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11.パーティ登録


 翌朝。起床して身支度を済ませると【無限収納(インベントリ)】から朝食を出してテーブルに並べた。

 昨日は夕食に肉を食べたので、今日の夕食は魚でいいだろう。

 この世界に米があることを感謝しながら一人静かに食べる。朝食は量が少なめだけれど私には十分。

 朝食を食べ終わると食器を洗い、【無限収納(インベントリ)】に戻す。

 テーブルを拭いて、ベッドを直してから戦斧を背負って部屋から出た。今日はどんな依頼を受けるか考えながら階段を降りて、マーシャさんに挨拶をして宿から出た。

 すると、外にはリカルドたちがいた。何かもめていたようで、ノアさんが私を見て睨みつけると静かになった。どうやら私のことでまたもめたようだ。

 パーティに入ることにまだ納得していないノアさんを、リカルドが納得させようとしていたのかもしれない。


「あ、おはよう、アイ。よく眠れた?」

「おはよう。うん。眠れたよ」

「そっか。よかった」


 もしかすると私が出てくるのを待っていたのかもしれない。

 今日一緒に行動するということを聞いていなかったので、私が悪いわけではないと思いたい。

 このメンバーが揃っているということは、パーティで依頼を受けるつもりなのだろう。

 元々結成しているパーティに途中から加わる場合は、パーティリーダーの承諾をもらい、書類に記載しなくてはいけない。


「アイは、今日用事はあるのかい?」

「何か依頼を受けようと考えていたくらいで他には何も」

「それなら丁度よかった。これからギルドでパーティ登録をして、依頼を受けよう」


 パーティ登録を長引かせるよりも早く登録して、パーティに慣れてもらおうと考えているのかもしれない。

 私自身が慣れるのは勿論だけれど、ノアさんとノエさんにも私という存在に慣れてほしいのだろう。

 パーティのリーダーとして、仲が悪いままはあまり良くないと考えているのかもしれない。

 四人で昨日通った道を進んでギルドへと向かう。

 朝ということもあり、ギルドは混雑していた。ノアさんとノエさんは先に依頼書を取りに行くためにボードへと向かって行った。私が合流する前に、受ける依頼はリカルドが二人に任せたようだ。

 私とリカルドは受付に並んでいる列に並ぶことにした。混雑にも慣れているのか、受付の人たちも素早く受理している。


「お待たせしました。あら、リカルドさん、アイさん、おはようございます」

「おはようございます」

「おはようございます。今日は、アイのパーティ登録をお願いします」

「分かりました。それでは、こちらの書類に必要事項をご記入お願いします」


 渡された書類を確認すると、必要事項は名前と自分のランク、パーティの名前を記入するだけだった。最後にパーティのリーダーの署名が必要で、そこはリカルドが記入する。

 そして、私のギルドカードと書類を渡して水晶版で操作をする。それでパーティ登録は終わったようだ。


「この依頼をお願い」


 横からやって来たノアさんがベルさんに依頼書を渡すと、後ろに並んでいた人たちは不満げな声を上げたが、「パーティ依頼なんだから構わないでしょ」と言っただけで黙らせてしまった。

 どうやらこのギルドに所属している冒険者たちは、ノアさんともめ事を起こしたくはないらしい。

 ベルさんは気にした様子はなく、一緒に依頼を受ける人たちのギルドカード提示を求めた。私のギルドカードはまだ返してもらっていなかったので、リカルドたちが提示をしてそのまま受理をする。


「皆さんのパーティランクはCからDに変更となります。今回の依頼ランクはDですので、受理いたしました。依頼内容は廃坑に住みついたレッドコウモリの討伐です。数は三十。討伐の証拠にモンスターの一部を持ち帰ってください」


 リカルドたちはパーティ依頼に慣れているだろうから、私に対する説明だった。レッドコウモリは文字通り赤いコウモリ。別名チスイコウモリ。

 持ち帰ってくるのなら、羽だろうか。しっかりと血抜きをして、綺麗に洗って茹でて乾燥させれば珍味になる。

 乾燥させる前に味をつけることもできるけれど、コウモリの羽の珍味は好みが分かれる。私も一度食べたことがあるけれど、好みではなかった。


「それと、先ほどトムさんからリカルドさんとアイさんに解体が終わったので取りに来てほしいと連絡がありました」

「分かりました。依頼の前に立ち寄ります」

「では、気をつけて行ってらっしゃいませ」


 昨日のブルーウルフの肉を受け取りにそのままギルドを出て、解体屋へと向かう。建物の中に入ると、解体屋には冒険者の姿はなかった。

 扉を閉めるとトムさんに声をかけられた。手を振るトムさんの元に行くと、昨日と同じ台の上に解体した毛皮などがあった。


「待たせて悪かったな。あの後、解体の仕事が入って連絡が遅くなった。肉は【無限収納(インベントリ)】に入れてたから問題ないぜ」


 肉はトレーの上に載せられており、私とリカルドの分がある。鮮度もよく、そのまま【無限収納(インベントリ)】に入れた。

 毛皮はトムさんが引き取り、解体の時に分けた牙や爪も置かれている。それらは三人で分けることにした。


「これから依頼に行くのか?」

「レッドコウモリの討伐よ」

「そうか。レッドコウモリは解体作業いらないもんな」

「ええ。だから、貴方に用はないわね」 

「今日のノアは一段と冷たいな」


 いつもより冷たいノアさんだけれど、トムさんはとくに気にしていないようだ。もしかするとしばらくはノアさんの機嫌は良くないかもしれない。もちろん原因は私。

 パーティに入ったことだって納得していないだろうし、理由をつけてパーティから外そうと考えているかもしれない。

 今回の依頼で、活躍できなかったり迷惑になるようなことをすれば、それを理由に追い出されるだろう。

 できれば迷惑をかけたくはない。廃坑はゲームでも行ったことがないので、今回廃坑があることを知って驚いた。

 レッドコウモリは洞窟で遭遇したことがあるので、倒し方は分かっている。


「それじゃあ、僕たちは行くよ。また今度解体を頼むね」


 解体屋から出ると、廃坑がある南出口へと向かった。泊まった宿の近くにある出口が南のため、私が街に入る時に使った場所だ。

 私は街の近くに【転移魔法】で来たから、廃坑があることすら気がついていなかった。

 街を出て、真っ直ぐ土の道を進む。三十分ほど歩けば分かれ道が見えてきた。

 そのまま真っ直ぐ進むか、右に曲がるか。真っ直ぐ進めばウェスベルの街がある。けれどそこに用事はないので右へ進んだ。

 十分ほど進むと、小さな川が見えてきた。流れは穏やかで、澄んだ水の中を泳ぐ魚も見える。川の上には橋があり、そこを渡って行く。

 廃坑は現在見えている山の麓にあるようで、周りにある木々で確認することはできない。その山の上にはたしかエルフが住む村があったはず。ノアさんとノエさんはその村の出身だったはずだ。

 さらに五分ほど進むと、木々が開けた。山肌が見え、大きな穴が開いている。そこが目的の廃坑なのだろう。

 近くには休憩していた時に使っていたのか、少し古びた木製のテーブルと椅子がある。ずっと歩いて来たので、廃坑に入る前に少し休憩をすることにした。

 休憩をするというリカルドに、ノアさんとノエさんは椅子に座った。歩き続けて少し疲れているようだ。

 私は開けた広場の右にある木々が生い茂る場所が気になり、そこへ行くことを伝えて歩き出した。

 何か声が聞こえる気がした。

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