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第7話:又兵衛、絆の力で魔法プリンセスとして覚醒する!

【慶長20年(1615年)五月一日 秀頼 23歳 超理想の神殿 】


 又兵衛と絆を結べば、『併せ技』の魔法を使えるはずだ。


 理屈としてはそうなのだが、現実的にどうすれば又兵衛とこの場で絆を結べるだろうか?


 仲良くなれそうな方法を色々考えていると、影・又兵衛が叫んだ。


「付け焼き刃の気品で私の可愛さに叶うわけないでしょ!」


「アイドル・生ライブ!!」


【アイドル・生ライブ】


 影・又兵衛を中心にアイドル空間を展開する。


 歌が聞こえ、踊りが見える範囲の者はアイドルを応援することしかできなくなる。


 影・又兵衛より可愛いものには効果がない。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 影・又兵衛はそう叫んで、さらに激しく歌って踊り始める。


 私と又兵衛は何故か、それに見とれ歌に合わせて声を上げてしまう。


 まずいな。これは影・又兵衛の時間稼ぎか。このままでは大坂城が……。


『秀頼ちゃん!まずいぞ!徳川軍が大坂城内に突入した!』


 クレオスがそう叫んだため、私はさすがに慌て始めた。もう一刻の猶予もない。もはや城兵にも、かなりの死者が出ているであろう。


 わずか数瞬、遅れただけでもここまで付いて来てくれた家臣達が皆殺しになる。母や私の妻子供もだ!


 何か手はないか……と、応援しながらでも動かせる範囲で首を回す。


 ん……?そう言えば我らが追いかけていた影・秀頼のぬいぐるみはどこへ行った?


 やつはこの空間の中でも動けるのか?


「こ、これならどうだーーっ!!」


 又兵衛は目と耳を手で塞いだ状態で、影・又兵衛に飛び掛かった!


 そうか見聞きしなければ、アイドル魔法の影響は受けぬ!考えたな!!


「おっとお触りは、禁止だよ!」


「ハガシ!」


 影・又兵衛がそう叫ぶと、彼女の体が輝き始める。


 あれは、何か反撃技をしようとしているのか!


 まずいぞ!又兵衛は目を瞑っていて、影・又兵衛の変化が見えていない!


「危ない!」


 飛び掛かろうとした又兵衛に向けて、影・又兵衛から光線のようなものが発射される。


 あれが当たれば又兵衛は……だが、私は動けぬ。どうすれば?


 ま、待てよ、そうか!


 私は自分に向けて魔法を放った!


 私の姿がくまのぬいぐるみになる!!


 頭にはティアラ、白いドレスを来た、目のパッチリしたくまのぬいぐるみだ!


 やはりそうだ!動けるぞ!!


 アイドル魔法はぬいぐるみには効かぬのだ。恐らくは、影・又兵衛がぬいぐるみ好きなせいで……。


 私は、ともかく考えを打ち切って、光線の前に飛び込んだ!


 ぼよよん!


 私の体に光線がぶつかった!それと同時に私の体が風船のように大きく膨らんだ。


 そして、ふわふわとしばらく空中を漂った後で、無事地面に着地した。


 着地したと同時に私の体は元の大きさにしぼんだ。


 体が膨らんだりしぼんだりするとは、魔法とは本当に摩訶不思議なものだな。


 私が何か不調はないかと、慎重の自分の体を探っていると、影・又兵衛が近寄って来た。


 そして、隙をついて私を抱きかかえ、強く抱きしめて叫んだ。


「か、可愛いーーーーー!!」


「ちょ、ちょっと待て、何をするのだ!放せ!!」


 まずいぞ。影・秀頼のぬいぐるみを捕まえるはずが、逆にこちらが捕まってしまった。


 又兵衛一人では、ぬいぐるみを捕まえることはできまい。どうしたものか。


 そう思っていると、影・又兵衛は私を地面に降ろした。


「うーん、これは私はもう戦えないねえ」


「なんじゃと!?今、そのまま抱えておれば、大坂城の落城まで時間が稼げたのではないか?」


 ぬいぐるみになっていた私は、とても戦えぬ。その上、元に戻るにはやり方をクレオスに聞かねばならぬからな。


「あたしのアイドル魔法は、あたしより可愛いものには効かないもの。それに、こんなに可愛くちゃ倒せないわ」


「で、では我らと影・秀頼の戦いを静観してくれるのか!」


「そうね。さすがにそっちに直接協力はできないから。そうさせてもらうわ」


 やったぞ!これで後は影・秀頼のぬいぐるみを捕まえるだけだ。


 もっとも奴の動きは我らより早い。何か策を使わねば捕まえられぬだろう。


「秀頼様!俺の頭に乗ってくれ!秀頼様が言っていた合わせ技!『くまプリンセス魔法』だ!」


 く、くまプリンセス魔法?


