入学
才能は両親の才能を大抵引き継ぐ。
才能が分散し、弱くなることを避けるため、近い才能を持つ者たちで才能を磨き、結婚に至る、そうしてこの国では才能を継承してきた。
私の前世とは違い異性のまぐわいで生まれるのではなく、愛し合った2人が教会で魔核をささげることによって生まれるのだ。
そんな世界に生まれた私は、前世の記憶がある。いわゆる転生ってやつだ。
ここの世界では子孫を残すためには魔族の核が必要であるため、安定して確保ができる強い才能を代々引き継いできた一族の権力が強い。
ここでは才能のあるものを見出し、次の国の時代を担う子を成すため。
人材を探すという目的も兼ねている。
今日はそこへ入学する日だ。それと併せて能力を管理保管を目的として、能力の鑑定とそれを自動で記入される魔道具に手をかざす。
この能力測定が今後のクラス、待遇等に関わることは明白
この魔道具に手をかざせ。
この大柄でガタイのいい男が手をかざせと促している。
かざせば才能が分類、ランク付けされるらしい。私は手をかざした。
“(射撃の才能)適正不明”
「なんだよこれ、見たことない才能な上に適正が不明?」
目の前の男は物珍しそう、かつ訝しげな顔を示す。
見たことない能力、そんで適正ランクもわからない?
これじゃ資質があろうと学園は必要としない。不合格だ。
適正が不明だったことは自分でも驚いた。
だけど、わたしの射撃の才能は前世での記憶に関連のある能力、適正が不明だとしたって並大抵の人よりはできるはずなんだ。
わたしは両親が誰かもわからない、でもこの才能は大切で入学前から鍛錬は欠かさなかった。適正がわからないだけで不合格は納得できないです!
「いや、両親もわからかいお前は魔核の残りかすから生まれるまがいものだと思ってるぜ。
俺から言わしてみたらお前は魔族みたいなもんだぜ」
吐き捨てられたセリフに思考が鈍る。短絡的と取られても仕方ない。怒りに染まった頭は両手に冷たい質量を作り出す。
銃の形に変わった、魔力は前世で触れた本物と違いがわからない。それを相手の男に構える。
手合わせしてください。
そういってわたしは、冷たい視線をガタイのいい男に向けた。
いいぜ、魔力操作はできるんだな。死なないようにがっちり魔力壁固めとけよ?
男は、わたしの背丈よりもはるかに長い大剣を生成させた。
珍しい才能は大抵その代で終わるんだ、理由は言わなくてもわかるだろ?
男は話している最中に素早い踏み込みを行い、間合いを詰めてきた。
っ…はやい
咄嗟に魔力壁を生成する。
(ガキン!)
魔力壁と大剣が衝突する。
大剣は振り上げが見えたら軌道がわかる。魔力壁はその軌道に作るだけ。
完璧に生成する時間はない。打ち下ろされるルートにのみ硬度の高い魔力壁を生成し受け止める。
戦闘経験はないけど、なんとかなった。
俺の踏み込みに対応できんのか、やるじゃねぇか。
そういうと間髪をいれずに蹴りがくる
あ゛あ
強い衝撃に声が漏れる。華奢な体は強く吹き飛んで壁に打ち付けられる。
視界がかすむし口の中は血の味がする。
(力がはいらない)
ここまでやっちまったら殺しちまうしかねぇな。
…卑怯だ。剣撃を受け止めただけでも適正はあるはずなのに。
悔しい…目の前の男に使えないと一蹴され、このまま命を奪われるなんて
かわいい顔で死ねなくて残念だな、武器構えたんなら負けても泣くな
振り上げた大剣が振り下ろされ、風が切断される音が聞こえる。死ぬ瞬間ってスローモーションになるなんて聞いたことがあったけど、本当なんだ。なんてことを考えながら目を閉じた。
……
衝撃が来ないまま数秒が経過した。
目を開けて何が起こっているかを確かめる。
お前、なにものだ?
目の前の男が問いを投げたその少女は片手で大剣を軽々と受止めて男を睨みつける。
…お前は指導者としての資格がない
そういいながら片手で軽々と大剣を受け止めたその小さな少女は私を見ながら、ほほ笑んだ
力がはいらねぇ…。
男は込めていた力が抜けたのか、その場にへたりこんだ
「大丈夫?」
少女から向けられるその問いにうなづいたところで私の意識は落ちた。