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無法者の詩  作者: 唯の屍
18/20

第十八話「夜色狙撃手」

18話 ※イメージソング

UVERworld 『バーベル~皇帝の新しい服ver.~』

https://youtu.be/qOO_VdPS0xQ?si=BMLwo1Su1NyuMmAu


Acid Black Cherry「優しい嘘」MV

https://youtu.be/EZ51IhBcOEY?si=dXTjriQIkTIMOmQ7

其れは、地球から遥か離れた宙域での事...目標の素体の居場所を探り、そして奪取する為に、


派遣された一団は、地球との交信をしながら、目標の居場所を探る。



最後に確認されたのはL4宙域の一都市群に属するコロニーヴァルハル...その平穏な時は、


無遠慮に、下されたその狙撃命令により、風雲急を告げる。



何処からともなく飛来する。光速の射線が、コロニーの基部を貫き、崩壊へのカウントダウンを刻み始める。


崩れ落ちる橋脚。洩れる空気、河川の底が抜け、水が渦を巻いて宇宙へと漏れで出でて行く


次々と花開くスプーマの華が咲き乱れるも、手助けするべく防衛隊は、動けないまま、


被害だけが拡大していく





その行為に対して、敢然と立ち向かうは、《セカンドアーヴル》を駆る。春幸の姿のみ...


迫るコロニーの危機に、奮戦するべく孤軍奮闘するが、


機体のセンサー上には、複数の機影が映り、そして、何処からともなく飛来する。狙撃の一撃が、セカンドアーヴルに襲い掛かる。


重力感覚器官《Sensorium Gravitatis》(センソリウム グラウィタティス)を全開にするも、その目標の発射地点は把握できず。


がなり立てる機体のERRORと共に、弾道予測を行う。軌道プログラムを並列起動。


計算が終わり、射撃の射線から狙撃地点を逆算し割り出すが...



導き出された答えに絶望する...


地球上...成層圏内のギアナ高地付近...



なんだと?



・・・



・・・



・・・




気だるい暖かなコロニー内部の管理された気候の中で、その日何度目かの欠伸を噛み殺す。


雄のネコ科の猛獣の姿を幻想させるような、その表情に、


その姿を隠れて眺めるエクィタス=ユースティティアは、苦笑する。これがウェンディゴ部隊とひと悶着を起こした男の顔か?


翳では、前戦役で、戦場に出た事もあったと噂をされていたが、周りの噂話など、どこ吹く風で、今にも昼寝をしはじめかねないその気の抜けた横顔を眺めながら、小首を傾げて笑う。


教壇の上では担当教官のバンキッド=アルマニャックが、マレディクトの勢力圏で広く使用されている。


動力炉...より放出される粒子の特性を説明し始める。


「かつて主流として使われていた核融合炉と、安全性の面からも、メンテナンスや出力の安定と生み出されるエネルギーの質どれをとっても、


未だ、《Fictumフィクトゥムドライヴ》の利便性を超える物が出て居ないのが実情。」


「その多くの燃料は、定期的に炉心の一部を交換する必要はあるものの、その継続稼働時間とそれ以後に必要なものは、水のみである為、ジェネレーターを稼働すると、


断続的に電波を妨害する特性を持った粒子...。グレフエフスキー粒子を放出しますが、それでも有用性は揺るがず。広く使われる事となっています。」


おかげで我々は、その恩恵を受け、不自由のない生活を過ごしているのです。と締めくくり、次の説明をししようとした瞬間、


ハイッと勢いよく手を挙げる生徒が質問の声を上げる。


「でも、先生何故「罪」や「過ち」を意味するその言葉が名付けられているのでしょうか?気になって夜しか眠れませんッ!」


「なるほど、鋭い質問ですね。ですが、其の名がどうやってつけられたかについては、未だ明確な説がありません。その恩恵を享受するその怠惰が、罪深いという人も居ますからね。」


その言葉を聞いて領五と春幸は苦笑する。


コロニーの気候は安定し、一年中、春の装いに似た表情を浮かべる。農業プラントでは、今頃、秋の刈り入れ時期が始まり、銘々が作業に駆り出されているはず。



親父も今頃、その作業に追われている事だろう。



そんな授業風景の与り知らぬ場所で、騒動の火種は燻り続ける。


「大佐ぁ~機体を墜とされちゃったからって落ち込まないでくださいね。はぃバナナあげます。」


ムスッとした口を曲げ、ぐいぐい押し付けてくるバナナを拒否しつつ。


「わかっているつもりだ、まだ我らは生きている。であればこの勝負はまだついていない。ハルナ=山崎。本日ヒトフタマルマル(12:00)に新機体を受領する様にとの命令が出ている。」


「受領後、慣熟訓練に出る。今回は友軍機との連携を密にする必要がある。【falcisファルキス】の使用適正は、いくつだ?」


「ほぃほぃ確かAI端末の補佐ありですが。B+でしたね?隊長は?」


「俺は、AI端末の補佐があれば、A-だ。」


「へー適正高いですね?じゃぁフルーツ=ポンチさんと、ヴィクトム=フォルストさんにも声を掛けておきますね。やぁー?ふぅーハハハ」



早速とばかりに、すぃーっと自らが乗る艦船のメンテナンスドックへ移動し、その威容を確かめる。


えーとなになに、手渡された電子マニュアルを覗いてみると、機体名は...。


《アド・アストラ》(Ad Astra)は、ラテン語で「星々へ」を意味する。


星の海を映し出すかのような。大きなゴーグル上のツインアイに愛嬌のある顔に、


メイン武装は、可変式大口径ビームライフル...標準装備の【falcisファルキス】にもなる


実体とビームの特性を併せ持ったシールドと脚部と腰部に装填された、外装ユニットに様々な実体兵装の弾体を装填可能と、弾倉は、粘着性捕縛弾および、熔解焼夷弾...


両肩に装着された計八基の備えられた《アストラ》...。星…と見紛う充電可能な【falcisファルキス】であり、分離して八基の砲台として使用するのか?


四基づつ合体させたまま使用しての盾兼、狙撃補助に使用?...連続使用に...。注意されたし...


なんのこちゃわからんちんちんだけど、まぁいいか?






事態は徐々に悪い方へと流れ時は留まる事を知らず、流れていく


其れは、青春の終わりの続き、それまで通っていたグリームニル学園の卒業までの景色が見え始める段となっても、専攻する学科への進学を断念するのか?さりとて、ウェンディゴ部隊へと、入隊する気も無く。


結局、僕は親父の手伝いをすることにする。おっさんは、しきりに進学を進めてくるが、どうにも僕には、母さんと同じ、科学者の素養は無かった。


一緒に暮らしてる時には、自作の詩を聴かせてもらう時以外は、これは将来、とても大切な研究になるんだと?


何かの転換技術に関する研究に、没頭していた。


それを可能にしていたのはもう一人の父親の協力あってのモノだった。


一体何の研究をしていたのかは分からないけれど、僕は出来ればその研究を引き継ぎたかった...


だが、研究資料や諸々の設備はL2宙域のアイリスにしかない。


今は、人も戻っているだろうけれども、それを引き継ぐには、其処迄、向かわねばならない。其の為には、足が必要だ。


それならば、親父の仕事を手伝い。宙へ旅立つのが良いだろう。と、進学への道を選ぶことを躊躇する。



...



...



...



