022 魔法訓練①
「魔法訓練は私が担当するわ」
「師匠!」
「あら……師匠はおやめなさいメリリア。ここではアイレス教官、もしくは中佐とお呼び」
「はい」
魔法訓練の担当はいかにも魔術師然とした全身黒いローブの背の小さな老婆だった。
メリリアが師匠といったことから、宮廷魔法使いであることがうかがいしれる。
「では魔法訓練ですが、軍人のみなさんにとって魔法は戦況を左右する最も大きな要因の一つです」
アイレスさんの説明が始まる中、ギークとその取り巻きは退屈そうに話を聞いていた。
その様子に気を取られていると突然、背後からあのドワーフの少女が声をかけてきた。
「ギーク達は実戦経験あり。そして魔法はそんなに出来ない。この授業は退屈だと思う」
「うぉっ!? なんだぁ、おめえ」
気づいていなかったアウェンは思わず声を上げて教官に睨まれていた。
「私はサラス。今は教官の話に集中」
「おめえが話しかけてきたんだろうが……ったく」
サラス。あの時試験官側に選ばれた魔眼持ちのドワーフの少女。
入学試験で使っていたのは身体より大きな斧だった。
おそらく魔眼の力は重力操作だ。
そんなことを考えていると、驚いたことにサラスが心の中の声に反応するようにこう言った。
「正解。でも、それだけじゃない」
「心が読めるのか!?」
「表層化している心の声は聞き取れる」
「それは……」
すごい。
魔眼にも色々あるらしいが複数の効果を持つのか、それともユニークな魔眼か……。いずれにしてもすごいことには変わりはなかった。
「ありがとう……。でも、これは貴方もやっている」
少し顔を赤くするサラス。
なるほど正面から褒められるのには弱いのか……。
そして確かに、俺も表層化した心の声は聞き取れる。いわゆる顔に出るというやつだった。
いまのサラスはそれにしてもわかりやすすぎる様子だったけど。
おっと、そろそろ集中したほうが良さそうだ。
「まず今日は個人の技量を見るためにあなた達に石の破壊を課題として与えます」
「石……?」
「ええ。課題のルールは簡単です。魔力を使いこの石を破壊すること。ここにある石のうち、どれか一つでも壊せればそれで合格とします」
大小様々かつ、それぞれ色味の異なる結晶のような石がアイレス教官の魔法によって宙を浮かんでいた。
「本日中に壊せなかったものは休暇を返上してもらい、魔法訓練の補講を行います」
「うげ……俺魔法苦手なんだよなあ……」
アウェンがぼやく。
そしてほとんどそれと同じ顔をギークが浮かべていた。
「ちなみに……壊した者は自由にして構いません。帰ってもよし、友に学びを授けるでもよし、そして……」
次の一言でクラスの雰囲気は一変した。
「ここにある石を全て壊しきってしまっても」
自分の合格点を取った後、他者を蹴落とすこともできるということだ。
広告の下の☆☆☆☆☆を押して是非応援お願いしますー
https://ncode.syosetu.com/n5018fr/
幼馴染の妹の家庭教師をはじめたら疎遠だった幼馴染が怖い 〜学年のアイドルが俺のことを好きだなんて絶対に信じられない〜
こちらもよろしくおねがいしますー