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無法者の詩  作者: 唯の屍
15/20

第十五話「報復絶答」

※イメージソング

https://youtu.be/ZrIgF4pZBR8

あの夜、鼓動は鳴らなかった。|深夜に刺さる切なエモロック【フリーBGM / 歌あり / 女性ボーカル】

音楽提供: Otakara BGM (お宝BGM)


※多分この詩、私の作品と普段の発言からインスパイアされてる箇所がいくつかありますたな。


その日、一筋の星が墜ちた。


失墜した星は、この手に二度と戻らず。ただ、無残な運命を辿る。


絶叫を上げ、血の涙を流す漢は、ただ静かにその引鉄を引く。


それは、嘆き流れる涙すら拭わず、あるいは激高する静かな怒りを胸に


炉に燃料をくべ続ける。


蒼天を貫く絶望の声を弾丸に込め、叫ぶ


宙一面を踊る、荘厳な天体ショーをまざまざと見せつけ、そしてすべてを出し尽くし果てる。


譬え其処に亡くとも、俺は逝く。


俺は、彼女を奪った。獣どもを許さない。


その目は充血し、爛々と輝きその目が赤く血の色に染まる。視界を赤色の鮮血に染めながら、


死を、絶望を、絶叫をまき散らす。孤高の死神と化す。



...


...



...



《デッドコード》君を死が覆い隠しても、君死に給うことなかれ


...


...


...



去り行く君に、黒薔薇の花束を


不幸を呼ぶその花束の代わりに、想いを伝える花言葉は、無数の命を散らしながらもその花弁は咲き誇る。







《一葉灼伏》...



その日、星を喪った(そら)に絶望の崩壊が叩き付けられる。







何もない宙を目視し、目標の姿を探す。そこにあったのは、幾重にも重なる。星の瞬きすら凌駕するほどの物量を伴った。


《人喰い》カルニヴォルス (carnivorus)の軍勢の只中へと、躍り出る。その中には、ギアナ高地で、遭遇した。巨兵や、今までの戦闘で、見たこともない。


機体の数々が踊る。コックピット内部のコンソール上で、確認できる機体と艦船の数は...優に数千を超え、今までどこにあったのかと思うほどのその物量に、


今も尚、次々と増え続ける。その絶対的な戦力差にも、目を爛々と輝かすアイジェスは...



何の躊躇もなくその群狼の最中へとその身を躍らせ、謡う。



唯々、直進する無防備なその歩みに、《人喰い》カルニヴォルス (carnivorus)共は、嗤う。


自らの試みが、罠に無残無残(むざむざ)と入り込んだ、其の羽虫を摘み取ろうとその手を伸ばした瞬間、それは爆発する。


仄かな残像を残して、伸ばした巨兵のその手を潜り抜け、炸裂するは、単なる機体に備えられた。腕部の拳から放たれる。



単なる正拳突き。


一瞬の反応もせずに炸裂した拳は、その機影に突き刺さり、その膨大な質量ごと、放出されるスラスターの勢いのまま、背後へと、


押し戻し、装甲に突き刺さるその手によって、装甲に亀裂が走る。



それを確認した複数の巨兵...は、デスペラードの身長にも達する程の大型の前腕を持ち、角ばった装甲の合間から、噴出する排気の煙に交じって、


独特の稼働音を掻き鳴らし、その前進に併せて全身が振動する。


そして背面には、大型の巨大な肋骨を模した放熱板を並べ、その歩みが見せるのは、掘削する重機そのモノたる姿…いつかの地上戦で相対した《ゲルガシ》...の群れ


背面の肋骨を模した放熱板、無数にその戦場に展開され、且つての戦場での状況を再現する。



周囲百数十、数百キロの四方へと広がると、各部同士が、噴出する粒子と電磁場による巨大な牢獄へと換え、逃げ道が防がれた事を識る。



「《慈聖体》よ。袋のネズミだ。これで逃げ場は無くなったぞ。」そうほくそ笑む


が、その事実にまるで頓着せず。怒りの拳を振るい。《ヨートゥン》の一機に取りついたまま、前進を続ける。


敵の数は無数、孤立無援の仲間の居ない戦場で、何を想う...。



嘲笑うジンボ=ジンタを他所に相手が何を言っているのかわからないまま、アイジェスは吠える。



「誰が逃げるか?逃がさない。逃げ場がなくなったのは貴様らだ。一人残らず…」



都合が良い...ここであれば仲間を巻き込む可能性も、敵が逃げる事もない。こちらにとっても好都合だ。



赤熱化する装甲を次々と破断、溶解しながら、その腹腔へと抉るように突き出た。光剣が、《ヨートゥン》の背面部を貫き、


溶解した孔から何かが、突き抜けてくる。


斜め十字に切り開かれた胴体部位から、まるで、飲み込んだ虫に腹から食い破られるかの如きその勢いのまま、突き出てきた、《デスペラード》の腕部が、


その手に結晶に覆われた何か?を《ヨートゥン》から引きずり出す。



破損した。ダグザの釜らしき基部を突き抜けた勢いのまま、敵が密集する空間へと投擲し、いつの間にか投棄して、周囲に浮かぶ《falcis(ファルキス)》となった銃身より


伸びる蒼い光の一射が瞬き、そして特大の爆裂をまき散らし、周囲の敵機を巻き込み炸裂する。



Σ(゜Д゜)



なんだあれ?報告に受けていた目標のスペックから、大きく逸脱していないか???


疑問を呈する間もなく、ジンボ=ジンタの指示が飛ぶ。



「《聖痕》持ちは、偏差射撃と【falcisファルキス】による全方位攻撃、通常兵は、射撃兵装による飽和攻撃を仕掛るのだ。」


「数はこっちの方が圧倒的に多い。」


空宙では、お互いの放った粒子の光が、互いの射線が交錯したまま、衝突し、霧散。放った自らの仲間に対しても突き刺さりかねない程の飽和攻撃。


更に加えられるのは《エーリヴァーガル》からも降り注ぐ、砲撃の数々、其処に逃げ場などなく、周囲の光を《ナインテイル》の基部で吸収するも、吸収しきれぬ勢いに急襲され、果てるかに思われた。


その砲撃は、味方すら巻き込み、要塞に複数搭載される超大型ジェネレーターより直結される。高出力の粒子の雨。


それは、要塞の壁面を穿つ、多数の妖爻を複数の要点を力点と交錯し、膨れ上がる粒子が、球体上に膨れ上がり、大量破壊兵器にも似たそれが放たれる。


其の包囲網に、絶対の自信を持つ《人喰い》カルニヴォルス (carnivorus)の表情に、亀裂が走る。


無数の機影は一斉に、飽和攻撃を行うも、その腕部により、無残にも切り開かれたその巨兵の巨体をまるで、その重量を感じさせないままの動きで


放り投げると、《人喰い》カルニヴォルス (carnivorus)が引く飽和攻撃の方陣に、大きな穴が開く。


その手にはいつの間にか、《HHB》を変形させた重力子増幅強化マニュピレーターユニット《グレイプル》を装備した基部が覗き、


大きな腕部と化したその手の平から、溢れ出す暗闇の波濤の一端が、空中に漂う【falcisファルキス】一団へと降り注ぎその進行方向を僅かに逸らす。

射線を変えられた、無数の死神の鎌は、目標を見失い。同士討ちの華を咲かせ始め、其の陣容に、衝撃が走る。


瞬間変形を繰り返し、手には二丁の銃身と、吸収展開を終えて逐次展開されていた《ナインテイル》が転進、その砲門による、一斉射を繰り出し

空いた陣容の隙間へと、進展すると、目標である。ジンボ=ジンタの姿を探す。



周囲を重力感覚器官《Sensorium Gravitatis》(センソリウム グラウィタティス)と、其の匂いで、目的の存在を探るが...


数が多すぎて、捕捉が困難...ならば、数を減らしていくだけだと、ばかりに、急制動を掛けながら、射撃戦を試みる。


炸裂した巨兵の躯を足蹴りにしながら、無数の軍勢...。目視できる限りでは、今まで何度となく遭遇し倒してきた存在。


《グヤスクトゥス》の一団へと砲身を差し向け引鉄を引いた瞬間。


コックピット内に危険を知らせるアラートが鳴り響く、振り向きざまに回避行動に、入る間もなく、


《ナインテイル》の吸収機構も、その貯蔵限界を超え続け、砲撃の嵐に晒され、届かない。


すると宙に浮かぶ巨大な竜が、大口を開けて、体中の発振機から光る何かを放出し始める。


その口腔から吐き出される光の帯びが、直撃する。とっさに展開された。偏光シールドにより、光の柱を防ぎながらも、


撃ち放った銃撃はその目標を捉え、蒼い光に包まれて二機の機影が炎の華を咲かせながら、吹き飛ぶ。


足を止めた瞬間に、周囲の複数の機影から、降り注ぐ銃撃の嵐に包まれ。光の榴弾が、防御の手が存在しない部位に炸裂する。


破断し溶断する竜の咆哮が、戦場を横断したのちに残っていたのは...充満する煙に包まれた陰から何かが飛び出してくる。


その方向に、逃がさぬとばかりに、《ササボンサム》の長距離砲撃、中距離から延びる《傾城魚》(チンチェンユー)の胴体部に備わった二門の拡散粒子砲の追撃が、


並み居る機体の砲身から延びる。ビームライフルの一撃が、放たれ続ける。


波状攻撃に晒されながら飛び出してきたのは、装甲の一部を剥落させつつ躍り出る。三色の艶やかなトリコロールカラーの機影。


そこに、肩部と浮遊する一対の楯《HHB》で防ぎきれない角度から《グヤスクトゥス》が放つ銃口が、防御の隙を縫って突き刺さる。


それは、まるであっけなく終わる童話の物語の様に、異質な様相を見せる。


光の粒子の一撃が。スローモーションで、《デスペラード》のコックピット部分へとの直撃コースを魅せるが...


繰り出された腕部の拳が、その粒子の一撃と交錯し、そして、爆ぜた。


その光景をみて、なんの冗談だ?と《人喰い》は、慄く。何の変哲もない拳の一撃で、粒子砲の一撃がものの見事に散らされた。


そして直撃したはずの装甲には、一部破損は見られたモノのその姿は健在。


煙の合間を縫って飛翔するビームライフルらしき基部が、肉薄した《グヤスクトゥス》へと突撃し、いつの間にか換装したのか


その銃身にはブレード上の銃剣が収まり、直進してくるそれに対して、腕部のビームシールドを展開し防御するも、


ビームシールドを展開する基部に直撃し、その腕部を破断しつつ、一射、二射、三射と、至近距離から叩き込み


異変を感じた敵機が、味方の生存を確認できずとも撃ち落とさんと、迫り、その斉射の合間を通り抜けるようにアイジェスが操作する《falcisファルキス》が、敵陣へと切り込んでいく。


その間にも、逃さぬように飛来する機影が、直接戦闘を試みる。その距離は、十数メートルの至近距離、光剣を振り乱し、八方から迫る


それらに対し、各部のマニュピレーター及び、脚部が踊り応戦する。


光り輝く光剣は、その輝きで、その装甲を溶断するはずだったが、何故か、なんの頓着もせずにその刃をその手のひらで掴むと、


その熱量と粒子で蹂躙するはずのそれは逆に、反発する斥力を掴み取りながら、その束縛を引き千切り、


バンッ真空中の宇宙ではなんの音も響かせないものの、大気があれば響き渡るで有ろう大音声を響かせ、上下左右の機体を衝突させ、叩き潰す。


その光景に危機感を覚え、射撃戦を試み放つ無数の光の雨に対して、


逆さに回転しながら、刃を掴み動きを止めた敵を楯とし、其の雨を潜り抜け、堪らず獲物を放棄して、逃げようとする敵機を伸ばした手のひらで捕縛し、


伸びるワイヤーソーが、保持した機影、複数の《アケファロス》と《グヤスクトゥス》を鈍器のハンマー代わりに振り回すと、


360度回転しながら、遠巻きで攻撃を仕掛けてくる。《傾城魚》(チンチェンユー)《マンティコレ(獅子型)》《サテュラル(虎型)》の三種の編隊を


巻き込みながら、其の生じる衝撃と接触によるジェネレーターの誘爆により、戦場の華と散ぬるらん。


腕部を戻すついでに、縦横無尽に戦場を駆けるワイヤーソーの一撃に、苦し紛れに《ファーマ》の一団が、電磁ワイヤーの一斉投射による。ワイヤー同士の絡みつきを狙うものの


何かを知っているであろう。人物の警告の言葉が響くも、その投射されたワイヤーは絡まる事もなく、通り過ぎ、逆に《ファーマ》同士が放ったワイヤーが、狭い空域に多数存在する