油まみれになって、年代物の旧式機...今現在、正式採用されている量産機である《ブレイズ=ガルヴ・ディム》に比べて随分古い。


もう一世代昔の《カルペ・ディエム》の、其のまた下の《ディエム》より古い三世代前の骨董品ヴェリタスが、親父が乗騎を喪ってからの仕事道具だ。


なんでも、マレディクトでは、近々新しい最新鋭機のお披露目を控えてるらしいが、万年金欠の我が家には、それだけでも僥倖。


武装は補修用のトリモチと、通常のダミーバルーンに緊急用のチャフ、小型のビームライフルと一体化した。作業用の杭打機が申し訳程度に装備されている。


整備倉庫内には、その他に、ディエム用のビームライフルや、実体弾を投射するグレネード投射機などを詰め込める専用ラックが並ぶが、長い事使用された形跡がないものが多数、


それでも日々のメンテナンスを欠かさず。大事に扱っている。


僕の《セカンドアーヴル》を使えれば話が早いのだが、初戦での戦闘で、ウェンディゴ部隊に敵性機体と認定されてしまっていて、生憎表立って使えない。


見るからに、類似の機体なんてとんとみかけない、ワンオフ機だからなぁ。


定期的に操作感覚を磨く為に、コロニー周辺を飛び回っては見ているが、あの機体にはまだまだ隠された機能がありそうだ。


ただ、それだとしても、それ一機でウィンディゴ部隊すべてを相手取る事なぞ出来ず。


人気のないタイミングでの手慰み程度の活用方法。


「あーあ、あいつが自由に使えたらなぁ。」


「おーぃ、春幸。機体の消耗品パーツの交換が終わったら、明日のデートの準備でもして置け。」


「ほぉーい。」


あれ?でもこの消耗品パーツの在庫ってまだあったかなぁ?


ガサゴソと、家に隣接する格納庫の奥をひっくり返して、目当てのパーツを探し始める。


...


暫くの間四苦八苦しつつ、目標の品を探り当てると意気揚々と交換作業に入る。


なにぶん旧式だからな、交換品一つとっても大仕事になる。部品の発注票を掴んで、追加の備品の補充を試みるが、


この旧式に合う部品がいつまで供給されるのか?と疑問顔のまま、作業に没入する。


そういやぁ明日は、ユミナリアとのデートだったな、まぁいつもながら、未だに馴れずドギマギする。


と共に胸に鈍い鈍痛が奔る。


翌朝、見慣れた駅の改札前で、待ち合わせをし、古い映画のリバイバル上映を二人で見に行く。


内容は酷く古い、白黒のトーキー映画。


酷く渋い趣味だなと、苦笑するモノのその内容は、悲恋にも似たその結末に、息を飲み、隣に座る


ユミナリアの顔を覗き込む。


ひどく均整の整った。その目鼻立ちと、長くまとめられた髪に、其の潤んだ瞳に息を飲む。


自分にとっては理想とも言うべきその姿に、いつも一緒で、そして、いつも勇気をくれるその信頼に、


これで良いのか?とも思うも、何故か映画と関係ないタイミングで、その両目の目から涙があふれる。


映画の内容にハラハラとして、気付いてているのか気付いていないのか?


その姿とは対照的なその姿が一瞬、目に浮かび、その小さな身体を守るほど、僕のこの手は大きくない。


それは...伺い知れない。何かを指し示す。


ただいつのまにか、強く繋がれた手と手の感触に、安心感を得つつ。


舞台の幕が閉じ、いつの間には二人は手を繋いだままでいた。


握る体温と、触れる肌の感触を感じながら、二人が一つになる感覚を共有する。


街を歩く。歩く、歩く、見上げるコロニー内部の上空に広がる街並みを眺め、繁華街の雑貨屋に飛び込むと


品物を選んで、贈り逢い。


贈られた髪飾りを嬉しそうに鏡を眺めながら、艶めかしい姿態でポーズをとり、嬉しそうに笑う。


その事に嬉しいと同時に去来する思いに、未だ名前は付けられていない...。


且つて暗闇の中で、触れた。口づけは、その対象を特定できずとも、其の息遣い。体温、漏れ出た声、其の全てがただ一人を指し示すも未だ不明。


それでも、最後に触れた。掌の感触は、確かに、彼女を感じていた。





未だ馴れぬ唇の感触を思い出しながら、僕は、其の疵痕を撫でながら、詩を心の中で唱え続ける。


その詩は、誰にも気づかれる事なく、華も開かず朽ち果てる。それでも最後に流した涙は、流れ続け何を暗示しているのか、未だ僕は知らなかった。


街を散策する二人を他所に事態は急変する。


ヴァルク・チラヴェクは、羊水が満たされた正方形の人の胴体程の大きさの箱を持ちだし...隣接する端末に触れると、コードキーを入力、


帰ってきたくぐもった声に耳を傾けると。その目標が、間違いなくこのコロニーにある事を確信する。


「目標の所在地は凡そ把握できた。各員、臨検に入り次第、目標の確保を第一優先としろ。」命令をくだすと


同宙域において、ウェンディゴ部隊はコロニーを突如敵性認定として臨検の実行を提示...


突然の来訪を告げる鐘が鳴り響くなか、無遠慮にその領域に踏み込まれ有るものは抵抗し、有るものは無抵抗なまま、蹂躙される。


町中で緊急事態を知らせるアラートとアナウンスが鳴り響き、


危機を察知しデートを切り上げると、ユミナリアをここら辺で一番安全そうなアンザス家に送り届けると、自らは、奔る。


襲撃者の影は、恐らく遠くで見えるその機影から、ウェンディゴ部隊による急襲だと確信する。


恐らく奴らの狙いは、アイにあるはず。どうしてこんな小さな女の子を奴らが狙っているかの理由は分からない。


だけど、僕がやる事は決まっているさ、と


意を決して、《セカンドアーヴル》へ、小さなアイを連れて、不安そうな彼女を落ち着かせ、手を握って安心させると、


「ハルユキ?ハルユキ??ハルユキ!?...」とその名を連呼して


不安そうな少女と共にノーマルスーツに着込み、抱きかかえて、サブシートへ移すと、


その間に、コンソールに次々と灯が入っていく光景に満足しつつ、中隊規模とは言え、自分一人だけで、対処できるのか?と、疑問に思いつつも今はやるしかないと、


操縦桿を握り込む。


まるであつらえたかの様にフィットするその感触に、みるみる内に自身の自信が競り上がっていく。


一先ず、街から奴らを引き離すべくと、背面部のユニットカバーが機首とし頭部を覆うと、腕部と脚部を折りたたみ、戦槍を機首下部へと収めると、腰部を回転させて、


背面のブースターと同一化されたフライトユニットが展開し翼となり、一撃離脱を旨とするその機体は、戦闘機形態へと変形すると、飛行形態のまま、コロニー内部を飛行。


その姿を目視した、ウェンディゴ部隊は...端末から帰ってくる位置情報と照らし合わせ、目標を確認する。


複数編隊の《ブレイズ=ガルヴ・ディム》は、その目標に対して警告を告げつつ、


機体背面部と脚部から、球体と光の環の波動を足場にし、急制動を掛けつつ空を渡り、星々の煌めきを纏い機体を制御しながらその推力を駆使して、


目標の背後に肉薄する。


スロットルをやや弱めに斃し、一気に引き離さない様に慎重に、調整しつつ、その注意を自らへと注がせ、


予め想定していた。搬入ルートを元に人型に変形し、手早く潜り込むと、


コロニー内部から外部へと、追手を引き連れ、離脱を開始。追いすがる中、放たれる牽制のビームライフルによる機銃掃射を


咄嗟に左腕を半展開、龍の咢と見紛うばかりの牙より発する。熱分解の光の膜を楯として、その銃撃の雨を、受け止める。


コロニーの外壁へとダメージを防ぎながらの逃避行を開始。


銃火は、今も続くが、構えた槍の穂先を覆う前腕のカバーを楯として、受け流し、霧散する光の粒子が、下る搬入口のエレベーターの外殻を浅く弄る。


次第に下がっていく搬入路を抜けて、エアロックへと到達すると、一気に飛行形態へと変形し、悠々と挑発する様に、


臨検の為に港へと駐留する。艦船の艦橋から、目視できるように、二度三度、大きく機体の尻をふり、狙いは此処だぞと?挑発的にまざまざと魅せつけ、


釣りだされたウェンディゴ部隊は、内外から飛び出した《ブレイズ=ガルヴ・ディム》の四機編隊を三部隊繰り出すと、その挑戦的な機体に対して、包囲戦を仕掛ける。


「よし...掛かったな?」あとは、機体の速度差で一機づつばらけさせて各個撃破すればいい。


出来る。出来るはずだ。あの日の親父の様に、俺も...


