表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無法者の詩  作者: 唯の屍
13/20

第十三話「引鉄を引くのは貴方」

※イメージソング

ふたりごと

TRUE & 茅原実里

https://youtu.be/Y_7gT5v4LTM?si=Pe3f27t7Qe5KG25c


「僕は...」

あたらよ

https://youtu.be/ipiQ0lpayoo?si=jFJUuZi0yQFQ9rI4


ASCA 「MOONWORK」

https://youtu.be/658sk_n4BF8?si=L5gr4JQHS2dGB_Xy


※恐らく歌われてる歌詞の内容の対象が私と君に対して唄っていただいてると思われる。

あと好きな歌を教えてといわれているので、明記させて頂くます。

黒いジャケットを羽織り、タイトな黒地のコルセットに、ショートパンツを合わせたスプライシングスーツの装いの


長めショートの女性は、ぱっとみ、少年にも見紛うのはこの世でただ一人だけだよと豪語する程の造美の顔立ちで


彼女は、月の裏側にいつの間にか建造された都市で、窮地を脱した、仲間達と共に、


襲撃者たちの領域からの脱出を試みる。


仲間達へと、此処で流通する空気や水は、主に月のレゴリスを加工して精製されているので、問題がないが、


食糧は、絶対に食べては、いけないよ。と警告に似た注意を言い渡す。


「だが、隔離施設から抜け出して、何も食べてないんだ。一個ぐらい良いだろう?」


「ダメだよ。戻れなくなる。」


指の爪を噛みながら次善の策を練る。どうすればいいの、このままだと...彼が、死んでしまう。


何度やり直しても、私を助けようとして、絶望的な戦場へと無謀な突撃をして、彼が死ぬ。


何度やり直しても結末が変わらない。その結末を変えるには...


何処か知らない世界から...未来からもたらされた技術で作られた十二機の機体を再封印するしかない。私が観た夢の中では、単騎で敵陣に突撃し、そして、無惨に死ぬその未来視しか、見えない。


何度目か行使される。


逃げるモノを逃さぬために設置された隔壁を何故かその解除コードを知る彼女は、それを入力後、扉の解放を繰り返し、ここまで来た。


仲間達は疲労困憊で、必死に鼓舞する自分も疲弊している。それでも、折れそうになる手足を振るい、突き進む。


ふと、見上げた上階に、通信用のコンソールを見つけ、ひとまず、その場で休憩とし、自らは、階段を上って、


その基部を操作し、書き溜めた。詩を朗々と謳い。いつかこの詩が誰かに届くようにと、古いラジオチャンネルの周波数帯で、宙へと放流する


定期的に起動するようにタイマーをかけた。あとは、これを聞いている誰かが、彼に届けてくれれば...


救出を求めるメッセージは、送れない。そこに救助を求める誰かの存在を知らせてしまうから、だが唄ならば誰かが悪戯をしている程度の認識で済むはず。


僕は、あと何章節の唄を君に届けられるのだろうか?


・・・


・・・


・・・


それは天が崩れたある日の事、アン・フォール・へヴンと呼ばれた作戦の一つの結末を観たその宙域での事、


崩れた躯体、長大で巨大な崩壊した破片を回収しつつ、あるいは地上に墜ち燃え尽き、そして消え、一筋の流星へと成って行った。


視界一杯に広がる、内部に、居住区や農業区、工業区などに多岐にわたるブロックに分かれ、其れ一つで、ひとつの国や都市と評しても過言ではないその巨体に相対し、呟く。


「はぁー全然終わらないでござる。てか、この…牽引するのも一苦労でござる。」


「そもそも...、推進機構破壊した、…なんてどうやって動かす心算なんでござろうか?」


「ねぇ、…殿?あの時みたいにパパッやっとやっちゃえませんかね?」


ジジジッと、その宙域に広がる濃い罪深きその粒子の濃度により、通話の一部が途切れていく


(。´・ω・)ん?


「そうだな、動力炉の出力が、連戦で、落ちてるし、無理だな。そこら…、コーディー=スルー上級技官とクルーニー=ブルース特別顧問が考えて...だろ?」


「通信…乱れるな...」


「通信…やんなっちゃいますよな~。是も奴らや僕らが使うジェネレーターが原因みたいですな。」


(あれ?でも、なんで戦闘中は大丈夫だったんだろうか???あの時、実行して今やってない事は...。一つだけ...)


まぁ、良いかな?と話を区切り、どこか上の空の侭、ここ数日この宙域でのデブリ回収作業に従事する。二人は他愛もない掛け合いをしながら作業を終えると、帰投の準備に入る。


その宙域に留まるも重力圏に惹かれて、何時墜ちるか分からない。


いくつもの牽引用のワイヤーを繋げた、艦船たちが徐々に動き出しその姿勢制御を試みている。


どうやら、ヴェニ=ヴィディキの話では、コロニー墜としから免れた3基のコロニーを安全宙域迄牽引し、


喪った物資の補充の為に、一度、《人喰い》カルニヴォルス (carnivorus)の勢力圏外である


ハルズ=アルマイン達が、来たL5宙域まで、撤退する予定らしい。


第四部隊と第七部隊の面々が、この宙域に来たのは、《人喰い》カルニヴォルス (carnivorus)の不穏な動きを察知しての調査航海でこの場に現れ、目的を果たした今も航海の続行を謳っている。


コロニーを安全宙域まで移動させるのは賛成だ。


だが、時間が惜しい。今も彼女が何処にいるのかも分からない状況だが、時間は刻一刻と過ぎていく。


「《エンゼルフィッシュ》…ドンキ・ホーテならびに《お調子者》(ストゥルティ)...是より作業を終了して、帰投する。」


「了解です...他の機体の着艦予定なし、オールクリア。ランデブーポイントまで、移動後、着艦して下さい。」


オペレーターの答えを受けて、


二機の機影は、推進剤が放つ、光の瞬きを放ちながら悠々と、消えていく。


着艦後、メンテナンスドックを抜けて。


見ると、コーディー=スルー上級技官が、陣頭指揮をとり、解体していたディエム ペルディディA型とディエム ペルディディCD型の部品を分解し


何処かへと運び込もうとしている。


「あれ?何してるんだ?」


自室へと戻る途中、整備兵の一人を捕まえて問いかける


「はぁ、私も良く分からないんですけど?封印措置ついでに分解した部品を別の船に載せ替える見たいです。あっても使わないなら邪魔ですからね。」


(。´・ω・)ん?


確か、三機目のディエム ペルディディは、コーディー=スルーが乗ってたし、改修したのに?分解するのか?


少しちぐはぐなその行動に違和感を覚えるも、疲れた身体を休ませる為に二人はシャワー室へと急ぎその場を離れた。


その様子を二ヤリと笑い。コーディー=スルーは、作業を急がせる...


何故か、自らの母艦と離れた《エンゼルフィッシュ》で、その光景を眺めるアハト=佐伯とハルズ=アルマインは、


(・д・)チッ


「そう言う事かよ。通りで羽虫共が、群がってくる訳だ。」と、何かの問題について悪態を吐く。


そこに通りがかったアイジェスとアンザスに向かい。ハルズ=アルマインは吠える。


(。´・ω・)ん?(なんだろう早くお風呂に入りたいんだけど?)


「おいお前ら、あの戦場でデカ物を何機墜とした?俺は二機も落としたぞ、アハトは?」


「一機だ...それがどうした。」


(。´・ω・)ん?


確か拙者とヴェニ=ヴィディキ氏が二機落としてたような気もしますが...


「俺も一機だな」


「はぁんっ俺の勝ちだな!!!」


(。´・ω・)ん?


何言ってるんだろうこの人...アイジェス氏が落としたのは一機だけだけど、ハルズ氏が落とした機体も含めてアシストしてたの三機か四機あったような???


まぁ、ここでこれを指摘すると喧嘩になりそうだし、アイジェス氏もあんまり気にしてなさそうだし流すか?


「そうでござるなぁ、よかったですな。アイジェス氏、洗いっこしませうでござるよ。」


「嗚呼、そうだな。だが洗いっこは断然拒否するからな。」と、とたとたと、廊下を走って去っていく二人を眺め、


満足そうに頷くハルズを他所に、アハトはいつまでも納得できないように腕を組み二人の背中を見続けていた。


・・・


・・・


・・・


コーディー=スルーは、改修作業の偽装ついでに既に取り除いた機能について、改めて解説をぶち、


それでも、あの技術は素晴らしいと呟きながら…二体の完成品を目指し、暗躍する。


・・・


・・・


・・・


そんな事は露知らず。シャワーの噴霧器から噴出する微細な気泡ナノサイズを浴びて、大きなバナナをブラブラさせ


それまでの作業で溜まっていた。汗や老廃物の汚れを落とす。


船体内のシャワー室は、その壁面を特殊な吸水性の素材と、吸入器が合わさった機構で、噴霧された微細な水の泡は、


身体に当たって汚れを落とした後に、吸入後、壁へとすぐさま吸収されて行く。


一通りの命の洗濯を行うと。噴き出したエアータオルと共に吸水器が稼働、水分を拭き取ると、ふるちんのまま、シャワー室を出て、


黒のインナーとやや粗めの生地のジーパン姿の私服に着替え、次の出撃までの休息に入る。


今は、各機体の整備ローテーションで、損耗率の大きい機体から順次整備に入っている。


前回の戦いでは、ローテーションを考えずに、一斉に、全機出撃したからな...余計手間がかかる。


自然とメンテナンスフリーな、《デスペラード》の稼働が増える。


其れに付き合わされる。アンザスは、不満も言わずに追従する。


先ずは、腹ごしらえにと、母船で、やきもきしているであろう春幸と青葉へと声を掛けに


食堂へと入っていく。


いつもの顔ぶれとなったその四人組は、今晩のメニューである。A定食とB定食のどちらにするかで悩む。


とりあえず無難なA定食を選び、もさもさと咀嚼しながら、それまでの懸念点を吐き出す。


「なぁーおっさん、部隊はこのまま動かないのか?敵の本拠地にはいつ向かうんだよ?」と、とと問いかける


「さぁなぁ、救出したコロニーが三基もあるしな、安全なL5宙域まで、牽引するって話だし、少なくとも数か月はかかるだろうよ。」


ぶっきらぼうに答えるその声に、不満を漏らす春幸に対して、


「行方不明のコロニーの被害者たちが何処に運び込まれたのかも分からない。敵の本拠地エーリヴァーガルかもしれないし、他の場所かもしれない。」


「一つ一つ、潰して行くしかない。」


そんな諦めに似た言い分に、不満を漏らして、ぶー垂れる少年に対して、


青葉は、慰めの言葉を告げる。


「生憎、私は、君の家族の居所は知らない。知っているのは、私が生を受けたのは、月都市だということぐらいしか分からない」


「「「(。´・ω・)ん??????????」」」


「それって????アイリスの人たちが月に、運ばれた可能性が高いって事じゃんッ!!!!」


「そうでござるよ!!!!!」


「そうかそうか、クッソ、月はここ迄の旅路の途中で、通ったぞ?!」


(それなのに彼女の姿を匂いを感じなかった??何故だ?)


「えっ?」


「月の裏側の設備は破壊されていた。となれば、月都市《静かなる都》(ウルブス・トランクイッラ)が、最有力候補だ!!!」


「よし、よし、よし。」


「やったッ!!!ー、母さんも父さんも無事だと良いんだけどなぁ!」


(だが、どうする?本隊と一緒に行動すれば、脚は遅くなる。こうなったら...)


「分かって居るでござるよ。拙者人肌脱ぎます!!!!!ぞ。」


「目的地は分かった。だが、問題は、どうやって向かうのか?俺の《デスペラード》を使えば単独で、目的地に向かう事が出来るが...」


「問題ないですぞ!!さっき端末で会報をダウンロードしてきたところ、顧問たちが、アイジェス殿に供与された残りの素材使って、推進器の建造するって息巻いてましたぞ。」


恐らく外観部は、《人喰い》カルニヴォルス (carnivorus)が使ってたものを流用するだろうし、精々数か月で、だろう...


ただ、其れだと俺の目的としては、遅すぎる...。


「春幸、暫く待っていてくれ。青葉、危険だが、道案内頼めるか?」


「えっ?(私が着いて行ったら余計危ないんじゃ?)良いの?裏切るかもよ?」


「はははッその時はその時考えるさ。」


「う”ぅぅぅぅぅぅぅ~」っと唸りつつ、テーブルを噛む少年は、小さく分かったと答えて、唸り続ける。


ほれほれ、ほーれーと、A定食の付け合わせのトマトを差し出し、不満をなんとか抑えようと苦慮するが...


はたりと、ある事に気付く。


「えっでもそうなると拙者もお留守番と言う事ですかな???」


「そうなるな、というかお前、軍属だろ?勝手に抜けだしたら駄目だろ?」


ぐぬぬと、少年と同じくテーブルにかぶり付いて抗議の唸り声を上げる。


問題は、月の都市へと、単独潜入するとして、救出した人たちをどうやって連れ帰るか?だが...


前回の戦いでは、温存していた《ヨ―トゥーン》は、その機体色を白磁と見まごうばかりの配色へと塗り替え名前も《ウェールス・アルブス》(verus albus)と改める。


…今も、同宙域で佇み、其之出番を待っているその機体に


余剰人員が乗り込める設備を増設する必要が出てきた。素材となる部材は...そこら辺に転がっている。


壊れたコロニーの部材を加工し、《エンゼルフィッシュ》の工房と、《デスペラード》の加工機能で...。


計画が決まれば、後は行動だ。この話は、他の奴等には、伏せておこう、話せば必ず引き留められる。


あとは、残り一回となった新武装用の《黒曜鉄鋼》(ブラックライト)は、版図を巻き返す為に...新しい《カルペ・ディエム》の生産用に回そう。


それで俺が抜けた戦力の穴を埋めて貰おう...なんだったら使い道のない、局地戦用の装備を解体して使わせてもいい。


それだけあれば、数百機分以上の炉心の部材にはなるはず...