友軍機により、其の有利が逆に不利へと働いていく。


「はっ??????なんなのだ?あれは?何故、ビーム兵器が通用しない?????あれはオービットマイン...と同種の金属なのか?」


「観測手、目標の熱量を観測しろっ!!!!!」


その指示に慄きながらセンサー類の機能をフル活用するもののその結果にいささか困惑する。


「装甲自体の熱量は、軽微。違いますッ!!!」


「いや...違う...だと?」


己の目算する結果に慄きながら、作戦を組み立て始める。奴の装甲は、通常兵器では、傷付ける事は困難だと判断し、今の陣容で揃えられる。


特殊武装の数々を一手ずつ試すしかないと断定す。それに如何にその装甲が厚くとも、操縦者は一人だけである。五月雨式で延々と戦い続ければ、いつかは疲労で動きが鈍り、


行動不能に陥る。戦闘完了時間を当初の予定の数時間から、24時間まで、再設定。


各機に対して、特殊兵装の指示を行う。


その数十秒の攻防で、密集形態は、友軍同士の同士討ち、フレンドリーファイアーを誘発し、味方の機体が逆に邪魔になる事を知るも、無惨に、散っていく。



それは戦場を切り裂く、嚆矢の矢の如く、様々な音階を奏でながら、宙を翔ける。


機体が描く奇跡の輝線を描く、照射される。スラスターの光と、推力を以て、直上に展開される。


敵機の群れへと、逆さ摺りのまま点となった無数の目標に対して蹴り上げる。


ビームシールドを展開し、その一撃を防ぎきろうと試みるが、その衝撃は、


コックピット内へと伝わり、衝撃を吸収する為に展開されたエアバッグが一瞬で破裂。


鼻血を吹き出しながら、ぶれる視界の端で、何かが自らを操る機体の腹部に対して


抉り込むように捻じ込まれた。蹴撃が、特大の衝撃と共に、次々と複数の機体を巻き込み、


まるで、交じり合う、巨大な球体の様に纏めて宙へを昇っていく。


クルリと、機体にスラスターでの逆進を駆けつつも、その場で180度回転。


団子状に纏わりつく、その機体群を、逆さの機体が、無造作に蹴りつける。


次々に視点が変わる。カメラアングルには、一つ、上からその蹴り脚を眺める一瞬、


横アングルで目視される。その脚は、勢いのまま。その群体が、軍隊が展開する。


陣容に向かって迫る。


そして最後に背後のアングルから、は、蹴り脚を叩き込む。その一瞬の隙を好機とみて、


複数の機体が、発振する刃を煌めかせながら迫る。さらに中距離から、


《マンティコレ(獅子型)》と《サテュラル(虎型)》の一群は、小口径の一撃では、幾ら当てても意味はないと展開していた【falcis(ファルキス)】を呼び戻し、


敵装甲を侵食する《ヴェノムレイン》による一斉射を試みる。


発振する光り輝く毒針の光は、打ち上げの蹴りから、横方向へと逆の脚部を使用しての

蹴撃の瞬間に投射する。


背後から迫る光の毒針が、機体後方へと集中し、直撃する。


背面のマニュピレーターを後方へと展開し、その手のひらで、発振する数条の光の網目を


まるで躊躇せずに掴み取ると、逆に腕部より形成する孔より。衝撃を伴った光を放出し、


背面軌道のまま、降り注ぐ光る毒針を保持したまま接近する。



その異常事態に、慄き、照射を止めた機体の隙をついてその手のひらから放射される


覇劫の光が、その手を止めた物から次々と撃ち抜き、撃墜していく。


ジェネレーター稼働率110%...数日の移動時間を踏まえて、最大稼働率より


欠けた動力炉は解放された効果。


《一葉灼伏》...5%のその力を行使し、初手から、敵陣へと大ダメージを与え続ける。


各部のマニュピレーターの推進機構と攻撃も手を備えた。


その覇劫は、高速機動で、変則軌道を実現し、そして、回避と防御を織り交ぜながら、


敵影に肉薄し、逆さでその機体に着地し、そして跳ねる。


蹴り脚を叩き込まれ撃墜されていく無数の姿に、ジンボ=ジンタは、違和感を感じる...



(;゜д゜)(つд⊂)ゴシゴシ(;゜Д゜)…?!


なんか、目標の数増えてねッ?


煙幕を抜けるその瞬間にそれは既に完了していた。


「その未来、想像し、造り上げろ、スヴァルトアルフヘイム《鍛造の国》ッ!!!」


五分限りの暴風雨に酔い痴れろ。


三色のトリコロールカラーの機体基部の隙間から覗く、赤黒いフレームの基部より、枝葉の様に生えるフレームが機体を覆い尽くさんばかりに伸び続けそれを形成する。


作り出した得物は...《ドラウプニル》


その名の通り9夜ごとに同じ重さの腕輪を8個滴り落とす。


組みあがるは、その姿に差異は亡く、吠えるように、暴れまわる。暴風の存在が生じ、その存在は転じて9夜の間、次々と8機の機体を戦場へと投下する。


まずは作り出した一機目の機体が明後日の咆哮へと、その脚部を震わせながら直進し、


その途中で枝分かれした機体が、また別の方向へと向かって転進する。


《人喰い》カルニヴォルス (carnivorus)共は、目標を俄かに見失い始め、そして混乱し、しかも、増え続け状況は、悪化の一手を辿る事になる。


発振する、四つ手の刃を振るいながら、複数の黒い影が、踊りる。


今まさに出撃を果たそうとする艦影の最中、四方八方へと散らばっていく、機体が逆さで戦艦に着弾すると、生じる、熱量を調整しながら、長大な長さに伸長する刃は、出力で、すれ違いながら、縦に両断する。


空母のカタパルトから射出される機体が、十分な加速を得られないまま、母艦の爆発に巻き込まれ、ボカンボカンと、全てを出し切る事もなく、ただ性も根も尽き果てる。


最後の断末魔の声は、無窮の宙へと吸い込まれ、誰の耳にも届かない。


それがまるで、罰であるかの様に、ぴくぴくと痙攣する。表情の男は、その声に答えず、ただ無慈悲なる行動を断行する。


・・・



・・・



・・・



複数の暴れまわる目標に対して、攻撃を集中することもできず。タルパ・アレナリアは、試作品から、新たにロールアウトされた複座式の新機体、《クシェドレ》を駆り、


一度はその射程に目標を収めたもの、次射の狙いが、惑い、定められずにいた。


嘗ては、健康そうな小麦色の褐色の肌を見せていたその姿は、無菌室で育てられたかのように白く、白く、青白い、表情を見せる。


長髪の男性は、その身の厚い胸板をを晒して挑発するかのように、ぴくぴくと表情筋を震わせる。


「ここは砂漠ではないが。その裁きを下してやるべき我らがその意は、不動一槌を以て撃ち果たさん。」


零れんばかりに溢れる胸筋を震わせ胸襟を宇宙空間では開くこともできずに、パツパツと震わせ、語り。そして...ノーマルスーツの尻が破れる。


バリッと音を立てて、敗れた。その男が最後に太陽を見たのは、いつの事だろうか?一度目の生か?三度目の生なのか?それすら忘れた、男は、眩しそうにその光景を瞠る。



・・・



・・・



・・・



数十秒前の事、スヴァルトアルフヘイム《鍛造の国》の《ドラウプニル》による、増え続けるその権能を魅せ、戦場を所狭しと、舞い続ける、


その背後では、徐々に遠ざかりつつあるも、その深淵良俗に反す。《エーリヴァーガル》が背景の様にその姿を現し続く、景色の中で、また一つ命が消えた。


降り注ぐ粒子が、流れ星を生み出し、暗闇に浮かぶ、星の川面に、はたりと浮かんでは消える。



《クシェドレ》は、その機体に備わった四つの特大のダグザの釜から放出される。動力炉を強振させ、押し出すようにその口腔に備え付けられた銃口へと


その光が収束しつつ、螺旋の光が絡みつく光が、その狙いを大まかに付けて、その姿を追うように、薙ぎ払うように一射を加える。


其の側杖を喰らい。また一人の《人喰い》カルニヴォルス (carnivorus)の姿が消える。



(・д・)チッ


多数の友軍機に連携を促しつつ、邪魔にならない範囲での退避行動を促すも、目標は、こちらの射線が、友軍機を巻き込むようにその動きを変え、


上に急速上昇したかと思えば、下降し、友軍機の追跡を払いのけ、そして横に加速したと思えば、急制動を駆けながら逆方向へと加速する。


その動きに右往左往しながら、狙いが定まらない。


また、友軍が、仲間を撃った...



前後左右、斜め、上昇下降を繰り返しその手で、新しき加工を加える。


震える様に発光を繰り返し、三色のトリコロールカラーの機体から覗く、赤黒いフレームの基部より、


枝葉の様に生えるフレームが敵味方それぞれの機体を覆い尽くさんばかりに伸び続け


徐々に何らかしらの形を形作る様に、そのフレームを自由自在に加工し始める。その選択を選び取り、作り出した得物は...《トールハンマー》


打ち出す錬鉄の火花の如く散る命は、その無情をよしとするのかと、問いかけ続ける。その手に形成されし、得物は、無骨な浅黒く、赤雷纏し、


柄の短し戦鎚が、一丁。掴み取りし、鉄塊と見紛う。歯車踊るその躯体を一振りすると、稲光を纏い、眼前に広がる一面の装甲を施された異貌の者供に、


降り注ぐ。明滅する光は、一陣を吹きすさぶ風と共に、ひと波の波動を伴い、展開される。


その宙域で、稲光が瞬く、全くその突然の光に、慄き、そして、震える。


その光景を一度みたものは、その場には居なかった。振るった事は、数日前に一度きり、


稲光に触れ、電磁パルスのEMPを使用したその雷撃の雨は、電流の直撃を受けた電装のデータを吹き飛ばし使用不能へと変えていく。


周囲に展開されていた機体の十%にも満たない、短い範囲ではあるものの、その全てに満遍なく放射され、そして、それらの機体は同様に、


電磁パルスの直撃を受け、使用不能のブラックアウトへと陥る。



その槌をひと振りする度に、敵機の陣営に行動不能の機体が次々と浮かんでは消え、そして、その行使した力の代償かのように、


《ドラウプニル》で増やした機体の内、一機の姿が空中で霧散し、宙に描く花火の如く周囲にジグザグに伸びる枝葉の槍を


生やし、敵機を貫くと、跡形もなくその姿を消し去っていく。


(・д・)チッ


炉に焚べるべき、それの絶対量が少ない。《ドラウプニル》と《トールハンマー》の同時併用には、弊害があるとみていい。


燃やす何かを増やすべきか悩むが、此処は長期戦の構えを取る。燃え上がる怒りの炎は定まらず。


譬え、人の怒りが持続するのは6秒後まで、という言説を真に受けるのであれば、収まるはずだが、依然として爛々と目の輝きを魅せながら


その炎は、暗く淀み、憎しみを醸造していく。それでも頭の芯はキーンと、冷えて、其の操縦の腕は、冷静に、冴えわたる。


嘗ては、健康そうな小麦色の褐色の肌を見せていたその姿は、無菌室で育てられたかのように白く、白く、青白い、表情を見せる。


長髪の男性は、その身の厚い胸板をを晒して挑発するかのように、ぴくぴくと表情筋を震わせる。


「ここは砂漠ではないが。その裁きを下してやるべき我らがその意は、不動一槌を以て撃ち果たさん。」


零れんばかりに溢れる胸筋を震わせ胸襟を宇宙空間では開くこともできずに、パツパツと震わせ、語り。そして...ノーマルスーツの尻が破れる。


バリッと音を立てて、敗れた。その男が最後に太陽を見たのは、いつの事だろうか?一度目の生か?三度目の生なのか?それすら忘れた、男は、眩しそうにその光景を瞠る。



咄嗟に、《クシェドレ》に搭載された最新型の偏向フィールを出力全開に展開。光を捻じ曲げるその効果により、降り注ぐ稲光の線が、機体の各部へと直撃するのを


逸らし、そして相手の狙いを外したかの様見えるも、突然、《クシェドレ》の動きが、緩慢になり、そして電磁パルスのEMPに晒され、画面上に表示される映像が


一斉にブラックアウトされ、必死にフットぺダルや操縦桿を操作し続けるが、依然としてその動きに反応する様子が見られない。


放つ雷霆の一撃に、晒され、電子制御された機体の再起動が始まるまでの百数十秒の間、無防備なその腹を上にして、向け続ける。


(・д・)チッ


《トールハンマー》の影響範囲と効果時間に、差異が見られる。二射目の雷霆をチャージし、周囲の状況をみやり目標を探していると、直上から殺気を込めて、



四機の《マダ》…いや機体のデーターベース上での類似機体は、見られないものの累系機体と判断。


編隊を組みながら突撃してくるその機影が、射撃と高速機動の一撃離脱を試み


《ルドゥス・アレアエ》》は《アドゥルテリウム》《カエデス》《エブリエタス》の三名に声を掛けつつ、攻撃に移ろうとするその一瞬の隙を縫って


襲撃を開始する。


《マダ・ブレイズ》...その機体は、紫の一色に染められたものの、《マダ》本来の機体に備え付けられた。牙を模した銃口の大型ライフル以外に、


犬歯の様に機体の四隅から延びる銃口と大型の放熱板を展開、噴出された熱量を急速冷却しながら、突撃陣形のまま、降りしきる光の柱を投げかける。


連撃の破劫を瞬く、それらの機影が、戦闘の機体が、全砲門から閃光を乱れ飛ばしながら、次機の《マダ・ブレイズ》は、銃口を二つに割り、その基部より、


炸薬を込めた榴弾とワイヤーを繋げた。物理兵装を投射、命中すればその動きを阻害するそれを電磁投射する。


三機目の《マダ・ブレイズ》は、砲身からの投射ではなく、業火の炎を上げながらその熱量を込めつつ、刃を発す。炎の牙を瞬かせ、


左右にぶれながら接近してくる。


そして最後の機体が、その銃身からの砲撃で、援護射撃を仕掛け、迫る。



その動きに、対し、仰ぎ見ると、同時に左右の方向から迫る。敵機の影に、其の目算の距離を算出し、接近してくるその時が早い順番に対応していく。



迫る破劫に対して、元の楯に変形させ呼び戻した《HHB》の防壁で防ぎ、多角目標の一番機をその場で推進機構を吹かせながら、回転すると、擦れ違いざまに


一撃離脱を敢行するその機体上部へと蹴り脚を叩き込み、バランスを崩した《マダ・ブレイズ》の軌道が大きくそれる。


エアバックが起動、視界を防ぎつつ、流れた軌道のまま、次機の機体が迫る、


放たれし獣たちは、蹴りの軌道のままの《デスペラード》に対し、視界外の斜め上からの狙撃で、その脚を止めさせる。


対応すべく《ササボンサム》による、高出力遠距離射撃を、肩部副腕ののシールドで防御。


防ぎ足を止めた瞬間に、《デスペラード》に向かって、炸裂するボーラー《エクスプロシオ・ヤ》が放たれ、その結ばれたワイヤーが機体の隠し腕や


基部に絡みつきながらも、起爆の瞬間を待つ間もなく、左右の《サテュラル(虎型)》と《グヤスクトゥス》が接近戦の獲物を構え、そして三機目の《マダ・ブレイズ》と合わせて接近戦を試みる。