蠢動する、一機の《鶴立企佇》(かくりつきちょう)の如し、その機影は、わざとその速度を落とし、乱れ飛ぶ銃撃を警告の声音と共に吐き出すそれらを嘲笑うかの様に、


回避迎撃戦へと躍り出る。


水平飛行から急上昇し、ループの頂点で180度ロールを実行、進行方向を逆転させる機動により、瞬時に敵機の後方を取るムーブを実行


ループの頂点での背面姿勢からロールを極め水平飛行へと移行する最中で、敵機の背面を執ると、狙いすませた高速回転するガトリング砲の偏差射撃に、


堪らず一機の《ブレイズ=ガルヴ・ディム》の背面から煙が上がり、撃墜。


その攻撃を察知した僚機達は、散開を選択、互いの死角を後続の機が護る。ムーブを選択。


囮役と攻撃役が機織りのように互いに三角交差でのS字に旋回を繰り返し敵機に後方を取られ取らされても、


その死角を奪い。僚機へ晒される攻撃をいち早くカバーする。


応酬される光のコントラストが、何もない宙で回転するコロニーの太陽光パネルの影が見え隠れする。


回避しつつその宙域、光に照らし出される翳を引き連れ、その想いが、迸る。


咄嗟に、機体各部の姿勢制御バーニアーを点火、敵機のオーバーシュートを誘発しつつ、


水平飛行から背面飛行にロール、そのまま下降して方向を反転させる機動を展開。


急速に高度を下げながら敵の攻撃を回避し、コックピット内部で、揺れるジャイロセンサーで、自機の位置取りを確認。


墜ちる機体から更に加速と、下降をくりかえし、その頂点から、一気に急上昇。


廻る敵機の姿を探し、旋回を選択。


旋回戦中に急激な横滑りを加えて旋回半径を縮める機動を展開。サッチウィーブ(Thach Weave)による敵の防御を打ち破るべく、


最後尾の《ブレイズ=ガルヴ・ディム》に向かい斜めへと急上昇し、一撃離脱を選択。



射かけるガトリング砲の一斉射を展開する実体盾とビームシールドの壁で防ぎきると、再度の散開。


対抗する春幸は、敵機からの照準に入るタイミングを最小限迄、減らし、接敵するタイミングをコントロールしながら、


乱入してくるもう一つの四機編隊の攻撃に晒される。


増える銃撃の雨、跳ねるスラスターの灯、燃え上がる。推進機構よりあふれ出る覇劫。それらの機動を以てその災禍を振り払わんと


奮闘する。


直進する一撃離脱を旨とする。機首前面に装着された、回転する刃を伴った衝角ラムを突き出し、突撃を敢行、


幾度目かのアタックによる一撃に、堪らず《ブレイズ=ガルヴ・ディム》の左腕がはじけ飛ぶ。


単銃身の機関銃型のビームライフルに大型のエネルギーパックを備えつけ、ただひたすらに光弾による連続射出の弾幕を、直撃を避けたものの、


衝撃でバランスを崩した一機を除き、六機の《ブレイズ=ガルヴ・ディム》が、二機づつの編成を組み、


三方より、射線を押し上げ互いにS字の機動を描き、射角を取りながら遠く離れた艦船よりの艦砲射撃と交えて、


こちらを墜とさんと、迫る。


その空戦機動に合わせて大きく旋回軌道を描きながら、その姿、その軌道を眺め、絶対的な出力差と、旋回性能で多数と対する一の不利を覆さんと吠える。


加速する機体に備えられた武装は、メインのガトリング砲と、機首の衝角ラムそして、脚部が折りたたまれ、砲口が覗く、


機体の主翼となったフライトユニットから射出される、位相固定アンカーで固定、最小限の旋回軌道の機転を制止、


更に追加の四機編隊の都合、10機編隊の、制圧射撃が襲い掛かる。推進力による高速機動で振り切りながら、徐々にコロニーの外延部より距離を取りつつ転進する


手負いの一機を墜とすべく反転、一撃離脱を繰り返し奮戦するが、一機を撃墜し、手傷を追わせてた一機を敵の僚機たちが、戦陣を象り、


いつの間にか包囲制圧から、密集形態へと移行。360度の射角から放たれる機関銃型のビームライフルの弾幕に晒され、


こちらの一手が届かない。


其れを崩すには...伸びるアンカーの狙いを虚空の一点より。敵機が構えるビームシールドの防御へと帰る。


何の抵抗もなく、平面の水面に波紋を浮かべ突き刺さり固定化させるそのアンカーが、虚空に打ち込み固定化するその特性、それゆえに、機体的なダメージは、皆無。


一体何をしたいのか?と訝しむ間もなく。「あっ」と、叫ぶ間もなく、放出される出力に引っ張られ、一機の《ブレイズ=ガルヴ・ディム》姿が、吊り上げられそして、陣形の一部が崩れる。


吊り上げた獲物に対して、固定される機首の下部、人体形態においては、左腕となるはずの龍の咢を模したクローハンドが稼働。


大きく射角を変えて放たれる青白い炎を射線が、吊り上げて無防備な腹を見せて、追従するその機体に向かい。


「Pyrolysis Breathパイロリシスブレス」の咆哮が、突き刺さり爆炎の華を花開かせ、無惨にも散る命の鼓動を感じながら、春幸は次の獲物を探す。


思っていたよりも大分手間取るな。少しでもその数を減らさねばと。無傷の9機の《ブレイズ=ガルヴ・ディム》と1機の手負いの機体を減らすべく、


再度の一撃離脱を敢行、だがその場に起きたのは、目標の沈黙ではなく。


何か。浮遊する星の欠片の如く瞬く。機影が踊る。


投射する乱れ撃つガトリング砲の一撃が囲いを抜けて、手負いの機体へと狙い撃つが、命中する直前で。星の様に光る何かに遮られ、その攻撃が


明後日の方向へとそれる。加速して敵の陣容を通り抜ける瞬間に見たのは、更に数分割された【falcis(ファルキス)】の群体を引き連れた、


見慣れぬ、機体の姿。


あれは?一体なんだ?新型なのか???疑問顔の春幸はそれでも自らが引く引鉄の重さを感じながらも、打開策を練るために、再度の吊り上げを実行


続く投げかけるアンカーの一撃を、喰らえば自由を奪われるぞ、とばかりに、受けること辞め、開始もしくは迫るアンカーを、袖口より取り出した


ビーム発振器の一振りで弾き飛ばす。


同じ手が使えず、新たな何かを模索する中。星が動く。可変する都合、八つの円周軌道を描く星が、《アド・アストラ》を公転する惑星に追従する衛星の様に


クルクルと回り、そして、何処からともなく放たれた。閃光を伴う、長距離狙撃の一撃に触れると、その方向を変え、あわや撃墜か?のタイミングで直撃コースに乗るも、


急加速と輝るワイヤー軌道による、旋回で、回避。


「ビームが曲がっただと?」


(そして、なんだ?さっきの一撃はどこから飛んできた?)