ざっとした計画を練ると、さっそく作業に取り掛かり、アンザスと春幸は、《デスペラード》への水と肥料、そして、食料や飲料水に、ノーマルスーツ用の…等


多数の消耗品の積み込み作業を開始。


その様子をみて?どうしたー?と整備兵の面々が訝しむ、


「嗚呼、次の戦いは長期戦になりそうだし、今のうち、準備をしておこうかな?と、な?」と、当り障りのない説明を繰り返す。


「それにしたって多くないか?それ数人が消費したとしても数か月分近くあるぞ?」


「( ̄∇ ̄;)ハッハッハッ俺は大食漢で、心配性なんだよ。多くても悪い事はないだろ?」


んー若干多すぎるとデッドウェイトにならんのか?とも疑問を挟むが、まぁそう云うもんかと納得して去って行く。


一通りの積み込みが終わると、続いて、青葉用の機体の準備に入る。追加武装を何か付けては見たいが、大幅な強化作業は、手が回らない。


既存兵器の流用をするとして、基本装備に近い《ランドセル》に、更に、新しく組み込んだ実体弾の装備を付け加える。


その間に、《デスペラード》に乗り込んだアイジェスは、部材の加工作業へと入る。工房で新しい金属のインゴットとして捻出された部材を


書き溜めて置いた部品の製図を元にCNC(Computerized Numerical Control)機械と3Dプリンターを組み合わせた、自動実行プログラムを起動


その画面に表示された文字は、《Gifted Unchained Navigators Defying All Misconceptions》と刻まれ


「天より与えられし力を持って、何者にも束縛されず、すべての誤解に立ち向かう案内人」を自称する機構をフル活用して、


救助者運搬用の大型ラックの組み上げを、船体外部で作業を開始。


数日掛けてのその大仕事を済ませ、その当日に至る。


普段のデブリの回収作業に紛れ、丁度アイジェスと青葉が組むように予め、アンザスが隊長にそれとなく、組み合わせを誘導を行う。


自らは、恥じらう姿を見せるも、威風堂々、絞められた腰布を纏い、コックピットへと乗り込む。


勢いあまり開閉口で男尻を引っ掛け、通信が起動その男尻が母艦の艦橋のモニターへとでかでかと映し出される。



「おいっノーマルスーツを着ろ、そして尻を出すなッ掃海任務とは言え、万が一があるぞ?」


「へっへっしゃーせん!」


そんないつも通りの光景の中、「どうしたその重武装は?それ新型装備全部、掃海任務に持っていくのか?」と言う問いかけに


嗚呼、試運転も兼ねてるからなと、当たり障りのない答えを返し、アイジェスと青葉は、掃海任務に出る。


しばらく作業を行うと少し離れた場所に、移動させていた《ヨートゥーン》改め《ウェールス・アルブス》(verus albus)の巨体を掴み、


思考誘導による遠隔起動で、徐々に友軍機の駐留する空域から徐々に離れていく。


《ヨ―トゥーン》...については、既に搭載しているジェネレーターを《人喰い》カルニヴォルス (carnivorus)謹製のダグザの釜から、


《黒曜鉄鋼》(ブラックライト)製の新型へと換装し、さらなる改良を施している。


「青葉、危険があるがいいか?」


「何を言ってるのよ。おじさん嫌がっても、道案内させる気でしょ。私は構わないわよ。」


「そうか...月までの道のりは遠いようで近い。こいつの推力ならば、一日と掛からないだろう。振り落とされるなよ。」


蒼く染められた、星を背に、我らは、死出の旅路へと向かう。


丁度、地球と月との中間地点を飛行する最中に、何気なしに警戒のために傍していた通信に、何かのノイズが混じる。


それは、ゲリラ的に催され途切れ途切れに、その声を届けさせる。


懐かさを覚える聞き覚えのある声だった。


(これは...アスミの声だ。詩だ。まだ唄うことを忘れて居なかった。)


(彼女はまだ生きている...)


その詩は、かつての不器用な二人が、互いに独り言を言い合い、時に嘘を見破り、抱き合いながらも、愚にもつかない会話を繰り広げる


ふたり言を繰り返す他愛もない詩を聞きながら録音ボタンへと手を伸ばす。


歌声に聞き惚れながら焦る気持ちを必死に抑え込み。ここは、敵地のど真ん中、パトロールや、移動中の敵に見つからぬ様に、慎重にメインスラスターを吹かせ、


早鐘を打つように急かせる心臓の鼓動を抑え、進む。


だが、このまま、進めば敵の警戒網に引っかかってしまう。


ジェネレータの欠損率は、あれから一週間近く経過し、多少は修復されてはいるが、それでも精々7割を少し超えた程度、


正面衝突の戦闘を力づくで抜けるには、やや厳しい。


が、潜入するだけであれば、手は残されている。問題は現在の暦では、満月...月の表側は...太陽に晒されている。


となれば、《ニヴルヘイム(霧の国)》を併用したとしても《ウェールス・アルブス》(verus albus)をそのまま持ち込めない。


長時間だと氷が解けてしまう。


どうしたものかと思案をし続け、答えがでないまま、該当宙域までへと、至る。


ややあて、意を決して、


「エンコード、《バラッド・オブ・ザ・デスペラード》...«一葉灼伏»...5%」


「悉ことごとく凍えて、その姿を覆い隠せ。《ニヴルヘイム(霧の国)》...起動…」


5分限りのその力の行使を顕現せしめ、そしてその言葉を紡ぎ、声に答えるかのように、その基部が、変形し変態していく。


《ウェールス・アルブス》(verus albus)の基部に収まると、連動するジェネレーターと並列起動し、


彼我の残りの距離を一気に、詰めると、霧氷の荒波で、視界とセンサーからその身を隠し守る。


この五分だけは、派手に粒子をまき散らさない限りは敵に見つからない。


「これからどうするの?案はあるのよね。」


「ねぇ、おじさん、早く言ってよ。」


と、急かし始めるが、アイジェスは我関せずに、マイペースを貫く。


「わかっているが...やや状況が面倒だ。」と、その思案し決断を下す。


このでか物は...切り札になる。


太陽の当たらない月の裏側で氷塊を纏わせて、係留しておこう。俺たちは、機体ごと、月都市...


敵の手に堕ちた月都市《静かなる都》(ウルブス・トランクイッラ)へと向かい潜入する。と、


敵の警戒領域を抜けたところで、それまで接続していた機構を開放、


お互いの機体に氷塊を纏わせたまま、思考誘導に案内されて機影が月の裏側へと消えていく。


(。´・ω・)ん?


「なぁ、さっき一瞬、モニターに男の尻が映らなかったか???」


警戒中の機体を操る守備隊らしき機影のコックピット内で新たな謎が生まれる。のちに男尻の脅威と語られたとかなんとか?


「そんなバナナ...」


「ほんまや?!?!」


「ちょっとおじさん何してるの?!」


「あっやっべ手元くるって、モニターの映像送りそうになったわ...切り替わったか瞬間に懐に入れていたアンザスの尻の写真が、ふさいだから事なきを得たな。」


「ちょっとなんでそんなもん懐に入れてるのよ?」


「いや、あいつが、危険な旅路だからって、懐にねじ込んできたんだ。しかもその写真、誰か女性にも渡してたなぁ?」


なんでも民間伝承では、露出した身体を見せることで魔除けになるらしいがそれ必要なのか?。


あれ?でも視認性も通信やセンサー類を誤魔化して封殺する氷霧が充満してるのに、


なんで接触通信じゃなくても話せてるの?


当然の疑問を浮かべるが、その疑問を口に出される前に察して言葉を続ける


「嗚呼、それはな?敵側には凹面レンズを向けて妨害して、味方側には凸面レンズの氷で通信を返しやすくしてるのさ。」


「だが其の加減が難しくてな、散布方向を間違えるとさっきみたいな事になるし、急には中々変えられない。今は戦闘濃度まで散布状況を上げてないからな、何とか誤魔化せた。」


軽口を叩きながら、最小限のスラスター出力を行使して、


やや南の月の都市の外れにある寂れた宇宙港らしき、出入り口に向かう。見ると出入り口や所々が、焼け焦げ破損し、


修復も儘ならないまま、放置されている。


本来ならば、目立つ三色のトリコロールと蒼い、その機体色も充満する霧により視界の端へと認識が隠され、


それに紛れて入港を果たす。


さすがに宇宙港に係留している艦船や機体があったとすれば、気づかれるが、事前に重力感覚器官《Sensorium Gravitatis》(センソリウム グラウィタティス)で走査を試みていたが、艦船の影が見えない。


最悪、月都市の搬入口のいずれかを探して侵入するつもりではあったが、これ幸いと、そのまま入港を果たす。


やはりこの港の灯が堕ちてる。


無人だ...なぜ修復していないのか?謎に思うが、その破損状況は、真新しく、侵入禁止の黄色いテープが張られ所々で


乱暴に隔壁が閉じられている。


機体のフル稼働限界まで、数十秒の猶予を受け、発動する効果を切り替える。


ヴァナヘイム《豊穣の国》を展開、量子コンピューターによる演算により、接続した隔壁の操作パネルの


開閉用コードを読み取り隔壁のロックを解放、後ろ手で、閉めながら続く通路の封印を次々と


閉めて行く


最後の隔壁を抜けるまでの間に再び《ニヴルヘイム(霧の国)》の展開を試みる。


時間が惜しいが慎重に歩を進め、どこか適当な場所を探し、


月都市内部に広がるの森林地帯の一角に機体を見つけられぬ様に氷壁に封じ込めて、


二人は、機体から降り、やや軽めのその重力を弾みつける様に跳ねる歩みを堪能し、


青葉の警告の言葉が飛ぶ


「おじさん、ノーマルスーツのヘルメットはまだ外さないで!!!私が確認するから!」


(。´・ω・)ん?


一体なんのことだろうと訝しみながらも、その対応を任せる。


意を決してヘルメットを外した、青葉は、月都市に充満している空気を


一呼吸慎重に吸い込む...問題ない...確か、月都市の空気や水は、月のレゴリスを加工して使っていたはずだが、やはり、今もそれは変わっていないのだろう。


ならば大丈夫だ。


「おじさん、大丈夫よ。ヘルメットを外して。」


徐にヘルメットを外して、空気を吸い込む。何の変哲もない空気だった。


「とりあえず潜入するには、ノーマルスーツは目立つ、とりあえず私服に着替えて、連れ去られて人たちの姿を探すぞ。」


いそいそと、木陰に隠れて、ノーマルスーツから、ラフな黒地ジーパンと白のカットソー、


それらが少女の身体にピッタリと収まり、人の視線を釘付けにする箇所が強調して盛り上がり、


薄く華奢な腰とのコントラストが描く曲線美を見せるが、


そんな姿も何も気にせず黙々と自らが切るTシャツを慎重に選び始める。


質実剛健(しつじつごうけん)、唖然失笑 (あぜんしっしょう)、独具匠心 (どくぐしょうしん)


...鉄樹開花 (てつじゅかいか)


うーんなににしようか?そこに一枚の封筒がハラリと落ちる。


そこに紛れて生地の服は


黙って漢は男尻を出せ!!!と書かれた意味不明なTシャツを手に取り、


つぶやく、却下。


結局無難な、無地の黒いTシャツと青地の一般的なジーパンに落ち着く。


月やコロニー内部の室温は、おおむねTシャツ姿でも過ごしやすい気温に設定されている。


この月都市でおいてもそれは変わらないらしい。


念の為、護身用として、お互いに拳銃と各種武装を携帯するも、できればこれは使いたくはないな...


まぁ、おそらくこれは使用されないだろうと思いながら、


まずは最初の目的地へと向かう。


「結局、これからどこに行くんだ?」


「その前に注意だけど、途中で手に入れた食料品には、飲み物を含めて持ってきた食料品以外は絶対に飲まないで。」


「それは良いが?なんでだ?」


「それはどうしてもよ。わかったおじさん。」


「了解だ。」


...


...


...



道々を歩くが月都市《静かなる都》(ウルブス・トランクイッラ)の街中は、


人々の雑踏に溢れ、今が戦時中とは思えない程、穏やかにそして、なんの争いも


暴動も見られず、統制されている様に見える。


この人たちを解放せねばならぬと、意を決したものの何故か、噎せ返る


匂いに晒され、鼻孔を擽るその匂いで、鼻が馬鹿になり始める。


この匂いは一体なんなんだろう?と疑問に思うも、好みに宿る何者かは何も答えず。


物語は進む。


中心部に向かう途中で、青葉が暮らしていたという。下宿先を覗いててみるが、既に開閉用の端末の暗証番号が変えられ恐らく処分されているのだろう。


拠点として扱うのは、難しそうである。


やや遅れて、最終目的地である月都市の中心部に存在する。青葉も嘗て在籍し、最初に目覚め、最初の記憶に残るその場所に潜入することに決める。


道々を行く際にコルムナ・パーキス(平和の柱)と書かれていた標識を眺め


月都市部のドームに触れんばかりに空に向かって起立するそれを仰ぎ見る。

「平和の柱か...戦時中なんだがな?」

で、潜入する当てはあるのか?そもそもここは本当に敵に占領されてるのか?


普通に人が歩き回ってるし、何かに恐れている節も見受けられない?


人々は美味しそうに、露店で食事に興じ、昼間から酒を飲み歌い騒いでいる。

そしてそこには売店で売られているクレープを頬張り、子供連れらしき家族が

笑いながらショッピングに勤しみ嗤っている。


何かの間違いなのでは?と次々と疑問が噴出するものの


青葉は、その疑問に何も答えなかった...


「なぁ、連れ去られた人間が、其処ら辺に居るって事はないのか?」


ここに来るまでの間に、子供たちの親の写真は、春幸の母親以外は

貰っている。どうしてなのか母親の写真だけなかったが父親らしき人物と、

もしもの時は自分の名前を伝えれば良い。と頼まれ、行きかう人々の中にその姿を探すが、見つからない。


デスペラードの端末を持ってきて、あらかじめ行方不明になった人々のデータを入力したそれのカメラを翳して、画像検索による検索を行うが...


どれもヒットしない。


これだけ一般人があふれているのに誰一人何故かヒットしない。


首を捻りつつ、街中を散策する。


問題の一つは、奴らの施設に侵入する方法だが...青葉の生態認証が使えれば楽なのだが...


試してみるか?と、慎重に侵入口らしき出入り口を探す。


青葉の記憶では、コルムナ・パーキス(平和の柱)には、街中から入れる侵入口がいくつか


蜘蛛の巣の様に放射状に広がっているらしい。


そのうちの一つに、青葉が接触し...扉の開放を試みるがERROR画面が表示され、アクセスを拒否される。


(・д・)チッ


奴ら...青葉の生態認証登録を抹消してやがる。


すると遠くの空から何かが次々と飛翔してくる。


あれは...《ピスハンド》無人の人狩りだ...


今の武装では、対抗できないッ!!急ぎ建物の影に隠れてやり過ごし、浮遊するそれらの姿から視界の射線を切りながら慎重に、来た道を戻り始める。


目的地に到着したものの打開策を打てないまま無為に時間が経過する。


その頃、アイジェスと別れ。L5宙域まで、コロニーの護送を開始した面々は、憤慨していた。


何も言わずに隊を離脱し、勝手に月へと向かったと知らされて、敵前逃亡か?任務放棄か?それとも敵に寝返ったのか?