譬えその装甲が厚くとも、炸薬の直撃と無防備なその機体へと無数の光剣を突き刺し続ければ、いずれ融解温度へと到達するはず。


その目論見は、半分成功し、半分は...。



炸裂する炸薬がまき散らす噴煙は、その姿を大きく隠すものの...真空中では、霧散することなく滞留し、次の瞬間、目標めがけて突撃していた。



《サテュラル(虎型)》と《グヤスクトゥス》の側頭部に、逆さ上に蹴り上げたその脚砲が炸裂、大きく頭部および胴体部に大きな破断を生み出し、


衝撃にブラックアウト。一気に、吹き飛ばされし機影は、何を思ったのか?今も尚砲撃戦を仕掛けている《ササボンサム》へと、その狙いが...


今まさに追撃を放とうと引鉄を引こうとした眼前へと、迫り、その銃口共々、露出したジェネレーターに誘爆し、遠くで爆撃の華が咲き誇る。


何が起きたのか?分らぬまま三機目の《マダ・ブレイズ》が炎の牙を突き出し接近。煙から抜け出した《デスペラード》の延びる覇劫の刃を伴った光剣と


切り結ぶ都合、五本の刃と、四本の光剣が、互いに撃ちあいながらも、接近戦を繰り返す。


瞬く炎の牙を打ち払いながら、《マダ・ブレイズ》の動きが急制動を駆けて、上方へと逃げた瞬間四機目の《マダ・ブレイズ》の砲声が襲い掛かる。


その狙いを《HHB》を操作し、ブラインドと防壁代わりに射線に割り込ませると、


周囲に展開した銃剣を備え銃身と、要塞の迎撃に向かわせていた九つの端末である《ナインテイル》たる《falcis(ファルキス)》の各基を器用に、操作し、一撃離脱から戻ってきた


新手の攻撃に牽制を掛け、ふさいだ射線の背後から、刃を振るって接近戦を試みる《デスペラード》が、交錯した瞬間に、


背面より飛来する。何かに押されて、背面部の副腕を楯として、その一撃を防いだものの軌道の軌跡に、大きくブレが生じ、撃墜の格好の間が、途切れる。



チッ


「今度はなんだ?」


再度の新手の登場に、そこまで覆い隠していた激情が鎌首を擡げ、その気勢を吐く。



《トルダネード=ゲルジス》は、嘗て豊穣の海を泳いでいた記憶を思い出す。ひとつ前の己は、ただ、水の豊富なあの蒼き星の海を泳ぎ、


自由を謳歌していた。輝ける記憶にその身を浸し、泳ぐ海を海水で覆われた海原から、真空の大海へとその謳歌する場を宙域へ漕ぎ出す機体として、


《ククウェアク=グム・キ》を駆る。


通常の機体の数倍にも及ぶその巨体の背面部から延びる魚の尾を模した、光り輝くプラズマ推進機構が、水の無い仄暗い大海の中を


自由自在に泳ぎながら、さらに10本にも及ぶ、その手に鋭い発振する光の刃を何もない暗い空間で振り上げこちらへと突撃してる。


獣の顔を模したその頭部より銃口がその開口部より現れいでし、光の咆哮と、其の無数有る手足から延びる、実体兵装を投射する。


襲い掛かってくる飛び爪たる《バリスティッククロー》に晒されながら、背面のマニュピレーターで弾き飛ばし、防ぐも、格好の撃墜タイミングを逸して、


《デスペラード》の攻撃がカラぶる。


一度、一撃離脱を行い、距離を開けて離れて行く四機の機影が大きくカーブを描きながら宙の暗闇に一筆書きの輝線を描き、再度の攻撃を試みようとする。


その《マダ》に、似たその機体を見て...やや違和感を感じる。もしあれが、《マダ》の発展形だとするのであれば、周囲に酩酊をあたえるはずだが...


その事を知る由もないが酩酊するはずの《マダ》の副作用は、《マダ・ブレイズ》に追加で実装された放熱版の熱量を以て、その酔わす酩酊成分を蒸発させ、副作用を周囲に及ばさない様に、改良が施されて居た。


その事は知らずでいるアイジェスは..《マダ》の複製廉価版として生み出した《カルペ・ディエム》が、その副作用を改善させていることに思い至り...


機体情報が洩れている???何故???だと?疑問に思いつつ、何処で情報を得ていつの間に改良を加えた???


目標を一撃離脱を試み離れてくる機影より、接近してくる10本にも及ぶ手足を振るうその機体に向かって、迎撃行動に入る。



だが、このままだと、無数の敵に囲まれ、都合、自機と複製体も併せて9機存在した《デスぺラード》も《トールハンマー》の一撃で、一体消失し


8機となり、次射の稲光の放出に懸念点を見出し、分散展開しているその機体の内、数機を本体の防御に回すことも考えるが、


防備を固めれば、本体の場所が、バレる。


そうすれば、集中攻撃を避けることが出来ない。ならばと、ブラフを交えて、三機編隊、三機編隊、二機編隊で、割り振り、


合流させる。目印になる様な。《falcis(ファルキス)》...は、分散して展開するも...



幾人かの《人喰い》カルニヴォルス (carnivorus)は、惑わされたモノの一度目標として、認識した。幾人かは、構わず本体めがけて


集中攻撃を繰り出し続ける。


多重の光鞭を多数放射し、器用に友軍機たちの軌道を避けつつ、縦横無尽に押し寄せてくる。クラゲの触手の如きその脅威が、迫る。


その最中で、戦場の中央部からやや離れた場所に現れたアガートラームの艦橋ないで、会話が続く


「《オーグル》よ。逝けるか?」と、《ジンボ=ジンタ》は、語り掛け。


《アニス=フライヤー》は、「嗚呼、何度でも逝って魅せるよ。」と、新型を繰り出す準備に入る。


(再生化は、ごめん被る。あたしはあたしだ。あの存在とは違う。消えればそこで終わる。危なくなれば...何か適当な理由を付けて離脱させてもらおう。)


「しかし、《ジンボ=ジラマ》殿?何故、急にこんなに新造機体が増えたのだ?」


(適当な話をして、少しでも戦場に出る前に、他の奴らに精々削らせてやる。)


当然の疑問に、その白髪交じりの初老の男は、答える。


「嗚呼、そうか?君は、知らなかったのだよな。幾つかの《シンギュラリタス・テクノロギカ》...技術特異点たる。その御神体の何が理由なのか分らぬが、

其の封印が解かれた。あとは、簡単だ。乗りこなせる様な人員は一名を除き確保できなかったが、その特異な技術体系の一部のデータは収集できた。」


(あとは、そのデータを元にダグザの釜の機能を使えば...。出力できる。惜しむらくは、一度外れた封印が、何者かの手によって...。)


「あとは、分かるな?君に用意した機体も既にロールアウト済みだ。」


(私の新型尿漏れパットもロールアウト済みだ。快適だ。多い日にも安心。もう一人の私も、この戦場を見ているはずだが...念の為...生体...の収集をしておこう。)



いそいそと、送り出された《アニス=フライヤー》は、機体をカタパルトデッキの射出機構に固定すると、遠く離れている。目標に向かい。


FlyAway(フライアウェイ)


「《オーグル》...アニス=フライヤー...《グレンデル》出るぞ。」


(腹いせに、盗聴した情報で、一杯喰わせてやったが?まだ抵抗する元気があるらしい。戦うのは奴が切り札を切った後が望ましい。)


勢いよく、射出されるカタパルトの勢いのまま、その異形の機体が宙へと放たれる。



その機体は、熱放出用のコードがその赤く怪しく光る二つ目を覆い隠し、大きく鉤爪状に伸びる刀身を備えた大型の籠手をひと揃え、


左右のバランスを崩した目や、放出される熱量により、崩れ続ける面顔、その醜い、機体を駆り、


《オーグル》は、飛ぶ。新型のジェネレーターとそのスラスター推力は、一夜で、通常機体の15倍の燃料消費と、出力を誇る。


その操作感覚に、確かな満足を得るも、その姿に嫌悪の唾棄を吐き、人喰いの女は、飛ぶ。



戦場のど真ん中で数機の《デスペラード》は、互いに、その機体の死角や攻撃と防御の隙を埋めながら奮戦する。


其処に、危機を知らせるアラートを受けるよりも早く、反応し、防御を固めるも、黒い閃光となって、着弾する。、


複製体の一機の《デスペラード》が、《エーリヴァーガル》の岩盤まで。一機にその機影に押され、激突する。


足撃を加え、加えた一撃を足場にして、後方へと宙返りし、周囲の状況を見回す。


ん?


「動きが止まらない。(・д・)チッ、偽物か?こんなんじゃ逝けない。もっと獲物を寄こせ。」



岩盤に埋もれて身動きのできない《デスペラード》分体に対して、籠手を開いて、展開された。


五本の砲身から除く光の一射を注ぎ込み、爆裂の咆哮を上げて、土煙が上がる。



次ッそういって《オーグル》は、瞬時に、その場を離れて、本体を探すべく転進しようとした瞬間、


離脱するその脚に投射されるワイヤーを伴った手が掴みかかり、瞬時に噴射したメインスラスターの推力が減算され、大きく振り回した勢いのまま


《グレンデル》の機体も、《エーリヴァーガル》の岩盤へと叩き付けられる。



居並ぶクラゲの触手を発振する刃の群れで、器用に弾き、逆にその光鞭を掴むと、その勢いのままて前方へ引き、


慣性軌道でこちらに向かってくるその《サン・ヴァントル》(腹無し)に対してして、大きく欠損した腹部ではなくパイロットが乗り込む、頭部へ逆さのまま蹴り砕く。


バラバラになったコックピットから放り出された。その人体を目を瞠る男は。無造作に握りつぶす。


鮮血の華を咲かせるもその機体の黒く淀んだその色を塗り替える事はできず、混迷する戦局は、乱れ飛ぶ複数の機体の姿を捉えきれずに、右往左往するも、互いに打開策は見られず...とも、


貴様らに語るべき慈悲などない。そう小さく呟いた。男は、既に殺すという、無駄にも思もえるその決意なぞ、言葉にせずとも


その行動は既に終わっていた。


怒れる心に冷静な一手を打つべく己の状況を俯瞰する。


敵は多数。雷霆の一撃で無力化したとしてもその効果は、単独時に比べて、出力が低い。暫くすれば復帰してくる恐れがある。


その前に、攻勢へと転じるべく。


二射目の雷霆を放つ。



遠く離れた《エーリヴァーガル》で争う一体の分体をそのままにして、残る本体と6機の分体の内一体を、先ほどの雷霆を放った宙域へと


移動させる。


残り六機編隊の機影を躍らせ、機体たちを一機を残して終結させ、攻撃してくる死角を潰しながら、その一手で、敵を屠る。



エンコードにより解放された機構に更なる一節を書き加える。


《奏魄魂業》(そうはくこんごう)...。且つて別たれそして、集うた。その肉体と魂を和合し、繋げる。


機体色を三色のトリコーロールカラーから、白と黒の二色の色分けされた機体が、発振する粒子の色をそれまでの緑から黒い指向性を持たされた粒子を赤雷の光が包み込むように変わる。


周囲を漂う。その淡い光に包まれ、吠える様に、唄うように、願うように、その引き金を引く思考の創造と予測を超えろ。



戦槌を掴みとり、そして、周囲に複数の《falcis(ファルキス)》を機体の周囲へと展開し、そして浮遊する銃剣状のライフルの銃把(じゅうは)


開いた右腕で保持し、先ほどまでの攪乱戦法からその狙いの方針転換を決める。


其の武骨な得物からは、歯車踊る躯体をひと振りすると、それまで何の目的で付随していたのか謎のその機構が、本来の意味を取り戻し、


その歯で、目標を噛み砕かんと欲する


二射目の雷霆が、主に大型機が固まっているであろう下方へと投射、放たれる雷霆は、電磁パルスのEMPを生じさせブラックアウトさせ、


その中心部へと《デスペラード》の分体の一機を差し向ける。


行動不能となる《ドラウプニル》で増やした機体を消滅する不利を悟って、代わりに...


