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無法者の詩  作者: 唯の屍
1/14

第一話「名も啼きドン・キホーテ」

此の物語の前に、誰も語らず。此の物語の跡にも何もない。

それでもと、願う。誰かの恋を謳う。無法者の唄。目指す路はハッピーエンドではなくビターエンド。

思いっきりの二次創作故に、ある程度、許容できる人だけ、観て頂ければ。

本来ならば作品のあらすじを乗せる場所なのは理解しているけれども、語る理由は一つだけ、それ故、ご容赦を。

尚、二次創作の許可は得ています。

※注意事項、2025年05月04日※

正確には、公式からの依頼の元書いているので、実情は、二次創作ではなく、1.5次創作です。


アンフォールンダウンその日、地球の大地と空に向かって、巨大な隕石が降り注いだ。


巨大隕石の飛来をいち早く察知した、一部の人間達は、核ミサイルでの破壊を試みるも其の手立てが、無畏に終わると理解ると、


早々に、地球に見切りをつけた。特権階級と呼ばれる数少ない人間達は、自らの家族と身の回りの少数の人を伴に、宇宙へと退避し、新天地を目指し探求の旅へと消えた。


その後、阻止限界点を超えて地上に墜ちた隕石による長い長い冬を経て地球に残った人達は、見捨てられたことすら認識できずに、過酷な環境を乗り越え、千数百年後、それぞれの国を統合、連合国家を形成し、墜ちた隕石と伴にもたらされた、資材と燃料を手に再び宇宙進出を試みる。


時はUD(Unfallen Down)1979年、落下した隕石の脅威を忘れないために付けられた其の名を持って、時は経過し、それは月と地球の重力の拮抗点、それぞれの場所に点在する5つのラグランジュポインとのうち一つ


L5に存在する。スタンフォード・トーラス型、その巨大なドーナッツ状のコロニーの一つ、ミーミルで起きる。


直径18kmを超え、一分間に1回転することにより、遠心力を発生させコロニーの側面側内部に0.9Gから1.0Gの人工重力を作り出し、内部は、居住区や農業区、工業区などに多岐にわたるブロックに分かれ。


その身に受けた重力は、地球のモノに比べていささか頼りなくも、この暗闇の世界にあっては、人が人たらしめるべくには必要不可欠なモノとなる。


何故ならば人は、重力に惹かれながら、生きるしかないのだから…


そしてそれぞれのブロックをトーラス内部に取り付けられている多数のスポークにより中央部分のハブに繋がれ、ハブは自転軸上に存在するため人工重力が最も小さい。


その為、宇宙港と機能している。今もコローニーを防備するべく、まるでリボルバーの拳銃にも視える特徴的な船体を覗かせる何隻かの船が並んでいる。


更には、暗い暗い宇宙の中で、照らされた太陽光を中央部のミラー郡により内部に取り入れ暗闇の中でも尚、其の光が人の住む場所にも降り注ぐ。


場面は、暗転し、そこは、コロニー内部の工業区との一角、


アイジェイス=ブラットワーカー28歳、工業区で、道路・電力・水道等の基本インフラの維持管理に、各種工業製品の削り出しや作成にも従事し、


都市整備に関する業務から、壊れた電子機器の補修、更には、夫婦喧嘩の仲裁から、ブラジャーの設計まで何でもするしがない、何でも屋を自称するサラリーマン、


無精髭を生やす精悍な顔にも、未だ幼さが残る。年に比べて幼く見られるのを嫌い、無精髭を生やしているがもちろん威厳など無い。


短く切り上げられた、淡い灰色がかった色の男の顔には、深く刻まれた傷痕が残る。


しかし、その表情には、些かの翳りもなく、ただ黙々と己の仕事をこなすのみ。


乗り込む作業用MS、二足歩行の所謂ロボットと言うやつを、重機代わりに操作し、今日も今日とて、仕事に取り掛かる


コックピットの操縦席の中で、過去のデーターベースから引っ張り出したお気に入りの音楽を流しながら、作業を開始し、其の音声に耳を傾けながら、その男は進む。


頼まれて居た工業用のパーツを、機体を操作し、器用に切り出し、一通りの加工を済ませ、納品。


「いつも悪いね。助かるよ」


と、声を掛けられるも、「毎度あり」っと答えて、路を進む。其の帰り道で、


視界の端で遠くで、密閉された空間の空調を調節するための大型ファンが回転している姿が垣間見え。


今日中に行わないと行けない作業は…コロニー内部のインフラ設備の補修。このコロニーも大分建設時から刻が経過して、所々ガタが着ている。


日々の設備の更新作業は急務と考えられていた。


その光景を眺めながらも破損した、電線の一部を取り合えるべく、テキパキと地中…コロニー内の専用ハッチを開き操縦する機体に搭載されているマニュピレーターを持ち主の手の形に自動でフィットする様に自動調整される操縦桿を握り、同じくフィットするように変形したフットペダルを器用に踏みながら、姿勢制御を行いスムーズに、交換作業を更新する。


コロニー内のインフラの停滞は、人々の生活や健康、死活問題へと直結する。送り出す空気が無ければ死人がでるし、電力が途絶えれば温度管理や様々な機能が止まる。


迅速かつ大胆にすすめある程度の作業が済んだ頃に、鼻歌交じりに操作をし、片手間に備え付けられていた製図作成キットを取り出し、何かの図形を書き始める。


すすいっと描き勧められたそこに移るのは、複雑な曲線と直線がないまぜとなった、何か?


