ユニーク~SevenS.over~ 塔へと至る。1つの入口、無数の挑戦
平和な世界に突如現れた神々の遺産。
人々はこの塔に幾度となく挑み散っていく、そんな塔に7人の才能と力に恵まれた勇者達が挑むスペクタクルダンジョン巨編
どんな相手も魔法でプッコロ系紫煙の魔術師
花のように可憐で儚いでも綺麗な花には刺がある?刻印の幼魔使い
指一本で象も楽々但し象に限る象牙の闘王
腐ってるのは頭だけ?高潔の死術師
その剣士と合間見えれば剣ごと相手を打ち砕く砕剣の騎士
次元の壁も何のその二次元にだって入り浸り無元の冒険者
そして、異世界より召喚された無気力お気楽主人公
彼等が塔で見るものは栄光かそれとも絶望か……
奇跡の瞬間をその目に焼き付けろ!!
「ギボヂワリィ……」
「なんだあまりの美味さに食い過ぎたか?」
機嫌よく笑うクレイに殺意が芽生え、殴ってやろうかと手をグーにして振り向き様に鳩尾目掛けて強烈なのをお見舞いしてやるつもりで殴りかかる。
しかし、俺の拳は軽快なステップで交わされ虚しく空を切り、振り向いた瞬間の瞬間のうっ……
「ぅっ……お゛え゛え゛え゛ぇぇぇ~~~」
あまりの気持ち悪さに先程食べたツァゴテリなるグロテスクの塊が我先にと俺の口からまるで大怪獣の吐く放射能の様に次々に虹を描きながら、諸悪の根元たるクレイに浴びせられた。
「ウォッ!?何しやがるんだ汚ねぇ!!」
「ふっ……見たか俺の秘めたる闇の力を……」
どや顔でふんぞり返り自身の晒した醜態を華麗に隠蔽して見せる。彼の天才的な名探偵の推理力を持ってしても俺の華麗なるフェイクを見破ることは難しく、ましてやクレイ相手では迷宮入り必須に違いな……
「お前なぁいきなりゲロ吐くなよ汚ねぇだろ!?つか服汚れたしどうすんだよコレ」
「なるほど……ただの下手物好きのヴァッカでは無さそうだな……コレは認識を改めないといかんな」
一人で納得しながら頷く、と背後からゲロ臭いイケメンが顔を覗かせる。
「おいおい心の声がトラブル起こして全部聞こえまくってんゾォ、誰が下手物好きだ誰が!!たく、ちょっと着替えてくっからそこで待ってろ!良いな!?動くなよ!!」
ヴァッカなのは認めるのかと一人感心する俺に強く念を押しながらクレイが人混みに消えて行く。
「動くなねぇ……」
しかし、そう言われると動たくなるのが人間の性と言うものだろう、俺は早速、この街を色々と散策してみることにした。
「ちょいとそこの方」
その場を去ろうとする俺を1人のヒョロイ人の良さそうなじーさんが呼び止める。
「何だ?俺はこう見えても面白いもの探しで忙しいんだが?」
「おお、それはそれは……」
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あのじーさん、次会ったらただじゃおかねえ……
「まったく、どうやら俺は神から罪作りな人生を与えてもらったらしい……」
内心とは裏腹に目一杯の虚勢を張って誤魔化す。
「コイツなに言ってんだ?頭大丈夫か?」
俺の周りを囲む柄の悪いオツムの弱そうな集団が不穏そうに俺を眺める。
少し、ほんの少し面白そうな商品を扱ってる隠れ家的店があるとじーさんから話を聞き、案内してやるとの甘い誘いにのせられ、着いていったは良いが、コレがあまり良くなかったようで、「大丈夫だから、怖くないから」と言葉匠に誘われた先は目的の商品を扱ってる隠れ家的お店、等と言う事はなく。
使い古されたチンピラどもの常套手段だったらしく、俺は再び人気の無い路地裏にて数時間前の状況よろしく、チンピラどもに囲まれているのだが……
「別の奴等がした事とは言え、流石に何度も殴られてやるのは痛いしムカつく……」
どうせ、ハッタリをかましたり凄んで見せたりしても、この集団も先程と同じくヴァッカの集まりなのだから、結果は目に見えている。
「ならば」
俺は大きく息を吸うとあらんかぎりの声を張り上げた。
「誰かあああぁぁぁぁーーーーー!!!!!!」
「コイツ!?口塞げ口!!」
すかさずチンピラ二人が俺目掛けて迫ってくる。
流石に考えが甘かったと一瞬、ホンの一瞬後悔しかけたが俺とチンピラ達の間に一陣の風が吹いた。
