075 形勢逆転
「どうしたギーク? 早くせんか」
「……はい」
指示を受けたギークが俺の前に進み出てきて、剣に手をかけた。
「馬鹿な男だ。だから何度も、軍人などやめれば良いと言っていたものを」
「ギーク……?」
真意の読み取れない。
だがギークの声は明るいものではなかった。
「タイミングはギリギリだったが、もうこれで間に合うこともないだろうな」
「どういう意味だ……?」
その言葉の意図を探るため、目を合わせようとしたところで、突然カルム卿が叫んだ。
「なにぃっ⁉」
叫んだ理由はすぐに明らかになった。
「リルト! 無事か⁉」
「貴様っ⁉ どうやってここを!」
「あぁ⁉ 誰だてめえ、見たところてめえを殴りゃあリルトは助かるってわけだな?」
アウェンの直感はすごいな……。
「ちっ……下賤な屑め! ギーク、まとめて片付け……」
「遅い」
アウェンの登場。
思わぬ援軍の到着に俺自身反応が遅れたものの、ギークとカルム卿ほどではなかった。
先に動き出した俺は、予め解いていた拘束を改めて外し、今度は逆にそれをカルム卿に仕掛けた。
すぐさまアウェンが呼応し、ギークの制圧に成功する。
「ったく、こんなことになるなら先に一言くらい言っていきやがれ」
「悪かったよ」
「まあどうやら、俺がいなくてもなんとかなったみたいだけどよ……」
「いや、来てくれて助かったよ」
アウェンの軽口に答えていると、カルム卿が苛立った表情でこう告げた。
「貴様ら……辺境伯であるこの私にこのようなことをしておいて、ただで済むと思っているのか?」
「あぁ? こんな状況で何偉そうにしてやがる」
「野蛮人め……今すぐ拘束を解け。その人間は王国の間者だ。始末せねばならん」
アウェンを睨みながらカルム卿がそう告げる。
「王国の間者? どこに証拠がある?」
「知らんのか? 王国の王女に仕える執事。それがそいつの正体だ」
その事実を告げられたアウェンは、一瞬の躊躇もなくこう答えた。
「昔の話だろう?」
「な……」
清々しいまでのアウェンの態度に一瞬唖然としたカルム卿だったが、すぐに叫びだす。
「昔の話などと簡単に済ませて良い問題ではなかろう!」
「いやいや、済ませてくれよ? 帝国は誰だって能力があれば登用するのが強さの秘訣だろ?」
そう言って不敵に笑うアウェンが、そのままこう付け足した。
「だって俺も、傭兵稼業で何人も殺したぜ? あんたみたいな帝国軍人をなぁ?」
禍々しいほどのオーラを放つアウェン。
普段の爽やかさが消える。これもアウェンの持つ一つの顔というわけか。
俺と出会ってからはあえて出していなかった顔だろうが……。
どっかで補足しますが捕まったのは移動後の魔道具による拘束です
ちょっと展開が急になってすみません




