空気
登場人物
神宮寺 玲 高校3年 メジャーデビューを目指す青年。ギター担当。作曲を担当。
愛車はカワサキ叔父から貰い受けたGPZ900R。
御手洗 侑吾 高校3年 ベース。陽気。愛車はヤマハTW200。
マイコ 高校3年 ボーカル。漫画をこよなく愛すオタク。
愛車はジャイアント アルミロード コンテンド。
古馬ちゃん 高校3年 ドラム。汗かき。
徒歩、電車。
里崎 美咲 高校3年 神明寺と同じ病院に通院している女の子。
「瀧本さん、ダメっすよ。高校生騙したら。」
「人聞きの悪いこと言うなよ。こんな善良な市民捕まえて。この子ら信じたらどうすんねん。」
「いや、悪そうな顔して名刺渡してるなと思って。」
「もうええて、今日も調子良さそうやったな。これからも頼むで。今日のところは帰るわ。ほなまた。君らも、またな。」
瀧本さんは、そう言うと表に止めてあったJAZZに跨った。
その巨漢で大きく沈んだJAZZは、少し辛そうにしながらタクシーで混雑した山手幹線を
走っていった。
「あの人、あんな感じやけど色々親身になってくれるから何でも相談したらいいよ。」
内藤はそう言うと控室へ戻って行った。
ライブを終え、自分たちの実力不足を痛感させられた。
「全然あかんかったな」
椅子の上で体育座りをし膝を抱きかかえたマイコが静かに言った。
「そうやな。ステージアクションとかも全然やったな。」
ユーゴが続けた。
「は?俺のこと言ってんの?お前も全然あかんかったで。」
マイコが珍しく声を荒げた。
「俺は、アドバイスしてるねん。歌いながら、もっと動いたほうがステージ映えするんちゃうかって話や。」
「何も考えてないお前にアドバイスなんかしてもらいたくないわ。俺は俺で考えがあるんや。人と比較してもあかん。俺らなりの良さをもっと出していかなあかんのちゃうかってことや」
「は?じゃあ、もういいわ。」
二人は、珍しく熱くなっていた。しばらくの間、誰も言葉を発しなかった。
「ごめん、俺が悪いのは分かってる。正直言って、皆のレベルに追いついてないもんな。」
コバちゃんが重い口を開いた。
なんとなく、そこで話しは終わってしまった。