの足音が近づいてくる
「青葉さん春君、こっちからも来るよ。足音の大きさとこの音は...重武装してる...」と、ハルナが声を掛け
もう一方の出入り口の逃げ場がなくなっている事に気付いく、
もはや、アイの母親を助ける余裕はどこにも無い。
苦虫を噛む表情を浮かべどうすればと思案する。
「春君、呼んで。呼べばきっと答えてくれる。あの機体が私が考えてる由来のモノであれば。どこに居ようとその名を呼べば来る。」
一体何のことか?と、悩みは尽きないが。絶体絶命のピンチで有る事には変わりはない
意を決してその名を呼ぶ
「来いッ!!!!《セカンドアーヴル》!!!!!!!!!!!!」
たっぷり十数秒を数えるも、なんら異変は起きず。
沈黙が流れる。
「あれ?こないよ?」
電子錠の扉が開き、動揺を誘う指向性地雷が炸裂し、敵の陣形に亀裂が走り、
ままよとばかりに
ハンドガンを構えての連射で、撃ちあいを行う。前後を挟まれ、次第に追い込まれている。
個人が携帯できる弾倉の数には限りがある。しかも軽装での移動の為、それほど装備していない。何度目かの
リロードを繰り返すものの
次ッと受け渡された弾倉を掴み、銃底に叩き込みつつ、スライドを引き、初弾を薬室に装填すると、
銃撃戦の最中で、警備兵が放つ低重力下用のサブマシンガンから放たれる銃弾に晒され、
腕を浅く掠める。
すわ、万事急すと なった瞬間異変が起こる。
長大な光の帯を巻き散らし亜光速の光の柱が、天上を突き破り研究棟の建物を崩し、消滅しながら一射、二射と、何処からともなく砲撃の雨が降り注ぐ。
崩れ行く建物にたまらず警備兵たちが後退していく。
月都市内部では、その頃、春幸の呼びかけには微動だにしなかったその機体が、いつの間にか自立活動を始め、対象者に対する保護活動を開始する。
左腕の龍牙連爪を展開しPyrolysis Breathによる砲撃を、遥か彼方の目標に対して照射。
保護すべき者の脅威から、保護するためにすべての機器を排除するべく、何の命令も受け付けずとも勝手に動き出したそれは、
機体腕部に搭載された位相空間アンカーをラインを結ばないまま射出、繰り出された基部が、聳え立つ建造物に突き刺さると同時に
稼働を開始。更にもう一方の位相固定アンカーを投射すると其の展開される水鏡を潜り抜けると、
突如として、建物を崩しながらその姿が現れ、器用に建物の残骸を払いのけつつ、その手を、腕を抑えて、苦悶の表情を浮かべる春幸に向かって
頭を垂れて、傅き、その手を捧げる。
その光景を見て、青葉は確信する。やはり...あれは...だ。
急ぎ、機体に三人の姿を収容して、コックピートシートに収まると。すぐさま、月都市の搬入路を潜り抜け、
長距離レーザー通信で《サルヴァートル・エクス》(超越する救済者)の面々に対して、
今から言う目標ポイント...月都市北東部の、クレパスの狭間へと、機体の射出を要請。
間違いなくこれからは、...厭...揺籃の胎児を喰いモノにする。胎喰都市...そこに住まう、獣たちとの闘争に入る事になる事を確信する。
ウィンディゴ部隊の追及を逃れるべくコロニーを旅立ち、一路、一行が、一考し向かった先は...同じく、月
亡き母の詩を求める逃避行の中、
しかし、事態は混迷を極め、震える星の宙で、星の瞬きにも似た無数の機体が中空を舞う。
王冠を頂く、その機体と対峙するは、いつかの宙の元で、遭遇した。
合わせ鏡の如く、同じ状況で、遭遇する。
月の都市...ならぬ胎喰都市...悪鬼羅刹が集うその場所で、おいて、宙を行く少年はいつしか青年となり成年となる、
母の揺り籠たる詩を聴きながら、辿る道行きは、屍山血河の修羅の道、死産を繰り返すその暴虐の都に、
断罪の刃を振り下ろす。
コックピット内部では、急ぎノーマルスーツへと早着替えを行った三名は、射出された自機に乗り込むと、
戦闘態勢へと入り、口々に、悪態を付きながら、自らのすべきことをただその引鉄を引くことに専念する。
大きいなセンサーと思しき、天を衝く様に聳え立つ兎の如きその両耳を模した頭部には、更にその示威を示すかの様に轟く後頭部へと昇る一本角
蒼い下地に染められた基部が覗き、所々に白磁色のラインが奔る。仄かに愛嬌を持ったその機体は、《ヴォーパルバニー》と名付けられた機体は
輝る刃を映しバスターライフルと兼用の巨鎌と、肩部に担ぎ背負う刀の刀装を備えた実体剣を備え駆るは、青葉=穣、
さらに、ハルナ=山崎が操るは、《アド・アストラ》のひと柱
星の海を映し出すかのような。大きなゴーグル上のツインアイに愛嬌のある顔に、メイン武装は、可変式大口径ビームライフル...
