そして誰もいなくなるか
誰もいない夜の学校。
忘れ物を取りに、校舎にこっそり入り込んだ私は、尿意を催しそのままトイレに駆け込んだ。
そこ、はしたないと思うなかれ。
人間、誰しも生理現象には逆らえないものなのだ。
個室で一息ついた私は、そこで世にも恐ろしい体験をしたのだった。
「――赤色と青色と緑色……どれが……いい……?」
子供のように甲高く、けれども聞いた者の背筋を震わせるような恐ろしさを内包した声だった。
こ……これは間違いない。噂の花子さんだ!
まさか本当に実在していたなんて……!
彼女の問いに赤と答えると首を刎ねられて殺され、青と答えると全身の血を抜かれて殺され、緑と答えると口一杯にピーマンを詰められて窒息死させられるという……。
――って、どの道私は殺されるんじゃないか!
「……ねえ……早く答えてよ……答えないなら……」
私はハードディスク内の人に言えないフォルダをデリートしていなかったのを非常に悔やみつつ、覚悟を決めて返答した。
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後日。
「ねえねえ聞いた? 真知子、トイレの花子さんに出会ったらしいよ」
「ウッソー! じゃあ何で生きてるのさ?」
「何でもあの問いに『全部』って答えたらしいよ。そうしたら――という有様に……」
「――うわー……ご愁傷様……」
赤青緑は、光の三原色。
全部混ぜると無色、まばゆい光となる。
命だけは助かったものの、髪は女の命なだけに、真知子は当分登校できなかった。
~~おしまい~~
タイトルは某有名弾幕ゲームのBGMより。
さらにその元ネタである「そして誰もいなくなった」だと少女が死んでしまうので、ぼかした形の方を使いました。
私の他の作品「汚物は消毒せねばならん」もそうですが、こういったネタをちょこちょこ使うのが好きなんですよ。
なお、最後のオチがハゲか白髪かは、読者の皆様の想像にお任せします。
ちなみに、私は今回のような「どこか抜けてる」キャラクターが大好きです。愛着が持てると言いますか。
我孫子武丸氏や乙一氏、定金伸治氏あたりの作品に影響されたせいだと思います。
また、機会があればこんなキャラを書きたいですね。
ご意見、ご感想などございましたらお待ちしています。