0.勇者召喚
アルカトラ歴2053年、北の最果てにあるミドラの大空洞に張り巡らされていた結界が消失した。
それにより500年前に封印された魔王が復活する。
復活直後は魔力が枯渇し碌に動けない魔王だが、それも時間の問題だ。
時が経ち、魔王の力が500年前同様に戻れば、大地は魔物で溢れ、大気中を瘴気が覆い、世界は再び破滅への道を辿るだろう。
各国は討伐隊を結成し魔王を討とうとした。しかし魔王配下の魔物たちの群れに大敗を喫する。
何度も隊を編成し北の最果てへと送り出したが、屈強な戦士も才気溢れる魔術師も魔王を倒すことは叶わず、故郷から遠く離れた魔物の地で骨となった。
500年前封印を施した魔術師はもちろんのこと、その一族の血も途絶え、彼に匹敵する魔術を扱える者はいない。
「このまま魔王の力が戻り、滅びの運命に従うしかないのか」
そう人々が希望を失いかけた時、世界でも最も小さく、最も歴史の古い国、ベルシア王国の王城から一冊の本が見つかる。
それは魔王を封印するよりはるか昔、やはり世界の危機が訪れた時、異世界から勇者を召喚したことを記す記録書だった。
世界はこの勇者召喚に縋るしかなかった。
ベルシアの王女を中心に333人の魔術師がその全魔力を用い、異世界から勇者を召喚した。