それらの可能性を含みつつ、沈黙を守るもの、怒りに震え壁に拳を叩きつけるもの、懲罰で男尻を叩かれるもの、それぞれ三者三様の叫びが木霊する。


ヒリヒリと痛む男尻を摩りながら、


アイジェス殿上手く行っているでござろうか?


我らが大隊は、ヴェニ=ヴィディキの指揮の下、着実に準備に取り掛かり、クルーニー=ブルース特別顧問とコーディー=スルー上級技官が


指導し、トゥルス=スミスらメカニック担当者や各パイロット達が、その作業に従事し、大型の《黒曜鉄鋼》(ブラックライト)製の新型推進器を製造


取付を行うまでに、既に一ヶ月程度の時間が流れていた。


しかし、その間にもアイジェスたちは戻らず。散発的に発生する敵の襲撃は、ハルズ=アルマインやアハト=佐伯を中心とする第四部隊と第七部隊の面々が、


危なげなくその機体性能と運転技術を駆使して、退けていた。


そういえば、あの二人達の動き、丸で人間の動きの様に近い。あっ今も、第七部隊の面々が敬礼のモーションを入れている。


窓枠に映る機影を眺めて疑問顔のアンザスに対して。トゥルス=スミスは、油まみれの手で、痒いとことに手が届かないもどかしさに耐えかねて、汚れていない


腕で頭を掻き始める。


(。´・ω・)ん?


「あれか~君も気になるのかな?」と、声を掛ける。


「あれ不思議だよね~普通義手なんてなったら、パイロットとしたら死んだ様な物なのに、寧ろ義手になってからの方が撃墜スコアが上がってる。」


「なんでもブラジャーの設計まで何でもするしがない発明家が、手足を喪った人様に神経接続での操作技術を広めたらしい。誰がそんな事をしたのかは、全くわかってないんだけどね。」


(*´Д`)はぁ~拙者も知らなかったでござるな。


通りであの面々の動きに鋭さがあると思った。一言礼を述べて、その場を離れて、月の方角に視線を泳がせ。


離れ離れになった友人の事を思い浮かべる。


元気でいると良いなぁと、着実に進むコロニーの姿を眺め、何事もなければ良いのになと、想う。


・・・


・・・


・・・



「はっ敵前逃亡するような軟弱ものに頼る必要などない。」それまでの機動性と出力を倍する程のその操作性に満足しながら、


ハルズ=アルマインは、コーディー=スルーの手によりチューンナップされた機体を操り、本日5機目の敵機を撃墜し、その獲物を啜り上げる。


それまで異形の継ぎ剥ぎだったその機体に、さらに大型のジェネレーターが増設され、機体本体の重量と容量がかさましされてはいるが、


大きく突き出たその背面腰部ユニットと胴体部分のジェネレーターが並列励起を起こし、それまで使用不能だった《傾城魚》(チンチェンユー)から


鹵獲した胴体部の砲門より拡散放出される。粒子砲の一射が長大な閃光を放ちながら敵機を撃ち落とし、去っていく。


(…)


無言のまま追従する同じ改修を施されたアハト機も更なる撃墜数をカウントしながら、


(あの男が唯逃げるとは思えない。何か考えがあって抜け駆けしたな?一体何を考えている???奴にとっての勝利条件は何だ?)


コロニーと数々の母艦を繋げて牽引し、各部に設置した推力装置を使い。いよいよ。三基のコロニーの移動が開始する。


コロニー内の立ち入りは基本禁止されている為、粗、内部がどのような状況になっているかは伺いしれないが、将軍の話では、


その殊に安堵し情勢は落ち着き、艦隊の物資の補充もすることができたが、やはり武装や兵器などの供与はなかった。


《人喰い》カルニヴォルス (carnivorus)共も、一斉蜂起を考慮したのであろう。武器なるような物は残されていなかった。


静々と徐々にその宙域から離脱し、目的地への航行へと入るが、


その背後から、複数編隊の敵機の接近を察知。


迎撃として第四部隊と第七部隊、そして念の為の防御として第三部隊の出撃を要請。


急ぎ出立するが、接近中の機体が、《フレイミングティース(燃え立つ歯)》とその他の数機編隊を確認


前回の戦闘では、先を読むことが出来た為、終始回避行動でやり過ごしたが、今は、足の遅い住民を満載したコロニーがある。


かかる戦闘は避けきれずに、先行する第七部隊と第四部隊が接敵する。


向こうの編成は...《フレイミングティース(燃え立つ歯)》四機を頂点として、数機の《マンティコレ(獅子型)》、《サテュラル(虎型)》を随伴機として、


あとは申し訳程度に《グヤスクトゥス》を一ダース。


向こうも大隊の軍勢を立て続けに失い。追撃を与えるべく差し向けてくるのは嫌がらせ程度の散発的な戦力のみであったが、


コックピット内部で、表示された敵味方識別コードにより、散開する各自に緊張感が走る。


それには、理由があるが、その理由(わけ)に気付いているのは、直接その機能の薫陶と説明を受けていたアンザスのみで、他の隊員たちは、


何故か最近すこぶる調子が悪い。あの時の感覚を上手くつかめず、その不調にすら気づかぬ二人は、その真新しい獲物に対して、喰らいつこうと、


僚機たちを置き去りにして、自らのどちらが先に多くの獲物を屠り喰らうかのみを競い。


スラスターの灯を輝かせながら、敵陣真っただ中に突撃していく。


その危なっかしい行動に対して、アンザスは、尻を隠しながら思案する。仮に知っている事実を伝えたとしても、彼らの耳にはきっと届かないだろう。


疑い怪しみそして、自惚れるなという言が返ってくるだろう。


ここは、拙者が人肌脱ぐべき時だと、先行する二機のカバーのフォローの為に、隊長機である。イゴール機へと一言、断りを入れ前進する。


「拙者ここは、一つ、拙者がフォローしてくるでござる。他の機体は、そうですな...」


「距離を保ったまま、援護を頼むでござる。出羽ッ山脈!!!」


と謎の言葉を残して、フットペダルを強く踏み込み、二人の後を追っていく。


《仏頂面》(トルウス)01ことイゴール=マッケンジーは、僚機の意図を汲み取り、


残る三機編隊での長距離狙撃たる不完全ながらの《天地併呑》(ウニヴェルスム・デヴォラーレ)を


射出細く伸びる光の柱を敵機の編隊が、一斉に散り散りになって散開行動に映る。


こちらの大火力を警戒し、接近戦を試みると思われた瞬間に相手からの砲撃が僚機たちへと襲い掛かってくる。


数条の黄金色に輝く緋を纏う柱が襲い掛かり、改造型ディエムが展開するオービットマインの端材を貼り付けたシールドと交差するように展開された

敵から鹵獲したビームシールドにその余波が、波及し、熱を帯びたその装甲が剥落する中、


実体弾による。宇宙空間でのみ行える慣性射撃による長距離狙撃で応戦する。放たれた弾頭は、時限信管による炸裂で、


放たれたビーム攪乱幕と共に散弾の雨を走らせるが、それぞれの機体が展開するビームシールドに阻まれ効果は微弱。


空域に滞留する攪乱幕の影響範囲に敵機が入った瞬間を狙い。次弾を装填し、互いをカバーしつつその時を待つ。


先行する三機は、前方に展開されたビーム攪乱幕を盾として、こちらの最大火力を叩き込み、敵が行うであろうその行為を阻止するべく奔る。が


アンザスは一抹の不安を覚える。これならば、長距離狙撃で敵の得意な土俵に上がらず、遠距離からの飽和攻撃で押した方が安全なはず、


だが二人は獲物を捕ることだけに専念し、前以外見えていない。


「接近戦は、不味いでござる。拙者がフォローするので、機体を下げて、砲撃戦による飽和攻撃で斃すでござる。」


「うるせーそんな戦い方だったら喰えねぇだろ?」


「...同じく」


文句ひとつ残してさらにスラスターを吹かせて、ビーム攪乱幕の影響範囲を抜けて、さらに敵機へと突き進む。


「嗚呼もう、後の事知らんでござるよッ!!!」


(こうなったら斃される前に倒すしかないでござる。拙者の新武装で...)


長大な長さの騎乗槍の如き、その基部を晒す獲物を晒し突き進む。


「はぁんっ?そんなの知るかよ。アハト、接近して殺るぞ?」


「...嗚呼。」


敵は、それまでの相対した相手と同じく、逃げ回り長距離射撃による攻撃でこちらの影響範囲外から攻撃と離脱を繰り替えすと思われ、

本部よりも敵陣深く切り込み、足の遅いコロニーを守る敵艦隊に対して《ムスペルヘイム(灼熱の国)》を展開し、


一撃離脱を試みて敵の戦力を削る事のみを期待され送り出されたが、敵が何故か向こうからこちらの影響範囲に向かってくる。


好都合とばかりに《聖痕》を埋め込まれし、数名のクピドレスたちは好都合とばかりに、


敵が到着するよりも先に、各機が、炎を模した放熱板を展開させ、その空域へと敵を誘い込む。敵機はこちらの砲撃を防ぐためにビーム攪乱幕を展開しているが、


それよりも多い火柱をあげさせ撃ち落とす。


「各自、展開後、稼働限界時間を算出。時間差でローテーションを組んで薪共を、焼いてやれ。」


「悉ことごとく熱に厭いやかされ死ね。《ムスペルヘイムッ(灼熱の国)》!!!!!」


展開される灼熱の空域へディエムペルディディが、なんの防御策を行わぬまま直進し、そして、機体各部から異常を検知し、


コックピット内のコンソール上では機体の熱暴走を知らせる。最後の一文字が欠けた赤いERRO表記の文字が踊る。


そして機体内部の温度が100度を超えた事を知らせるアラートが鳴り響く、既にこの機体は、実弾の爆装を施されあわや、武装の誘爆が巻き起こるかに見えた。


その光景に、デジャヴを感じたアンザスは、操縦桿を倒して、急旋回。影響範囲から離脱するとともに、レーザー誘導の弾体をバラまきつつ急速反転。


狙った攻撃が空中で灼熱に炙られ誘爆する姿を見やり、二人の撃墜を確信する。


「間に合わなかった...」


そう落胆した瞬間不思議な光景が広がっていた。


「悉ことごとくく凍えて喰らえ《ニヴルヘイム(霧の国)》」


まずは先陣をハルズへと譲り、無言を貫くアハトは、その光景に含み笑いを浮かべ、


敵陣を一気に切り裂くように進む。二機のディエムペルディディを前に、


アンザスはえっと驚くが、同時に納得する。そういえばコーディー=スルー達は、イゴールが乗っていたディエム ペルディディのA型を解体していた。


となれば、《ニヴルヘイム(霧の国)》を発動する機構を載せ替えたのか???


だが、それならば...問題がある。あれは急激にジェネレーターの動力を喰らう長期戦は恐らく不利になる。


となれば、自らも前面に出て、効果が切れる前に斃しきるしかない。


不完全ながら展開された炎熱踊る最中、急激に冷却される霧氷が顕わとなり、無情の刃が踊る。


ハルズ=アルマイン機はその機体に備えられた。《サテュラル(虎型)》より移植した右腕と左副腕の爪牙を発振させ、震えるように


静かに目の前の獲物へと喰らいつく。


目標機を追いながら螺旋状にロールし、相手の動きをみながらその瞬間を狙うまずは一機目の《フレイミングティース(燃え立つ歯)》と、その前面に構えた湾曲する独特のライフルから展開する。ビームフィールドと、接触。


噛み合う刃と盾が触れた僅かな交錯点で、光を伴う炎が放出、接近戦を試みる


ハルズ=アルマイン機を軽く炙る。


機体表面上を覆う氷の雪片が容易く消失し、その効力がオリジナルに比べ、出力に難ありとみられたが、其処は、神経接続での動作でカバーする。


噛み合うように打ち合った瞬間に脚部スラスターを展開。


灯を上げ、下半身を上向きに上昇させ回避しさらに脚部機構を展開し光の鉤爪を展開。


残る《ファーマ》より移植した右副腕より射出した電磁ワイヤーを《グヤスクトゥス》の一機に向かい射出し、さらにワイヤーによる高速機動を展開。


電撃を受け操縦桿から手を放し痺れる《人喰い》カルニヴォルス (carnivorus)に対し、機体側面を大地として、その発振する刃で喰らい付き、叩き付けるように、


その右腕で、敵ジェネレーター部をえぐり取りながら、同時に、左副腕で、敵コックピットを抉りつぶし、撃墜する。


敵から奪い取ったそれらを抱え、ディエムペルディディの頭部、開口部を開き、


何かを飲み干す様に注ぎ入れ吸入する。


そして興味を喪ったかのようにそれを投擲すると、向かい来る


数機の《マンティコレ(獅子型)》、《サテュラル(虎型)》が一斉に【falcis(ファルキス)】を射出。


「ふんっ、それは見えてるって言ってるだろッ!!!」


思考誘導の弾体と共に、小口径の粒子砲台が、撃ち放題と、ばかりに、大きく上下左右に展開。


左腕に掲げた五連装ライフルを構え、撃ち落とさんと狙いを付けるが...


その狙いが、予想とは反し、その狙いがそれる?


その異常事態に、わずかな違和感を受けるも、背後から追従してくるアハト機がオービットマインを取り付けたシールドを掲げ、器用に固定砲台の一撃を捌きつつ、自らも背面部のテールユニットを起動、ワイヤー接続を伴った実体弾の応射を試みる。


がその時、ハルズ機と共に同じ違和感を感じ取っていた。



・・・



・・・



・・・



前方の友軍機から抜けてきた降りしきる弾体の雨を回避するべくいつも通りの予測反応で回避を試みる。


第四部隊《自信家》コンフィデンス04ことコリストス=メギトスは...回避したつもりで応戦しようとした機体制御が、狙った通りに回避したにも関わらず、脚部に一撃を浴び、


誘爆を嫌い、とっさに抜き出したビームサーベルで、破損した脚部を切断。


大きく崩れた機体バランを苦にして、ぶれる機体をとっさに《自信家》コンフィデンス02、03が


カバーに入り、オービットマインを貼り付けたシールで防御する。


「どうした?《自信家》コンフィデンス04なぜ避けない????」


戦場では、同様の光景が広がり、違和感を感じていたのは、


やや後方で砲撃戦を仕掛けていた第三部隊、イゴール達にも感じ取られる。


射撃砲撃がいつものように当たらない。まるで広い大海に堕ちた針を拾うかの様に


その狙いが悉く外れる。一体なぜだ?


この様なことは、新型機に乗ってから初めての事だった。


その状況を、小型のAI端末が処理する情報でいち早く察知したアンザスは...


「不味いでござる。アイジェス氏のアシストが切れた事を知らなくて、被害が出始めてるでござる。」


ここは、拙者がなんとかせねば...


