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009 入学試験編①

「嘘だろ……」

「だめだったかー」


 図書館の蔵書の山の前で、俺は肩を落としていた。

 横には絶句するアウェンがいる。

 だめだった。


「七割しか読めなかった」

「いやいやいや?! お前ここに何冊書物があると思ってんだ!?」

「万全を期すなら全部読んでおきたかったんだけど………」

「残ってんのはもう古典の物語くらいだよ! あんなパラパラめくっただけで全部内容覚えていくとかお前……バケモンかよ」

「失礼だなあ」


 ギルドに併設された図書館はかなりの書物があった。

 自分より背の高い本棚にぎっしりと並べられた本の山。何冊読んだか覚えてはいないが、数千は読んだと思う。


「うーん……不安だなぁ……」

「自信を持てや! そんだけやっといて!」


 アウェンに励まされながら訓練校を目指すことになった。

 アウェンはいいやつだなぁ。ほんとに。


 ほどなくして訓練校の入り口が見えてきた。


「にしても、もう結構人がいるな。出遅れたか?」

「別に早い者勝ちじゃ無いよね? 大丈夫じゃない?」


 訓練校に集まるのは比較的歳の近い十代くらいの見た目から、上は40代くらいに見える人まで様々だ。

 そもそも獣人とか亜人もたくさんいて年齢はあんまり関係ないんだけど……。同じ見た目でも数百年生きてるエルフとかいるらしいし。


「貴族の子どもも結構いるな」

「そうだね」


 服を見ればわかる。

 アウェンは緊張してるようだったけど、俺からするとむしろ貴族の服装の方が見慣れてるから安心感すらあった。なんか懐かしいかもしれない。


「全く……なぜ俺がこんな下々の奴らと学ばねばならんのだ……」

「ほんとですよね! バードラさんはもういますぐ軍師だってやれちゃうくらい頭がいいのに!」

「全くだぜ! こんな奴らと一緒にやるなんて時間の無駄! 早くバードラさんの活躍を見たいぜ」


 三人組のいかにも貴族らしい服装の男たちが騒ぐ。

 周囲も距離を取っているようだったが、不運にも一人の小さな女の子が三人の方にふらふらと近づいていた。


「あれ……前が見えてねえのか?」


 アウェンの指摘通り、女の子はまるで前が見えていないようにフラフラした足取りだ。前髪が長すぎて前が隠れているしそのせいか。


「わっ!」

「ああ?!」


 ぶつかってしまった。


「バードラさんの服に汚れが!」

「おい! どうしてくれるんだ!?」

「あ、あの! すみません!」


 頭を下げる女の子。小柄、長い髪、そして何よりあの目の見えなさ。

 ドワーフだろう。


「貴様……お前の汚い身体が俺の服を汚した……許されることだと思うな!」

「なにっ!? あいつ杖を抜いたぞ……って、はええ!? 詠唱破棄の氷魔法!?」


 アウェンは剣士だから驚いてるみたいだけど、魔術の詠唱って不便だしね。

 杖を使ってるということはそんなに得意じゃない術式をコントロールするためか、手加減するためなんだろう。実際女の子には当たらずに地面に突き刺さっただけだし。


「ひっ……すみません」

「ちっ……運のいい奴め」


 目立ってしまったせいかバードラと呼ばれた貴族の子もそこまでで手を引いた。

 そしてその騒ぎをかき消すように、次の騒ぎが巻き起こっていた。


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