爆弾代わりに、中心地へと放り込む。


単騎で突っ込んできた目標に対して、周囲の《ヨートゥーン》や、《マンティコレ(獅子型)》《イルベガン》《サン・ヴァントル》(腹無し)は、


その持てる武装のすべてを放出し、逃げ場のない包囲射撃により、不用意に突出した。その機体に直撃のダメージを刻み付ける。


十重二重と周囲を囲み、打撃による衝撃と熱量で、動きを封じこのまま墜としきると、


今も尚、砲撃を加えながら、機体を輩出し続ける艦船の群れに対し、


遠くで雷鳴の光が瞬くと、その姿が空中で霧散し、宙に描く花火の如く周囲にジグザグに伸びる枝葉の槍を生やし、防御を固める敵機と艦船ごと貫くき、跡形もなくその姿を消す代わりに、戦場に無情の傷跡を残し、去り行く貴女に捧ぐ詩とする。



巻き込まれた敵兵が、零れ落ちる命と共に、火花の華が花開く。



宙に放り出された無数の命に対して、降り注ぐ蒼白い光の輝線が、ただ無為にその命を散らす。


敵機たちはその惨状に、色めき立つ。


増えた敵機の防御は固く、こちらの攻撃が通りにくい、それであっても攻撃をし続ける事により、動きを止める事は出きるが、


こちらを行動不動に陥らせる雷撃と共に、自爆攻撃を仕掛けてくる。


狙うは唯一機...あの《falcis(ファルキス)》が周囲で防御を固める本体への集中攻撃を試みる。


一撃離脱攻撃により、目標から外れて、大きく弧を描きながら再度の攻撃を試みようと方向転換に入った。


四機編成の《マダ・ブレイズ》は、それを目撃する。


続けて雷撃が走り、命中した友軍機が、火花を上げて、両断されていく。再度の電磁パルス攻撃か?


その放射に、危機感を覚え、大きく軌道を変えて退避する。


他にもネームドの機体は、それぞれ独自判断により、対象の自爆攻撃を同時に警戒して距離を取るが…


Rise(ライズ) Rising(ライジング)》...放つ稲光の牙は、その宙域の真空を奔り、宙をを泳ぐクピドレスを焼き続ける


本来ではあり得ない程の高圧電流によるアーク溶接の光に晒され、周囲に展開し、そして蒼い光の柱を織り交ぜつつ、


その目視上では、効果の差異が分からぬ。その攻撃によるフェイントを掛け、敵の行動を誘導し、戦場の趨勢を決める。


その全体の1割程度の機影が、次々と行動不能になる中で、《トールハンマー》の一撃に、別の雷撃を織り交ぜ、


ない混ぜとなった。その自らを囮とし血路を開くべく派手な閃光を瞬きながら、追従する分体に自らをカバーさせ、



《エーリヴァーガル》とは反対方向の敵陣の集合地帯へと目標を見定め、其の連撃を叩き込み続ける。


その動きに微かな違和感を覚えつつも人喰いカルニヴォルス (carnivorus)の群れは、凡その検討を付けたその目標へと集中攻撃を開始する。



疾走する《デスペラード》の後方より、無数の機体が追いすがり、前方の敵を切り払いながら進むその機体の上下左右より、群がる死肉を漁る獣の如く、


その牙う打ち鳴らし、接近戦と射撃戦を仕掛ける。


迫る敵機の刃をかわしつつ擦れ違いざまに反撃の刃で叩き伏せ、投射する蒼き光に穿たれまた一機、散り行く姿を何の感慨も浮かばずに仕留めていく。


後方からの攻撃に対しては、回避の一手のみを繰り返し、背後から射かけられながらもその攻撃を左右に、旋回しつつ回避し、錐もみ状のバレルロールを繰り返し、


5機の分体が、目標とされた本体に思考のリソースを取られた、敵機の死角へと捻り込みを入れつつ、滑り込み転進。


進む敵機の背後から迫る《ドラウプニル》が迫り、また一機、また一機と墜としていく。


その光景に、苛立ちを覚えるジンボ=ジンタは、何故墜とせない!!!と声を荒げて、さらなる攻撃を指示するも


群がる敵に、今度は、体を前面と背面を入れ替え、背面飛行を試み、進行方向へと逆の正面の敵に対して、戦槌を放り出し、両手に備えた銃把(じゅうは)を掴むと、


自らをおとりにしながら、乱れ撃ち、そして、撃墜を繰り返し、後方の敵を減らしながら、加速し本体と入れ替わる様に通り過ぎる分体は、一機も欠ける事もなく


今度は前方方向に放射状に、分散展開をし、機体各部の射出孔から投射攻撃で、迫る思考制御による弾体の群れを撃ち落とし、迫る【falcis(ファルキス)】の一団に対しても追撃を繰り出し、敵陣の陣容に、亀裂を入れ続ける。


その姿、その目論見、全てを先読みして、回避し続けるには、その物量の密度と、現実は厳しい。


それでも、自らの姿を危険にさらすことにより、敵の狙いを自らの一点に集中させ。その思考の向きに死角を作ると、すかさずその意識と命を刈り取る。


死神の鎌となって、死をまき散らし続ける。



繰り返す戦闘の中で、《クシェドレ》の電子制御システムの再起動が終わり、《スヴァルトアルフヘイム(鍛造の国)》の活動限界まで残り、120秒...


それまでに...一体でも多く屠る。


後方の敵に向かい、其の全てを打ち破らんと、射撃戦を展開しつつ、遠く離れていた。「マダ・ブレイズ」の四機編隊と、復帰した《クシェドレ》が、


スラスターを全開にして、敵への対処で、出足が落ちた《デスペラード》へと迫る、


遠間の距離から降り注ぐ、粒子の嵐を、回避しつつ、背後から襲い掛かる。其の全てに対して、その威を通すように、狙いを付けて、


撃ち放つ一射が、直進しながら、牽制を放つ。敵の装甲の隙間を狙って放たれた一撃は、大きく装甲の一部を起動し、大型のクローとして展開された


その手のひらに命中すると、光の粒子が、其の偏光シールどの防御を超えて、その装甲に浅い擦過傷を刻み、その爪の一部が溶断されはじけ飛ぶも


続く、螺旋の光が絡みつく光の奔流と共に、基部に隠れていた。多数の開口部より、龍鱗状の思考砲台をその矢じり型のその基部を乱れ飛ばし、


その刃で、切り裂かんとばかりに襲い掛かる。



まるで海の水面に揺れる魚群の群れの如く、視界一杯に広がる。それらに対し、後方へと、背面飛行で、目視する間もなく狙い打ち、


そしてその銃口から...蒼く光る雷鳴を伴った。飛沫が光の刃と共に放射状の広がる。雷霆と共に、進行方向で、露払いをしていた分体の一機を


逆さに急速反転。


その攻撃に晒されるのも厭わずに、入れ替わるように進み出ると龍鱗の群れへと、飛び込み、その刃に晒され、次々とその基部が装甲に矢襖のように突き刺さり、其処に《クシェドレ》の主砲がその手法を変えて命中する。


光に包まれ、霧散したかにみえるその光景に、浮遊し機体に追従する。鉄槌より、再びの雷霆。


その効力に対して、大型クローから生じる偏光フィードを展開しつつ、射出。機体前面を守るように放たれた優先クローは、雷鳴が過ぎ去りし、


僅かな隙と共に、強制パージ。絡みつくように悶える電気の蛇がその機体に這う直前に、電磁シールドをはった装甲を、逆位相の電位を通したまま、強制パージと

共に、ダミーバルーンと、金属片とチャフを展開。


《クシェドレ》内部のコックピットでは、外部の風景を映し出すモニターの半分がブラックアウトし、残る視野の先には、龍鱗に包まれた。


敵の姿を眺め、次の瞬間、突き出た。樹木の槍が接近、画面を覆い尽くし、その刃が、コックピットの外装部を貫き、多重の爆炎をまき散らしながら、


その手が費える光景を見る。


ひび入った。ヘルメットから空気が漏れる音がする。在りし日々の思い出を思い返し、走馬灯が脳内にながれるが、それを振り切り、


同乗者に返答を求めるが、その声に答える者はおらず。


唯々、無為にその腹部を頭蓋を貫く枝葉から漏れる血が滴り落ちる音だけが響く。


「喰っ...クソ。まだ。マダだ。マダが追従していたはず。狙いはこちらに集中したはず。そうであれば...」


操縦桿を必死の形相で掴み、三度の咆哮を上げるべく引き金に手を掛けるが、次の瞬間には、そこには蒼い紫電を纏った。銃剣の先が、電磁加速を終えて


その操縦席を真っ二つに突き破っていた。衝撃で、死の間際に、引鉄に手が掛かり、大質量の放射量を誇る粒子砲の一射が大きくその狙いを外して、


断末魔の声を上げる。怪物の如く、その光が前方から直上へと流れ、余波を受けた艦船と機影が飲まれ次々と轟沈していく。


誘爆するジェネレーターの爆圧と共に、放たれた複数の末期の叫びに、アイジェスは何の感慨も浮かばずその苦しみを断末魔のすべてを受け入れる。


そして、一言いう。


それがどうした?お前がここで苦しんだとして、彼女が受けた苦しみの百分の一にも満たない。それで、赦されると思うな。


ただ、怒りに身を震わせ、断罪の鎌を振るう。そこにはそれ以外の感情は存在せず。刻薄だとしても、構うものか?


とて、嘗ての笑顔は消え去り、青筋を立てて、無言のまま次の目標に狙いを付ける。残り80秒、それまでに初手で配った手札を使い切る。



残り手札は、《エーリヴァーガル》で、単身敵機を引き付け続ける。文体一機と、追従する残り四体を残弾するとして、


次の手を考える。


再度の消滅時の枝に巻き込み斃すことも考慮するが、それは既に二度、三度と見せている。戦場を変えればまだ、その意図を知らぬ一般兵は、


斃せるだろうが、一緒に追従し、巻き込む瞬間に退避行動を行っていた。あの四機の新型のマダは、恐らく深追いはせず、遠間からの射撃戦に終始するだろう。


ならば...こちらから出向くと、背面飛行から、スラスターを吹かせ進行方向を後方から前方へと切り替え、周囲の【falcis(ファルキス)】と、断続的に襲い掛かってくる


機体の迎撃に使用していたそれらを、少し思案しさらに二手に分ける。本体と三体の文体を新型のマダへの迎撃に向かい。残りの一機を不調を装い。



釣ってみるか?...と、編隊から離れる機影は弱弱しく速度を落とすも、既に何度か見せた手により、警戒して遠巻きからの狙撃および、【falcis(ファルキス)】での牽制に留まる。



やはりだめか?



そして、目標と見定めた新型のマダは、高速機動による一撃離脱を取りやめ、機体の射程の広さを生かして、こちらに向かって釣瓶打ちで、射かけては、



後方に下がる引き撃ちを続ける。その状況で仕掛けるは、一撃離脱。



こちらがやられた事をそのまま返す。四機編隊の突撃陣形で、大きく半円の曲線軌道に乗って今度はこちらが、やや下方より、上昇しながらの接近を試みる。


縦列の陣形で突撃してくる敵機に対し、《マダ・ブレイズ》を駆る


《ルドゥス・アレアエ》《アドゥルテリウム》《カエデス》《エブリエタス》ら四名はせせら笑う。


付けや牙の物真似など、意味がないと...



