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070 最後の手紙

「リルトさん、少し良いですか?」


 リンド城に戻り、級友との談笑を楽しんだ日の夜。

 俺はまたメリリアに呼び出されていた。


「どうした……ってメリリアが俺を呼び出す理由なんてあれしかないか」

「その言い方はなにか引っかかりますね……呼び出して良いなら何の用もなく呼びつけますよ?」

「悪かったよ」


 そういうのはもう姫様だけで間に合ってた。


「まあ、今回も確かに手紙ですが……リルトさん、アスレリタのことはどの程度……?」

「まずい状況だっていうのはわかってるよ」


 俺がカルム卿のことを把握していることも、その行動を妨げようとしていることも、流石に話すわけにはいかないだろう。

 ぼかして答えておくしかない。


「そうですか……」


 それより気になるのはいつも以上に深刻そうなメリリアの表情だった。


「なにかあったのか?」

「いえ……読めばわかるかと思います」


 そう言って渡されたいつもの手紙。

 そこにはこれまでと全く違う文言が書かれていた。


『いいかしらリィト。

 なにがあっても絶対に来ないように。

 これは命令よ。

 いいわね?』


「これは……」

「明らかに様子がおかしいんです。そして実際、アスレリタの状況だっておかしいことはすでにリルトさんもご存じでしょう」

「そうだな」


 あの姫様が「来るな」と言っている。

 それだけで異常事態なのだ。


「これは私の立場を考えれば褒められたことではありませんが……」

「待った。言わないで良い」

「ですが……いえ、そういうことですか。わかりました」


 手紙を俺に渡すということだけでもそれなりのリスクを背負わせている恩人なのだ。

 これ以上甘えるべきではない。


 メリリアの言おうとした話は十中八九カルム卿に関わる話。

 そしてこれは、国家として掴んでいる情報ではなく、メリリアが個人として掴んだ情報だろう。でなければ流石に、ここで口に出そうとはしないはずだ。


 要するに調べようと思えばわかってしまうのだ。

 カルム卿が何をしているかということは。


 それはつまり、この件に首を突っ込むことは、帝国トップクラスの大貴族を敵に回すということになる。


 どう考えても私情で簡単に動いていい話ではない。

 だというのにすでに俺は……。


「リルトさん?」


 下から顔を覗き込まれて慌てて距離を取る。


「ああ、ごめん。大丈夫。俺はもう帝国軍人なんだ」

「そう……ですね」


 一瞬表情を曇らせたメリリアだったが、その後は努めて明るく振る舞おうとしてくれた。


「ではリルト中尉に次の作戦について詳しく伺ったりしてみましょうか」

「やめてくれ」


 それはもう、俺をからかうくらい明るく。


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― 新着の感想 ―
[良い点] ここで、こうきましたか! こういう展開は素晴らしいと思います(o゜▽゜) [気になる点] 「最後の手紙」? ドキドキしますね! [一言] 愛ですね! 愛!!
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