「隊長、長距離射撃戦を捨てて、視認距離まで詰めるでござるッ!!!!」


警告の声を上げるが、その声は、戦闘中に届かず...


それでも一斉送信を試みる。


なにか、なにかないか?必死にあたりを見回し、そして気付く。


アンザスは(おもむろ)にその準備に取り掛かる。


それぞれが敵機の攻撃を避けるため急旋回を繰り返し、敵を振り切るべく、歩を進める。


そこに親機4×6+子機16×6の合計、120基に及ぶ小型の【falcis(ファルキス)】が視界の端から急襲し、


機影が宙域を舞う最中、苦し紛れに放った一撃が【falcis(ファルキス)】の一団に浴びせかけ、掠めた一撃により、


一基の撃墜するも残りの数は比較するまでもなく多数。


「くそっ当たらねぇ。」


俺の感覚が鈍ってるのか?あの時を思い出せ...


厳かな雰囲気のまま、バナナを剥き、尻を剥く。


悪態を吐きながら、奮戦する。左右を向いた先でハルズ機のコックピット内のコンソール上に、突然綺麗なお月様が映る?


月??


いや違うこれは男尻だ?!アンザスの臀部がでかでかと映し出される。


「ぶッなんでこんな時に」と、操縦桿がぶれ、機体の増加装甲に小口径の粒子砲が掠め、誘爆を嫌い。推進剤に引火する事を嫌い装甲のパージを選択する。


「《お調子者》(ストゥルティ)、てめぇ何考えていやがる今は戦闘中だぞ??ふざけんな!!!!」


一度に複数の銃口がアンザス機へと注がれる。


「えっ待つでござる。こら、そこ、こっちに銃口向けてこないで。尻が震えてバナナが食べれない。」


(一体、どうやって説明すれば納得する。男尻の誘導限界時間まで十数秒...)


(みんなにどういえば伝わる?)


「おい、こんな時にバナナ喰うな!!!」怒号が飛び交うも、一歩も引かずに声を上げる。


「皆の衆!!もし全てが見えてるのであれば、拙者の男尻も先読みできたはず。」


「それが見えないなら、今は見るのは一瞬先じゃない。バックミラーを見るでござる。背中に目を付けるでござるよ!。」


(・д・)チッ


ハルズ=アルマインは、その事に気づき指示を出す。


「お前ら、バックミラー付いてるよな?背後に目を付けろ。死角は僚機でふさげッ!!!」


一同は、バックミラーを一斉に起動。背後に映る影に向かい、振り向きざまに、


一射を叩き込み。複数の僚機がお互いを背中合わせにながら、


襲い掛かる死神の鎌を払い続ける。


二機のディエム ペルディディは、背を向けて、噴霧する霧氷の粒子をバラ巻き、神経接続によるテールユニット基部による操作、


射角を揃えて、薙ぎ払うように薙ぎ払う一射を敢行


お互いの獲物を振るい、刃散る花びらの様に崩れる敵陣に対して制圧射撃を開始。


多銃身と四銃身の獲物と合わせて連続射撃を繰り返し、狙いが外れる偏差射撃から、手数を増やしての連撃による制圧射撃へと切り替え叩き込み続ける。


空中で思考制御による実体弾の群れとワイヤー接続された神経接続とAI端末による演算による、応撃が空中で正面衝突。


親機4×6から放たれる重爆撃と親機4×2の弾体が交錯し、物量的に約半数以上が抜けてくる。


不味いでござるよッ!っとアンザスは援護ついでに、自らもテールユニットを離脱させ、さらには各部に搭載されて、実体弾兵装も並走するかの様に展開、


戦場の横合いから、ハルズ機とアハト機に向かって降り注ぐ弾体を撃ち落とすべく、稼働を掛ける。


多数泳ぐ敵に囲まれ不利な状況に陥り、それまで輝いていた目の中に翳りが生じ始める。


こんなはずじゃない。一機や二機の獲物程度なら上手く捌けていた。それが数が増えた途端にこの様とは?と悪態を吐き、覇気を絞り出すように


発振する刃を放出しつつ、変則軌道を駆ける都合、三組のテールユニットが、ケーブルを絡めない様に動こうとするが、互いの連携が上手く行かない。


思考誘導弾のいくつかが、迎撃の砲撃を抜けて機体の各部へと着弾する。


とっさに、命中個所を追加装甲材として、《傾城魚》(チンチェンユー)より鹵獲したオービットマインの端材で受け、その爆風と衝撃に晒されながら、


徐々にその装甲に熱量が集まってくる。


(・д・)チッ


アハト機は、複数のテールユニットによる迎撃を捨て、ワイヤーを巻き戻し、背面部に収めると固定砲台としての使用を選択、


背中合わせで対応していた。空域からハルズ機の背面に対して蹴り脚を叩き込み、急制動を掛ける


蹴りを受けてバランスを崩すハルズ機を他所に自らは、熱を周囲に放ち、放熱板による、反射でのオールレンジ攻撃を仕掛けてくる一機の《フレイミングティース(燃え立つ歯)》に狙いを付ける。


展開していた炎熱のフィールドを解除、燃え尽きるように離脱した一機と入れ替わるように再度の《ムスペルヘイムッ(灼熱の国)》を発動。


それに合わせて、アハト機もハルズ機と入れ替わるように《ニヴルヘイム(霧の国)》発動し、脚部のビームクローを展開、左右の爪牙と、右腕の実体剣を構え


変則五刀流を振るい。接近戦を仕掛ける。


《ファーマ》より移植した左副腕から保持していた四銃身ライフルを投機、獲物を捨てたなと...ばかりに湾曲した前面にビームフィールドを展開した銃身から


射出される光を押し出し、追従してくるその機影に対して、射撃戦を敢行。距離を取っての反撃で、撃ち落とさんと試みる。


その光景をニヤリと眺めるアハトは、敵機を自らが誘導する戦場へと押し上げ、そして...


左副腕を稼働...伸びるワイヤーに吊られ引き金に掛かる、明後日の方向から光の銃弾が《フレイミングティース(燃え立つ歯)》の背面に浅く装甲の一部を融解しながら、着弾す。


伏兵か???...違う?デコイか????突然の襲撃に判断が遅れたその瞬間。


クリップ型のビーム発振器に束ねて、実体剣の接続部へセット、震える刃が熱量を放出し実体剣を最大解放。


その刀身から光るフレームの一部が覗き、一刀を以て吐出し、吐き出される粒子の解放と共に払われた剣が、大きく展開され刀身を伴い彼我の距離を一気に詰めて、


敵前に展開される防御フィールドと接触。刀身に付けられたオービットマインの端材へと、その熱量が吸収され、その防御が崩され


返す刀で、敵の銃身ごと、伸びる刃で、敵機のフレームを巻きつかせ、引くと同時に切り裂き溶断する。


まずは一機...


一方、アハト機に足場として利用されたハルズ機は、大きくバランスを崩して、


「アハトッ!!!てめぇ...」


思考誘導砲台の只中に一人残されたハルズ機は、


(・д・)チッ


とっさに機体の制御を放棄して、慣性飛行のまま、360度全方向に対して砲門を展開。背面部のテールユニットから吐き出す光の毒針と実体弾に胴体部の拡散粒子砲、


左腕の多連ビームライフルを一斉に乱れ撃つも、


フォローに入ろうとしたアンザス機を巻き込んで放射される。とっさに偏光シールードで防御しつつ、それでも援護射撃の砲撃を行い。


「あっぶな?男尻が焼けるところだった?!!何するでござる。」


「うるせぇッ!!!砲撃戦中に射線に入るなッ!!!!」


フットペダルを踏みこみ、姿勢制御のバーニアーを点火。逆進を掛けつつ、周囲に展開される死神の鎌たちに対し、


器用に、機体を動かし、小口径の粒子砲の一射を器用に機体を傾け、機体各部のオービットマインの装甲材に吸着させ、その一撃を凌ぎきる。


問題は、複数での戦闘では、テールユニットでの遠隔攻撃の扱いが難しい。万が一ワイヤーが絡めば、身動きが取れなくなる。


咄嗟に砲撃戦から、接近戦へと舵を切り、《サテュラル(虎型)》より移植した右腕と左副腕、既に展開していた脚部のビームクローを構え、


右副腕から延びる《ファーマ》から移植したワイヤー機構を左手から迫る友軍機...アンザス機へと射出。


電磁機能をカットして放たれたワイヤーを巻き取りながら、機体を急制動。


スイングバイの要領で、加速した機体を熱と衝撃を吸収する装甲材を盾にしながら、肉薄する。


遠くでは、他の友軍機が《グヤスクトゥス》との戦闘に突入する姿が視界の端で捉えられる。


改修機と新型機であれば、相手にはならないはず。


問題は、【falcis(ファルキス)】と炎熱地獄をまき散らす《フレイミングティース(燃え立つ歯)》の一団だ。数は三機に減ったが...


舌なめずりしながらも、その狙いは...


単独顕現では、熱量に押されて霧による惑乱効果が消失し、互いに効果が無効かされるが、其処に重ねた場合どうなるのか???


「悉ことごとくく凍えて喰らえ《ニヴルヘイム(霧の国)》」


戦場に充満される霧が、その姿を覆い隠す。


敵が消えた?ッ!!!!


そう判断した瞬間には、ワイヤー機動によるスイングバイで加速し機体に取りついたディエム ペルディディの爪牙が深く


コックピット内部まで侵入し、その体を嬲る様に、上下させる。


血を吐き、臓腑を抉られ、絶命の叫びをあげつつ、機体の稼働を《炉心融解》モードに切り替え...るも、


燃え上がる炉心をその爪牙で刳り抜き、その罪深き燃料を、解放された口腔へと流し込み、


更なる。「悉ことごとくく凍えて喰らえ《ニヴルヘイム(霧の国)》ッ!!!!」「悉ことごとくく凍えて喰らえ《ニヴルヘイム(霧の国)》ッ!!!!」


増減する燃料を補充しながら、吹き出される霧の空間が、敵の目から、ハルズ機の姿を覆い隠す。


それを眺めながら、なるほどなと頷く、アハトは、バラバラにした敵の機体から、ダグザの釜を抜き出し、それを補充すると、


再びの《ニヴルヘイム(霧の国)》の展開を行使する。


確かにディエム ペルディディの《ニヴルヘイム(霧の国)》は不完全だ。その代わり共通するジェネレータから燃料を奪う事により、連続発動を可能とさせ、その不利を有利へと変えていく。


完全にハルズ達の姿を喪った


《フレイミングティース(燃え立つ歯)》と《マンティコレ(獅子型)》、《サテュラル(虎型)》の一団は、目視できぬその姿に恐れ慄きながら、


一方的に次々とその命を散らし、そして刹那の中の無音の瞬間に燃え尽きた。


・・・


・・・


・・・


戦場の門戸は一度閉じ、そして、彼らは、L5宙域へと進路を取り、着実に準備を行っていく、その先に待つ結果を未だ知らず、


場面は、月面都市へと変わっていく


あれから、どれ程の時間が経過したのか?街行く人々の姿を追い、行方不明者の姿を探すが遅々としてその捜索は一向に進まない。


街と、隠した機体との往来を繰り返し、どうにか目標の建物の侵入を試みるが、周囲で警戒する《ピスハンド》と、開かぬ扉に阻まれて、


もはや取れる手立てが、機体での強制ダイナミックエントリーのみか?と、思いつめるまでになる。


だが、一度戦場となれば、連れ去られた人を救う機会は喪われ、欠損したドライヴユニットの出力では、月都市に配備されている機体全てを


相手取るには、いささか不安がある。


今は、耐えるべき時期なのか?と思い直し、侵入する案を練り始める。


一先ず機体の前まで戻り、貯めて居たタンクから水を流用し、沸かした湯を持ち込んだ簡易シャワー設備で使用して、久しぶりの英気を養う。


「ちょっとおじさん、覗かないでよねッ」


(。´・ω・)ん?


「なんか言ったか?」と、モグモグと、一心不乱に頬張るバナナに夢中でまるで気にしていなかった。


「よく知らんけど、知ってるか?バナナって冷凍するとアイスになるんだぞ???」


モグモグと咀嚼音が響く。


○| ̄|_


なにかわからないけど、バナナに負けた...。


(。´・ω・)ん?「バナナ喰うか?うまいぞ?バナナの旨さに上も下もないし、青葉、一体何と戦ってるんだ?意味の無い勝負は、ただ、虚しいだけだぞ?」


そして、ひと房、丸ごと平らげると、続いて、持ち込んだ糧食に手を掛ける。


「ちょっとッ!!」


(。´・ω・)ん?


「何に怒ってんだ?これは、Carpe Diem(カルペ・ディエム)謹製の宇宙食だぞ?ほれ、食べてみろ。」


チューブに入った。麺類らしき何かをごそごそと食べ始める。


「トイレと冷蔵庫は、デスペラードのコックピットにある奴を使って良いぞ」


もー...デリカシー無いんだからっと若干怒る気も失せて、簡易シャワーへと向かっていく。


...



...



...



でかでかと映る臀部にふるちんの二十台後半のおじさんの裸体が、踊る。


シャワーシーンが来ると思ったな、だがそんなものはない。俺が映すのは、おじさんの裸体のみだ。存分におじさんを愛でるがいい。と、謎のナレーションが流れ、


やや、疲れが見える体を温かい温水が洗い流していく。


泡立つお湯が、映る裸体の端々を湯気が申し訳程度に、覆い隠していく。


手早く、私服に着替え直すと、居住まいを正し、別々に建てた、テントと寝袋に入って、安眠を貪る。


繰り返す日々の中、使用した水を、コロニー内の水道設備で、一口、青葉が水を含むと、「大丈夫」と答えてポリタンクを抱えて補充作業を行う。


今日は、これからどうしたものか?街行く人々は誰もが誰も嗤い、始終何かの飲食物を口にしている。


それ以外は、なんの変哲もない。宇宙都市の様相を見せつける。


俺は一体何と戦っていたのか?ふと疑問に思うも、きっとこの中の家族の誰かを俺は墜としている。その事実に心振るわせる何かが


あるにはある。だが、どうしても諦めきれない。


例え何度過ちを繰り返そうとも俺は...。


その日も、依然として行方不明者との照合結果に、何ら手がかりも得られず。もしやこの都市の中で捕虜収容などの隔離施設が無いか


探りを入れてみる事にする。この都市で使われている通貨は、Carpe Diem(カルペ・ディエム)の勢力圏内で使われている物とは異なり、


街の様子を見るに、電子通貨や紙幣などは、一切使われていなかった。確か青葉が潜入していた時に財布を持っていたが、詳しく聞いてみると、


生体認証での割り振られたポイントを紙幣代わりに使用しているらしく、生憎、青葉の生体認証は、抹消され使用できない。


使うには、あらかじめ特定の施設での生体認証の登録が必要らしい。


仕方なくゴミ箱を漁り、今朝の新聞を拾って、流し読みをするが、戦時中とは思えぬ、誰かれのなんの変哲もない狩猟に関する記事に


猟場を示す図解に、会社の株価の変動についての情報しか書かれていなかった。


主に今の狙い目は、食料品関連の株が多く買われているらしい。


ふむ、どうにか新しい記憶媒体や、新聞を手に入れる方法はないかと?思案する中、子供が店先の食料品を盗む一幕に出会う。


追いかけられた店主に、馬乗りになりながら腕を捻り上げられる。少年の痛々しい声が響き渡る。


「おいっ何してるんだ?????」(俺は一体何をしてるんだ???)


