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第23話:家康、全身全霊を持って、暗黒ラブリー妄想で想いを伝える

【慶長20年(1615年)五月一日 秀頼 23歳 家康74歳 きゅわるん恋獄 アトラクション たぬき・シュバイツ無双連撃・舞台 】


[家康視点]


 今こそ、僕の『暗黒妄想』の集大成、人生を捧げてきた暗黒妄想を本当の伝説へと昇華させる時です。


 僕が全人生を通じて、秀頼さんに抱いてきた気持ちをぶつけましょう。僕と半蔵が培ってきた、暗黒妄想で!!


 僕が秀頼さんに抱く思いは、3つのタイミングで変わって来ました。いえ、前の想いを抱きつつより深くなったんです。


 それは『畏怖』『尊敬』『感謝』の3つの感情です。


 秀頼さんと出会う前、僕が秀頼さんに感じていたのは『畏怖』です。僕は彼の中に眠る『救世の聖女』の力を恐れていた。魔法少女である僕達に対して唯一、対抗し得る力でしたからね。


 二条城で初めて会った時、その威厳に圧倒されました。彼に対して『尊敬』の感情を抱いたのです。この素晴らしい人を何としても倒さないと天下統一はないと思いました。


 そして、大坂城天守で出会った時は……僕の全てを理解して友情をぶつけてくれました。それによって生まれた『感謝』が、僕から彼に向けた友情の源泉となっています。


 これ等の感情を暗黒妄想でカッコよく、それも秀頼さんの好む『可愛さ』を含めて言葉にしなければなりません。


 彼……いや、今は女の子となった彼女に、僕に対する恋愛感情を抱かせるためです。それができれば、彼女と結婚することで僕の暴走を抑えることも可能でしょう。


 この『史上最愛のデート』の最奥に眠る、特異天元を破壊することも可能かも知れません。


 そのためには、まず彼女に対する『畏怖』を暗黒妄想と可愛さ……暗黒ラブリー妄想で表現しないといけませんよね。


「よし、腹は決まりましたよ。これから僕が貴方に抱いてきた感情『畏怖』『尊敬』『感謝』を暗黒妄想と可愛さが混じり合った『暗黒ラブリー妄想』で告白します」


「畏怖と尊敬と感謝……?」


 秀頼さんは呆気にとられています。彼女がクレオスに会うまでは、ずっと徳川が優位でしたから、僕が畏怖や尊敬を抱くことが意外なのかも知れません。


「ええそうです。ですが、そのことは暗黒ラブリー妄想に基づく台詞でお伝えします」


 ではまず『畏怖』ですね。


「貴方と出会う前、私が抱いていた感情は……『邪悪熊神 玄ヱ・瞑えもん』です!」


 普通に暗黒妄想で表現すれば、『深淵の如く深き穴に棲まう、人喰いの邪神』というところでしょうか?


 秀頼さんに対する『未知への恐怖』を深き穴と邪神すなわち、『とんでもなく強い謎の存在』で表したものです。


 それを可愛く加工したところ、邪神に熊を加えた邪悪熊神と……穴の深さ暗さを表現するため玄の字と、冥より暗黒妄想らしい瞑の字を可愛い名前にしたのが、玄エと瞑えもんになるわけです。


 僕の言葉を聞いた直後、一瞬にして秀頼さんの顔が暗くなります。


 もしかして、僕の言葉が不快だったのか、と思いましたが、どうやら僕の言葉によって僕の感じた『畏怖』を共有しているようですね。


「ふふふ、なるほどのう。私からすれば徳川は大家、私のことなど侮っていると思っていたが、ここまで畏怖を感じていたとは、ビックリだ」


「だが、それも私の持つ力を恐れていたわけだ。最も今やその力はそなたを救うために振るわれているのだから面白い」


 秀頼さんは『カラカラ』と笑っています。僕の感じた『畏怖』を共感し、僕に対して好意を抱いてくれているみたいですね。


「そして熊や『えもん』を含めたのも良い。可愛さを含めることで、より相手の共感を高めることができている。さすがに暗黒妄想に全てをかけただけはあるのう」


 よし!いい感触ですね。これなら3つの感情によって秀頼さんを恋に落ちさせることも可能かも知れません。


 では間髪入れず『尊敬』を暗黒ラブリー妄想で言い表してみましょう。


 あの時、私が感じた秀頼さんの威厳を暗黒妄想で言うなら……。


 『星界より遣わされし、闇喰らう煌刃の精霊』ですね 。


 星の世界という未知のワクワクを感じさせる言葉に、秀頼さんの持つ『聖女』の威厳を『闇を食らう精霊』と表した訳です。


 煌刃は強そう、何となくカッコいいと言うことで入れてみたものです。けれど、それこそ暗黒妄想の本質ですからね。


 これを可愛くすると……どうなるでしょう?


