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【第16話】サシャの秘密

すみません! 予約の失敗で15話のあとに17話を投稿していました。修正して16話をお届けします。

 斑鳩はこのあとになにか用事があるらしく、陣内がいなくなったことを確認して原宿駅から別行動になった。

 電車の中で話すこともなかったので、正直ありがたい。


 陣内がどこに行ったのかは、ちょっと気になるが少なくとも俺を追ってきてはいないようだ。

 あの体の大きさなら、特殊な術でも使っていないかぎり身を隠すこともできないはず。


 斑鳩を追っている可能性はなくもないが、俺がどうこうできることもない。

 というか、痴話喧嘩だかなんだかわからないが、俺を巻き込まないでほしい。


 俺は混雑を避けつつ、一定時間ごとにやってくる電車に乗り込み、人はたくさんいるが皆が干渉しないでいるという特殊孤独空間を楽しむため、スマホを取り出そうとカバンを探る。


「なんだ、これ?」


 カバンになにやらストラップのようなものが引っ掛かっている。

 

 なんかよくわからない、毛が長い動物を模したようなぬいぐるみのストラップ。

 長い毛が巻き付いてしまい、カラビナの部分が壊れてしまっている。


 俺のものではないから誰かのものだと思うのだが、そんなに人間が密集するような場所を通った記憶はない。

 クレープ屋のあたりでも、体が接触するほどの混み具合ではなかった。


 となると――、おそらく斑鳩だ。


 腕に抱きついてきたときにでも引っかかったんだろう。


 確認の連絡を取ろうと思ったが、連絡先を交換していない。


 目立ちたくないという理由で入っていたクラスのグループチャットかなんかで連絡をつけることもできそうな気はしたが――


 ――俺は次の駅で電車を降りた。


 明日学校で渡せば済む話なんだが、なんとなく斑鳩のおかしなテンションと陣内のことが引っ掛かってしまい、斑鳩の様子を確認したくなってしまったのだ。


 俺は駅の隅で《不現の鎖》を具現化する。

 両手を使って鎖で小さい三角形を作り、頂点から鎖の先を垂らす。

 三角形の中央で鎖の先が揺れる。

 これはダウジングのような魔術で、対象の魔力の在り処を探ることができる。

 鎖を手にして分かったことだが、こちらの世界の人間や物質にも微弱ながら魔力が宿っているらしい。

 ストラップに付着している魔力の痕跡から斑鳩の家を探る。

 大体の方向から最寄駅を推測し、斑鳩の自宅を目指した。


 *   *   *


 駅からほど遠い場所にそこはあった。


 本当にここで合ってるのか?と首をひねるほど、想像していた斑鳩の自宅とはイメージが違う。

 言いかたは悪いがボロアパートだった。


 ポストで名前を確認してみる。

 最近は防犯意識の向上だかなんだかで表札やらを出していない家も多いようだが、集合ポストには薄ぼんやりとした「103 斑鳩」という名前が見て取れた。

 画数が多く、知ってる人じゃないと「斑鳩」には見えないかもしれないから、個人情報とかの意味では対策になっている気もする。


 マモルやら陣内やらのこともあるので、一応周囲を確認。

 大丈夫そうなので、とりあえず103号室の扉のチャイムを押してみる。


 ――反応なし。


 もう一度押しても反応なしで、壊れている可能性も高かったので、恐る恐る玄関をノックしてみるも返事はない。

 人の気配はするので、しばらく待ってみることにすると中からドタドタと音が聞こえてくる。

 子供が走っているような。

 斑鳩の兄弟だろうかと思ったところ、突然扉が開かれ、素っ裸の男の子が飛び出してきた。


「おっと……!」


 俺は素早く避けることができ衝突事故には至らなかったが、男の子を追いかけて俺と同じくらいの年齢の女の子が現れる。


 白いTシャツ一枚の、斑鳩サシャ。


 印象的な金髪は、洗髪でもしたのだろうタオルに巻かれていて、Tシャツも大きめなのを着ているようだが、そこまで丈は長くない。

 風呂上りで白い肌は、ほんのりと上気している。


「タオ! 待ちなさいって言ってるでしょ……ええっ!?」


 Tシャツを着ているとはいえ、ほぼなにも身に着けていないような状態で俺と対峙する斑鳩。


 しばらく硬直して、ハッと我に返って顔を真っ赤にした後、男の子をひっ捕まえ、素早く部屋に引っ込んでいった。


 扉越しに「ちょっと待ってて!」と斑鳩は言う。


 俺はストラップをポストに入れて帰ればいいんだと思いついたころ、扉が開き、ちゃんと服を着た斑鳩が疑念に満ちた顔を出してきた。

 今度は、黒地にピンクと白の文字が入ったスウェットを着ている。

 こちらはなんとなく、それらしい。


「で、なに?」


 先ほどのことがやはり恥ずかしいのか、前髪をいじりつつ、あまり目を合わしてこない。


 俺は、先手必勝とばかりに事情をまくしたてた。


「ストラップが俺のカバンにくっついてて、たぶん斑鳩のだろうと思ってさ。明日学校で渡すんでもよかったんだけど、なんとなく直接渡したほうがいいかと思って……」


 陣内のこととか、今日の斑鳩の変なテンションのこととかには一切触れず、事実のみを伝える。

 どうやってこの住所を知ったのかとか問われると、だいぶ困るから、とにかく善意ということを前面に押し出してみる。


「ふーん、まあ、ありがと……」


 斑鳩がどう思ったのか、ちょっと不安だが、雰囲気から考えれば通報されたりはしなさそうだ。


 その予想は外れていなかったようで、立ち話もなんだしということで、俺は部屋に通される。


 部屋の中は何とも生活感に満ちた感じだった。

 キレイとはいいがたいが、決して汚いというわけではない。

 とはいえ年頃の娘の部屋という感じではないし、あの斑鳩がという驚きは正直、隠しようがなかった。


 一応、俺を客として扱ってくれたのか、斑鳩は俺に麦茶を出しつつ、子供たちの世話をしつつ、話を始めた。


 斑鳩には兄弟姉妹がいて、先ほどの裸の男の子が幼稚園児で4歳のタオ。それに6歳の女の子のミント。7歳の男の子キィト。9歳の女の子ナミネ。斑鳩サシャを合わせると2男3女になるとのことだった。


 俺は、ちょうど風呂から出て夕飯にするところに現れてしまっていたらしく、弟妹たちは夕食の鍋を食べ始めている。

 小さい子がいてワチャワチャで鍋とか火傷が危ないかもしれないけど、ちょっと手が回らなくてね、と聞いてもいない説明をしてくるサシャ。

 あっちの世界にいた時は、こんな感じの家庭がむしろ一般的だったので、俺としては、その点についてはまったくなんとも思っていなかったのだが、なにか思うところでもあるのだろうか。


 俺は渡すものだけ渡して帰ろうとしたが、弟や妹から質問攻めにあってしまう。


「ねえちゃんのカレシなの?」

「どこまでいってるの?」


「ちょっ、なに聞いてんの!? そういうんじゃないから!」


 慌ただしい夕食が始まってしまった。



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