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無法者の詩  作者: 唯の屍
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第十話「巨神の魄動」

コックピット内は、左右に振り回され徐々に機体の制動を抱える事も無く、次々と、メインモニターの画面が途絶して


絶対なる死をその身に、感じて、少女は震える。


死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死

死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死

死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死

死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死、死ぬ...。



閉じた眼を見開くと、視界一杯に、誰かの姿見が見える。


朦朧とする視界の中で、一言、言葉が...届き...意識が途絶える。

 

「大丈夫だよぁ【甘いな】」


破損した頭部から、その姿を優しい手触りを以て、掬い上げると、コックピットハッチを開き、その身を何とか、備え付けられていたサブシートへと座らせると、


攪乱する氷雪の嵐の中で、空から降り注ぐ光のカーテンは、閉ざされた雲間から注ぎ、一塊の機影がその姿を魅せる。


空中で、各部のマニュピレータから噴出される光りを放ちながら、それぞれの基部を折り畳み、


その背の大きな鬼面が、撃墜したはずの巨人の且つて頭部のあった場所へと収まる。


Multi-Purpose Typeマルチパーパスタイプ及びAll-Compatible Typeオールコンパティブルタイプのコネクト接続を確認


コックピット内のコンソールに、接続、オールグリーンの文字が踊り


取り憑いたその機体を、コックピットの向きがくるりと反転し、眼前に広がる光景を眺めながら、


此方に向かってくるもう一機の巨影に向かって、腕を翳すと、その腕部と指から放たれる、光劫と眩い閃光が放たれる。


敵機はその装甲と偏光フィールドを稼働し、その攻撃を凌ぐも、噴出するその口径から踊る。熱量を持った粒子砲に弄られ、詰られ、そして其の装甲が、


氷壁の粒子による金属剥離現象が加速、その体表を覆う頑強な、装甲が剥落していく。


さらに左腕を振るい、周辺に扇状に放たれる閃光により、巻き込まれた地上部隊が、その熱に浮かされ、次々と、搭載している。ジェネレーターを焼き付かせ

そしてこの世からその罪を洗い流すかの様に、駆逐していく。


先に延ばした右腕が、流れるかの様に、握りこぶしを作ると。そのまま数歩、地響きを立てながら1時方向へと、その歩みを進め、


特大の衝撃を伴ったその拳を鼓舞しながら、それを叩きつける。


崩れ行く機体に、更なる追撃として、コンソールの画面一杯に広がる《FreezingBite(フリージングバイト)》の発動を知らせる文字列。


雪片を巻き散らしながら放たれる巨人のその牙が、装甲の強度を急激に劣化させ、そして抉る様に、


機体内のジェネレーターの一基を抉り取る。そして空いた左腕を上空に掲げると、いつの間には放棄され、その場に漂い続ける


その巨体に比べればやや、小ぶりなものの確かにその巨人の手に馴染むサイズのその工具を掴むと、其のままの


勢いの侭、敵機の頭部目掛けてそのくわえ部で挟み込むと、そのまま圧壊。


コックピット毎、問答無用に、引き抜き、頭部を引きちぎると、そのまま投棄。


【相変わらずお前は、甘いな...】


(この声は、どこかで聞いた事がある。酷く懐かしく、そして胡乱な言葉だ)


(あれは、たしか…記憶が繋がっていく。)


それは大体10年前後の時期の話、殺戮の7日間と揶揄される。その日は、茹だる様な暑さと妬けに騒がしい日だった。


「まったく暑くて堪らん。なんでこんなに暑いんだ?」


「そりゃあ、コロニーの空調が老朽化で、ヘタってんだろ。」


パンツ一丁の姿で、小型のローダーを動かしながら、尻が揺れる。


「なんでも新しくこの宙域に資源衛星を引っ張ってくるって、息まいてる奴らがいるからな、確かなんて名前だっけ?」


「まぁそれは良い。学生なのに働いてる。苦学生には関係ない話か?せめて乳首は隠せよ。性感帯だと思われるぞ?」


「ほぃ」


っと、其れ迄かぶり付いていたフルーツサンドから、バナナの切り身を抜き取ると、そっとその部位に貼り付けて隠し始める。


「おぃ、喰いもので遊ぶな?!!」


「あっすいません。」と、貼り付けた。バナナの部位をパクっとたぶる。


そんなややおかしな挙動を見せる男の姿を他所に、


其の頃、老朽化したコロニーの補修する為にその原料として、このコロニー、ミーミルでは、アドサドレ…資源衛星の一つとして、L5宙域に牽引されて来た。


そこで利益を得る為の既得権益の奪い合いが発生する。


一日目…


それは、他愛もない言い争いから始まった。


牽引してきた作業者は、自らの権利を主張し、そして財閥の人間達は、突如、横取りするかの様に、その権利を主張し始める


何故ならば、その牽引事業に使われた、船舶は、自分達のモノであるからだと...。


その実、して居る事はお互い大差ない。自らの権利のみ主張すれば、他人の権利を踏みにじり、逆にその権利を尊重すれば、自らの権利が踏みにじらされる。その事実に誰も、気付かない。そしてその争いに、駆り出された一部の軍閥は...。


ヴェリタス…淡いクリーム色に塗装され、各部がディエムほどの先鋭的なデザインでもない一機が、


突如、デモを行っていた。作業者たちに向かい…本来であればその既得権益を得る筈だった人々に、突如、その標準装備されていた。


外部装甲として付属するバルカン砲の…機銃の掃射を行い。何の武器を持たぬ人々をズタズタの肉片へと変えていく。


それは、何故起こったか?今から出はうかがい知れないが...話をまた聞きする限りでは、練度の低い、新人が、勇み足を行い。


その行為を行ったらしい。


怒りくるった人々は、作業用のMSを駆り出し、違法な武器で武装し、デモの鎮圧に向かった別の機体に向かい、ビームライフルの照射をコロニー内であるのに、強硬。


コロニー内に穴が開き、悪鬼の所業の如く阿鼻叫喚の地獄絵図と課す。次々に補修用のトリモチを使用しての補強を試みるが、

その数よりも、コロニー内外で争う数の方が多くなり、鼬ごっことなり果てる。


最初に一日で、巻き込まれた一般市民の100人以上が死傷した。


二日目…


互いに引けなくなった。作業者は、旧式だが確かに稼働するヴェリタスを要し、そして財閥は、軍閥に対して、救援を請い、最新機であるディエムを多数展開


最初に引鉄を引いたのは、いずれかなのか、其の頃には分からなくなった。そしてその戦闘は激化する。


コロニー内では、自転によって生じるコリオリオなどの影響で、普通にスラスターを使用したジャンプの着地位置が僅かにズレる...

其の為禁止されているはずだったが、勢い余った各勢力は、コロニー内での跳躍を解禁


慣れぬ新兵が、バランスを崩し、建物に突っ込み、更なる死傷者を産み出す有様。


互いに一歩も引かずに、撃ち合いになる。


頑強な電子殻チタン合金セラミック複合材に護られていたはずの装甲は、その一撃を浴びて、


苛烈なる火を浴びるかの如く、舞い散る粒子に襲われ、次々と互いに融合炉を避けて、ピンポイントでのコックピットを狙い被害を


抑えようとするが...。それでも練度の低い新兵たちは、直前で狂乱し狙いが外れた一射が、


運悪く互いの機体の融合炉を撃ち抜き爆散する。その爆破に巻き込まれ市民が、そこの残る影だけを残して、消え去った。


不毛な争いは続き…


三日目…


騒動は、コロニー内外に知れ渡った物の一般人はシェルターへの避難を行いつつその行為に対して非難を行う。


それでも、コロニー内外を補修する作業に対しては、休む事は許されず。呼び出された青年は、


通勤途中で、目の前で、放たれたバルカン砲の音を聞く、


空薬莢が降り注ぎ、避難する為に歩いていたであろう少女の身体を掠り、


そして押しつぶされ肉塊になる寸前、その脚は既に走っていた。


飛び込み気味に、突き飛ばし事なきを得るが...。


それまで、コロニー内でもくもくと仕事を行っていた。青年は、突如、ブチ切れた。


「うるせぇぇええええええええええぇええええええええええええええええええええ。喧嘩なら自分達だけにしろ。名誉も既得権益なんて知るか?」


「他人に迷惑かけんじゃねぇ。そんなに欲しかったら、分け合え、何故それが出来ねぇ。」


「そもそも作業員も財閥も、軍閥も、誰一人が欠けても、出来なかっただろ!!!!!!」


「自分達の事だけしか、考えてねぇじゃぁねぇか!!!!知らずに巻き添えにされる人達の事も考えろよ。糞がッ」


「おいたん、なんでおこってゆの?そしてなんで裸なの?」


「ありが...」


同行していた母親らしき、女性に引き渡し、その問いに答えぬまま、良いから逃げろッと一、声残して、


上着を腰に巻いた上半身裸の怒りに震える青年は、数日前に、渡されたその機体に期待を以て乗り込むと、唯一人、その戦場へと駆け込んだ…


それまでの戦闘で、既に死傷者は、うなぎ上りに増え続け、三日間の戦闘で、既に十数機の機体が喪われ、粒子砲の露へと消え去っていた。


宙空を舞い、互いにその銃口から、粒子砲を撃ち合う。


銃身下部に備えられたエネルギーパックから流れ出た加圧されたエネルギーが増幅器を経過し、


エネルギーを増しつつ、装填された粒子がコンバージョンリングを経過し、砲身により、定められた目標に向かて


一直線に、放たれる。その狙いは、僅かにそれ、人員を満載したシェルターの外縁部へと突き刺さる。


一度目は耐えきるモノの、二射、三射と互いに出鱈目な目標に向かって撃ち合う。


其処に一機の鬼が現れる。その姿は三本角の鬼面に、三色の艶やかなトリコロールカラーの機影。


...