 私のクマになる魔法と、鎧騎士を出す又兵衛の魔法の合わせ技という意味か?


 だ、だが頭に乗ることに何の意味が?


「その冠と衣装!そして、落ち着いた所作!秀頼様はぬいぐるみになっても威厳に溢れている!」


「そして、ぬいぐるみなら技を食らうまいと、とっさに俺を庇った機転、判断力!やはり秀頼様の背中は、人を惹きつける魅力がある!!」


「俺は、その背中に一生ついていくことを決めたぜーーー!!」


 どうやら、先ほど庇ったことと自らぬいぐるみになったことで、又兵衛は私により信頼感を感じてくれていたらしい。


 だが、だとしても何故、頭に乗る必要があるのだろう?


「それはもちろん!影・又兵衛が認めるほど可愛いからだ!」


「プリンセスの頭に、くまのぬいぐるみが乗っていたら可愛いだろう!そして密着していた方が、二人の絆も高まる!」


 か、可愛いから?い、いやそれで本当に強くなるなら、頭に乗るくらい何ともないのだが。


「秀頼様!今こそ、二人の絆を見せる時だ!俺の言葉を信じてくれ!!」


「了解だ!ここまで私を思ってくれる又兵衛の気持ちを無駄にはできん」


 そう言って私は、又兵衛の頭に飛び乗った!


「プリンセス・又兵衛・フルメイクアップ!」


 又兵衛の衣装が白く輝き、花飾り達が大きくなって花弁をさらに大きく広げた。


 フリルやレースがさらに豪華になり、キラキラと光を放っている。


「俺と秀頼様の魔法で、影・秀頼のぬいぐるみを捕まえる!!」


「プリンセス・くま・ナイト!!」


 又兵衛がそう叫ぶと、衣装の花飾りが輝いてそこから無数のクマのぬいぐるみが生まれてきた。


 くま達は皆、額に『ティアラ』をつけており、体は鎧に覆われて下半身は『フリル』のふんだんについた『スカート』だ。


 やがて、さらにたくさんのプリンセス・くま・ナイトが生み出されていき、神殿全体に溢れていく。


「神殿中、隙間なくぬいぐるみで覆って仕舞えば、どこに隠れていても捕まえられる!」


『ぬあっ!バカな!こんな方法でオイラが捕まるなんて!』


 神殿の奥の方からそんな声がした。どうやら本当に影・秀頼のぬいぐるみを捕まえたようだ。


「捕まってしまったのか。残念ながら、僕たちの負けみたいですね」


 影・秀頼は落ち込んで、その場に座り込んでしまった。


「心配するな。さっきも言ったように、そなた達を消させはせぬ。その代わり、徳川との戦いには参加してもらうぞ」


「うーん、怖いけど負けちゃったからしょうがないわね」


「生かしてもらえるなら、どこまでもお供しますよ!」


 気持ちはそれぞれのようだが、ともかく二人は着いてきてくれるようだ。


「では又兵衛ちゃん!聖杯に触れるのだ!それで元の世界に戻れるからの!」


「ちょっと待て、確か聖杯は又兵衛の力を引き出すキーアイテムと言っていなかったか?」


『それは嘘じゃな。二人が絆を深めるためには、目に見える目標が必要じゃったから、騙したまでじゃ』


 クレオスは全く悪気のない表情でそう言った。


 なんとも食えない女だが、まあ結果的に又兵衛は力を引き出せたのだから、これで良かったのだろう。


『ちなみに聖杯に触れた時点で、秀頼ちゃんはぬいぐるみから魔法少女の姿に戻るぞ』


 どうやら、元に戻る魔法を聞かなくても良いらしい。ならば、我らのすることは急ぐことだけだ。


「よし、又兵衛、影・秀頼、影・又兵衛!」


「戻るぞ!大坂城に!!徳川軍を倒し、皆を守るのだ!!」


 私のその言葉と共に、又兵衛が聖杯に触れた。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 私達が元の天守に戻ると、そこには幸村一人が残っていて他には誰もいなかった。