その行為に意味があるのか分からぬまま、流れ出てくる音楽に併せて、筆を走らせ、次々平面の上で筆が踊り形になっていく


書き記す手は操縦桿に触れておらずとも、自らの思い浮かぶ様に機体を制御する其の動作は、思考とリンクして進む。


そう言えば、樹木の伐採用に…が、隣の爺さんが、欲しがってたな。だが、其れを作るには適当な素材が必要だしそれはどうした物か?そう思案するも操縦桿から手を離しているにも関わらず、機体は淀みなく動く、


長らく相棒としている。その機体は、隠された容貌を覗くと、嘗てGと呼ばれた旧式機体に似ているような気がするが、その真意は分からない。


そんな事、誰も教えてくれないから、


だが、何故かフレームと360度を見渡せる全天周モニターに操縦席周りが最新式かつ、その武骨なフォルムの色は紺鼠(こんねず)色、昔の東洋の島国で、流行った色らしいが、なんでそんな色なのか?甚だ疑問だが


頭部には、本来であればツインアイのカメラが覗く場所を目隠しの様に覆う無骨な長方形のバイザーが降ろされており


丸みを帯びたモノアイのスコープを備え、バイザーの左右に二本の円筒状のロックボルトらしきモノが視える。


そして、その隠れた一部分から覗く、線型は鋭く無骨で且つシャープな主顔(おもがお)の其の景観を覗かせ、何かを語るように其の不思議な表情を垣間見せる。


一部を除き外装の装甲は取り外され、黒く赤黒い稲妻の様な線が浮き出た基本フレームが剥き出しのままで、とても実用性が見られる様なものでは無かった。


だが、日々依頼される業務に関しては、問題無いし、戦闘をするわけでも無いからな、そんな自分の愛機に満足しつつ、接触回線成らぬ、有線ケーブルを繋いだ通信により、一緒に働く、同僚からの通信が入る


此の世界の無線通信やレーダー類は、いつの頃からか、どこからともなく空中に散布される何かにより、その量が濃くなると酷く不明瞭になる事がある。其のため、基本的には、接触回線か?短い信号による通信、若しくは有線ケーブルなどの接続で補っている。


情報筋の話では、特定の機体や発電所に搭載されているジェネレーターが発散させているのでは無いかと?言われているが、其の真偽の程は誰も知らない。


「おい、聞いたかアイジェイス、L2のコロニーの一基で、住人すべてが、消え去ったって、話だぞ?其の数1500万人、ほぼコロニーで生活する人、全てがなんだぞ?大ニュースだよ。」


勢い込んで語りかけてくる同僚に辟易しつつも、其の声に耳を傾ける


「周辺のコロニーから調査隊がでても、次々と通信が途絶して、誰も帰還せずに、状況がわからないらしい。」


「僕はきっとUNKNOWNの仕業だと思うんだけど?君はどう思うのかい?」と、


自らの予想と推測をないまぜにした意見を求めてくる。


UNKNOWN、最近顕れる様になった。未確認のその存在。実際に目撃した人物は、居ないが、

航路から離れた船舶や、コロニーの一部では、人が消え去る事件が、複数発生し、その存在を囁かれている。


其の話を嬉々として伝えてくる同僚に、表向きには何喰わぬ顔のまま、アイジェイスの背中に冷たい冷や汗が流れる。確か…の出身地がL2コロニーの…だったはず。


まさか?学生の自分、嘗て付き合いのあった彼女は、いつの頃か俺に何も言わずに去って行き、地元のコロニーへと帰っ行ってしまった。


其の理由は分からず。書き置きには、「ごめんなさい」の一言だけだった。


其処にあったのは、失望では無く。唯々、一体どうしてなのだろうかという疑問のみ。


それでも脳裏に過る思い出の似姿を思い浮かべながら、


手に馴染むように可変する操縦桿を握りしめ、嫌な予感を感じ取り、持ち込んだ有線ラジオに耳を傾ける。


確かに、ラジオの出演者が引っ切り無しに恐らく口から口腔に溜めた唾を撒き散らしながら熱弁する其の声に


いささかの憤りを感じつつ、耳を傾ける。


断続的に告げられる情報を聞きながら、この二足歩行のロボットに備え付けられている唯一の武装らしき武装である多目的溶断ビームナイフを、今は溶接用のバーナーとして転化し、最期に残った仕事として、破損している、専用ハッチの一部を修繕を開始。


ジリジリと音を立てて、光を放ち、破損した箇所を高熱の光により、溶かされた破断された亀裂を埋めながら、其の作業を実行する。


「おい、悪いが、ハナネ。野暮用ができた俺はこれで、一旦離脱させて貰う。」


仲間内からはその愛くるしい表情から跳ね鼠と揶揄されている同僚に一声を書けて、

業務の引き継ぎをする。


もう俺は必要ないだろうからなと、決して仲間内での蔑称をアイジェイスは使わなかった。そういう行為に対して酷く拒否感があったから、


「おいぃー?アイジェイス仕事増やすな...って、殆ど終わってるじゃないか?」


「嗚呼そうだよ、ただな、最終チェックがまだなんだ、二重確認は仕事の基本だろ?」


「流石は、新しき我らが曹長だ。」


「その呼び名はやめろよ。軍人でもないんだからな、どっちかと言うと、俺は古い人間なんだよ。」


「そんなことはないだろ。いつもあんたは…人の先回りをする。」


「意識的にしている訳じゃ、無いだろうが…」


その声を最期まで聞き取らず、そのまま、切り離した有線ケーブルを慎重に持ち、身長に二本足の機体を動かしながら、歩くが、それは機体のバランサーの機能なのか?

それも操縦者の腕なのか?滑る様に疾走ると周りに騒音と地響きを建てるはずのその脚が、スムーズに進み、その振動を押し殺し緩やかに去っていった。


会社のドックがあるブロックまで到着し、備え付けのメンテナンスドックに接続させると、接触回線により、再び有線ラジオに耳を方向け情報を収集する。やはり、L2コロニーの一基、アイリス、華の名前を冠したそのコロニーの住人が一斉に何処かへと消え去っていた。


今も其処に住んでいるのであれば…。彼女もきっと巻き込まれているはず。


その事実に、酷い焦りと焦燥感に苛まれながら、思い出す。


別れてから10年。


彼女との過ごした日々を唯の思い出にはしたくはない、あの時贈ることの出来なかったプレゼントは、

未だ、家の机の引き出しに眠ったままだ。


喧嘩をするのも些細な事で、其れすら俺たちにはコミュニケーションの一つであった。


彼女が惚けて悪戯な微笑を仕掛けて、俺が戯れ、そして最終的にいつも俺が折れて、元の鞘に収まる。

そんないつもの一幕なはずだったが、それでも彼女は黙して帰らなかった。


彼女との関係を一言で言うと、お互いの嘘を嘘として、見抜きあい、それでいて、時に、素直でない

軽い嫉妬混じりの焼き餅を伝えることすら憚れた、


あたし好きな人が出来たんだ。それが彼女の口癖だった。


喩えるなら、遠き夜空に浮かぶ十字星。いつか地球から見えるであろう、その星を眺めて一緒に歩きたいと願いながら


ついぞ其の日は訪れなかった


未練はあると言えばあるのだろう、あれ以来誰かと付き合う事もなく無畏に仕事に打ち込み続ける毎日で、一度も逢いに行くこともなく、途絶えた連絡先を何時までも通信端末に残したまま、意気地なしにも彼女を追いかけて行かなかった。