...


...



時間を少し巻き戻す


怒りに震え、以前老人から受け継いだその機体に乗り込むと、


さて、動かし方のマニュアルはある程度確認したが...。たしか…


そのぴったりとあつらえたかのように自らの身体にフィットしたシートを沈み込ませながら、


同じく手に馴染む操縦桿を掴むと、機体内で、声が響き渡る。


「音声認識による識別に関する使用者権限の登録を行ってください。キーワードは...」


ん?


キーワードか?怒りに震えながらも、冷静に言葉を選んで…


想い描いてその一節を絞り出す。


...


...


...



なぁ、■■■、いつも、口ずさんでるその詩、なんだ?あまり聞いた事のない言い回しを使ってるし


それでいて不思議な語感を感じる。


「嗚呼これはね、僕が、謳う。連作の御唄だよ。そうだね。無法者の詩。とでも名付けようかな?」


「おいおい女が僕って、男と間違われるぞ?」


「やれやれ、君も偏見が過ぎるな、可憐な僕を目の前に、男と見間違える様な人間は、此の世に君しか居ないよ。」


「無法者て?物騒だな。」


「で?その詩は誰の事を詠ってるんだ?」


「それはね?秘密だよ?」


...


...


...


「音声登録を受諾しろ。キーワードは...エンコード、《バラッド・オブ・ザ・デスペラード》ッ!!!!」


音声登録、受諾…音声認識による識別により、使用者権限を確認。


コックピット内部では、身体の各部を飛び出したアームや、拘束具により、パイロットの手足を固定、円筒状に包み込むのと同時に、


機体の外部のバイザーや各種部位内蔵されるロックボルトが解放。長方形のバイザーが上に上がり、


それまで隠れていたはずのツインアイが露出。鬼の角の様に伸びバイザーから突き出されたそのアンテナの一部が枝葉となって発光しながら、

その威容を魅せる。


そして、覗く、線型は鋭く無骨で且つシャープな主顔おもがおの景観から分解解放を繰り返すその面差しは、まるで牙剥く鬼の口腔を覗かせ、

最後に後頭部から、一本のブレードアンテナが迫り出して、三本ツノとなり、其れまで、マニュピレーターと思われていた。


肩、腕、脚、背面にそれぞれ設置されている。隠し腕の内、腕部と肩部のマニュピレータと、バックパックの背面全体に刻まれる、


其れまで隠れいてたツインアイの鬼の形相の面が顕れ、そして、2本の腕と脚部には基部に隠れた鬼が踊り、


腕部のマニュピレータが可変したアームカバーと、独立機構のレッグーカバーとなるその機構にも鬼の面が顕われる。


都合、八つの顔と、六本の腕、偽装されていてそれらが開放され、異形へと変形・変身、いや、変態する。

何かを語るように其の不思議な表情を垣間見せるその機体は、八面六臂の修羅と為らん。


そして、脳裏に一説の呟きが響き渡る。


【一葉灼伏、と唱えろ。それで貴様に全てを無為に換える力を与えよう】


【そして、貴様はこの事を、全て忘れる。その時が来るまで...。は、静かに眠れ。】


「一葉灼伏?!...。まずは...5%」


爆発的に広がる粒子の光が、コックピット内部まで浸透して、乱れ飛ぶ、光と多幸感に包まれ…


機体の各部が、紺鼠こんねず色の機体色から、三色の鮮やかなのトリコロールカラーへとその表情が変わり始める、


その変色が露わになる瞬間に...一斉に箍が外れ、確かに何かが起き、それが起動される。


機体内部に搭載されたジェネレーター内部での光景を、それを識る。


中央部に鎮座する。赤黒い表皮を備えた樹木に向かい。内部から伸びる


マニュピレーターが起動、その腕部で、樹木の一部を切り取ると、


樹皮から流れ出る血の色に似た樹液を流し、心なしか痛みに耐えて叫ぶ声が響き渡る。


ジェネレータ内部のかつての文明で使用された蒸気機関の火室の様に、開閉する投入口が開き、手折った枝を放り込むと、


炉の灯によって、焚き付け、一気に貯蔵、放出される。その粒子量が爆発的に、推し広がって逝く。


それまで機体の姿を隠蔽する為に生い茂る樹木の影に隠していた、機影が、噴出する。衝動を纏った推進器の放出により、

回りの樹木を吹き飛ばしながら、飛翔を開始。


一気に噴出される推力に押し上げられ。コロニー内の疑似重力の楔を引き千切り、其れは、眼前に広がる。


騒動に身を躍らせ、そして、粒子砲の撃ち合いを行う...。その中心地に着地すると、左右にその手を翳すと、


唄え、詠え、謳え、その声が枯れる迄、その命尽きるまで、讃える様に謳え、とばかりに、


その力を、その機能を、解放させる。


「その光を以て、その争いを静めろ、アールヴヘイム《光の国》…起動」


降り注ぐ粒子の雨が、空中で、寄り集まると、十字を描く光の尖塔となり、戦闘を繰り広げる、数々の機影、ディエム、ヴェリタスの群に


豪雨の様に一斉に放射され、その手に構えたビームライフルの一撃が、次々と霧散し、構えた光の刃がその形を維持する事出来ないまま、途切れる様に、柄から、


僅かばかりに噴出する光を残して、霧散する。


その現象に、慄き、すわ?機体の故障か?と、整備兵へと悪態を吐くが、その間もなく、光の尖塔に触れた瞬間、


それが、光の粒子へと変換され、機体のジェネレーターを爆散させる事なく、穿ち貫き、消失させる


光あれ、輝あれ、晄あれ、その争いに...。終止符を告げるべく放たれた機影が、


急制動を掛けて、反転しつつ、繰り出した蹴り脚が、ディエムの基部の一部を抉り、光の粒子へと還る。咬合する光劫を放ちながら霧散す。


突如現れた、見た事も無い機影に、敵味方区別なく、慄きその存在が、自らの敵の認識し、構える銃口を並べ、応戦の火種をばら撒くが


その全てが、空中で霧散し、背後からの攻撃を直前に目視することなく、回避、そして無為に終わる。


ビームにより熱量兵器は、使用不能とみて、実体弾による兵装を装備してた、機体が、武装を切り替え、襲い掛かる。


その間にも、ビームの刃が、短くなったものの、使えなくなった訳では...と振りかぶり襲い掛かってくる機影に、


逆さの侭の軌道で振りかぶる拳の一撃が、正面衝突、その刃を減じられた、柄元ごと、刺し貫く様に拳が突き上がり、


電子殻チタン合金セラミック複合材の装甲の装甲を、まるで飴細工の様に溶解、溶断し、そしてそのままジェネレーター部のみ

抉り散らかす。


「なんだ?こいつなんだ?何故襲ってくる?!」


「来るな来るな、あッ来ちゃう来ちゃう...。凄い、大きい...。」


上下左右に振り回されながら、視界一杯に広がる閃光を観たモノは、その例を漏れずに、言葉を漏らさず、糞尿を漏らし、そして果てた。


「こいつは...威力が強いな...狙いが外れれば、殺しかねない...」


【なんだ?未だに、殺すことを躊躇するのか?】


「おい、お前、アドサドレ…資源衛星の権利を…その名誉と利益を奪うつもりなのか?」


オープンチャンネルで話しかけられたそれに対し、男は答える。


「別に俺は、そんな名誉も、権利も、基本的には興味はない…(他人の権利を侵害するつもりはないからな...)」


「ただ、俺は火消しと言う自分の仕事をする。そしてその仕事の在りか、所在について主張するだけだ。」


「誰に知られようともしなくとも、誰にも語られずともな。其処を勘違いするなッ!!!!!」


その声に、意に添わぬとばかりに反論の声を上げるが、その声を耳にしながらも、青年は粛々とその作業を続ける。


降り注ぐ実体弾の雨を空中で、誤射に巻き込まれぬ様に、その手を翳し、握りこぶしを作ると、掌にある噴射孔から放たれる閃光を


そのマニュピレーターの繊細な指で掴むと、照射される衝撃を伴った一撃が、収束する粒子の流れではなく、拡散し降り注ぐ弾体と、


正面衝突を繰り返し、その余波を防ぐ、機体を横ロールで回転させながら、地面に着地すると、その両脚と片手でその反動を受け止め、


更なる迎撃を仕掛ける。


突如現れた、トリコロールカラーの奇怪な機体に向かい。銃火と実体弾の一斉掃射を行い。


もはやコロニー内での戦闘であることすら、忘れ、其の機体を挟み込むかの様に、両陣営の攻撃が、唯一人乱入した其れに集中する。


それでも、その機体を操る。青年は、一歩も引かず、両腕で振り払う様に振り撒いた星々となる光のつぶてをばら撒くと、其れが、意志ある物かの如く、


やや湾曲する誘導軌道を描きながら、実体弾の炸裂を寸前で、消し去る。


消え去った実体弾は、すぐさま粒子へと変換され、そして、機体各部の吸入孔へと吸い込まれると、コンソール内のエネルギーゲインが上昇。


光のがとなったそれに触れた機体が十字疵の形に消滅していく。


その光景を見た。モノは、その機体を、未確認の敵機…所属不明の機体として「ボギーワン」と呼称。


是より血で血を洗う。唯の喜劇が幕を上がる。


四日目


前日に展開されていた部隊が、敵味方、一切の呵責なく、その存在が、唯の鉄くずとなり果て、作業者、財閥、軍閥、それぞれは、主導権を取るべく


相手と、謎の機体「ボギーワン」の掃討に躍起になる。


だが、その目的は不明。


故に、今日も互いに傷付けあう為に、その手に武器を持ち対峙する。周囲への迷惑も考えず繰り広げられる喧騒のなかで、直上からの一射により、


構えたビームライフルが誘爆。拡散する粒子を巻き散らしながら、融解したそのマニュピレーターを庇う様に、手元から光の刃を抜き出すも、


昨日と同様に、その刃が、形作る事も出来ずに、僅かばかりの刃を形成し、操縦するパイロットは唸る。


其処に、前日の光景をみた何者かが実体弾を放つMS用の大型バズーカを抱えて、参戦。


中に浮かぶ何者か...。ボギー1に向かってその弾体を打ち込む。


狙いは、外さず、更には同時に頭部バルカンや脚部のミサイルを一斉発射、その全弾が、その機体へと降り注ぎ命中、特大の爆音を響かせ


確かな手ごたえを感じたモノの...。その姿は、いつの間にか5体まで増えていた...