戦闘機形態では、防御が難しいとみて、人型形態へと戻ると、戦槍を前面へと構えると、降り注ぐ、約1.3秒後には、地球の地上から成層圏を抜けて、はるか遠くの宙域にある


コロニーヴァルハルの一角へと飛来するその砲撃の余波によって。コロニーのミラーの一部が射抜かれ破損。


多大なる損害にコロニー内で、騒ぎが起こる。



内部では。市民はスプーマを装着したうえ、遭難信号のビーコンの点灯を忘れずにとの、警告を知らせるアナウンスが当たりに響く、


次々と放出され、泡に包まれ浮遊する市民の姿を、視界の端で捉えつつ、砲撃の脅威判定を、最優先へと切り替えるも、


何処から飛んでくるかが分からない。


脚を止めて左腕で展開する。熱分解の光膜を楯として、狙撃を警戒しながら、周囲に展開される。《ブレイズ=ガルヴ・ディム》に対して、ガトリング砲での牽制射撃を繰り返し迎撃態勢に入るも、決め手には欠ける。


向かってくる手負いの獣は、その光剣を振り乱し、射撃戦を仕掛けながらも前後左右の包囲網を仕掛けて、斬りかかるも、


絶死のタイミングで繰り出される。それらの攻撃に対して、まずは、脚部の機構を作動させる。砲門より形成された粒子は、一瞬で固形の結晶部位を展開。


撃ちだされた結晶自在剣は、正面から斬りかかる光剣を迎撃し、その刃筋を大きく逸らし、返す。戦槍の一撃で、右から接近する機体の攻撃を弾くとともに、


左腕の光膜で、光剣を受け、更に後方から延びる刃を命中する直前で、宙返りと共に、勢い余ったその機体の、背面へと蹴りを叩き込みつつ。


瞬時に、その脚部を180度展開。瞬時にその輝ける劫媒を放ち、虚空を蹴り上げ、突如、顕わになるその旋回軌道を魅せつつ


放出される推進器の発光をひと際高く弾け飛ばし、一気に敵機の視界から掻き消えて、死角に回り込むと


プラズマ推進器にも見た。光の蹴撃を受け、《ブレイズ=ガルヴ・ディム》の補助推進器に満載された燃料に引火すると共に、基部がその熱量の直撃を受けて爆散。


大きく旋回軌道を描き、接近戦を仕掛けてきた手負いの《ブレイズ=ガルヴ・ディム》に、他の友軍機たちのフォローが入る前に、


左右の位相固定アンカーを射かけ、一射が外れ、二射が掠め、三者目がその姿を捉える。


意を決してワイヤーを巻き取り、擦れ違いざまに、発振器より発する伸縮と収縮を繰り返す確変する刃先を振るい。その機体を護りに入った別の《ブレイズ=ガルヴ・ディム》が


構える実体シールドとビームシールドの防御を展開する前面ではなく、一瞬で死角に回ると背面から一刀両断。


吹き飛ぶ基部と装甲を巻き散らしながら、側杖を受けて、その軌道を大きくブレさせ。包囲する様に動く《ブレイズ=ガルヴ・ディム》の集団に、


本来で有れば、星々の煌めきを纏い、その推力で目標の視界から消えつつ、迫る一撃離脱を得意とするその機体に対して、逆転現象が生じ、


緊張と動揺が奔る。



たまらず爆散するその姿を確認し、次の獲物を探すも、されど、その光の砲撃は、周囲に浮かぶ星を経由して、《セカンドアーヴル》へと降り注ぐ、


三部隊の内一部隊を撃墜し、その数を漸く二部隊までその数を減らし、新手に迫る《アド・アストラ》の四機編隊に対応しながらも、戦線の維持に終始する。


何処からともなく飛来する。光速の射線が、コロニーの基部を貫き、崩壊へのカウントダウンを刻み始める。


崩れ落ちる橋脚。洩れる空気、河川の底が抜け、水が渦を巻いて宇宙へと漏れで出でて行く


次々と花開くスプーマの華が咲き乱れるも、手助けするべく防衛隊は、動けないまま、


被害だけが拡大していく






その行為に対して、敢然と立ち向かうは、《セカンドアーヴ》を駆る。春幸の姿のみ...


迫るコロニーの危機に、奮戦するべく孤軍奮闘するが、


機体のセンサー上には、複数の機影が映り、そして、何処からともなく飛来する。狙撃の一撃が、セカンドアーヴルに襲い掛かる。


重力感覚器官《Sensorium Gravitatis》(センソリウム グラウィタティス)を全開にするも、その目標の発射地点は把握できず。


がなり立てる機体のERRORと共に、弾道予測を行う。軌道プログラムを並列起動。


計算が終わり、射撃の射線から狙撃地点を逆算し割り出すが...



導き出された答えに絶望する...


地球上...成層圏内のギアナ高地付近...



なんだと?




・・・



・・・



・・・




孤軍奮闘する春幸は、此処までの時間で、四機編隊の一部を墜としているが...その間にも街の至る所で火の手が上がる。


なにか?なにか?ないのか?手元を操作する画面に、起死回生の一手が垣間見えるが。


迫る。ヴァルク・チラヴェクが率いる《アド・アストラ》の四機編隊が、目標である《セカンドアーヴル》へと残りの二部隊の《ブレイズ=ガルヴ・ディム》と共に、迫る。


(・д・)チッ


まごまごしているうちに、俺が四機編隊を墜とすのに掛けた時間は、30分...。一時間もこの状況が続けば、取り返しの付かない結果が待っている。


一体どうすれば...



意識が泳ぎ注意力が散漫になった隙に、《ブレイズ=ガルヴ・ディム》の砲撃が迫る、


空中で撃ちだされた粒子砲の一射が、丁度、《セカンドアーヴル》と、《ブレイズ=ガルヴ・ディム》の中間点で、何かに遮られ、爆発の火の粉を巻き散らす。


見ると、良く見慣れた...


あれは今朝まで自分が整備していた骨董品の《ヴェリタス》だ?親父?!あんな機体で出るなんて、自殺行為だ?!


二編隊の内、右手側の《ブレイズ=ガルヴ・ディム》の一団が、嘲笑うかのように機体背面部と脚部から、球体と光の環の波動を足場にし、急制動を掛けつつ空を渡り、迎撃へと出る。


相対する機影は、目標を視界から引きはがされ、一気に狙いを外され急襲に晒される。


幾ら改造してビームシールドは付けている物の出力が怪しく、数秒以上展開出来ないし、装備も貧弱なビームライフルと作業用の杭打ち機しかない。


心配していた通り、その光が放つ陽光は弱弱しく、推力も、相対する《ブレイズ=ガルヴ・ディム》に比べれば貧弱。


連撃の機関銃の如き連射速度を誇る《ブレイズ=ガルヴ・ディム》の銃撃が、その圧倒的な機動に晒され、まるで無策の様に見える《ヴェリタス》に迫る。


偏差射撃の一斉掃射が四門の銃口から降り注ぐ、


叫ぶように連打するそれらの一撃は、弱弱しく展開された《ヴェリタス》ビームシールドに触れると、僅かに傾いだ傾斜に沿ってその弾丸が後ろへと流れていく、

そして動きを止めた《ヴェリタス》に対して唯々、その暴威を振るわんとするが、


命中する瞬間に、姿勢制御用のバーニアを吹かせし、最小限の動作で回避と共に、構えたショートビームライフルをひと吹き、


狙いは命中するも、敵機の厚いビームシールドと実体シールドに阻まれ、霧散する。


互いに一打を放ちながら迫る中、《ヴェリタス》の動きに、変化が訪れる。射出する弾体が、ビームライフルから、実体の杭打ちの一打の射出へ変わり、


狙いは、大きく外れたもののその一打は空中で追撃の杭と衝突すると、弾かれた弾体が、何を思ったのか、反撃に出ようとした《ブレイズ=ガルヴ・ディム》の高速起動中に、メインカメラに飛び込むと、コックピット内部で視界の一部が大きく欠ける。


