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【第14話】斑鳩の好意?

 結局、俺はトンボ返りすることになった。


 暴風雨とかいう連中が俺を狙ってくるなら先手を打つべきだと考えて学校に戻ったものの、肝心の暴風雨さんはリーダーを殴り飛ばされて全員戦意喪失という顔。

 しかもそのあと、陣内とかいう大男は念押しとばかりに暴風雨の解散を約束させた。

 直前にリーダーを文字通りに殴り飛ばされてちゃ、逆らえるはずもなく……。


 晴れて俺を狙っていた暴風雨は消えてなくなったわけで一安心ではあるが、少しばかり、暴風雨の連中がかわいそうになった。

 ほぼ「三行で説明しろ」レベルの事の成り行きだし、あんな表情にもなる。


 まあ、でも悔い改めてやり直せばいいんじゃないかなとも思う。暴風雨じゃなくて、梅雨前線辺りから。


 つまり先手必勝みたいな作戦は無駄足。

 とはいえ不良どもと関わりたくはなかったので、それはそれでありだ。


 いつのまにやら、金髪のマモルも消えている。

 まあ、ずっと付きまとわれていたいとも思わないので、こちらも特に問題はない。

 それにああいう輩は、シレッと再び現れるだろう。向こうにその理由があるならば。


 俺は人目を避けつつ、家路を急ぐ。


 と、俺を追ってくるやつがいた。


「ごっめ~ん」


 金髪違い。

 マモルではなく、斑鳩サシャは、大して悪いとは思っていないことが丸わかりな態度で謝ってきた。

 両手を合わせてはいるが、満面の笑顔。めっちゃいい笑顔。


 仮に擬音をつけるなら「てへぺろ」だ。

 ――今も使うのかは、よくわからんけど。


「謝るなら最初からやらないでくれよ。そもそもなんであんなウソをついた? なんかアレか? ノリか? 俺の周り、愉快犯みたいの多すぎだろ」


「ちょっとなに言ってるのかわかんない」


 斑鳩は本気で首をかしげている。


「わかれよ、って愉快犯のことはわかんねーか。俺的には金髪繋がりなんだけどなっ」


「ごめん、やっぱりなに言ってるかわかんない」


 いつもなら塩対応のはずなんだが、機嫌がいいのかなんなのか、口数は多い。


「いや悪かった。つまりノリじゃないって言うなら、ちゃんと理由を説明してほしいもんだってことだよ」


「そんなことよりもさ、デートしようよ」


 そう言って俺の進路をふさぐ。

 うんと言わなければ、通さないということか。


 ちょっと触りでもしたら犯罪者扱いされかねないので、力ずくで押し通るわけにもいかず俺は、


「ちょっとなに言ってるかわかんない」


 と大げさに肩をすくめてみせる。

 斑鳩はそれでも満面の笑みで、


「わかれよー」


 などと言いつつ、斑鳩は俺の腕に抱きついてきた。

 腕に柔らかな感触が当たる。

 斑鳩は細身でグラビアモデルというよりはファッションモデルに近い体型だと思っていたが、案外出るところは出ているらしい。肉圧がすごい。


 俺はまあ、前世と前々世があるから、そこまで動揺せずに対応できる。

 思春期の少年でありつつ、そうではないからだ。

 本当だ。

 いや、少しウソをついた。


 俺はなんとか眉をしかめるにとどめ、


「そんなことよりって、人に誤解を与えるってのは、けっこう重要なことだと思うんだがな、俺は。そして現在進行形で事実誤認を招くような行動に出るのもやめてくれ」


 俺は斑鳩の拘束から腕を引っこ抜こうとするが、思いのほか強い力で阻まれる。


「シー。誤解とか言わないの」


 そして斑鳩は俺の耳に顔を近づけ、小声で囁いた。


「うしろ。つけてきてるの気付いてる?」


 気づいていないわけがない。


 今も電柱の陰に身を隠しているつもりになって、こちらをすごい目つきで睨んでいる大男の存在を。


 暴風雨のリーダーをぶちのめした陣内とかいうその大男は、学校からずっと俺をつけてきている。


 だから誤解を招くようなことはやめてほしいと言ったんだ。


「大木ひと突きへし折りわんぱくボディの持ち主のくせして、細い電柱で身体が隠れると思ってるなんて、どんな感性してんだよ」


 あっちの世界には、けっこうああいうのはいたけど。闇の軍勢には。オーガとかオークとかゴブリンとかの類。


「気づいてるなら察してよ。君は今、あたしのカレシなんだから。カレシらしくしてくれなきゃ」


「してくれなきゃの意味がわからんのだが……」


 なぜだか斑鳩はなんとしても陣内に俺がカレシだと信じ込ませたいらしい。


「とりあえず、今日のデートは原宿! 決定ね!」


 と、わざとらしい大声で言うと、斑鳩は俺の腕を抱きしめたまま走り出した。

 背後の殺気が強くなった気がしたが、気のせいだと思うことにする。


 どうやら俺は、このトラブル必至娘にしばらく付き合わなければならないらしい。




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