届かぬ、何度目かの宛先無しのメッセージが帰ってくるメールを送るも、やはり結果は同じだった。


息を吐いて、当たり前のその結果に嘆息しながら、昔の伝で、連絡若しくは情報を…と思った矢先に、


コロニー全体に鳴り響く轟音と、どこかで空気が漏れ減圧が発生した、緊急アラートが鳴り響く、


緊急事態に併せて他のブロックとの接合部分の隔壁が閉じ始め、他のブロックへの被害を抑える処置としては至極当たり前の話ではあるが…


現場を取り仕切る、監督官トーレス=モレロが、待機中のアイジェスに向かって、がなり立てる。


「急いで、空いた穴の修復に向かえ。此の分だと不味いことになる。」


やれやれこっちの都合も考えて貰いたい物だが、確か、デブリや隕石による外壁の破損には、其れ専門の人員が居るはず。何も専門外の俺がやらなくても良いはずだが、会社としても日頃の恩を返しておきたいらしい。


「了解。今から向かう。」


メンテナンスドックの固定ボルトを外して、一歩一歩、歩き出し、ラッチと一体化してる背面バックパックのスラスターを吹かせて宙に浮かび上がり、問題の破損箇所に向かって飛翔する。


本来なら、コロニー内でのスラスターを使用しての飛翔は固く禁じられている。何故ならば、着地を見誤れば、人や建物を推し潰し兼ねない。


今は、緊急事態として、スラスターを吹かせて、急行する。後で、監督官トーレス=モレロには、説明してもらわねばと、向かった先で、


アイジェスは、其れを目撃する。


中空で閃光の瞬きとなにかが破裂する光の偶に見えるその瞬きにより、争いの火種が燻り燃え上がっている光景を目の当たりにし、


眼の前で、コロニーの外壁補修を担当しているであろう、機体が、燃えるような赤い巨大な、竜に、噛みつかれ、振り回された其の機体がコロニーの壁面へと叩きつけられ内蔵している核融合炉が誘爆、爆発炎上を起こし、壁面に大穴が空き、コロニー内の大気が宇宙へと急激に、壊れた廃材とともに人影が吸い込まれ行く


突如現れた異形の存在と破損された外壁と、振動する大地の揺れは、コロニーの一ブロックの街を恐慌状態にするには、余りあるモノだった。


その赤い竜は、おおよそ身長数十メートルの巨影に、赤い首を擡げて、地に染まる乱ぐい歯を備えその容姿は、まるでおとぎ話に出てくる、悪竜のそれであった。


目が動き、こちらを捉えたかと思うと、


其の周りには、此のコロニーで一般的な防衛用の機体として配備されていた


ディエム・・・ラテン語で日を言い表す。その言葉通り


Carpe Diemカルペ・ディエム「今を生きよ」との慣用句と伴に、地球圏を統治する。其の組織名でもあるその名の一端を飾る機体は、


その白い機体色と、広く空いた視界を有するツインアイに、縦に長い六角形の頭部にV型6気筒エンジンのシリンダーを覗かせ馬の鬣のような複数のアンテナを広く有するそれに対して、


その機体は、シンプル且つ、洗練された形で、その所々には、

レーダー波を減算するべく、繋ぎの見えない流線型の形状と傾斜した外板を持つ


その手には、基本装備であるビームライフルと耐ビームコーティングを施したシールドを装備、本来であれば各種マウントラッチを備え特殊作戦用の追加装備も存在するが、

通常機体には、他の兵装は積まれていない。その基礎個体が襲撃者に対応するべく、コロニーの内外で中隊規模で展開される。


コロニーの基部以外の場所でもそれぞれの戦闘か開始され、主戦場となったコロニー内部では、

その口腔から吐き出される光の帯びが、触れたコロニーの何重にも重なった内壁をバターの様に溶かし穿き、様々な基盤装置を無に期しながら、其の余波で友軍機を薄紙を破くかの如く空中で撃ち落としていく


放射される高熱の粒子砲は、機体の脚部から徐々に電子殻チタン合金セラミック複合材を触れる端から

一瞬で融解していき、その射線が上方へと流れていくと、固いフレームに包まれたコックピットに至る


パイロットスーツの耐熱温度を軽々と超えて皮膚、肉や骨を触れた端から叫び声を上げるまもなくこの世から消滅させ、伸びる閃光の一打が、徐々に光の帯を減じて過ぎ去った後には、何もない空間のみが顕れていた。


更には、大穴を開けるその破損箇所へ、道行く人々が次々に吸い込まれていく。


中には絶望の表情のまま消え去るモノ、道行く子連れの母親が、中空へと投げ出される恐怖に慄きながらも子を抱えて、必死に助けを求める。


コロニーに住む人々が基本装備として装着している《スプーマ》、ラテン語で泡を意味するそれが、真空を検知した瞬間に、泡を放出し、熱と寒さに、およそ人間が生存出来ないであろう空間を克服するために半固形化、衝撃を殺し、命を救う救命胴衣として展開し、


宇宙へと流される。其の数は数え着れずに、此の儘、戦局が膠着したままでは、その救出もままならない。


次々と斃されていく、友軍機を前に、自らも戦闘に入るか?


だが、俺が乗っている機体は、あくまで、工業用の作業用機体


基本武装は、多目的溶断ビームナイフ一本の他には、作業用マニュピレーターのみ

それで一体何が出来る。迫る焦燥感を覚えながらも、選択を迫られる。


脳裏に嘗ての記憶が巡る


あれはいつのことだろうか?彼女と別れて暫く立った頃、


名も無い老人に、この機体を渡された。


「この罪深き、火の元も早晩、尽きる。明日この場所に、また来い。お前に、唯一無二の力を与えよう。」


「その時、貴様は自らの命運の行末を知るだろう。」


「戦え、戦え、戦え、抗い、争い、この世のあらゆる理不尽と戦え、其処にしか、貴様の生きる路はない。」


「全ては…〇〇の為に…◯すべき命運を超えて、其の手で掴め、今のままでは唯のモルモットにすぎない。」


「お前の後に続くものなど無い。唯己のみを信じ、そして全ての悪辣なる欺瞞に其の爪と牙立てろ。」


「折れた牙を継ぎ接ぎし、それでも前へとすゝめ。」


「儂が与えられるのは…。だけだ…」


掠れる声も絶え絶えに語りかける其の言葉に、まるで他人に告げる様に自らの思いを吐露する様なその言に不思議なモノヲ感じ、


その手足を義手に換えて、おそらくその身体の一部も機械化しているであろう。


その彫りの深い貌と、野放図に髪が伸び、萎びた顔にも、確かな意志の煇を燃やし老人は告げる。


この老人何処で、会った事がある?あれは、何処であったか?