だが脳裏に嫌な予感が過る。《慈聖体》など、どうでもいい。仲間と...。...の仇さえ取れれば。



ん?かつてどこかで同じ会話をしたことがある様な?仄かな違和感を感じ取りながらも、迎え撃つ為に、


四機それぞれが別々に稼働するが、自分たちの戦法の弱点は分かっている。



「《アドゥルテリウム》《カエデス》《エブリエタス》合体するぞ?!!!」


其の呼びかけに答える様に、四機の機体が牙を模した砲身を展開しつつ、各部を変形させながら四機から一機の大型機へとその姿を変え、


突撃してくる目標に向かって真っ向からの《天地併呑》(ウニヴェルスム・デヴォラーレ)もとい、《天地暴喰》(ヴィ・ウニヴェルスム・デヴォラーレ)を起動、


乱杭歯の様に入れ違いにその砲身が並ぶ銃口から、単騎では今まで見た事のない程の熱量の出力を、その効果範囲に対して、馬鹿正直に接近してくる。


編隊に対して、其の陣形が無意味で有る事を知らしめさんと、吠える。


まるで捕える気も見えないその射線が、見え隠れする先頭の《デスペラード》の分体が掲げる量肩部の楯から放つ偏光フィールドにより、


阻害されるもその勢いは殺しきれず、照射する赤紫に映える。様々な色を魅せつつ、天輪の環を掲げる一射を以て背後の数機の機体毎、その姿を覆い隠し、その姿をこの世から消し去らんと発振する。


震える銃口はその威力を誇るように、愚かなその行為を行う対象へと、罰を与えるかのように、頷き満足そうに照射を友軍機に影響が出ない様に、

徐々にその光の口径を絞りながら、多重の砲身が熱を持ちつつ、背面部の放熱板からその熱量が宙の真空に揺らめく炎を幻視させるが、


まず最初に起こったことは...戦闘の機体がその攻撃を受け、爆ぜ爆炎を轟かせながら、何かの破片を周辺へとばら撒く。


ガツガツと、機体各部に、破損した装甲片と思しき残骸が降り注ぐ。


が、《ルドゥス・アレアエ》は、その手ごたえに違和感を感じる。ふと、念の為、望遠を最大にし、その結果を確かなものとして、確認するに至るが、


其処に待っていたのは、無数の弾体の雨、咄嗟に射撃による撃墜を選択。


放物線を描き迫る白と黒の配色をごちゃ混ぜに混ぜたマーブル柄の弾丸が一斉に二か所で爆ぜた。


・・・



・・・



・・・


《天地暴喰》(ヴィ・ウニヴェルスム・デヴォラーレ)が、放射される数秒前。アイジェスは、その槌を振るって、その組成を作り変える。


繰り出す造物は、嘗て唄われた由緒正しき一振り。《ドラグヴァンディル》より派生する矢...《グシスナウタル》を身じろぎしないまま作り出し、一度に二か所でそれを弾けさせる。


飛び出す《黒曜鉄鋼》(ブラックライト)製の矢尻を備えた。無数の弾体が大きくその軌道を曲げながら襲い掛かってくる。



《ルドゥス・アレアエ》は、おかしな手ごたえに、違和感を感じ、警戒を解かずにいた。その手を操縦桿に添えて、迎撃の一射を放つ。


その光の柱は、何体もの味方の存在を巻き込みながら、横なぎから螺旋状に射線を回し、舐めるようにその攻撃を撃ち落とそうとするが、その弾体は、


熱量に晒されながらもその素材を融解させることもできず。


とめる事が出来ない事に慄き、粒子兵器から、複数のワイヤーに炸薬を込めた実体兵装へ切り替え、爆圧で弾こうと試みる。


次々と電磁加速を駆使して、投射を繰り返し、乱れ飛ぶワイヤーは、狙いを逸らし、次々と仲間の機体絡めて撃墜していき、阿鼻叫喚の地獄と化す。


「おぃ、あいつは、〇〇〇〇〇〇〇が保存されてないんだぞ?!!」「嫌だ、まだ死にたくないッ!!」


降りしきる鉄条網を繋ぎ合わせた様な、その矢の雨が、迎撃の粒子砲の斉射を弾きながら迫り、其の弾体の先端に備え付けられた、螺旋状のブレードカッターを稼働、


防御として機体前面に張り出した、光の楯、ビームシールドを突き破り、突き刺さると同時に、コックピット内に穿孔しながら、潰れ行く肉片をミンチと化しながら


ただの肉片と化す己の運命を悔やみ、絶望の叫びをあげながら、破れた内蔵から糞尿を垂れ流し血にまみれて最後に答えた声は、ただ己の不運を呪う声のみ、



其の叫びを受け取り、呟く、何故、其の憐れみを他の誰かに持ち寄せられなかったのか?


そう問いかける問いに答えるものはなく、無数の白磁と黒檀を思い浮かべる様なその木目の金属は《イベルガン》が展開する全方位をカバーするその防御すら容易く射抜き、


その運命を決定づける。


遠くで上がる花火を視界の端に目標を捉えつつ《マダ・ブレイズ》は、実体弾による投射に巻き込みながら、迫る。穿孔する弾体をスラスターを吹かせ、放熱板から放出される熱を排熱しながら、味方を巻き込む事すら厭わず


迫る死神の鎌を振り切ろうと無茶苦茶に宙を飛び、勢い余って母艦の環境へ突き破り、破断された装甲の隙間から、ノーマルスーツに身を包んだ多数のクピドレスが放り出される。


死神はその光景に何の感慨もなく、引きつぶし、鮮血と、千切れたスーツの一部を漂わせながら、次々と次の獲物を駆る黒い猟犬となって、追いすがる。



逃げ惑うその後姿を目視する事もなく、把握し、その行為に対して、言葉を紡ぐ。


人喰いカルニヴォルス (carnivorus)共は、口では仲間が大切だというが、所かまわず、味方を巻き添えにして、なんの準備もせずに死地に送り出し、フレンドリーファイアーを繰り返す。


其処に一体何の理がある。正当性があるのか?


幾ら死んでも、再生できる。その生に、一体どんな意味があるのか?人の価値は、その歩いてきた道で、どんな事をしてどんな選択をする。それは、ただのエゴだったかもしれない

でも、生きていて欲しいと願う。その願いを踏みにじり、嗤うお前らに、なんの価値があるのか?


もう二度と声が詩が聴けなくなるなんて、考えただけでも、千地に乱れて、心が砕けていく。


欠けた月は、二度と戻らす。生み出される引力に引かれた悲しみは、


悲劇の潮力を生み出す。俺は今からお前らを殺す。何の呵責もなく、そしてなんの慈悲もなく。


それを引き起こしたのは誰でもない、貴様ら自身だ。



一瞬、いつかみた夢の欠片を思い出す。重ねた会話は言葉少なく。


呟く、


僕が君を○〇〇のは、君が...どうか僕が死んでも君は君のまま居てね。


約束だよ。


まぁ、でも、偶には、素直に声を伝えてくれると良いんだけどね。


あれは、いつかの...を重ねた時の話。


どうか、殺意の引鉄を引いたとしても、あの時のままの優しい君で居て欲しい。


それが僕の我儘だとしても...



その声に答える詩は未だなく、それでもその引鉄を引き絞る。


逃げ続ける新型のマダに向かい。戦槌を振るい。その機構が顕わになる。重なる歯車は、その歯を分離させながら真なる《トールハンマー》の一撃を振るう。


一切の出力調整を行わず、生み出した《ドラウプニル》から零れ落ちた機体を分解し都合三体を一度に消費して放つ雷霆の一撃は、いつか見たあの日の光景を思わせる。



打ち出す錬鉄の火花の如く散る命は、その無情をよしとするのかと、問いかけ続ける。その手に形成されし、得物は、無骨な浅黒く、赤雷纏し、柄の短し戦鎚が、一丁。掴み取りし、鉄塊と見紛う。歯車踊るその躯体を一振りすると、稲光を纏い、眼前に広がる一面の人喰いの群れに対して。明滅する光は、一陣を吹きすさぶ風と共に、ひと波の波動を伴い、展開される。


展開していた銃身の群れが沈黙し、そして榴弾などの実体弾を装填してた砲身に降り注ぐ雷撃が火花を上げて誘爆する。反瞬後、一斉に星の川を泳ぐ機影の灯が落ち、無明の暗闇へと突き落とされる。


いつかの時と同じく電装の再起動を掛けているが、ERRORの警告音と文字が踊り、通常の稼働状態とはかけ離れ不具合を吐き出し続ける。


宙に浮かぶ、無防備状態となった機体の数々は、その無数に散る白と黒の弾体の雨に撃たれて、次々とその命を散らしていく。


限界時間が訪れ、弾体が、空中で次々と霧散する中、雷霆に炙られ、その御手の効果範囲外へと逃れようとして、《マダ・ブレイズ》は、合体した四機のうち


左半身の二機の機体と電子兵装に電子パルスによる余波を受け、画面が一斉にブラックアウト、その光景を遠く離れた場所で、様子見をしていた。


《トルダネード=ゲルジス》が駆る《ククウェアク=グム・キ》は、その宙域に蔓延る雷霆の一撃を視認し、最大望遠で監視し続けた目標の随伴機が宙に溶けて消えた事を確認。


「なるほど、恐らく今が攻め時だな...。」と、機体のプラズマ推進器をフル稼働し、突撃を敢行する。


丁度その頃、《ドラウプニル》で作り出された分体相手に戦っていた《アニス=フライヤー》は、機体を操り、幾度も、その目標を岩盤に叩き付け、繰り出す攻撃に晒し続け


押さえつけていたが、その目標が、突如霧散して消える。


《グレンデル》がその機体から噴出するスラスターを全開し、同時に動き始めた友軍機の動きに合わせて、《オーグル》と呼ばれた称号通り、その働きに報いるべく


《デスペラード》が奮戦する。最中へと飛び込んでいく。



《エーリヴァーガル》を前面に見上げる。右手から左手へと流れていくその巨体が、大きく流れに流れて、周囲を守る艦隊である空母艦カレウチェの一隻の


カタパルトデッキへと滑り込むように雪崩れ込み。丁度、出撃を果たそうとしてた機体が歓待するかのように、抱きしめると、その勢いのまま潰され、


誘爆の炎が上がる。赤々く燃える船舶を見下ろしながら、アイジェスは次の目標を探すも、機体各部より放出された粒子量は、減じられるも、その機体色は、


白と黒の二色の色分けされた機体が、発振する粒子の色をそれまでの緑から黒い指向性を持たされた粒子へと変える。


目下、戦力的に、危険度が高いのは、データーベースとの照合結果《ヨ―トゥーン》《ゲルガシ》《ゲルズ》...


大型が密集し雷霆の一撃で行動不能となった。多数の目標に撃破に向かう。大きく下へ下へと潜り込む様に、進行方向を変え


合わせ鏡の様に映る敵影の影に紛れながら、擦れ違いざまに下方に火砲を集中させ、その装甲を焼き切らんと、投げかけつつ、


その装甲に阻まれ、効果が薄いと見るや、羅針盤を兼ねたジャイロセンサーを確認、天地を逆転させ錐もみ状に、降下すると、獲物から手を離し、自機に追従させると


手足より光る光剣を生やし、接近戦による斬り込みへとその手を変える。


身動きの取れないままのそれらを、膾切(なますぎ)りにし、蹴破り、宙に浮かぶ機体を足場として、


翔け降り、剣の紋章を掲げた、大楯を構え、剣の様な大型の実体剣を肩に懸架し、喧嘩するように緩慢な動きなものの、曲線美を交えた女性らしいフォルムに、茨の様に各部に伸びる動力パイプから漏れる、排気をそのままに、その刃を大きく振り上げ、こちらを叩き伏せようと迫る。


武装を光剣から...、コックピットの内部でconversionコンバージョンの文字が踊る。続く、画面には、Pyrolysis(パイロリシス) Hands(ハンズ)青白い光を放ちながら、繰り出される機体の拳へと変え、


極太の虹彩を描く熱分解の光が四つ手の腕より、その膨大な熱量を放ち、その刃と、振りかぶる刃を回避しつつ、その刃を挟み込むようにその手を添えると、


加熱されたその刀身が、仄かな熱を持ち更なる熱量に晒され赤く赤く燃え上がる。


溶断するその一撃で《ゲルズ》が、持つ刃が圧し折れ、刃を握りつぶし、そして余剰のエネルギーを以て圧壊させる。破損した装備を見て一瞬戸惑いの表情を浮かべた


そのカメラの表情に、止めの蹴りが叩き込まれ、全損するカメラから溢れでる、炎が、一気にその機体の内外に奔り、爆炎を轟かせ撃墜、


覇劫に包まれ、覗く影を引き連れながら、再び、銃把(じゅうは)を掴むと、いつの間にか、空中機動の間に補充された、銃剣を揃え、次の目標へと向かう。


後方から迫る雷霆のEMPによる電磁パルスでの束縛が終わる前に、一機でもその数を減らそうと奮戦するが、敵の陣容は厚くままならない。


《トルダネード=ゲルジス》が駆る《ククウェアク=グム・キ》は、動けぬ友軍機を囮に、目標の撃墜を試みる狙うは、友軍機を撃墜するその決定的な瞬間に、


背後より忍び寄り、一斉射撃と共に接近戦を仕掛け、相手が持つマニュピレーターの数より多いその手で、束縛し、こちらに接近しつつある。


《グレンデル》との連携を考慮するべくその時を待つ、縦横無尽に敵陣を奔りながら、銃火を叩き込み、《ヨ―トゥーン》の一機に、

擦れ違いざまに肩部マニュピレーターの腕部より伸びる掌から熱を発し、その炎で焼きをいれ、燃え上がるように、その装甲を融解させ、接射を繰り返し、また一機を墜とす。


一撃離脱で、その場を離れようとした瞬間に、無数の飛び爪と各部から射出される実体弾のが襲い掛かる。逃げ場のない程の物量による


放射制圧攻撃に対し...


「それは、一度見た。」と、飛び爪の一斉掃射を横合いから飛び出してきた《HHB》が背後を守るように、その基部を楯状から、ハンド型の形状に変形、その指にワイヤーを絡めるように飛翔し、一気にその攻撃を絡め取り、投射された実体弾については、いつのまにか舞い戻ってきた《ナインテイル》の象眼から飛び出す光の放射による弾幕により、


迎撃を試みつつ、一瞬できた攻撃の隙を縫って、機体を反転し、逆さになったまま二丁の獲物より、射撃攻撃を放つ。


得物を絡められ、身動きができない《トルダネード=ゲルジス》は、《ククウェアク=グム・キ》の頭部砲門を展開、絡めとる《HHB》の楯が変形した《グレイプル》へと狙いを付けて


射撃、その基部に命中し、その束縛がやや緩み、ワイヤーを巻きとり、放たれた二射の連撃を機体を反転し背面部のプラズマ推進器を楯として、打ち払う。


機体各部に衝撃と、コックピット内部へと振動を走らせるものの、其の損傷は軽微。


ちぃぃぃぃぃ


「私は、実践派だ。この慣れぬ新型を使いこなして見せますよ。逝きますみなさん。この生きのいい機体で。」


ピクピクと怒張する筋肉で操縦桿を握りながら


この広がる宵闇の星空の元、自らを大海を泳ぐ魚とし、周囲でまごつく、友軍機を叱咤し、しつつ、プラズマ推進器を点火、急制動。


巻き取った10本の飛び爪...は、浮遊する《falcisファルキス》に阻まれ、中距離戦の武装を封印しつつ、


震える十本の刃から、冷気を迸りながら、自らのその機体を操作する。


...


