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084 再会

「私はお嬢様の執事ですので」


 その言葉は驚くほど自然に、口をついて出てきたものだった。


「なんだあいつは⁉」

「構わねえ! もっと魔法を……」

「待て……まさかあれ……」


 無数の魔法を無理やり遮断したせいで周囲の視界を遮っていた土煙が晴れていく。


「おい……あれって……」

「化け物執事……」

「終わりだ……」


 一気に戦意を喪失する民衆軍レジスタンスに戸惑ったのはカルム卿傘下の三人だった。


「何を言っている! 相手は一人だぞ⁉」


 確かにすでに姫様のもとにいた人間は全員散り散りになって逃げている。

 だがその言葉に返ってくるのは、信じられないものを見るような無数の眼差しだけだ。


「ええい! ここまで来て失敗など許されん! 王女の確保だ!」

「おい! やめておけ!」

「うるさいぞ! たった一人、執事がのこのこ出てきたからといってどうなる!」


 仲間割れを起こし始めた民衆軍レジスタンスだが、押しのけるようにして魔法人形が三体飛び出してくる。

 なるほど。こうして対面するとたしかにカルム卿が自信を持っていた理由もわかる。

 あの小屋で見たものより数倍強いのだ。

 戦争に利用すれば単体戦力としては破格の性能を誇るだろう。

 だが……。


「人形に負けるようでは、執事は務まらないからな」


 三体の魔法人形の方へ向かって逆にこちらから駆け出す。そしてその勢いのまま、すれ違いざまにその全て破壊する。

 背後でバタバタと音を立てて崩れていく人形たち。後ろには姫様がいるのだ。万に一つの事故も起こらないよう、念入りに破壊しておいた。


「なっ……」

「お前は……一体………一体何者だ!」

「覚えてもらう必要はない」


 術者である三人の意識を刈り取る。


「ひっ……逃げろぉおおおおおお」


 あとはあっさりしたものだった。

 追いかける必要もないだろう。他国に操られたりしない限りは、民衆軍レジスタンスは必要なケースも多いからな。

 広い庭園に残ったのは二人だけ。


「あんた……どうして……」

「どうしてでしょうね……」


 自分でも不思議だった。

 ここに来るまでの選択はすべて、自分の感情を優先してのものだった。

 姫様に仕えていた頃には考えられないほどに、自分の意思でここまでたどり着いたのだ。


「馬鹿ね……戻ってくるのが遅いじゃない」

「そのとおりですね……申し訳――」

「待ちなさい」


 俺の言葉を遮って、なぜか姫様が深呼吸している。


 ──そして


「悪かったと、思ってるわ……」


 顔を逸らし、うつむきながらそう漏らした。

 これまでの姫様を思えばありえない言葉に驚く。

 そうやってこちらが固まっている間に、ポツリポツリと言葉は続く。


「リィトがいなくなって、どれだけ大きな存在だったかを思い知ったわ……。私はリィトがいないと何も出来ないことも、それに……えっと……」


 その顔からしずくがこぼれる。

 それでも姫様は言葉を続けた。


「だから……ごめん、なさい」


 泣き声にかき消されないよう、絞り出すように告げたその言葉は、しっかり俺の耳に届いた。

 その言葉を受けて出てきた俺の答えは……。


「紅茶を淹れましょうか」


 目を見開いてこちらを見る姫様に笑いかける。

 何故かわからないが、そうするのが良いように思えたのだ。

 うつむいたまま顔をこすり、姫様がこう言った。


「ええ、とびっきり美味しいのを淹れて頂戴」

「かしこまりました」


 姫様のお気に入りの茶葉があることは屋敷の中で一度確認済みだ。

 目を腫らしながらも笑ってくれた姫様に安心しながら屋敷に入り準備をすすめた。


あとはエピローグ的な感じなので一章完結です。

ちょっと更新おやすみしながら二章の流れと書籍化作業をすすめるつもりです。


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― 新着の感想 ―
[一言] ここで完結扱いですね後は後日談ですね
[一言] この戦闘のただ中で茶葉の確認… 余裕かよΣ(゜ロ゜;)
[一言] うむ。あくまで個人的な見解だが、状況が事細かに描写されていない事から想像がし難い。 主人公の人格がブレブレ。帝国の味方なのか、王国の味方なのか。自分の意思で抜け出した筈なのに、少し反省したと…
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