Σ(・ω・ノ)ノ!


なんだと?そして、驚愕する間も無く、その姿は、一機、また一機と増えて行く。


光り輝く虹色の虹彩は、光の屈折率を操り、その姿を一機だけのモノから、複数の幻へと昇華させる。


狙う弾体は、何処にも当たらない様に、幻惑するその姿をデコイとして、シェルターの存在しない個所(かしょ)、人の居ない場所へとそれぞれ誘導を行う。


そして戦場では、その奇妙な機体と、争いに関する記録を映すべく、撮影された映像が、コロニー内に流されて行く…


其処に映るのは、何故か、何かに気付いて、次の瞬間、轡を並べて、戦っていた。味方同士柄で撃ち合い、撃ち放った一撃が互いの頭部を撃ちる貫き。


ボロボロになったところを、蹴撃を加えて、一撃離脱を繰り返す。謎の機影の残像をそのカメラに捉える。


「おい?なんであれ同士討ちしてるんだ??!あれ味方同士だよな?」


「そんな事私に、言われも分かんないわよッ!」


それでもカメラを構えて、実況を続ける。最中に、コロニー内部の頭上に、不可思議な光景が広がる。


見渡す限りの広範囲で、散発的に勃発すう戦火が、いつの間にかその目標が、自軍の機体、しかもそれが僅かにその狙いが外れているのか?


互いに、武装のみを撃つ様に、放たれたそれは、その場に煌めく光が刻む深い陰影の影に消えていく。


眼前に広がる光景が映る姿見は、唯一体の色鮮やかな機体が、縦横無尽にコロニー内を奔り、次々と、同士討ちする作業者と軍閥の軍勢を駆逐していく。


「なんだこれは?ボギー1なのか?ボギー5なのか?一体何機いやがる。斃しても斃しても出てくる。」


半狂乱になりながらも自軍の機体である事にすら気付かず、その攻撃をやめる事はなかった。


現場では混乱する兵士たちを他所に、それぞれの陣営が居を構える本陣では、たった一機の機体に翻弄される不甲斐なさをまざまざと見せつけられ


作戦指揮する者達は憤慨し、手に持った指示棒を、テーブルに叩きつけ、苛立ちまぎれに放り投げる。


「何故だ。たった一機だぞ?こちらの陣営は、100機は越えている。なのに、何故その姿が一向に捕らえられない」


「撃墜された奴らも、ぷりぷりの豚さんの貯金箱が迫ってくる?!ゴリラがバナナをお預けされてる、寄越せ、とか言って居るし意味不明だ。」


「残存の待機している機体も随時準備が出来次第出せッ!!!」


飛び出して行く機影を見送りながら、撮影隊は、その奇妙な光景をそのカメラに映し続ける。


五日目

同士討ちにより、その数を減じさせ、それでも尚、交戦の意志を見せる、両陣営に対して、


一日目から数えて三日目の出動を果たす。それまで空を覆って居た極光の帯を棚引かせ、覆い続けるも、その景色が変わる刻が俄かに近付いてくる


そのある意味目立ちそうな三色の輝きを放ちながら、上下逆さまで踊り舞うその優雅な姿は、質実剛健、光り輝く閃光を振り撒き、光の星々がとなった、それに触れた機体が十字疵の形に消滅していく、抉られたコックピットから投げ出されスプーマを放出しながら視界から消え去るその姿に驚愕しつつも、


次の瞬間には人が死んだと、その事実のみが伝えられる。その犠牲者の数は...その光劫の範囲から漏れた、両陣営が、他人を巻き込み。


そして、指揮者が、部下の不甲斐なさに腹を立てて、苛立ちまぎれにその銃口を向け、その命を散していた。


「司令ッ!!!!」駆け寄る部下が、余りの事に抗議の声を上げる。それでは余りに報われなさすぎると...


たが、禿頭に、髭ずらを並ばせた、司令と思しきその男は、なんの悪びれもせず。


「どうせあれだけ撃墜されたのだ。死傷者は鰻登りで増えている筈だ。ならば、あやつに、全て罪を被せれば良い。あのボギー1にな!!!!」


「司令正気ですか?」若々しく力強い意志を感じる精悍な青年は、震える拳を握りしめ、講義の声を上げる。


次の瞬間、叩きつけられた拳に、地面から天井を仰ぎ見ていた。


「死体を片付けて置けッ!!!!死体袋に一緒に入りたく無ければな!」


そういって、去って行く後ろ姿を眺めて、立ち上がると...


先任の死体を見下ろすと、


「先輩...。」と、無念そうにその声をあげる。


...


...


...



場面は変わり、コロニー内の7番格納庫


「大石、敵は、一機から数機と、見られるが、油断するなよ。新兵は俺の後ろについて、援護しろ


「はっ了解であります。」宗谷=大石少尉は、今年で26歳になる今年で四年目の兵ではあるものの


一部隊に組み込まれ、フォーマンセルを形成する後輩にあたる同僚と共に戦線に繰り出すべく待機する。


そこに、「何がボギー1だよ。一機だけなら包囲射撃による飽和攻撃で仕留められるだろ?俺が片付けてやるぞ。」


生意気そうに告げる声色が新兵らしきハルズ=アルマインが苛立ちまぎれに吐き捨てる。


「…」


相変わらず、無口で黙して語らぬそのへの字に結んだ口の青年に、苛立ちまぎれの言葉を吐く。


「相変わらず坊ちゃんは、会話しねぇな。お里がよろしいようで、お前何機墜とした?俺は二機撃墜したぞ。」


「…」


「おいッ!!!」


胸倉をつかまれあわや殴り合いになる場面でも青年は、黙して語らず...。一言漏らす


「四機だ...」


Σ(゜Д゜)なんだと...心の中で驚愕しつつそれでも慎重に、息を整えると、二の句を告げようとして、


隊長の叱咤する声が制止する。


「ハルズ!アハトくだらない事で喧嘩するな!!!撃墜数は飾りじゃないんだぞ?人の生き死にが掛かってる。遊ぶなッ!!!」


へいへいとその拳を引っ込めて、二人が互いに息を吹きかける立ち位置に居たモノの渋々距離をあける。


「行くぞ、大石、ハルズ!アハト!!ひとふたまるまる時に、機体に乗り込み、我が隊は戦列に加わるぞ!!!!」


「気を引き締めて行けッ!!!」


「「「はっ了解であります」」」


決まり切ったモーションで敬礼をしつつ、各自は、糧食であるレーションにかぶり付きながら、機体に次々と

乗り込んで行く。


「ハルズ=アルマイン、ディエム、出るぞッ!!!」


格納庫から名乗りを上げて、射出されて行くその姿を、みながら無言で、状況を見るアハト=佐伯は、


状況を俯瞰しつつ、撮影されていた映像を無言のまま観る...


やはり、可笑しい。僚機達の動きが、証言と、映像の内容がまるで違う...。


幻覚?幻影なのか?理由は分からないが、気を引き締める必要があると、意を決して、操縦桿を握り込み、


自らも戦場へと飛び出して行く。


今も尚、戦場では、実体弾とビーム兵器の応酬が続く、目標の機影は、光の幻影に隠れて、目視出来ず。


其之すべてが無為に終わる。


...


...


...


コックピット内で、残りの《一葉灼伏》の効果時間を気にしながら、発生する粒子散布を消費を最小限として、


その機影を誤魔化す事のみに使用する。


(・д・)チッ


「新手か…あれはディエムとか?言った新型の四機編隊か?」


そう呟き、手にフィットする操縦桿を掴み、フットペダルを踏み込み、天井に広がる宙の空を蹴って、加速する。


「ハルズ、先行しすぎだぞ?!抑えろッあッ!!!アハト?!」


隊長の指示も聞かずに飛び出した、両機に対して、大石が答える


「ライヒデ―ル隊長ッ、私がフォローします。援護お願いします。」


渋々フォローにまわるライヒデ―ル=アルマは、砲撃戦を想定し、僚機達を援護する様に、


機体に装備された、実体弾兵装の1番から4番までのグレネードを投射、三段式に分裂する榴弾を投射し、


援護を開始。炸裂タイミングをずらし、僚機の前方で丁度炸裂する様に調整する。業を見せつつ、声を漏らす。


「チッ、跳ねっかえりども目、これじゃぁひよっこどもと立場が逆だッ!!!」


接近する機影に気付き、コロニー内部の施設に射線が当たらぬようにコントロールしつつ、その動きに対応する。


「ひよっこども、コロニー内での戦闘だ、ビームライフルで、コロニーに穴をあけるなよ。各機実弾による包囲射撃を決行しつつ、囲んで接近戦で仕留めろッ!」


「「「了解!」」」


「ふんっ使えないだと?ビームライフルが、だったら…」


スラスターを吹かせて飛翔する編隊から地上へと降りると、


光の光剣、ビームサーベルと引き抜くと適当な建材を切り裂き、その刃を納めると、対ビームコーティングを施されたシールドを持った左腕でそれを掴む。


するとそれを右腕のビームライフルの前方に翳す。


ライフルの威力が強すぎて、コロニーの外壁に穴をあけるというのであれば、間に適当な部材…例えば建材を挟んでやればいい。


掲げた建材が光の粒子に炙られ、焼き付き消滅する間に、その狙いすませた一射が、コロニー内部で俯瞰した立場で戦場を観やう


その目標に向かって直進する。が、直前で投射される亜高速の光を目でみて、すれすれの見切りを行い回避する。


クッソッこれを避けやがるか?