「痛がってるだろ、離してやれよ。」


(。´・ω・)ん?


「なんだ見かけない奴だな。こいつが奪ったのは官需用の特別製の品なんだよ?」と、顔を真っ赤にして、強く捻り上げる。


たまらず悲鳴が上がり、「まぁ、品物が返ってきたならいいじゃないか?な?」


「なんだあんた?こいつをかばうなら、ポイントを支払って貰うぞ?」と、いきなり取り出したスキャナー俺の手をスキャンする...


まずいこの国の金なんてないぞ?


するとピロリロリンッと可愛らしい音が響き、清算が完了する。


(。´・ω・)ん?にゃんで?


「へーあんた、《聖痕》持ちの軍人さんか?まぁそれだけのグレードなら、どこにでもフリーパスだろうな、どんな品物でも買い放題じゃないか?羨ましい限りだ。」


ほぃ、毎度ありとばかりに放り投げられた食料品らしきを掴んだ少年は礼も言わずに走り去る。


その光景を見て。ふと思い当たる。


もしかして???天を仰ぎ、その可能性に賭けてみる事にする。


・・・


・・・


・・・


別行動で、行方不明者の手がかりを探っていた青葉と、待ち合わせの場所で合流し、事の顛末を説明する。


それを聞いて、青葉は...


そうか...《慈聖体》は、《聖痕》持ちと、遺伝子情報が近似値としてなっている。何故ならば《人喰い》カルニヴォルス (carnivorus)が言う《聖痕》持ちとは、


嘗て存在を確認された《慈聖体》から培養を成功した。臓器をその身に移植されることによって、その手術痕を持って《聖痕》持ちと呼ばれている。


故にドナーとの拒絶反応が少ない遺伝子を持ったものにしかなれない。自然と各《聖痕》持ちのアカウントの生体情報と、誤認が起きる。


正しくは全ての《聖痕》持ちの遺伝子は《慈聖体》と、完全に一致しないでも、一致する箇所が出てくる。


ならば...


「おじさん...おじさんの生体認証ならコルムナ・パーキス(平和の柱)のロックを抜けられるかも??」


意を決して、深夜に潜入を試みる。


それまでの苦労とは裏腹に、やすやすと、その警備をすり抜け、生体認証のロックを外し、その中枢へと入り込む。


地下通路を抜けて、建物のエントランスへと突入。


上階へと昇るエレベータを抜け、途中、青葉も知らない区画まで、侵入を果たす。


「おじさん、ここから先は、私も何があるのか知らない。何があってもびっくりしないでよ。」


...


...


...



しかしその光景を見て驚くのは...だった。


どうして、こんな所に、人の腕だけが浮いてるのだろうか?


潜入したコルムナ・パーキス(平和の柱)のセキュリティを何故か俺はすべてスルーパスとなるその奇妙な


事実に、この数か月の滞在と捜索し続けていた間の事はなんだったのだ?


結局、誰も行方不明のアイリスの住人は誰一人見つけられなかった。それを無念と歯ぎしりをするも、


また別の問題が孕みつつある


天井まで伸びる稼働音を響かせる卵の様な装置に付随する水槽の中に、人の腕が浮いている。そして他には、足、腰部、臓器の一部がそれぞれ


バラバラになった誰かの一部が浮いている。


「なんで、こんなところに青葉の腕が浮いてるんだ?????????」


「えっ?私に腕は、ここにあるよ?おじさん見間違えじゃない?」


「いや間違いじゃない?ここの二の腕に傷が...同じ場所にある。これは君の腕だ?どうしてだ??????」


「そうだね。それは君の腕だよ。青葉=穣。」


ハッとなって背後を振り向くと一人の少年が立っていた。


「誰?ッ」


「実は、君達とは初対面じゃないんだけどね。僕は、ジンボ=ジラマの代理。ジンボ=ルダカだよ。以後お見知りおきを」


しかしと、言葉を切り、


「まさか、調整された《準慈聖体》である君が裏切るとはね??いつから食べてない?君の周りの声が聞こえないよ。」


「君を生み出したのは僕らクピドレスだと言うのに、その恩を忘れるとはね???」


その物言いに憤慨しつつ


「青葉は人間だ。お前たちに作られた物じゃない!!いい加減にしろ。」


嗚呼、そうか君たちはまだ知らないのだったね。と小首を傾げて、頷き言葉を続ける


「いや違わないね。彼女はね。かつてこの世に存在した青葉=穣という女性を素材にして作り出したクピドレスなんだよ。」


「広義的な意味で言えば彼女は青葉=穣という女性ではない。本物はそこに浮いてる体の一部だよ。」


「子宮は残してるから何かに使えないかと模索中なんだが?君は何かいいアイデアはあるのかい?」


「僕は、同位体の良い培養素材になると思うんだよ。」


わなわなと震える両手は蒼白となり、顔から血の気が失せ、その最後の言葉を受けて叫ぶ。


「嫌ぁぁああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


「貴様ッ”!!!!!!」


銃を構えて、対峙する少年に向かって銃口を向ける。


その背後で、パンパンッと乾いた火薬の音が鳴り響く、見ると


浮かぶ水槽にいくつかの弾痕が刻まれ、それらの基部と水槽が破壊され、その一部と共に溶液が流れ込み、


少年は嗤う。


「あらら、勿体ないな。」


「消して、消して!!!!」


ふむ、とうなずき少年を楽奏団の様に、手を振るとそれまで待機していた。武装した男女の警備兵がなだれ込んでくる。


(・д・)チッ



舌打ち一つすると、この碌でもない施設に対して、持ってきていたグレネードと拳銃の弾を、その目標に向かって叩き込むも、


狙った弾丸は、目標からそれ、それでも起爆するグレネードの一投により、設備が破壊される。


それに追従するかの様に、青葉も銃口をはためかせ、ホールドアップし銃弾が切れるまで半狂乱になりながらも撃ち続ける。


それをアイジェスが横から押し倒し、抱えると数瞬後に、乱れ飛ぶ弾丸が襲い掛かてくる。


遮蔽物を盾にしながら、


「青葉逃げるぞ?!ここにいても意味はない。」


(クッソだから青葉は、春幸達の事を知らなかったのか???記憶がないのも当然だ。そもそも本人じゃなかった...)


「はぁ?逃げるんですか拍子抜けですね。でもここからは逃げられませんよ。この月都市には、クピドレス以外に素材しか存在しませんよ。」


「その素材も有用な準慈聖体は全てリスポーンさせていますし、かつていた住人も全て素材にしてしまいましたからね。」


(・д・)チッ


「なんだと?子供の癖に何してやがるッ!!!!」


「我々クピドレスに子供や大人という概念は意味を持ちませんよ。ただ私は次世代を率いるためのフラッグシップとして年若くデザインされているだけですからね。」


くそっなんだそれ、それじゃ他の生き残りは居ないのか?????彼女の詩はなぜ届いた????


ショックのあまり呆然とする青葉を抱えてその場を離れるも、ここは敵陣のど真ん中かつ敵の中枢の一部、援軍の期待はなく、弾数にも限りがあり、


徐々に追い込まれていくそこに何処からともなく一節の詩が聞こえてくる。


(。´・ω・)ん?


これは?彼女の詩????


唐突に響く詩に耳を傾け、室内から通路へと抜けると、丁度目の前に備え付けられた防火用の斧が目に付く


それを手に取ると、ドアを抜けて近付く、人影に向かって投擲。



クルクルと回転したそれが、狙い能わず向かってくる兵士の急所に直撃する。


倒れこむ少女を引きずりながら、銃口を向けて放つ銃弾が僅かに目標からそれたと思われるが、ドアの枠へと命中すると、その跳弾が、


こちらに狙いをつけていた兵士の手元へと吸い込まれ、持っていた短機関銃が弾かれ、アイジェスの足元へと、滑り込んでくる。


それを前転しながら、グレネードを投擲し、受け取ると、そのまま向かってくる敵兵に対して、銃火を叩き込み斃していく。


倒れこむ青葉を抱え交代しながら、


「頼む立ってくれ、今は嘆いている場合じゃない。」


「そんな...じゃぁ私は...」


自らを鼓舞しながらも、通路に備え付けられた二丁目の斧に手をかけて、階段のドアノブを破壊して、開閉不能とし、奪った獲物と共に、足取り重く階下に向かって走り出す。


乗ってきた機体は遥か遠くにあり、そして、友軍は居ない。


それでも何とか血路を開く為、必死に青葉に語り掛ける。


「どこかに?なにかないのか?この際何でもいい乗り込める機体があれば...」


そこに...柔らかな声で、唄に交じって、そのメッセージが伝わって行く。その詩が流れる音の先を目指して進むと...


階段を降り続けて、いくつかの曲がり角を曲がったその先で、行き止まりにあたる...


上階から兵士たちの声が響く


「侵入者はどこへ行った?この先は行き止まりで古い廃棄場しかない。ゴミと廃棄品以外何もない。袋小路で終わりだ」


その愚にもつかない愚かしい行動を嘲笑い。


目標の確保に一歩前に踏み出したところを、古びたシャッターを突き破り、壊れて放置されていたはずの作業用ローダが眼前に、踊りでる。


疾走する作業用ローダーのコックピット内では、今も響かせる詩が流れ続ける。


そのありあわせの部品で作られたその機械を抱え、その不思議な状況において彼女の意思を感じ取る。


何故かあの場所にこれがあり、故障中と書かれていた張り紙は何者かの手により、破り捨てられて居た。


その不思議な状況下で廃棄されていたはずの機械をダメもとで始動してみると、やや頼りない稼働音を上げながら、


握りこんだ操縦桿に確かな反応を返す。


スラスターをひと吹きさせ、ややバランスを崩したものの、荷重を傾け、重心を変えて湾曲するスロープを駆け上がりながら


途中で右往左往する兵士を薙ぎ払い、地上へと飛び出す。


報告を受けたジンボ=ルダカは、訝しむ、なぜ廃棄したはずの作業ローダーが動いている?


そう言えばここ最近、警備用のカメラにゴーストが映り込むという噂話を聞いたことがあるが、それが決まって、廃棄された建物や、


我々が把握していない区画の付近で有る事が多い。


随分と前に、南の宇宙港で、薪の脱走騒ぎが起きていたな?


それらと何か関連があるのか?あれは確か、月の裏側へと向かう途中で撃墜されたはず。


頭の中でそれらの情報を組み立てて、捜索対象地域を絞り出す。



コルムナ・パーキス(平和の柱)を抜けて、飛び出した作業ローダーは、月の薄弱な重力をスラスターのひと吹きで


其のくびきから、解き放たれると、一路、自らが乗ってきた機体のある方、


月都市の南部へと向かってひた走る。


その背後から、複数の《ピスハンド》が追従してくる。


この機体では、武装もない、飛ぶのがやっとの廃棄品...対抗できない..追いつかれれば...


脳裏に死がよぎる。それでもめい一杯の速度で飛翔し、向かう先で、


何故か、断続的な、爆裂音が鳴り響き、


古いレコーダーから、その懐かしい声が、響く。


「やぁ、久しぶりだね。僕の子豚ちゃん。君が僕のこの声を聴いていると言うことは、もうそこには、僕は居ないよ。」


「その頃には既に月の裏側に移動してる。僕の予測ではひと悶着が起きて、その痕跡が残っていると思うんだけれども、それでも君は僕を追いかけてきてはダメだよ。」


「嗚呼、なんで逃げないのか?そう思うかもしれないけれども、僕も忙しい身だからね。やる事があるんだよ。」


「君はまだ知らないかもしれないけれど...僕の子豚ちゃんによろしくね。」


「それから、《静かなる都》(ウルブス・トランクイッラ)には、犠牲者はもう残ってないよ。すべて月の裏側まで今頃逃げている。できれば月の裏側に居る抜け出してきた人を回収して欲しいな。君の事だから準備はしているだろうけど、重ねてよろしく頼むよ。」


「それと...」


「僕は、君を愛してる。君が誰と居ようとも、僕の隣に誰が居ようともね。然様なら。」


...


...


...



久しぶりに聞く彼女の声を柔らかく、涙と嗚咽が込みあげてくる。


なにかと口にしようとして、町の至ることろで、爆発が起きる。


(。´・ω・)ん??


なんだ?


熱源と周囲にアルミ箔らしき破片が舞い、何処からともなくダミーバルーンが射出される。チャフ代わりとなったそれらの破片が、《ピスハンド》のセンサーの邪魔をし周囲の助けを求める市民の要請により、その動きが、消火作業へと置き換わる。


これなら...


急ぎ、南の宇宙港付近に隠していた機体に取りつくと、未だ放心状態の青葉の頬を


アンザスの尻の写真で叩き、眼前に突きつける


Σ(・ω・ノ)ノ!


「何よおじさん!!!男尻はやめてッ!!!」


気付け替わりのそれを押しのけた手を掴み


「漸く正気に戻ったか?MS戦になる、機体に乗り込め。今は、生き残る事だけ考えるんだ!!」


やや緩慢な動きで乗り込む青葉を見送り、自らも《デスペラード》へと乗り込む。と、動力炉に灯を入れて、


次々とコックピット内に光が、周囲の映像が映し出され始める。



向かってくる機影は、五機の《ピスハンド》と《グヤスクトゥス》と《傾城魚》(チンチェンユー)の混成部隊。


あれから時が経ちドライヴ稼働率は、制限限界までは達成せず、120数パーセント%を指している。


だが、これなら戦える。待っていろ...


噴出するスラスターの灯が、固着していた《ニヴルヘイム(霧の国)》の氷片が、次々と剥落していきその姿を垣間見せる。


続く言葉は...