誰かの顔に酷く似たその表情は、少し泣き笑いをしていた。まるで、酷く疲れるひと仕事を終えて安堵するかのような?


次の日に同じ場所を訪れると、此の機体のみが残されており、其処には端末に残された此の機体に関するマニュアルが残されていた。それを読み込む。


その特徴的な機体は、複数の腕部を保持し、同時に操ることで、様々な加工作業を行える事、


そして、一度唄を歌えばそれに答える。


そんな一節を覗き込み、これが、唯一無二の力なのか?と疑問に思いつつ、提示された工業機械は、免許を取り立ての自分にとっては、渡りに船、仕事場で使えるか今度相談してみようと、


頭に、上司の顔を浮かべ、ひとまず情報の整理を行いつつ思い浮かべる


あの老人はどこへ行ったのだろうか?消えたその姿に、一抹の不安が過る。あの口ぶりだと、まだ、何か言いたそうだったが、託されたのは、此の機体のみ


ハッチが空いたままで無用心だとは思ったが、どうやら、生体認証により、俺以外にはそもそも操作が出来ないようになっていた。


俺には生体認証を登録した覚えがないのだが?きっと、あの時、握手をした時にでもデータを取られていたんだろうと納得し、


そしてその操縦桿に手を取った。


それまで、色を失い、暗闇に包まれたコックピットの内部に火が入り、全展望の光景が広がり、

昨日取ったばかりの運転免許に少しの不安と、期待を混ぜて、機体の操作を行い。


一歩前へと踏み出す。


あれから数年。愛機として使っているが、その唯一無二の力の本当の意味は、未だ分からなかった。


眼の前で繰り広げられている戦闘では、巨大な竜を取り囲むように展開する

ディエムの一機がその手に持ったビームライフルの引き金を引き


銃身下部に備えられたエネルギーパックから流れ出た加圧されたエネルギーが増幅器を経過し、そのエネルギーを増しつつコンバージョンリングにより更に圧縮加速され、砲身により、方向性を決められた閃光を放つ粒子砲の一種であるそれが、目標に向かって放たれる。


狙いは熟練のパイロットの腕通りに、命中するが、その巨体の直前で霧散する。


チッ舌打ち一つを叩き、こんどは狙いを随伴するそれでいても十数メートル台の小型の竜に向かって引き金を引くが。


腕を盾にして、其の直撃を防ぐと、何事もなかったように、反撃のビームを吐き出す。


今、なにか半透明な障壁?いや小型の盾の様なモノが一瞬、ビームライフルの閃光に照らし出されその輪郭が仄かに見えたが、


こちらの攻撃が一切通らずに、ディエムの一隊は攻めあぐねている。


その間にもアイジェイス=ブラットワーカーは、背面のラッチから、コロニー補修用の粘着性の素材を撃ち出し、同時に弾体内部に内蔵したワイヤー部を展開、それを骨組みとして破損した壁の代わりとする特別製の大型のトリモチランチャーを取り出し連続放出。


破損した外縁部の補修に乗り出す。白濁した粘着性の弾帯が、次々に打ち込まれ、其の穴を塞ぎ始めるが。いくら穴を塞げるとしても一時凌ぎにしか成らない。


早いところ、防衛隊に奴らをどうにかしてもらわないと…遠くから、補修作業用の自立型ドローンの群体が、補修材を抱えて飛来し、自らも傷ついた傷口に出来る瘡蓋の如く、


その身を展開しながら傷口を次々に補修し始める。


ふと、脳裏で、ひらめきが疾走る。


メインスラスターとバーニアを、小刻みに吹かせながら、降り注ぐ弾幕を右往左往しながら回避。


機体を横に倒して低空飛行、巨大な竜の背面から放出される。数条にも及ぶビームの柱が。弧を描きながら次々と着弾していく


死の雨の中を、ギリギリの軌道で避けていく。


脇を通り抜けると同時に、トリモチランチャーを、竜達の手足の関節部に叩き込み。


其の動きが、目詰まりを起こし動きが止まる。


してやったりとばかりに、戦場を駆け抜けたと同時に、短距離レーザー無線による通信で、


アイジェイスは、隊を率いる隊長機に呼びかける。


「こいつを斃す手を思いついた。時間が掛かるから、暫く時間稼ぎをしてくれ。」


そう言って、残りの外壁に空いた穴を次々に埋めつつ、撃墜された機体から、予備の弾倉が収められていた弾帯をすくい上げるように掴むと去っていく。


ディエムの隊長機に乗る。イゴール=マッケンジーは、突如現れた、工業用機体を駆る


その男の自身に溢れたその声に、疑念を持ちつつ、目の前の脅威を非武装の儘、

一時的とは言え、止めたその手腕に賭けて見る事にする。


「わかった30分は持たせる。だが、此の儘倒してしまってもいいんだろ?」


(時間稼ぎと言っても…誰だか知らんがお前がやった事をするだけだが?)


「各員、ビーム兵装は、効き目が薄い。補修用のトリモチを奴らの関節部に叩き込んでやれ。」


「動きを止めたら、各機、近接攻撃に移れ」


其の声を知ってか知らずか?頷くように去っていくその機体に、答える。


散開しつつ三回づつ、トリモチランチャーと盾を構えて、前腕部の手首から放出。

粘着物であるトリモチが、各部の関節部にまとわりつき目に見えて其の動きが鈍る。


「何をするつもりか分からんが、早くしないと斃してしまうぞ?」


そう不敵に咲うイゴールを他所に…彼は、死地よりい出て、死地へと向かうべく逝く。

一歩一歩進み周囲の建物を押しつぶしながら進む、其の姿を遠巻きに包囲しながら、放たれる一撃を回避する為、周囲に立ち並ぶ建造物に隠れながら、その射線を切りつつ、応撃のトリモチを放ち続ける。