その突如見舞われたトラブルに狼狽える最中に次々と構えたビームシールドの基部へ、何かが突き刺さり、一打目は浅く、そして二打目で食い込み、三打目で穿つ。


その三段構えの射撃により使い物にならなくなった武装の隙に、水平ロールを繰り出しながら、相手の射線が突き刺さる直前に、


まるでそこに予め射線が通る事を知っているか? 目標機を追いながら螺旋状にロールし回避、その狙いを逸らさせると...銃口から繰り出されるビームによる狙撃が自らそう望んだのか?何の抵抗も見せずに散華、あっという間に一機を撃墜させる。


敵機があっと驚き吐き出す。誘導弾のばら撒きを、その直前からの急上昇を加え頂点から急旋回と共に水平方向への宙返りを実行。


チャフとデコイを振りまきながら迫る敵機の背後に降り立つと、


またしても光り、そしてその光は炎を上げて、もう一台の《ブレイズ=ガルヴ・ディム》の姿を掻き消す。


堪らず接近戦を仕掛ける二機の《ブレイズ=ガルヴ・ディム》に対して、光る光剣を振り乱し、迎え撃つ《ヴェリタス》も、袖口より発振器を取り出し、


鍔迫り合いを展開、切り結ぶも、機体出力に大幅に負け、そして押し切られる様に光の刃が機体へと迫る。


その中で、受け太刀を行い大きく損なわれたビームサーベルを勢いのまま姿勢制御バーニアーを吹かせ後方へと下がりつつ、


ビームサーベル同士の斬り合いでは押されたものの、押し切られた瞬間、相手の獲物の柄を脚部を振るい、蹴り上げ、


その勢いを殺すと、返す刀で浅く《ブレイズ=ガルヴ・ディム》の装甲を焼き切るが、その傷は浅い。


狙うは唯一つ、バランスを崩してがら空きの宙返りしながら、間接部位を狙い、一閃。


堪らず切り落とされた腕部を庇い後方へと逃れるも、追撃の連続射撃により堪らず、墜ちる。


残る四機編隊の最後の一機も、正確な射撃に晒され、その防御を剥がされ、あっという間に叩き落とされる。


それまでの経過時間は、優に5分と掛かっていない。


その動きに、機体性能では大幅に勝っているはずの春幸は、どうしてあんなに?!避け続けられるんだ?!アレは避けるというより自ら当たりに言ってるのに


何故か当たっていない?!まるで、銃弾の雨が降り注ぐ只中こそが安全圏だと、ばかりに言わんと欲するその動きに見惚れる。


だが、思わぬ援護に、対応する余裕が出てきた。試してみるか?


「その動き、この感覚は...そこにいるのは、春幸か?」


短距離レーザー通信により語り掛けてくるその言葉に、驚いたものの


「そうだ親父、コロニーが、地球からの狙撃に晒されてる。こいつで止めるから、援護を頼む。」


そうか...と納得しつつ、まだこのままでは足りない。


手短に繰り返されるその言に、何を思ったのか?アイジェスは、その言葉を伝える。


「お前は。お前だ、俺に倣うのではなく、お前の望む詩を謳い。その無限の一の中からその鍵を掴み取れ」


何かを察して告げるその言葉に、呼応するかの様に、《セカンドアーヴル》のコックピット内部で、機体が光を放ち始め、示す光点が輝く。



アイジェスは、《セカンドアーヴル》の姿を視認し、小さく合図を送ると、次第に、その機影を遠ざけながら、残る二部隊...


《ブレイズ=ガルヴ・ディム》と《アド・アストラ》の混成部隊に対して、悠々と、その身を躍らせ、次々に墜としていく。


その姿を、眺め春幸は自らの仕事に手を掛ける。


操縦桿を操作し、モード選択を起動。


コンソール上の文字列には、バスターモードを選択。機体の上半身と下半身の機構を180度回転させ、反転すると、それまで隠れていた異貌が顕わになる。


燃え上がる様に光る左右非対称の、ツインアイは、その大きく輝く相貌が反転し、変形時に機首となるユニットカバーが、競り上がると、覗く光をその隙間から魅せ、


それまでフライトユニットと思われていたブースタは、其の羽を束ね収束する砲身へと変わると、左右の腕部へと収まり、反転した機体の脚部も、副砲として機能する。


画面に移り込む射程が示すインジケーターは、測定不能を指し占めし、その威容を晒すべく稼働する


重量子崩壊砲奏蒼穿弓アバリス


砲身冷却及び、...ドライヴ及び...エネルギーリチャージ...30%...



聳え立つ、砲身を構え、燦然と輝く機影を背に、アイジェスは、必死に抗う。その姿に、精一杯のエールを送るべく奮戦する。



謎の動きを魅せる《セカンドアーヴル》に対し、危機感を持ったヴァルク・チラヴェクらは、展開する星と組み合わせた。地上から成層圏を抜けて到達する超高射狙撃を繰り出し、


忌々しくも飛び回る旧式の《ヴェリタス》を無視して、その威を狙い撃とうとする瞬間、


ガンッとして、阻止する動きを魅せる杭打ち銃の一撃が、《アストラ》...。星…と見紛う充電可能な【falcisファルキス】の一団に対して、無力な穂先でしかないそれが、命中し、


その反動で、狙撃の狙いが大きく外れる。


(・д・)チッ


「なんだ?旧式機のはずなのに、基本装備じゃないビームシールドを持ってるな、改造してあるのか?だが?やけに、動きが良いな?」


(《ブレイズ=ガルヴ・ディム》の四機編隊も、瞬きする間に、撃墜してやがる。あの動き...あの反応速度、どこかで見たような?)


「隊長機と...随伴機はH型とM型装備を装備しているな?残りの《ブレイズ=ガルヴ・ディム》隊は、奥の手を使って、こちらの狙撃を邪魔する《ヴェリタス》を抑えろ。」


(その間に、不信な動きをするあの機体を墜とす。)


「でも、隊長?あたしたちも援護した方が良くないですか?また、あの分だと、あっという間に墜とされちゃいますよ。」


あっまた墜とされた?!


