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この作品には 〔ガールズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

婚約者は子爵令嬢に夢中らしいですが、正直どうでもいいです!

作者: ねお

初投稿です!誤字脱字他色々変なところもあるかもしれませんが暖かい目で見ていただけると嬉しいです( . .)"

時代は今よりもけっこう昔、あるところにそれなりに小さく平和な国がありました。これはその国の、少し変わった美しい侯爵令嬢とゆるふわな子爵令嬢の物語



━━━━━━━



「見て、マーヴェル侯爵令嬢よ」


「あれが噂の…可哀想……」


(はぁ、陰口ならもっと聞こえないところでやってくれないかしら)



私はレリア・マーヴェル。マーヴェル侯爵の娘でこの国の王太子、バリッツ殿下の婚約者である。理由は私もよくわからない。どこかの家のお茶会に参加した時に声をかけられて、適当に返事をしてたらいつの間にか婚約者ということになっていた。ほんとめんどくさ…。いちいち抗議するのもめんどくさいし両親も喜んでたからそのままにしてるけど。

私は外見だけはいいらしく、愛想良くしてたら聡明で美人な侯爵令嬢ということで名が通っていた。だが…



「ご機嫌麗しゅうございます。殿下」


「ん?ああ、レリアか。お前も来ていたんだな」


「ええ。」



だいぶ前に夜会に出席するとお手紙をお出しましたけどね。と、心の中で付け足す。婚約者からの手紙を読んでいないなんて、普通だったら有り得ないことだが、もうそこら辺のことはすっかり諦めている。なぜなら、



「あ!エリカ!すまないレリア、用事を思い出したのでこれで!」


「承知致しました」



殿下はいそいそと名前を読んだ令嬢のいる場所へと向かう。それを私はにこにこと余所行きの笑顔を貼り付けて見送る。王太子のあらゆる物事を諦めている理由。それがこれだ。聞いた話だととある子爵令嬢に付き纏っているらしい。おかげですっかり「王太子に浮気された可哀想な婚約者」だとヒソヒソされる始末。まあ王太子に元々興味はないし、最悪婚約破棄されても領地に籠ってのんびり過ごすからいいけど。あ〜それがいい気がしてきた。そうと決まったら帰ろう!どうせエスコートなんて期待できないし!今すぐ帰ろう!!



「すみません、気分が優れないので本日はここら辺で…」


「マーヴェル侯爵令嬢、ハンカチを落としましたよ」


「え?あら、ありがとうございます」



下品に見えない競歩で会場を出ようと思ってたところを引き止められる。ハンカチなら自分のものなら持っているはずだけど…。とりあえず受け取っておく。…たしかに私の名前が刺繍されてるけど、こんなハンカチ持ってたっけ?



「あ、あの!」


「はい?」



振り返るとそこにはゆるふわ令嬢、違う。エリカ・スカーラ子爵令嬢がいた。そう、私の婚約者が熱をあげているあの令嬢だ。



「そのハンカチ、私のもので…」


「そうだったのですか、落とさないように気をつけてくださいね」



咄嗟にまた余所行きの笑顔を貼り付けて手に持っていたハンカチを渡す。



「ありがとうございます!それと、申し遅れましたが私はエリカ・スカーラと申します。申し訳ございません。爵位の低い者から話しかけるなんて、マナー違反でしたわ…」


「私はレリア・マーヴェル。そちらについては許します。いってくださらなければわからなかったですしね」



意外とちゃんとしている令嬢のようで、そこら辺のルールもしっかり心得ているようで少し安心する。まぁ今回はそれも致し方ない。令嬢にとってハンカチは大事なものだし



「なんてお優しい…!それに近くで見るとより一層お美しい……」


「え?いまなんておっしゃって…」


「エリカ!見つけた!急にどこかへ行くから心配して…レ、レリア?!」



咄嗟に修羅場、という文字が頭に浮かぶ。周りで歓談していた貴族たちも王太子の声に何事かとこちらを注目している。思わず余所行きの笑顔が引き攣る。勘弁して……



「あらバリッツ殿下、ご機嫌麗しゅう」


「その挨拶はさっきもしたが?!それよりなんでお前がエリカと一緒にいる!!」


「それはそちらのスカーラ子爵令嬢が…」


「わかったぞ!俺がエリカにばかり構っているから嫉妬して制裁を加えていたのだな!」


「は?」



ポカンと開いた口が閉じない顔で王太子を見つめる。前から思ってたけど、もしかしてこの人…



「やっぱり馬鹿だったのね…」


「馬鹿だと?!俺はこの国の王太子だぞ!!不敬だ!!撤回しろ!!」


「ついつい口が滑ってしまいましたわ。申し訳ございません」


「うむ。まあよい」



撤回はしてないんだが、気付いてないんだろうか。今度は阿呆という文字が頭に浮かんだ



「エリカ、大丈夫だったか?レリアに意地悪をされたんだろう?安心しろ、すぐにこいつとの婚約など破棄して、」


「いい加減にしてください!」


「ひょぇ?!」


「(ひょぇ?!)」



王太子と私はゆるふわ令嬢から発せられた大きな声にびっくりして固まる。



「今までもレリア様を裏切るようなことはおやめ下さいと何度もお伝えしてきましたのに、あこのようにレリア様の目の前で…!もう限界ですわ!」


「ェ、エリカ??」


「レリア様の婚約者という立場にいられるだけでもこの世の最上の幸せですのに、それを路傍の石のように捨て置いて不貞などと、言語道断ですわ!!!しかもよりによって私が相手だなんて、レリア様に嫌われてしまうではありませんか!!!レリア様のこと、こんなにもお慕いしておりますのに…」