「おっと、お嬢様自ら助けを呼ばれたんだ。お前達の相手は騎士であるこのレザミラがお相手しよう」
俺の読みはどうやら正しかったようだもしかしたら、クレイの様な輩が陰ながら俺の様子を見守ってるのではないだろうかと言う読み、そして、その読み通り颯爽と表れた銀に輝く鎧に身を包んだ騎士がチンピラ二人を殴り飛ばし俺を見る。
「遅れ馳せながら騎士レザミラ参上致しました。お怪我は、御座いませんかお嬢様?」
サラツヤの綺麗なブロンドが目に眩しい、クレイと言いこのサラツヤと言い、この俺に似ているお嬢様と呼ばれているヤツはどれだけイケメンを侍らせているのか……
「えぇい!!無視してんじゃねえぞガキが!!」
「ちょっと、後ろ来てますよ、ウ、シ、ロ!!」
迫り来るチンピラにあせる俺をよそにサラツヤは俺の耳元に顔を近づけ小さく「少しだけお待ちください……」と囁くと、武器を振りかざして襲い掛かるチンピラどもに向き直った。
「武器も無しでこの人数に勝てるかよ!?」
剣を持ったチンピラの一人がサラツヤに斬りかかった。が斬りかかった筈のチンピラの体があとに続いて駆けてきたチンピラども目掛けてまるでボーリングのように突っ込み、もろとも後方へ吹き飛ぶ。
「生憎と武器は持ち合わせてもすぐに壊してしまうもので……」
先程までチンピラが振りかざしていた筈の剣を右手に構えサラツヤが続ける。
「少しお借りしますよ?もっとも原型を留めて返却出来るかの保証はしかねますが……」
その後は本当に一瞬だった。
ゴルフのスイングのようにサラツヤが剣を降ったかと思うと剣の刃がキラキラと光を放ちながら一瞬で姿を消し、代わりに粉々に砕け散った無数の刃の欠片がチンピラどもや壁、地面にまでめり込んでいた。
「さぁ、皆が待っております。行きましょうお嬢様」
サラツヤに手を取られ路地裏からの去り際、チンピラの一人が「砕剣の騎士……」と小さく呟いたのが耳に張り付いた。
「ところで、サラツヤよ名前を聞いておこう」
路地から抜け出し人通りの多い場所に戻った俺は先程は咄嗟の事で聴き逃したサラツヤの名を聞く。
「面白い冗談ですねお嬢様」
いや、冗談ではないのだが眩しいサラツヤヘアにも負けず劣らない眩しい笑顔を見ていると言葉に詰まってしまう。
「レザミラです、いつも通りレザーと御呼びください」
「レザーかそれは覚えやすいな、よしレザーお腹空いたからご飯を食べよう」
「それはいけませんよお嬢様、皆を待たせておりますし、なにより先程食べたばかりではありませんか」
おっと、このレザーなるサラツヤはどうやら厳しい性格のようだ。と言うかクレイとの下りを知っている辺り、コイツは最初のチンピラの時も見て見ぬふりをしていたことになる。
レザーは塔へと向かっている様子だったが塔まではまだまだ掛かりそうだ。
「なあ、レザー幾つか質問があるんだが……」
「何でしょうか?」
「お前は俺がクレイと食事に行くのを知っていたんだよな?」
「ええ、お嬢様の勇気に感服致しておりました。」
「チンピラに絡まれてるところも見てたんだよな?」
「優雅に飛ばれるお姿、拝見させて頂きました。」
「ほぅ……」
つまり、この男は俺が暴漢に殴り飛ばされようが下手物好きのイケメンヴァッカに未確認生命体を食わされようが見て見ぬふりをしていたと……
先程、助けてくれたのだって、俺が助けを求めたから出てきただけの話で心配して出てきた訳でも何でもないようだ。
「はぁ、萎えるなコレは……」
身を案じて飛び出してきただけクレイの方がまだマシだ。
ん、そういえばクレイどうしたっけ?まぁ、強いしチンピラに絡まれても返り討ちにするだろうからほっておいても大丈夫だろう。
それよりも同行者であるレザーの方が今は問題だ。
挙動やら人を人とも思わない態度にはムカつくが、紳士的な態度をとってはいるが、こんな物騒な男とまともにやりあっても勝てる見込みもクレイの様に手加減してくれる気配も無さそうだ。
「しょうがない、諦めるか……」
「もう質問は宜しいのですかお嬢様?」