手負いの《ブレイズ=ガルヴ・ディム》が、四機編隊の陣形からやや遅れた瞬間に、ビームライフルの光が二度、三度と瞬いたいたと思うと、


機体の各部を徐々に削り取られて、爆散する火花を散らし、あっという間に撃墜されていた。



「ほらね?」


(・д・)チッ時間稼ぎすらできぬとは、軟弱ものめと、悪態を吐き、



「ハルナとフルーツ=ポンチの両名は、《ブレイズ=ガルヴ・ディム》部隊の援護を。」


「ヴィクトムは俺についてこい、もう一機のUnknown(アンノウン)を墜とす。油断して墜とされるなよ?」



フットペダルを強く踏むと、呼応するように点火されるスラスターの勢いのまま、隊が二手に分かれる。


その動きにいち早く反応する《ヴェリタス》が、獲物を構えて射かけるが、その攻防は、相手の防御に阻まれ不発



三機編隊の《ブレイズ=ガルヴ・ディム》は、三機のうち二機が該当する。M型装備として取り付けた、可変式の大型ライフルを構えると、


ゴムホースで水をばら撒く様に拡散する粒子の雨を広域放射、避けるに難い。その砲撃に、


相対する機体と比べるもなく貧弱なその推進器を吹かせ、避けるのではなく、一歩前へと突き進む。


あわや降り注ぐ粒子の雨に晒されようとする中、傘を開く。


背面の増加ラッチより、込める弾頭とレバーアクション式のグレネード射出機を取り出すと、クルリとその銃身を、付随するレバーを中心に


回転させ、装填を繰り返し、何もない進行方向の空間へとその弾頭を炸裂させる。


炸裂と共に展開されるビーム攪乱幕が、降り注ぎ粒子の雨を弱めると、申し訳程度に展開される。


低出力のビームシールドを前面へと掲げ、その攻撃をすり抜けると同時に、擦れ違いざまに、尚も、こちらを目標として狙う。銃口へ


ビームライフルの一撃を叩き込む。


その狙いは、交錯する戦場の中で、まるで最初からそこに当たる事が決まっていたかのように、面白いように、吸い込まれ、


そして炸裂する。



銃身を破壊され、その衝撃で機体がブレる。陣形が崩れたその隙間へと斬り込む様に接近すると、袖口から取り出したビーム発振器を振るい、


接近戦を試みる。


「それは、先ほど見せて貰ったぞ!!!!」


ビーム兵器の出力差は、依然としてある。対抗するには...トリッキーな動きで、こちらの獲物を弾くしかない。脚癖の悪さは分かってる。


次は、墜とすぞと、相手の蹴りを警戒しながら一合、二合と、切り結び、


接近戦で邪魔となるグレネード射出機が各種弾頭と共にばら撒きつつ投棄されると、慣性軌道のまま、戦場を横へと流れていく...


視界のその先で、空気が存在すれば発射音が鳴り響くであろうその行為に、注意がそれる。


と、同時に至近の距離から放たれる。ダミーバル―ンのブラインドに隠れて、何かのラインが光剣の光が一瞬反射し、その姿を浮かび上がらせる。


投射された弾頭は、斬りあう《ブレイズ=ガルヴ・ディム》の背後から迫り、炸裂する。


ビーム攪乱幕の直撃を受けて、振るう獲物の光がブレる。と、同時に、宙返りする《ヴェリタス》の脚部が、《ブレイズ=ガルヴ・ディム》のメインカメラに亀裂を走らせる。


友軍機の隙を埋める様に左右から迫る《ブレイズ=ガルヴ・ディム》に対して逆さに向き合う《ヴェリタス》の刃が、装甲の隙間に向かって振るわれ、


基部の一部が、その粒子の刃に晒され、熱を帯びたまま溶断。



(・д・)チッ


左腕と獲物を喪った二機の《ブレイズ=ガルヴ・ディム》の援護に入るべく



遅れてハルナとフルーツ=ポンチの二名の救援が到着する。



「もう!言わんこっちゃない。てか、なんであの機体逆さで戦ってるの????」


【falcisファルキス】ッ!!!!早く逝っちゃって!!!!


と、都合、八基のバラバラに展開される【falcisファルキス】から延びる。小口径でありつつも多数の砲塔を構えるその基部による一斉斉射を他所に、


残る一機のH型装備の《ブレイズ=ガルヴ・ディム》は、安全圏から、その手札の一手を斬る。



降り注がれる斉射の雨を不器用ながら、器用に、其の展開範囲を、手のひらサイズまで、収縮した光の膜で、弾き、避け、弾幕を避け続けながらも突撃を敢行


それにタイミングを合わせて繰り出されるは、「悉ことごとく熱に厭いやかされ死ね。《ムスペルヘイムッ(灼熱の国)》!!!!!」



「えっ??!ちょぉおぉおぉあたしたちも巻き込まれる?!?」



コックピット内のコンソールには、機体の熱暴走…オーバーヒートを知らせる。赤い文字が踊る。


機体内部の温度が100度を超えた事を知らせるアラートが鳴り響き。


次第に熱を帯び始めた機体の各部から、武装が次々と破裂し、誘爆していく光景が幻視される。


警告音をが鳴りたてる。コックピット内で...


「あれ?なんであたしたち平気なの????」


「大尉、マニュアル見てないんですか?最新機の機体には冷却機構が強化されていて出力を上げれば、一時的とは言え《ムスペルヘイムッ(灼熱の国)》の効果対象から離脱することができますよ。まぁ骨董品のあの機体には、そんな気の利いたものは無いでしょうけどね?」



これで、決まり手だと、ばかりに止めの放射で、勝負を極めにくるが、


燃え上がる宙域の最中で、冷却機構を最大発現し、できた数秒の時間の間にワイヤーに結ばれた、グレネード投射機を呼び寄せると、


弾頭を換装。至近距離で炸裂する様に調整された弾頭は、


過冷却弾(アンダークールバレット)...本来は艦船の消火用の弾頭だが、アイジェスはそれを加熱する機体の冷却へと仕様外の方法で、炸裂させる。


クルリとレバーアクションを繰り返し、事前に投棄した、過冷却弾の弾頭が慣性の勢いで流れ出る弾丸の道を


もう一つの手から伸びる。ビームライフルで、その弾頭を撃ち抜き、スラスターを全開にして進む。


点火される推力は、大きく劣るものの。迫る《ブレイズ=ガルヴ・ディム》の背後で、遅延信管で、投棄されていたグレネード弾が、まるでそのタイミング、その位置で炸裂する事が


分っていたかのように設置とともに炸裂する。


さらには決まり手を極めて無防備な、その機体へと、滑り込むように、至近距離から放たれる杭打ち銃の銃火が、止めとばかりに、次々と撃ち込まれ、


袖口から飛び出した、発振器より伸びる光剣が、返す刀で、その頭部を切り落とし、ジェネレーターと駆動系を結ぶ回路図の接合部分を器用に突き刺し、


無力化、蹴りを叩き込みつつ、戦線から切り離す。


瞬く間に墜とされる友軍機の姿に、違和感を覚えつつも、その攻撃に晒されながらも、操る【falcisファルキス】を楯として、射撃戦を敢行。


対するアイジェスは、操作する。コックピット内で、その匂いを感じ取る。これはかつての戦場で嗅いだ匂いを想起させる。


香る匂いは、死体が腐ったかのような腐敗臭を放ち、接近するたびに背筋に凍れる程の殺意を感じる。これは...一体誰だ???


その特徴的な匂いから、ウェンディゴ部隊だと、断定。だが、一人だけ人のバナナの甘ったるい匂いを感じる。その違和感を感じつつも、戦場で互いの死角、背面を奪い取ろうと


ドックファイトが繰り広げられる。


広い旋回半径と貧弱な推力の所為で、その彼我の距離を詰められるも、時間差で、炸裂する。グレネードの弾頭を機雷代わりに、《アド・アストラ》が繰り出す攻撃を


回避し続ける。


放出される【falcisファルキス】と、可変式大口径ビームライフルを連打するも、アンサンブルを指揮棒を振るい、指揮者の如くその動きを、完全にコントロールする。


援護に駆け付けた二機の《アド・アストラ》の射線が、機体を損壊させ動きの精彩を欠いた《ブレイズ=ガルヴ・ディム》の機影と重なるような、進路をとり、


狙い撃ってくると同時に回避。漏れ出た光に晒され、《ブレイズ=ガルヴ・ディム》が展開するシールドの防御へと、吸い込まれ、直撃する。


「ちょぉぉぉぉッ!!!!フルーツ=ポンチさんステイ。味方に当たっちゃう><」


「くそちょこまかと動きよって。」と、一心不乱に、制圧射撃を行うフルーツ=ポンチは、その狙いが其れ続けるそれらに痺れを切らして、予測反応を持っての偏差射撃と【falcisファルキス】による飽和攻撃へと切り返す



大きく迂回させ目標の視界へと滑らせた【falcisファルキス】と挟み込むように、機体の進路を取り、外装ユニットに備え付けられた実体弾、種類を熔解焼夷弾にセットすると、


