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スカイリア〜七つの迷宮と記憶を巡る旅〜  作者: カトニア
七章 刻印都市と金色の迷宮
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第283話 居所

 

 コード:ラジエルを使い、オートマターの刻印解析をしていたアルベールに呼ばれて彼の元へ戻る。


「何かわかったのか?」

「それらしい箇所を解析してみたんすけど、オレのコード:ラジエルを使えば部分的にセキュリティを突破できそうなんすよ」

「セキュリティ?」

「複雑な刻印回路に組み込まれてることがある、使用者の認証機能、みたいなもんすね」

「それって……、本来はこのオートマターの使用者にしか使えない機能ってことか。アルベールの盟約の印があればそれが使えるのか?」

「みたいっすね」

「すげえな。もう刻印に関してはなんでもアリじゃないか」

「いや……、これに関してはそうでもないっすよ。むしろ、()()():()()()()()()使()()()()()使えないようにしてあるって感じだ……」

「元々コード:ラジエルが英雄アル=ジャザリが持っていた盟約の印なんだったら、その力を受け継いだアルが機能を使えるのは不思議じゃないか」

「アニキ……、オレの家のこと知ってたんすか?」

「コード:ラジエルはルーナリア皇家に伝わる秘伝なんだろ。カーライルとの関係とか、さすがに色々と察するよ」

「迷宮から出られたら、説明しますから」

「言いたくなければ別にいい。誰にだってそういう事情ってあるもんだしさ」

「アニキのそういうところ、いいっすよね」


 アルベールはへへっと笑ってそう言った。


 アルベールはいい方に解釈してくれるが、最も素性を他人に知られたくないのはドドである俺の方だ。別に俺がいい奴だからじゃない。


「で、具体的には何ができる?」

「そうだった。見つけたんすよ、メンテナンス用の回路。全体の機能をなんとなく探って。これで頭部の記憶回路にアクセスできるはず」


 アルベールが回路に触れると、オートマターの頭部に橙色の光のラインが走り、こめかみ辺りの装甲がスライドするように開くと内部機構の一部が露出した。


「この独立した回路が、記録と思考を担ってるみたいっす」

「本当に人間みたいだな……」


 機械に思考をさせるっていうのも不思議だけど、それを刻印回路で再現するなんていうのも常軌を逸してる。

 とはいえ、そんな大昔の記録がちゃんとした形で残っているんだろうか?


「回路を探ってみるっす。『刻印解析(コードアナライズ)』」


 アルベールは薄らと光る露出した内部機構に手を当てた。それをじっと見守る。


「……あった。これが、オートマターの記憶領域か……」

「読み取れそうか?」

「かなり抜け落ちてる部分が多いみたいっすね……」


 やっぱり完全な形で残ってるなんてうまい話はないか。見た目はかなり風化している状態だし。


「でも、この膨大な記憶情報を隈無く調べてる余裕なんてないっすよね」

「そうだな。オートマターの日記帳を読み込んでて迷宮が消えたら元も子もない」

「ん? これは……」

「?」

「何かの位置情報だ。……現在座標?」


 アルベールはしばらく黙りこくった後、振り返った。


「超有力情報、残ってました……!」

「ほんとか?!」

「記憶情報とは別の領域に、何らかの座標を示す位置情報を見つけたっす。しかもこの特殊な位置情報について、現在どれくらい離れた場所にいるか常に計算されるように回路が組まれてるっぽくて」

「その特別な位置情報っていうのはなんだろうな」

「オレはオートマターの所持者の居場所だと思うっす」

「な?! じゃ、そいつを辿って行けば……!」

「「英雄アル=ジャザリの元に辿り着けるかも……!!」」


 俺達は顔を見合わせ、思わず大きな声を出した。


 他の迷宮と同じであれば、アル=ジャザリは贄の楔となって自ら厄災を封印しているはず。迷宮における英雄の居場所、それはすなわち厄災の居所だ。


 ついに掴んだ。追いつめられたこの状況で。


「やったなアル! 大金星だぜ!」

「やりましたよアニキ! この情報を精査して、アル=ジャザリの現在位置を割り出しましょう!」


 俺たちが小躍りして歓喜していると、なんだなんだと皆が近寄ってきた。


「随分と楽しそうだが、朗報か?」

「聞いてくださいよ! アル=ジャザリの居場所を突き止めたっす! 多分!」

「……すごい! さすがアルベール君!」

「へへっ、もっと褒めてくれてもいーっすよ」

「あはっ、すごいすごい。でも本当にすごいよ!」

「……こうろうしゃ」


 アルベールは美少女達から賞讃を受けご満悦のようだ。


「アルベールがアル=ジャザリの現在位置を特定したら、急いで拠点に戻ろう。すぐに人員を揃えて発信元に向かうんだ」

「ついに厄災と戦うってことだよね」


 見つけたからといって、簡単に倒せるとは思えない。きっと厳しい戦いになる。


「あの、アニキ」

「なんだ?」

「位置計算自体は半刻もあれば十分なんすけど、その……」

「遠慮しないで言ってくれ」

「もう少しだけ、このオートマターを調べてみたいんすよ。これから決戦だってのに、自分勝手なのは十分承知なんすけど……」

「そういうことか。アルはそれをする意味があると思ってるんだろ? だったら止めないよ」

「アルベールにしかできないことだもんね」


 アルベールなりに何をすべきか考えてのことだ。だったらそれは俺たちにとっても必要なこと。


「でも、私たちが拠点へ戻ってしまうならアルベール君は一人で残ることになっちゃいます」

「それなら私が一緒に残り、ライオットの護衛を務めよう」


 ヒノエがアルベールの護衛役を買って出る。


「ヴァーミリオン先輩、そんな、いいんすか? オレの勝手のために……」

「必要なことなんだろう? 勝手などではないよ」

「みんな、超感謝っす……。オレ、絶対役に立ちますから! 絶対に、後悔なんかさせないっすから!」

「もちろん頼りにしてるぜ。アル」



 俺、フウカ、リッカ、グルーミィの四人は早速準備を整え、拠点へ戻る事とした。


 アルベールはオートマターの位置情報を解析計算し、拠点からの距離と方角を割り出してくれた。


「必要な情報はアニキに全部託したっす」

「任せてくれ。必ずみんなで迷宮から脱出しよう」

「私達のことは心配いらないよ。フレスベルグなら、ライオットと二人で早急に拠点に戻ることも可能だ」

「アルのこと、頼みます先輩」

「二人とも、気をつけてね」


 俺たちは夜に沈む砂漠に二人を残し、飛び立った。焚き火の炎はすぐに遠ざかっていった。


「フウカ、この先何があるかわからないし、休んでいる時間もない。翼はなるべく温存しながらだ」

「わかったよナトリ」


 フウカの緋色の翼は非常に強力な力を持っているが、いまだに安定して使えない。

 彼女の精神状態にかなり影響を受けるということだけはわかっているが、使い続ければ突然消えたりもする。


 今はフウカの加護の強さをあてにしつつ、リベリオンで風を起こして彼女の前進をサポートするのがベストだろう。

 夜通し砂漠を進めば、要領よくやれば明け方には拠点につけるかもしれない。


 もうあまり時間はない。俺たちに残された時間は、あと二日しかないのだから。









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