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第四話『こんなことがあったんです』




 ことの経緯を詳しく語るとしよう。

 発端は2日前の早朝、早すぎもせず遅すぎもせず普段通りの時間帯に登校したボクは、何も考えず普通に下駄箱の戸を開けた。

 まぁ、何も考えずに……って言うのは嘘なんだけど、当然のように妹達のことを考えていたわけだけど、今は関係ないのでスルーしておく。あと……下駄箱って名前だけど、これまでに一度だってココに下駄を入れた人を見たことがない。というか、実際に下駄で登校するとして校則的には大丈夫なのだろうか?

 『下駄箱』と銘打っているくせに下駄を入れてはいけないというのは、随分な矛盾であると思ってしまう。こんなボクは変人なのだろうか?

 ごめん、話を戻そう。

 下駄箱を開けたのだ。

 するとソコには……普段通りならば絶対にあるはずのない物体があったのである。とても真っ黒な……紙? いや、厚さがある。封筒? 手紙か?

 ボクの上履きの上に置かれたその紙切れを、怪しくて怪しくて仕方ないその手紙を、ボクは――――


 ――無視した。


 全力で無視した。

 だって怖かったもん。不幸の手紙とか、呪いのおまじないとか、そういうのだったら嫌だし、触れぬ神(紙)に祟りなしとも言うし。……あ、ボク今、上手いこと言わなかった? そんな気がする!

 というわけで、下駄箱にソレを放置してボクは普段通りの学校生活をおくりました。特に変わった事もなかったんでソコは省略。そして、その日の放課後……

 本気でその瞬間まで忘れていた手紙だったんだけれども、帰る為に下駄箱を開けたら……


 ……封筒の数が2枚に増えていました。


 おっと……ポケットに入れて叩いたわけでもないのに、なんで1枚から2枚に増えてるのかな? 細胞分裂でもしちゃったのかな? 明日の朝には四枚に増えてたりして~、ウケる~。でも笑えねぇ~……。

 もちろん、無視しました。

 処分しようかとも考えたけど、呪われない為には触れないことが一番。知らない。ボクは何も見ていません。


 そして、気になる翌日の朝。

 おそるおそる下駄箱チェック!


 ……封筒のサイズが大きくなってました。


 まさかの、A4サイズの巨大な封筒がボクの下駄箱を圧迫していた。なんか、見た目的にも何とも言い難いプレッシャーが……。

 しかも、前の2枚はそのままである。

 怖い。もはや恐怖以外のなにものでもない。

 コレに対するボクの対応は?

 もちろん、無視するである。

 あえて無視する……である。


 確かにここまで来たら、中身が気にならなくもない。というか、内容が普通に気になる。開けてみたい。……でも、ヤバ気な雰囲気もある。……ジレンマというヤツだ。

 だからこそ無視した。

 ここまで音沙汰がなければ、相手も諦めるか、直接接触を試みたりするだろう……普通。

 我慢対決だ。先に痺れを切らすのは果たして……


 翌日の朝……

 明確には今日の朝の話になるわけだけど……。

 え? 昨日の放課後はって? なんと昨日は『何も』なかったのだ。いやまぁ、それまでに入っていた手紙はそのままなんだけど……。意外なことに、新たにアイテムが増えたりしてはいなかったのだ。

 だからスルーして今日の朝になる。

 なんと今朝の下駄箱には、一人の女子学生が…………女子学生、なのかな? いや、おそらく女子学生なのだろう。女子の制服も着てるし。

 ただ……7月頭という暑さ厳しいこの時期に、制服の下には全身タイツ、その上から薄手の手袋とニーハイソックス。更に頭は、強盗の印象が強い目出し帽にガスマスク装着ときた。完全防備にも程がある……。

 夫以外に肌を晒してはいけない国の人でも、もう少しマシな格好をしていると思うのだけど。

 呼吸する度に「シュコー……コホー……」とか聞こえるし、不審者以外に言葉が思い付かないよ。

 登校早々に見る風景じゃない。

 しかも、ボクの勘違いや自意識過剰でないならば、ちょうどボクの下駄箱の前に立っている気がするのだ。


 目があった。


 1……2……3……と見つめ合って、精々20秒程度。

 溜めに溜めてボクは……逃げた。


 無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖いっ!!!!

 回れ右して最初から全力疾走だよ!

 これぞ火事場の馬鹿力ってやつなのかな、体力測定ですら見せたことのない超速力だったと自負している。

 被害妄想? 何とでも言ってくれ、ボクは得体の知れないアレに関わりたくない! そもそも、日本の一般的な公立高校にあんな格好で登校するなんて、マトモな思考をしているようには思えない!

 そんな噂聞いたこともないし、今日だけ特別なの? それとも転入生かなにか? 演劇部の仮装か何かかな? 頼むから一番最後のやつであってくださいお願いします……。

 アレが追ってくることはなかったけど、結局朝のホームルームには遅刻してしまった。

 皆勤賞狙ってたけど、命には代えられない。


 そして朝以来、あのガスマスク系女子とエンカウントしないまま放課後。

 ボクの下駄箱の中には、これまでにあったブラックレターは無くなっており、代わりに1枚の可愛らしい手紙が……


「それが、この手紙ってわけなんだけど」

「「………………」」

「お兄ちゃんには難解過ぎるんだけど、妹達よ……どう思う?」

「「……いや、ごめん。異質過ぎてちょっと……」」

「だよね……」

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