爽やかな笑顔を撒き散らしながらレザーが言う。まあ、これ以上質問するような事も無いし、質問したところで、あのステキ笑顔はさらりとえげつないことを言って返してきそうで面倒だ。
結局、質問や嫌がらせをしてやろうと考えるだけ時間の無駄の様なので俺はレザーに黙って着いていくことにしたのだった。
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「えっとレザーさん俺達は塔に向かって歩いてた筈ですよね?」
「ええ、塔の入口付近で他の方達とも合流する予定ですから」
「でも、少し前から塔とは逆方向に進んでる気がするんだが……」
「ああ、それでしたらご安心をもう到着しましたよ」
「到着って……」
俺達は塔に背を向けた状態で大きな像の前に立っていた。
まだ町中だと言うのに周りを歩く人影はどこにも見当たらず建物に囲まれるようにして、その像はヒッソリと立ち尽くしていた。
像は男をかたどったものらしく剣士なのか戦士なのかソレは剣を地面に突き立て起立した奥に何やらドアのようなものが見える。
「ここは塔内部にある転送陣の場所まで一気に運んでくれる転送陣の管理場所で今まで踏破された最高階数1200階の内なんと200階から塔を上れる優れものです」
「転送陣……」
ほうほう、するとこのワケわからんイカれた巨人像迄来たのは塔の攻略を少しでも楽に進める為の行為だったと……
「えっ!?じゃあ他の方達ってのは?入口付近で待たせてるんでしょ?」
「ええ、ですのでコレを使います」
レザーは袋から小さな滴の形をした金色のペンダントを取り出し、そっと息を吹き掛ける。するとペンダントが淡い光を帯びキラキラと光だした。
「うぉ、光って……」
驚いて声を出す俺の唇にレザーが人差し指をそっとあて口を塞ぐ。
「彼の者達にお嬢様と共に200階より先に進んで待っておりますと伝えて下さい」
言い終わるとレザーがペンダントを空高く掲げた。
するとペンダントが帯びていた光が空へと昇っていき、そのまま見えなくなっていった。
「さぁ、コレで各々にメッセージを伝えましたので我々は先に進んで待っていましょう」
爽やかスマイルを煌めかせながらレザーが俺の手を取りドアに向かって駆け出していく。
「よぉ、楽しそうにお手て繋いでピクニック気分で塔の攻略か?」
ドアがある手前、像の剣の影からヴァッカみたいな紫色の長髪が姿を表す。
「おやおや、クレイじゃないですかどうしたんですか?不機嫌そうな顔をして」
「どうしたもこうしたもねえだろうが?」
何故か睨まれている気がするがきっと気のせいだろう自意識過剰だな俺も……
フッと自虐の笑みを浮かべる俺の頭がワシッと何かに掴まれ、すごい力で首をクレイの方に向けさせられる。
「お前だよお前!!」
「さてなんのことかわからないなあ」
全力で鬼の形相で睨んでくるクレイから目を背けながら思ってもない弁解を図り場を取り繕う。
「テメェ待ってろってあれほど言っただろうが!!戻ってみれば何処にも居ねえし皮被り野郎も着いてたからもしやと思って先回りしてみれば案の定、テメェ達だけで先々進もうとしやがって!!」
「あんなのは単なる振りだろ!?寧ろ動き回ってくれと俺には聴こえたぞ!!」
俺とクレイが睨み会うなかレザーがクレイの腕をつかんで俺の頭からクレイの手を遠ざける。
「まあまあ、良いじゃないですかこうして合流できたわけですしクレイさんも一緒に仲良く参りましょう」
「けっ覚えてやがれ!!」
雑魚キャラの捨て台詞が何てに会うんだろう。そう思いながら俺達はこの塔に挑む事になったのだ。
この先、些かの不安はあるもののまあイケメンに囲まれての旅は楽しめそうだ。
どんなこんなんが待ち受けているのかこの旅の結末はそんなことをあれこれ想像しながら俺達はドアを開いた。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
本作は作者のジョーク作品となっております。
作品の続きは今後予定しておりませんので期待はされてないと思いますが一応念のため悪しからず。
タイトルのユニークSevenS.overの頭文字でusoつまり嘘に成ります。