008 入学準備
「で、訓練校への入学はいつする?」
「あれ? いつでもできるわけじゃないんだ」
「お前ほんとに何も知らねえんだな……なんかちぐはぐなやつだなぁ……」
帝国に関してはあんまり知らないんだよなあ……。
姫様があそこには行くな! って止めてたし。なんかあったんだろうか。まあそのおかげでこうして逃げ延びてこれたのかもしれないけれど。
「訓練校への入学タイミングは定期的にあるんだが、推薦状ってのは言っちまえば試験資格みてえなもんだ。入るには試験に合格する必要がある」
「そうなのか……」
難しいんだろうか……。
特に帝国の常識のない俺は不安だ……。
「最速でいくなら二日後だ。次はいつになるかわからんが……百日以内にはまた募集があるとは思う。準備に時間が必要なら次回にしても……」
アウェンはどっちでもいいと俺を見た。
試験は知識を問う筆記と、実力を問う戦闘試験らしい。
これは冒険者にしても軍に入るにしても共通だ。内容は違うらしいが。
「そういえばアウェンは普通に冒険者で食べていけるんじゃないの? なんでわざわざ訓練校に?」
さっきの反応をみればアウェンが冒険者達の中でも上位に位置することはなんとなく想像がつく。
そう思って尋ねたが、アウェンにもアウェンなりの理由があるらしい。
「帝都でやるにはランクが低くてな……今更ゴミ拾いからやりたくねえ。かといってギルドの特別試験をクリアする自信もねえ。というわけで訓練校だ」
どうやら丁度いいランクから始める近道ということだった。
「あとはまあ、ここを出たってだけでそれなりに箔がつくからな。貴族の話じゃねえが、ある程度食い扶持に困らんようにしてくれるっていうから気になってな」
「なるほど……」
俺もそのために来たようなものだしな。
でも冒険者かあ……冒険者だとちょっと、活動範囲が広い……。
軍に入れさえすれば完全に追手から逃れられると思う。そっちのほうがいいだろう。
「ほんとは戦いより家事とかのほうが得意なんだけどなあ」
「ウソつけ。仮にそうだとしてももう、お前は軍か冒険者でやるしかねえぞ」
「推薦状、もらったしね」
「いやそうじゃねえよ。こんだけギルドで騒ぎになったんだ。お前をもう逃さねえよギルドが。それこそ軍にでも入らねえ限りな」
「そうなのか……」
ギルドカウンターの奥でおばさんたちがニコニコしていた。確かに逃さないという強い意志を感じる……。
こんなことならもう少し考えてから帝国に来るべきだっただろうか……。
あのときは何でも良かったんだけどよく考えたら別の道もあった気がする。
まあ言っても仕方ない。切り替えよう。
「お姉さん、ギルドは図書館としても使えるんですよね?」
「え? ええ。そうですけど……」
「ほう。筆記試験に備えるか。じゃあ俺たちの入学は」
「もうしばらく先か」「明後日だね」
「え?」「え?」
アウェンと俺の声が重なる。
そんなに待つつもりはない。
というか次がいつかわからないとなると流石に不安だ。数年は帝国まで探しに来るようなことはないと思う。
いやあれだけ使えないと罵っていたくらいだ。もう次の執事を捕まえて忘れてるかも知れないけど。
念には念をいれないとな!
「アウェンはいいの?」
「あ?」
「冒険者のほうが向いてそうだけど……俺は軍に行きたい」
そういった途端明らかにカウンターの向こうにいる人達が落胆していたが見なかったことにしよう。
「しゃあねえなあ。俺も一人で冒険者に行くよりかは、お前と軍を目指したほうがいいだろうよ」
「じゃあ一緒に勉強だね」
「バカにすんな。俺はそんなに馬鹿じゃねえ」
意外だ。
人は見かけによらないな……。
「お前、顔によく出るやつだな……」
「そうかな?」
姫様といたときは感情はなるべく殺すようにしてきたから、その反動だろうか……。
「楽しいからかな」
「悪意なくいいやがって……いいか? 戦闘試験は問題ねえだろうが筆記試験は帝国の常識を問われる。特に軍は冒険者より難しいぞ」
「うん」
あと二日。
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Sランクパーティーのお荷物テイマー、使い魔を殺されて真の力に目覚める 〜追放されたテイマーは実は世界唯一のネクロマンサーでした。ありあまるその力で自由を謳歌していたらいつの間にか最強に〜