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第六話『結果発表~』




「妹達よ。聞いてくれ」

「なぁーにぃー?」

「改まってどしたよお兄ちゃん?」

「実は、この兄に彼女が出来ました」

「「…………」」

「おや、聞こえなかったのかな? ボクに彼女が出来ましたよ~?」

「「…………」」

「通信状況が悪いのかな? あー、テステス、目の前の我が妹に告げる~。兄に彼女が出来ました。ボクもついに男女交際というものを始める事になったのだよ~? どうか喜んでおくれよー」

「……美琴ちゃん、私白昼夢なんて見たの初めてだよ。暑さで脳がやられちゃったのかな?」

「どうだろ? たぶんアタシも同じものを見てる気がする。おかしいのはアタシ達かな? もしくはお兄ちゃんの方が壊れちゃった?」

「大丈夫お兄ちゃん? 悪いものでも食べちゃった? あ、つい数時間前に食べたね。アレって幻覚作用まであるんだ……。麻薬レベルでヤバいやつだったんだね~。お兄ちゃん帰っておいで~」

「もしくは、何か盛られた? または脅迫でもされてる? 悩み事があるなら相談に乗るよ?」

「相も変わらず失礼な妹達だね。兄の幸せを祝ってくれないのかい?」

「だってお兄ちゃん、シスコンじゃん」

「私達の体に興奮する変態さんなんでしょう、お兄ちゃん?」

「シスコンは否定するけど、興奮に関しては肯定するほかないね。でも、一般的な恋くらいはするって、前に話したよね? ボクの古傷を抉るカタチで」

「でもね……」

「相手は、アレなんでしょ?」


 二人とも可哀想なものを見る目で、台の上に放置したままだった手紙を見やる。

 うん。まぁ、あの後すぐだから、相手がバレているのは仕方ないか。


「えぇ~……あのヤバい人と付き合う事にしたの?」

「ちょっと……いや、だいぶ引くわぁ~……。お兄ちゃんの好みがわかんないっすわ。変人が好きなの?」

「絶対に後々、後悔すると思うけど。ホントに付き合うの?」

「こんなの書くメンドイ女子を「お義姉ちゃん」って呼ばなきゃいけないアタシらの苦痛も考えて行動してくれた?」

「我が妹ながら容赦ないね……」


 まぁ、たしかに二人の言い分もわからなくない。

 実際に会って、この手紙の印象通りめんどくさい女性だったならば、ボクだって丁重にお断りさせていただいたよ。……普通に怖いし。

 でも実際に会った彼女は……なんと言うか……なんて言えばいいんだろう? ……不思議な人? いやでも、世にいう不思議ちゃんって訳じゃなくて、……不思議な雰囲気の人っていうか……。


「まぁ、安心しておくれよ妹達」

「何を安心しろと言うのお兄ちゃん?」

「何も安心できるわけないじゃんお兄ちゃん!」

「付き合うも何も、向こうは罰ゲームなんだから」

「「…………は?」」


 おい、妹達よ。

 目が怖いぞ? 今の「は?」もかな~り威圧的というか……不機嫌全開というか……。


「お兄ちゃん、詳しく話して」

「そうだね。ちゃんと聞こうか」

「いや……だからね? 彼女がボクに告白したのは、そのグループ間の『罰ゲーム』だったらしくて……。ほら、よく某動画サイトの広告でもあるじゃないか。学校のギャルとか、イケイケな女子グループとかのノリで、罰ゲームに『モテない男に告白して数日付き合う』ってやつ。アレだよアレ! ほら、これで一番の謎だった「ボクが告白された理由」は解明出来たじゃないか! ボクはむしろ、スッキリしたよ! 初対面の人からいきなり好かれるなんて、ボクにはあり得ないって思ってたから、明確な答えが貰えて納得できたし! ね!? ――――だから、そんな怖い笑顔でお兄ちゃんを見ないでくださいお願いします」

「お兄ちゃん……。課金嫌いな私がなんでわざわざ、アレのプレミアム会員になったのか、ちゃんと覚えてるよね? 妹大好きなお兄ちゃんなら忘れるわけないよね? だよね? ……お兄ちゃん」

「……たしか、あの広告を見る度に殺意と吐き気を催して、動画の内容を問わず低評価を押してしまうから……だっけ……」

「そうだよ。たった5秒でもあんな虫酸マックスな広告を見たくないから、わざわざ毎月お金を払って無料で観れる筈の動画を観てるの。私が何を言いたいのか……わかるよね?」


 目が怖い。

 笑顔なのに微塵も笑ってないよ千弦ちゃん……。

 美琴ちゃん! どうかボクに味方して――――あー、くれそうにない! なんかブツブツ言いながら通販サイト見てる~


「…………青酸カリの致死量って何グラムだったっけ……」


 怖いこと言ってるぅ~……!!