「奴の装甲は固い。粒子の一撃も防がれる。ならば...よ」


《ククウェアク=グム・キ》のアクチュエータを限界まで稼働し、物理的に拘束、または、その冷刃を以て破壊を試みる。


先行させた二機の《マンティコレ(獅子型)》と《サテュラル(虎型)》は、互いにその腕部に発光し発振する刃を前面に出しつつ、下方より回り込むように


楕円の軌道を描き、今も尚、周囲の友軍機に、その獲物から奔る蒼い光が瞬く度に火の粉を散らし、撃墜されていく姿を苦々しく思いながら、


先行する二機に対して追従しながら、攻め込む



反転する視界と、コックピット内の映像が切り替わり、周囲を見回すと、下方から忍び寄る機影以外にも


左右、上方から、太極図の様な軌道で円周軌道を回りつつ飛来する敵影の群れを感じる。対処すべき方向は四方に及び、その手は、足りない。


そして後方から急激なスピードで飛来してくる何かの存在を感じる。


視線が泳ぎ、その動きに追い付こうと、後ろの目を感じつつ、その攻撃に対処する。


まずは、左右に一射、二射、三射、四射。放たれた蒼い閃光は、数度目の交差を果たし、散り行くその身を嘆きながら、砲撃戦を仕掛けてくる駆逐艦アルナに空母艦カレウチェら


数隻の艦影の艦橋とカタパルトに墜落すると、それらに甚大な影響を及ぼしながら、失墜する。


同時に、上下から攻め来る機影に向かい。機体を傾け、その狙いを外すと、斜め下へと滑り込むように転進し、


銃身で狙いを付け、一射し、その狙いが(たてがみ)状のビーム発振器の刃に浅く掠めるように当てるとその衝撃で、機体のバランスが崩れ、隣の友軍機へとその刃がズレ、


互いの刃をかみ合わせたまま、爆裂の波涛を音のない空間に、響かせながらその姿を消し去る、


丁度楕円軌道の頂点で、金属剥離現象を誘発する冷刃の刃と、熱分解の熱量を纏った。銃剣の一閃が交錯する。


その刃は互いに噛み合い。真空の宙に一瞬の火花を散らす。


すれ違う二機の機影が去り行くその背に、タイミングがズレ、追いすがる《フレイミングティース(燃え立つ歯)》は、至近距離から緋色の黄金色の火を放ち、撃墜しようと迫る。


放たれし、炎を纏った光を回避しつつ、さらに背後から迫る《グレンデル》に対して、その鉤爪状に伸びる刀身を備えた大型の籠手に向かい。


光剣を放つ回し蹴りを叩き込み。その衝撃で、《グレンデル》のコックピット内部で、エアバックが作動。


其の衝撃を緩和しつつ、その姿が星の輝きすら届かぬ闇の中へと溶け込む。



たしかな手応えを感じながら、その感触に違和感を覚える。先ほどのタイミングで有れば、両断していたはず。それなのに...刃は、そのフレームに...


考える暇もなく、目の前に敵機の群れが広がる、震える刀身を構え、切り払い、撃ち墜とし、装甲の隙間に差し込んだ銃口より、ゼロ距離射撃の射撃を叩き込み、


断末魔を上げて、融解される姿を夢想し、切り抜ける。


周囲に惑う《ナインテイル》は、周囲の敵機を捕獲すると弾体として、投射し、並み居る敵の数を減らしていく。


すーっとその暗闇に翳墜とす何者かは、その動きを悟らせない様に再度の奇襲。


クルリと手元で銃身を回転させ、逆さ持ちでその銃剣を後方へと突き入れる。その刃は、コックピットが存在するであろう基部へと突きさすが...


新たに建造された。部材を使用し、オービットマインの熱と衝撃を吸収する。その素材に更なる機能を付け加え、同時に新たに搭載された冷却機関を起動し


その摩擦係数と熱量を0とする。その特殊装甲に阻まれ、刃が断たない。半瞬戸惑うも次の瞬間には、引鉄を引いて、


射撃を加えるモノの既に目標の陰は闇の中へと消えていく。同時に、右腕の銃口を向けて、接近してくる《ククウェアク=グム・キ》に対しての牽制射撃を加え、


各部の副腕から照射する推進機構を駆使して、方向転換、


水平飛行から背面飛行に移行し、下降を繰る返し方向を反転させる


急速に高度を下げ回避軌道に入り再度の潜航。下へ下へと潜り、そしてその間合いを外す。


互いに上下を反転し、足下の足元の鏡として、向かい合うように滑り込み、射撃戦を試みる。多数の目標から狙われ投射される攻撃を避け、応撃を叩き込み打倒していく


死角から放たれる光が《デスペラード》の装甲を僅かに掠め、そして、隙を差し込む様に、射線を掻い潜り迫る《ククウェアク=グム・キ》は、その死を呼ぶ尾の一撃を繰り出す。


咄嗟に銃剣による十字防御を展開。


突き刺さるプラズマ推進機構による一撃に晒されながらその基部が踊る。いつの間にか、その両手を話、右腕、左腕、脚部、肩部副腕、それぞれから、同時並行して、


《Pyrolysis Handsパイロリシスハンズ》熱分解の虹色の炎と共に、《FreezingBiteフリージングバイト》...《Riseライズ Risingライジング》を展開


分子運動を完全に止め金属剥離現象を起こすその牙が、アーク溶接の光を放つ、光の剣舞たるそれと共に十あるその腕部に、


まずは、熱分解の一撃が、その冷徹なる爪牙に対して、真っ向から掴みかかると、その氷を溶かしながら冷気による防御に穴をあけ、


アーク溶接の刃が、その基部を徐々に溶断。


その手が一本吹き飛び、二本、三本、と続けざまに破壊し、十字防御時に、尻尾へと突き刺さる銃剣が、その動きを宙に固定、各部の銀劫放つ、無数の副腕がから放つ


推進力を調整し、上下左右に体を入れ替え、その手を徐々に削り、その手から伸びる色を徐々に切り替えながら、斬り飛ばすと、止めとばかりに


逆さのまま、その手を天井へと差し入れ、《FreezingBiteフリージングバイト》の牙が、《ククウェアク=グム・キ》のコックピットに突き刺さる。


その基部を冷却と同時に破断する稲光が奔り、離脱と共に爆散する。


去り行くその背を見送り、《トルダネード=ゲルジス》は、結晶の氷に包まれながらつぶやく


「また...勝てなかった...。また??」それはいつの事だろう?


コックピット内部で、電流が奔り、雷に打たれたのか?、その意識が停電する街の夜景の様に一瞬で途絶え、そしてその意識は二度と戻る事が無かった。...



ジェネレーターの燃料に引火し、爆圧の華を咲かせて、散っていく命に、何も答えず。


アイジェスは次の獲物を探し続ける。



遠間から、《ククウェアク=グム・キ》が撃墜された姿を眺め、アニス=フライヤーは、直接戦闘を避け、目標の神経と疲労によるミスを期待し、

闇に隠れて、味方を楯にする戦法へと切り替える。


続く戦跡には、今だ戦場の華は、散り行く命を見送りながら、続く。戦闘は、既に24時間を経過し、攻め手の人喰いカルニヴォルス (carnivorus)達は


自陣の数の優位性を前面に出して、各々が、戦闘をローテーションで回しはじめ、一方的に疲労が蓄積する状況を作り出し、


戦場は、膠着する。


徐々にその数は減らし続けるも、アイジェスの神経も削られていく、はずだが、二日、三日を超えてもその集中力の切れは冴えわたる。


その数日間の刻の中で、《ナインテイル》の各機ら大量の粒子を放出し、焼ききれんばかりの発振し、その間にリチャージされた要塞の砲撃を幾度となく、防ぎ、


あるいは突撃戦を仕掛け、その重要基部である砲身へと、粒子の砲撃と、敵機と弾体としたレールガンの一斉射により、沈黙し、


アイジェスは一言声を漏らす。


「自軍の自陣に対して、何度も要塞の主砲を打ち込むなんて、正気か?嗚呼そうか、全て潰さなければ...だったな。」


そう納得しつつ次の獲物を狙う。



数日間の戦闘が経過し時は流れる。


・・・



・・・



・・・



・・・



・・・



・・・



その日、一筋の星が墜ちた。


失墜した星は、この手に二度と戻らず。ただ、無残な運命を辿る。


絶叫を上げ、血の涙を流す漢は、ただ静かにその引鉄を引く。


それは、嘆き流れる涙すら拭わず、あるいは激高する静かな怒りを胸に


炉に燃料をくべ続ける。


蒼天を貫く絶望の声を弾丸に込め、叫ぶ


宙一面を踊る、荘厳な天体ショーをまざまざと見せつけ、そしてすべてを出し尽くし果てる。


譬え其処に亡くとも、俺は逝く。


俺は、彼女を奪った。獣どもを許さない。


その目は充血し、爛々と輝きその目が赤く血の色に染まる。視界を赤色の鮮血に染めながら、


死を、絶望を、絶叫をまき散らす。孤高の死神と化す。


その戦場では、既に2000を超える命が、散っていた。


怒りの源泉は未だ、衰えず、其の意を以て威となして、戦場の趨勢を傾かせ始める。


散り行く命の乱れ咲に対して、殺気を感じ取り、身体に移植された臓器の一部が僅かに熱を持ち始め、服の上から、《聖痕》の跡を摩ると、


この痛み、この哀しみわかるぞ?


ジンボ=ジンタは、母艦である《リーティル・ナグルファル》のブリッジにおいて、目標の注意を引き付ける為に、


会話を試みる。


奴と遭遇し戦闘に入ってから数日、休む暇など、一度たりとも与えた事がなかったにもかかわらず、その動きは精細を欠かないまま、


事態は膠着...いや徐々に奴側に傾き始める。


何故やつは、疲れない。何故、孤軍奮闘で、戦い続けられる。その守るべき矜持も、支えも圧し折ったはずなのに、


それでも奴は戦い続ける。


その理由と原動力を探り思考のリソースを奪い取る。


詩を忘れた漢は、怒りに震えたまま、その刻を過ごす鬨の声すら上げることを忘れ、忘却の彼方へとおざなりにしてきたその思いに対面する。


「見つけたぞ。」


示す視線の先に、今だ残る無数の敵が犇めく敵陣のやや後方、恐らくこの数日の戦闘で、その位置を悟らせないように自陣を少しずつ移動し、


《エーリヴァーガル》背にして、戦うアイジェスから離れる様に、自爆する味方と友軍機を楯にしつつ、時に防御の薄い位置も巧妙に魅せつつ、その位置を変えていたのか?


その狡猾な、その手をその目を、その耳を討ち果たさんと、転進する。


貴様らは、何故奪う。俺から何故彼女を奪った。その理由を問う意味も、もはや無いのかもしれない。


だが問わずにはいられない。


それは、途絶えた詩を繋ぐ、報復絶答。その答えを問う。


「だが、どうしてだ?彼女を奪った?何故多くの人々の命を奪った。分けあうことが何故出来なかった?」


「貴様に答える答えなど、何もない。全ては、我らが貪る()に過ぎない。」


「彼女を消したというならば、何故俺を殺さなかった? 」


「貴様らが人喰いと宣う。我らクピドレスが目的は一つだけ、この餓えを満たすこと唯一つだけだ。」


「そうじゃない。俺が聴きたい話はそんな事じゃない。」


(通信可能距離まで、捕捉されてる...)と、会話を仕掛けながら、自らは旗艦の専用機のコックピットと兼用のだ脱出艇に滑り込む様に、入ると、


言葉を続ける。


「そうか貴様は、仇を殺すための理由が知りたいのだな、何を甘い事を貴様らに正義などはない。あの女が死んだのも何もかもすべては貴様の所為だ。」


「すべては潜入した《オーグル》が知らせてきた。それを有効活用しただけだ。」


そもそもだな?と諭すように語り掛けるその声に、苛立ち覚えながらもその通信に耳を傾ける。


「それは我らが生き続けるのに、絶対的に必要なものだ。それらは全て我らが活用する資源だ。人は、お前たちじゃない。我らが人間だ。」



「ステリス・クピドレス (Stellis Cupidores)...クピドレスであらずば、人ではない。」


「人ではない薪を燃やしたとして、貴様らはその抗議に耳を傾けるのか?」


「貴様らも豚や牛を喰らうではないか?何故、我々だけ非難をする?」


「嗚呼、そうか...良く分かった。」


ならば俺も一切の呵責なく、其の断頭台に手を掛けよう...


もしも、逃げ迷い、惑う者が居るのであれば、時間は与えた。既に逃げているだろう。



彼女を奪われたこの痛みが怒りが貴様らに解るのか?


