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21.心機一転!

 冒険者ギルドには一通の手紙が届いていた。

 それはディーナの同僚に向けられた手紙で――。


『私、リックさんと一緒に旅に出ます。探さないでください。追伸:仕事を放ってしまってすみません』


 勝手に仕事を放り投げて男の元に走るギルド受付嬢は少なくはない。


 冒険者稼業は関わる全員が荒れくれ者である。

 ディーナもある意味例外ではなかったということだ。

 

 同僚――アスカは、ディーナが心置きなく去って行ったことに羨ましさを感じていた。

 と同時に手紙に書かれていたその人物の名前を見て驚愕する。


「リックさんが……生きている……!?」


 アスカは、冒険者ギルドで豪勢な防具を取りそろえているひとつのパーティーに眼を向けた。


「あいつの死を無駄にしないためにも、俺たちは必ずSランクの高みに登る!」

「リックも最後の最後で役立ちましたね。さすがはAランクの冒険者保険。彼の死のおかげでぼく達全員強力な物資を手に入れられましたしね」

「……っつーか、まだ金そのものは降りてきてないんだろう? その、ローン組んだ感じになってるけどパーティーの財政、ホントに大丈夫か……?」

「週明けにはギルドから届くってよ。その前に肩慣らしがてら最近出来たらしい新ダンジョンを攻略しとこうぜってことだ。もう油断したりはしねぇ。最強の防具と武器で、小さな蟻を踏み潰すのにも全力だ」


 Aランクパーティーアーセナル。

 日頃の任務失敗が祟り、Sランク昇格権を失った彼らは躍起になっていた。

 次に昇格権を得る為には3連続のダンジョン攻略が必要となる。

 アーセナルの声を耳にアスカは訝しむ。


「……伝書鳩ドバト。もしあなたが本当にディーナが遣わした鳩なら、これ渡しておいてね」


 そっと伝書鳩ドバトの足に紙を括り付ける。


「もし彼が生きているとしたらアーセナル(かれら)がやっていることは立派な詐欺じゃない……。そうだとしたらリックさんの保険金なんて絶対に下ろせないわ。それに……リックさんは事故死じゃなくて、彼らが殺しにみせかけてってことも、有り得るし……何にせよ、確認が取れるまでは――」


 リックにはAランクパーティー所属員としての保険が掛けられていた。

 リックが死んだ事によるパーティーへの補填金額はおおよそ3000万ベル。

 しかも書類をよく見てみればリックにだけ一番高いレベルの保険金が掛けられている。


 前衛であることから死の危険性が最も高いために掛けられた保険金であれば納得することも出来たが、彼らを見ているととてもそうには思えない。

 煌びやかで豪勢で、剛毅な防具に身を包んだ彼らはパーティーメンバーを失って数日の表情などではない。


「なんだかきな臭い事になりそうじゃないですか、これ……?」


 意気揚々と再出発をかけるアーセナルを尻目に、アスカは鳥肌が立つのを感じていたのだった。

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