標準装備の【falcisファルキス】にもなる実体とビームの特性を併せ持ったシールドと脚部と腰部に装填された、外装ユニットに様々な実体兵装の弾体を装填する。
一先ずはこの陣容を以て、次々とと、機体を吐き出し続ける胎喰都市は、試しに繰り出した。突撃螺旋戦葬の基部から射出した粒子と結晶体による
連続射撃を放つも、其の全てが都市部に機能される。偏向フィールドに阻まれ、霧散しその壁面にすら、傷一つ付けられず。
その頑強な防備に、打開する手を思いつく事無く。事態は進む。
目下の眼下に広がるは...データーベースによる、機体名《ズー=ヌー=クア》と照合率38%の確率で...累計の機体である事を指し示すも、
その累系の先に広がる機体名は《デスリヴァナント》(DisRe:Revenant)の群れ...
複数の機体を継ぎ接ぎしたかのように、歪な機体の面影を残し、伴い這い寄る混沌の如く迫ってくる。
対する三機編隊の春幸達は、陣形を維持したまま、12時方向にスライドしながら、横に仰角を揃えての、多数の砲門からの集中砲火による破光を以て
その道を切り崩さんと吠えるが、
燃え上がる集中砲火に、晒されながら、人体の傷口の如く盛り上がり、その基部が増殖し再生を繰り返す。
主な組成体の構成要素は...
その頭部は双頭のそれぞれ左右に割れた骸骨の破片を纏い二つに割れた頭部が、一つ目の鬼を模した頭部と犬歯の間にモノアイが映る姿を見せる。
各部の手足は酷く歪に歪み、複数の機体の寄せ集めである事が解る
《ブレイズ=ガルヴ・ディム》...8%
《ガンベル―》...10%
《サン・ヴァントル》(腹無し)...8%
《グレンデル》...10%
《カニス・オブセッシオス》...10%
《アシパトラ》...10%
未確認...6%
少なくとも五機以上の機体のデザインが混じっている?
更には、次々と沸き立つは、結晶体のプリズムの様な半透明の装甲を持った《ヴィヴィアニテ》の群れ
その機体色は白と青、そして緑の配色が混ざった奇妙なその模様に触れたこちらの放つ、光撃は、気でも触れたかの様にその光を屈折され、あべこべの方向へと反射していき、一挙にこちらの放つ攻撃の優位性が削れていく。
「クソッなんで、突然、こんな状況になってんだよッ!!!!!!」
(俺は唯、母さんの詩を聴きたかっただけなのに...)
月面で知った事実に対して、悪態を吐く春幸は、動揺したまま、戦闘へと入る。
次々と、復興した月面都市から湧き出る。
蛆虫どもへと、《セカンドアーヴル》その銃口を構え、そして吠える。
「なんで、なんでなんだよッ!!!!!お前らそれでも人間かよ。」
春幸は、はじめて経験する大規模戦闘で、且つての自分の言が、いかに幼い夢想の果ての無理難題で有ったかを知る。
親父は...この状況で...最後まで諦めなかったのか?
あの時、どんな気持ちで、あの引鉄を引いたんだ...。
その答えは出ないまま、戦場では千畳にも似た傷痕を残した旋条が大地へと刻まれる。
一手目の粒子砲の一撃ではその防御を破れないと見て、結晶体の弾体と実体弾による投射に切り替えるも、《セカンドアーヴル》のそれに関しては、ジェネレーターの出力が許すまで放てはするが、僚機である《ヴォーパルバニー》と《アド・アストラ》に関しては、その装弾数については、
限りがある...