「幸村、母上はどうされたのだ?」


「徳川軍が城内に突入した時点で地下室へと避難されました」


「天守にいるよりは見つかりにくいだろうと(おっしゃ)って奥様(千姫)や国松様(秀頼の息子)も地下室へとお連れになられました」


 なるほど、あのクレオスが出てきた地下室か。


 確かに、あそこならばすぐに見つかることはあるまい。


「だがそうはいかぬ」


 そう言われて声のした方を見ると、先程 上空で我らを襲った本田忠勝がそこにいた!


「徳川魔法鬼士の『表』 魔法侍・忠勝!!」


「この場にて、豊臣秀頼を討つ!」


 まさか忠勝が、もうこの天守まで来ていたなんて!


 い、いやこやつは飛べるのだ。他に魔法少女がいなければ、天守に直接やってくるのは当然だ。


「き、貴様もうこの天守まで」


「どうやら、眷属作りにモタモタし過ぎたようだな。家康公は既に地下室に向かわれたぞ」


 何と!家康が地下室に行けば母上たちを皆殺しにするはず……


 魔法で人は殺せないにしても、捕縛さえしてしまえば普通に刀で斬れば良いだけだからな。


「秀頼様、ここは私と又兵衛が引きつけましょう。秀頼様は地下室に向かってください」


 確かにこの場は、それしかなかろう。二人ならば忠勝を倒すことも可能だろうしな。


 だが、ということは二人抜きで家康に挑むことになるのか。


 本当に勝てるだろうか?いや、家族の命がかかっているのだ。やるしかあるまい!


「ねえ、私たちはどうしたらいいかな?」


 そうか!影・秀頼と影・又兵衛を連れてきていたのだったな!


「よし二人は私についてきてくれ。お主たちなら頼りになる」


 私達とあれ程の戦いを繰り広げたのだ。この場において彼女たちほど頼りになるものもおるまい。


「ぼ、僕も頑張ります!」


 影・秀頼がそう言うのと同時に、私たちは下の階へ向かう階段へと駆け出した。


「行かせない……」


そう言って私達の前に立ちはだかったのは、忍び衣装の怪しい雰囲気の女だ。


「……徳川魔法鬼士の『裏』 魔法忍者・半蔵……」


「……家康様の元へは……向かわせない!」


 半蔵がそう言った瞬間、彼女の体を覆うように、大量のプリンセス・くま・ナイトが現れた。


「秀頼様!早く、地下室へ向かってくれ!この女も俺たちが食い止める!」


「わかった!頼むぞ、又兵衛!幸村も!」


 私たちは、半蔵の動きが止まった隙をついて、階段を駆け降りた!


◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「秀頼ちゃんよ。このままでは間に合わぬぞ。この際じゃ、羽根に思いっきり魔力を込めて下に向かって飛べ!」


「下に向かって?そんなことをすれば、床にぶつかってしまうぞ?」


 そう言った私に対し、クレオスは『魔法少女を甘く見るでない』と言ってから叫んだ。


「秀頼ちゃん達の体はそんなにヤワではない!床も天井も突き抜けて、地下室まで一直線じゃ!!」


 なるほど、確かに床や天井をぶち抜いて地下まで降りれば、家康より早くつけるかも知れぬ。


 父上の作った大坂城を破壊することになるが……。


 豊臣あっての大坂城じゃ。私や家族の死が避けられるならば、少々城が壊れても仕方あるまい。


 私は『きゅるりん きゅるりん まほうのはじまり~」』と唱えて魔法のステッキを取り出す。


 そして『おねがい ステッキさん ふ~わふわ』と唱えて、地下室を思い浮かべる。


 すると、私の魔力がどんどん羽根に込められていき、私はとんでもない勢いで床にぶつかりぶち抜いた!


 母上、千姫、国松!待っていてくれ、必ず救い出す!


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