ライブ
登場人物
神宮寺 玲 高校3年 メジャーデビューを目指す青年。ギター担当。作曲を担当。
愛車はカワサキ叔父から貰い受けたGPZ900R。
御手洗 侑吾 高校3年 ベース。陽気。愛車はヤマハTW200。
マイコ 高校3年 ボーカル。漫画をこよなく愛すオタク。
愛車はジャイアント アルミロード コンテンド。
古馬ちゃん 高校3年 ドラム。汗かき。
徒歩、電車。
ライブ当日、会場に到着するとステージではアマルガムがリハーサルを行っていた。
ドラムのサウンドチェックも終わり、レスポールよりもボディが一回り小さなゼマティスを弾くギタリストがタイトにリフを刻んでいるところだった。見事な彫刻が施されたメタルフロントが照明によって、より美しさを増していた。僕たちは、そのまま引き込まれるようにしてアマルガムのリハーサルを見た。
「神宮寺はん。あのベースのグルーヴ感はんぱやないで。」
とユーゴは、大きな目を皿のようにして聞いていた。
「いや、ベースだけとちゃう。皆激ウマやわ。ま、俺らも他人が聞いたらそう聞こえるはずやけど」
ユーゴは自分に言い聞かせるように続けた。
アマルガムのリハーサルに続いてピグマリオン、そして僕たちと順に終えた。
楽屋に扉を開けると、アマルガムとピグマリオンのメンバーたちが談笑していた。
「自分ら、若いなー」
屈託のない笑顔で話しかけてきたのは、アマルガムのドラマー内藤恭介だ。ステージでパワフルなドラミングをしていた姿とは違い、小柄で華奢な身体だ。ピンク色のサングラスの下から愛嬌のある大きな眼で微笑んでいた。
「あ、はい。高3です。」
ユーゴが少し緊張した様子で返事をした。
「そんなとこ立っとらんで、まあ、座りや。」
「ところで、あの入口に置いてあるNinnjaって?」
「はい、俺のバイクです。」
「えらい渋いのんに乗ってるな。あれって中古でもあんまり見んくない?」
「叔父から貰ったんで」
「そういうことか。叔父さんと趣味合うわ。」
「叔父も喜ぶと思います。」
「内藤さんのハーレーもいいですね」
「そうやろ。めちゃくちゃ気に入ってるねん。全額ローンやけどな」
僕たちは、少ししたら近くのファミレスへと移動した。
まだ照明の点いていない暗いステージへの扉を開けてみるとライブハウスは奥まで人で溢れ返っていた。オープニングのSEが静かに流れ、ステージ上へ足を運ぶ。僕の手が上がるのを見て徐々にボリュームが下げられる。コバちゃんのカウントを合図としてライブがスタートした。
ほとんどの観客は、僕達を知らなかったはずだがラストの曲が終わっても興奮は冷め已まなかった。
演奏を終え物販席に行くと、革のジャケットを着てサングラスをかけたヤクザ風の男が立っていた。
「自分ら、ええライブやったな。イベントするとき声を掛けさせてもらうわ。音源とかないの?あ、ごめん。俺、こういうもんやねん」
”マイノリティレコーズ 代表 瀧本 龍二”
「みんなからはダブルドラゴンって呼ばれてる。名前に龍が二つあるやろ。」
アマルガムが所属するレーベルの「マイノリティレコーズ」の瀧本社長だった。