「お金払って回避した広告ストーリーを、まさかリアルで見せられないといけないの? そうだ、お兄ちゃん……毎月いくらか払うから今すぐその人と別れてよ? 可愛い私のお願いだよ。お兄ちゃんは快く了承してくれるよね?」

「……薬品だと飲ませる手間がなぁ~……。いっそのこと鈍器か刃物でも買って、夜な夜な背後から襲うか……? でもそんなクソ女のせいでコッチの人生メチャクチャにされるのも嫌だしな……ブツブツ」

「待って! 落ち着いてよ二人とも! よく考えて欲しい!」

「「…………なに?」」

「とりあえず、そのドスの効いた声もお兄ちゃんの心臓に悪いからやめて欲しいです。……そもそも、だよ。ボクは騙されていない! 彼女達の『罰ゲーム』に付き合わされてる自覚がある。ここまではいいかな?」

「「…………」」

「目が怖いぞ妹達よ……。ボクはいつもの可愛い二人が見たいな~……なんて」

「「…………」」

「こほん……、次にここで『付き合う』を選択した際のボクへのメリットだが……」

「メリットデメリットって話じゃないんだよ? お兄ちゃん」

「「自分に得がないと付き合わない」なんて言ってるヤツと付き合う時点で、恋心云々を全否定してるわけよ! 好きでもない人と付き合いたくないでしょ!! つーか付き合うな! 交際するなら、ちゃんと好きになって恋をしてからにしなっての!」

「お兄ちゃんの話をきいてください……」

「「……なに!?」」

「だからね……、お兄ちゃんは別に彼女のオモチャにされている訳じゃないんだよ……おそらくだけど」

「「はぁ?」」

「ボクにはボクなりの考えがあって、この告白をオーケーしたんだ。それに、こちらの要望だって呑んでくれたし」

「お兄ちゃん、もしかして……」

「まさか……相手の身体目当て……? 若い衝動を抑えきれなかったのかー……」

「違うからね?」

「だったら、お兄ちゃんが他人(女子)に何を要求するって言うのさぁ!?」

「彼女自慢なんてお兄ちゃんのキャラじゃないでしょ? それ以外に、お兄ちゃんが彼女を欲する理由がわかんないよ!」

「さりげなく、兄を性欲のケダモノみたいな扱いしないでくれないかな妹達よ!」

「イチャイチャしたいなら妹でもいいじゃんか!」

「一定レベルのスキンシップなら犯罪にもならないよ!」

「だから、スキンシップが目的でもないんだって……」

「「じゃあ――」」



 ♪♪♪~♪~♪~……



 この着信音は、ボクのスマホからだ。

 まったく。こんな忙しい時に誰がわざわざ電話なんてしてくるんだよ……。友人間でも精々、メッセージアプリでの会話が主流じゃないか。

 というか、今何時だと思ってるんだよ!

 夜の23時だよ! 寝てる可能性だってある時間だよ! 緊急時でもない限りこんなタイミングで電話掛けてくる非常識な人なんてボクの友人にはいない筈だよ!


「「「……」」」



 ♪♪~♪~~♪~……



「「「…………」」」



 ♪~~♪♪♪~♪~……



「「あーもう! 出なよお兄ちゃん! 話の続きは明日でいいから!!」」

「……あ、うん。ごめん」


 実際、緊急時だから電話を掛けてきた可能性もある。ずっと掛け続けているのも気になるし、相手も切羽詰まっているかもしれない。

 スマホの画面を確認すると……あれ? 登録されてない番号からだ。間違い電話かな?

 とりあえず、通話状態にして、相手にその事を伝えなければ……


『……あ、ようやく繋がった。もしもし、神宮寺じんぐうじ 美月みつきと申します。秋澤 拓斗さんお電話でお間違いないでしょうか?』


 ……話題の中心人物から電話がかかってきた。





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