大切な者を喪った事のある人間は、人の大切なモノに対しても敏感だ。それは...喪った哀しみが分かるから、


別にそれが強さだと言う気は毛頭ないが、その痛みを知らぬ者に負けてやる道理はない。


俺は、この怒りを胸に、冷えた頭で考える。自分がこれから熾す事は、後世では、虐殺だと後ろ指をさされる事だろう。


だが...こいつらを生かして置くわけには行かない。


「覚悟しろ、裁き討つぞ。」


なぁ、アスミ、いつも、口ずさんでるその詩、なんだ?あまり聞いた事のない言い回しを使ってるしそれでいて不思議な語感を感じる。


「嗚呼これはね、僕が、謳う。連作の御唄だよ。そうだね。無法者の詩。とでも名付けようかな?」


「おいおい女が僕って、男と間違われるぞ?」


「やれやれ、君も偏見が過ぎるな、可憐な僕を目の前に、男と見間違える様な人間は、此の世に君しか居ないよ。」


「無法者て?物騒だな。」


「で?その詩は誰の事を詠ってるんだ?」「それはね?秘密だよ?」


...


...


...



俺は唯の無法者だ。その詩を聞く資格も、願いも届かない。


周囲には、自らの勝利を確信し、群がる虫、虫、虫。


其の全てに、鉄槌を、魔女と呼ばれて捧げられし生贄に、その身を責めるのではなく、その災禍を、火刑台へと送り込み嘲笑る異端だと大義名分掲げるすべての人間にたいして、俺はその引鉄を撃つ。


早鐘を打つ心臓は、確かに動いているが、俺の心は既に、月を喪い二度と蒼空を眺めない。


四方八方より、周囲を警戒し防衛に回っていた敵母艦の周囲には、弾とする機体は無数に存在し、悉くその仇に向かって降り注ぐ。


射かけられた旗艦リーティル・ナグルファルは、其の船足を緩める間もなく多数のジェネレーターの誘爆に巻き込まれ、轟沈する。


その爆炎の中から黒い機体色に爛々と光る。四ツ目に放熱機構と思われる(たてがみ)に、右に大型の二等辺三角形の様な刃を魅せる実体剣と左に正三角形の楯、


そして暗闇に浮かぶ背面には円錐型のスラスター兼用の砲身を魅せる異形の機体が、その爆炎から逃れて、急上昇を試み。宙に輝線を描きながら答える


「良いだろう、この《カニス・オブセッシオス》でジンボ・ジンタがお相手しよう。」


周囲の機体が弾体となって、目標であるその機体に降り注ぐが、今度はその射線を背面の砲身から放出される。粒子の矢で撃ち落とし、


左右から挟み込むように迫るレールガンの一射を左右の実体剣と、盾を刃として、放たれる光に貫かれ命中する寸前に、爆散。


機体の破片をばら巻ながらその脅威にさらされつつもその挟撃を振りほどきながら、前方の《デスペラード》へと肉薄するかに見えた。


天幕を映す鏡の様に、反転する。空域に待機していた《グレンデル》は、これまでの戦闘で、機体の各部の装甲に、砲撃を何度となく掠め、切り払われた斬撃の擦過傷の数々が白んだ明星の輝きの様に周囲で光る一瞬の閃光を映して、傷跡が反射し、その姿が、顕わになる。



(・д・)チッ


舌打ちを一つくれて、闇に堕ちるその一瞬に、羅針盤を兼ねたジャイロセンサーを確認。目標への相対距離を算出。何物にも変え難き、その身体を奪う去る為、


鈍色に光る操縦桿を握り、フットペダルを踏みこみながら、急加速を開始する。


その割合をこの数日の戦闘で数割程度削るも、依然としてその残機は、今だ多数。慙愧に堪えぬ。その行為に、


泣き笑いの表情のまま、それは熾る。起こる。怒る。


《デッドコード》君を死が覆い隠しても、君死に給うことなかれ


身体の基部から次々とその枝葉が、フレームを侵食していき、蔦や樹木を思わせる木目調の装甲が生え、それまで各部に取りつけられていた。


偽装装甲が剥がれ落ち、表に出ていたやや細身のフレームの全体像が顕わにある。


深く黑く染め上がる黒地に、厚めの白銀の縁取りと、角ばった水路の様に伸びる葉脈が虹の輝きもっと荒々しく色味が踊る。


シャープ且つ肉厚なフォルムは、それまで隠されていたフレームの姿が、単なる一部で有った事を指し示す。


そしてその輪郭は、映える虹色の光に包まれ仄かに曖昧な影を落とすのみ、



過激に華撃、鉄華撃。散らぬ華を夢見るも、俺は願うのを辞めた。


咲き乱れる花弁は、命の燃え尽きる一瞬の威俊を煌めかせる。友軍機がいつ砲弾となって飛来してくるか、分からぬ、刹那の間際で、


極限まで、その対象を追い込んでいき、攻め手と守り手の立場は逆転し、反転攻勢へ...


去り行く君に、黒薔薇の花束を


不幸を呼ぶその花束の代わりに、想いを伝える花言葉は、無数の命を散らしながらもその花弁は咲き誇る。


銃把(じゅうは)を放り出し、初めに試みるは...


突如前面のモニターに、拳が画面一杯に広がり、そして押し貫くとコックピットから衝撃を巻き散らし、無造作に振るわれた拳が、


内部のパイロットごと、散乱する宙に舞い。衝撃で、飛び火し、スプーマを放出しながら、その意識が途絶えるも、


宙をジグザグに戦域を駆け巡る。


一筋の閃光が、蹴り破る足刀の一撃が《ヨートゥーン》の腹部へと突き刺さり、抉るように繰り出す。一撃は、散弾となり、敵機の密集地帯へと炸裂。


乱れ飛ぶ破片に晒され、放射状に朱の華を開かせ、無数の命が消えた。


周囲を包囲し、逃げ場がないはずの宙域にも関わらず。狙いを付ける照準が、目標を捉えた瞬間に残像を残し、その狙いが向いた時には既にその場所には、


存在を確認できず。照準が乱れ、構えた瞬間には、既に自機の背面へと移動し、裏側から拳を突き入れ、爆発した瞬間には、既にその姿は掻き消え


別の機体の直上へ現れ、砕く。


その動きは傍若無人、神出鬼没、悪逆無道、道理より外れ、其の軛から放たれる。


投げかけられる砲撃の嵐は、その目標を見失い、狙いを外し続ける。


それでも抵抗の火は消えず。


意を決してその名を告げる。映す鏡の盤面をひっくり返す。





《一葉灼伏》...30%


一斉にそれが入れ替わる。


機体内部に搭載されたジェネレーター内部で、それは熾る。中央部に鎮座する。赤黒い表皮を備えた樹木に向かい。内部から伸びるマニュピレーターが起動、その腕部で、樹木の一部を切り取ると、樹皮から流れ出る血の色に似た樹液を流し、心なしか痛みに耐えて叫ぶ声が響き渡る。


ジェネレータ内部のかつての文明で使用された蒸気機関の火室の様に、開閉する投入口が開き、手折った枝を放り込むと、炉の灯によって、焚き付け、一気に貯蔵、放出される。その粒子量が爆発的に、推し広がって逝く。.........



燃え上がる炉の緋は、その日、無情の傷を戦場へと刻み込む


「その怒りの道を指し示せ。ミズガルズ《世界の庭》ッ!!!!!」



その日、星を喪った(そら)に絶望の崩壊が叩き付けられる。



宙一面のその仇どもへの元へと、擬似的に形成された電磁誘導のバレルが、伸びる。


唐突に放たれたその光景に、動きを止められ、操縦桿をでたらめに動かすが、スラスターの推力は、前にも後ろにもそして、過去にも戻れない。


燃え尽きるほどの衝動と共に、それは放たれる。


一気に解放される鬼面のフェイスガードが解放、周囲、数百、数十キロ、果ては、見渡す限りの宙域に展開されるそれらにたいしてランダムでそれは起こる。


突如動きを止められたそれらの機体は、次の瞬間には、暗闇に翳す松明の如く燃え尽きながら、四方八方乱れ撃ち、


翔ける弾丸と化し撃ちだされ、叩きつけられる。それに一切の例外はなく、航行し離脱しようとする艦船すら、電磁レールガンの弾丸として、


敵陣に下す裁きの様に、降り注ぐ。光は奔り、電光を瞬きながら、宙を縦横無尽に死を巻き散らす。


あらゆる方向へ、其の無謀の決意を謡うように、放つ電磁加速の乱れ撃ちが、射線上の敵機に突き刺さり爆炎を暗闇に浮かぶ消えゆく星を見送るべき


天の川に浮かぶ灯篭の火の様に、その姿を映しそしてこの世から消し去る。


はじき出された機体は、急加速を加えられも目標に向かう前に乗り込んだモノを人は、唯の肉袋に詰まった血袋である事を知らしめる。


潰れる機体と人体を他所に、突き進む。


突如としてこの世に現出した地獄へと堕とす誹を告げ続ける彼岸花は、その咲き誇る一面の華を咲く誇る。


見送る一人は、なんの感慨も浮かばず。ただ、想いを伝えるすべを喪い。唯々、血の涙を流す。



その震える怒りに対抗すべく《カニス・オブセッシオス》で《ジンボ・ジンタ》は、その位置を変え続け、疑似電磁バレルの網を回避し続け、


所かまわず友軍機を弾丸とする。その暴風雨に対して、自らが振るう実体剣の二刀流で対抗せんと、奮戦す。


その光景を眺め、アニス=フライヤーは...。怒れるその存在の目標の一つが自らで有る事を、激震と、その噎せ返る雄の匂いにより、


感じ取る。熱い。体に埋め込まれた《聖痕》の傷が、その感応を以て官能し、その身を熱く身もだえさせる。


臭いぞ。


この匂い、この責め苦を止めるには。奴を()るしかない。


ここ数日の戦闘で、暗闇に紛れ込む《グレンデル》の迷彩は、その意味をなさなくなってはいるが、その高出力の推進力と各部動力炉と、


アクチュエーターの稼働には問題はない。次第に崩れ行く面頬めんぽうを他所に、


望み通り、逝かせてやるぞと意を決して飛び出す。



周囲を味方同士の衝突により、その加速が開始された時点で、コックピットで懺悔し慙愧の叫びをあげる人喰い共の嘆きを握りつぶし、


果てる絶頂を超えて、その光景を晒し続ける。


やや甘いその精度を徐々に、研磨し、その動きに対応する二機の機影に対して、襲い来る。激情を以て向かい打つ。


火の粉を上げて爆散する華の色に照らし出され、機体に翳が堕ちそして、その華が開く。


その彼我の距離を一瞬で詰める。その拳と拳が、堅固するように固められたその腕部が、互いに空中で衝突する。


《グレンデル》の内部では、その熱に浮かされ、恍惚の表情のまま、操縦桿を握り込み、その思いの丈を吐き出す。


「想い人は、消してやったぞ。お前は、私だけ見ていればいい。」


(忌々しいと思っていた。だから、消してやった。私が、薪共と、同じ釜の飯を喰わされるなんて恥辱を帯びたのは、貴様の所為だ。)


(貴様が、全て悪い。)


その意識を受け取り、答えるべき答えを持たぬ自らは、ただ淡々とその処理を行う。


宙間戦で、互いに、打ち付けあう拳と拳が、何もない空間に衝撃と伝える。


逆さになって足撃を加え、機体の装甲の一部が爆ぜる。


それを器用にいなしながら、背後から迫る友軍機の弾丸を回避。と、共に、実体弾兵装をばら巻つつ離脱。


そして最接近を繰り返し、突いては離れ、離れては突き、其の聖痕が精魂尽き果てるまで、突き上げる。その奇妙なダンスを踊りつつ、その場に、《ジンボ・ジンタ》が参戦する。


二体一のその攻防の決着に何が見られるのか??


弛まぬ蠕動運動を繰り返し、背後で、命が塵となって散り続ける光景の中で、それは熾る。


その場に居る何者もそのその戦いに介入できず。拳と拳のぶつかり合いを試みる。


握る拳の一撃を何もない空間で、左右から差し込むように踊りでる。銃剣が十字に交錯しその刃を以て、その腕を千切り飛ばさんと、その摩擦係数を0とする装甲に


亀裂を走らせると同時に、無手のその脚から延びる一撃をその基部へと叩き込む。大きくフレームを歪ませ、その腕部が衝撃で、吹き飛び、


クルクルと《falcis(ファルキス)》たる銃剣も吹き飛ぶ。


そしてその踏み出す一歩が、宙を蹴り、虹色の《Pyrolysis(パイロリシス) Hands(ハンズ)》によるひと蹴りを叩き込まんと、追撃に入る。


咄嗟にその間に、盾を構えて実体剣と合わせて構える。《カニス・オブセッシオス》が割り込み、正三角形の楯から光の刃を放ち回転。


ビームソーとなったその刃とその時々で色を変える熱分解の炎と触れ、熱量により膨張と融解を繰り返し、その熱量に浮かされ、その基部がちぎれ飛ぶ。


「《オーグル》今だッ!!!」


連携を促すその声は、虚しく宙に消え、モニターに映るのは一目散に、逃げの一手を打つ《グレンデル》の姿のみだった。


「なるほどな、それこそ真なるクピドレスの本分、自己の保存を何より優先する。死ぬのは働き蟻だけという事か?」


苦笑しつつ、獲物を握り、推進に逆進を掛けつつ、背面部の円錐状の基部を離脱させ、大きく迂回させながら、ダミーバルーンと、実体弾の雨を放ちながら離脱。


再びの接近戦に備え、次の一手を切る。


逃げ行くその姿を追いかけようとするが、仁王立ちして、こちらに圧力をかけてくるその動きに...