「エンコード、《バラッド・オブ・ザ・デスペラード》」音声認識による識別により、使用者権限を確認。


コックピット内部では、身体の各部を飛び出したアームや、拘束具により、パイロットの手足を固定、

円筒状に包み込むのと同時に、機体の外部のバイザーや各種部位内蔵されるロックボルトが解放。


長方形のバイザーが上に上がり、それまで隠れていたはずのツインアイが露出。鬼の角の様に伸びバイザーから突き出されたそのアンテナの一部が枝葉となって発光しながら、

その威容を魅せる。


そして、覗く、線型は鋭く無骨で且つシャープな主顔おもがおの景観から分解解放を繰り返すその面差しは、


まるで牙剥く鬼の口腔を覗かせ、最後に後頭部から、一本のブレードアンテナが迫り出して、三本ツノとなり、其れまで、マニュピレーターと思われていた。


肩、腕、脚、背面にそれぞれ設置されている。隠し腕の内、腕部と肩部のマニュピレータと、バックパックの背面全体に刻まれる、


其れまで隠れいてたツインアイの鬼の形相の面が顕れ、そして、2本の腕と脚部には基部に隠れた鬼が踊り、腕部のマニュピレータが可変したアームカバーと、


独立機構のレッグーカバーとなるその機構にも鬼の面が顕われる。


接近する機影では、その姿を確認し、三本角だッと色めき立つ


その手には二つの銃口と、背面には、一対の楯と、九つの尻尾を模した基部から、漏れ出る光を後光として、


各スラスターと噴出口から湧き出す、光を以て飛翔す。


それに追従する様に蒼い機体色のカルペディエムが、飛び立つ。


機体のバランスを保持しながら、向かい来る機影に向かい。狙いすませた銃口から銃身とコンバージョンリング、


さらには動力より直結する為に、それぞれと接続され二基の多目的溶断ビームナイフから延びる


導線から導かれる様に、粒子が逆の順路を辿り、引き金と連動して、光輝く、瞬きが、射出する。


放たれた白虹の如き、一射は、月都市の蒼く輝く壁面を行く機影を綺麗にコックピットのみを狙い、触れた瞬間に、


頑強である装甲材をその収斂されて凝縮された熱量を以て、撃ち落とす。


誘爆する事もなく撃ち落とされた、機体が大きく傅かせながら、町はずれの一角へと落ちていく。


「青葉ッお守りだ。それを見て元気を出せッ!!!!」


一体何を見ればこの状況でと、視界に入ってきたのは、男尻を諸出しにする。アンザスのピンナップ写真だった。


「ちょっ?!なにこれ、こんなもの見せないでよッ」と、


嫌々するように操縦桿を掴み、苛立ち紛れで、接近してくる《ピスハンド》の一団へと、牙を模した大型ライフルを構え、


射出モードを拡散式として、複数の機影に向かってロックオン、それらを一度に射角に収めて、一射する。


狙いは、外れず、広範囲にまき散らされた粒子の雨により五機中の二機が、粒子を浴びせかけられ爆散する。


「青葉、一度ここから離脱するぞ。」


それから...と、つい癖で、月面都市への影響を考えて撃墜したが...ここには、連れ去られた人間は居ない。


急ぎ、月の裏側に居る人々と合流せねば、ならぬとばかりに、宇宙港の隔壁を通り、《静かなる都》(ウルブス・トランクイッラ)から離脱を試みる。


その最中、異常な状況が繰り広げられる。


手動で隔壁のロックを解除して、外にでた反瞬後、月都市全体に、何かの装甲材が突如多いはじめ、そして大地を揺るがすように、


振動を起こしながら何かが起動する。


スラスターを吹かせながら高度を維持し、その姿を見下ろした二人は、その光景に悍ましい何かを感じる。


その装甲材は、《デスペラード》のセンサーで、装甲材をデーターベースと照会。《傾城魚》(チンチェンユー)が装備しているオービットマインと同じ構造材を使用していることがわかるが、その錬成が荒いのか?最大望遠の視界に入ってきたものは、苦悶の表情を浮かべる人らしきデスマスクが...


「ちぃぃぃぃぃ奴らどれだけの人を...」


怒りに震える中、動き出した月都市から、幾重にも展開される機影が続々と羽虫の如く飛来する。


出撃する機体が一番危険な瞬間それは母艦からの射出するその瞬間だ、其処を狙って、叫ぶように引き金を引き絞り、


排出口から増え続ける一団を何機か見逃すも、その瞬間を狙い撃墜する。


互いに横並びに並び、連続射撃を繰り返すもその網を抜けて敵機が飛来してくる。


「青葉、防御は任せろ。このまま出撃してくる機体を狙い打ってくれ、迎撃は俺がする。」


一枚の《HHB》を青葉機の直掩に回すと自らは、もう一枚の《HHB》を機体前面に展開し盾とすると、迎撃行動に入る。


見ると、月都市...《静かなる都》(ウルブス・トランクイッラ)がその広大な面積を組み換え、砲門や武装を顕わにすると、こちらに向かって射かけてくる。


眼下から忍び寄る。粒子と実体弾のコントラストを描き、血の雨を降らせる様な赤く赫い。粒子の雨が天地を逆転するかのように、降り注ぐ。


光の柱を《HHB》の偏向シールドで防ぎながら、互いに一歩も引かずに、前へと出る。と


その機構を顕わにする。ここで一機でも多く落とす。周囲に展開してたであろう哨戒機が戦場に遅参してくる。周囲を敵機に包囲されつつも


アイジェスはフィットする操縦桿を掴む手を緩めず。引き金を引き続ける。


こちらの弾幕を抜けて飛来する機影に向かい。接近戦の為に、脚部の鬼面の隠し腕から光の刃を展開、逆さへと機体を反転させ、


接近戦を試みる《グヤスクトゥス》と《サテュラル(虎型)》の光剣と爪牙と組みつく動きを遮るように蹴りを叩き込む、


鍔迫り合いを繰り広げながら、空いた手から伸びる銃口で、接近を試みる敵機をまた一機撃墜する。


敵の動きも物量の追加も早くそして大量に表れ出でてくる。



衝撃で新しく手に入れた彼女からの置き土産のレコーダーのスイッチが入り、詩が、声が再生される。



「嗚呼、これは蛇足ではあるが、優しい君には辛い選択になる。僕が収集した街の声を聞かせよう。」





「君は優しいけど、手心は加えては...逝けない。被害者が、この世界全てが壊されてしまう。だから...」


「闘え、闘え、戦え。君と君の愛するすべてを守るために...【闘え、闘え、戦え、お前とお前の愛するすべてを守るために...】」


それは、この数か月の潜伏では、聞くことのできなかった言葉と意見であった。


激高し、怒りに震える。


反転し切り結ぶ刃が、ひと際高く発振し、機体を捻りつつ横殴りの軌道で、その防御ごと、敵に叩き込み


そして獲物を持つ手を切り払い、遅れて到達する後ろ脚のひと凪ぎで、胴体を真っ二つにし、さらに蹴りこんだ足刀を以て即答し、


さらに接近する敵影に向かって叩き付け、誘爆するそれに巻き込みさらに撃墜させる。


エンコードにより解放された機構に更なる一節を書き加える。


《奏魄魂業》(そうはくこんごう)...。且つて別たれそして、集うた。その肉体と魂を和合し、繋げる。


機体色を三色のトリコーロールカラーから、白と黒の二色の色分けされた機体が、発振する粒子の色をそれまでの緑から黒い指向性を持たされた粒子を赤雷の光が包み込むように変わる。


稼働するジェネレーターと直結されたそれらの弾数は有限ではあるもののジェネレーターの稼働が安定する限り、弾切れは起きない。


だが、撃ち放つその手が空いた左腕のマニュピレーターを稼働させ


小ぶり銃身を持つ銃を背面のランドセルへと差し込むと、自動的に装填される。…鉄の拳、アイゼルネ・ファウストと呼称される榴弾を装填。


狙いは敵が湧いてくる射出口に、撃ち放つ。


大型のビームライフルに比べ弾速が遅いものの広範囲に爆裂をまき散らすそれは、その出口を塞ぐには最適解となる。


次々と左右の銃口から光の柱と鉄の拳を連続射出し続ける。武装の弾数には限りがあるものの、それでも破壊工作としては、上々の成果を上げる。


それでも固定砲台と化した青葉目掛け、敵機の砲撃が何度も飛来する。だが、展開される《HHB》の防壁が悉く射角をずらして斜め方向へとずらして偏向する。


未だ、戦場には、羽虫の如く、砲撃戦を仕掛ける《デスペラード》に向かって群がり続けるその数は、周辺に浮かぶ星屑の海の如く、光瞬きそして、消える。


...


...


...


左右に機体をブレさせながら、空を変則的な変態機動で、迫りくる敵機に向かって蹴りと銃撃を叩き込み、逆落としで迫る敵機を背面の副腕より放射する


一撃で爆散し、その反動で機体制御を行い前方より迫る敵の刃を擦り抜け、すれ違いざまに銃口を向けて撃墜。


さらに同時展開される。テールユニット《ナインテイル》を展開。浮遊する。尾を模したその基部が、一斉に月面の宙域を舞う。


備え付けられた銃口を群がる敵の一体に不意に向けると、電磁加速を開始。加圧され、光り輝き擬似的に形成された電磁誘導のバレルが、


九つの基部がそれぞれ別々の機体へと取りつくと同時に射線上で蠢く敵の群れへと銃口を向け、音の伝わらぬ闇の宇宙そらで瞬光、瞬く間に撃発と伴に発射。


四方八方へ、九つの射線が踊り白と黒の光の影を残して彼我の距離を一瞬で0として、展開中の敵機複数巻き込みながらを貫き、撃沈する。


その間、三分と経たずに、大隊規模の機体が消失する。


それでも敵兵の数は増え続け、目まぐるしく変わる視界の中で目標として認識した敵影を沈め続ける。


機体制動に邪魔となるデッドウェイトを削減するため、追加で装備していた。実弾兵装の基部を一斉射撃による一打を以て、


敵、起動都市に向かい放射状に打ち込み、その爆裂を以て、開口部の破壊を試みる。


使用した端から、増加装甲をパージし続け、身軽になった機動力を以て、敵機の群れへと雪崩れ込んでいく、


増加したドライブユニットの稼働率の高さを生かし、安定的に供給される粒子の波動を放ち、宙に一陣の旋風を巻き起こしながら、


宙を逝く、敵も《マンティコレ(獅子型)》と《サテュラル(虎型)》を出撃させこちらの《falcis(ファルキス)》に対抗するべく、多数の思考制御砲台を、まき散らす。



(・д・)チッ


面倒なと、悪態を吐きつつも九つの基部を縦横無尽に奔らせ、銃口と、脚部の刃で鍔迫り合いをしながらも一機、また一機と墜とし続ける。


敵からの反撃は、急激な回避運動を伴う、起動で回避しつつ、避けられない一撃はクルリと機体の周囲を踊る《HHB》の楯が防ぎ続ける。


多人数を相手取り、単騎で奮戦するなか、敵の狙いを自機に引き付け続け,戦場の低空域で奮戦する青葉機へと敵が流れ混まないように奮戦す。


転進する戦場を横切り、それでも数機の機体が青葉機へと目標を変えて、その手の獲物で狙いを付ける。


その事に気付き、自らの随伴機として、展開する九つの基部のうち三機を援護の為に、撃ちだす。


振るえるように、姿勢制御と加速を繰り返す《ナインテイル》の一部が今まさにカルペ・ディエムの青葉機を狙う敵機の背後から接近すると電磁誘導のバレルを展開、敵機の挙動を制止し、


身動きの取れぬその機体を弾体として、撃ちだし、前方でビームサーベルを発振し斬りかかろうとする。


数体の機体に向かい射出。加速しその重力に押しつぶされコックピット内でエアバックが破裂し、


鮮血の花が咲く。


残りの6基の《ナインテイル》と共に、大きく弧を描きながら、左右に旋回しつつ、敵の照準を乱し続ける。


《ナインテイル》は、その狐の尾にも似たその基部のうち、装甲の一部が開き、煌めく無機物の裸眼が、


顕わになり、其処から複数の火線を放ち、湾曲するレーザーの網目が、追いすがる


falcisファルキス】の一団に降り注がれ、多数の目標が撃ち抜かれ爆散す。


それでも、徐々に敵の数が増えていく。



急激な逆進を掛けて 旋回中に急激な横滑りを加えて旋回半径を縮め、


旋回中のショートカット機動により、ループの頂点直前で失速横滑りして斜め旋回に移行し旋回半径を大幅に縮めると大きく旋回する敵の背面をとり、そして、一射し、さらにメインスラスターとバーニアそして


各マニュピレーターの孔から放出される、推進をもって、一撃離脱を行い、別の目標へと取りつき、


また、撃墜させる。



新たなる機影の数は、青葉が、移動砲台として、目標の開口部を狙い続け、破壊を繰り返し、


その発進口を潰して回り、敵に追い回される。僚機、《デスペラード》の援護に加わる。


随伴機となった《ナインテイル》と《HHB》を引き連れ背面...六時方向へ転身し参戦した青葉は、角を模した、大型ビームライフルを収束モードに切り替え、残された実体弾と共に一斉投射、当社比、1.3倍の濃密な銃火の雨を降らし、《デスペラード》を追いすがる敵機の背後から奇襲を繰り出す。


爆裂の華を咲かせ、僚機に迫る敵の数を着実に減らしていく。


デットウェイトとなる。装甲を一部着脱し、自機に迫る敵機に投棄して、背面飛行のまま向かってくる敵へ、大型ビームライフルの連射を射出。


燃料を満載した増加装甲が直撃すると同時に放たれる拡散式の粒子の雨に打たれて、起爆。


破損する装甲をまき散らしながら、また一機戦線から離脱していく。


(どうして。いつものアレをやらないの?この物量をたった二人でどうこうできるレベルじゃない?)


(などと、今頃は青葉は考えているだろう。だが彼女が目前に居る。しかし、あの言葉が引っかかる...)


(切り札には、代償が必要で、この場面で、修復を待つ余裕はない。後に何が残されているのかがわからない。俺には彼女の考えてることがわからない。)


だから...この程度の逆境、知恵と工夫で切り抜けないで、なんとする?