「こなくそぉぉぉぉぉぉぉ」
胃に酷い嘔吐感を抱えながらも、数ある弾頭の中から粘着性捕縛弾を選択。
「これで動きを止めて...」と、引鉄を引き、反撃の光の柱をバーニアーのひと吹きにより、その進路を変えて、彼我の距離を詰めつつ回避、
動揺の動きを覆い隠しながら戦闘へと入る。
放射された粘弾は、空中で炸裂し、敵機を数機覆うように展開されるが、プリズムの様な半透明の装甲を持った数機の機体は、寸前で、外部装甲であるミサイルポットより
実体弾をばら巻ながら同じく回避行動を行うが...ふと、違和感を感じる。
何故か、回避したはずの行動が、視界の端でその動きを止めた機影に引っ張られる様に、其の理が反転する。
先ほどまで、止まっていた。目の前の兎の様な頭部の機体が、動き出し回避すると思われたと同時に回避行動の起こりを見せた自機の動きが止まる?!
Σ(・ω・ノ)ノ!
同じく何かにつまずいたかの様に足を止めた友軍機に対して、《アド・アストラ》の粘着性捕縛弾が命中する。
粘性のその半液状化する個体に足を取られ、噴射気候であるバーニアーの穴を防がれ次々と複数の機影が落下していく。
これ幸いと、ハルナは、《アド・アストラ》の実体弾装を切り替え熔解焼夷弾を複数発射。
其れと共に三機編隊によるお互いの陣形を更に散開状に展開、敵陣に切り込みを仕掛ける《セカンドアーヴル》は、持ち前の高速移動と、位相空間固定アンカーを打ち込み
最小限の旋回半径を保持しながら、左右右左と、加速と旋回を繰り返しての一撃離脱を行う。
その背後では《ヴォーパルバニー》を駆る青葉が、その青き機体を操り輝る刃を映しバスターライフルと兼用の巨鎌を目標へ向けると、
機体表面を白濁した粘液に覆われた《ヴィヴィアニテ》と《デスリヴァナント》に対して、ここぞとばかりにその砲身から、極太の輝る閃光を射かける。
繰り出された閃光は獲物の基部に備え付けられた多重臨界を促す改造型のコンバージョンリングと増幅機関によりその粒子をプラズマ化させ。
球体上の電子の檻となったその牙を突き刺さんとばかりに吠える。
粘液で光を屈折する効果を無効化され爆散させられた。《ヴィヴィアニテ》を他所にその半身を抉るように刻まれた《デスリヴァナント》は、
凡そ原形を留めない大破状態にも関わらず、その姿が徐々に映像を巻き戻す様に、其の在りし日の姿を幻視する様に付けられた傷痕より、
異形の身体を見せながら再生させる。
一撃を可変する推進機構VTOL (Vertical Take-Off and Landing)を伴った背面部の翼と脚部から、球体と光の環の波動を足場にし、
急速加速と反転、その場での方向転換を可能とする変幻自在の機動に翻弄され、こちらの狙いが定まらない。
鈴の音を搔き乱す音を鳴り響かせるその寸胴状の左腕を楯に、身体の基部から生える銃身と鎌状の実体剣を
振り乱し、その獲物を投射し、
対する青葉は、機体の一部機能をONにして、自機の回避行動を停止し、回避行動の理を反転させるその機構に任せて、接近する刃を回避と共に大鎌で撃ち返す。
ハルナの機影を視界の端で確認しつつ、その動きをカバーしながら続くプラズマの投射攻撃を試みる。
前進する春幸は...操る機体から感じ取る。手応えが、感じられずにいた。加速し連打するガトリング砲の結晶体による実体攻撃も、
自己修復し、ガンベルーの電磁装甲を楯とする《デスリヴァナント》と、固く防御を固める《ヴィヴィアニテ》の六連結晶体のシールドに阻まれ、その攻撃の手を緩めないものの
火力不足による手詰まり感を感じる。
バスターモードでの一掃を試みるも、何故かモードチェンジが正しく起動できない...
