表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒騎士、異世界に行く  作者: 矢代大介
プロローグ
1/17

第0話 プロローグ

 一話4000文字前後で、ゆっくりマイペースで更新していく予定です。

 粗だらけの完全見切り発車ですが、どうかよろしくお願いいたします。



 本気になる。それがどういうことかは、言葉として知っている。

 けれどもそれを、実感したことはなかった。



 勉強は、好きじゃなかった。

 友人との遊びは、どこか生暖かいモノだった。

 仕事は、生活のために必要な作業だった。

 恋なんて、一度もしたことが無かった。


 だから俺には、本気になれる何かと言うものは、存在しなかった。

 ――あの日までは。




 ただただ、その世界に憧れた。

 ただただ、その世界に見入った。

 広大で、自由で、愉快なそれに魅せられた俺は、その時初めて「本気になる」と言うことを知れたのだ。


 上を目指した。

 欲しいものを求めた。

 仲間と一緒に、バカ騒ぎした。

 諍いに心の底から憤った。

 

 そうして気づけば、俺の生活はその世界と密接に結びつくようになっていた。





 ひたむきに強さを求めて。

 時には自分の理想を突き詰めて。

 たくさんの仲間と出会い、別れて。

 目的を果たせなかったことに嘆いて。

 長い、長い時を、その世界で過ごして。


 ずっとずっと、この世界が続いていく。それを俺は、信じて疑っていなかった。





 

 ――――だけど結局、その世界はまやかしで。

 無機質な機械と、打ちこまれたプログラムで構成された幻で。


 それは所詮、0と1がひしめき合う電子の中に生じた、小さな幻想でしかなかった。





***





「…………はぁー……」


 深い、深いため息をつきながら、俺は一人、自室で静かにパソコンに向かい合う。画面には現在起動しているゲームの画面が表示されており、今の俺はそのゲームをプレイしている最中だった。

 だけど、それももうじき終わる。ちらりと時計を見れば、その時間になるまでそう長い猶予は存在しなかった。


「……はぁぁー…………」


 もう一度、深い深いため息。けれどそれで何かが変わることはなく、今の俺にはただただ現実を受け入れる以外の道はなかった。

 とりあえず、その前にやることがある。ずっしりと沈んだ心持ちのまま、俺は再びパソコンに向かい合い、握っていたゲームパッド(コントローラ)を握り直した。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