相手の進路をその射線でコントロールしつつ、その狩場へと徐々に追い込んでいく。


武装と機体性能は間違いなくこちらが上だ、どんな手品を使って避けているのか分からないが...一方的にこのように仕掛ければ、相手は何もできない。


ほくそ笑み、満足そうに一方的な射撃戦を展開。


目標は、反撃の手を止めて、回避行動に専念し始め、掠めるオールレンジの光の檻を器用にその光の盾で、防ぐもその動作半径が徐々に狭まっていく。


「ひっひっふー。はっふっふー!!!圧倒的ではないか。我が軍はッ!!!」


「フルーツ=ポンチさんそれ、死亡フラグっぽい。」


何を馬鹿なことをと、返事しようとした瞬間。何かがカチリと音を立てた様な気がする。



射かける砲撃と共に、視界の下方に、破損したコロニーの一部らしき、建造物の残骸が流れていく、それに僅かな違和感を感じたものの、

取るに足りないものと断じて、視線を目標に合わせて、トリガーを引き続ける。


射出される熔解焼夷弾は、狩場へと追い立てられた目標にたいして限定空間を中心に炸裂する。


その触れた装甲を融解し、生じる熱量を以て、《ヴェリタス》へと襲い掛かる。


貧弱な装甲である《ヴェリタス》にとっては一たまりもないが...。作動する、過冷却弾(アンダークールバレット)の炸裂と共に、煙を上げて


【falcisファルキス】の光の檻を抜けて、その旧式機が迫ってくる。


突如の反撃の狼煙に慄きつつ、《アド・アストラ》の《アストラ》...計八基の【falcisファルキス】を組み換え、そして二枚の反射板を形成すると、


友軍機へ艦船と中継器を通じての超長距離通信を以て、援護射撃を申請。


放たれる。長大な砲撃の火線が、1.3秒のタイムラグをもって照射されると、大きく薙ぎ張られる砲撃がコロニーへ、甚大なる被害をもたらすかに見えた。


瞬間、慣性軌道に乗って、流れ着いた。グレネードが時限信管で炸裂、中継器となっていた【falcisファルキス】の底面の角度をずらし、


砲撃の余波が、勝利を確信した《アド・アストラ》を貫きながら、その光が通り過ぎる。


その機体の半身を焼かれ、浮遊する機体を回収し、それでも抵抗を続けるハルナ=山崎は、その光景に慄く...


(今の一撃...コロニーに直撃してたら何人死んでいたか分からない????それなのに何の躊躇もなく、指示が下されていた。)


その事実に狼狽え。そして引鉄を引く手が緩む。



...



...



...



地球上のギアナ高地付近、某所...まだ暖かな気候の最中において、



対宙間狙撃兵装を備えた。黒くそして、機体の頭部を覆うヘッドセットから除くモノ・アイを駆使して、目標を捉え続ける。


《ヴェナートル・ノクティス》を駆る。ハルト=ノーウェンは、幾度目かの射出を実行。


一射と共に吐き出される。ジェネレータの排莢を済ませ。


一射毎に小型...と言っても一抱え程ある動力炉を炸薬代わりに詰め込んだ。超大型狙撃用ライフルで狙いを続ける。


この秘密裏にコロニー圏の不穏分子を安全圏から狙い撃ち堕とすその威を以てその威厳を指し示そうとするが、


其処には、びりびりに引き千切られた、袖口が覗き、何故袖を破ったかの理由が不明なまま、事態は転換する。


焦りを感じつつ、目標へとその照準する相手とは、対照的に春幸は、不思議な安堵感を感じる。


砲身の冷却と射出準備に掛かりきるも、二機の《アド・アストラ》は、こちらを警戒して、星を打ち出しての曲射射撃による妨害に終始する。


砲身を構えた状態のまま、降り注ぐ砲撃を最小限の回避運動で、回避し続けると同時に、この状態で展開出来るのは...


機体各部に備え付けられた位相固定アンカーと、脚部の副砲のみ...


放たれた大口径大出力の粒子砲の乱れ撃ちに対抗すべく、何もない空間へとアンカーを打ち出す。


その行為に一体何の意味があるのか?


鼻で嗤う。ヴァルク・チラヴェクの目にその光景が飛び込んでくる。


それは、水面に吸い込まれる。ミルククラウンの一雫の様に、一射する熱量を伴う熱線が、宙空へとその姿が消え去る。


その不思議な光景に、目を瞠り、今度は実体弾兵装である粘着性捕縛弾を装填し、ばら撒きながら、左右に分かれ


《アストラ》...超超超距離狙撃を中継する【falcisファルキス】を操り、大熱量の砲撃を経由させ、その砲撃の雨に晒すも、


同様に虚空に設置されたアンカーの水面に光が吸い込まれると、その位相と位置エネルギーが、何処か違う空間の裏側へと転写される。


その結果をただ、なんとなく脳裏に過る。予測により導き出し、都合八基を射出と回収に、位置取りを変えつつ位相固定アンカーによりその攻撃を防ぎ続ける、


フライトユニット兼ブースタの羽は束ねられ、今か今かとその出番を待ち続け、射出する目標をユニットカバーから覗く、測定基幹たる望遠鏡を覗き


砲身冷却及び、...ドライヴ及び...エネルギーリチャージ...冷却のカウントが90秒から徐々にカウントダウンし残り30秒まで、到達。


画面でアンロック...の表示が踊る


インジケータでは、出力80%...の出力を魅せる


画面ではその名を刻む重量子崩壊砲奏蒼穿弓アバリスが狙い撃つは、遥か彼方の宙域を超えて存在する水の惑星で今もこちらに砲撃を仕掛ける。


敵機の姿...。



その向こうで何かの動きが捉えられる。その引鉄に手を掛けた瞬間痺れを切らした。ヴァルク・チラヴェクは、機体前面へ、反射板となった【falcisファルキス】を操り、手元から発振器を取り出しての接近戦を試みる。


近付いてくる。その機影に対して、機体の脚部を徐々に操作し、膝を曲げつつその狙いを付け、一欠片の結晶体の弾丸が、向かってくる。


其の光景を視認しながら、ヴァルク・チラヴェクも回避行動に移り、【falcisファルキス】を盾として、其の銃弾をその頑強な反射板で受け止め、牽制射撃を加えながら迫る。


一射目を事気もなく、防ぎ気を良くしたヴァルク・チラヴェクは、光剣と共に肉薄するが、視界の端で、徐々に何かがその大きさを増やし始め...