何が問題なのか?よしんばその手札を斬れたとしても...ここには恐らく無関係な人達が居る。
周囲を見回し、一撃離脱で大きく旋回しながら、短距離レーザー通信で、僚機の青葉機へと語り掛ける。
「青葉姉さん、前に月都市を墜とした時には、どうやったんだ?!」
「それが...あの時私は...真実を知って...動揺した所為で、ほとんど何もしてない...」
「有効だと言えるのは、敵の搬出口を先に潰す方法だけど...都市の防護壁にこちらの射撃兵装が歯が立たない...」
先ほどから機体の射撃兵装を駆使して、搬出口を狙い続けるがその攻撃は、多数展開される六連結晶体のシールドをファランクスの要領で組み上げ壁とした
防御に捉えられ、暖簾に腕押し、既に、機体の搭載されている実体弾は、底をつき始めている。
「えっ?!」
(じゃぁこの物量を、親父は、一人で墜としたのか?!)
…
…
…
「おい、アンザス。もう尻の調子はいいのか?それとその説明誰に言ってんだ?」「やだなぁアンジェス殿。折角の地球観光ですぞ。この機を逃す手はないのでは?」と、
痛々しいい尻を摩りながらも、いつの間にか購入した。鳥の半身上げを頬張りつつ、答える。
「それはそうだが?」と、受け取った半身揚げにかぶり付き、その溢れ出る肉汁と口腔内でほろほろと解ける肉を味合う。
「ほぃ、地球の食べ物だよ。宇宙でのレーションとも違った味するでしょ。」「ほうだなぁ」と熱々のその身をたぶる。
「で、《エンゼルフィッシュ》の改修にはどれぐらい時間がかかるんだ?」「そうですなぁ、艦長と上級技官の話では。数週間から数か月か?」
「ふんふん、旨っって、ええええええーそんなに掛かるの?待てないよ!!!」春幸が抗議の声を上げるが。弱弱しく尻を摩るアンザスは、申し訳なくともこう答えるしかない
「いくらなんでもこればっかりは...。物理的に不可能ですからな...改修するにはそれなりに時間と手間がかかるものであります。」「君も、船が突然墜落なんて目に遭いたくないでしょな?」
それでも納得出来なさそうな春幸は、横に居るアイジェスに向かって助けを求める様に視線を泳がせる。その視線をその身に受けて…言葉を紡ぐ、
そうだな少し俺にも考えがあると答え、其れには、今後の事も考える必要が山積している。船の改修期間もそうだが、この街で、武装に使う弾薬や失った機体に装備、そして素材を手に入れる必要がある。
今まで作った装備の数々は次の戦場では役に立ちにくい。其の為対策を練りながら今後の対策を練る。
…
…
…
この三ヶ月の間に、地上で起きていた戦闘に関する映像を見せられた。それは、ほゞ一方的な蹂躙だった。そしてその時気付いた。あのおっさんが、その光景を眺めながら、表情では動じない振りをしながらも、
その握った手から血が滴り落ちる程の怒りと焦りを見せ、そして、部屋で泣いていたことを...なんで何も言わないんだ。きっとそれには僕には分からない理由があるんだろう...ならば聞かない出おこう。
「なぁーおっさん、部隊はこのまま動かないのか?敵の本拠地にはいつ向かうんだよ?」と、とと問いかける
「さぁなぁ、救出したコロニーが三基もあるしな、安全なL5宙域まで、牽引するって話だし、少なくとも数か月はかかるだろうよ。」ぶっきらぼうに答えるその声に、不満を漏らす春幸に対して、「行方不明のコロニーの被害者たちが何処に運び込まれたのかも分からない。敵の本拠地エーリヴァーガルかもしれないし、他の場所かもしれない。」「一つ一つ、潰して行くしかない。」
そんな諦めに似た言い分に、不満を漏らして、ぶー垂れる少年に対して...
...
...
...
俺は馬鹿な子供だった。親父がどんな気持ちであの時過ごしていたのか?一緒に生活した8年でその焦燥感と焦り、哀しみと無謀ともいえるその行動のすべてが
ただ一人の想い人に、その手を届かせる一念であった事を
僕は唯、不平不満を言って、親父に無理難題を押し付けていた...それでも親父は...決死の思いで、一人闘っていた。
だから、俺がするべき事は...