思案をひとつくれて、一度に斃すには...と逃げ行くその背に、敵機と弾体として打ち出す砲撃を雨あられと降り注ぎ牽制し、動きを止めて、


追撃に入ろうと、試みるが、推進機構を全開にしながら、死を厭わず。向かってくるその動きに、


対応するべく、操縦桿を掴む。


逆落としで、避ける輝線に追従し、垂直方向にバレルロールを繰り返し、敵機の動きを予測し、告げる死神の鎌を動かすと、


相手の【falcis(ファルキス)】も、同じような動きを見せる。そこで基部を二手に分け、その反応と結果に対応する。


銃剣が逃げ惑う《カニス・オブセッシオス》を追いすがり射撃戦を敢行し、こちらに向かって伸びる円錐状の基部が、射かけながらもその先端部で貫かんと


迫る。そこで《グレイプル》の形状に変形した《HHB》で、その射撃ごと、突進を受け止め。


《デスペラード》は、其の腕を虚空に掲げて、握り込む。



その動作と共に重力を発生し、へしゃげる。音を音のない空間に響かせながら、圧壊。爆炎に包まれ、基部が大きく迂回しながら、前方の目標に対して


攻撃を仕掛ける。


(・д・)チッ


《カニス・オブセッシオス》は、実体弾の投射とロールを繰り返し、どうにか再びの接近戦に入ろうと苦心するが、四方から呼びかけるように飛来する。


falcis(ファルキス)》に翻弄され、狙いが定まらない。


向かい来るレールガンの一斉射を避け、切り払うのみで終始する。


「ちぃぃぃ。ンゲルム・ガドゥンガンモード起動。」


音声認識により、実行権限を確認。両腕の二等辺三角形と正三角形の実体剣と楯を構え、そのひと際高く発振する。光の刃が、構えた刃筋より、


延び、向かってくる電磁投射砲の弾体となった友軍機を切り倒し、そして、周囲で逃げ惑う友軍機に対して、強制的なオーダーを通す。


各機の起動状況を、炉心融解モードへと書き換え、その上昇した出力を機体へと取り込み、


同じように、高速移動する。弾丸として、友軍機を流用。


「どうせ、弾にされるのであれば、有効活用させて頂こう。」


と、


疑似電磁バレルの射線と、赤く燃え上がるように炸裂する自爆攻撃の雨が、交錯する。


砕ける機体の装甲、手足、人の命、其の全てが唯の兵器として消費される。


その不毛の極みな中でも、アイジェスは、狙う敵の姿を見失わず。応戦の構え


相対する《ジンボ・ジンタ》も、徹底抗戦の構え、


互いに、光剣の刃を打ち鳴らしながら、十重二重の囲みを抜けて、斬りあう。


三重で展開される雷光と炎に氷結する結晶の牙で、相手の刃をいなし、逆に破壊を試みるが、その刃は頑強で、崩しを仕掛けるタイミングを逸する。


それも、三段撃ちの射撃が、空中で射線を交錯する様に構え、その二射が放たれる。


弾丸となった機体同士は空中で衝突し、宙に、散弾の雨となり、高速起動する《カニス・オブセッシオス》に降り注ぎ、


堪らず、その楯を前方へと翳し、その衝撃と散弾の雨をやり過ごす。


その一瞬のブラインドにより、隙を作ると、その結末は唐突に訪れる。


宙を泳ぐ《グレイプル》は、その躯体を大きくその距離は10から0へと一気に縮める。疑似電磁バレルによる電磁加速を敢行。


勢いを殺さぬまま、絶死の拳が。迫る。


逃げる進行方向には、敵機を弾体とする射撃で逃げ場を無くし、無数の手と、浮遊数る銃剣から延びる射撃戦でさらに、その脚を止め、


止めの一撃が、圧死する様にその身に時間差で降り注ぐ。


砕ける。骨とフレーム。折れた背骨から髄液と鮮血が舞いオイルと交じり合うと、着火。燃料に徐々に引火していく。灼熱地獄のそれらが同時に生じ、


吐血した血液がヘルメット内で吸引されてその終わりが近づいていく。


「あ”づい”」


その短い一言を残し、行動不能となった《ジンボ・ジンタ》の姿を確認すると...その頃には周囲に展開されていた。《ゲルガシ》の電磁の檻は崩壊し、崩れ去っていた。


...



...


自機にたいして、磁気を纏い電磁加速を開始。加圧され、光り輝き擬似的に形成された電磁誘導のバレルを展開。稲光を散らしながら、虫が蠢く宙域に、



無尽蔵のその粒子出力を誇りながら、己自身を一発の弾丸へと変え、飛翔する怒鬼は、一気にその彼我の距離を零とする。


その稲光が通り過ぎたそのあとに残されたのは、振るう拳と爪牙に蹂躙され、ばらばらに、破断されそして宙に放り出されて苦しむクピドレスが漂う


一機に、《エーリヴァーガル》の背後へと、移動し、その資源衛星の要塞を挟んで、クピドレスが多数展開する敵陣へとの射線が通る。



宙が割れる、宙が割れる。大喝する。衝動と共に、その大地を支える。宙が割れる。


その日、その場にいた住人たちは、大地が鳴動する振動と共に、気づいた瞬間...その肉体から重力の軛を引きちぎり、


強烈なGを加えられ、次々とただの朱く染まる染みへと変わり、急激に加えられた衝動と加速に巻き込まれ、


戦場を喝采する人喰い共に加える一打とする。


突如巻き起こるレールガンの乱れ撃ちを必死に避けつづけ、逃亡を図る者どもに、逃げ道はないと指し占めす様に、その絶死を告げる。


L4宙域からやや離れた場所に浮かぶ、アステロイドベルトより牽引してきた巨大な資材発掘用の小惑星エーリヴァーガルその威容は、所々、照明の光が、虚空の暗闇に向かって瞬く、その全長は、やや小ぶりな天体にも思えるその巨体を


接触する訳でもなく、ただ、敵を討つだけ為の一発の弾丸として処理する。


その強大な出力により放たれし一射は、展開する戦場の粗全域を収め、そして、遥か彼方の宙の下、一切皆苦いっさいかいくを謡い。


ただ生きるのみの苦しみを込めて、遠く宵闇の諸行無常しょぎょうむじょうを識る。


祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらわす。


おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。猛き者もつひには滅びぬ、ひとへに風の前の塵に同じ。誰もが同じように衰え、その隆盛と命を衰え損なわせる。


だからせめて、その時に狼狽えない様に、万全を拝し。君に伝えよう。


いつか俺も君の所に行く刻が訪れる。それは避けられない、せめてその時に、胸を張って逝ける様に、俺は生きる。


諸法無我しょほうむが...俺が俺で居られる理由は、君が居るから、君を喪った自らに何が一体残るというのか?


白と黒の閃光に包まれ、黒い漆黒の闇を白い閃光が、居並ぶその光景を魅せる。


大気との接触が無いモノのその加速する弾体は、その戦場に残る。粗すべての敵影を重ねて、巻き込み、巨岩の小惑星は、幾重にも重なる命の火花をまき散らしながら


叩きつけられる。明滅する命の光に包まれ、その岩盤が徐々に崩れ始める。


迸る。白濁とした情念は、その目的を果たし、放たれる。



暗闇の宙を一塵の波濤が押し寄せ、その向かう先は、遥か彼方の銀河の園。いつか訪れる闇を見送り、続くその結果に息をのむ。



人喰いは、消えた。消え去ったのは人ではない、何かとして断罪した、その存在らを駆逐する為に、さらなる一手を呼び込む。


小惑星帯から呼び出した《ウェールス・アルブス》を以て残存勢力を、撃ち滅ぼさんと、《デスペラード》は、可変機構で頭部へとなると、


その場で、絶対の粒子量を誇ったまま、48門及び複数の実体弾。と《falcisファルキス》を高速展開、離脱する基部より、投射する思考誘導弾の雨が。同時に弾体に結ばれた鉄条の網と共に投射、一撃を先端より伸びるそれと共に、敵を巻き込むと、身動きが取れないまま炸裂し、



一網打尽として処理を行う。



無窮の宙を泳ぐ巨兵は、新方の敵を処理したものの残る数機の残存兵の処理に向かうが、センサーに感アリ


その姿を隠していた。第二陣が襲い掛かってくる。


(・д・)チッ


まだいたのか?と、その目標に砲門を向けたその背後から、突如、何かが飛来してくる。死角外からの超長距離狙撃を察知、


回避が間に合わないと思い。偏光フィールドと大型の《falcisファルキス》を操作し、盾として、防御を重ねる。


その光は、緋桜の色となり、一射する。


《一葉灼伏》の粒子量と《ウェールス・アルブス》が保持する。六基のジェネレーターから創出されるそれと、衝突、


その光は本来であれば、偏光され弾かれるはずのその光は、なんの抵抗も見られず、射線に割り込む様に、進む《エーリヴァーガル》の岩盤のごと、その巨体を両断する。


赤々と燃ゆる断面はその光の出力と熱量を指し示し、その異様な光景の威容を見せつける。


崩れ行くその巨体が、次々と爆散し、誘爆に巻き込まれながら、巨兵との合体が解除され、勢いのまま放り投げられる。




・・・


・・・


・・・



千機に及ぶ大編隊を一瞬で壊滅した其れは、その試験飛行からの帰り道。自らの居への帰り道が、途絶えたものの


後方の目標か?


それとも近づいてくる新手の艦隊か?


どちらもこちらの射程に捉えている...。


帰るべき路を見失ったとて。それよりもこの苦しみを...ジンボ少佐を喪った私と同じように、奴にも与えてやろうと、目標を前方の艦隊へと向ける。


...


...


...



Σ(・ω・ノ)ノ!


一体何が起きた、鉄壁の防御を誇る堅牢な装甲と防御機構が、まるで何の抵抗も見せずに、飛散し、崩れ行く機体を眺めながら


センサーと画像を最大望遠へと切り替え、近づく何かと、離れ行く、その機体を確認する。


不味い...


この感覚、この反応と、敵味方識別コードの反応は...《R.I.P》...アンザス達が...。狙われている??!?


振り回される機体の内部で、必死にバランスを取り、その行動に移る。



数瞬前、月都市の残骸を調査し終え、一路、月の宙域より《エーリヴァーガル》へ向かう航路の中で、


《コーディー=スルー》は、回収した。機器の一部を調べ、それまでの謎への解明を試みる。


一体、これまで、月宙域への本部からの通信に対して、応答していたであろう。謎の存在は...


「コーディー氏、それなんですかな?」


「ん?よくぞ聞いてくれました。電子機器の一部を回収したものの。一部のデータは焼ききれ、内容を窺い知る事はできませんが...。」


「どうやら自動応答のAIかと思いましたが、これ素材は、人間の脳を機械化してコンピューターの頭脳の一部に使用されていますね。素晴らしい。」


なんぞ?!?それって、もしや生きた人間を素材にするだけに、収まらず...通りで、本部の通信とで、違和感が無いはずだ。答えてる存在は、人と部品の違いはあれど、


同じ人物が応答していたと...


それじゃぁ、もしかしたら...月都市には...


場面は暗転し、時間を経過させ、第一戦闘配備に入り、数時間後、




目的の宙域へと徐々に近付いていく船団は...その光景を見る、



遠くで何かの星が瞬きそして、徐々にその姿が大きく、敵地観測用に、積み込んだ超高度高解像度カメラを覗く観測手は、


それを目撃する。


「艦長!!!操舵手ッバラバラになった小惑星体の接近を確認。念の為回避運動をッ」


何事だと、艦橋内に緊張が走る。が。観測手の次の言葉に安堵する。


「目標逸れます...ですが、これはッ割れてはいますが、事前の情報で確認した...《エーリヴァーガル》です!!!進行方向はこの方向だと...太陽へと直進します。」


えっ唯一、救出されたモノの中で、船団に残った。春幸とその父親は、その光景を眺めて、天を仰ぐ。


母さんッ!!!!!一瞬の火花と、崩れ行く岩盤の残骸を追うのか?


前方で巻き起こる機体が爆発するであろう戦場のどちらに進路を取るかの判断を求められ...


「艦長ッ、どちらを追います?!」


「あれでは、生存者は...」観測手が言葉を選び、進言する。


やや逡巡するその最中に、何かが飛来する。


コックピット内部で待機中のアンザスは、監視していたモニターで外の様子を眺め、嫌な予感を感じて、


すかさず、飛び出す。


新たに高感度のセンサーを搭載した《R.I.P》の観測手から得た情報を元に、アイジェスのその姿を確認し、目算を立てる。


「お前達とは腐れ縁だし、ちょっと遊んでやるよ...」


「アイジェス殿が戻ってくるまでの380秒間、拙者が稼いで見せるッ!!!!」


戦場の盤面は、映り替わり、その宙域での最後の戦いが始まる。

毎月、月末最終日に2話更新予定。


誤字脱字、誤りがあったら修正するので、教えてください。

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