「『星界(ステラ)より遣わされし、闇くらを煌ぴかに化けさせるぽんぽこ明神 』ですか」


 星界にステラのルビを振ることで、可愛さと暗黒妄想っぽさを増します。


 『闇を食らう煌刃』という言葉は、元々 光によって闇を祓うという意味です。これを可愛い言葉に変えれば良いわけです。


 だから煌刃を『煌ぴか』、闇を対になる言葉として『闇くら』とします。


 そして精霊はぽんぽこ明神にします。これは、不思議生物らしさを残した上でたぬきの可愛さを含めた訳です。


 私の言葉を聞いた秀頼さんは……。


 驚くような顔を見せた後、感動で涙を流し始めました。


 私が秀頼さんを威厳に接して、心からの『尊敬』を抱いたシーンをありありと見ているようですね。


「こ、この存在に対して私は……」


 そう呟きました。そう確かに私はあの時、秀頼さんを前にしてどうしようもない尊敬と、どう倒したらいいのか分からないという困惑に陥ったのです。


「い、家康よ!私に対してこれほどの畏敬の念を抱き、憧れていたとはビックリだぞ!」


「畏怖の念が一気に尊敬に変わり、心が打ちひしがれた様が、マジマジと伝わって来た!」


「そして家臣と自分の夢のために、倒さないとならぬという悲しみもな!!」


 秀頼さんは、とても嬉しそうです。僕と気持ちが通じ合っていることを感じているのでしょう。


 僕も嬉しいです。必死に考えた暗黒妄想の言葉が秀頼さんのハートに直接届いているんですから。


 さあ、次が最後です!何としても秀頼さんのハートを射止め、恋愛感情を抱かせましょう!


 最後に『感謝』ですね。私の過去を見て、誰よりも理解してくれたことに関する感謝、これを表す暗黒妄想は一つしかありません。


 そう『咎魂(とがたま)解容ときゆる契絆(けいな)(はじ)まるん』ですね。


 まず、私の『私の過去を理解し、過ちを許してくれた』という部分を暗黒妄想にしたのが『咎魂の解容』です。


 咎魂とは、咎によって穢れた魂という言葉を暗黒妄想らしく、カッコよい言葉で装飾したものです。


 解容は、理解の解と容認の容を合わせた造語ですね。意味はそのまま、理解し許してくれたということです。


 カッコよくするために、二つの言葉を無理やり合体させてみました。

 

 解容を『げよう』と読んでは、可愛さに欠けますので、解り許すという意味を込めて『ときゆる』と読む方が良いでしょう。


 そして、『契絆が創まるん』は友情を与えてくれたことを示す言葉です。契りと絆、二つ重ねることでカッコよくなり、友情の度合いも強く感じられます。


 始まりではなく創まりと書くことで、より暗黒妄想らしいカッコよさを加えましょう。


 これも『けいはん』では普通過ぎるので、『けいな』にしましょうか。女性の名前っぽくして可愛くしましょう。


 さらに『創まり』を創まるんとすることで、少し可愛さを加えてみました。


 でも、これだけじゃまだ可愛さが足りません。もう一工夫してみましょう。


 そうですね。暗黒妄想らしさを残すため、基本的な文章はそのままで、間に可愛い擬音語を挟むことにしましょう。


 咎魂の解容は私の罪が受け入れられ許されるイメージ……凝り固まったものが溶けていくような音が良いでしょう。


 『咎魂がほわんと、解容』が良いかな?


 契絆の創まるんには、友情という光が生まれるような擬音がいいですね。でも『ぴか』は尊敬の時に使っているから、別の言葉が良いでしょう。


 『きゅるん』が良いかもしれません。心が動き、ときめきが生まれるような言葉です。友情を与えてくれたという意味に加えて、それを愛情に昇華させたいという意味を加えることができるでしょう。