合間に、牽制としてのビームライフルの斉射も当たりどころさえ、考えれば、有効かもしれないが、依然として効果が無い理由が分からぬ状況では、


コロニー内での射撃攻撃は、外壁を破損させるおそれもあり、控える必要がある。


放射状に放たれる拡散する波動の光を各機が回避しつつ、戦いは続く。


「Carpe Diemカルペ・ディエムッ!!!」


各々で、生を謳う、その「今を生きる」、其の願いの言葉を投げかけながら次々と撃墜される僚機と同僚の声に耳を聞かせて、どうにか打開策を練るが、


こちらのビーム兵器を無力化するその種が分からない。


それでも、数機の僚機が、相手の死角へと回り込み、どうにか其の防御を抜けるべく、奇襲を駆けるが、駆ける其の脚とは、裏腹に、其の試みが無為へと変わる。


叫ぶ、僚機の一体が、其の手に装備したガトリングガン状のビーム発振器を構え、ビームライフルと同じく、増幅し、加速された。ビームの粒子を撒き散らしながら、其の目標物へと肉薄する。


発射された粒子砲は、やはり眼前に到達するやいなや、UNKNOWNの直前で、霧のように霧散。


やはり効果が無い。


反撃の射撃音が鳴り響き、竜の鱗が剥がれて、弧を描きながら、攻撃を加えるディエムに着弾。その装甲を次々と貫きながら、停止。


退避する間もなく、撃墜されて行く。


友軍の不利を悟りながらも、ここで引くわけにも行かず、遠巻きに、包囲しつつ、その脅威に対抗すべき


案を練り続けるが、打開の一手は未だ産まれず。


代わりに、狙撃用の大容量ビームランチャーを抱えた、二基が、その砲身を構えて

狙い撃つ。


通常のビーム砲が弾かれるならば、其れ以上の大出力の火器を持ってすれば、その防御は破れる筈と、

本来であれば宇宙空間で使用されるのを前提としたその内蔵したジェネレータと直結された一射を見舞うべく、複数ある増幅器を経由し、粒子の加速と増速を繰り返し、∞に交差するエネルギー循環路を通り放たれる。


その一撃は目標を外せば、コロニー内部に甚大な被害をもたらす。


固定砲台となったそれに、気づいた竜が砲口を上げて、その光の帯の撒き散らす。


ややあって、躊躇するも互いに一射の打ち合いを開始。


「撃ってェーい!」合図とともに射出されるそれが、


何もないコロニー内部の空で、互いの一撃が衝突、球状のプラズマを発生しつつ誘爆。


周囲に衝撃波を放ちながら、降り注ぐ、プラズマの雨が戦場を広げていく。


しまった…外したと、慄く射手に、次射を促すも、相手の次射の方がいち早く到達、


大型ビームランチャーの砲身が灼かれ、


メインカメラの視界いっぱいに広がる閃光に包まれて、僚機の姿が掻き消える。


虎の子の一撃も無為に終わり、残る手立ては…


・・・


・・・


・・・


奮戦するそれらを横目に、心のなかで間に合えと叫ぶ。


向かう先は、今日の作業の合間に見かけた。その光景を思い出す。

昔読んだ物語ではは、気が触れた老人は騎士となり、竜に見立てた風車と争った。


結局その老人が竜を斃す事が出来たのかは、分からないが、ならば、俺もその逸話に殉じよう。


空調用ファンが廻る其の場所に降り立つと、緊急用のハッチをサブアームの先端から伸びる更に小ぶりなマニュピレーター操作して空調用のファンの動作を止める。ブレーキ音ががなりたてて、急制動を掛けてその動きが次第に弱まってくる


止まるまで暫しの猶予があるので、その間にも、コックピットに備え付けられていた製図作成キットを取り出し、残りの部品に関する製図の完了に手を掛ける。


問題は、その加工スピードだ。


手動で削り出すには、いささか時間が掛かりすぎるが…仕事柄それは手慣れたもので、現場で足りない部品があれば其の度に、書き溜めて置いた部品の製図を元に


CNC(Computerized Numerical Control)機械と3Dプリンターを組み合わせた、自動実行プログラムを起動


その画面に表示された文字は、


《Gifted Unchained Navigators Defying All Misconceptions》と刻まれ


「天より与えられし力を持って、何者にも束縛されず、すべての誤解に立ち向かう案内人」を自称するべく、其の行動を開始する・


我ながら、その画面に踊る言葉の意味を噛み締め、自らを嘲笑し嗤う。


何が、全ての誤解に立ち向かうだ?人と殴り合いするしか無い此の俺に、何を期待して、此の機体を贈ったのか?其の意味は未だ分からない。


頭の中で渦巻く疑念と諦観がないまぜになった心持ちのまま、アイジェスは、作業に取り掛かる。


状況を打開するべく材料は既に揃っている。後は作業を開始し、用意したピースをはめ込んでいくだけだ。


停止した空調のファンを、多目的溶断ビームナイフで切り分けると


肩部分の装甲が湾曲した城壁のような盾と成って、マニュピレーター伴って稼働。

先端についた、研磨機などにより素材形成作業などを行う。


マニュピレーターは、肩、腕、脚、背面にそれぞれ設置されている。普段は折りたたまれて偽装されている工作作業時に展開して稼働する。それらの隠し腕を駆使して、


出来た部材を計8つの隠し腕が掴み、起動、次々とその手に存在する研磨機をもって部品を切り出し削り出していく。


必要な部品は、大まかに10種類


1つ、エンジンまたはモーター《チェーンソーの動力源》⇒問題は既にクリア、多目的溶断ビームナイフのジェネレータから直結しているその機構を流用する

2つ、ガイドバーは、《チェーンが回転するためのガイドレール》⇒振動機構による加工でクリア

3つ、チェーン、《回転して物体を切断する刃がついたチェーン。》⇒これは金属の加工では、難しい、さっき拾ってきた弾帯に削り出した刃を熔接してクリア

4つドライブスプロケット《エンジンまたはモーターの動力をチェーンに伝えるための歯車》⇒レーザー研磨機構による加工でクリア

5つアイドラー(遊び歯車)《チェーンの張力を調整し、スムーズな回転を維持するための部品》⇒レーザー研磨機構による加工でクリア

6つオイルポンプ《チェーンとガイドバーの摩擦を軽減するために潤滑油を供給するポンプです》⇒一度きりの使用に耐えれば良いのでオミット

7つハンドル(フロントハンドルとリアハンドル)《チェーンソーを操作するための握り部分》⇒接続した多目的溶断ビームナイフで流用

8つスイッチとコントロール《エンジンやモーターのオン・オフを制御するスイッチや、チェーンの速度を調整する》⇒接続した多目的溶断ビームナイフで流用

9つチェーンブレーキ《緊急時にチェーンの回転を停止させるブレーキ装置》⇒接続した多目的溶断ビームナイフで流用

10つ燃料タンクまたはバッテリー《動力源》⇒接続した多目的溶断ビームナイフで流用


それらの工程を一息に、起動したプログラムに読み込ませた製図にそって切り出し、2本の腕と八本のマニュピレータで、溶接を行いながら、其れを組み上げていく。


そして完成したのは、一丁のチェーンソー。試運転代わりに接続した多目的溶断ビームナイフに火を入れ、独特の稼働音を鳴らしながら、廻る刃を確認し、急いでディエムが奮戦する戦場へと舞い戻る。


