3話
「はぁ、はぁ……なんなんだあれは、本当に……はぁ、はぁ、ふぅ」
「ほ、穂乃儀さん……大丈夫ですか?」
どうにかあの酸の塊の化け物から逃げ切った俺たち、他の人間がどこに逃げたのかよく分からない。
ちらほらとまだ周りに人は見えるが、地震も収まっているようだし避難をしていないだけか?
しかし、あいつはこっちへ向かっていた……ということはいずれこっちへ来るはずだ。
「はぁ、大丈夫です。笠木課長、歩けますか?」
「ご、ごめんなさい。まだ少し……」
青い顔をしてガタガタと体を震わせる笠木課長。
「はぁ……」
「っ! ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、置いていかないで」
なんとなく溜め息をついたら課長はビクリと震えて謝り始める。
「いや、そんなつもりはありませんよ……それよりも逃げるにしても戦うにしても抵抗する方法がないと」
「そ、その! ……苛性ソーダか消石灰などがあれば……もしかしたらあれを退治できるかもしれません。おそらく消石灰であればホームセンターにあると思うので、そちらに行くのはどうでしょうか?」
「なるほど、笠木課長を信じます。とりあえずホームセンターに行ってみましょうか」
「は、はい!」
「あ、でもその前に、どこか服を買える場所に行きましょうか……」
「……は、はい、お願いします」
とりあえず、あいつは移動速度はそうでもないみたいでまだ追いつかれてないがそのうち追いつくだろう。
避難していない人もいるが、酸の化け物がいるんだって言ったところでなに言ってんだと思われるのが落ちだ。
今はあいつへの対抗策を手に入れる必要がある。
「お客さん力持ちだね。そのままかついで持ってかえるのかい?」
一度衣料店によって服を整えた俺たちはホームセンターで消石灰を購入した。
「えぇ、大丈夫です。体力には自信があるので」
実際のところはレベルが上がったためだろう。
両肩に20kgの袋を担いでもまだ余裕がある。
いつの間にかこんな力がついてたのだ。
「穂乃儀さん。すごいです!」
「あ、はい、ありがとうございます」
課長は尊敬してますって感じでこちらを見てくる。
なんか態度違いません?
「はっはは、可愛い彼女さんがいて羨ましいね!」
「彼女だなんて、そんな……」
いや、本当にあなたあの冷徹、冷酷、人の心が分からない、俺のことを見下した目で見てた課長ですか?
なんでそんなにテレテレしてるんですか?
「あの、とりあえず行きましょうか」
「はい」
「また来てくれよー」
とりあえず俺たちはホームセンターから出る。
「あの、課長。これからどうします? 俺はあれにこれが通じるか試してこようと思います」
「ついて行ったら、ダメですか?」
「危ないですよ?」
「……ついていきたいです。一緒がいいです。お願いします置いていかないでください」
ぎゅうっと服の裾をつかまれる。
正直安全な場所にいたほうがいいと思うが……安全な場所なんて分からないか。
それなら少なくとも戦える俺といたほうが安全かもしれない。
「分かりました。危なくなったら逃げてください。逃げれるなら一緒に逃げましょう」
「……っ! はい!」
うぉ……美人だとは思っていたが嬉しそうに笑う課長はなんというか、可愛いぞ?
「そ、それじゃあ行きましょうか」
「はい!」
そして、俺たちはあの酸の化け物……スライムと名付けたそれを倒すために一度戦った方へと向かうのだった。