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第33話:秀頼達、三種の神器の正体を知る

【慶長20年(1615年)五月一日 秀頼 23歳 家康 67歳 長門国 赤間関 】


「お父様!」

「父さん……」

「パパ!!」


「そなた達、今は地上人と争っている場合でないこと、わかっておろう。今すぐ和布刈神社に案内するのだ。これからのことを決めねばならぬ」


 どうやら安徳天皇に戦う意思はないようだ。それにしても、どうやら向こうにも何か事情がありそうだな。


「どうする?和布刈神社へ連れて言ってくれるらしいが、罠だと思うか?」


「そうじゃのう、こやつらの強さを考えると、そう簡単に従う訳にもいくまい」


 この世界……いや5次元や6次元にだって、今の私達に敵うやつなどそうはいないはずなのだ。


 じゃが、この子達は我らと互角に戦って見せた。安徳帝の超次元の力なのかも知れぬが……。


 だとすれば、安徳帝の超次元は我ら三人がかりと同等かそれ以上だと言うのか?どれほどの力を持っているのだ?


「ねえ、パパこのまま戦えば、倒せなくたってボロボロにできるよ!その後でパパが倒しちゃえばいいじゃない!」


「ルナよ、そのようなことを言っている場合ではないのだ。3つの神器を揃えなければ、世界は滅びてしまう故な」


 どうやら、安徳天皇も三種の神器なくしては世界が滅びてしまうことを分かっているようだ。


 しかし、彼はクレオスが暴走するかも知れないなどということは知るまい。まさか、他に世界が滅びる要因があるのか?


「ねえ、安徳天皇さん。世界が滅びるってどういうことなの?多分、あたし達とは違う理由で言ってるのよね?」


「そなたが何を掴んでるのかは知らぬ。じゃが、朕の言う世界が滅びるとは……」


「超次元となった、三種の神器の暴走じゃ」


「「「「三種の神器が超次元に!?」」」」


「そのとおりである。朕や朕の子達は草薙剣の力を間接的に引き出しているに過ぎぬが、それでこの強さなのだ。八咫鏡や八尺瓊勾玉も同じ力を持っているならば、どんなに大変な事態かわかるであろう」


 三種の神器がすべて超次元になっているのか。その上、一つから間接的に力を引き出しただけで我ら四人と同等の力とは……。


 まずいな神器がなければ、クレオスの暴走も止められぬのだぞ。


「ならば、安徳帝は我らと協力して三種の神器の暴走を抑えようというのか。じゃが、それほどの力をどうやって抑えるのじゃ?」


「そのためには、まず三種の神器とは何なのかというところから、話さねばならぬ」


 『何か』とはどういうことだろうか、八咫鏡は確かクレオスが岩戸に籠った時に、その姿を照らして、世界が明るいと思わせたとか、草薙剣はスサノオが八岐大蛇を倒した時に中から出てきたとかだったはずだな。


 八尺瓊勾玉については良く知らぬ。クレオスの持ち物だったのだろうか?


「三種の神器はクレオスやスサノオが使っていた道具ではないのか?」


「確かに高天原の神々が使っておられたものである。だが、彼らが作ったものという訳ではないのだ。それよりはるか昔から存在した……」


「確かに、わらわが産まれた頃にはすでに高天原にあったのう」


 三種の神器は神代の昔どころか、それ以前からあったのか。


 それも話からすれば、クレオス達の力を大きく上回る何かであったと。


「三種の神器は『超次元』です。この世界には最初から超次元があったのです」


「この世界には最初から超次元があった!?」


 あまりの驚きにオウム返ししてしまったが……。最初からとは五次元人がこの世界を創った時からだろうか?


 しかし五次元人は自分達を上回る次元を作ろうとして、この世界を創ったはずだ。


 最初から超次元が産まれていたのならば、目的は達成されている。わざわざ信康のことに介入してまで、超次元を作ろうとする意味がない。


「次元は次元子を『次元振動レンジ』入れて振動させ、細胞分裂を繰り返すことで誕生する」


「次元振動レンジは本来、次元・超短波を当て続けることで、次元を振動させるのだが、レンジの故障により、一瞬だけ次元・超長波が当たってしまった」


「それにより、突然変異が起こり超次元が産まれてしまったのだ。そして創世主の五次元達はそのことに気づかなかった」


「人が時を渡る術を知らぬように、未知の超次元は観測しにくいからだ」


 レンジの故障によって、この世界に超次元が最初から産まれていた……。それが三種の神器ということか。


 それにしても、三種の神器がこの世の始まりからあったならば、何故今になって暴走などし始めたのだ?