更に突出する。アハト機は、大石とライヒデ―ルの援護を受けつつ、


僚機達の包囲射撃に紛れて、接近戦を仕掛けるべく迫る。光剣を引き抜く、その刃は、敵機に近付いた瞬間にその刃を大きく減じさせ、


ナイフ程度の刃渡りでしかその形状を保つことが出来ない...。


ここまでは、知っているぞ。映像で確認した。ハルズの奴は気にしてなかったが...。


腕部からもう一本の光の発振する基部を取り出し、その二つを重ねて、共振させ減じられた刃を通常時の状態へと保持させ、


彼我の距離が、十数メートルに及ぶ接近戦で斬り掛かる。


さらに至近距離での実体弾の散弾による、重撃を決行。


コックピット内のモニターには、敵機の姿が、いつのまにか、僚機であるディエムの姿に書き換わっているが...


この機体から発せられる気配は、他のどの僚機達とも違うプレッシャーを感じる。


意に介さずに切り掛かり、数合の打ち合いを重ねつつ、0距離射撃に近い散弾の雨を投げかけ続ける。


散弾が命中する瞬間に、十字の閃光を展開、至近距離からの散弾を封殺しつつ、その手に備えた爪牙で、発振する光剣と撃ち合い。


すれ違いながら、新手の動きに違和感を感じる。


その光景を徐々に位置取りを変えて、ボギー1の背面方向へと移動したハルズは、


アハトの奴は気づいていないだろうが、奴のあのビーム兵装を無力化する力には穴がある。あの吸気孔らしき穴が向いてない...


背面からの攻撃は、奴は全て避けている。避けているという事は...攻撃が効くという事だ。


問題はコロニー内でライフルを使用すると、壁面に穴をあけて市民に被害が出る。破片を切り取りながら、一々撃っているのは手間だ、


なにか手頃のものは...腕部に装着したシールドを構え、ビームコーティングが施されていない装甲部を手ごろな遮蔽物として、


ビームライフルの裏技の一つバグ技を試みる、危険すぎて通常時は誰も行わない。その一射を試みる、どうせ破損しても代わりのビームライフルは四丁、マウントラックに懸架して、持ってきている。


通常時の、ビームライフルは、引き金を引き銃身下部に備えられたエネルギーパックから流れ出た加圧されたエネルギーが増幅器を経過し、

そのエネルギーを増しつつコンバージョンリングにより更に圧縮加速され、砲身により、方向性を決められた閃光を放つ粒子砲の一種であるが、


此処で、安全弁を外して引鉄を引くと、銃身に込められたエネルギーがオーバーロードして、強烈な一撃を放つことが出来る。


通常の仕様外の手順のため、撃った後には銃身は焼け着き使い物にならない。最悪暴発も考えられるが...それでも奴を仕留めるには、安い代償だ。


機体各部に多数のライフルを懸架しつつ、アハトを囮にした狙撃を決行。


焼け着くようにシールドの内壁を融解させながら、その一射っが無防備な背面に向かって投射される。


命中する瞬間、ボギー1の機影が宙返りを決行。


すれすれを通り過ぎたオーバーロードの一撃が、振りかぶったアハト機に向かって照射される。


その一撃を咄嗟に機体を捻り、回避するも、余波に炙られ、左腕の装甲を焼き付けさせ


コックピット内でアラート音が鳴り響き渡る。


姿勢制御のバーニアを吹かせて大地に着地すると


ハルズ機に向かって悪態を吐く


「この土下手糞、目を何処につけてやがるッ!」


激昂しつつ、再びその口を閉じる


「うるへー、ちゃんと囮になって引き付けろ。俺が奴を狩ってやる。」


焼け着いた銃身のライフルを投棄して、次の新しいライフルを構え隙を探して狙いつけ続ける。


発振する光剣をどうにか維持しつつも、光の尖塔を照射し、ばら撒く広範囲攻撃をシールドを構えつつ、


旋回中に旋回半径を縮め、頂点直前で、失速させ、横滑りさせ斜めへの旋回へ、移行して、大幅に旋回半径を縮め、


ボギー1の背面を取ろうとするが、その刃を振り抜いた瞬間、バレルロールをしつつ、急速反転、刃が空を切る。


狙いが外れて、後方に向かって敵機との距離を調整し、左右に交互に旋回し、


位置取りを模索する。


そこにライヒデ―ル=アルマと大石の援護射撃が降り注ぐ、其之連携を嫌がる様を掌中を向けると、


二人の狙いが、乱れ始める。


ディエムが二機?!!どっちがアハト機だ?


「隊長、敵味方識別コードは?!」


「でかした。こっちが偽物だッ!!!!」


空を翔ける一条の閃光が、榴弾の兵装が、次第にアイジェスを追い詰め始める。


【なんだ?もう対応し始めた奴らが出て来たか?困っているなら変わってやろうか?】


「必要ない...。この不利を覆してやる。」


機体各部の噴出孔から、粒子の光を放射しつつ、一気にその粒子量を増加させ、一気に追いすがる三機を引き離し、


コロニー内部の壁面の端まで一気に到達し、


それを追従するかのように三機の隊列が、縦に並び連なる瞬間に、その脚部で壁面を叩き、


轟音を響かせながらその反作用で、彼我の距離を100から、0へと縮め。


交差してガードしていた光剣とシールドに直撃、互いに干渉する刃とレッグカバーの鬼面が噛み合い、


其の儘後方の2機を巻き込み、吹き飛ばす。


衝撃を受け流し、外そうとするも勢いの侭後方へと流れて僚機と激突、一瞬エアバックが作動、衝撃でその手から操縦桿が離れ、


力を受け流せぬまま、機体の腕部が全損、後方のディエムの頭部へと蹴り脚が突き刺さる。


その絶好の隙に、僚機の撃墜を頓着せずにハルズ=アルマインは僚機を囮にした狙撃を敢行。


その一射を、機体を反転して、粒子砲の一撃を吸収し、返す刀で振り上げた拳から投射される。


光の尖塔が、陰影を刻む閃光と共に、光に弄られ、影と光で、その視界を防がれ、何もできないまま、そのジェネレーターが消滅。


粒子となって散りながら、その機体が、地面に傅くように倒れ込む。


機体を喪ったライヒデ―ル隊の面々は、ノーマルスーツのヘルメットを地面に叩きつけ、悔しがる。


「クソッいったいなんなんだあれは?」


...


...


...



撮影隊が映す画面で踊る最中、コロニーに穴が開き、数機のディエムとヴェリタスが、コロニー内部へと逃れ、その錯乱気味に発射された光が、


某の眼前へと迫り、非常用のシェルターに入り込む間も無く、撃墜されたヴェリタス…淡いクリーム色に塗装され、各部がディエムほどの先鋭的なデザインでもなく、


さりとて、重厚な表面とも言えないスタイルに。ややスリムで各部の関節部を覆う様に展開された多重装甲を備えた一機がその光景がスローモーション流れる中で、


同じタイミングで降り注ぐ。ビームの放射を逃れたとしても誘爆するその機体に巻き込まれ、絶死となるであろう瞬間に、視界が一切の目視を拒絶する様な光が、一体を包み込む。


「間に合った...。大丈夫か坊主。操作には、まだ慣れていないが...。戦線が縦長に広がっている。機体の出力を上げるか?それとも?!」


寸前でトリコロールの彩色を放つ異貌の徒が、逆立ちではなく、その手でつかんだ、ジェネレーターらしき部位を氷結し、貫き掴む拳を振り抜き、機体を優しく地面へと置くと、別れも告げずに、その無事を安心しながら去って行く。


「一葉灼伏…が,切れた...もう一度だ!!!!」


少年が最後に観たその姿は、三色の鮮やかな色から赤黒いフレームへと変色を繰り返しその姿を魅せつつ消えさる様が目に焼き付き、ふわりと、周囲に何の影響も与えず、スラスターを噴かすことも無く飛翔するその姿をいつまでもいつまでも眺めていた。


それが且つての知り合いの姿だと気付かずに...。


噴出する大穴に対して、潜り抜けた後で、その手掌を翳して、放出される氷壁で、その穴を閉ざすと、其れ迄回転するコロニーに併せて


相対距離をとりながら、補修をするも、周囲に多数の機影に囲まれている事を察知する。


「中は粗方片付けた...問題は外だ...。」


今も尚、争いは続き、コロニーのミラーの陰に隠れて疾走する。


機影が一つ、その手に掲げた牙を志に、翻した手と手が、迫るディエムのコクピットブロックを抉り、瞬時に、氷結。ジェネレーターの誘爆を封殺しながら、


その行為は、いとも簡単に繰り広げられる。


投射される兵器の火は、まるで陽を避ける砂モグラの如く、寄せては還す波間の様に、突如現れては、その姿が確認できなくなる。


周辺に広がる粒子が霧散し、凝結する空間で、その反撃が無為に終わる。


次々と、氷結させられた棺桶が多数居並び、抵抗する数は、残り僅かばかりとなるも...追加で増援が次々と他のコロニーから到着していく。


...


...


...



