044 二度目の手紙
「リルトさん。決してケルンへは行ってはなりません」
「でもそれを決めるのは俺じゃないよね?」
「そうです……ですが……」
講義を終え、メリリアに呼び出されて再び密会を行っていた。
周囲の人気に気を配り、また隠密魔法を展開して話に入っている。
「それとも、メリリアの権限でなにかできる?」
「城にいたときであればともかく、こうして訓練校にきて見習士官となってしまった以上、私にも……」
「だったら指示に従うだけだよ」
「ですが……意味もなくいたずらに死ににいくようなものです」
決して外に漏らしてはいけない発言。
メリリアは訓練校にきたとはいえ王家の人間。その人間が、いま現場で命をかけている国民たちの、その行為自体を否定するようなものだったから。
「あなたは生きなければいけない理由があるはずですよ」
そう言ってまた、あの手紙を取り出した。
「二通目か」
「さあ。本当はもっと多いかもしれません。ですが私が知るのはそうですね、二通目です」
中身を確認する。
概ね前回と同様の文面が並んでいた。
『今帰ってくるなら……その……ちょっとは大目に見てあげてもいいわ』
そんな文言が付け加えられていたが。
「まだ戻る道もあるはずです」
「ありませんよ」
自分で出てきたのだ。
自分の都合が悪くなったからと言ってそんな身勝手な真似は許されない。
「どうしてもというのであれば……私もケルン戦線に向かいましょう」
「そんなことが?」
「基本的に劣勢の戦線に向かうことは帝国において名誉です。それを止めることはできません」
「にしたってなんのために……」
「みすみす学友を殺したくないから」
「そんなこと言ったらクラスメイト全員について回らないといけなくなるな」
「では……将来有望な帝国の戦力をこんなところで失いたくないから?」
「その割には王国に戻るのは良さそうだった」
「もう……意地悪ですね……」
メリリアが口を尖らせる。
「あなたのことが気になるからです。死なせたくないのです」
まっすぐこちらをみてそんなことを言うメリリア。
まともに相手をするとこちらが持たない顔をしていた。
「ありがとう。でも、無理に来る必要はない」
「もうっ! 少しはなにか反応とかないんですかっ⁉」
結局の所多分、メリリア自身も自分の感情を正確に捉えられているわけではなさそうだった。
「早い段階で次の行き先がわかったのが良かったと思うことにするよ。ちゃんと準備していけば、きっと大丈夫」
「あなたならそうかもしれませんが……」
どの戦場だって命の危険は隣り合わせ。
激戦地にいきなり送り込まれるのはたしかに大変かもしれないけれど……。
「そう簡単に死なないさ」
姫様の無茶な要求に比べれば、死地に飛び込むことくらいわけがないように思えるからな。
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