世界一やさしい世界征服!
『ダンジョンーアルテミスーに侵入者反応有り。パターン照合、冒険者です。狙っていた獲物はまんまと罠にはまってくれたようですよ、リックさん!』
「ありがとう、ディーナさん。敵戦力はどうだ?」
『暫定的ではありますが、ランクB程度の装備……と、少しばかりの食糧に魔鉱石入りの武具をこしらえています。オーティン村から奪い取られた報告があったものと一致しています』
「ってことは、例の犯罪者パーティーか。村から出てる被害も相当だしな。金品は全部没収。その後は二度と村にちょっかい出せない程度に痛めつける。俺たちのテリトリーを侵害したことを一生後悔させてやろう。まずはそっちで体力削って戦力解析だ。直ちに第1階層に誘導迷路を構築。可能な限り体力を減らしたまま第2階層のメイリスにつないでほしい」
『承知しました。この通信はここからメイリスさんの方へ?』
「あぁ、頼んだ。メイリスはの方じゃ戦力も加入したらしい。戦力解析の結果は向こうにも渡してくれ」
『了解しました』
プツンと通信が一時途切れる。
俺たちのダンジョンは徐々に拡大していった。
とはいえ、なんでもかんでも吸収しているわけではない。
俺たちが拡大させているテリトリーは主に冒険者に見捨てられたような村だった。
冒険者が金で動くことはもちろんだが、そうなった場合見捨てられた村は治安が悪くなりがちだ。
魔物に襲われ、略奪紛いの脱落冒険者が増えるなか、俺たちにとってはそういう奴等が何よりの餌になる。
魔物の魔素は取り放題。脱落冒険者の身ぐるみなら剥いでしまえば良い。そしてそれを村人に還元されれば、俺たちの望む世界一やさしい世界征服の第一歩になる。
これは俺やディーナさん、そして誰よりも人に優しかったメイリスとダンジョンをただひたすら大きくすれば後は何も要求してこないアイシャとの良い利害関係が成立している。
俺たちが勢力を拡大しつつあるなかで今の餌場がここ、「オーティン村」だった。
魔物がいっぱい、略奪者もひっきりなしにやってくるという俺たち好みのこの村をテリトリー化したことで、アイシャの核も上手くこの地に根付いてくれた。
「アイシャ。こいつらはどうだ」
俺の手をぎゅっと握るアイシャは、少し不快そうだった。
「……あの程度の奴等を屠った所で何の経験値にもならないわ。それくらいなら救った見返りで村民から献上された品を受け取る方がまだマシよ。リック。下々からの最大限の感謝を受けきる程にあれは痛めつけなさい」
「なかなか難しいなウチの核の言ってることは」
「それがダンジョン拡張の最短経路なのよ」
第一階層に入ってきた侵入者がディーナさんの仕掛けた迷宮に突き進んでいく。
第二階層に進めば、メイリスと仲間になった魔物たちが待ち構えている。彼女らは冒険者の体力の疲弊と魔法力の使い切り、物資略奪の担当だ。
そして第三階層に行けば闇魔法を用いる俺がいる。
ここで完膚なきまでに打ちのめし、この村には金輪際誰も寄りつかないようにしていく。
弱きを助け、強きをくじく。
それが俺たちが追い求める最強ダンジョン拡張方式だ。
「くっそが……! くっそ、ようやく、ようやく来たんだ! ここのダンジョンの物も全部ぶんどって帰るしかねぇ! ポーションだ! ポーションはやく渡せ!」
「兄貴! もうひとっつもねぇんだ! さっきの第二階層で全部、全部奪われちまった!」
「体力がもう……何だこのダンジョン、まるで生き物みたいに――」
「どうやらお客さんのようだ」
第三階層。
突破したと思い込んでいる関門の先には、闇魔法がいる。
全てを喰らい、全てを無にする闇魔法の力が俺にはある。
「くっそがぁぁぁぁぁぁ!!」
リーダー格と思しき男は脇差しを振りかざして襲いかかってくる。
――が、俺もアイシャも何一つとして驚くことはない。
第一階層と第二階層で自らの役割を果たしきってくれた二人もそうだ。
「ようこそ、ダンジョンーアルテミスーへ」
闇魔法を発動させる。
二度とこの村近辺に手出しが出来ないように、悪党は念入りに叩いておく。
それが俺たちの目指す、「世界一やさしい世界征服」に繋がるのだから。
書きたいことは書ききりました。
完結です!
またそのうち新作出したり楽しんで書いていくので、次作も楽しみにして頂けると幸いです。
ここまで読んで下さってありがとうございました!