「その通りですわ!!」


「エリカは王太子殿下よりも強くレリア様を思っていますわ!!!」


「な、なんだお前たちは?!」


「エリカの友人兼、」


「百合を愛する会の者ですわ」


「百合…???よくわからんがお前たちがすごく失礼なのはわかるぞ!!!」


「なにこれめんどくさ…」



すっかり置いてかれている。もう外面を取り繕うのもめんどくさくなって本音が零れたが、周りは皆この劇のようなやりとりに夢中で小さな呟きに気付いた者はいなかった。



「静粛に」


「父上?!」



もはや夜会の体をなしていない茶番劇と野次馬の群れがひしめく会場に現れた救世主。私は深く礼を取りながらも縋るような目でそちらを見つめる。もうなんでもいいから早く帰りたい



「父上、こやつらみんな不敬です!!!俺のことを侮辱して、許せません!!!」


「バリッツよ、お主は本当に頭が足りん…」


「父上まで俺のことを馬鹿呼ばわりするんですか?!」



泣きそうな顔で項垂れる王太子。貴族達はそんな王太子を呆れた顔を隠そうともせず見つめている。



「ふむ、お前は今の今まで勉強をサボって、しかも婚約者でもない令嬢を追いかけてばかり…まったくなっとらん!一から学び直してマナーを身につけるまで夜会も茶会も参加を禁ずる!」


「そ、そんなぁ……」


「並びに、マーヴェル侯爵令嬢との婚約も白紙とする!」


「承知致しました」


「え?!婚約は俺が破棄するはずじゃ……」



婚約の白紙については、事前に国王陛下から父へと話が来ていた。そのことについても王太子に手紙で書いていたのだが、本人が手紙を読んでいないならどうしようもない。すっかり撃沈しているが全部自業自得なので反省してほしい



「マーヴェル侯爵令嬢には世話をかけたな。こやつは不貞を働き、夜会などのエスコートもすっぽかし、届いた手紙を読みもしないという王太子以前に貴族としてとんでもない失礼を令嬢に働いたそうな」


「そう、ですわね。全くその通りで…」


「申し開きもできない。今回の婚約の白紙については、令嬢の瑕疵は一切ない、こちらの責任ということで話を通そう。他にも何か要望があれば申すがよい。できる限りのことは叶えよう」


「できる限りの事はなんでも、ですか?」


「うむ」



な ん で も ?なんでもいいのね???



「でしたら……」



私の心はひとつだ。



「私は、次の婚約は望みません。領地でゆったりスローライフ…コホン、領民のためにこの生を使いたいと思います」



会場がザワつく。めちゃくちゃ注目されている。国王陛下がなんでもっていうから正直に答えちゃった。



「国王陛下、発言をお許し頂けますでしょうか」


「うむ。スカーラ子爵令嬢、発言を許す」


「ありがとう存じます。私も、マーヴェル侯爵令嬢について行く許可を頂きたく思います。」



身体と頭に衝撃が走った。なぜ?!なんで?!ほんとにただスローライフ送るだけだよ?!付いてくるメリットなんてないわよ?!



「ほう?理由を申せ」


「以前からレリア様を深く、深くお慕いしておりました。そんなレリア様が婚約もせず領地経営に身を費やすと聞いて、その高潔な志に胸を打たれたのです。私も婚約は望みません。レリア様を傍で支えることを許して頂けないでしょうか?」


「なるほど。……マーヴェル侯爵令嬢はどう思う?」


「はい。問題ございませんわ」


「本当ですか?!ありがとうございます!!」



私は思考を放棄した。領地経営に身を費やす?高潔な志ってなんだ?何一つわからん。わからんからもう付いてくるなりなんなり勝手にしてくれ。手伝ってくれるみたいだしそれならそれでいいよ。あー、やっと話が終わって帰れそう



「ふむ、話はまとまったな。では諸君、夜会を再開しよう」


「陛下、私はこれにて御前失礼したく…」


「ん?ああ、そうか。下がってよいぞ」


「ありがとう存じます」


「レリア様、体調が優れないのでしたわよね。私が馬車までお送りいたしますわ」



いつの間にやら近くまできていたスカーラ子爵令嬢が背中に手を添えてそう心配げに声をかけてくる。今この子、足音しなかったけど……



「ありがとうございます。スカーラ子爵令嬢」


「あの、レリア様」


「なんですか?」


「私のこと、エリカって呼んでくださいませんか?できれば呼び捨てで…」


「え?」


「あの…名前で呼んで欲しくて。それと敬語もなしにして頂けると嬉しいです」



めっちゃ要望多い。がめついなこの子…まぁ名前ぐらいならいいけど



「わかったわ。エリカ」


「はわ、レリア様が私の名前を…!嬉しいです!ありがとうございますレリア様!」



ゆるふわ令嬢に喜びを隠しきれないといった表情ではにかまれて私も悪い気はしない。なんか色々あったけど、丸く収まったみたいだし、まーいっか。



━━━━━━━━━━━


こうして、ちょっとどころではなくめんどくさがりな侯爵令嬢と、ゆるふわに見せかけた強かな子爵令嬢は幸せにくらしたのでした。めでたしめでたし


最後まで読んで頂き、ありがとうございました!


よろしければブックマークや下にある☆のマークから評価も入れて頂けると嬉しいです( . .)"

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