016 入学試験編⑧
「ではこれより、実技試験の内容を説明する」
一度みんなと同じく最初の広場に集まるようにとのアナウンスがあったのでそれに従った。
「軍においては優秀なものは作戦指揮を取っていくことも多い。だが優れた個人が集団を圧倒する例が主流となる今、冒険者と軍においては優秀な戦闘能力を持つものを入学させる方針を取っている」
ギルン少将の声が広場に響く。
魔法があれば確かに、一人で万単位を相手にするような英雄だって現れることがあるというしそうなんだろう。
「そこで実技試験では直接戦闘技術を見るために模擬戦を行う」
周囲がざわめかないということは模擬戦になることはわかっていたということなんだろう。
「候補生同士で戦闘を行えば危険が伴う。よって特例を除きそれぞれの試験官との模擬戦を行い、その様子を見て判断することになる。どのものも武装した一般兵士百人は相手取れる猛者だ。胸を借りるつもりで挑むと良い」
実力差のある相手であれば加減をしてもらった上で実力が見られるというわけだな。
だがギルン少将の言葉はそこで終わらなかった。
「一部、すでに実力がそこに達している者も見受けられる。その者たちは特例としてこちら側……つまり試験官側として実技試験は行ってもらう。もちろん筆記に問題がなければその者たちは最上位クラスに行くことになる」
おお……。そんな制度まであるのか。
いや周囲の様子がこれまでと変わり、ささやきあう声が大きくなっていた。
「おい……こんな制度あったかよ」
「いや、聞いたことねえよ。というか試験官って一般兵士百人って……Bランク相当ってことだろ? そんなん最初からこんなとここねえだろ普通」
「いやいくらなんでもそんなつええやつがこんなとこにいるわけねえだろ」
Bランクという声が聞こえたところからおそらく冒険者志望の人間たち。
Bランクといえば冒険者の中でも一握りの大成功を収めたものと言えるはずだ。彼らが言うこともわかる。
「ねえねえ。もしかして私、選ばれちゃったりして」
「まさか……でもそうね、選ばれてたらちょっと、テンションは上がるわよね」
こういった声もちらほら聞こえていた。
確かに選ばれれば実質試験はクリアだ。期待するのもわかる。
そしてバードラはまさにこちら側だった。
「なるほど……こういった趣向を凝らしてやつとの決闘の場を設けてくれるとは……あの少将、なかなか話がわかるじゃないか」
「バードラさんなら選ばれて当然!」
「むしろここまで普通に試験を受けさせられてたのがおかしいんだぜ!」
選ばれることは決定事項のようだった。
まあ確かに、さっきの流れで考えるとバードラを試験官にして俺が挑戦すればそれでいけるのか……。
「ではこれより名を呼ばれたものから前に出よ! 選ばれたものに試験の注意点や進行方法を伝えた後始める!」
「おいリルト」
ギルン少将の発表が始まろうとしてるところで、アウェンに声をかけられた。
「ん?」
「お前はほぼ間違いなく呼ばれるだろうから先に言っとくが……他のやつはともかく、あいつらには加減しねえでいいからな」
バードラたちを指して言った。
「ここで見せつけとけ。お前の力を少しでも」
俺が選ばれる前提でいることにツッコミをいれようとしたところで、ギルン少将が名前を呼びはじめた。
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