この状況を打開すべく足掻くだけだ。
自己再生による修復と、天の川の星の光にも似た数による暴力で、徐々に包囲網を敷きながら、三機へと迫り行く
その姿に対して、春幸は、《セカンドアーヴル》が右腕に装備する戦槍の穂先を構えると、
スラスターを全開にしての、再度の一撃離脱を急速反転と共に、実行
電磁加速と共に射出された、光るワイヤーの尾を引き連れて、その穂先が六連結晶体のシールドの壁に直撃する。
特大の衝撃を放ちながらも、その壁面には、やや大き目の亀裂が入るのみで、目標は返す刀のその手に構えた、実体剣とライフルを兼用する可変型の銃身から放たれる、収束する光の柱の反撃が構えた楯越しに光が貫き襲い掛かっていく。
咄嗟に穂先と接続していたワイヤーを解除し、飛行する勢いのまま月面の直上へと急上昇し、
ワイヤーを外し、その場に残した穂先が自立活動と共に回転。間断なく亀裂に対して抉るように突進を開始。
追従してくる機体を振り切りながら、視界の端で僚機の無事を確認しつつ、その囲いを崩すべく行動を開始する。
急上昇の頂点に達すると、急激に推進機構をカットし、やや弱めの月の重力による自然落下を利用して、機体の向きを変えた瞬間、直下に向かって
フットペダルを踏み込み再加速を点火。追撃に入っていた《デスリヴァナント》を置き去りにして、
下る機体は、今も尚防壁を築く盾の群れ。放つは位相空間固定アンカーによる射出。
数条の煌きを残して、着弾し固定された楯をその推力を以て一気に引きはがす。
アンカーに結ばれ、そして振り仰ぐ、脚部による蹴り脚を、奪い取った多重に重なる盾へと加え、背面のスラスターを全開にして、
そのまま未だ敵機の盾と噛み合う槍の穂先に対して、直撃させる。
大音声を上げる事もなく衝撃が奔り、防ぎ続けるその楯が砕け散る。無防備となった機体の装甲へ、
更なる追撃を加えるべく、放たれるのは、無情の一撃。立ち並ぶ《ヴィヴィアニテ》に対して、吐き掛けりしは、龍の吐息。
非展開状態で、その咢だけを向けて放たれたPyrolysis Breathの熱分解の炎が火の粉を上げながら
対象の装甲をその熱量を以て蹂躙する。
長大な炎の刃となったそれは、立ち尽くす月都市の外壁を軽くあぶり、外縁部部に隣接する。渓谷の一部を切り取り、崩し墜とす。
ひとしきり、結晶体の一団を屠りつつも、視界の端で敵機に囲まれる僚機の姿を確認
機体を回転しながら方向転換を行い。穂先を回収すると思に急速変形を繰り出し、加速する。と、
先陣を切るべく再度の穂先の射出を行い。自立するドリル型の《falcis》とし繰りだした穂先は、縦横無尽に敵陣の囲いを崩しながらも、
敵機の抵抗を受けて、その動きを十全に発揮できないまま、右往左往する。
目標となるは、数機の《デスリヴァナント》の姿。視ると僚機は《falcis》の反射板と、大鎌を駆使して敵の猛攻を防ぎ続けるも
頼りの綱の実体兵装が弾切れとなり、徐々に押され始めていく。
その頭部を切り落とされても尚迫る敵機は、斬り飛ばされた頭部を、再度の自己修復によって再生を行い、振るう
二等辺三角形の様な刃を魅せる実体剣と大鎌が交錯し、火花を散らしながら、数合の斬りあいを行った末に、青葉の乗騎の機体の方がその剛力に押し負け、
位置取りの間合いを後退する。
その最中、機体の腕部が乱舞する。
そこには獲物から手を離し、開いた左腕が引き抜いた得物が握られていた。
刀型の実体兵装が振るわれ、飛んだ腕部に驚愕する敵パイロットが、生じさせた数瞬の隙に、機体中央部に突き入られたバスターライフルの砲身を受けて融解破断を繰り出し、コックピットを中心とした基部を完全に破壊するとその動きが完全に沈黙する。
如何に不死身の回復力を以てしても、コックピットのパイロットが死んだ場合、その動きを止めるらしい。
その事実に気付いた。ハルナと青葉、そして単独行動していた。春幸も、その砲身から延びる一射の目標を敵の胴体部分へと集中攻撃を仕掛ける。
数合の斬りあいで、僚機との出力差が歴然として存在し、正面戦闘を避けるべく
互いの死角を補いつつ。春幸との合流を急ぐ。
廻る《デスリヴァナント》の可変する推進機構VTOL (Vertical Take-Off and Landing)により背面部の翼を駆使して、その場での方向転換により