六日目…


残る残存兵をまとめ上げ、敵味方区別なく、唯目標は、我らを邪魔する。その一機?ボギー1へと変わっていく。


それまで争っていた、作業員と財閥や軍閥が、そろって、轡を並べて戦い始める。


そこに同士討ちの愚かさは消えたものの、その標的が、唯、一人戦う。ボギー1...アイジェス...へと集中する。


七日間の殺戮はまだ終わらない。


その数は、数十機から、百機にも達する勢い。


その砲門が、争いを納めようとする。その機影に向かって降り注ぐ。


既に発動済みの《一葉灼伏》状態の侭、その機能を多重発動させ...。次々と、その罪深き枝葉が、炉へと投入されて行く。


「ニヴルヘイム 《霧の国》…アールヴヘイム《光の国》、平行励起、起動…。」


「繋ぎ禊て、不離一体を以て、その不利を覆せ。」


コックピット内のコンソールにアールヴ《光》とニヴル《霧》の文字が瞬き、《connect》の表示が踊る。


《来たれ、欲神バルドル!!!!》



「我は、欲する。全ての恒久的な■■を!」


其れは極光の棚引く光のカーテンが宙を覆い、煌めく光は、噴霧された霧と結晶状の氷の反射して、キラキラと、その輝きを増し、


そして、光に照らし出された、自らの影法師を映し、轡を並べて包囲する機体が、


一斉に、凸鏡面により、収束された光の雨に打たれて、次々とその機体を消失させると同時に氷の棺桶へと封殺されていく。


輝は、背後に展開された鏡面上の、結晶体に阻まれ、回転するコロニーへの流れ弾は全て反射され、繰り返される鏡面と光のコントラストで


降り注ぐ輝を、対ビームコーティングを施された盾で防ごうとするも、その行動は...触れた先から光へと還す。その威を阻む事なく、


紙の盾で、火勢を防ぐと同様に、若草萌える。若葉のタンポポの綿毛の如く風に吹かれて、霧散する。


...


...


...



七日目…


...


...


...



その日、その場に最後まで立っていた機体は、ボギー1一機のみとなり、その戦場を見回して、満足そうに頷くと、その場を収めて、


何もせずに、放たれた嚆矢が、元居た場所へと還るかのように飛翔する姿が目撃される


資源衛星を牽引してきた作業者と、それを横取りしようと権利を主張する。財閥の台頭。そしてそれを納めようと、駆り出された軍閥の一部が、

それぞれの権利を主張した。奪い合いに発展。血みどろの戦闘へと変わり、正式な発表では、253機とも言われる機体の被害と多大なる人的被害を以て鎮圧されたとされる。


TVの映像では、破壊された機影を映して、次の瞬間には人が死んだと、その事実のみが伝えられる。その犠牲者の数は、其之殆ど、初めの2日までに集中し、

その戦火に巻き込まれそして参加した者が百余名。


生存者は、その恐ろしさに驚愕し、精神を病んで、次々と退役していった。結局はその資源衛星の管理権限は、全くその争いに加わらなかった、コロニー公団預かりへとなる。


...


...


...


「俺は、人殺しだ。既にこの手は血で染まっている。全てを救えず。この手から零れるその血潮に、報いる道は果たしてあるのか?」


【きっと、態々救えなかったモノの罪を背負う。お前を嗤う奴がいるだろう。】


【そして、あの時あの人は救けたのに、どうして私は、救けてくれなかったのか?そう、怨嗟の声を受ける事もあるだろう...そのすべてをその一身に受ける...】


【貴様が言っているのはそれと同意義だよ。それは茨の道だぞ。愚か者…】


「愚か者で良いさ…罪を忘れる賢人よりも、俺は、罪を背負って生きる愚者になる...」


...


...


...



【相変わらずお前は、甘いな...】


(この声は、どこかで聞いた事がある。酷く懐かしく、そして胡乱な言葉だ)


(あれは、たしか…記憶が繋がっていく。)


目の前に、更なる虚栄を誇る巨影が迫る。


それは、新たなる4機の饗宴を競演する巨影…一機は真紅の機体。所々に放熱用であるフィンを繋げ、大型の鎌と見紛うばかりの


刃を各部に備え付け、丸みを帯びたその巨体の中央部には且つて、戦ったであろう見覚えのあるその姿、フレイミングティース(燃え立つ歯)が、中枢機構として組み込まれ


溶鉱炉の様に煮えたぎり、輻射熱による蜃気楼で、その姿が歪み、狂う様に、その歩んだ道が次々と、燃える炎に炙られて、マグマへと変わっていく。


狂おしいほどの、煮え立つ憎悪と贄を捧げるべくその姿の威容を見せつける


二機目は、身長にも達する程の大型の前腕を持ち、角ばった装甲の合間から、噴出する排気の煙に交じって、


独特の稼働音を掻き鳴らしながら、その前進に併せて全身が振動する。そして背面には、大型の巨大な肋骨を模した放熱板を並べ、


その歩みが見せるのは、掘削する重機そのモノたる姿…


三機目、剣の紋章を掲げた、大楯を構え、剣の様な大型の実体剣を肩に懸架し、喧嘩するように進み出る。


曲線美を交えた女性らしいフォルムに、茨の様に各部に伸びる動力パイプから漏れる、排気をそのままに、


此方に向かって進み出てくる。


そして、現れたもう一体の類似機体を交えて、


都合四機の巨大な機体に向かい、此方は、一機のみ。


解放された、データーベース上で、それらの機体名が開示される。


敵味方識別信号を確認、上から、《クンバカルナ・ウーヌス》、《ゲルガシ》、《ゲルズ》、《ヨートゥン》


それぞれの機体情報が何故か、この機体では収められ、そしてその情報が開示されて行く


それでも、男は抗い、惑い、抵抗する。


...


...


...



映し出されるカメラの映像内で繰り広げられる、巨体の機体同士の砲撃戦から、接近戦へと移行それらの姿を眺めながら、


アンザスや、同僚たちはは、ロールアウトされ、整備が完了したカルペ・ディエムに乗り込むと、意気揚々と出撃する。


唯一人奮戦し続ける。同胞を助ける為に...。


地上を行く、《人喰い》達の進軍は、どうにか地下坑道へと続く道を探し、そして見つけ出した穴から、途中に存在する無数の隔壁を


その得物で、溶断し、徐々にその歩を進めはじめるが...


その途中で、お互いが鉢合わせとなっての遭遇戦が勃発。初遭遇した、アンザスは、咄嗟に腕部に搭載されていた、ビームシールドを展開しつつ、


応撃としてのジェネレーター直結型の牙状の大型ビームライフルの引き金を引き、狭い坑道ないで相手から放たれた、粒子の一射を防ぎ切り、


そして相手が同様に展開していたビームシールドを、その収束された。一撃は、有線ケーブルを通過し、弔歌を謳う。超加速を掛けて、銃身のコンバージョンリングを通過。


そして可変式に内部で変わる砲身形状を絞り気味に変更。偏光された一撃は、敵機に搭載されているその防御を破り爆散させる。


「今のは?頭部が無かった?頭無し??アケファロスか?地上に来てたのか?」


突如の遭遇戦で陰嚢が縮みあがるが、この陰嚢が目に入らぬか?と、印籠様の様に己を鼓舞し、


男尻は無くとも、推しは死せず。引導を渡すべく、その陰嚢を揺らして、のっしのっしと進む


(・д・)チッ


こんなところで遭遇するとは、未だ通信が戻らず各機へ、警告を与える事も出来ない...鉢合わせになったら新型でも…


と、ふと、壁の通信ケーブルを目視し、何かを思い付いて接触、接触回線を開く。


各所で繋がる接触回線を母艦経由での通話を確立し、僚機達へと、警告を与える。


しかし、受け取ったオペレーターが抗議の声を上げる「なんで、アンザスさん裸なんですか?」


「いや、尻踊りしてて、服着るの忘れてたでござる。まぁ、緊急事態なのでご勘弁。ふんどしズレた。」


遭遇戦に巻き込また。都合、十七機になる新機体は、先んじて警戒する事により、その損耗を抑える。


出撃したのは...既に撤退に入ってしまった。本部員以外の《R.I.P》と《エンゼルフィッシュ》で待機していた逃げ遅れている人員のみだった。


第一部隊《頭脳》(セレブルム)は、北部から進軍してくる敵にむかって応戦するべく進み、続く第二部隊《不敗》(インヴィクトゥス)が後詰に入り、


さらに先行する。第三部隊《仏頂面》》(トルウス)と、基地内で艦船周りの防御に入る為に第五部隊《臆病者》(クヴァイリス)+α《切り札》エースであるアニス=フライヤ-に別れて、