 『咎魂がほわんと解容、きゅるんと契絆が創まるん』完璧ですね。


 そう考えて僕は、全身全霊の想いを込めて、秀頼さんを見つめました。


【慶長20年(1615年)五月一日 秀頼 23歳 家康74歳 きゅわるん恋獄 アトラクション たぬき・シュバイツ無双連撃・舞台 】


「では3つ目!僕の『感謝』を、暗黒妄想で言い表して、可愛く加工したものを伝えます!」


咎魂(とがたま)がほわんと解容(ときゆる)、きゅるんと契絆(けいな)(はじ)まるん」


 私がその言葉を言い切った瞬間、秀頼さんは『ぁぁぁ』と呻き声をあげて、その場に蹲りました。


「くあ……、忠勝……半蔵……生きているのか死んでいるのか分からぬ、二人の傀儡を使いながら、このような苦悶を抱えていたのか」


「だ、だが……そうか、私は!私とメイ、くまごろうとニャーちゃんがかけた言葉が、これほど心に響いていたのか!」


 そして『きゅるん……』と小さく呟いた。


「『畏怖』『尊敬』『感謝』そして『きゅるん』という言葉がそれらを全て昇華させた!!」


「ハートが燃え上がる!!この心の奥から沸き上がる思いは!!」


「『畏怖』する思いは可愛い。『尊敬』してくれるのは可愛い。『感謝』してくれるのは可愛い」


「そして『きゅるん』は可愛い」


「暗黒妄想に燃え、可愛さに萌え、ハートの炎を萌えの息吹きが、さらに燃え上がらせる!!」


「燃え上がれ!我がハート!!」


【慶長20年(1615年)五月一日 秀頼 23歳 家康74歳 きゅわるん恋獄 アトラクション たぬき・シュバイツ無双連撃・舞台 】


[秀頼視点]


 私の胸が熱くなる。熱すぎて、燃えてしまうのじゃないかと思うほどじゃ。


 そう思っていると、実際に体から炎が燃え上がる。だが焼け死にそうな感じはせぬ。むしろ体中の疲れがとれ癒される感じじゃ。


 この空間では魔法は使えぬはずじゃが、だとすればこの現象は何じゃろう?


 愛情は魔法とは違う不可思議な現象を起こし得るものなのか?


 じゃが、この乱世では妻や家族への強い愛情があろうとも、戦に負け家族を守れぬまま死んだ者など山ほどおる。


 私と家康が特別なのか?


 ここまで、これほど家康の内側までたどり着いたからこそ、私の愛が力を持ったということか?


燃(萌)え盛る愛(ラブ・インフェルノ)

 1.燃え上がる秀頼の恋愛感情が生み出した愛の炎

 2.暗黒妄想への燃えと、可愛さへの萌えの相乗効果によって、限りなく燃え盛る。

 3.二人の愛が通じ合った時、『二人の愛の障害になるあらゆるもの』を焼き尽くす。


 なるほど、愛が通じ合えば、愛の障害を燃やし尽くせるのか。


 ならば世界滅亡の原因となっている『特異天元』すら、私達の愛で燃やし尽くせるのだな。


 だが、それには条件が一つ足りぬか。


「これは!この炎は、史上最愛の炎『燃(萌)え盛る愛』ですね!これならば、特異天元を焼き尽くせるはずです」


 どうやら家康にはこの炎が何なのか分かっているようじゃ。


 そしてやはり特異天元を焼き尽くせるだけの力はあるらしい。


 だがそれを実現するためには、私が家康を愛しているだけではダメじゃ。愛が通じ合わなくてはな。


「いや、今この炎は私だけが燃やしているに過ぎぬ。そなたが私に恋愛感情を抱かねば、愛が通じ合っているとは言えまい」


 そうなのだ。恋とは二人の愛が通じ合ってこそだ。


 家康は私への想いをぶつけてくれ、私は恋に落ちることができた。


 じゃが家康が私にぶつけた『畏怖』『尊敬』『感謝』という感情は……、家康の私に対する想いは、愛情ではなく強い友情に過ぎぬ。


 私が今、やつを思っているこの熱い想いとは本質的に異なるのだ。


「そうか、そうですよ!今度は僕が恋に落ちないといけません」


「だったら今こそ!僕の暗黒ラブリー妄想を聞いて熱く燃え上がっている貴方の『恋愛感情』を、全力で僕にぶつけてください!!」


 私の想いをぶつける……!そうか、今私の中で燃え盛っているこの熱い感情を、言葉で、行動で、心で!伝えることができれば、二人の愛が通じることなど容易い!


 ならば、私のすることは一つ!この力を用いて、それにふさわしい場を用意することだ!


「燃え盛れ、愛の炎よ!共鳴せよ、『史上最愛のデート』!!私が告白するのに、最もふさわしい『場』を開くのだ!!」


 私の体から炎が燃え上がり、舞台に積み上げられた冷凍シャケを炎に包んだ!!


 たちまちに氷は解け、シャケそのものが燃え上がる!そして焼け焦げた灰から、炎を纏った鳥が生まれた!!


「よし、この『愛の鳳凰』に乗るのじゃ。たちまちに二人の恋、私の告白に相応しい舞台に連れて行ってくれよう」


「こんなものが生み出せるなんて……。これが愛の力なのですね」


「もちろんじゃ!じゃが、そなたが私を愛してくれれば、できることはこんなものではないぞ!!」


 私は今も燃え盛る愛の炎に、心をときめかせながら、新たなる恋の舞台へと旅立った。


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