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【第13話】幹部、陣内テツト


 悠利がマモルの尾行に気付いたころ。

 校庭では杉山や倉持たちの公開処刑が行われていた。

 

 20台ほどの配下をともなって、バイクで校庭に乗りつけた暴風雨のリーダー雨宮は、杉山たちにメンツをつぶされたことに憤っていた。


 雨宮の声が校庭に響く。


「仮メンとは言えさ、君たちは一応、暴風雨の一員だったわけ。それがあんなみっともない姿さらしちゃって。困るんだよねー。暴風雨はこれから花鳥風月にとって代わる一大勢力になるってのに、こんなとこでつまづいていられない。わかる? 恥ずかしいやつは仮メンでもいらねぇのよ」


 雨宮は、突出して他の暴風雨のメンバーより体格に優れているなどはなかったが、その引き締まった体から出せされる存在感は、さすがに下剋上を狙う人間だと言えた。


 杉山たちは、暴風雨のメンバーに校庭の真ん中で囲まれ、学校の人間から取り残されてしまっていた。

 今までの所業からだろう。味方する生徒たちはいない。


 雨宮の合図を機に、数名の暴風雨メンバーが一斉に暴行を加える。


「ご、ごめんなさい……!」


 ただ情けなく謝る以外の方法がない杉山たち。

 暴風雨の殴る蹴るは執拗かつ苛烈。次第に杉山たちの声は消えていった。


 遠巻きに見ていた生徒たちは、ネットだったら視聴制限がかかってしまうだろうほどの惨劇に誰も動けず、教師たちも誰かが警察に通報したのかどうかを確認すらことすらできなかった。


 そこにひとりの男が現れた。

 長髪で大柄のその男は、進路を妨げた暴風雨のメンバーを軽々と吹き飛ばす。

 恐ろしい怪力の持ち主のようで、文字通り、数人を同時に宙へと舞い上げた。


「なんだ、てめぇは!」


 雨宮は威勢よく問うが、大男は応えない。


 雨宮が眉をしかめる。


「お前、まさか……。陣内テツトか? 花鳥風月の一角“鳥新星”の幹部の……」


 陣内と呼ばれた男は辺りを悠然と見渡して言う。


「なあ、お前ら。暴風雨だっけか? 花鳥風月を潰すとか息巻いてるらしいな。どれほどのもんなのか試してやる。かかってこいよ」


 バイクにふんぞり返っていた雨宮がゆっくりと陣内に向かって歩き出す。


「ちょうどいい。手間が減ったってもんでしょ。動画も撮ってるし、花鳥風月に取って代わるのがこの暴風雨だってこと、全世界に配信してやるよ」


「やめといたほうがいいんじゃないか? デジタルダークとかになっちまうぞ」


「なんだそりゃ? まあいい。オレがどうやって、ここまでのし上がってきたか、その身にわからせてやるぜ!」


 雨宮がなにかの武術の歩法を身につけているのか、瞬く間に陣内との間合いを縮める。


 右腕をコンパクトに畳み込んだ上に、素早く、そして力強く繰り出される右拳。

 雨宮がにやりと笑い、その打撃は陣内のアゴを打ち砕いた。


 ――かのように見えたが、陣内の大きく長い腕は、逆に雨宮の体を数メートル吹き飛ばしていた。


 暴風雨のメンバーは、陣内の怪力が人間のものではないと思い、また杉山たちは薄れる意識の中で、どこかで見たような超人技だと考えていた。




 *   *   *




 俺が校庭に戻ってきたとき、大男が放ったパンチが相手を吹き飛ばしているところだった。


 呆気ない一騎打ちの結末に、観衆だった生徒たちが騒ぎ出す。


 決着はついたのか?

 この結果に喜んでいいの?

 自分たちは安全になったの?

 明日から平和にこの学校に通えるのか?

 そもそもあの大男は、味方なのか……?


「終わり? つーか、あんたなにやってんの?」


 生徒の中から現れたのは斑鳩サシャだった。


 斑鳩は大男に冷たい視線を向ける。

 大男は、なぜか少しだけ顔をほころばせる。

 サシャが美人だからか?


「行儀のなってないバイク野郎どもが、この学校に向かったって話を聞いてよ。俺としては心配でよ、駆け付けないわけにはいかないだろ。ここにカノジョであるお前がいるんだから」


 へぇー斑鳩のやつはずいぶんとゴツイのが好みなんだな。

 まあ、たしかに頼もしくはある。


「だからカノジョじゃねぇっつの。しつこいなー。あとさっき言ってたの、デジタルタトゥーだろ? なんだよデジタルダークって」


「ああ、そうか、ちょっとカッコつけてみたんだが、うまくいかねぇな。ま、お前が無事なら、それはそれで問題ねぇよ」


 なんかよくわからねぇが、丸く収まりそうなのか?

 マモルは、暴風雨のリーダーはあそこで倒れてる男だっていうから、俺がなんかする手間は省けたのかなと思いつつ、でもあの大男はうちの学校の生徒じゃないよな、と心配に思いつつ。


 その時、斑鳩が俺のほうを向いて、ひどく悪い顔をした。


「あたしさ、本当のカレシができたんだ」


「なに? 誰だそいつは!」


「そこのそいつ!」


 斑鳩が指さした方向に俺。


 陣内の殺気が突き刺さる。


 俺は文字通り頭を抱えた。




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