迫る敵に向かって迎撃の構えをとる。


幾度かの遭遇戦に出会いながら、その大口径の装備を前面に出して、推して進む。狭い通路を進み、地上へとでると、


外では、一切の光景が、《ニヴルヘイム(霧の国)》による濃密な、霧と結晶体に阻まれ、一寸先が見えない。


此処から見えるのは...。(`・ω・´)キリッとした霧を突き破らん限りに、闊歩し、暴れまわる5機の巨人の放つ光に散されて


その姿が僅かに見えるのみ


「アイジェス殿は?何処に?」


「今は良い。仲間割れしている間に、母艦が退避するまでの時間を稼ぐぞ。」


坑道を一斉に、抜けて、強化されたスラスターを吹かせ、操縦桿を倒し、フットペダルを強く踏み込むと、


深い霧の中を、飛翔しながら、霧間に踊る。姿を、収束する大型ビームライフルが、向かってくる機影に吸い込まれるように放たれる。


接近に気付いた機影がビームシールドを展開、防御態勢に入るがその光の幕を撃ち貫き、構えた腕ごと、吹き飛ばし、


その罪深き装甲が、粒子の熱に炙られ融解、燃え上がる様に擦過傷を与えて、巻き込まれたジェネレータ―ごと爆散させる。


「ビンゴ!!!!」


第一部隊《頭脳》(セレブルム)や後詰の部隊のそれぞれが、敵機を爆散させ、その命を散して行く。


追従する《不敗》(インヴィクトゥス)を名乗る。の面々も、互いに


「奴らの尻に火を着けてやるッ!!!」と、息まくが、その一撃が、機体の上半身ではなく


下半身に向かって集中攻撃を加える。叩きつけるように繰り出された怨嗟の一撃は、


「あっ...お…」


機体に乗り込んでいた人物の下半身から燃え上がる様に溶解させ、果てさせる


高速機動に入り、上下左右にばらけつつ奔る機影たちは語り合う。


「ひゃっはー、奴らの尻を掘ってやれ!!!」


「おい、今度は吐くなよ?!」


「了解分かってます!隊長ッ、オ”ェ”ー酔った。」


「吐くなッ!!!!」


「どいつもこいつもふざけやがって、尻をカバーしてやるから、とっと進めるんだよッ!」


「「「了解!!!」」」


パイロットスーツのメット内で、吸引機構が働き、吐しゃ物を吸引する音が響く。


「《不敗》(インヴィクトゥス)共は、相変わらずふざけてるな...まぁ良い、俺達も行くぞ、行くぞ、行くぞ」


「新しい機体の慣らし運転だ。各機散開しつつ、包囲射撃で敵機を墜としていけ。深入りはするなよ。」


そういって出した指示に併せて、告げる宗谷=大石と共に、パルメ=ザン、ソッチ=コッチ、アッチ=コッチが、


右往左往しながらアッチとソッチとコッチに別れて、先導しながら扇動し、


奴等の腹を下してやれっとばっかりにその裁きの選定を降し、腸内で蠕動運動をおこし、放射される粒子と共に放たれる。


絶対の物量差の中で、同時に、第三部隊《仏頂面》》(トルウス)の面々を撃ち放たれた嚆矢の如く戦場を横断しつつ、


地上や空中で、蠕動する機影に向かって射撃を繰り返す、


その一斉射撃を受けて、回避運動も儘ならないグヤスクトゥス、アケファロスが爆散し、敵影に気付いたファーマの一団が、


投網の如く各部の射出口から、ワイヤーを一斉射出。


捕まれば、その電撃で、機体操縦がままならなくなるその攻撃を四機の編隊を組んだ


カルペ・ディエムが散開しつつ緊急回避、機体を反転するダッチロールをくりだし、


交互に体を入れ替えて8の字を描くように走ると、その円の同心円状の頂点で、一斉に収束するビームの一撃を繰り出し、


どういう訳なのか?敵機の攻撃は、霧によって空中で霧散し、此方の攻撃が、その出力を大幅に上げる様に収束、収斂し、そして敵機に命中。


その頑強であるはずの硬い装甲を飴細工のように溶かし、爆散させていく


「イェヤー、鴨撃ちだぜ。」


「各機散開しつつ続けて包囲射撃、撃て、撃て、撃て。」


追従して迫る敵機にすれ違いざまに一射を加え、更に撃墜。


「ジェネレーターの出力も安定、エネルギーゲインにも余裕がある。行けるぞ?この霧のあるうちに仕留めるぞ。」


だが、この霧おかしい、まるで俺達を誘導するように、守る様に、その姿を変えて敵の姿を俺達に知らせてくるぞ?


...


...


...



戦場のあらゆる場所で繰り広げられる。破壊と闘争の最中で、それは始まる。


それまで接近戦で互いをその拳で撃ちあう二体の巨兵が挙兵するように迫り、その拳が、凍れる牙となって敵機に突き刺さる。


衝撃で、サブシートに座る彼女のヘルメットが外れ蒼く揺れる髪が揺れるも、しっかりと固定されたベルトに抑えられ苦鳴の声が漏れるも


その場から動くことも出来ずに、その手にフィットする操縦桿を操作して、危機的状態に対処すべく、


フットレバーを踏み込んだ瞬間、後方へと機体が流れ、元居た場所に特大の高熱源体を確認。機体表面を浅く弄り、


その熱量と衝撃を吸収する筈の装甲が、焼けて、今にも発火するかの熱を帯びつつ斜め後ろへと後退する。


見ると灼熱の相貌を描く、火を噴く歯が、赤く朱く赫い、光がすぐそばを通り抜け、背後に突く山々を貫通し、大きな穴を作り出し、


山の頂が崩れ、崩壊する。


(・д・)チッ


強大化された《Pyrolysis Toothパイロリシストゥース》の文字がコンソール画面に踊り、


アイジェスの駆る機体内でも警告文を浮かび上がらせ、その威力が掠めた左腕の工具が、焼け身となって燃え上がり、その手から投棄させる。


(・д・)チッ


そして...。前方で蠕動する巨影は、まずは、《クンバカルナ・ウーヌス》が砲撃を行い《ヨートゥン》が打ち合い。


そして背後の《ゲルガシ》は各部に備え付けられた巨大な肋骨を模した放熱板を空中に放出、


今まさに霧の向こうで守られている。この場から離脱し逃亡しようと、次々と飛び立とうとする。隊列の向こうへと着弾すると、周囲百数十キロの四方へと


広がると、各部同士が、噴出する粒子と電磁場による巨大な牢獄へと換え、


《ヴィキティ》を駆るヴェニ=ヴィディキは、逃げ道が防がれた事を識る。


尻を振り、尻込みしつつ悶えるアンザスは、突如の光景に慄きつつ、ぷりぷりと怒りを表現するかのように尻を振る


一方的に通信が妨害され、憤慨する間もなく


《ゲルガシ》を操る人物は、大音響の音を響かせ告げる。


「愚かなる者どもへ、宣告す。我らから逃れる術なぞ無い。併せて告げる言葉で、殺し合え。」


その言葉を受けて、「惑え」と、一言、呟くと憂色美麗のその曲線的なボディーを誇る。その姿から、ピンク色の粒子が周囲へと


押し寄せる津波の様に、周囲に展開される霧の世界と混じりありながら迫ってくる。


《ゲルズ》が行使する。その機能により、異変が起こり始める。


現存第二部隊《不敗》(インヴィクトゥス)の面々が、急に、「男尻を寄越せ―ッ」と、叫びながら、


前方で腰を振りながら、一撃離脱を繰り返す第三部隊《仏頂面》》(トルウス)の面々に向かって、


実体弾の照射を実行。命中する瞬間に、ブレイク(Break) …急旋回の回避行動をとりつつ、左右に交互に旋回し、


その狙いを外す様に、有利な位置取りをする為に、尻をフリフリ、逃げ惑う。


その勢いで、腰布が緩み、臀部が露わになりそうになるのを必死に抑えつつ、それでも操縦桿を握る手は緩まない。


《仏頂面》》(トルウス)01、イゴール=マッケンジーは、朦朧とする意識の中で、操作を誤り、カメラの表情を切り替え、


最後に観たのは...


画面一杯に広がる。同僚の尻だった...。


ヴェニ=ヴィディキは、機体を浮遊し、俯瞰した場所から戦場を眺めると...あの異色を放つ煙は不味いな...


触れた僚機が、可笑しな行動をし始め、この耳に届く通信内容は、


混沌の域に達する。


「尻が男尻が襲ってくるッ!!!」「バナナをくれよ。そっちのバナナじゃねぇ―俺はゴリラだ!!!!!」


「一人はゴリラの為に、みんなはゴリラの為に、つまり此の世は全てゴリラ!だうっほぉ」


「ヤメロ!ゴリラにバナナは効く。特攻だ!!!」


尻とゴリラのコントラストを描く報告に耳を塞ぎ、操縦桿とフットペダルを握り込み、迎撃に現れた、機影に向かい。


照射してくるヴェノムレインの数射を機体を捻りながら、回避


垂直方向にバレルロールを繰り返し、旋回軌道中に、急激な横滑りかけ、各部バーニアの姿勢制御で、


半円上の旋回のその半径を一気に縮めると、敵機の背面を取り、


同時にテールユニットが180度回転、互いに背面の砲門を開き、その輝が照射される。


二条の光と一条の毒針が、煌めきそして、中間点で、命中。


光りの波動を受けて、機体のバランスを崩しつつも、すれ違いざまに、右腕に装備されていた実体剣を振り払い、


一気に切り払うと、光刃の爪に叩きつけられる要に、切り結び、刃が絡み合う様に、上空へと受け流すと、


急速反転を掛けて、水平方向に180度回転、左腕の刃で、防御を崩された。


コックピットに叩き込み、


潰れる肉の音を奏でながら、絶命するその意志を顧みる事なく次の戦場へと舞い戻っていく。


それでもアイジェスは呟き、起死回生の唄を朗々と歌う。


巨人の魂動は、鳴り響き、そして巨人の魄動に繋がる。


山麓に広がる霧は晴れ、其れ迄隠されていた光景が広がる。


戦場に一切の呵責なく、振るわれるその御手は、何者の手によるものか、


その日、人々は、荘厳なるその風景を目撃することになる。


光が、輝が、視界一杯に広がる。


周囲の光の導線が、一斉に集まり、中空に何かを形成し始める。


それは、巨大な、光の柱...いや...巨大な巨人…を超える。巨神と見紛うばかりの


巨大な足が、戦場の大地に向かって謳歌するように押下される。


...



「《一葉灼伏...20%》《ヨトゥンヘイム (巨人の国)》…起動」


ジェネレーター欠損率は、事前に発動した、《ニヴルヘイム(霧の国)》と併せて40%を超える...。


が、コンソール上に踊る画面には、ジェネレーター欠損率...。134%⇒114%⇒94%


予め使用されていた余剰の枝葉を犠牲にして、今再びの《一葉灼伏》


放たれた戦場を横断する。その輝は、巨大な《ヨートゥン》の機体各部から現れる


思考式、実体誘導弾と光の放射を交え、噴出するその輝全てが、極大化、その輝は


眩い光を放ち、点から天を突かんばかりに、転じて、放たれる。


一斉に大地を緋色に染める絨毯爆撃の一射に、巻き込まない様、慎重に狙いを着けて


叩き込む。


それに立ち向かおうと、《クンバカルナ・ウーヌス》が黄金色の緋と共に、その口腔から放たれる。


絶死の光を以て対抗せんっと欲し、《ゲルガシ》は意に介さずに、その手に、巨大な光の槍を構えて、


遥か彼方、6時方向に逃げようとする。避難民の車列に向かってその一手を解放しようと


逃走を許さず闘争させるべく撃ち放つ、


投射された死を呼び詩を枯らすその一撃を一斉射撃で撃ち落とさんと繰り出しながら前進する。


アイジェスが駆る接合した《ヨートゥン》は、都合四機の巨人たちの迎撃に、弄られながらも、


その各部が、晒された、雨あられと投げかけられた。武装に撃たれながら、


周囲に爆散の華を巻き散らし、破損した装甲を気にも病まず、掴んだもう一機の《ヨートゥン》を抱え込み捕らえると...


