赤いマフラー
登場人物
神宮寺 玲 高校3年 メジャーデビューを目指す青年。ギター担当。作曲を担当。
愛車はカワサキ叔父から貰い受けたZXR400。
御手洗 侑吾 高校3年 ベース。陽気。愛車はヤマハTW200。
マイコ 高校3年 ボーカル。漫画をこよなく愛すオタク。
愛車はジャイアント アルミロード コンテンド。
コバちゃん 高校3年 ドラム。汗かき。
徒歩、電車。
「神宮寺さん、検査結果と症状から特発性血小板減少性紫斑病ということになるでしょうね。」
内藤先生は、少し言いにくそうにボサボサ頭を掻きながらそう告げた。
「特発性血小板減少性紫斑病って?」
「ええ。まぁ、簡単に言いますと血小板が少なくなるご病気でしてね。
今はいい薬もありますから。血小板の数値がこれ以上下がるようだと
その薬を検討しないといけないかもしれません。
幸い出血傾向もありませんので、現時点だとステロイド剤で様子を見ながら
調整していくということになりますね。」
そして、ゆっくりとした口調で続けた。
「珍しい病気ではあるんですけれど、前も同じ病気の患者さんを受け持ったことがありましてね。
ただ、残念ながら。まぁ、その方はご高齢ということと他のご病気を持たれていたこともあって、お亡くなりになったんですけど。」
内藤先生は、長い睫毛を持った愛くるしい目を少し細め悲しげな苦笑いをして見せた。
「そうなんですか、それはお気の毒でしたね。」
「ええ、そうなんです。」
死というものが存外近くにあるものだと僕は笑ってしまった。
「とは言う物の神明寺さんはお若いですしね。大丈夫だとは思うんですけど、血小板の数値が2万しかないので、鼻血が出たり、出血症状が出るようだったら直ぐに病院に来てくださいね。
あと、頭はぶつけないように。頭をぶつけて内出血をしてしまうと血が止まりにくいので大変なことになりますから。
高校では何かクラブは何かされていますか?
ラグビーやサッカーとか、衝撃のあるようなスポーツは良くないですね。ウォーキングやジョギング程度だと大丈夫ですから、適度に運動はしてくださいね。」
一気に必要な説明を終えた内藤先生は、処方箋の準備に取り掛かっていた。
待合室に戻ると見るからに具合の悪そうな人たちで溢れかえっていた。窓側の長いすに、黒崎さんが座っていた。歳は、僕と同じくらいだろうか。
以前、看護師さんがそう呼んでいたのを聞いただけで彼女のことはそれ以上何も知らない。
体調が良くないときは、母親に付き添われ車椅子を押されているときもある。
彼女は、待合室にいる時間は英語の勉強をしている。
ここの待合室にいるということは、彼女も何らかの難しい病気なのだろうと容易に推測できた。
僕は、赤いマフラーに埋もれた彼女の目の前を通り過ぎ受付へと歩を進めた。