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そんなことを思っていると、お嬢さんが白衣を着た医者のような人物とイケメンを連れて戻ってきた。
「目が覚めたのか、シャルロット!」
目を真っ赤に腫らしながらイケメンが私に向かって叫ぶ。
ふぁっ!?
シャルロットって誰のことだよ!?
「シャルロットお嬢様、旦那様とお医者様をお連れしましたよ」
お嬢さんが微笑みながら、私を優しく起こし、肩に何かを羽織らせてくれた。
「えっと…」
この場合は、どう答えたらいいのだろう。
私は日本人です、シャルロットじゃありませんって言うべきか?
「ふむ、意識は戻ったようですが、まだお顔が赤いままですし、少し混乱しているようですな。一晩、様子を見てみましょう」
「先生、ありがとうございます!あぁ、シャルロット良かった…」
イケメンが目に涙を浮かべながら、私の頭を優しく撫でる。
私はイケメンとは縁がない人生を送ってきたので、対応に困るんだが…
というか、このイケメンは一体、誰なんだ?
さっき、お嬢さんが『旦那様』と言っていたが、私は結婚していないし、名前も違う。
あまりにも怪訝そうな顔をしていたのだろうか、イケメンがふっと笑った。
「どうしたんだい、シャルロット?いつものように『お父様』と呼んでくれないのかい?」
お父様…!?
どういうことだ、こんなイケメンを父親に持った記憶はないけど…『シャルロット』の名前には聞き覚えが…ある、ような…
そう思った瞬間、バラバラに散らばったピースが一気に繋がったように頭の中に映像が濁流のように押し寄せてきた。
「あ、あぁぁっ!!!」
痛いっ!
頭が割れるように痛い!
頭の中に見慣れない景色が現れては消えていく。
こわい、なにこれ…しらない、そんなのしらない…いや、知らないはずがない。
これは私の記憶だ!
薄れゆく意識の中、泣き叫ぶ声が聞こえてくる。
それは夢の中の彼女の叫び声だったのか、周囲の叫び声だったのか、それは分からなかった。