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1話

 家に帰ったら洞窟になってた……。


「疲れてんのかなぁ……」


 そういって一度閉めてもう一度開けてみる。

 そこに広がるのは……変わらずむき出しの岩で出来た洞窟だ。


「はぁ、なんだ、どうしてこうなった……俺の家どうなったんだ?」


 こんなファンタジーみたいなことありえるのか?

 とりあえず家の中に入る。

 1Kであるのでただひとつの部屋に向かって歩く。


「なんだあれ……」


 部屋の中心に変な球体がある。

 なんだかだんだんとイラついてきた……なんなんだよいったい! 上司は年下の女だし! なんか見下されてるし! 家はこんなのになるし!


「死ねおらぁああ!!」


 むかついた俺は思いっきり変な球体を殴る。

 明らかな八つ当たりだし、硬そうだなぁまずったなぁ、指の骨折れたらどうしようなんて殴る寸前に思ったがそれでも怒りを乗せてぶん殴ってやった。


「おぉ? 痛くない」


 まるで紙風船のように球体はへしゃげ、光の粒子をばら撒きながら消えていく。

 そして、家は何事もなかったように元に……戻らなかった。


 部屋はある、しかし物がない……家具や本やテレビやパソコン……何もない。

 あるのはまるで新品に戻ったかのような部屋だけだ。


「え? ……え? 俺明日からどうやって生活していけばいいの?」

≪レベルアップしました≫


 レベルアップ? そんなのどうでもいいよ!

 それより俺はどうやって生活すればいいんだよ!!!


「まじでどうしたらいいんだよ……」


 情けない声が漏れる。

 警察に電話するか? なんて説明すればいいんだ? 空き巣に入られたとでもいえばいいのだろうか?

 どれだけ手際のいい空き巣なんだよ。

 家のゴミすら全て奪ってきれいにしてそのまま逃げたと? でも、そう説明するしかないよな……。

 はぁ、どうしてこんなことに……。




 携帯で警察に電話をかけとりあえず事情を説明した。

 何を言ってるんだこいつという反応だったが、とりあえず現地まで来てもらいさらに説明した。

 一応異常事態ではあると認められて捜査はしてくれるらしい。


 部屋の管理会社にも電話して一応保険の適応ということで近場のホテルに部屋を取る事が出来た。


「はぁ、なんか疲れた。明日は仕事を休もう」


 俺はそう決意し、そしてふと気になったレベルアップというどこからともなく聞こえてきた声のことを思い出す。


「ステータス……なん、て……? いつからこの世界はゲームな世界になったんだ?」


 なんとなく呟いた言葉、そして目の前に現れる文字。


≪Lv.5 スキル:回復魔法Lv.3≫


 シンプルにそれだけだ。

 HP、MPがどうとかそういったものはない手抜きにも程があるステータスといっていいのかわからないそれ。


「俺は頭がおかしくなったのか……? いや、おかしくなったのは世界のほうだろ」


 俺はもう疲れたよ……。


「なんだ回復魔法って……『ヒール』とでも唱えればこの疲労を回復してくれる……って、言うの、か……」


 もはや唖然と言うしかない、キラキラと俺の周りが光ったかと思えば体のだるさが抜けていきまるで快眠できた寝起きの朝のように体が軽くなったのだ。


「寝れねェ……」


 とりあえず、回復魔法で眠気のなくなった俺は携帯を取り出して最近出来なかったゲームを始める。

 回復魔法が疲労まで取るなら寝る必要がなくなるのか? 人生の自由時間が増えるのはいい事だ、この力はどれくらいの傷まで回復できるのか病気などに対しても有効なのか?

 そんなことをつらつらと考えながらゲームをする。


 意味は分からない、意味が分からないがこの力があれば会社を辞めて自由に生きていくことも可能なのでは?

 そんな思考がかま首をもたげる。

 不思議な力を手に入れたんだ、俺は特別になれたんだ。

 男ならワクワクしても仕方ないだろう。


 この力で何ができるのか、何をするのか、あわよくば難病を治して美女に感謝なんて……。

 そこまで考えてふと考える。

 自衛能力がなければこんな能力見せびらかせば人体実験まっしぐらなのでは? と。


「はぁ、とりあえずは自分のために使うか」


 この感じなら明日も普通に出社できそうだな。

 明日は金曜日だし、土日でそろえられるだけそろえよう……。

 あぁ、明日からもがんばるか。


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