問題はあの龍が吐く大火力のビーム砲をどうするか?生物か機械なのか?そもそも襲ってきた目的すら分からぬ相手にどうやって接近するのか?


小型と巨大な竜を模した何者かに向かうディエムの一隊が奮戦し其の動きはトリモチによって阻害されるも、もがき始める。


もうすぐ30分になるが、小型の竜が動けなくなった隙を抜い。ビームサーベルを引き抜きその手に持って突貫、


至近距離からの一撃を見舞い溶断する其の刃が、相手の装甲なぶり、切り裂き重厚そうなその装甲を飴細工の様に斬り倒す。


この装備と機体でも、やれるぞ…斃せるぞ?


もう一体と、向かうその先に…。


鎮座する動きを止めた巨大な竜は、大口を開けて、体中の発振機から光る何かを放出し始める。


「隊長、高熱源体が…」


画面の向こうで、上半身を焼かれながら消えていく同僚の姿が、一瞬映り、


「アンザぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁス!!!!!」


隊長の「各自ランダム回避運動開始!」の声と伴に、変速機動による回避行動を開始。


とっさの回避行動により、手に持ったビーム発振器を取り落とし、前面に立てていたシールドが、其の余波を受けて、融解し始める。


そして、直撃を受け破砕し、溶鉱炉に浸された金属の様に溶解される。友軍機体から、炸薬音と伴に、


何かが機体から射出される。


白く泡立つ半固形化した其の物体が、衝撃を殺すように展開、落下運動の直前で


パラシュートが展開。自由落下を繰り返し、破損した外壁から気が吹き出す其の勢いのまま、吸い込まれ消えていく。


視界の端で其の姿を捉えて、吠える


「返事しろ?!生きてるなら」


短距離通信で、繋がる声色は、緊張感の無い。咀嚼音が続く。


「んが、んぐく?!」保護された泡の内部で、非常食用に取っておいたハンバーガーをぱくつきながら、「なんで貴様、食い物喰ってるんだ?!無事なら無事と言え。」


「ふぁぃ!ただいまお腹いっぱいで夢一杯であります(`・ω・´)ゞ」


「隊長の分もありますよ?食べますか?」


大分緊張感の無い其の台詞に、イゴールは、其の答えに嘆息しながら、その無事を喜び、笑う。


トリモチランチャーの一斉射出を開始、相手の関節部に、行動を阻害する策にでて、次々と竜の口から放たれる光の流線型の弾丸を


手に持ったシールドを構え、背面と脚部のスラスターを吹かしながら半円の動きで防ぎ、接近し、こちらの遠距離攻撃が防がれるならばと、


腕部の手首から射出される棒状の何かを掴み、くるりと手首を回転させながら受け取ると、


すれ違いざまに、其の身体の中心部をビーム状の刃を形成するビームサーベルを展開、刺し貫き、其の存在を撃破するべく


肉薄するも…。


吹き上がる熱閃を伴う其の刃が、何かに阻害されたのか、機体の目前で、四散、霧散を繰り返し、弾き飛ばされる。


その余波により、散ったビームの雨が街の周囲のビル郡を破砕、打ち崩していく。


此の儘だと市街地への被害が出る。其れを避けねば成らぬ。今の一撃の余波で巻き込まれた市民が居ないことを祈りながら、


チッ


舌打ちをひとつくれて、


接近武器も駄目なのか?考えられる方策としては…あとは…


バックステップと、バーニアーによる制動を掛けて、交代しつつ、トリモチランチャーをその口腔へと射出、其の口を塞ぐが、


いやいやするように吐き出された極太の閃光が奔り、其れを更にフットペダルを踏み込み前進し、


死角に入ったものの攻撃手段を喪い、二度三度と穿く様に突き出すが、何かに阻まれるかの様に、ビームが散る。


其処に巨竜の身体からディエムの身長にも達する、鉤爪の腕部が機動、その身体を掴みあげ、其の衝撃により、


モニターに危険を知らせるアラートががなり立て、衝撃を感知したコックピット内に、エアバック状の機構が展開され、


鼻血を撒き散らしながら、その身体が揺れる。


飛散した血を、ヘルメット内の吸引機構により吸い込むと、展開されたエアバックが元に戻り、

視界いっぱいにその巨体をまざまざと見せつけ、機体の各部が軋み、フレームが捻じれ斬れる様な、音を立てながら、


次第に圧潰するように、コックピットの内壁が徐々に迫ってくる。


「ぁ・・・あ゙ぁぁぁあ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙、潰…」


絶望の声を上げる、其の時に、周囲を囲む友軍機は攻撃の手を模索しつつ、手持ちの武装を使って狙い撃つが、其の全てが弾かれ…


応撃としての友軍機に向かって光の帯を放つ大口径の粒子砲を放つ、


視界一杯に広がる閃光の其れが、徐々に消え、その射線上に、唯一の装甲箇所である肩部の湾曲した城壁の盾を翳し一直線に、スラスターを吹かしながら、突撃するアイジェイスの乗機に、


