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噛みキズナ  作者: 奈瀬朋樹
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47話 2人を丸ごと見守る役目

〝大切な話をするので、人がいなくなった放課後の教室で待ってます〟


誰もいない教室で女の子と2人っきりになるシチュエーションは〝彼女いない歴=年齢〟という身分なので意味もなく期待してしまう。だから100%の有り得ないを99%に引き下げて、1%の希望から妄想を膨らませるくらいは許してほしい。


まぁ、花祭さんが僕の質問に答えるだけですけどね。


花祭さんとメアド交換をしてからは適度に連絡を取り合っていて、僕がクラス内で馴染む努力をしていた時も、周りの反応をメールで教えてくれて本当に助かった。それからも着替え中に傷跡を見せた事や部活に入部できた事を教えた時にも〝おめでとう〟の返事がもらえて、嬉しかった。


頑張った内容を褒められるのは、今までの努力が認めてもらえた感じがして、気持ちが昂ってしまう。僕の方がありがとうって言いたいくらいだ。だからこそ聞いてみたのだ。


〝どうして僕に、ここまでしてくるの?〟


そしてこの返事がきた訳だけど、これは直接伝えたいって意味だ。理由が気になるけど、考えても時間の無駄だからさっさと寝て明日に備えるのが賢明だろう。なので念入りにお風呂で体を綺麗にして、鼻毛チェックと眉の手入れをしたのは偶々だ。身嗜みに気を配るのは常識なので何もおかしくはない。それに寝不足状態で話すのも相手に失礼だから、しっかりと睡眠を取って体力を満タンにしておこう。


……………やっぱり僕も、中1で思春期らしい。


「あれっ、晃太もう寝るの? なら明日の朝食は任せたよ~」

「母さん。頼まれなくても最近はお弁当作りも僕がする流れになったよね?」


興味本位で料理に挑戦してみたらこの有様だ。しかもタツ姉に「僕の手作りお弁当いる?」とノリで言ったら「言い値で買うよ!」とノータイム返答で詰め寄られ、更に母さんが「じゃあ特訓だね~」と言い出してお弁当作りを僕に託すという丸投げ判決を下されてしまったのである。


タツ姉には暫く待ってと伝えてから手探りの料理特訓が始まり、そんな家族事情を花祭さんに話したら「料理は得意だから任せて!」と断言されて、教わる様になったのだ。因みに内容は、学校でレシピを教わって、完成したら写メと感想を送信するという流れで、今は卵焼き・肉じゃがという簡単なメニューから始めている。それに今度「ハナハル特製レシピを教えるから一緒に料理しよう」って誘いもあるし、このまま花祭さんから手取り足取り教わり続ければ、タツ姉に料理を振る舞える日も遠くないだろう。

タツ姉、喜んでくれるかな?


「息子の成長を後押しして、見守るのが親の仕事だよ~」

「いやいや、最近は僕の教育までタツ姉に任せっきりじゃん。母さんはそれでいいの?」


最近の母さんは常に一歩引いた位置にいるというか、本当に見守るだけなのだ。僕の面倒も殆どタツ姉が見てるし、これでいいのかな? そんな疑問を感じていたら、久しぶりに母さんが背中から抱き付いてきた。


「晃太、お母さんは樹美ちゃんにぜ~んぶ任せたんだよ。それが樹美ちゃんの望みだからね。なのに私まで出しゃばってあれこれ意見したら、晃太が混乱しちゃうし、気も休まらないでしょう。だったらお母さんは、2人を丸ごと見守る役目でいいかな~って思っただけだよ~」


「えっ? いや、確かにそうかもしれないけど、……………もしかして、母さんはタツ姉と」

「うん。晃太の知らない所で、樹美ちゃんといっぱい相談してました~」


何これ、自分が浅知恵な子供みたいですっごい恥ずかしい!

どうして大人はこういう根回しばっかりしてくるの?

分かり辛いよ!


「……………そっか。じゃあ、おやすみ」

「うん、おやすみ~」


無性に照れ臭くて、抱き付きが解かれてから布団に包まってから、素っ気ない返事をしておいた。やっぱり母さんには敵わないなぁ。最近学校であった出来事を全部説明した時も「よく頑張ったね。晃太から話してくれて嬉しいよ」っていうサッパリとした反応だけだったし、本当に見守られている。


今は花祭さんの件で一杯一杯なのに、母さんのせいで更に色んな感情が悶々と渦巻いてきて、もう眠るどころじゃない。


ほんと、勘弁してほしい。

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