其れを起動する。


...



...



...



見せてやる。何故、この機体に鬼の面が付いているかのその意味を…


景右傾傅くように切れ込みが入った世界に有形無形を形作る。その姿に、


俺は弱き力を持って弱きを助け、弱き力で、強大な強きモノを挫く、


その在り方に、矛盾あれど、其の意志に矛盾なし、


されど、我が身は唯一人の...。■■とならん。


眼前の空間に、広がる。機体頭部の鬼の口の前に置くと、狙い済ませた様に其の砲口に備え付け、電磁加速を開始。


加圧され、極大かされた光り輝き擬似的に形成された電磁誘導のバレルが、目の前に対峙する巨人の姿を覆い隠し、


投射された思考誘導弾も纏めて加速させる。


加速運動を開始したその弾体は、白と黒の光の影を残して彼我の距離を一瞬で0として、


熱量と質量攻撃をその構造物の内部に蓄え、防ぐ絶対の装甲が、


MA大の弾体を音速の数十倍までに加速された弾体を受けて、崩壊する。


大気の壁をぶち破り、衝撃波を巻き散らし、背後に控える《ゲルズ》ごと、


目の前の敵をその一射を以て叩き伏せ、


加速された弾体は、極大化され、コックピット内でERRORの文字が踊る。


発動したそれは、機体各部に強烈なGを生じさせ。コックピットに乗り込むパイロットを圧搾し、その姿を血煙へと換えると、


弾丸として放たれる《ヨートゥン》の機体が、大楯と超大型実体剣を構えて待ち構えていた《ゲルズ》に次々と炸裂する弾頭の雨と共に、突き刺さる。


巨人の身体は、交差する獲物に阻まれるもその衝撃波までは殺すことが出来ず。


衝撃に攪拌されたパイロットは噴き出すエアバックで守られるも、その衝撃波、コックピット内外で暴れまわり、機内で殴打を繰り返され、


唯の肉塊へとその姿を変えた。


急激に加えられた熱量と衝撃に晒され、構えた獲物と同時に倒れ込む様に、地面の上に崩れ落ちる。最中、発生した着弾の衝撃により、其れ迄周囲に息巻いていた。


煌めく霧と、桃色の噴霧された粒子が、一斉に吹き散らされる。


其之生じる衝撃波は、周囲数十キロまで及び…爆心地を中心に岩盤が破砕され、地表に巨大なクレーターが生じる。


中心地の岩盤は、一瞬で蒸発し、周囲に高圧の岩の散弾が降り注ぎ巻き込まれた機体が次々と爆発炎上していく、


それでも、中心地から離れたアンザスたちの場所までその衝撃波は届き、前面に展開した、ビームシールドを盾にして、


スラスターを全開にしてどうにか耐え凌ぐ。


確かにあの瞬間に、警告の声が聞こえていた...。


それでもその余波に巻き込まれ機体各部から火花が散り、そしてそれまで悩まされていた。


男尻とゴリラの幻想から抜け出す。


「俺はゴリラじゃない。人間だ!!!!!隊長、バナナはおやつに入りますか?」


局地的な気圧変化による強風が吹きすさぶ中、未だ、前面には、二機の巨影が踊る。


一斉射撃においてもひるまず迎撃してきたそれらに対して、時間差で発動された、


巨神の足跡が、降り注ぐ、其之接近を察知して、《クンバカルナ・ウーヌス》は、各部のスラスターから、火を吹き出し、


大きく後方へ跳躍しながら、距離を取るも、《ゲルガシ》は、避難民への攻撃が先ほどの衝撃で狙いが逸れたのを忌々しく思いつつ、迎撃の態勢に入る。


そして直撃を受けた《ゲルズ》は、操り手を喪い、崩壊し、請われる様に壊れた、大楯が、大地へと剥落して、突き刺さる。


互いに振るう拳を打ち付けながら大陸を鳴動させ、その拳が互いの機体に突き刺さるも、


アイジェスは、機体に拳が命中した瞬間に、フットペダルを踏み込み逆噴射を駆け、その衝撃を逃がす。


その場での打ち合いを行いながら、敵機の背後に控える。機影を警戒し続ける。


未だ、奥の手は、振り下ろせていない。今はまだ、この位置関係では、巻き込みかねない。


重力感覚器官《Sensorium Gravitatis》(センソリウム グラウィタティス)を起動して、僚機達に向かい話しかける。


「アンザス、その汚い尻を引っ込めろ。今から言う事を聞き漏らさず聞け。」


「ギアナ高地の中央部で暴れまわってる巨大MSは見えてるか?」


ん?


「確かに見えてるぞ、霧が晴れて、その姿が見える。で、それがどうしたでござる。」


「今から避難民を連れて離脱しろ。デカいの一発喰らわすのに、そこに居ると邪魔だ!逃げろ。」


全方位チャンネルで開放されたその声に、ヴェニ=ヴィディキが反論を述べる。


「敵が放った檻が邪魔で、逃げられんッ!各機このまま敵性巨人に...。」


「分かったこっちで何とかするから、囲いが破れたら...。逃げろッ」


拳同士を撃ち合いながら、背後に控える機体の砲撃に注意しつつ、徐々にその動く方向を調節し始める。


先ほど破損した大型の工具が、基部の一部を融解させつつ、ひとりでに浮かび上がって、機体の頭部。


且つてデスペラードであったであろうその機体背面に浮かぶ、巨大な鬼面に向かってやや10時方向、アンザスたちが居る3時方向から僅かにそれた向きへと、


再度の電磁誘導のバレルを形成、狙いを着けていない様にも見えるが、その狙いは、肋骨の様な形状のこの逃げ道の無い場所の檻の人柱へと


叩きつける。白と黒の光の影を残して彼我の距離を一瞬で0として、破損した工具を弾体として音速の数十倍までに加速されそれが蒼空を切り裂く一条の


飛行機雲を引き連れて飛翔し、着弾。


炸裂音を響き渡せながらその囲いが崩れ去る。


その光景を確認し、一斉に大挙して退去するように指示を出す。噴射される灯が瞬きそして、


瞬間、宙に浮かんだ、巨神の足が、大地に向かって振り下ろされる。


と同時に、コックピット内で、近赤外光による画像補正が行われ、噴出する水蒸気に包まれながらも、


その姿を見上げて、力強い眼力で天を仰ぐ、


其れ迄、抑えめに香っていた仄かな異臭。これは今まで何度も嗅いできた同類の匂い。


それが一斉に解放される。


うら若き少女は、燃える様に赤い、髪を振り乱しながら、外れたヘルメットを放棄して叫ぶ


「う”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”ぁ”空が墜ちてくる、

(ことごとく)熱に厭いやかされ死ね。《ムスペルヘイムッ(灼熱の国)》ッ!!!!!」


各部の放熱板を展開し、両手に持った大鎌を振るい叫ぶ。


コックピット内で、シートに座り尻を磨くだけ中、正気に戻り勝機をえんばかりに、吠え、頭部の機銃と共に、大型ビームライフルを構えて、


いつの間にか周囲を囲まれ狙いと付けようと瞬間に、


周囲の気温が一段階上がる。コックピット内のコンソールには、機体の熱暴走…オーバーヒートを知らせる。赤い文字が踊る。機体内部の温度が100度を超えた事を知らせるアラートが鳴り響き。


その上昇スピードは、以前体感したものに比べ、心なしか早い。


そして、眼下に広がる森林が、燃え上がり始める。このままでは...熱暴走で武装が吹き飛び、最悪…。


熱波に巻き込まれ、味方であるはずの敵影もその熱量に巻き込まれ、融解し基部を誘爆させながら中破していく。


アンザスは...。且つて感じた、嫌な予感を思い出すも、それは予感のみで具体的な光景は目に浮かばず、唯、僚機達へと注意を与える言葉を漏らすのみ、


それは遥か数十キロは離れてるであろう、退避中の一般市民にも、その影響下に陥るかに見えた。


「なんだ熱い?」


「蒸し暑いぞ???」


「婆さん、儂は脱ぐぞッ!!!!!!!!めしゃぁまだかい?」


「おじいさんご飯は、まだですよ!」


叫ぶ声に呼応して生じる熱波の余波が次第に影響を与え始め、


振るう大鎌と、拳を打ちあう攻防の中で、急加速を行う為に、脚部に仮想の電磁バレルを形成、滑走しながら、浮遊させ、


即席のリニアモーターカーとして、6時の後方へと一気にその効果範囲から機体を逃がす。


入れ違う様に空から光の柱を何乗にも束ねた巨神の御足が、降り注ぎ、


其之すべてを踏みつぶし、そして生じる。熱量と衝撃によって、


地上を歩む全ての敵影を覆いそして、押しつぶす。


ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち

ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち

ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち

ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち

ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち、ぷち


(・д・)チッ


此奴は...使い道が危ういな《アースガルズ(神々の庭)》と、違って、敵味方識別が出来ない。


それと引き換えに、広範囲の殲滅が可能だが...問題は...