眼前の【falcisファルキス】には、今も尚、初撃でこびり付いた結晶体が、時間を追うごとに増殖し、稼働するスラスターの噴出口すら塞ぎ、盾の一枚が脱落する。


(・д・)チッ


面妖なその攻撃に晒されながら、眼前で展開され、巻き戻るアンカーの基部の動きが...。



水面を波立出せるその壁面へとさらなる追撃のアンカーが滑り込むと、突如、予測しえない角度から、回避運動を行う。《アド・アストラ》に突き刺さる。


衝撃に目を眩ませ、そして、頭部を回してその光景を視認すると、何もない虚空から、波紋を波立たせ、突如アンカーの一基が、その高速移動を阻もうと、


その穂先が機体と連結され、強い横回転のGを受けつつその機影が掻き消える。


横へ横へと引っ張られていたはずなのに、いつの間にか?機体が横に流れたまま、いつのまにか?《セカンドアーヴル》の真正面へと引き込まれる。


途中、通過した波紋の中から飛び出した機影に対して、膝を構えて、再度の射撃。



押し出される様に放たれた結晶自在剣と思しき弾体が、動きを拘束された《アド・アストラ》の防御を行う、実体と光を伴うその楯へと着弾する。


大きく破損する基部と、その衝撃で、アンカーの拘束が外れる。


回転する機体をどうにか保持し、バーニアを吹かせて姿勢制御に終始する。残る一基の反射板を呼び寄せ、もう一機の《アド・アストラ》が放つ星と合わせて、


複雑な経路を経過して、その軌道にのった一撃が迫り、


地球よりの超超長距離狙撃が、中継器を通り、放たれる閃光一射となり絶好のタイミングで炸裂する。


避ければコロニーへと到達する光の柱に向かい。


春幸は、不完全ながらのリチャージのまま、その引鉄を引き絞る。


一対の翼を模したその砲口より、咆哮を上げて、貯蔵された粒子の何割かを消費して放たれる威光は、


まるで月夜に浮かぶ月暈(つきがさの光にも似た覇劫となり、その出力を徐々に上げつつ、


次第に光の輪を増やしながら、奔る光の帯が、中継器たる星を経由して直撃する。


膨大な粒子量を交え、その交差する光の奔流に耐えきれず、星が雲散霧消うんさんむしょう跡形もなく消えさる。


狙いがそれその余波が、周囲で戦闘する機体を荒海に浮かぶ小舟の如く、前後左右へ、推し流していく。


いち早く。余波の影響を察知したヴェリタスは、スラスターへの点火と、翳す光の盾を最大化させ、巨大なビックウェーブに乗る波乗り人の如く


その荒波を泳ぎきる。


だが、それだけでは、この戦域で繰り広げられる射撃戦は終わらない。


地上では、射出するジェネレーターを弾丸として排莢し、次弾を装填。


《アド・アストラ》の星による射角調整は出来ないものの未だ健在のその機体は、狙いを付けて、次射の狙いを澄ませる。


長くそして短い、無音の世界の中で、此処にいるのは俺とお前だけだとばかりに、満足げに頷く男は、


こちらの射撃を真っ向から叩き落とせる事は可能だろう、だが?その射撃は?果たして届くのか?


無限にも似たその瞬間、その彼我の距離、迫る時間を惜しんで、引鉄を放つ。


戦場でのカウンタースナイプは、悪手だ。


そんなことをするよりも、重爆撃や、重火力による制圧射撃、そしてその場から離れて逃げる事が第一だが、この戦場では、射程外への逃避は、無意味。

更には相手の攻撃はこちらへ到達する間もなく、射程外となる。


それを可能としているのは、《シンギュラリタス・テクノロギカ》...技術特異点たる。あの機体を手に居れた我らが独占している。


我らが...のみ。


震える指先と、跳ねる鼓動を抑えて、細心の注意を払い。狙いを付ける。この勝負は貰った。そう確信し、放とうとした瞬間、視界の端で何かが瞬く...



春幸は思考する。このまま一方的に撃たれれば、いずれこの機体の燃料も尽きるかもしれない。


だが、それでも尚、出来ることは少ない。


リチャージした。エネルギーは大きく欠け50%を指し示す。砲身の冷却を再度カウントさせる間も惜しい。


コックピット内部でがなり立てる。ERRO表記を、無視して、


さっき伝えられたその言葉を思い出す。


「お前は。お前だ、俺に倣うのではなく、お前の望む詩を謳い。その無限の一の中からその鍵を掴み取れ」


...


フラッシュバックの様に瞬くその光景が、思考の端で何かを掴む


「音声認識による命令を受諾しろ。キーワードは...《ライズ・イズ・ホワイト》始まりの詩を歌え《セカンドアーヴル》...我が名は、春幸=ブラットワーカー。」


「俺は、暴威を振るう王よりも、人に裸を魅せられる裸の王様でありたい。もちろん...身体じゃなく...無限の一の中からその鍵を掴み取れッ!」


朱く光るその眼の中から、何かが産まれる。純白の彩を魅せる機体が、それまで掲げていた。五つの王冠の内、一つが外れ、隠れていた頭部が顕わになる。


発光する光が、急激に膨れ上がり、一対の羽がその手へと収まり、其の羽を重ね長弓の如き威容がまざまざと現れ、其の引き絞る先に浮遊する漆黒の王冠が、装填される。


冷却機構の出力が、∞の一文字を指し示し、急速冷却を実行。それまで徐々に溜まっていた出力のリチャージが一気に1000%へと到達


番える光の矢が、蒼く、碧く、青く、煌めき藍より青く、一射が、膨大な熱量と、その存在を崩壊しこの世から消し去るべく放たれる覇劫の奔流が、


彼我の距離を一気に縮め、天に向かって唾を吐き、そして己の絶対的優位を誇る。その矮小なる存在へと、無慈悲なる断頭台の刃となって振り下ろされる。


互いに放った一射は、中間の宙域で炸裂し、多大なる熱量と放射する粒子を散らしながら、強大な炸裂の暴風雨を巻き起こし、


その光景を見た者は、眩い光を目撃し、眼窩を光に晒された後遺症により暫くの間その目を開くことが出来なかった。


一転、その勢いが、洗い流す波涛となり(ソラ)と大地を繋ぐ回廊を繋ぎ、襲い掛かると、その射撃延長上に到達した。


矢が直撃した半径数キロに及ぶ、大地の台地が、その勢いに晒され、大きく窪んだ、隕石の落下地点を思わせる様な、クレーターを生み出し、


その場にいた全てのモノを焼却し、消却する。


高く高く聳え立つ、山のひと柱が、忽然と、緋色の亀裂を走らせ、爆散し、大気に浮かぶ夜を締め出す極光の光を残してこの世界から消えた。


(・д・)チッ、撤退だ。あんな隠し玉を持っているなんて、そういって去り行く機影は、撤退途中に、戦場に吐き出された友軍機のスプーマ毎、回収し、


戦場を横断しながら去っていく



「折角、我らが切り札の一つヴェナートル・ノクティスを貸し与えたのにも関わらず、逆に墜とされとは?!貴様の袖も引きちぎってやろうか?」


通信画面で激高するその男の袖口は乱暴に引きちぎられ、パツパツに膨れ上がった二頭筋が、幅を利かせて、闊歩する。


《袖無し》だ...


軍部に絶対の忠誠と引き換えに、着るもの全ての袖を引きちぎられる呪いに掛かったその男たちは、今回の戦果に関しても、


自らの部隊の狙撃が当たらず、撃墜された愚は、中継機としての役目を十全と働きかけず。あまつさえ旧式の《ヴェリタス》に翻弄され、


碌な援護も出来ずに墜とされた《ヴァルク・チラヴェク》に責が集中する。


意を決して《ヴァルク・チラヴェク》は、片側の袖口を引き裂き、掲げると、その忠誠を示して見せる。


「貴様らはあの実験体の重要性を全く認識しておらん。だがその決意、あっぱれ、貴様の袖口は受け取ろう、援軍は送る。故に必ず奪取してみせよ。」


全くこんな姿は准将には見せられんな、頭を振って雑念を振り払うも


ハルナ=山崎は。あれあたしもやらなきゃいけないの?と袖口をみて躊躇する


そんなひと悶着を終える中、ハルズ=アルマインは、トラブルの報告も受けるも、演習の指揮を終えると、後の事を、子飼いの部下に任せて、その宙域を離れるべく行動する。


この宙域に現れたのも、全ては、自らの...の調整の為、最終調整にはまだ時間が掛かっていると、他に優先するべき事項を並べたて、母艦へと乗り込み一路、調整中の月面へと向かう。



事態は、収拾の気配を一向に魅せぬまま、進んでいく


つづく。


毎月、月末最終日に2話更新予定。

誤字脱字、誤りがあったら修正するので、教えてください。

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