切り札を使わずにこちらの最大火力を叩き込むとすれば、足を止めて溜めの時間が必要になるし、


その際に防御の手が減る。それは同時に被撃墜の危険がある。


今ある手の組み合わせのみでこの逆境を切り開く。


まずは今ある状況、周囲を敵に囲まれている。つまりは...敵に叩き付ける弾が無数にあるという事だ。


だから俺がすることとは、《ナインテイル》の各機を稼働。



それぞれ


十二時方向で防御を固める《傾城魚》(チンチェンユー)


三時方向から鬣状の発振機構を構えて向かい来る《マンティコレ(獅子型)》


五時方向の背面より光剣を翳し突撃してくる《グヤスクトゥス》


六時方向で遠巻きに網状のワイヤーを投擲してくる《ファーマ》


二時方向から遠距離砲撃での飽和攻撃を試みる《ササボンサム》と《アマダツ》


十一時方向に敵、移動都市の直掩に入り、防御を固める《狗頭鰻》(ゴウトウマン)


十時方向で思考制御砲台を展開し、先行させ後方に待機する《サテュラル(虎型)》


八時方向から銃口を構え乱射する《アケファロス》


それぞれが包囲網を敷きこちらを撃墜しようと蠢くが、降りしきる光の雨を回避しつつその直上へ、するっと九基の《ナインテイル》舞い込み、そして電磁誘導のバレルを展開、敵機の挙動を制止し、強制的に、月都市への砲撃の弾へと変え、そして撃ちだし、絶命の叫びをあげる暇すら与えず。


着弾。レールガンの九撃が急激に戦場の趨勢を変え始める。


さらに舞いながら敵の攻撃を捌く本体、《デスペラード》が保持する。移動型マスドライバー...


《エリンの穂先》を使用目的外として使用。さらに、防御用に展開している《HHB》を合わせて


都合十二の砲身による。敵機を弾丸にした投射攻撃を敢行。

続けざまに誘爆するジェネレーターの爆撃に晒され、月都市部の装甲に亀裂とそして、その基盤へとダメージを叩き込み続ける。


敵は、只の弾丸の残弾として、突然の構成に、逃げ惑う敵機を追いかけ、そして弾にする。偶に抵抗の行使する敵機もガシャッと赤黒く煌めき発光するフレームにビーム攻撃を試みるが、その熱量が、露出した象眼部によって逆に吸収され、そして反撃の一射となって帰ってくる。


(。´・ω・)ん?


なんだと?ビーム兵器が効かないだと???各自、実弾兵装の展開に舵を切り。思考誘導の実体弾の雨が、


仲間を悉く弾にする。その悪魔に対して破壊を試みる。


その状況で、群れから離れた一機...《グヤスクトゥス》を《ナインテイル》の一機が鹵獲、


一対の《HHB》がバレルロールを繰り返し、さらなる加速を試みる。


その溜めは、一瞬。疑似電磁バレルに加速された弾体が、重力子の偏向フィールドに押し出され。


赤い稲光を纏った黒き閃光に包まれ、戦功をあげるべく去来する。


斥力と引力に包まれたその一射は、周囲の実体兵装と思考砲台を巻き込み、一塊として、目標。


多脚を顕わし移動を始めた月都市へと着弾する。


搭載された炸薬とジェネレーターが合わさり誘爆し、そして込められた斥力による反発の散弾が移動都市のドームに大きな亀裂を及ぼしそして、大穴を開ける。


何も攻撃手段がなければ、敵から奪いそして使えばいい。


これだけの敵がいるのであれば...それを利用すればいい。空に瞬く星々の如く瞬く機影を前に、《デスペラード》を駆る。アイジェスは驕る事なく笑う。


...


...


....



一方、月の裏側の都市部では、数人の人々を引き連れた。黒葬の衣服に身を包んだ女性が、長らく放棄されていたであろう


食料倉庫の一角に、居を構える事に成功していた。おそらく月都市を占領したときに回収したものの《人喰い》カルニヴォルス (carnivorus)が


捨てるわけにもいかず扱いに困ってこの一角に放棄したのだろう。


目的の場所を探るため、単身、各拠点や設備を渡り歩いて、宙に向かって定期的に、メッセージを送りながらこの数か月、ここを拠点にして活動していたが、一旦、此処からは別行動にしよう。と、走り書きしたメモ帳に、道すがらで出会うであろう難所と、扉のロックを開ける為のキーワードを書き記し、


問題は途中の生体認証をどう潜り抜けるか?途中で眠りこけている兵士がいるから、捕らえて、開けさせるんだな。というのは冗談で


この生体偽装マトリクスを渡しておこう。奴らは、該当の生体認証を排除できない。それをしたら《聖痕》持ちすべての認証が不可能になってしまうからね。


あとは君たち次第だよ


と、突き放すような、言葉を告げるが、


まぁ、その必要はないだろう。と、夫婦二人組を指さして、「君達なら恐らく抜けられるよ。外崎さん。」と、告げ、


「あなたはどうするんですか?」


「僕は、まだここでやることが、残ってる。こんな面倒事は他人に任せたいんだが、そうもいかないみたいだ。」


「アスミ…せっかく逃げ出したのにお前が行かなきゃいけない事なのか?」


「貴方…お父さん。是は私がやらないといけない事なんだ。あとで追いつくから、みんなと一緒に先に行っててよ。」


後ろ髪が惹かれる思いで、別れ、唯一人、基地内部の重要区画へと滑り込む様に戻り、心配そうなその姿が消えるまで眺め、そして歩み出す。


この区画には、巡回する兵士の姿があるが、その歩調、向き、息を吐いて休むタイミングの全てを予め把握、兵士たちが後ろを向き、監視カメラが別の方向を向いた瞬間に駆け抜け、手早く生体認証を行いパスコードを入力する事によりそのセキュリティを突破していく。


幾度目かの通路を曲がり、いくつもの区画を抜けていくと、既に深夜を回り、区画の灯も落ちていた。


ぐるりと、回る。数体の威容を魅せる。その壮観な素体。それぞれの機体の前には、何かの文字が掘られたプレートが覗く


設置されていた端末で、それらの機体情報を確認すると...。


《アンブレイカブル》(Unbreakable)・・・1.壊されえぬ者…機体特性・・・破壊不能...。武装各種...。


《アンフェア》(Unfear[fair])・・・・・・1.恐れざる者…機体特性・・・


《アンタッチャブル》(Untouchable)・・・1.触れえざる者…機体特性・・・接触不可


《アンレコニング》(Unreckoning)・・・1.裁かれぬ者…機体特性・・・


《アンタレス》(Ant Ares)・・・1.火星に対抗する者…機体特性・・・


《アンギフテッド》(Ungifted)・・・機体特性・・・与えざる者…機体特性・・・


...


...


...


十三番(XIII)…欠番・・・《アンチェイン》(Unchain)・・・繋がれざる者...機体特性・・・


端末にはそれぞれの機体を指示すコンソールの数字が徐々0へと向かってカウントダウンされ続けている。


やっぱり…機体の封印が...解放されそうになっている。その原因は、分からないけれども、これらの機体は事実上、通常の兵器での破壊は不可能。


爆薬を仕掛けたとしても、恐らく表面を焼け焦がせ、煤まみれにする程度の事しかできない。


僕は、これに再び、封印のロックを仕掛ける為に、其の為にここ迄やって来た…ロックは再び仕掛けるには...


この生体偽装マトリクスと、登録者の音声入力か手動でのキーワードの入力が必要になる。

意を決して、端末上に踊る文字列を組み合わせ、再度の封印を試みる。


あとは...この月面に存在する未来の機体は六体のみ...残りの六体は、敵の本拠地に収監されている。


遠隔操作での接触を試みるが...やはり、404ERROR NOT FOUND...


接続を拒否される。


「うーん、やはりこれは残りの六体を封印するには直接行くしかないね???」


諦めにも似た、ため息を吐き出して、思い出す。


この光景は、君が僕に、見せてくれたモノだよ?厭世家だった僕を変えたのは君だよ。と、


ふと、小さな手が握り返してくる光景が過る。


君の両手に抱きしめられた、感触を思い出し、彼の気配を確かに感じるけれど、もう行かなくちゃ。


貴方に会わなければ、こんな想いを知る由もなかった。でも、貴方に出会えてよかった。譬え、もう...■■■■とも...それでも僕は、君を想う。


懐を探り最近収録した音源を時限式で仕込むと、後ろ髪を引かれる思いで、月の重力に惹かれながら、一歩月の大地を踏み出しその場を後にする。


この僕の力も年々落ちてきている。息子が宿った時をピークとして、年々その力が落ちてきている。


恐らく...の時に、移ったのだろう。ふふふ、これは秘密だぞ。きっと君も気づいてない。


彼が何故欲せられ、そして何故あんなに...それは、別に宇宙の核心に触れて意識が拡大された訳じゃない。


彼は知らないが、彼の出身は地球だ。血筋も調べたが、特に其の血が特別な訳でもない。


だから、かつて新しき人類と呼ばれる其れとは真逆の人間だ。だから、彼が■■したんじゃない。新しい僕らが■■しただけなのかもしれない。


だが、それでもまだ出来ることはある。


必ず僕が、君を殺させないよ。だから、君も...


場面は暗転し、急ぎ奔る黒衣の女性は、停留中の輸送船を奪取して、隣接する宇宙港から、半ば無理やりに出航を果たす。


遅れて、同じように離脱していく艦影に向かい。


《人喰い》カルニヴォルス (carnivorus)の追撃が迫る。


戦闘中のアイジェスは、仄かに香る。懐かしい匂いを感じ取り、そして、その香しい香りが流れてくる方向を見る。


其処は遥か彼方の月面の裏側だ。


思考の感覚を投棄していた《ヨートゥーン》改め、《ウェールス・アルブス》(verus albus)と名付けられた其れへと繋げ、


感じた直観のまま氷片に紛れて偽装される。白と黒の縁取りが描かれたその機体を、本来あるべき頭部を喪ったまま。


稼働、二隻の船舶へと迫り来る。数機の《グヤスクトゥス》に対してその機体に備えられている48門の砲口を開いて、


一斉斉射。眼前で逃げ惑うそれらの艦影を綺麗に避けながら、ものの一瞬で、迫る魔の手を撃墜させると、


其の内の一隻を保護しようと動くが、先行する一隻は、差し伸べた手をすり抜け、遥か先の何処かへと去っていく。


一体どうして、その疑問を反芻する間もなく、続けて二隻目の船舶がその手に掛かる。


突然現れた正体不明機に対して、思考を繋げて、稼働したマニュピレーターから直接回線で、問いかける。


「本機はCarpe Diemカルペ・ディエム第5方面部隊所属、アイジェス=ブラットワーカーだ。行方不明者の救出に来た。船名並びに乗員の姓名を教えてくれ。そちらには、春幸、碓井=ユズリハ、ユミナリア=ニドフェアー、領五=羽住。玻座真=外崎。誰でもいい。この名前を知っている奴は、居ないか??」


突然現れた正体不明機に驚きつつ、その名を聴いて、歓喜する。


「その名は...私の息子の名前だッ息子は今どこに???」


「落ち着いて聞いてくれ、子供たちは、軍に保護されて今頃、L5宙域のコロニーへ移送されているはずだ。俺は途中で別れてきたから後の状況は知らないが、よかった。生き残りは、居たのか????ところで、其処に...ジジ...」


とノイズが混じり、コックピットに機体を掠める実体兵器の噴出光が、スクリーンを横断し、その危機を知らせる。


「すまん、今は、戦闘中だ...アスミという...を知っている...はいるか?」


戦闘中の緊迫感から言葉が詰まるが


「彼女は、つい最近まで一緒に行動していたが、一人でどこかへ行ってしまった。きっと...さっき...船が...」


通信が大きくぶれて《ウェールス・アルブス》(verus albus)の機体へと、実弾兵装と思われる直撃が見舞われる。


(・д・)チッ


「わかった...詳しい話はあとで聞く、船体を守りながら、合流する。最後に他に生き残りは居るのか?」


画面越しで、男性がフルフルと首を振り、通信を切り、


そうか...わかった...


船体を抱えたまま《ウェールス・アルブス》(verus albus)は、一斉に機体各部に備えられた《falcisファルキス》を放出。


乱れ飛ぶやや、大き目のそれを操り、光の榴弾を放出し、追撃として現れたそれらに対して牽制射撃を行いつつ、


迫る追手の目をその巨体を完全に表し、間違っても先行する彼女に向かわぬよう、自らに引き付け、引き撃ちを続ける。


一度、会話を打ち切り、


「お”じさ”ん”お”じさ”ん”答”え”て”?」


半泣き状態の彼女の声に、自らが戦場に居ることを自覚する。


「ああ、悪い。月の裏側で、要救助者を救出した。このままだと埒が明かない。」


「...合流まで、50分から数十分、このまま、敵を弾丸にして、削るぞ。合流後、最大戦力を以て!月都市《静かなる都》(ウルブス・トランクイッラ)を墜とす。」


(あれから数か月は立っている。予想では、そろそろ、友軍が、この宙域にいつ侵攻してきてもおかしく無いはず。)


(できれば到着前に決着を着けたいが...早いか、遅いか?間に合うのか?)


「えっ逃げないの?」


「このクソ禄でもない街は、都市は...。ここで墜とす。」


降りしきる閃光を《ナインテイル》の粒子吸収機構で、防ぎつつ実体弾の投射は、《HHB》と展開したビームシールドで防ぐ。


会話に夢中になり防戦となっていた状況を覆すべく奮戦す。


移動都市から投射される射撃の雨に対抗するべく、九つの砲門が踊り、展開される象眼部位をその躯体共々、構えた銃身に繋げ、そして固め、重ねた砲門から放出される粒子量の絶対数を増やしながら、宙を切り裂く、破滅の光耀が瞬き、多重に光り輝く星々の光を集めそして投射する。


舞う《HHB》により更に加速誘導された流れる重力子の一射が、脚部を顕わにし、蠢くように移動する月面都市の基部に、直撃。薙ぎ払い横断する一刀により、都市部全体に展開される偏光フィールドを備えた基部に対して圧壊消失するその威で押し切る。


機体を吐き出す開口部ごと、圧壊と溶断を繰り返し。シュウシュウと、熱量を伴う一撃により基部のフレームを晒し雪崩れる様に吐き出されるその出口を塞ぎ続ける。


さらに、投射される実体弾に対しての防御として、《ナインテイル》の各基部より、艶めかしくも、隆起する。


流動する粘膜を、四方八方へと展開しながら、流しそれぞれの基部を頂点として、互いを結び、投射される実体弾兵器を巻き込み、自機と友軍機を狙う攻撃を無力化していく。


(・д・)チッ


なんだ????と移動都市、奥深い、基部で指揮を行っていたジンボ=ルダカは、疑問に思う。戦場を映し出す。その光景に、こちらの粒子砲の一射は、吸収され、そして相手の反撃に使われ、そして切り替えた実体弾の雨は、敵の《falcisファルキス》が張る粘膜に防がれる。


あれは...《狗頭鰻》(ゴウトウマン)が使う。


メンブラーナ・ニグラ《黒膜》か???何故、あの機体が使える??


そして比較的大型の《falcisファルキス》だとしても、その基部に蓄えられるであろう粘膜量も、其処まで多いはずはない?