降り注ぐ光の路が、直撃。


その姿を溶解させたかに見えるも、その熱線と盾が衝突し、大口径の光の帯が盾の湾曲部分に沿って飛散、分散、拡散し、


周囲の瓦礫と建物の外観を溶かしながら、驟雨を乗り越える傘の如く突き進む。


「頼むぞ、答えろ。相棒ッお前に無二の力が有るのであれば。其の願い、其の想いを力に。」


吹き散らす光の帯を、メインスラスターとバーニアを、側面へと流れるように機体を回転、その衝撃を後ろに流し、


赤熱化し、その装甲面を白熱化、徐々に溶解されていく盾を前面に展開しながら、突撃。


ぞのまま、体当たりを慣行、その砲口に蓋をする形で、見舞った一撃により、射出口を防がれ暴発し、開口部を破損させると、


更には其の手に掴まれた腕部にも衝撃を与え、窮地を脱するべく、それでもそれでもと、前へと進み


「とッどぉけぇぇぇぇぇぇぇえええええええええええええええええええええええええ」


大きく振り上げ、叩きつける様に振るわれた。即席のチェーンソーを対象の装甲の隙間と隙間に差し込み、


火花を散らしながら、金属が斬り裂かれ、掴みかかろうとする其の鉤爪の魔手を半ばまで切断するが、

其の刃とチェーン代わりに使用した弾帯に亀裂が入る。


返す刀で、さらに刃を奮い、その応力に堪えきれず次々と破損し始めるも、その刃は、確かにその巨体の装甲を引き裂く一撃は、数度使えるか使えないかの即席の刃、されど、確かにその装甲に届いた。


狙うは…一点。


その身体が、こちらのビーム兵器を霧散させた瞬間に、拡散する中心点に見えるその二点の箇所の一方に叩きつける。


有り合わせの素材で作られた刃は、瓦解し、崩れるも、その発散機構の一部を、切り落とす。獲物を喪い、交代するアイジェスと其の瞬間を捕らえたイゴールは、中破したその機体を残ったスラスターを爆散させつつ入れ替わるように、


手に持ったビームサーベルを破損した箇所に向かって差し入れるように突き出し、発振機構をゼロ距離から突き入れる。


「あゝあゝあゝあゝあゝあゝあゝあゝあゝあゝあゝあゝあゝあゝあゝあゝあゝあゝあゝあゝあゝあゝ嗚呼ッ!!!!!!」


ここが狙い目だと、最後の突貫を試みる。


すると其の巨体が、崩れ落ちるように、倒れ込むと同時にエジェクションを発動。炸薬の破裂音と伴に、


コックピットから吐き出されると同時に、自壊し、排出される姿を残し、其の対象の動きが沈黙する。


その口腔から血の滝を滴り落としながら崩れ行くその体躯に、その犠牲者の末路を滲ませながらも、


戦闘が終わる。


猛々と、煙を吹き上げ、巨体を前傾姿勢で斃れ込む其の姿、確認し、敵の無力化に成功した事に安堵するも、コロニー内部での被害は甚大


冷や汗を描きながら、その手応を感じるも、今一瞬なにかの人影が見えなかった?かと、カメラのズーム機能を使って確認するも、煙が晴れた後には、既に確認出来なくなっていた。


気の所為か?とややあって周囲の被害を確認すると、焼け野原になった町並みと友軍機の姿を眺め、


MIA(作戦行動中行方不明)となった友軍数名と、戦闘に巻き込まれ行方不明となった一般市民の其の数は、数百名はくだらないだろう


巨影を落つる刻に、それまでバラバラに活動していた小型の竜型は、撤退行動に入る。


追撃に入るべきか?救助とコロニーの補修に疾走るかややあって迷いつつ、自分は前者を選ばなかった。


何もアイジェスは、軍属でも殺戮者でもない。ただ、己の領分さえ守れれば良い。その領分が他人よりも広いだけで…ただ其れだけだった。


残る機体や船籍を持ってその戦跡の傷痕を塞ぐべく奮戦する。


イゴールとアンザスは、比較的流されても近辺を漂って居た為、直ぐ様、原隊への復帰が叶う。


沈黙した、異形の生物か?其の物体の調査に乗り出す。


その構成性質は、有機体のそれでもあり、無機物の機械の様にも視える。


消えた市民の姿は様と知れず。後に残るのはその大口に流れる鮮血の後のみだった。


アイジェスは機体のハッチをオープンし、沈黙する其れに対し、視界を睥睨し、大気が灼かれ、周囲に強く香るオゾン臭を嗅ぎながら、その起きた結果を噛み締め、苦味を含んだ、表情を見せる。


危機はまずは去ったが…遠くで、自分と同じようにコロニーの破損を修理するための作業用機体が多数、其の身の背後に火を駆けながら、トリモチランチャーや、鋼材を運び込み次々と補修作業に取り掛かり始める。


自分も、このまま、漂流者の救助に取り掛かるべきかと悩みつつ、シートに座り、操作を再開


機体のコックピット内に表示される。コンソール画面には、《スプーマ》から発振される多数の救助信号が見て取れる。


それと頼りに、手近な場所に流れる《スプーマ》に覆われた人影をすくい上げると、短波レーザー無線により、無事を確認する。


「こちら統治連合Carpe Diemカルペ・ディエム所属。ミーミル防衛隊3番隊隊長、イゴール=マッケンジー貴殿の協力に感謝する。」


「すまないが同じく漂流している部下や市民の救出を願えないだろうか?」


「こちらドヴェルグ社所属、三級運転技師者、名も啼きドン・キホーテとでも名乗らせてもらおうか、無論、協力させて貰う。」


との問いに答えると、UNKNOWNの周囲に展開する友軍機の集まりから、こちらに向かって飛んでくるディエムの一隊に


イゴールの身柄を引き渡すと、ディエムの数体と並んで、救助活動に乗り出す。


機体の鈍重さをものともせず、まるで人間が、空中浮遊しながら活動しているかのように、宇宙に向かって吐き出された、


人々の回収を繊細なタッチの操作で行い。そして、救護にも乗り出す姿を観て、あれで三級?!と疑問を呈するも、


其の疑問に答える人は其処には存在せず。


それから後は、損壊された建物や、外壁の大穴に対して、作業の協力行い、負傷した人体を瘡蓋が覆い傷口を塞ぐようにコロニー内部の破損状況も幾分か改善されつつある


それでも、穴から漏れ出して喪った大量の空気と水を取り戻すには多大な労力と物資を必要とする。

ここは宇宙空間、そのどれも貴重なもので、どこからともなく降って湧く事などない。


大きく軋み崩壊するかに思われた、その躯体を、完全に修復するにはまだ暫く掛かるだろう。


どれだけの時間が立っただろうか?