「この世の最初から、三種の神器が超次元であったことは分かった。じゃが、今になって暴走し始めた理由は何じゃ?我らが超次元になったからなのか?」


「この世界に七つの超次元が産まれたことで、超次元同士が『虹次元共鳴(にじげんきょうめい)』を起こしたのです」


「虹次元共鳴は、それぞれの超次元を強力に高めますが、その力を扱いきれないと暴走してしまいます。超次元を完璧にコントロールしている秀頼さん、妲己さん、信康さんはいいのですが……」


「意識そのものがない三種の神器は暴走し、制御しきれていないクレオスはいつ暴走するか分からぬということじゃな」


 なるほど超次元が増えたことで、共鳴とやらを起こしたのがすべての原因だったわけじゃ。


 そして、その暴走を止められなければ、やはり世界は滅んでしまう。


「ならば、最初の質問に戻そう。どうやって暴走を止め、世界を救うのじゃ?」


「うむ、朕は三種の神器が超次元であることに気づき、対策を考えた。朕の能力を持ってできることがないかとな」


「朕の能力は、涙をかけたものの『エキス』から生命体を作り出すことである。朕は三種の神器の力に対抗するため、三種の神器から生命体を生み出したのだ」


「じゃあ、それが彼女達って訳?」


 妲己はセレナ達を指さして言った。


「うむ、そして娘達は訓練により、魔法少女としての力に目覚めた。神器の子である我が娘達ならば『調律師』として神器と心を通わせ、暴走を鎮めることができるであろう」


「だが、そのためには神器の側まで行き、直接触れねばならぬ。知っての通り、草薙剣は暴走によりめかりダンジョンを作り出し、その奥深くに眠っているのだ」


「朕達も何度か挑戦してみたが、娘達の力をもってしてもこのダンジョンを踏破することはできぬ。そこで、そなた達の力が必要なのだ」


 暴走を止められるのは、セレナ達しかいない。だが、セレナ達だけでは神器まで辿り着けないという訳か。


 じゃが私達だって、セレナ達と同程度の実力しかないのだ。彼女達と協力したところで、神器まで辿り着けるだろうか?


 いや、セレナ達と七人で心を通わせれば少々の相手に負けることはあるまい。私達も彼女達も強いのだ。その力が一つになれば……。


 そう思っていると、突然私達の脳内に謎の声が響いてきた。


『我々は、好みの女の子を(あるじ)に選ぶ権利があるぞーーーっ!!』


『清楚なセレナ!可愛い秀頼!!』


 そんな言葉が聞こえたかと思うと、めかりダンジョンから紫の光が私に向かって飛んできた。


 これはダンジョンに引き込まれるのか!?


「く、クレオス!!そなたは私と一緒に……!!」


 草薙剣がなければ、クレオスは暴走する恐れがある。


 このままめかりダンジョンに引き込まれるのならば、クレオスだけは連れて行かねばならない!!


『もちろんじゃ!せっかくの平和をわらわの手で潰してなるものか!!』


 クレオスはそう叫んで、私の体に抱きついた。


 手をつないだりするよりは確実にはぐれないだろうが、少し気恥ずかしいな。


 そんなことを考えている内に、私達の体は和布刈神社の境内にある、ダンジョンの入口に吸い込まれていった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