その軌道半径の差てこちらへの包囲網と接近を試みてくる。
その危機的状況において、穂先を喪い。唯の空洞となった柄とガトリング砲の砲身からは、不気味な稼働音を響かせながら、何を思ったのか喪った穂先が存在するかの様な
動きで、包囲する《デスリヴァナント》に照準を合わせると高速機動のフライトモードのまま、突撃を敢行。
それでもまるでこちらの攻撃を避けようともしないその動きに違和感を感じつつ、戦槍の柄より。更なるギミックが発動、
大型のビームサーベルにも似た、その光り輝く刃を、機体の何倍もの長さまで伸長させ、その刃が、動かぬ《デスリヴァナント》のコックピットを貫き、
撃墜させる。伸びる刀身を縮めながら、虚空にアンカーを打ち込み僚機の周囲を警戒する様に旋回。
見るとハルナ=山崎も、引き抜いたビームサーベルを駆使して一機を仕留めていた。
だが依然として、十重二重と襲い掛かる。敵の威容に、何度となく機体と機体の位置を入れ替え、死角を護り、僚機との援護と合わせての撃墜の
戦闘を繰り返し、次第に、装備に備えられた残弾が心ともなくなっていく。
振り払うビームサーベルの刃すら、エネルギー切れを起こし、発動が困難となる。
撤退しようにも囲まれた春幸達は、一か八かの敵陣への突撃を試みるも、
脳裏に離れ離れになった父の言葉が過る。
「お前は。お前だ、俺に倣うのではなく、お前の望む詩を謳い。その無限の一の中からその鍵を掴み取れ」
「音声認識による命令を受諾しろ。俺は、憎しみに染まる復讐者よりも、弱者に寄り添う当事者でありたい。キーワードは...Life is white命を謳う無垢であれ...無限の一の中からその鍵を掴み取れッ!」
蒼く光るその眼の中から、何かが産まれる。純白の彩を魅せる機体が、それまで掲げていた。
五つの王冠の内、二つが外れ、隠れていた頭部と稼働する王冠の如き装飾品に覆われた右腕より離脱、備えられた幾何学模様の文様が顕わになる。
象るは宝食の宴、アンロック...真なるその名は、ダグザの大釜...
其れ迄、限りなく0に近かった僚機の武装のインジケータが100%まで上昇し、撃ち尽くしたはずの弾倉がいつの間にか回復している。
その不思議な現象は尽きる事ない無限に食を供する大鍋となる。
心許なかった推進剤の残量すら回復するその現象に、不思議な感覚を覚えるも、操縦桿を掴むその手にすら覚えていた疲労感すら綺麗に消え去っていた。
そして...
操縦桿を操作し、モード選択を起動。
コンソール上の文字列には、エラディケーションシュラウドモードを選択。機体の上半身と下半身の機構を180度回転させ、反転すると、それまで隠れていた異貌が顕わになる。
燃え上がる様に光る左右非対称の、ツインアイは、その大きく輝く相貌が反転し、変形時に機首となるユニットカバーは降下したまま、覗く光をその隙間から魅せ、
それまでフライトユニットと思われていたブースタは、其の羽を刃煌めくアームカバーへと変じさせると、左右の腕部へと収まり、反転した機体の脚部は、高速機動とプラズマによる脚撃を見る基部へと180度回転し、
画面に移り込む出力を示すインジケーターは、測定不能を指し占めし、その威容を晒すべく稼働する
重破砕塵刹双皇刃クリュセイオン・アオル。
発光する光が、急激に膨れ上がり、一対の羽のそれぞれに、漆黒の王冠が、装填される。燐光を巻き散らしながらその暴風雨が、
全てを洗い流さんと振るわれる。
乱暴に繰り出された右腕が、脚部より噴出される推進機構に後押しされ、直前で推進機構VTOL (Vertical Take-Off and Landing)での、挙動で、
宙空に停止しながら、方向転換を行う。《デスリヴァナント》は距離を開けようと推進機構を逆進するも、咄嗟に踏み込んだその脚が、その彼我の距離を10から0へと瞬時変じさせ
繰り出されたその護拳する刃が、敵機の電磁シールドと大型の二等辺三角形の実体剣でその衝撃を受け止めたかに思われた瞬間。
《デスリヴァナント》は、触れた端から、その機体の装甲を塵へと帰しながら、焼却され、熱量を感じさせない冷たく熱い、その衝動に身を炙られながら...