とりあえずの応急処置を行い。


ふと気づくと、破損した即席のチェーンソーの代わりに、破壊した。UNKNOWNの身体の一部である剥落したなにかの発生機関を掴んでいたことに気づく


此れは、もしや、使えるのかも?と脳裏によぎるが、UNKNOWNに関する調査は、今も続いている。

協力していたとは言え、周囲を警戒する部隊に、混ざるわけにも行かず。自らの所属の社名と名を告げ、改めて謝意を伝えられるも、その場を離する。


どうやら、破損させた空調のファンについての問題追求は、緊急避難の一種と認められて不問にされたようだ。


まぁ、賠償を求められても、指示した会社に押し付けるつもりではあったがな…


聞きかじった話では、被害は甚大で、UNKNOWNの目的も、その存在も未だ謎らしい。

社用のドッグのメンテナンスドックに戻ると、監督官トーレス=モレロに事情を話し、機体から降りると、長時間の作業を経ての久しぶりの熱いシャワーを浴びる。均整の取れた、肉体が、流れ出る温水がその身体を這わせながら流れていく。


シャンプーの泡を立てながら、身体を洗っていると、同僚のハナネが隣のシャワーボックスへ入って着て、にこやかに話しかけてくる


「やぁ、アイジェス。随分とご活躍だったみたいだけど、知ってるか?補修作業に駆り出されたついでで、小耳に挟んだんだが?」


「コロニーの軍警は、UNKNOWN、未確認生命体なのか?新種の軍事兵器なのか分からないが、新たにL2コロニーへの調査隊を送り込むらしい。」


「数艦の艦船を引き連れての強行軍らしいが、UNKNOWNを撃退した我が軍なら、きっとやってくれるよ。」と、意気揚々に語りかけてくる。


其の話に、頷きながら…どうにか、同行できないか?と、思案する。


彼女の無事をいち早く確認したい。今更、どの面で逢いに行けば良いか、正直言って分からないが…それでも…


会社経由で打診したとて、単なる工業作業者である自分には、軍隊の調査隊に同行するなど、難しい話ではあるだろう。


…心臓の音を疾る心が、急かす様に蹴り上げ、一言呟く、


「きっと…君に逢いに行く。」


誰にも聞こえないように呟く声は、シャワーの音にかき消され誰の耳に届かぬまま、消え去る。


シャワーから降り注ぐ温水をバルブを締めて止めると、濡れそぼった髪を振り、水を切り、シャワールームのスイングドアに掛けていた、


タオルを手に取ると足早にその場を離れ、何かの目標に向かうべく、産まれたままの姿で、ふるちんのまま進む。


髪を乾かし身支度を整え、紺色のジャンプスーツに身を包むと、愛機に乗り込み、意を決してメンテナンスデッキから、飛び出る。


不安と希望がない混ぜになった。心持ちのまま男は宇宙を見上げ、何を思う。


そして、軍部は其の頃、回収されたUNKNOWNについて、様々な検証を行うが、其の殆どが解明できず、わかった事は、その存在が有機体と無機体の混合体で構成されている事が理解る。


ひとまず、撃破した其れを解体し、其の大半をコロニーのメインシャフトに存在する機関部に存在する基地へと運び込まれていた。


身支度を済ませ、監督官トーレス=モレロへ、断りを入れ、どうにか自分も参加できないかと、

調査隊の船舶が停泊しているであろう宇宙港へと、向かう。


戦闘行為が終わり、スラスターを使っての跳躍による移動は、運用ルールに抵触するおそれが有る為、コロニー内部のMS専用の車線に入り、数多あるスポークに上がる為の大型搬入用のエレベーターへと続く道を進む。


其の途中で、徐々に解体される巨体の竜の遺骸が視えるも、試しに監督官トーレス=モレロに、UNKNOWNの解体に自分たちも加われないか?と打診してみるも、「そりゃ無理だよ。我らが会社はしがないインフラ請負人にすぎない。」


とけんもほろろに断られた。


ならば、直接直談判するしかないと、その現場を横目に、中央部分のハブに向かって進む。

しかしその出入り口には、二機のディエムが並び、接近してくるアイジェイスの機体を見ると、ビームライフルの銃口をこちらに向けて、静止を促し警告を与える。


「そこのMS、止まれ。何用だ。」


コックピットのハッチを開けて、敵意が無いことを示しながら、自らの所属する会社と、姓名に、希望内容を告げ、どうにか一緒に連れて言ってもらえないだろうか?と、掛け合う


「こちら、ドヴェルグ社所属、三級運転技師者のアイジェイス=ブラットワーカーだ。折り入って相談がある。」


元々、ダメ元では有るが…なんとか、渡りを付けられればと、

喰い下がるが、監督官と同じく、今は警戒中だ、部外者は帰れの一言で、邪険に返される。


それでも…どうにか?と喰い下がるが、血気に疾るディエムの一機が、銃口をこちらに向けてくる。


あわや一触即発のその時に、恐らく解体されたUNKNOWNの遺骸を載せた。大型のトレーラーが通りかかる。


その光景を観た、助手席に座っていた。金髪のクールカットの軍服を着た男が、何事かと?大声を上げて問う。


「はっイゴール大尉、怪しい奴が、自分も調査部隊に入れろと押しかけて降りましてッ!」

その特徴的な機体の姿は、確かに見かけた事がある。


「銃口を下げろ。大丈夫だ。我々の味方だ。問題ない。各位下がれ。」


その言葉を持って、殺気だったディエムの動きが、弛緩する


「一旦話をしよう。機体から降りて貰えるか?」


そう告げる言葉に併せて、コックピットから自動昇降機能の付いた梯子を卸し、


地面のイゴール大尉と邂逅を果たす。


「いやぁー助かったよ。だが、何故調査隊に加わろうなんて思ったんだ?ミスター、ドン・キホーテ。」


「貴君に、聴きたい事があって、会社を訪ねたんだが?既に会社を出たと、君の上司が言っていたので、入れ違いだな。」


「名もなき、貴君に問う。どうしてこちらの攻撃を無効化してきた奴らに攻撃を届かせられたんだ?」

「詳しい調査はこれから何だが、そこら辺の話について意見を伺いたい。基地まで同行して頂けるだろうか?」


それこそ渡りの船の如くの話に二つ返事で、承諾する。


機体に乗り込み。トレーラーの誘導の元に、基地への入場を果たす。


其処に待ち受けるのは、生か蛇か、何が出るかも分からぬ儘、気の狂れた騎士は、戦場へ降り立ち


そして、物語は続く。


更新時期は、毎月、月末最終週の火曜日に二話更新を予定していましたが、月末日に変更します。

よく考えたら準備期間が一か月未満は無理だった。申し訳ない。

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