巨神の御足に、緋色の閃光がー突き刺さる。


機体の頭部に備え付けられた。口腔から漏れ出す炎の緋が、且つてみた太陽の光にも似た輝きが、数条の束ねた炎の嵐として展開される。黄金色に輝く緋のそれが、前方に展開される巨神の足を貫き、


一閃する閃光が、真一文字に斬り裂くと、機体各部から、機体温度の上昇を知らせる、アラートが鳴り響く。


(・д・)チッ



これは《ムスペルヘイムッ(灼熱の国)》の発生する余熱???


撃ち漏らしたか????


各方向へ、吹き上がる熱分解の咆哮が、仄かに香るい匂いすら焼き尽くさんばかりに、燃え広がせ、


その威を吠え続ける。


前方から地面を焼き尽くさんばかりに迫るマグマの流体となった地面が迫る。


大地や緑黄の森林が広がる大地は一面焼け野原と変わり、大地に起立する巨人の足元へと近付いてくる。


足元が俄かに沈み込み、その熱量に炙られ、装甲が熱く燃える。


俄かに機動力を奪われたかに見えたモノの機体各部のスラスターと重力に逆らい浮遊させる駆動システムを起動、熱に炙られた大地から重力の軛より時は成れ、離脱。


応撃として、その手から放出する大口径の粒子砲を放射するも、敵機たる真紅の装甲に包まれた巨影に直撃する直前で、


揺らぐ熱量の蜃気楼で光を屈折し、その攻撃が防がれる。


(・д・)チッ


舌打ちを一つして、攻撃方法をビーム兵器から、思考式の誘導弾へと切り替え、棚引く飛行機雲を引き連れて、


放射状に降り注がせる。


それらが着弾する直前で、その狙いが、僅かにそれて熱暴走を起こして、次々に命中する直前で誘爆して果てる。


(・д・)チッ


これも駄目か...。


前方から悠々と歩みながらも迫る。真紅の機体は、各部の放熱板を模した《falcisファルキス》を宙に向かって解放。


複数の一対の大型のそれが、飛翔し、錐揉み回転をしながら、その間に光のラインを築いて、押し迫ってくる。


咄嗟にスラスターを点火、回避行動に移るが、その光のラインが僅かに、装甲を掠め、両断させる。


切断された装甲部が、地上に向かって剥落し、墜ちて熱に炙られ燃え上がる。


さらに縦横無尽に跳ねる。即席のビームソーとなった《falcisファルキス》に向かって、各部の計48問の砲門を展開、


ビーム砲の斉射をもって叩き落そうとするが...


その狙いは辛くも霧散する。


敵性体がはなった《falcisファルキス》は、二対一組で動き回り、自らの躯体を熱分解の炎で覆い、


其の儘、体当たりを仕掛けてくるかの様に迫る。


粒子砲の一撃を熱分解しながら、急降下、そのまま体当たり気味にその攻撃が命中し、装甲を溶解しながら突き進む。


コックピット内では、熱暴走と機体ダメージを知らせるアラートのERROR表記が踊り、赤い警告色に染まる中、


放出する粒子量を調整しつつ、叫ぶ。


「ニヴルヘイム 《霧の国》…《ヨトゥンヘイム (巨人の国)》、平行励起、起動…。」


「繋ぎ禊て、不離一体を以て、その不利を覆せ。」


コックピット内のコンソールにニヴル《霧》とヨトゥン《巨人》の文字が瞬き、《connect》の表示が踊る。


《来たれ、虚神ユミル!!!!》


更にダメ押しで降り注ぐ、緋の粉を巻き散らす一射が、《falcisファルキス》を抱えて抑え込もうと


後退するアイジェス操る機体に向かって大地を斬り裂きながら熱分解の高出力の輝が、迫る。


各部のスラスターとバーニアを稼働させ、急制動と旋回を繰り返し、回避しつづけるも


その光が、回避機動中の機体に向かって降り注ぐ。


大出力の偏光機構で、相殺しながら命中するその光が、一斉に、氷の柱へと変じ、其之威光を書き換え


そして、それまで燃え上がる様に展開されていた。高熱の檻が、一斉に氷の世界へと書き換えられていく、


熱分解の緋光を纏う《falcisファルキス》を、大出力の氷の園を展開し、力任せに封殺し、


その手に生じた凍える牙は、極大化され、コックピット内で《MaximizeFreezingBite(マキシマイズフリージングバイト)》の文字が踊る。


粒子を凝結させた結晶が、燃え上がる大地を一気に雪原へと変えて、結晶体の森へと変えて、その勢力図を一気に塗り替える。


急激な冷却による金属剥離現象により、脆くも崩れ去っていく、《falcisファルキス》を抱きしめる様に粉砕し、無力化。


推され気味の《クンバカルナ・ウーヌス》は、稼働限界を超える挙動を見せて、震える様に起動する


ジェネレーターに更なる挙動を行使する。


消え去る前の残り火の様に、されどその勢いは消えず、それでも対抗する様にその熱を、その緋を、さらに噴き上げる様に


放出し始める。


ん?


(・д・)チッ


メルトダウン《炉心融解》か?


「殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す。」


この身を焼き尽くしたとしても、お前は斃す。


「そこまで恨まれる謂れはないんだがな...」


戦闘が始まって…数時間は、経過している。常時発動していた《一葉灼伏》もそろそろ、その効果が切れる頃、


瞬時に虚神ユミルへと切り替えたが...。効果時間が、残り少ない。


ならば、その一瞬に掛ける。


其れ迄、吹き飛ばされるも仄かに展開されていた霧は、何時しか吹雪から、雹の嵐と換えて、


巨大な氷の御手へと変り、降り注ぐも、空に向かって撃ちはなされた極大の熱分解の緋が、


空中で交差し、大気中で、水蒸気爆発を起こし、吹雪く雪を舞い散らせる。


千日手の様相を見せるが、稼働している敵機の周りには燃え上がる火により、解けた氷が粒子へと変わり、


燃え上がる様に、自爆モードへと切り替わる。


その機体に装備される都合、七基のジェネレーターを並列励起しつつ、もはや生きて帰る事すら考慮しない。


自爆を決行。


その光景を眺め、周囲の状況を見まわし、その影響範囲を確認し、


そして、乗機の両腕交差しそろえて砲口を宙に向けて揃え、


並ぶ発振する光源を強振させ、光の尖塔を放出しながらその手を突き上げる。成層圏まで到達した、光の柱は、摩天楼を見上げるほどの高さまで到達すると


その砲声を以て、其之(その)(くびき)から抜錨す。


真っ向唐竹割りの軌道で振り下ろし、敵に向かって叩きつける。乱れ飛ぶ緋の輝が、それに対抗せんと、《Pyrolysis Edge(パイロリシスエッジ)》の文字が踊り、


乱れ飛ぶ刃の余波で山脈の一部を切り倒しながら迫る熱分解の刃を湛えてた大鎌で、撃墜を試みる。


その眩い光は、見たモノの視力を一時的に喪失させるも、システム上の偏光機能のバックアップにより、目を潰されなかった二人のみが


戦場の光景を目視する。


互いに大質量のエネルギー攻撃を撃ち合い。その衝撃で割れた光の柱が、周囲に浮かび、粒子を結晶化させた、宙に浮かぶ氷壁に触れると


砕け散ったそれらが、結晶の散弾となって、即席の物理オールレンジ攻撃へと変わる。


真紅の装甲の間に突き刺さる結晶体が、次第に敵機の駆動を侵食し、その動きが厳冬の熱さに浮かされ緩慢になっていく、


それでも突如、制御を取り戻したかに見えたその手に備えた大鎌が、敵に向かって振り下ろすが、そのコントロールは、


何かに侵食され、自らの機体へと突き刺さる。


火を上げて燃え上がる機体の内部で、ERRORを知らせるアラートが鳴り響く。


絶叫を上げて吠える。少女は、其の異常事態に混乱しつつも、操縦桿を出鱈目に動かし、


しじまに揺れる。コックピット内で動かぬ機体に悪態を吐く。


遠き夕日の空に浮かぶ光が、虚像の巨像を描き、周囲に舞う霧にその姿が投影され


それは、自分の影が霧や雲に投影されることで起きる。ブロッケン現象と呼ばれる光景に似ていた。


虹の光輪をその場に降臨させこの光の輪は、その場に御来迎ごらいごうの巨神の影となって


降り注ぎ、燃え上がる大地を結晶の園へと完全に書き換えそして、その場へと覆い隠して、


炎が、灼熱の劫火のフィールドと熱分解の刃が、次々と結晶化する氷へと変わり、緋の柱が、氷の柱へと書き換わっていく。


上昇した熱量が、+方向ではなくー方向へと切り替わり、周囲の原子の動きが完全に停止されると、


氷結される雪原の世界の中で、消えた機影を完全に見失い。


その動きを封じ込める。


...


...


...


完全に封殺される直前に機体を切り離し、離脱した真紅の機体を見送りつつ、


周囲を見回すが、あれだけ居た敵機の影が、巨神の御足に踏みつぶされ、焔に炙られ、誘爆し、


其れで生き残った敵機は残らず結晶体に包まれ、その動きを止めていた。


古いレコーダーから流れる音楽を聴き、ふと見た、黄昏時の夕焼けが、仄かに空を朱色に染めていく。


その光景を眺めて、心の中で、綺麗だなと、漏らし、


その頬から一筋の涙が流れる


嗚呼、この光景を君と見れなかった寂しさで、千千に乱れて、僕は子供の様に哭く。


既に静まった、戦場では、逃げ惑うモノはおらず。一時的に喪失した視力から回復した人々は、その光景を不思議そうに眺め、呟く。


「あれ?誰?」


物語は、続き、そして幕を閉じる。


毎月、月末最終日に2話更新予定。


誤字脱字、誤りがあったら修正するので、教えてください。

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