「ああああああ、温か...きもちぃ...逝く...ばぶぅ」
あふれ出るママ味に包まれて、死の苦しみすらその限界を超えて、発射されたそれは何の抵抗も見せずにこの世の果てまで昇天させる。
それは死すら救いとする。慈愛の剣、あっと言う間に、背後の数機の機体ごとその衝撃はで貫かれ散り塵となったその光景に慄きながら、
機体を操るハルナは、何らかの影響を受けて途切れたエネルギー残量から一気に溢れんばかりに零れるその豊満な力によって、手に持つ発振する光剣は、天にも届かんばりに
放射する光の御柱となって振り下ろされ、敵機の一機を撃墜させる。
Σ(・ω・ノ)ノ!
「えっあたしの機体にこんな機能無いよ?昨日までは?!」
その異常事態に、青葉も機体の感触を確かめながら砲撃を選択、通常時より遥かに巨大な、プラズマの榴弾を放射し、敵の集団を巻き込みながら着弾する光景を眺め...
おかしい、明らかに搭載兵器の威力が上がっているし、撃ち尽くしたはずの弾薬が復活してる、
試しに、2発、射出するが、すぐさま弾数の数が復活する...。これをやってるのは...春君なの?
...
...
...
疑問は残ったものの実体弾の弾数が復活し撃ち放題となればと、只ひたすらに、月都市の搬入出口に向かって一斉投射を叩き込み続ける
中には、多数の機体よりの迎撃により、其の弾体を撃ち堕とされるもその倍にも達する程の速度で撃ち放ち続ける。
春幸は繰る《セカンドアーヴル》の動きに合わせて量産される塵の群れに対して、徐々にその振るう速度を加速させていくものの
脳裏に嫌な予感を感じると同時に、違法電波で送信される。歌声がその耳朶に、届き始める
「母さん?!良かった生きてたんだね?!?!父さんもよ...」
その歌声に乗せて伝わってくるは...。
「私の息子がもしもそこにいるのであれば...逃げなさい。今の貴方では、これから来る獣には勝てない。お父さんを探しなさい。」
ん??!?!?!
「貴方にはまだ...の可能性が残されているのそれを花開かせるまでには、まだ時間が必要...。」
「母さん意味が分からないよ。そこに居るの?!今助けるよッ!!!!」
「私の息子がもしもそこにいるのであれば...逃げなさい。今の貴方では、これから来る獣には勝てない。お父さんを探しなさい。」
「そして、二人で埋めた植樹した地へ赴き、その事実(答え)を知りなさい。」
おなじ口調同じ声話音で繰り返されるその声に、それが録音されたもので有る事を如実に伝えてくる。
「ねぇ春君?!一体何が起きてるの?!」
乱立する戦場の中で、墜とされゆく機体を他所に胎喰都市は、鳴動する。
そして各自の機体のディスプレイ上には、赤文字の危険を知らせるアラートと共にERROR表記に撃尽くされたそれに...。
メッセージが浮かぶ...
《アンブレイカブル》(Unbreakable)...。我は、壊されぬ者...
何者かの鳴動と共に胎喰都市の未成熟な胎盤が剥がれ落ち、それまで孕んでいた。基部がその姿を現す。
組み替えられた防壁が組みあがり巨大な人型の何かへと変じ、生まれるは、無数の《ヴィヴィアニテ》にも似た巨体の群れ、
その口腔より放たれたしは、閃光の波涛、
流れゆく閃光は一筋の光を残して、春幸たちの背後に着弾すると、その衝撃に煽られ、機体のバランスが崩れる。
アレが壊されぬ者
《アンブレイカブル》(Unbreakable)なのか?と思うも、その姿は、幾重にも現れ出でる。
いや違う敵は巨大だが、そのプレッシャーは先ほど受けたモノとは違う、其の名乗りから推測するに、
あの戦役で、艦隊を一撃で沈めた編纂されぬ者...アンエディテッド (unedited)と、同型機のはず?であれば...
機体は一体のみのはず?!
事態は更なる混沌を極め、そして続く。
〆
毎月、月末最終日に2話更新予定。
誤字脱字、誤りがあったら修正するので、教えてください。