月都市の絶対的な物量を以て、これに対応する。


粘膜での防御で防ぎ集めた敵の物理弾体を、旋回する一対の《HHB》の中央部に固め。

重力を加速して投射する。重力加速砲として打ち出す瞬間に、


《デスペラード》マニュピレーターを翳しそれまで半固形化していた流体を分解。


無害な其れへと解体。


その束縛から放たれた弾薬類による。多重砲撃を繰り返す爆撃により、移動都市の砲門及び脚部に亀裂を入れ、堪らず。月都市の移動と砲撃がが停滞する


放つ粘膜を使い切り、物理防御の穴が現れる頃、唯一の友軍機である青葉機を庇いつつ、《ナインテイル》の各機が、《デスペラード》の背面部へと収容される。急速に漏れ出す粒子の光をまき散らし...


目標の攻撃の手が止まった...ここで物量で押しつぶそうと、クピドレスの一団は、目標に対して多重方向からの包囲戦を仕掛ける。が、急速充填を終え、再び尾へと変わるその基部から、実体弾を絡めとる。粘膜を放射状に展開。青葉機へと迫る誘導実体弾の群れが絡め墜とされる。


再びの防御に...ジンボ=ルダカは、悟る...あの機構は、機体に接続することで補充が可能なのか?????


その湯水のように湧き出る原資はなんだ???まさか?物質変換機能を有しているのか????その疑問に答える者はおらず。


再度の《ナインテイル》を展開する


このままでは、同じ展開の繰り返しになる...端から崩していくのも良いがそれだと、去り行く後ろ姿を見送った彼女に追いつけない。


ここで一気に巻き返す。


《一葉灼伏》…5%、


「青葉、離れて居ろ。一気に決める。」


「その未来、想像し、造り上げろ《スヴァルトアルフヘイム(鍛造の国)》ッ!!!」


五分限りの暴風雨に酔い痴れろ。



遠く離れた場所から急行する《ウェールス・アルブス》(verus albus)は、背面部に急遽増設された。


移送用のラックへ、逃亡してきた輸送機を収めると、機体に搭載された《黒曜鉄鋼》(ブラックライト)製の炉心が


共鳴する様に強制発振。


六基のジェネレーターをフル稼働して、彼我の距離を一気に詰めはじめる。






震える様に発光を繰り返し、黒と白の二色に染まった機体から覗く、赤黒いフレームの基部より、枝葉の様に生えるフレームが敵味方それぞれの機体を覆い尽くさんばかりに伸び続け


徐々に何らかしらの形を形作る様に、そのフレームを自由自在に加工し始める。


その選択を選び取り、作り出した得物は...


《トールハンマー》


打ち出す錬鉄の火花の如く散る命は、その無情をよしとするのかと、問いかけ続ける。


その手に形成されし、得物は、無骨な浅黒く、赤雷纏し、柄の短し戦鎚が、一丁。


掴み取りし、鉄塊と見紛う。


歯車踊るその躯体を一振りすると、稲光を纏い、眼前に広がる一面の装甲を施された異貌の都に、降り注ぐ。


明滅する光は、一陣を吹きすさぶ風と共に、ひと波の波動を伴い、展開される。


その光景を眺めていたジンボ=ルダカは、苦笑する。何を思って今更雷撃とは、この移動都市は、完全なる絶縁処理を施され、


雷程度の一撃など、小枝に吹き付ける風の様に、ただ揺れるだけで終わる。


防御が固くその防備を抜けないが、いずれ物量で押せば、奴の稼働限界が訪れるはず。この都市は、無数のクピドレスが操作し、


砲撃を行っている所詮は相手は二人、そして目標たる機影以外の動きは鈍く、その動きは精彩を欠いている。


自らの出自を見せつけられ、一時的にショックを受けているはずだ。


すぐさま発令所へ指示を出し、目標を蒼い機体色のカルペディエムへと狙いを集中させる。


飛来する粒子砲と実体弾の雨が、目標となって降り注ごうとしていた...


...


...


...



次の瞬間ガクッと、移動用の歩脚が、動きを止め、展開していた砲門の数々が沈黙し、そして榴弾などの実体弾を装填してた砲身に降り注ぐ


雷撃が火花を上げて誘爆する。


一体何が??激震をまき散らしそして、反瞬後、発令所や街の夜景を彩る電飾の灯が落ち、無明の暗闇へと突き落とされる。


「ダメージコントロール、被害状況を報告しろッ!!!」ジンボ=ルダカは矢継ぎ早に、支持と状況報告を求めるが、


目の前のモニター共々、その灯が一斉に消え去り、その声はどこへも届かない。



??????????????????????????????????????????????????????????



電磁パルスのEMPを使用したその雷撃の雨は、電流の直撃を受けた電装のデータを吹き飛ばし使用不能へと変えていく。


その巨体の動きと、その周囲に展開されていた機体全てに満遍なく放射され、そして、それらの機体は同様に、電磁パルスの直撃を受け、使用不能のブラックアウトへと陥る。


スラスターのひと吹きすらできずに、月面の重力に惹かれ、次々と機体が月面の大地へと堕ちていく、唯一雷撃の効果範囲外に居た蒼いカルペディエムは、その光景を眺めながら、狼狽える。


未だ精神的な不調から回復できないまでも、ここが勝負所と感じ取り、必死に引き金を絞ると、放射される粒子砲の一射を浴びせかけ、モノ言わぬ置物へと変わっていく敵機を撃破していく。


展開される雷轟の光の勢力圏外に存在した機体たちは、放射する方向を3時方向、12時方向、10時方向へと切り替えながら、その射程の穴を埋めるような動きを警戒し、徐々に月面都市より離脱していく。


月面都市の発令所では、予備電源と、電装の再起動を掛けているが、ERRORの警告音と文字が踊り、通常の稼働状態とはかけ離れ不具合を吐き出し続ける。


爪を噛み、必死に対抗策を考えるジンボ=ルダカは、はっとなる。


「裏側で解析中の機体は出せないのか????」


「それが...原因不明の何者かの介入により、接続とデータの接続ができなくなっております。」


(・д・)チッ


ここでアレを喪う分けには、行かない。


急ぎ思考をまとめると、


「予備電源と復旧作業は、解析中の...機体の保持及び、脱出指示のリソースに集中させろあれは、絶対に落とさせてはならん。」


瞬く雷霆の一射を広範囲にバラまきつつ、一度に戦場の全域を覆えない不利を、放射する回数と照準を変えて浴びせかけ続ける、稼働限界まで、180秒...遠くから稲光を纏い、急激なスピードで肉薄する巨大な白磁の城たる。


《ウェールス・アルブス》(verus albus)は、それまでの巡航形態から、起立する巨人の躯体として立ち上がり、同時に頭部へとその機体を変形させ接続を試みる。


その隙に、苦し紛れで放たれた一撃は、難なく浮遊する《HHB》と浮遊する思考砲台へと変わったライフルに阻まれそして撃ち落とされる。


都合、戦槌と一対の《HHB》と、二丁のライフルに九基の《ナインテイル》が、その巨体の周辺を円周状に公転を繰り返し、事態の好転を試みる。


万を持して現れた巨人は、その砲門を一度に展開。


無数の砲門から放たれし閃光は、敵の防御をまるで炙るバターの様に(たちま)ち、溶断し、そして爆破させていく。


反撃として敵から降り注ぐ粒子砲は《ナインテイル》で吸収するまでもなく、展開された偏光フィールドの防御と装甲にに阻まれ、防備を破れず、唯々、その命の灯が消え去っていく。



其処に残された光景は、唯々、駆逐する為だけの蹂躙劇。壇上に上がりしは、


《人喰い》カルニヴォルス (carnivorus)の断末魔を楽器にして奏でられる。演奏のみ、


「動け、動け、なんで動かない?くそっ何も見えない。あっ(光だ...)」照らし出された光と共に、この世から消え去る。


「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”なんでだぁ。まだ...」


「クッソ、動かねぇ、こうなったら脱出するしか...」脱出用のレバーを引く音・・・・(。´・ω・)ん?これはバナナか?はたまた腸詰めなのか?おやつにと持ち込んだそれを掴み、


握りこんだ次の瞬間、それを握りしめたまま、爆炎を上げながら四散する。


破裂した機体から弾かれた装甲版が、身動きの取れない機体に向かい降り注ぎ、次が自分の番ではないのかと?狼狽える。


圧倒的な攻撃量で敵を押し切り、そして、思索する。


この大火力を以てしても、月面都市を屠りきるには火力が足りない。重ねて告げる言葉で押し切るか?と、思い至った瞬間、


センサーに感アリ...《R.I.P》を先頭に、月都市の直上からCarpe Diemカルペ・ディエムの艦隊が、接近してくる。


タイミングよし、動力よし、射角よし...


指向性を持った雷が戦場を横切る時、その紫電に絡みつくように、遠くから徐々に近づく艦影と重なり、電磁誘導されるがまま...


残りの活動限界...90秒。



「一体どうしたことだ?操舵手、勝手に動かすなッ」ナンネン=ハイマンは、激高しながら注意を放つ


「未だあの戦闘らしき光がなにか?判明してないんだぞ?」


「違いますッ!船体が何かに動かされる様に、勝手に動いてますッ!!!」


一体何を...言っている???


(。´・ω・)ん?


「なんだ、機関員、今は、それどころじゃ...なんだと?!勝手にメインジェネレーターとサブジェネレーターが稼働してるだと?」


何が起きてる...?


火力が足りない。あの許すまじ、存在を焼き尽くすには、雷霆の一撃だけでは足りない。


引き寄せるその巨人の手に《R.I.P》が収まり、その銃口を、月都市の中心部へと狙いを付けて...


「嗚呼、これは蛇足ではあるが、優しい君には辛い選択になる。僕が収集した街の声を聞かせよう。」


「今日の薪は、よく燃えるな。奴らは人間じゃないただの薪だ。有効利用しているだけで、俺たちの役に立つだけありがたく思えよな。」


「こちらの素材は何かね?ああそうかこれは6歳児の年代物か?できれば6ヶ月物が良いのだが、致し方ない。所詮は薪だ。」


「一方的に搾取されるのは薪が悪い。奴らは不完全な生き物だ。薪としてくべる方がなんぼか有効活用できるだろ。」


「我らが肥え太るのは必定。薪など勝手に生えてくる。なくなれば、刈り取れば良い。」



「君は優しいけど、手心は加えては...逝けない。被害者が、この世界全てが壊されてしまう。だから...」


「その引き金を引いて、引鉄を引くのは貴方よ。」


静かなる決意を以て意を決し、引鉄を引く。そこに一切の呵責なく。ただ、冷静にそして慎重にその狙いを付ける意思のみがあった。


《R.I.P》に備え付けられている安全弁を解放。安全装置を解除し、放出されるジェネレーターの出力を全て艦首に備え付けられた砲門へと集中。


紫電を纏いつつ残された時間に放出される粒子をさらに加え、唐突に放たれた。開戦の狼煙ではなく、戦闘を終わらせる終焉の嚆矢を打ち放つ、


船体に内蔵された動力と共に、共鳴する大型の六基のジェネレータと《デスペラード》本体の二基の動力炉の出力を合わせて放つその一撃は、広大な範囲を覆う月都市《静かなる都》(ウルブス・トランクイッラ)を容易く、只の鉄屑へと星屑をまき散らしながら、両断する。


崩落する基部が、圧し折れる歩脚、誘爆する火薬庫、光に貫かれし人影は、只のその痕跡を僅かに影として残して消失する


宇宙空間に放り出される無数の《人喰い》カルニヴォルス (carnivorus)の群れは、次々とスプーマを展開し、難を逃れるも、叫び声をあげ、この期に及んでも、糧食を貪りくらい。


光の柱に追い立てられながら、幼子は叫ぶ、まだ食べたい。食べたいのッどうして???何が起きている???のか?状況を把握することもなく


逃げ惑う人々は、奔り、暴徒となり、小さな命を踏みつぶし、壁際に追い込まれる。


その状況から逃げ惑う人々は右往左往しながら子供を抱えた市民の姿が、踊る。死の舞踏を踏みだすも、その命は、犠牲者の犠牲を顧みることなく


散り行く滅亡の光が着弾。


目標物へと解き放たれる虹の光は、原子分解を行いながら、さらなる横なぎの一撃を照射し続ける。


かつて人類が偉大なる一歩を踏み出したその場所に建設された。その都市は、《人喰い》共の巣窟と化し

大きく傅く躯体...全長...数百キロにまで及ぶ月都市《静かなる都》(ウルブス・トランクイッラ)が斜めに切り取られ崩壊する。


さらに、その照準を月の裏側《南極エイトケン盆地》へ目標を変え飛躍させ。稼働する出力のすべてを次射に込めて撃つ、アイジェスが操るコックピット内のコンソール上では、《Fictumフィクトゥムドライヴ》


そう表示された外部、動力炉が、繰り出す膨大な出力を暴れまわる勢いのまま、自転で生じるコリオリオは、自転スピードの遅い月面では無視できる。問題は遥か彼方の射線上に居並ぶ複数のクレーターの隆起する峰。


軌道射撃計算を行い。直線で飛来し障害物となるその淵をその出力で押し流し、射線を阻むクレーターの縁をその隆起する壁面ごと撃ち抜き問答無用で、穿ち続ける。


その絶対の熱量は、地形の裾野を、分解し、ガラス状に変質させる事もなく、只の粒子の塵へ変えていく。


灰を灰として、塵は塵に、その絶命の声を、炉にくべてひたすらその命を奪い去る。


崩れ落ちる山麓の破片は宙に滞留することなく消滅、消えゆく無数の命と、輝に包まれし、断末魔の声を上げる者どもに慈悲はなく、唯々、降り注ぐ光の奔流をもってその対象をこの世から消し去る事にのみ注力する。


投射される粒子が、何を物語っているのかは?未だ不明のまま、破壊の極光は、地軸の磁場を乱し、巨大なオーロラを、月面に映しだす。


その光景は、その行為が起こした無残さとはかけ離れ、酷く美しい一幕だった。


その頃、月面の宙には、何者かが放った空へと昇る流星が、多数放出され、その行方は、用途知れずその死傷者の数は...。数千万から一億以上。


駆け付けた艦隊は、何もできないまま声を上げ、ナンネン=ハイマンは、絶叫する。


「あれは、アイジェスなのか?ッ、何故だッ!!何故?要救助者を巻き込んで撃った??!?」


機体後部の収容用ラックから、輸送機をそっと押し出し、《R.I.P》へと送り届ける。


と、


限界時間を経過し、自らは、何も言わずに、一路、月面を離れ、飛翔する。



その後ろ姿を見送る。友軍の絶叫が木霊し、そして、その旅路から只一人だけ帰らない。



向かうは彼女の向かったその先へ、物語は、悲しげな声を残しつづく。


毎月、月末最終日に2話更新予定。

誤字脱字、誤りがあったら修正するので、教えてください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