【慶長20年(1615年)五月一日 秀頼 23歳 クレオス ?歳 セレナ 430歳 めかりダンジョン 一階層 】


「ここは……やはり、めかりダンジョンに引き込まれたのですね」


 周囲の壁は真珠で覆われている。その壁面に、金色や銀色の雫や波の形の意匠がくっ付いている。


 ところどころサンゴのようなものも生えているな。


 海の綺麗なものを集めて可愛くした、というような雰囲気だ。


「セレナはここに入ったことあるのであろう。ここはどういうダンジョンなのだ?」


「はい、私達は1階層にしか挑戦できていないのですが……」


 そう言いながら歩いていると、大きな部屋に出た。


 そこには無数のクレオスに似たスライムがいた。


 スライムに黒い角と羽が生え、きゅるんとした眼がついている。


 部屋の中央にはそのスライムの描かれた魔法陣があり、スライムたちが魔法陣を守るように取り囲んでいる。


「これがクレオスライムです。第1層はこの部屋だけなのですが、このスライム達がどうしても倒せず、先に進めないでいるのです」


「わらわのように角と羽が生えた、顔もわらわをデフォルメしたような顔じゃのう。こやつらは何なのじゃ?」


「和布刈神社は、クレオスさん……つまり天照大御神の荒魂を信仰しています。恐らく、このスライムは荒魂が持つエネルギーから産まれたものなのでしょう」


「わらわの戦意・邪気・パワー……そう言ったものが少しずつ、めかりダンジョンに溜まっていき、こやつらになったということじゃな」


 なるほど、このダンジョンは超次元化した草薙剣によって作られている一方で、元の和布刈神社の特徴も持っているということか。


 いうなれば、クレオスの荒魂を超次元の力でパワーアップさせたものと考えるべきなのかも知れぬ。


 もっとも下層がどうなっているかは想像もつかぬがな。


「それで?倒せぬというのだから、色々試してみたのであろう。何をしてみたのか教えてくれぬか?」


「はい。私達が試してみたことは……」


1.クレオスライムは武器で斬る・殴ると武器を吸収し、武器ごとに異なる音楽を奏でる

2.素手で殴ると『ぴょみゅん』と変な音を出す。

3.歌で波を操りぶつけると波を取り込んで、可愛い歌を歌う


 なるほどな。基本的に攻撃は通じないということか。


 じゃが、どの攻撃にも音楽で返してきているというのが気になるのう。


 セレナ達、草薙剣エキスから生み出された三姉妹の武器も音楽じゃし、草薙剣と音楽には何らかの関係性があるのかも知れぬ。


 ならば倒すヒントもそこにあるはずじゃ。


「そうじゃのう、こやつらがクレオスの荒魂というならば、クレオスは何か感じることはないのか?音楽が鍵になるようじゃが」


「ふむ、そうじゃな。わらわの超次元は愛玩なのじゃったな。となれば、この子達を可愛がる必要があるのかも知れぬ。だとすれば、この子達の望むことをしてやれば良いのではないか?」


 クレオスライム達の望むことか。こちらの行動には全て音楽で返してきているのだから、音楽に関することが彼らの望みなのだろうか?


「それじゃあ、皆で歌でも歌うべきかも知れぬな。何でも音楽で返してくるなら音楽が好きなのであろう」


「歌ですか。でもすべて吸収されて、別の歌を返されるんですよ?」


「返歌というわけじゃな。そうしてお互い、曲を返し続ければ相手の要求を満たせるのではないか?」


 クレオスライムの歌を感じ、こちらの歌を届けることで心を通わせることができれば、何か変化が起きるはずじゃ。


「セレナよ。歌うならば愛を込めて、攻撃の意思を持っていては気持ちは伝わるまい」


 クレオスライムが私の可愛さをどう捉えるか、クレオスに可愛がられてどう思うか?セレナの歌が心に響くだろうか?


 常にそれを考えながら歌えば、超次元の力でクレオスライムと共鳴ができるであろう。


 もし、やろうとしていることが間違っていても、クレオスライムと心を通わせることができれば、彼らの真の望みを知ることができる可能性は、より高まるはずだ。


「よし!クレオス、セレナ!クレオスライムに超次元のセッションを見せてやろう!」


「わ、分かりました。父の信じた貴方達の言うことです。素直に従いましょう。それに貴方達はその方法であらゆる困難を乗り越えてきたのでしょうから」


 そうであったな、確かに私達は相手を理解し、その特性を愛することで危機を突破して来た。


 今回もそうという訳だ。それにクレオスライムは、クレオスの荒魂からできているのだから、私達にとって理解しやすいはずだ。


「よし!クレオスよ、そなたのもっとも『気合い』が入る音楽を共に歌おう!そなたの荒魂なら、そなたの愛する曲を愛するはずじゃ!」


「おお!そうか!!ならば行くぞよ。わらわのロックビート最高曲『皇光・降臨』を!!」


 私達の最高のセッションが始まる……!!


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